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平歯車

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歯車(はぐるま、英: gear)とは、伝動車の周囲に歯形を付けて確実な動力伝達を可能にした機械要素である。英語では「gear」で、日本語ではギアギアーと表記されることもあるが、JISでの表記はギヤである。減速や増速、回転軸の向きや回転方向を変えたり、動力の分割などに用いる。

概要

歯車は平ベルト等と異なり滑りが無いので、タイミング機構には不可欠である。軸と一体のものや軸受けを仕込んだもの、キー溝やスプラインを設けたものがある。歯数の組み合わせは自由であるが、大きな力を伝達するときや、滑らかさを必要とするときは、いつも同じ歯同士が当たると、微小な傷が大きくなったり、特定の箇所で音が発生するため、無駄歯を設けて歯数が互いに素になるように設計される場合がある。互いに素である組み合わせでは全体が均一に磨耗し、歯当たりが滑らかになる。これを英語ではharmonic wearという。ほとんどの工業製品はこの組み合わせで作られるが、減速比の都合などによってそうできない場合もある。歯車の材質が同種の組み合わせは摩擦係数、耐摩耗性、焼付き耐性が劣るため異なる材質か表面処理を行った歯車の組み合わせが好ましい。また、小歯車は硬い材料にしておかないと先に磨耗する。代表的な歯車装置には以下のようなものがある。遊星歯車機構差動装置 - ディファレンシャル、略してデフとも呼ばれる。減速機変速機ラック・アンド・ピニオン平行して有る2本の軸上に2種類ずつ(計4枚)のギヤを接続しループを作った場合、2本の軸上にあるギヤの比率が一定である場合を除いて、軸は回転をしない。

減速・増速

歯数のちがう歯車を組み合わせて減速や増速に用いる。ウォームギヤ以外の歯車2つがかみ合っている場合、回転角度および角速度の比は歯数の比の逆数になる。トルクの比は、摩擦力を除けば、てこの原理により、ピッチ円半径の比になる。歯数の比とピッチ円径の比は等しくなるため、駆動歯車をD従動歯車をPとして式で表すと次のようになる。j=1/u=Pの歯数/Dの歯数=Pのピッチ円径/Dのピッチ円径=Dの回転角度/Pの回転角度=Dの角速度/Pの角速度=Pのトルク/Dのトルク3つ以上の歯車が順にかみ合っているとき、最初と最後の歯車のそれらの比は、最初と最後の歯車が直接かみ合っている場合と同じで、間の歯車の歯数に関係ない。(3つの平歯車で入力と出力の回転方向を同じにする場合等。)駆動歯車の歯数<従動歯車の歯数の場合、減速となってトルクが増し、逆の場合増速となってトルクが減る。Pのトルク×Pの回転角度=Dのトルク×Dの回転角度Pのトルク×Pの角速度=Dのトルク×Dの角速度となり、摩擦損失を除けば、エネルギーおよび仕事率は変わらない。例えば、歯数90の大きい歯車と、歯数20の小さい歯車がかみ合っている場合、小さい歯車の角速度は大きい歯車の4.5倍、大きい歯車のトルクは小さい歯車の4.5倍となり、小さい歯車が3回転すると大きい歯車は240度回転する。

動力の分割等

動力の分割、分配、取り出しや、入力、統合に用いられている。例えば自動車はデファレンシャルギヤによって、1つの原動機で左右両輪を回転させる。さらに、一部の四輪駆動車ではセンターデフで動力を前後輪に分割するものもある。また、オイルポンプなどの補機を回転させるために出力を取り出したり、逆にスターターモーターの回転力を入力している。

歴史

最初の歯車がいつ開発されたのか、はっきりしたことは言えない。ただし歯車の歴史はかなり古い、ということは言える。古代中国の指南車は歯車を使っており、年代が紀元前2700年にまで遡る可能性がある。古代ギリシアに書かれた『機械学』(古代ギリシア語 : Μηχανικάメカニカ)は書名が『機械学の諸問題』とも訳され、長らくアリストテレスの著作とされていたがその後は逍遙学派すなわちアリストテレスが創設した学園の弟子たちによるものと考えられるようになっている書物で、この書物は、くさび、ころ(ローラー、ベアリング)、車輪、滑車などのほか、回転運動を伝達する青銅製や鉄製の歯車に言及している。(アリストテレスの著作とされる書物は、紀元前350年頃に書かれたとされたり、紀元前330年から320年頃に書かれた、などとされるが)この記述が、古代ギリシアの書物に現れた歯車に関する記述としては、今まで知られている中ではどうやら最も古いようである。ただし当然だが、この書物の著者の先人、すなわちアリストテレスより前の時代の人もこの地域で歯車類を使っていたと考えるべきだろう。古代ギリシアのアルキメデスは、ウォームギヤと円筒歯車を用いた5段の歯車列で約200倍の出力を得るメカニズムの巻上機を考案し、紀元前250年頃に 少人数で4,200 トンの艦を進水させることに成功した、と記録が残っている。地中海に沈んでいた古代ギリシア時代の"アンティキティラの沈没船"から回収されたアンティキティラ島の機械は紀元前150年 - 100年に製作されたと考えられており、これは歯車を利用した天体運行計算機だった。「この機械と同様の複雑さを持った技術工芸品はその1000年後まで現れることはなかった」と考えられている。古代ギリシアの歯車の技術はイスラーム世界に継承され、1221年にイスファハン(現在のイラン)でムハンマド・イブン・アビ・バクル(Muhammad Ibn Abi Bakr)が作った歯車つきアストロラーベは現代まで残されている。歯車によるカレンダー機能が搭載されたアストロラーベである。ウィトルウィウスは『建築について』の中で縦に回転する水車について論じたが、縦に回転する動力を横方向の回転に変換するランタン歯車と呼ばれる木製のピンを組み合わせる歯車が1世紀頃のローマ帝国で普及し、18世紀末まで日常的な歯車として利用され続けた。全金属製の歯車は11 - 12世紀頃に登場したが、産業用ではなく専ら時計などの精密装置に用いられた。

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