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流量計は流体の「計量」「取引」、「プラントの効率向上」や「運転管理」ために不可欠なツールです。
正しい流量計測を行うためには各種流量計の構造や原理を理解し、最適な選定と正しい運用を行う必要があります。
本ホワイトペーパーでは流量計の基本的な解説と、流量計の選定時における大切なポイントをご紹介します。
このカタログについて
ドキュメント名 | だれでもかんたん。流量計の選びかた |
---|---|
ドキュメント種別 | ホワイトペーパー |
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取り扱い企業 | 株式会社オーバル (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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表紙
だ れ で も か ん た ん 。
流量計の選びかた
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はじめに、目次
流量計の選びかた
はじめに 目次
第 1 章 流量計の必要性
流量計は、流体の「計量」「取引」、
・流量とほかの物理量(温度・圧力)との違い・・・・・・・・・・・・・ 4
「プラントの効率向上」や「運転管理」のために不可欠なツールです。
・体積流量と質量流量・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
・瞬時流量と積算流量・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
流量は、圧力、温度と並んでプロセス量の三大要素であり、非常に重要な計測項目
です。 第 2 章 流量管理の課題
流量は「単位時間に流れる流体の体積又は質量」と定義され、一般に流量と言えば
瞬時流量のことを意味します。一方、通過した流体の全量を表す場合は積算流量と ・流量管理の対象物・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
して区別します。
流量計は、他の測定器に比べ計測原理の種類が多岐に渡ることが大きな特徴です。 ・粘度の目安・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
これは測定環境、流体、流量、圧力、温度により一つの測定原理では対応できない
ため、使用する条件に応じて様々な方式が開発されてきたことによります。 ・流量管理の目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17
したがって、正しい流量計測のためには、各種流量計の構造や原理を理解し、最適
な機種選定と正しい運用を行う必要があります。 第 3 章 流量計の選定
そこで流量計の基本的な解説と、最適な選定をするために大切なポイントをまとめ
・流量計選定の流れ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18
ました。
・流量計の種類・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21
・精度保証計測範囲・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39
・流量計選定シート(基本情報編)
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流量とほかの物理量(温度・圧力)との違い
第 1 章 流量計の必要性
■ 製造現場における流量計の必要性 流量管理では、「流量」「温度」「圧力」が非常に重要です。一見同じような物理的状態
量を表す状態変数に見えますが、物理化学や熱力学で明確に「示量性変数」と「示強
製造現場では、流量管理によって「品質管理」「装置保護」「省エネルギー」「省メンテ 性変数」に区別されています。
ナンス」「コストカット・コストダウン」のほか、事故の未然防止といった効果を得る 流量は「示量性変数」、温度・圧力は「示強性変数」となり、流量は温度・圧力の計測
ことができます。 とは異なる条件が要求されます。
