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車載センサー類の信頼性を確保する効果的な汚れやウォータマネージメントの性能設計
最新の車両では、先進技術、自律走行、電動化、運転支援システムなどが搭載されており、センサー類の増加が大きなトレンドとなっています。自律走行車は、車両の後退、ジャンクションへの合流や離脱、衝突の脅威の検知など、さまざまな操作状況に直面します。カメラやセンサーが正常に動作するためには、汚れがないことが前提となりますが、実走行の環境では、様々な要因で汚れていきます。直接的な汚れは主に雨で、間接的な汚れは、前方や通過した車から跳ね上げた泥・小石・土・水の飛散により発生します。 また、自車のタイヤが飛散させた発生源が汚れにつながり、前輪からの飛散は、前輪から後輪までのボディサイドに「デポジットゾーン」を形成し、後輪からの飛散は、車両背面の汚れの主な原因となります。
SIMULIA PowerFLOWは、気流中への粒子の放出を動的に可視化し、表面に付着するまでの粒子の軌跡を計算することができます。塵、埃、小石、水などをシミュレーションに含めることができ、車両が汚れ粒子とどのように相互作用するかを明確に把握する事ができ、設計段階で車両表面の汚れをより適切に管理することができます。
このカタログについて
ドキュメント名 | 車載センサー類の信頼性を確保する汚れの性能設計 |
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ドキュメント種別 | ホワイトペーパー |
ファイルサイズ | 2.1Mb |
登録カテゴリ | |
取り扱い企業 | ダッソー・システムズ株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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車載センサー類の信頼性を確保する効果的な
汚れやウォータマネージメントの性能設計
車載センサー類の信頼性を確保する効果的な汚れ ADASシステムが普及していなかった時代には、汚れはドラ
やウォータマネージメントの性能設計 イバーの視界などの安全性に関わる問題でしたが、それは
技術・イノベーションのコンサルティング会社である 主にガラスやミラーに限られていました。その他の部分の
INVENSITY社の調査によると、現在の環境下では、ADAS( 表面汚れは、主に美観の問題でした。しかし、自律走行車
先進運転支援システム)の統合と自律性の向上に向けたト (AV車)をはじめとするADASシステムの普及に伴い、カメラ
レンドが進んでおり、自動車業界におけるイノベーション やセンサーの性能を阻害することから車両表面の汚れは乗
の90%はエレクトロニクスとソフトウェアによってもたら 員や交通安全の問題にもなります。そのため、ADASや自律
されているという。ADASシステムは、ドライバーをサポー 走行車(AV車)に取り組んでいる自動車業界の多くは、設計
トするために一般的な自動車に追加され、ほとんどの通常 の初期段階で汚れの問題を見つけようとしています。
のシナリオで支援を提供するように設計されています これらの研究や実験は、現在、表面の汚れや水の管理条件
しかしながら、これらのデバイスは、車両操作に対して第 を制御した環境風洞で行われています。しかし、これらの
一義的な責任持つドライバーを支援するために設計されて 風洞は人工的な環境であり、実際の道路や気候条件を表し
います。 一方、今後登場する自律走行車(AV)では、これ ているわけではなく、また、運転時にコストと時間が非常
らのデバイスは、ナビゲーションと安全のための主要な手 にかかります。
段となります。そのため、ADASシステムには、正確なリア
ルタイム認識が求められ、通常時や極限時を問わず、あら ここで幾つかの問いが出てきます: カメラやセンサーの汚
ゆる状況下で完璧な性能を発揮しなければなりません。 れを防ぐために、費用対効果の高い方法はあるのか? 最適
なパフォーマンスを得るために、センサーはどこに配置す
ここ数十年間で低燃費の車が求められるようになってきま べきか? また、センサーが正常に動作するためにはどうす
した。その結果、空気抵抗低減のため車両は、より空力的 ればよいのか? 泥などの汚れがカメラにかかることは避け
なデザインがされてきました。これは主に、車両の後流を られないが、車両がカメラに接触する場所や方法をコント
改善する事、即ちアンダーボディからの空気がより多く車 ロールすることは可能か?
