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Form 2採用事例:株式会社クリエイティブボックス

事例紹介

「Form 2」の扱いやすさとスピードがデザインの試行サイクルを加速する

株式会社クリエイティブボックス(CREATIVE BOX Inc.)は、日産自動車株式会社の100%子会社として1987 年に設立され、現在の社長は日産自動車のグローバルデザイン担当 専務執行役員のアルフォンソ・アルバイサ氏が務める。日産自動車が世界中に持つデザイン拠点のうち、神奈川県厚木市にある日産グローバルデザインセンターのサテライトスタジオという位置付けだ。

一般的に自動車のデザインは、外側であるエクステリアデザインと内側のインテリアデザインで担当が分かれており、形状のみをデザインする仕事であることが多い。ところがクリエイティブボックスでは、形状だけではなく、コンセプトメイキングやグラフィック、グッズ、さらにはブースや空間デザインなど、一人のデザイナーがマルチに担当している。このようなやり方は自動車業界では珍しく、一風変わったデザインスタジオだ。  

そのクリエイティブボックスにおいて、デザインの現場を取り仕切っているのが、クリエイティブデザインマネージャーの西川 満生氏だ。西川氏はクリエイティブボックスに異動した8 年ほど前から、3D プリンタなどのデジタル工作機をデザイン現場に積極的に持ち込み、2017 年春にはFormlabsの光造形(SLA)方式3D プリンタ「Form 2」も導入、ほぼ常時何かを出力しているほどに活用しているという。自動車会社であれば高性能の産業用3D プリンタを利用することも難しくないように思うが、なぜ「Form 2」なのか。常にいままでにないものが求められる、プロダクトデザイン現場ならではの活用理由について尋ねた。

このカタログについて

ドキュメント名 Form 2採用事例:株式会社クリエイティブボックス
ドキュメント種別 事例紹介
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登録カテゴリ
取り扱い企業 Formlabs株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