また、製造工程では冷却水や作動油、各種ガス、蒸気などのさまざまな流体を利用す
るため、個別の流体に対して最適な流量計の選定や設置はもちろん、生産ライン全体
を連続したプロセスととらえて流量管理を行う必要があります。
示量性変数
熱平衡関係ならば系を分割すると、それに比例して少なくなる状態量と定義されます。
例 え ば、100 kg を 2 つ に 分 割 す る と 50 kg と 50 kg に な り、100 ㎥ を 分 割 す る と 50 ㎥ と
流量とほかの物理量(温度・圧力)との違い 50 ㎥になります。このようなものが示量性変数です。
流量は、パイプ内における一部の流速成分を計測するのではなく、パイプ断面全体の流速成分
を測定して、体積や質量と積分操作することで求められるため示量性変数となります。
流量=示量性変数
温度・圧力=示強性変数 示強性変数
熱平衡関係ならば系をどのように分割しても変化しない状態量と定義されます。
例えば、50℃のお湯を 2 つの容器にわけても両方 50℃であり、25℃にはなりません。
また 50℃のお湯が入った容器であれば、容器内のどこを測定しても 50℃を示します。
液体や気体などの温度や圧力は、小さく分割(微分)しても測定値が変わらず、一部を測定す
ることで全体の状態を知ることができるので示強性変数となります。
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体積流量と質量流量
第 1 章 流量計の必要性
流量と温度・圧力の測定における相違点
体積流量と質量流量
示強性変数となる温度・圧力は、例えばタンク内の液体を測定する場合、どの場所を
測定しても基本的には同じ結果を得ることができるので、複数のセンサをタンク内に 流量は、JIS B 0100 バルブ用語で「単位時間に流れる流体の体積または質量」と定義
設置(測定系を増やす)すれば信頼性を高めることが可能です。またセンサ不良によ されているように体積または質量から求めることができ、「体積流量」と「質量流量」
るトラブルも測定系を増やすことで未然に防ぐことができます。 に区別されます。
しかし、示量性変数となる流量は、パイプの断面のように一定範囲の状態変化を測定 液体の流量計測では、体積流量が一般的に用いられます。しかし、温度や圧力によっ
する必要があるため、複数のセンサを使って信頼性やメンテナンス性を高めることは て体積が変化する気体や蒸気などは、質量流量が用いられることもあります。計測す
難しい傾向にあります。 る流体にあわせて流量計を選定しましょう。
そのため、流量計の選定では「信頼性」や「耐久性」が非常に重要なポイントになります。
流量計測における温度と圧力
流体計測には、温度や圧力などの物理量も密接に関連しています。
例えば、液体の場合、圧力の変化で体積は変化しませんが、温度が変化すると体積も
変化します。一方、気体は圧力、温度のいずれの変化でも体積は変化します。
より正確に流量管理を行うためには、流量だけではなく、温度や圧力なども考慮しま
しょう。
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第 1 章 流量計の必要性
体積流量の概念と計算式 質量流量の概念と計算式
「体積流量」は、単位時間あたりにある面を通過する体積から流量を割り出す方法です。 「質量流量」は、単位時間あたりにある面を通過する質量から流量を割り出す方法です。
単に流量というと一般的に「体積流量」を指し、単位は「㎥ /s(立法メートル毎秒)」 単位は[kg/s(キログラム毎秒)]で[、kg(キログラム)]を[g(グラム)][t(トン)]、
を用います。また日本の計量法では、「㎥(立法メートル)」を「L(リットル)」に、「s(秒)」 [s(秒)]を[min(分)][h(時間)]に置き換えることも計量法では認められています。
を「min(分)」「h(時間)」に置き換えることも認められています。体積流量の算出式は、 一般的に質量流量は、体積流量からの換算により求めるため、はじめに体積流量を算
一般的な配管内の流れであれば以下となります。 出します。
体積流量 Q[㎥ /s]は、ある断面の面積 A[㎡]、平均流速 v[m/s]とした場合、断
面積と平均流速の積によって求めることができます。 流れが通過する面 面に垂直な流れの平均流速
体積流量 Q[㎥ /s]=断面積 A[㎡]×平均流速 v[m/s]