両後部に巻き上げる事で達成されます。しかしながら、車
体下部からの空気には、汚れや砂が混ざった水が多く、空
気とともに車体後部や側面に付着します。
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なぜセンサー類が必要なのか、どのようにして汚 SIMULIAソリューションを用いたソイリング&ウ
れていくのか? ォータマネージメント
最新の車両では、先進技術、自律走行、電動化、運転支援 SIMULIAは、さまざまなソイリングやウォータマネージメ
システムなどが搭載されており、今日、センサー類の増加 ントの現象を検討するためのソリューションを提供してい
が大きなトレンドとなっています。自律走行車は、車両の ます。 PowerFLOWを使用し、詳細な空力と粒子の流れのシ
後退、ジャンクションへの合流や離脱、衝突の脅威の検知 ミュレーションを行い、車両設計の目標を評価することが
など、さまざまな操作状況に直面します。自律走行車に搭 できます。PowerFLOWのシミュレーション結果をPowerVIZ
載されたカメラとセンサーは、目となり耳となり、それな で表示することで、気流中への粒子の放出を動的に可視化
しでは自律走行は不可能です。カメラやセンサーが正常に し、表面に衝突するまでの粒子の軌跡を計算することがで
動作するためには、汚れがないことが前提となりますが、 きます。塵、埃、小石、水などをシミュレーションに含め
それらが配置されている環境は、そのような環境ではあり ることができ、車両が汚れ粒子とどのように相互作用する
ません。 かを明確に把握する事ができ、自動車メーカーは車両表面
このようなセンサーやカメラの汚れは、その発生現象によ の汚れをより適切に管理することができます。 また、表
り、直接的な汚れ、間接的な汚れ、自車自身による汚れの 面特性を定義することで、粒子が表面で反射し、エンジン
いずれかになります。直接的な汚れは主に雨で、間接的な ルーム内や車両表面の複雑な流れのパスを再現する事が出
汚れは、前方や通過した車から跳ね上げた泥・小石・土・ 来ます。
水の飛散により発生します。 また、自車のタイヤが飛散さ 今回のケースでは、車載カメラの位置を変えた3つのシナリ
せた発生源が汚れにつながり、前輪からの飛散は、前輪か オを考えました。
ら後輪までのボディサイドに「デポジットゾーン」を形成
し、後輪からの飛散は、車両背面の汚れの主な原因となり
ます。
サラウンドビューカメラ(フロント、リア、ブラインドス シナリオ1:リアビューカメラに泥やダートが堆積
ポット検出カメラ)は、通常、悪環境に直接さらされてい 1つ目のシナリオでは、主に自車のリアタイヤによる巻
ます。特に、カメラのレンズが雨にさらされると、カメラ き上げが原因で、リアビューカメラ上にダートや泥が
の性能が低下します。これは、ドライバーの視界とカメラ 堆積されることをシミュレーションします。
の性能の両方を低下させることにつながり、重大な安全上
の問題となります。
シナリオ2:BLIS(ブラインドスポットインフォメー
ションシステム)サイドミラーカメラへの雨水の付着
この問題にどのように対処するのか? 2つ目のシナリオでは、雨天時にBLIS(ブラインドス
ダートや水、その他の汚れ物質は、道路を走行する上で現 ポットインフォメーションシステム)サイドミラーカ
実的に存在します。これを防ぐことはできませんが、汚れ メラの上に雨水が付着する様子をシミュレーションし
と上手に付き合うようにクルマをデザインすることはでき ます。雨水の粒子がどのように振る舞い、カメラレン
ます。センサーやカメラを清潔に保つためのソリューショ ズと相互作用するかを、ドアミラーのデザインに合わ
ンはいくつかあります。 せてシミュレーションすることができます。
例えば、水を噴射した後に空気を送り込むことでレンズを
自動洗浄する方法や、レンズにコーティングを施す方法な
どがあります。しかし、コーティング剤は長持ちせず、非 シナリオ3:フロントカメラへの飛び石
常に高価です。また、洗浄剤を追加することで重量が増 3つ目のシナリオでは、通過する車から飛んでくる石片
え、燃費が悪くなり、ランニングコストも高くなります。 が車両のフロントカメラに衝突し、その視認性や機能
これに対して、雨やダート、虫、小石などが車両のどこに に影響を与える仕組みを理解することに取り組みまし
