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【技術資料】pH測定ガイド(ラボ用)

製品カタログ

日々使用しているpHメータ、改めてpH測定の理論、pHを正確に測定するコツを掲載。もう一度学んでみませんか?

掲載内容一例
-pHの概要
-電極の選択と取り扱い(メンテナンス・保管・洗浄・再生)
-トラブルシューティング
-pH測定の理論
など

このカタログについて

ドキュメント名 【技術資料】pH測定ガイド(ラボ用)
ドキュメント種別 製品カタログ
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このカタログの内容

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pH測定の 実用書 研究実験用 Natural science laws experpiHen測ce定 “ガlivイe”ド – 研究実験における pHのle理ar論n とea実si践ly Schoopl He xTpheeorirmy Geunidtse
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目次 1 1. pHの概要 5 1.1. 酸性とアルカリ性 5 1.2. なぜ pHを測定するのか? 6 1.3. pH測定に必要なもの 7 a) pH電極 9 b) 比較電極 10 c) 複合電極 11 1.4. 正しい pH測定のための実用ガイド 11 a) サンプルの準備 11 b) 校正 12 c) pH電極 14 d) 想定される測定精度 15 pH測定の手順 15 2. 電極の選択と取り扱い 18 2.1. 液絡部の種類 18 a) セラミック液絡部 18 b) スリーブ型液絡部 /すりガラス製液絡部 19 c) オープンジャンクション 21 2.2. 比較電極と電解質 21 2.3. ガラス膜の種類と形 24 2.4. 特殊な用途向けの pH電極 25 簡単なサンプル 25 汚いサンプル 26 乳液 26 半固体、固体サンプル 26 平面のサンプルと微量サンプル 27 少量サンプルや特殊な容器 27 InLab®Power (Pro) 28 2.5. 電極のメンテナンス 28 2.6. 電極の保管 28 短期の保管 28 長期の保管 29 外部温度センサ 29 2.7. 電極の洗浄 29 硫化銀 (Ag2S)による目詰まり 29 1 Contents
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塩化銀 (AgCl)による目詰まり 29 蛋白質による目詰まり 30 その他の液絡部の目詰まり 30 2.8. 電極の再生と寿命 30 2.9. その他の情報 30 3. pH測定のトラブルシューティングガイド 31 3.1. メーターとケーブルの確認 31 3.2. サンプル温度とアプリケーションの確認 32 3.3. 標準液と校正手順の確認 32 標準液の使用に関して留意すること 33 3.4. 電極の確認 34 4. pH測定の理論 37 4.1. pHの定義 37 4.2. 濃度と活量の相関関係 38 4.3. 校正標準液・緩衝液 40 緩衝能力 (ß) 41 希釈度 (ΔpH) 42 温度効果 (ΔpH/ΔT) 42 4.4. pHの測定回路と電位連鎖 42 pH電極 44 比較電極 45 4.5. pH測定時の校正 /調整の設定 47 4.6. pH測定における温度の影響 48 電極の温度依存性 48 等温交点 49 その他の温度による影響 50 測定サンプルの温度依存 50 4.7. 特殊なサンプル溶液の場合の現象 51 アルカリエラー 51 酸エラー 52 比較電極用電解液に起こる化学反応 52 有機媒体 53 5. 別表 55 5.1. メトラートレドの標準液の温度表 55 2 Contents
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このガイドは、研究実験での pH測定について明確で実用的な説明を 提供することに焦点を置いています。重要な点には多くのコツやヒント が提供され、全体的な測定方法は、後に記述されている酸性とアルカ リ性の測定に関する理論的な説明に裏づけられています。また、さま ざまな pH電極を紹介し、特定のサンプルに最適な電極を選ぶための 選定方法にも重点を置いています。 3