ただし、一般的には標準状態を測定条件とするので、測定条件を明示する必要があり
ます。
体積流量=密度×断面積×平均流速
=密度×平均流速
流れが通過する面 面に垂直な流れの平均流速
体積流量=断面積×平均流速
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瞬時流量と積算流量
第 1 章 流量計の必要性
質量流量[ kg/s]は、流体の密度ρ [kg/㎥ ]、流体が通過する面の面積 A [㎡ ]、平均流
速 v[m/s]とした場合、以下のような計算式から求められます。 瞬時流量と積算流量
流量管理では「瞬時流量」と「積算流量」の 2 種類の流量を使い分けます。
質量流量[ kg/s]=密度ρ [kg/㎥ ] ×断面積 A [㎡ ] ×平均流速 v[m/s]
また、体積流量 Q[㎥ /s]を用いると、 瞬時流量
「瞬時流量」とは、一定時間あたりに流れる量を指します。
例えば、1 分間に 10 リットル流れるときの瞬時流量は 10 L / min、1 秒間に 100 mL 流れる瞬
質量流量[ kg/s]=密度ρ [kg/㎥ ] ×体積流量 Q[㎥ /s] 時流量は 100 mL / sec(= 6 L / min)となります。
例 )
この真空ポンプは毎分 5 リットルの冷却水を供給しなければならない。⇒ 瞬時流量
と書き換えることもできます。
ただし、体積流量から正確な質量流量を導き出すには、圧力に応じて正しい比体積を
使わなければいけません。
積算流量
「積算流量」とは、測定開始から流れた量の累積値を指します。
そのため温度計や圧力計、あるいは密度計も利用して換算する必要があります。 例えば、瞬時流量 100 L / min で 1 時間、タンクに水を貯めるとき、積算流量は 6000 L(6 kL)
従来の質量流量は体積流量から求めることが一般的でしたが、近年では質量流量を直 となります。
例)
接計測できる流量計も登場しています。
この研削盤は 1 日でどれぐらいのクーラントを使用しているのだろう?⇒ 積算流量
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流量管理の対象物測
第 2 章 流量管理の課題
■ 製造工程における流量管理課題の明確化 ● 密度(比重)
液体・気体ともに流体密度をあらかじめ計算しておきましょう。流体名と温度、圧力
流量計の選定を行う前に、「何を測定したいのか」と「どうしてその流体を測定したい から密度は計算可能です。液体の場合は、ある物質の密度と 4℃の水の密度との比を、
のか」という対象と目的を明確にしましょう。 気体の場合は、一般的に空気との比を基準にするので、比率がわかれば算出できます。
密度の計算式 ρ[密度]= M[質量]÷ V[単位体積]
流量管理の対象物
● 導電率
測定する流体の種類・性質
電磁流量計を利用する場合は、導電率を確認しておきましょう。そのほかの方式の流
量計を利用する場合は不要です。
流体と言っても液体や気体、液体でも水や油などさまざまな流体に細かく分けられま
す。最初に対象となる流体が「液体」「気体」「蒸気」「スラリー」のどれなのかを明確
にします。
● 色・透明度
また、液体であれば「冷却水」「純水」「切削油」「作動油」「アルコール」「液糖」など、
直視型の流量計を利用する場合は、流体の色・透明度も確認しておきましょう。
流体名を明確にしたあと、次ページから説明するような測定する流体の性質も把握し
直視型以外の流量計を利用する場合は不要です。
ておきましょう。
● 混入物
スラリー
流体中に気泡が発生したり、異物が侵入したりする場合は、混入物の有無や形状、
主に工業分野で用いられる言葉で、泥漿(でいしょう)とも呼ばれます。
量などもあらかじめ推測しておきましょう。
固体粒子が液体の中に混ざっているお粥のようなどろどろとした流動体を指します。
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第 2 章 流量管理の課題
● 腐食性 ● 流体圧力
酸性やアルカリ性の強い液体、有機溶剤などの流体を扱う場合は、流量計を腐食する 流量計によって対応圧力も異なるので確認しておきましょう。気体・蒸気の場合は密
可能性があるので耐食性を確認しましょう。 度計算でも流体圧力を使用します。
● 流量範囲 ● 許容圧損
