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パッキン

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シール(英: seal)は、機械や装置において、液体や気体の外部への漏れや雨水や埃などの内部への侵入を防ぐ部品や素材の総称。外部のごみや異物が内部に侵入するのを防ぐ働きもする。宇宙ロケットから各種機械装置、家庭のガス・水道の配管、壁のひび割れの補修まで非常に幅広く使われる。普段あまり目立たない部品であるが、機械の性能維持に重要な役割を果たしている。1986年のスペースシャトル・チャレンジャー号の爆発事故も固体ロケットブースター内部のOリングの機能不全が原因とされている。

語源

元の意味は英語の印章 (seal) 。西洋では文書を封緘する際に溶けた蝋を糊代わりに使い、その蝋に印章を押すしきたりがあったので、封印することもシールと呼んだ。そこから転じて封じるもの・密閉するものをシールと呼ぶようになった。

シールの始まり

記録に残っている物では、紀元前2000年頃のメソポタミア文明の古代バビロンがある。ギリシアの歴史家ディオドロスが書き残した記録によると、ユーフラテス川の川底を横断するトンネルが建設され、そのトンネル壁はレンガが積まれアスファルトで防水処理されていた。アスファルトによる防水はその後長く使われ、特に地中海沿岸では造船に広く使用された。マルコ・ポーロの東方見聞録には、当時のヨーロッパ船の防水にアスファルトを使用することが一般的であった記述がある。シールが工業的に重要になったのは蒸気機関が発達した18世紀頃からである。蒸気機関は高温・高圧の方が熱効率が高いので、シールの性能が非常に重要になった。

シールの分類

現代のシールは固定用途に使われるガスケットと、運動部分・可動部分に使用されるパッキンに分類される。各シールについては、この項内で概略を解説する。

ガスケット

シール部分がボルト等で固定されているものをガスケットと呼ぶ。ガスケットは配管の接続面(フランジ)、エンジンのヘッドカバー、シリンダーヘッド、シリンダーブロック、オイルパン各面の接合部などに使用される。Oリングやゴムシート等のソフトガスケット、金属を加工したメタルガスケット、金属と非金属を組み合わせたセミメタルガスケット、ネジ部分に広く使われているシールテープや液状シール、紙やコルクなどがある。

パッキン

パッキン(日: 衛帯,英: packing)とは,シールと接触する部分で回転運動や往復運動をしたり、繰り返し着脱する場合を指す。ポンプやモーターの軸やバルブの可動部のような回転部分、ピストンのような往復運動部分、カプラーの接続部・水道蛇口の止水部などに使われる。シールが運動部分と接触している接触シールと、そうでない非接触シールに分類される。接触シールには目的に応じて多様な種類がある。流体の圧力を利用して密閉性を高めるタイプをセルフシールパッキンと呼び、Oリングやリップパッキンが該当する。比較的低い圧力の油圧機器や潤滑油の密閉に使われるオイルシールは、シール部材(ゴムあるいはゴム+金属)自身の弾性で密閉性を確保する。メカニカルシールはコイルバネの力を利用して密閉性を確保する。回転軸などによく使われるグランドパッキン(軸封部品)は、軸と固定部の間に繊維製品(編組グランドパッキン)や、金型成形された膨張黒鉛シート(ダイモールドパッキン)など、柔軟で潤滑性のある詰め物を挟んでシールする。糸やフェルトも古くから使われている。非接触シールには、ラビリンスシールと磁性流体シールがある。

シールに要求される性能

シールに要求される性能は使用される条件によって多様である。密閉すべき流体の圧力によって変形しない強度。ガスケットではボルトによる締め付け力に対する充分な強度も求められる。高圧・高温等の条件下においても流体を透過させないこと。流体の温度や使用される場所の外気温変化に対しても機能を維持すること。即ち使用される温度範囲内においては、高温での軟化や変質、低温での固化を起こさないことが必要。使用する流体の化学的性質に対する耐性。耐性の例を示す。耐水性:水系に使用する場合に求められる機能、錆びたり溶けたりしないこと耐油性:使われる油成分によって軟化・膨潤したり脆くなったりしないこと耐酸性:酸成分を使う場合、酸におかされないこと耐アルカリ性:アルカリ成分におかされないこと耐酸性や耐アルカリ性をまとめて耐薬品性と呼ぶ場合がある。接する部材との密着性すなわち柔軟性や弾性が必要。運動部分に使用される場合は相手に摩擦損傷を起こさない材質であること、摩擦係数が小さく運動への負荷が低いこと。使用される期間中に大きな変形・ひすみなどの劣化や破損を起こさない安定性。

シールの材質

シールに使われる素材は、温度・圧力・耐性などの条件に応じて単独や組み合わせて使用される。

有機材料

有機材料として、天然ゴムの他にニトリルゴム、アクリルゴム、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴムなどの合成ゴム、シリコーンゴム、四フッ化エチレンゴム樹脂、麻や綿などの植物繊維、さらには牛革をなめし加工した皮革などが使用される場合もある。これらの材料はその特性に応じて、各種の産業用途や家庭用途で広く使われている。一般にゴム系の素材は接触面とのなじみが良く施工も容易だが、耐熱性に乏しい上に低温で固化するため使用温度範囲が狭い、高圧に耐えない等の特徴がある。また素材に加硫架橋が存在する場合は流れる流体及び周囲の銅素材による銅害での劣化に注意する必要がある。耐薬品性は素材の性質による。

無機材料

シールに使われる素材は無機材料として、鉄合金、非鉄合金、セラミック、黒鉛、石綿(アスベスト)などがある。金属系素材は耐熱性や耐圧性に優れるが、接触面の平滑さが要求され施工の際にも技術が必要。使用可能温度・耐圧性・耐薬品性は、素材金属の性質に依存する。