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4 Introduction to pH
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1. pHの概要 1.1. 酸性と お酢のような日ごろから使われている液体が酸性と分類されているのは アルカリ性 なぜか?それは、お酢には多量のヒドロニウムイオン (H3O+)が含まれ るからである。一方、多くの水酸化物イオン (OH-)を含む液体は塩基性、 つまりアルカリ性になる。純水中では、ヒドロニウムイオンはすべて水 酸化物イオンによって中和され中性になる。 H3O+ + OH– ↔ 2 H2O 図 1 酸と塩基の反応による水の分子合成 解離する分子が水素イオン(または陽子)を放出する物質を酸と呼び、 その溶液は酸性となる。よく知られている酸には、塩酸、硫酸、酢酸(ま たは酢)が挙げられる。酢酸分子の解離は、以下のように表される: CH3COOH + H2O ↔ CH3COO– + H3O+ 図 2 酢酸の解離 すべての酸性水溶液が同じ強さを持っているわけではない。酸性の度 合いは、溶液中の水素イオンの総数によって決定される。そして pHの 値は水素イオン濃度の負の対数として定義されている。(厳密には、水 素イオンの活量によって決定する。水素イオンの活量についての詳細 情報は 4.2章を参照。) pH = –log [H3O+] 図 3 水素イオン濃度から pHの値を算出する公式 pHの測定をすれば、酸性物質とアルカリ性物質の量的差異を知ること ができる。日用品や化学薬品の pHの値の例を図 4に示す。 5
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食品と飲料/家庭用品 オレンジ果汁 卵白 制酸薬 Mg(OH)2 コカ・コーラ 水 ホウ酸 レモン果汁 チーズ 牛乳 ナトリウムビール (ホウ砂) 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 塩酸 水酸化ナトリウム 0.37% (0.1 M) シアン化水素酸(青酸) (苛性ソーダ) 4% 0.27% (0.1 M) 硫酸 炭酸カルシウム (sat)酢酸 4.9% (1 M) アンモニア溶液 1.7% (1 M)0.6% (0.1 M) アンモニア溶液 0.017% (0.01 M) 化学品 酢酸カリウム 0.98% (0.1 M) 炭酸水素ナトリウム 0.84% (0.1 M) 図 4 化学品と日用品の pHの値 アルカリ性の範囲は pH 7から pH14である。この範囲では、水酸化物 イオンまたは OH-イオンが多く存在する。このような pHの値を持つ溶 液は、水に塩基が溶解することによって生成される。塩基が解離するこ とにより水酸化物イオンを放出するため、溶液はアルカリ性になる。最 も知られている塩基には、水酸化ナトリウム、アンモニア、炭酸塩が挙 げられる。 NH3 + H2O NH4+↔ + OH– 図 5 水とアンモニアの反応 水溶液の pHは、酸性とアルカリ性の両方が含まれ、pHは 0から 14 までの数値で表され、0から 7が酸性、7から 14がアルカリ性と呼ば れる。また、中性の場合 pHの値は 7となる。 1.2. なぜ pHを測定 pHは、さまざまな理由で測定される。例えば、 するのか? • 品質管理 –製造中に pHをコントロールすることで、製造条件を常 に一定に保つことができ、製品に要求される条件を満たす安定した 生産が可能になる。pHの変化により、外観や味など製品の品質が 大きく左右されることもある。 • 製造コストの低減 –これは上述の理由に関係しているが、製造プロ セスの生産性がある特定の pHにおいて高い場合、その pHで製造 することにより、製造コストを低く抑えることができる。 6 Introduction to pH
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• 人、もの、環境へ与える被害の防止 –特定の pHにおいて有害にな るような物質は、人体や機器類にダメージを与えないように慎重に 扱わなければならない。このような物質が危険かどうかを判断する ために、まずその物質の pHの値を測定する必要がある。 • 法的規制の順守 –前述の通り、ある物質は有害になりえる。そのた め政府は、危険・有害物質による被害から人々を守るための規制要 求事項を整備している。 • 機器類や施設の保護 –製造プロセス中に反応物質と接触する製造機 器や施設は、反応物質が特定の pHの範囲内で扱われていない場合、 腐食する可能性がある。