流量レンジとも呼ばれます。流量計によって対応している流量が異なるので、実際に 流量計によっては圧力損失が発生するので、必要に応じて許容圧力損失も確認してお
使用するときの最大流量・常用流量・最小流量を推測しておきましょう。 きましょう。
● 脈動の有無
使用するポンプによって脈動が発生し、正確に流量が計測できない場合もあります。
特に往復動式ポンプは脈動が発生するので注意が必要です。
● 流体温度
材質によって高温に耐えられない、温度変化に耐えられないケースがあるため流体温
度も重要です。高温または温度変化の激しい流体を扱う場合には注意しましょう。
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粘度の目安
第 2 章 流量管理の課題
流量計によって対応粘度が異なるため、オイルのような温度による粘度変化が大きい
粘度の目安 流体や、塗料のような高粘度な流体を計測したい場合には注意しましょう。
流体の粘度は「温度」によって変化する
粘度
「さらさら」や「どろどろ」のように粘り気を示す物性値で、物質ごとに決まっており温度によっ
粘度は、物質ごとに決まっており、温度によって変化するので流体名と温度から推測
て変化します。流体の「流れやすさを表わす値」です。
することができます。 粘度の単位は Pa・s(パスカル秒)で表されます。
流体名と温度から粘度を推測することが可能です。液体の場合、温度が低いと「どろ 以前は CGS 単位「P( ポアズ )」「cP( センチポアズ )」が使われていました。
どろの状態」、温度が高いと「さらさらの状態」に粘度が変化します。
1P = 0.1Pa・s
1cP = 0.01P = 0.001Pa・s = 1mPa・s
水の温度と粘度変化
10-3Pa・s
2
1.5
粘
度
1
0.5
0
20 40 60 80 100
温度(℃)
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流量管理の目的、流量計選定の流れ
第 2 章 流量管理の課題
流量管理の目的 流量計選定の流れ
測定目的を明確にする 流量計の選定順序
次に測定した結果をどのように利用するのかという目的を明確にします。測定目的が 1. 計測する流体の性質を確認する
決まれば測定精度も明確になり、必要な流量計が絞られてくるはずです。 計測する流体の種類や密度、粘度、導電率、混入物の有無、流量などの性質を確認し
例えば、流量の監視と警報が目的なら、それほど精度の高い流量計は必要ありません。 ましょう。
しかし、塗布量や噴霧量のコントロールが目的であるなら、精度の高い流量計が必要
になります。 2. 流量管理の目的を明確にし、計測方法を決める
また、質量流量は一般的に体積流量から換算して求めることが多いですが、高精度な 監視と警報を行ないたいのか、塗布量や噴霧量のコントロールをしたいのか、積算流
質量流量が必要であれば、直接計測できる流量計を選定する必要があります。このよ 量から流量の「見える化」をしたいのか、目的を明確にしたうえで最適な計測方法を
うに目的を明確にすることで、求められる流量計の測定方式や性能がある程度見えて 検討します。
きます。
3. 製品仕様書を確認し、製品を絞り込む
流体の性質と流量管理の目的を明確にし、最適な計測方法と必要な性能が確認できた
ら、製品仕様書を見て要求性能を満たしているか検討します。
4. コストを比較検討し、最終決定をする
最終的にコストを比較し、導入する製品を決定します。その際に初期費用だけではなく、
メンテナンスや修理などの運用コストも加味しましょう。流量計単体の価格ではなく、
関連機器の価格と設置費、保守運用費も含めてコストを比較することが大切です。
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第 3 章 流量計の選定
製品仕様書で確認すること ● 耐環境性
設置場所 / 設置方法に関連する内容ですが、設置する場所の環境も考慮する必要があ
計測する対象流体と、計測の目的が明確になったら、以下のポイントを確認し、要求 ります。製品によっては屋外や高温になる場所、直射日光に弱い製品もあります。そ
性能を満たしているか検討します。 こで設置場所 / 設置方法に加えて、製品の耐環境性にも注意しましょう。
● 出力信号 ● 保守点検作業
出力信号には、電流や電圧、パルス、警報設定などの種類があります。 実際に運用する際の保守点検作業も考慮し、メンテナンス性や耐久性、堅牢性なども