あたるかを予測し、センサーの位置を最適化したり、カメ た。
ラの汚れを最小限にするために車両の設計変更を提案した
りすることができます。さらに、デザイン変更やカメラ位
置の変更が、車両の空力性能、ひいては燃費にどのような
影響を与えるかを予測することもできます。
究極のアイデアは、センサーを最適に配置して、汚れの付
着を最小限に抑え、水にさらされることのない車を作るこ
とです。しかし、それでも外部の洗浄装置が必要な場合
は、その位置を最適化することができます。
“表面に高価なコーティングを施すか、センサーを数センチ
移動させるかは、常にバランスが必要です。私たちはその
お手伝いができます。”
[Article: The shape of water: how soil and fluid
simulation can save OEMs millions]
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結果
Ⅰ. リア&サイドボディの汚れ
リアビューカメラは、リバーシングカメラとも呼ばれ、車両
または、ドライバーの車両後方エリアの視界を確認するのに
役立ち 後部の死角の視界を改善します。視界が広がること
で、後退時の衝突を防ぐことができます。ベースラインデザ
インの車では、後輪が巻き上げた汚れの粒子がリア表面に堆
積してリアカメラの視界を遮り、乗員にとって安全でないド
ライビング体験になります。 本検討では、カメラの位置やナ
ンバープレートなど、最もセンシティブな場所から汚れ物質
を再分布させることを目的として車両のアンダーボディの設
計変更を提案します。 下図に示すように、アンダーボディデ
ィフューザーの曲率を上向きに変更します。
多くの地域では、マッドフラップが車両の汚れを軽減する
と考えられているため、アフターマーケット製品として
追加されています。しかし、我々の調査によると、実際に
は車両ボディサイドの汚れの高さが増加していることが分
かりました。下図のように、ドアハンドルまで汚れが付着
し、消費者の手や服がハンドルに触れることで汚れてしま
うのです。
Ⅱ. 雨滴による汚れ
ベースラインデザインでは、後輪のウェークに影響する流線 通常、自動車のサイドドアミラーの下部に取り付けられて
がベースのウェーク下部と相互作用します。この相互作用 いるBLIS(ブラインドスポットインフォメーションシステ
は、汚れ物質をウェーク内に巻き上がる可能性がある流れの ム)カメラは、他の車両を監視し、自律走行車が死角にな
メカニズムであることを意味します。一方、後輪のロワアー っている場所でも周囲の状況を確認できるようにするもの
ム部のディフューザーを変更するとリアウェークの巻き上げ です。雨滴がドアミラーのハウジングにあたると、雨滴は
が下部に移動し、その結果、よりバランスのとれた後輪が得 ミスト状になりミラーのウェーク流れの影響を受けます。
られます。 その結果、サイドミラーやカメラレンズに雨粒が付着し、
以下に示す背面のフィルム厚さの図は、ベースラインデザイ サイドミラーやカメラの視界が遮られてしまいます。ベー
ンと変更後のデザインを定性的に比較したものです。 アン スラインデザインでは、大量の雨滴がミラーとカメラレン
ダーボディディフューザーの設計変更により、背面の汚れの ズに堆積し、視界に影響を与えています(下の2番目の図を
分布が変化し、リアウィンドシールド上のレベルも変化して 参照)。サイドガラスにあたった雨滴の軌跡を可視化する
いることがわかります。これは、背面の一部領域が他の部分 と、ほとんどの雨滴がドアミラーアームの下部から来てい
よりも汚れにくいという重要な事を示しています。例えば、 ることがわかります。そのため、ドアミラーアームを下図
カメラ、ナンバープレート、リアゲートハンドルなどは、 のように変更してウェーク流れを変化させ、ミラーやカメ
汚れにくくする必要がある部位ですが、設計の初期段階の ラレンズの汚れを軽減しています。
わずかな設計変更により、これを実現することができまし
た。
この検討は、車両設計において空力的な影響を考慮するこ
とで、表面の汚れ物質を最も影響を受けやすい領域から離
すことが可能であることを示しています。 しかし、この検
討の最初のステップでは、背面の汚れを十分に低減するこ
とができなかったため、より良い結果を得るための変更を