腐食は、製造ラインの寿命を縮めるため、 pHの監視は製造ラインを不必要な損傷・ダメージから守るために 重要である。 • 研究開発 – pHは、生物化学現象の研究などにおける重要なパラメー タでもある。 これらは、pHを頻繁に測定する重要性を、幅広い分野における例を 挙げながら紹介したものである。 1.3. pH測定に pHを測定するためには、pHの値を決定する水素イオンに反応する測 必要なもの 定機器が必要である。測定原理は、水素イオンに反応するガラス膜を 持つセンサ(ガラス電極)とサンプル溶液との間に起こる反応の検知 である。しかしながら、pHガラス電極から得られた電位だけでは、情 報が不十分なため、もう一つのセンサ(比較電極)が必要となる。こ のセンサが pHガラス電極で得た電位と比較するための参照シグナル もしくは電位を提供する。サンプル溶液の正確な pHを測定するために は、異なる電位を持つ 2本の電極を使用しなければならない。 pHガラス電極の反応は、サンプル溶液の酸性 /アルカリ性の度合い、 つまりH+イオン濃度で決まり、その濃度に応じたシグナルを送る。 一方、比較電極はサンプル溶液中の H+イオン濃度に左右されず、ガ ラス電極の電位に対して常に一定の電位を保っている。 7
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それにより、2つの電極間の電位差が、溶液中の水素イオン数を示す ものとなり、溶液中の pHの値を示すものになるのである。この電位差 は、溶液中の水素濃度の一次関数による直線で表せるため、定量的測 定が可能となる。この関数の式は以下の図 6のように表される。 E = E0 + 2.3RT / nF * log [H3O+] E = 測定電位 E0 = 標準電位 R = ガス定数 T = 絶対温度 (ケルビン ) n = 電荷 F = ファラデー定数 図 6 溶液中の酸の量と pH電極から生じる電位の関係 図 7 pH電極と比較電極の測定回路 図 7は、pH電極と比較電極の 2本のハーフセルによって構成された pH測定回路である。今日では、両方の電極が複合されて 1本になっ ているものがほとんどであり、複合電極と呼んでいる。これら 3つの電 極は、それぞれ異なる重要な特徴と特性を備えている。 8 Introduction to pH METTLER TOLEDO InLab ® Mono pH InLab® Reference Pro
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a) pH電極 pH電極は、実際に溶液中の pHを検知する部分である。先端にある H+ イオンに反応する薄いガラス膜とガラス製シャフトによって構成され ている。ガラス膜が水溶液に接触すると、このガラス膜の外側にゲル 層ができる。このようなゲル層は、内部緩衝液に接触しているガラス 膜の内側にもできる。以下にゲル層について図示する。 内部ゲル層 ガラス膜 LI+SIO 内部緩衝液3 SIO + 3 SIO inteHrn = 一定3 al buffer LI++ プラス 内部緩衝液LI LI+ SIO3 マイナス SIO SIO 電荷3 3 LI+ LI+ 電荷 LI+ SIO3 SIO3 SIO3 SIO3 LI+ SIO3 LI + H+ 外部ゲル層 H+ サンプル溶液 H+ H+ 酸性水溶液 アルカリ性水溶液 ガラス膜 (0.2–0.5 mm) ゲル層 約 1000 A (10-4 mm) 図 8 ガラス膜の横断面図 ゲル層の中や周りにある H+イオンは、水溶液の pH、すなわち H+イ オン濃度によってゲル層の外側から内側、または内側から外側へ拡散 する。アルカリ溶液の場合、H+イオンはゲル層の外側へ拡散し、それ によってゲル層の外側にマイナス電荷が生じる。ガラス電極の内側に は、pHの値が一定の内部緩衝液があり、測定中、膜の内側の表面電 位は常に一定である。したがって電位差は、ガラス膜の内側と外側の 電位の違いによって生じる。標準的な pH電極を図 9に示す。 プラチナリード線 内部緩衝液 ガラス膜 S7 コネクタ 図 9 pH感応ガラス膜をもつ pH電極 9