確認しましょう。
特に、容積流量計やタービン流量計などの可動部がある流量計では、定期点検に関す
● 電源 る事項も併せて確認しておく必要があります。
電源の電圧・電流を確認しましょう。製品によっては起動時に平常時の数倍の電流が
流れるものもあるので、同一電源から複数の流量計に電力を供給する場合には注意が
必要です。 ● 関連製品の有無
流量管理では、流量のほかに流体速度や流体圧力、流体温度などを同時に計測するこ
とがよくあります。また、流量の計測データを PLC やパソコンに送信する場合は、通
● 設置場所/設置方法 信ユニットの有無なども確認しておきましょう。
流量計は、配管に割り込ませて使うものが一般的なので、割り込ませるスペースがあ
るのか、前後に直管部が必要なのか、どのように接続するのか、重量がある場合は架
台が必要ではないかなど、設置場所を検討しましょう。
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流量計の種類
第 3 章 流量計の選定
流量計の種類
測定方式による流量計分類
実測式 容積流量計
差圧流量計 容積流量計 差圧流量計 面積流量計
体積流量計
面積流量計
タービン流量計
推測式
渦流量計
タービン流量計 渦流量計 超音波流量計
電磁流量計
超音波流量計
熱式流量計
質量流量計 直接式
コリオリ流量計 電磁流量計 熱式流量計 コリオリ流量計
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第 3 章 流量計の選定
主な測定対象
容積 差圧 面積 タービン 渦 電磁 超音波 熱式 コリオリ
気体 ○ ○ ○ ○ ○ × ○ ○ △
蒸気 × ○ ○ ○ ○ × ○ × △
油 ○ ○ ○ ○ ○ × ○ × ○
水 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × ○
200℃ ○ ○ ○ ○ ○ △ ○ ○ ○
高温
400℃ △ ○ △ △ △ × △ △ △
高粘度
液体 ○ △ ○ × × ○ ○ × ○
200mPa・s 以上
高腐食 △ ○ △ ○ △ ○ ○ × ○
スラリー × △ △ × △ ○ △ × ○
○:計測可能 △:限定条件下で計測可能 ×:計測不可
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容積流量計
第 3 章 流量計の選定
よくあるトラブルと対策
容積流量計
● 異物の噛みこみ
容積流量計で発生するトラブルの多くは、流れに伴って回転する回転子と、計量室の間
長所
に混入した異物が噛みこんでしまうことが原因です。回転子が回転できなくなるため、
✔ 気体・液体の計測が可能
指針が動かないといった作動不良の原因になります。
✔ 精度が高い
✔ 取引計量に使用できる
対策
✔ 高粘度の流体に適する
✔ 機械式は電源が不要 流量計の直前にストレーナを設置し、流量計に異物が流れ込まないようにしま
しょう。
短所
流体内の異物が多い場合にはストレーナの容量を大きくする、またはストレー
✔ 固形物を含んだ流体に適さない ナを複数台設置する方法をとるとよいでしょう。
✔ 定期点検が必要
計測原理
流れに伴って回転する回転子と、計量室(回転子を収納するケースとの間に生じる空隙) ストレーナ
に連続的に流体を取り込み、流体を送り出す回転子の運動回数を数えて流量を示します。 流量計の入口側に設置し、流量計内部への異物の侵入を防ぎます。
容積流量計などの可動部のある流量計には必須の周辺・関連機器です。
オーバル歯車式やルーツ式が代表的ですが、小流量を高精度で測ることのできる往復ピ
ストン式、比較的小型で大きな容量が得られる旋回ピストン式やディスク式など回転子
の形状により多くの種類があります。
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差圧流量計
第 3 章 流量計の選定
よくあるトラブルと対策
差圧流量計
● 導圧管の詰まり
配管内の異物が導圧管につまると正確な差圧の測定ができなくなることがあります。
長所
✔ 気体・液体・蒸気の計測が可能 対策
✔ 可動部がない 詰まりが発生しないように定期的なメンテナンスを行いましょう。
✔ 高温高速流体の測定に適する