見つけ出せるよう系統的なデザイン検討を進めています。
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ミラーやカメラに付着する雨滴のフィルム厚さをみると、
ドアミラーアームの設計変更により、ミラーやカメラレン
ズに付着する雨滴の汚れが大幅に減少していることがわか
ります。
結論
多くの地域では、マッドフラップが車両の汚れを軽減する シミュレーション技術は、悪条件下の気候や道路状況で車
と考えられているため、アフターマーケット製品として Ⅲ. 走行中の車両からの飛び石 両に搭載されたセンサーの性能を評価する上で非常に有用
追加されています。しかし、我々の調査によると、実際に です。自動車メーカーは、車体への汚れの付着を低減する
は車両ボディサイドの汚れの高さが増加していることが分 車のフロントカメラは、駐車場のブロックや縁石など、危 方法や、雨滴がカメラの視界を妨げないようにする方法の
かりました。下図のように、ドアハンドルまで汚れが付着 険性のある障害物にぶつからないように設計されています 検討に多大な努力を払っています。
し、消費者の手や服がハンドルに触れることで汚れてしま が、カメラが損傷する最も一般的な原因は、他車からの小
うのです。 石や砂利による飛び石です。 これらの小さくて硬い破片 本検討では、汚れ、雨、および走行車両のタイヤからの飛
は、高速で飛散され近くを通行している他の車の重要部品 び石による車両の後部、側面および前方の汚れや損傷の可
を傷つけてしまいます。 また、自動車の下回りを腐食させ 能性を検討するためのシミュレーション手法を提示しまし
る原因にもなり、外装上も好ましくありません。 た。 また、この検討は、車のさまざまな場所に配置された
3台のカメラを対象に実施しました。さらに、カメラの汚
この検討は、フロントカメラの位置を最適化することを目 れを軽減し、きれいに保つための設計変更も提案していま
的としたシミュレーションを行いました。 このシミュレー す。
ションでは,先行車のタイヤからの飛び石によるフロント
カメラの損傷を最小限に抑えることを目指しました。 下図 今回実施した手順は、車両開発の初期段階で仮想的に試験
に示すように,ベースラインデザインでは,フロントカメ を行うことで、物理的なプロトタイプやテストが不要にな
ラをロアグリルの上部に配置していますが、シミュレーシ るという利点があります。特に、多数のセンサーが必要な
ョンの結果から飛び石によりカメラが損傷を受けやすいこ 先進運転支援システム(ADAS)や自律走行車(AV)では、
とが分かりました。また、シミュレーション結果から得ら このような方法が有効です。 これらの設計変更が車両の空
Ⅱ. 雨滴による汚れ れたヒットポイントの分布では、前方車両のタイヤからの 力性能に及ぼす影響については、今回の検討範囲外であり
飛び石がどの位置に衝突しにくいかが明確に示されていま ましたが、外装上の汚れ減少と空気抵抗の増加との間でト
通常、自動車のサイドドアミラーの下部に取り付けられて す。分析結果からヒットポイントの分布を比較して、カメ レードオフを行う必要があるかもしれません。
いるBLIS(ブラインドスポットインフォメーションシステ ラの位置をアッパーグリルの下側に移動させました。 同様
ム)カメラは、他の車両を監視し、自律走行車が死角にな の検討は、設計の初期段階でカメラの位置を最適化し、設
っている場所でも周囲の状況を確認できるようにするもの 計プロセスの後半で変更した場合に発生しうるコスト高を
です。雨滴がドアミラーのハウジングにあたると、雨滴は 回避するために非常に有効です。
ミスト状になりミラーのウェーク流れの影響を受けます。
その結果、サイドミラーやカメラレンズに雨粒が付着し、
サイドミラーやカメラの視界が遮られてしまいます。ベー
スラインデザインでは、大量の雨滴がミラーとカメラレン
ズに堆積し、視界に影響を与えています(下の2番目の図を
参照)。サイドガラスにあたった雨滴の軌跡を可視化する
と、ほとんどの雨滴がドアミラーアームの下部から来てい
ることがわかります。そのため、ドアミラーアームを下図
のように変更してウェーク流れを変化させ、ミラーやカメ
ラレンズの汚れを軽減しています。
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