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b) 比較電極 比較電極の目的は、pHガラス電極で電位を測定する際に、対象とな る一定の比較電位を提供することである。このためには、比較電極は 溶液中のH+イオンに反応しないガラスでできている必要がある。また、 比較電極は浸されるサンプル溶液に電気的に開路していなければなら ない。そのため、液絡部、またはジャンクションを比較電極のシャフト につくり、比較電極用電解液(比較電解液)がサンプル溶液に流出す ることを可能にしている。正しい測定をするためには、比較電極と pH 電極は同じ溶液中になければならない。典型的な比較電極を以下に図 示する。 電解質注入口 比較システム 液絡部/ダイヤフラム(隔膜) 比較電解液 S7 コネクタ 図 10 比較電解液、内部電極(比較システム)、液絡部によって構成された比較電極 比較電極は、比較電解液中の内部電極が、電解液とジャンクションを 通してサンプル溶液と間接的に接触するように設計されている。この接 触連鎖が、安定した電位を提供する。 さまざまな比較システム(内部電極)があるが、今日使用されている のは銀 /塩化銀の組み合わせがほとんどである。比較システムの電位 は、比較電解液と銀 /塩化銀の内部電極によって定められる。ここで重 要なのは、比較電解液は、高いイオン濃度を含んでおり、電気抵抗が 極めて少ないということである。(詳細は 4.4章参照) 測定中、比較電解液はサンプル溶液に流れ出るため、電解液とサンプ ル溶液の間に反応が起こりうる。化学反応は電極や測定に影響を与え るため注意しなければならない。(詳細は 2.2章参照) 10 Introduction to pH
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c) 複合電極 最近は、ほとんどの場合 2本に分かれたハーフセル電極に比べ取り扱 いの簡単な複合電極(図 11)が使用されている。複合電極は、真ん 中の pHガラス電極が比較電解液の入った比較電極に囲まれている。 複合電極の pH電極の部分と比較電極の部分は、ハーフセル電極と同 様の役目を担っている。違いは、それらが一本の電極に複合されており、 取り扱いが簡単な点である。ただし、それぞれ 2つの電極の寿命が大 幅に違うことが予測されるときは、複合電極でなく別々にハーフセルの pH電極と比較電極を使用することを推奨する。 pH測定をより簡素化するために、pH電極と比較電極の入っている複 合電極に温度センサを内蔵することができる。これにより、温度補償が 可能となる。このような電極は、3-in-1電極と呼ばれる。 スクリューキャップ、S7または マルチピンヘッド セラミック液絡部 比較電極用電解液 銀イオントラップ METTLER TOLEDO InLab® Routine 注入口 セーフロック ARGENTHAL比較システム 内蔵温度センサ pH感応ガラス膜 図 11 pH電極(内側)と比較電極(外側)をあわせた典型的な複合電極の構造 1.4. 正しい pH測定 pH測定に必要なツールは、取り扱い方法が単純で、正しく使えば信頼 のための実用ガイド 性のある測定を簡単に行うことができる。そこで注意すべき重要なガイ ドラインを以下に簡潔に説明していく。また、正しく正確な pH測定を 実施するための段階的な方法は、ガイドラインの最後に紹介する。 a) サンプルの準備 測定のためにサンプルを準備する際、いくつか考慮すべき点がある。 一つ目は、サンプルの温度を測定し、その温度を保持することが非常 に重要だということである。なぜなら、サンプルの pHの値は温度に依 存しており、pH電極が温度に依存した測定結果を検知するためである。 この電極の温度依存性は、サンプルごとに温度が記録され、補償され ている限り問題とならない。 11
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二つ目は、pH測定の開始前に、サンプルが均一になるように必ず攪 拌しておくということである。これにより、測定される値が電極の接し ている限られた部分だけではなく、サンプル全体に有効であることを 確実にするのである。また、サンプルは比較電極の液絡部が完全に浸 せる十分な量がなければならない。これは、比較電極の内部液と外部 にあるサンプルの接触を確実にし、電解液がサンプルに流れ出るよう にするために必要である。 また、清潔でサンプル名の明記されたガラス容器を使用する、という ような研究室での基本的なルールが pHを測定する際にも必要である ことは言うまでもない。 b) 校正 pH電極は、定期的に校正する必要がある。少なくとも 1日に 1度、 測定開始前におこなうことを推奨する。校正において、電極のスロー プ(傾き)とオフセットが決定される。 理論上のスロープとオフセットは以下のネルンストの式で表される。 E = E0 + 2.3RT / nF * log [H3O +] = E0 - 2.3RT / nF * pH スロープ(傾き) = 2.3RT / nF オフセット = pH 7.00で 0 mVであるべき 図 12 pH電極のスロープとオフセット 校正は、電極のスロープ(傾き)とオフセットを、使用する測定システ ムを理想値から調整するために必要である。校正直線は、測定された 電極のmV値を測定溶液の pHの値に相関させるために用いられる。 12 Introduction to pH