差圧伝送器を配管に直接取付けるダイレクトマウント方式の選択や、導圧管を
ダイヤフラムシールに置き換えるといった方法もあります。
短所
✔ 圧力損失が大きく発生する
✔ 固形物を含む液体には適さない
✔ 長い直管部分が必要 ● 直管長不足
計測原理 上・下流共に規定の直管長が取れない場合、配管内の流速分布の影響により偏流が発生
してしまい、流量計測に誤差が生じることがあります。
流体の流れている流路にオリフィス(絞り弁)を設置し、圧力損失を故意に発生させ、
オリフィスの前後の圧力差(差圧)を計測します。圧力差は流量の 2 乗に比例すること 対策
から、圧力差を測定することで流量を求めることができます。 流速分布の乱れがとくに大きい場合は、整流器を置くことにより上流側直管長
オリフィス、ダイヤフラム、フローノズルおよびベンチュリ管はいずれも差圧流量計に を短縮できます。また、絞り機構にベンチュリや V コーンを選択すると、必
区分されます。 要直管長を大幅に短くすることができます。
オリフィス
流速分布
管内における流速の分布を示す言葉です。
差圧
ほとんどの流量計は流速分布が安定した状態を想定して測定しています。
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面積流量計
第 3 章 流量計の選定
よくあるトラブルと対策
面積流量計
● 異物の混入
流体中に混ざる異物が流量計内(フロートガイド、または可動部ガイド)へ混入すると、
長所
流量が変化してもフロートや指針が円滑に動かなくなります。
✔ 気体・液体・蒸気の計測が可能
✔ 圧力損失は比較的小さい 対策
短所 流量計を分解洗浄しましょう。
✔ 精度があまり高くない 精度に影響するため、腐食や摩耗も確認する必要があります。
✔ 固形物を含んだ流体に適さない 流体の中に混入物がある場合は、容積流量計と同様に直前にストレーナを設置
✔ 許容温度差が制限される場合がある しましょう。
✔ 直読するタイプはテーパ管が汚れると
フロートが見えない
計測原理
● 脈動
テーパ管(上方に行くにしたがって徐々に広がっていく管)の中にフロートを浮かせる
脈動が発生するとフロートが振動してしまうため、計測に誤差招く恐れもあります。
方法が主流です。流体を下方から上方へ流すと,フロートは流量の増減に応じて上下し
ます。このフロートの動きにより流量を求めます。 対策
テーパ管を透明の材質で製作し、これに流量目盛りをつけて直読するタイプやフロート 配管内に整流装置・緩衝装置を設置する、もしくはダンパなどを管体部に設け
内にマグネットが内蔵されており、磁気センサで計測するタイプもあります。 ることで脈動を抑制する必要があります。
フロート
Z Z
テーパ管
流量面積
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タービン流量計
第 3 章 流量計の選定
よくあるトラブルと対策
タービン流量計
● 羽根車の腐食
軸流式タービン流量計は一般的にステンレス鋼で構成されるため、化学液などの腐食性
長所
の高い流体の計測に多く用いられます。しかし、化学液は濃度・温度条件等によって大
✔ 再現性 ( 繰り返し精度 ) に優れている
✔ 応答性に優れている きく腐食性が異なるため、腐食により計測できなくなってしまうことがあります。
✔ 低粘度流体に適する 対策
✔ 小型で大容量の測定が可能
流体名だけで使用可能かどうかを判断せずに、必要であればテストピースによ
短所 る浸潰試験を行うことも検討しましょう。
✔ 異物に弱い
✔ 定期点検が必要
● 可動部の詰まり・破損
計測原理
構造上、流体中に混ざる異物が詰まりやすく、可動部があるため磨耗や破損のリスクが
流量と羽根車の回転は常に比例しているため、羽根車を流体の流れる力で回転させて、
あります。
回転数により流量を測定します。羽根車の先や回転軸にマグネットを埋め込むことで、
回転数をパルスを信号として取り出し流量に換算することもできます。 対策
羽根車の軸が、水車のように流れに対して直角におかれた接線流式と、風車のように流 定期的に清掃やメンテナンスを行いましょう。
れに対して平行におかれた軸流式があります。
回転方向
回転軸
ブレード
軸流式 接線流式
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渦流量計
第 3 章 流量計の選定
よくあるトラブルと対策