石綿

石綿は極低温から1000°Cを越える高温まで非常に広い温度範囲で安定して使用できる特性があり、耐水・耐油・耐薬品性も良好な素材。10%から20%のゴムまたは合成ゴムを添加し整形した石綿ジョイントシートとして、あるいは金属と組み合わせた渦巻き形ガスケットやメタルジャケット形ガスケットとして、更には耐熱性と耐薬品性を兼ね備えたグランドパッキンの素材として広い範囲で使用されていた。日本において石綿は平成18年9月の労働安全衛生法の改正により全面製造禁止となったが、代替品が確立していない特定分野のシールについては政令により製造の禁止が猶予されている。猶予されている製品はポジティブリストとして厚生労働省の労働安全衛生法施行令で附則としてあげられている。当初リストには6種12項目挙げられており、シール材としては4種10項目が温度や圧力や化学条件を指定した条件下での使用を認められていた。即ち化学工業、鉄鋼業、非鉄金属製造業の既存の施設の設備の特定条件下での使用で8項目、潜水艦の特定部品への使用で2項目が挙げられていた。ポジティブリストは代替品の技術が確立された時点で見直しがなされ、2012年3月に全ての代替技術が確立し、石綿は完全に製造禁止となった。

代表的なガスケット

ガスケットは固定された状態で長期間安定に密閉を保つ必要があるため充分な耐熱性・耐圧性・耐薬品性が要求される。固定といえども温度の上下による締め付けボルトの伸縮などによる締め付け力の強弱変化は不可避なので、締め付け圧ゆるみに対する適性(圧縮復元性能)も重要である。

軟質ガスケット

ゴムガスケット
ゴムの弾性、復元性を利用したガスケットで施工が容易。ゴム板を切り抜いたり、あらかじめ決められた形に成形したり打ち抜いたりして使われる。10気圧までの低圧用で、温度範囲は-20〜100°C
ジョイントシートガスケット
繊維材料・充填材・ゴムを混合し加熱ロールで圧延して得られたシートを打ち抜き加工したもの。配管用として水・油・酸・アルカリ・蒸気・ガスなどに幅広く使用される。ガスに使う場合10気圧、液体の場合30気圧まで使用可能で、温度範囲は-100〜200°C。
PTFE打ち抜きガスケット
PTFEはポリテトラフルオロエチレンまたは四フッ化エチレン(デュポン社の商標であるテフロンの名が半ば通称化している)のことで、耐薬品性が非常に優れた素材。使用目的の形に打ち抜いたものを使用する。弾性や高温での強度等機械的な性能にやや難がある。圧力は10気圧まで、温度範囲は-100〜100°C
PTFE包みガスケット
PTFEの耐薬品性とジョイントシートの汎用性を組み合わせたもの。ジョイントシートが液体に触れる側の表面をPTFE膜で包んだ構造。圧力は20気圧まで、温度範囲は-100〜150°C
Oリング
Oリングは断面が円形の環状シール。ガスケットとして使用する他、往復運動用のパッキンとしても使われる。素材はニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴムが使われる。Oリングは装着用の溝にはめ込んで使用される。シール性が優れている上装着が容易なので油圧・空圧機器や減圧・真空用のシールとして幅広く使われている。素材によって使用温度範囲が定められている。最も温度範囲の広いシリコンゴムの使用範囲は-70〜230°C、安価なニトリルゴムは-15〜120°C。Oリングの耐圧はパッキンとして10気圧、ガスケットとしては100気圧まで。

硬質ガスケット

渦巻き形ガスケット
渦巻き形ガスケットはV字型の金属薄板の帯と非金属製のクッション材を交互に重ねて渦巻状に巻いた物。高温高圧用ガスケットとして配管や機器に使われる。締め付け力を厳密に管理する必要がある。耐圧はガスで200気圧、液体で400気圧。温度は膨張黒鉛テープをクッション材としたタイプでは大気中で450°C、酸素の無いところでは800°Cまで使用可能。
メタルジャケット形ガスケット
セラミックファイバーなどの耐熱クッション材を金属薄板でくるんだ構造。外板が平面のものと波状のものがある。熱交換器・圧力容器・発電機等に使われる。圧力は液体で400気圧まで。温度は皮膜金属とクッション材によるが、銅を使用した場合600°Cまで、特殊鋼とセラミックファイバーを組み合わせたタイプでは1300°Cまで使用可能。
メタルガスケット
高温・高圧・高シール性を求められる条件に使用される。鋼・ステンレス鋼・銅・アルミニウム・チタン・特殊合金などを使用条件に応じて選定する。装着に際し大きな締め付け力が必要。シール断面が板状のプレーン型や円形の丸型のほかに三角形のデルタ型や凸レンズ状のレンズ型など多種の形状がある。使用に際して、材質は接触する本体よりやわらかいものを選ぶ必要がある。耐圧は断面形状、温度は使用する金属の種類による。自動車などの内燃機関に多用される。
メタル中空Oリング
チューブ状の金属をリング状に整形して両端を溶接したもの。材質はステンレス鋼が多い。高温のエンジン、高圧の射出整形機などに使われる。

その他のガスケット

シールテープ
PTFE(四フッ化エチレン樹脂、テフロン樹脂)のテープで、家庭用の水道を含む一般配管のねじ部分のシールに使用される。テープがネジの隙間に充填されることでシールされる機構。
液状ガスケット
低圧用配管の漏れ防止に使われる。チューブに入った白い粘い液状のものが市販されている。施工後固化するものが多い。同様のものが家屋外壁のひび割れ補修用にも使われる。

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