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mV 理論上の直線 (スロープ-59.16 mV/pH、オフセット: 0mV) オフセット補正 ① スロープとオフセット補正 ① + ② ② ① pH 7 図 13 pH電極によって測定されたmV値とサンプル中の pH値の相関。それぞれの 直線は、理論上の直線、オフセットを補正された直線、スロープとオフセットが補正 された直線を表している。 電極固有の反応に対する特性は、ゼロ点とスロープで決まるため、高 精度で信頼性ある測定をおこなうためには最低 2点での校正を実施す ることを推奨する。広い範囲の pHを測定する場合には、最低 3点で の校正を推奨する。ほとんどの pH計は、3- 5点校正の実施が可能 である。 また、注意すべき重要な点は、選択した校正範囲内でのみサンプルを 測定することである。 電極を校正する際、ほとんどの pHメーターは使用する標準液の種類 を入力するよう求める。標準液のメーカーはさまざまあるが、最も一 般的に使用されている仕様は、通常 pHメーターに表として保存されて いる。表は、標準液グループを各標準液の温度依存性を含めて掲載し ているので、使用する標準液グループを一度に選ぶことができる。メト ラー・トレドの標準液グループの表は別表 5.1に記載した。内蔵、ま たは外部温度センサのどちらも使用しない場合、校正と測定を同じ温 度で実行しなければならないことに留意する必要がある。この場合、 メーターが標準液の温度補正を行えるよう手動で温度を入力する。 校正に使用される標準液は、保証された値と精度を備えた非常に正確 な溶液である。標準液を開封後もできるだけ最適に保つためには、以 下のガイドラインに従うことをお勧めする。 • 最初の使用日(開封日)を標準液の容器に記録する 13
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• 常に標準液の容器の口をきつく締め、容器へ注いだ標準液はすぐに 使用する • 使用した標準液は、決して元の容器に戻したり、別メーカーの校正 標準液と混ぜない • 標準液の容器に汚染物質が混入することを避け、容器は常に密閉する • 校正標準液を室温で保管する • 容器や標準液を直射日光の当たる場所に保管しない • 校正前には電極を洗浄し、標準液の元の容器に直接入れて校正しない • 有効期限の切れた校正標準液や汚染が疑われるものを決して使用し ない • 標準液の有効期限が切れたら、新しいものに交換する 常に、電極の洗浄後、メンテナンス後、再生後、または長期間の保管 後には校正を実施すべきである。なぜなら、これらの行為は pH電極 の電位に影響を与えるためである。 c) pH電極 pH電極は、正しい pHの値の決定に非常に重要な役割を果たしている。 なぜなら、pH電極が実際の pH測定に関与しているからである。その ため、電極のメンテナンスは、電極の耐用期間を最大に延ばし、信用 できる結果を得るために非常に重要である。 電極が、使用後にきちんと洗浄されなかったり、長期にわたって放置 されていたりした場合、電極の正確性と測定の測定精度の低下を招く ことになる。そしてそれは、スロープ(傾き)の減少という形でみられる。 pHの値が 1変わるごとのスロープ値の変化が 50mVを下回る場合(ス ロープ効率性 85%)、またはゼロ点のオフセットが±30mVを超える 場合、調整作業などによって電極を期待するパフォーマンスレベルに回 復させることができるかもしれない。しかし、正しい pH測定を確実に 行うためには電極を取り替える必要がある可能性も頭に入れておくべき であろう。 しかしながら、悪いメンテナンスだけではなく、液絡部の目詰まり、電 解液の不足、ガラス膜の汚染、不適正な校正標準液の使用なども低い スロープや悪いパフォーマンスを引き起こす要因となる。 14 Introduction to pH