渦流量計
● 混相流体
液体と気体の混相流体、または気泡を多く含む流体は大きな誤差を発生させます。
長所
✔ 液体・気体・蒸気の計測が可能 対策
✔ 高い精度で計測できる
液体・気体・蒸気のいずれかの単相流を満管の状態で計測する必要があります。
✔ レンジアビリティが大きい
✔ 機械的可動部がない
短所
● キャビテーション
✔ 高粘性液体には不適
✔ 配管の振動に弱い 液体計測の場合、液体の種類とライン圧力、圧力損失の関係でキャビテーション(空洞
✔ 直管部が必要 現象)が発生する場合があります。
計測原理 対策
流れの中に柱(渦発生体)を置くと、下流側に規則正しい渦(カルマン渦)が交互に発 ライン圧力と流速を確認しましょう。
生します。流体の流速と渦の発生周波数は比例関係にあるので、渦の個数を計測すると キャビテーションを発生させないための最小ライン圧力は、以下の計算式から
流量が測定できます。 求められます。
渦を計測するセンサにはサーミスタ、圧電素子、超音波および静電容量素子などがあり Pd = (2.6 ~ 3.0) ⊿ P + 1.3 Pv
ます。 Pd : 下流側圧力(絶対圧力)
⊿ P:流量計の圧力損失
連続稼働に対応できるリプレーサブルセンサ形、流体に含まれる固形物の影響を受けに Pv : 測定時の温度における液体の蒸気圧力
くい構造のものなどさまざまな種類があります。 (絶対圧力)
カルマン渦列
キャビテーション
渦発生体 兼 圧力損失により圧力が低下し、液体の飽和蒸気圧以下になったときに発生する現象です。
渦計測センサ キャビテーションが発生すると、正確な流量測定はできなくなってしまいます。
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超音波流量計
第 3 章 流量計の選定
よくあるトラブルと対策
超音波流量計
● 気泡の混入
もっとも多いトラブルが気泡混入による不良です。流速が高くなるとキャビテーション
長所
が生じやすく、気泡が発生すると送受信ができずに流量計測ができません。
✔ 圧力損失がない
✔ 配管の外側から計測できるタイプ 対策
(クランプオン)がある
液体の中の気泡を除去する空気分離器を設置する、もしくは気泡が発生しやす
短所
い場所から離して流量計を設置してください。
✔ 直管部が必要
✔ 液中の固形分が多いと誤動作の原因になる
✔ 伝播時間差法の場合、
気泡が多いと測定不可能になる
計測原理
流体の流れている管路の外から超音波を送信し、その反射波や透過波を受信することに
より流量を計測します。原理には伝播時間差法とドップラ法の2種類があります。
伝播時間差法:水中を進む超音波は流れに逆らうと遅く伝わり、逆に流れに乗ると速く
伝わるため、管内の流体を斜めに横切って交互に超音波を送受信し、2 つの超音波の伝
播時間の差を流量に換算します。
ドップラ法:流体と共に流れてくる粒子から反射される超音波のドップラシフトを利用
して流体流速を求めます。
計測器 計測器
反射
計測器 計測器
伝播時間差法 ドップラ法
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電磁流量計
第 3 章 流量計の選定
よくあるトラブルと対策
電磁流量計
● 伝導率不均一
管内の流体の伝導率が一様であることを前提にしているため、薬液などの流体がしっか
長所
りと混合されていないと、伝導率分布にばらつきが発生して誤差が生じます。
✔ 液体の温度・圧力・密度・粘度の影響を
受けない
対策
✔ 混入物(固体・気泡)を含む液体の計測が
可能 薬液などの流体の混合をしっかりと行うことでトラブル発生を防止できます。
✔ 圧力損失がない 製造ラインの構成上、難しいときは 2 周波励磁にすることで解決できる場合
✔ 可動部がない
があります。
短所
✔ 気体や導電率のない液体は計測できない
✔ 直管部が必要
計測原理
ファラデーの電磁誘導の法則を応用した流量計です。
流量計内部に磁界を発生する電磁コイルと、起電力をとらえる電極があり、導電性液体
が磁場の中を移動すると、流速に比例した起電力(電圧)が発生します。この起電力を
電極でとらえ、流量信号として取り出すことで流量を計測します。
電極
励磁電流 流速:V
コイル 起電力:E
磁界 磁界
(磁束密度:B)
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