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より詳しい電極のメンテナンスについては 2章に記述されている。 温度も電極にとって重要な要素である。サンプル中で測定される電極 の電位は、ある程度このサンプルの温度に依存する。これは、既知の 一次曲線的効果であるため、これは補償することができる。しかし、電 極とサンプル間の温度差による問題が生じる。pH測定は電極とサンプ ル温度が同一になるまで値が安定しない(ドリフト)。測定値が安定す るのは電極とサンプルの温度が同一になったときである。この温度差 に気づかなければ、測定が不安定であると見えたり、不安定であるこ とに気づかなければ、平衡した状態での pH測定が実施できないので ある。 d) 想定される測定精度 測定の正確さは、校正に使用される標準液の正確さ、温度補償がされ たかどうか、サンプルに最適な電極が使用されたか、電極がサンプル と平衡化するのに十分な時間が与えられたか、メーターの正しい終点 /測定点が使用されたかなど、ここに挙げたいくつかの例も含めてさま ざまな要因に影響を受ける。細心の注意を払って測定すれば±0.05 pH以内の精度が得られるはずである。 pH測定の手順 このガイドは、複合 pH電極を使用していることを想定している。ハー フセルの pH電極と比較電極を使用する場合は、両方の電極を測定中 必ず同じ溶液に浸していることを確認する必要がある。また、両方の 電極が同じ pHメーターに接続していることも確認すること。 準備 1) 測定するサンプルに適した電極を選択する。(2章参照) 2) 電極と温度センサを pHメーターに接続する。 校正 3) pHメーターの電源を入れ、校正に適した標準液グループ、また は標準液の値を選ぶ。 4) 温度センサが付いていない場合は、pHメーターを手動温度補正 に設定する。 5) 自動温度補正がされない場合は、正しい標準液の温度を選択する。 15
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6) 校正に十分な量の標準液を清潔なビーカーに注ぐ。 7) pHメーターが標準液自動認識機能を備えてない場合は、校正を する際に標準液が正しい順番で使用されるように注意しなければ ならない。(メトラー・トレドの pHメーターはすべて標準液自動 認識機能を備えている) 8) 電極をホルダーから取り出し、目に見える問題がないか確認する。 電極内の圧力の増減がないか、また電解液がゆっくりとサンプル 中に流出できるように、確実に電解液注入口が開いているかを確 認する。 9) 蒸留水または脱イオン水で電極をすすぐ。 10) 最初の標準液を選び、静かにかき混ぜ、電極をその中に入れる。 11) pHメーターの校正(またはその機能を担う)ボタンを押す。 12) 測定が安定するまで待つ。メトラー・トレドの pHメーターは、値が 安定すると自動的に測定を停止する自動終点機能を搭載している。 13) 電極を標準液から取り出し、すすぐ。 14) 2つ目の標準液を選び、静かにかき混ぜ、電極をその中に入れる。 15) pHメーターの校正ボタンを押す。 16) 測定が終点に達するまで待つ。 17) 電極を標準液から取り出し、すすぐ。 18) 3つ目以降の校正点のためには、9-12のステップを繰り返す。校 正が完了したら、pHメーターの適切なボタンを押して校正作業を 終了する。 19) 電極を標準液から取り出し、すすぎ、ホルダーに保管する。 20) メーターの校正結果を検証する。 21) その結果が適切と判断できるものであれば、結果を保存する。 測定 1) 測定用ビーカーに十分なサンプル溶液を注ぎ、その表面が電極の 液絡部より上に位置するようにする。 2) サンプル温度は、事前に測定しておくか、内蔵 /外部温度センサ で pH測定中に同時に測定できるようにする。 3) サンプル溶液を静かに混ぜ、pH電極をその中に浸す。 4) サンプルと電極の温度が大きく違う場合、pHの測定前に温度差に よるドリフトが起きないよう、温度差がなくなっていることを確認 する。 16 Introduction to pH
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5) pHメーターの測定ボタンを押し、終点で安定するまで待つ。 6) サンプル溶液から電極を取り出し、蒸留水または脱イオン水です すぐ。 7) 他のサンプルについては、1-6のステップを繰り返す。 8) 測定後、電極は蒸留水または脱イオン水ですすぎ、比較電解液中 で保管しなければならない。 17
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2. 電極の選択と取り扱い 最適な条件での pH測定を可能にするためには、まず最初に正しい電 極を選ぶ必要がある。最も考慮すべき重要なサンプルの性質や条件は、 化学組成、均一性(混ざり方)、温度、pHの範囲、容器のサイズ(長 さと幅の制限)である。特に、一般的な通常のガラス電極に悪影響を 及ぼしやすい非水性、低導電性、高蛋白、粘性の強いサンプルの測定 には、電極の選択が非常に重要となる。電極の反応時間と正確さは、 さまざまな要因に依存する。極端な pHの値や温度、または低導電性 のサンプル測定は、室温、および中性で測定するよりも時間がかかる のである。 種類の違うサンプルへの対応方法について、いくつかの電極の特性を もとに以下に示す。この章でも主に複合 pH電極について説明する。 2.1. 液絡部の種類 a) セラミック液絡部 pH電極の比較部には、サンプルとの接触を保持するための開口部が あり、これにはいくつかの異なるタイプがある。これらは、さまざまな サンプルの測定において電極に求められる数々の条件に対応するため に、時間とともに徐々に改善され進化してきた。最も「標準的」な液 絡部は、セラミック液絡部(または、セラミックジャンクション)として 知られている。この液絡部は、電極のガラスシャフトに埋め込まれた多 孔性のセラミック材でできている。この多孔性セラミックは、比較電解 液が電極から大量に流出することなくゆっくりと流出することを可能にし ている。このような液絡部は、標準的な水溶液の測定に大変適している。 メトラー・トレドの InLab®Routine Proはこのセラミックを液絡部に持 つ電極の一例である。この液絡部の構造の概略を以下の図 14に示す。 図 14 セラミック液絡部を備えた電極 18 Electrode selection and handling
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セラミック液絡部は簡単に水溶液の測定に使用できるため、最も広く 使用されている液絡部だが、ひとつ大きな欠点がある。多孔性構造の ため、粘性サンプルや懸濁液を測定した場合に、液絡部が目詰まりし やすいのである。 中でも蛋白質の濃度の高いサンプルは、塩化カリウム(KCl)を含んで いる比較電解液と接触した際に、多孔性液絡部内で沈殿する可能性が あるため、注意が必要である。沈殿した蛋白質で多孔性構造の液絡部 を詰まらせると、電極が使用不能となってしまう。電解液が自由に流出 しなければ、比較電極の電位が安定しなくなるため、測定はできない。 この目詰まりの問題は、比較電解液と測定中のサンプル溶液が液絡部 で反応し、沈殿物を形成した場合に起こる。例えば、塩化銀(AgCl) で飽和状態にある塩化カリウム電解液が硫化物を含むサンプルと一緒 に使用された場合、銀と硫化物は、硫化銀(Ag2S)を形成し、これが セラミック液絡部を目詰まりさせる。 b) スリーブ型液絡部 /すりガラス製液絡部 セラミック液絡部には限界があり、複雑な状態のサンプルの測定には適 さないため、そのようなサンプルの測定を可能にする違ったタイプの液 絡部が開発された。粘性サンプルや懸濁液の測定には、簡単に詰まらず、 かつ簡単に洗浄ができる大きな液絡部で対応することができる。 このような液絡部がスリーブ型液絡部である。この液絡部は、すりガラ ス製の電極シャフトが、すりガラス、またはプラスチック製のスリーブ で覆われてできている。電解液は、そのスリーブが覆う穴を通して電 極から流出する。比較電極から流出する電解液を一定にするために、 スリーブを上下させて調節することができる。すりガラス製の液絡部を 図 15に図示する。メトラー・トレドでは、InLab®Scienceなどのスリー ブ型電極を提供している。 この液絡部は、電解液の流れがセラミック液絡部より速く、イオン濃度 の低い媒体のようなサンプルを測定する際に有効である。また、この タイプの液絡部を用いた電極は、スリーブを完全に動かして持ち上げ ることができるので洗浄が非常に簡単で、すべての汚れを脱イオン水 とティッシュで液絡部から除去し、洗浄することが可能である。(pH感 応ガラス膜に触れなければ!)このタイプの液絡部は、より強く電解液 が流れるため、液絡部自体がある程度自然に洗浄される「セルフクリー ニング」型といえる。 19