このカタログの内容

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「Form 2」の扱いやすさとスピードが デザインの試行サイクルを加速する 株式会社クリエイティブボックス(CREATIVE BOX Inc.)は、 日産自動車株式会社の100%子会社として1987年に設立され、 現在の社長は日産自動車のグローバルデザイン担当 専務執行役 員のアルフォンソ・アルバイサ氏が務める。日産自動車が世界中 に持つデザイン拠点のうち、神奈川県厚木市にある日産グロー バルデザインセンターのサテライトスタジオという位置付けだ。 株式会社クリエイティブボックス https://www.creative-box.co.jp/ 一般的に自動車のデザインは、外側であるエクステリアデザイン Form 2 Desktop 3D Printer と内側のインテリアデザインで担当が分かれており、形状のみを デザインする仕事であることが多い。ところがクリエイティブボッ クスでは、形状だけではなく、コンセプトメイキングやグラフィッ ク、グッズ、さらにはブースや空間デザインなど、一人のデザイ ナーがマルチに担当している。このようなやり方は自動車業界で は珍しく、一風変わったデザインスタジオだ。   Form 2 Desktop 3D Printer
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「自動車開発では、デザイナーにはデザイナーのマネージャー 本業以外の仕事で得られる つ、西川氏が大切に考えているポリシーがある。ひとつは、 ターなど、デジタル工作機が置かれ、デザイン業務ではもち デザインの仕事は基本的に試行錯誤なので、いろいろなやり がいてモデラーにはモデラーのマネージャーがいるというよ “ 気付き”を大切に 何かを自分たちでやるということだ。例えばクリエイティブ ろん、クリエイティブなプライベート用途でも活用している。 方があった方が面白いものが生まれると信じていますし、当 うに、業務ごとに組織が分かれているのが普通ですが、私た ボックスでは 2017 年にフロアをリフォームしたが、そのリ これも、西川氏の 2 つのポリシー、自分たちでやってみて失 社のような規模に向いていると考えています」 ちにはマルチスキルを持つ人間、個性の強い人間を集めてい さらに驚くのは、クリエイティブボックスが日産以外の仕事 フォームプランはデザイナー自身が 3D データで作成し、 敗するためと、新しい機械を使うことで新しいデザインが生 て、業務の垣根はありません。一人一人のスキルやアプロー をしてもよいことになっていることだ。これは、自動車以外の VR 環境で検証した上で発注した。その理由は西川氏のデ まれやすくなるという考えにつながっている。 デザイナーが簡単に扱える「Form 2」が、 チはバラバラでも、同じ目標に向かってそれぞれが何かに取 仕事をしたからこそ得られる “ 気付き ” を、本業に転用でき ザイナー教育についての持論だ。 デザイン開発プロセスを変える り組んでいるというのが理想のイメージです。3 つの柱にお れば良いという考えによる。インテリア関連やデバイス開発 新しい道具やプロセスがデザインに影響する例としては、昔 株式会社クリエイティブボックス クリエイティブデザインマネージャー 西川 満生氏 いても、アイデアはただのアイデアではなく皆さんがより新し など車以外のさまざまなプロダクトデザインなど、西川氏ら 「自分たちでやることにフォーカスしているのは、失敗できる は手で描いていた自動車のデザイン画が、コンピュータで 熱溶融積層方式 3D プリンタを 5 年ほど前に導入し、形を いと感じるアイデアにフォーカスしています。ハブとしての役 が面白いと思ったものはジャンルを問わず協力している。西 からです。今のデザイナーのプロセスは、PC ディスプレイ PC ディスプレイ上に描くようになっていくらでも失敗できる 出力するという意味ではある程度満足していたという西川氏 そのクリエイティブボックスにおいて、デザインの現場を取り 割は、外部の人とつながることがポイントではなく『あり得 川氏は会社としての仕事以外に、プライベートでもものづく の中のデータだけ作業するので現実の物ができたとき失敗す ようになり、アイデアを1つ出すときのサイクル数が増えたり、 が、「Form 2」の導入を決定したのは、レジンの豊富さと 仕切っているのが、クリエイティブデザインマネージャーの ないものを組み合わせ、化学反応を促すコアになる』ことが りに興味があり、渋谷の FabCafe でつながった人や誘われ るかどうか分かりにくい。マネージャーに指導されても、ど 粘土で自動車の形を作っていたものが、3D CAD を使うこ 取り扱いの簡便さが理由だ。 西川 満生氏だ。西川氏はクリエイティブボックスに異動した ターゲットです。ラボのプロトタイピングですが、なかなか た活動などにも、積極的に参加している。これも本業に生か こがだめなのか分からないまま進んでいくこともあります。そ とで粘土では表現できないデザインが生まれたりしたことが 8 年ほど前から、3D プリンタなどのデジタル工作機をデザ 大きい会社は失敗をさせてくれません。失敗しないために会 せると考えているからだ。 れが、自分たちでフロアデザインして、建築してもらったも あげられる。 「一番大きな理由は、エンジニアリングレジンと呼ばれる、 イン現場に積極的に持ち込み、2017 年春には Formlabs 議や資料が山のように必要になります。しかし、私たちは『失 のを見ることで『あ、あれは失敗だった』ということに気付 ゴム質のレジンや強靱なレジンが多種多様にあることです。 の光造形(SLA)方式 3D プリンタ「Form 2」も導入、 敗を恐れず新しい提案を』という考え方でやっています」 「東京はすごい人が集まっているので、自動車デザイン以外 けます。失敗すると、次は同じ失敗は絶対しない。デザイナー 「新しいツールは新しいデザインのきっかけにつながります。 光造形機なので出力ももちろん申し分ないのですが、触り心 ほぼ常時何かを出力しているほどに活用しているという。自 のコミュニティーに触れ、実際にコミュニケーションをとるこ は、失敗させないように指導するより、失敗させた方が早く 3D プリンタをいち早く導入したのもその一環です。3D プリ 地なども大事にデザインしたいと考えているので、特殊な材 動車会社であれば高性能の産業用 3Dプリンタを利用するこ 西川氏のデザイン開発に対する考え方は非常にアグレッシブ とで自動車の絵がうまい人ばかりの中だけでは出ないアイデ 確実に成長します」 ンタでデザインのサイクルを回すことで、いままでとは異なる 料が出せるのは大きいですね。実は『Form 1』の頃から注 とも難しくないように思うが、なぜ「Form 2」なのか。常 で、自動車業界の文化とはまったく異なるものだ。クリエイ アにつながっています」 新しいデザインが生まれると期待しています」 目していたのですが、光造形機は薬品を使うので薬品の取り にいままでにないものが求められる、プロダクトデザイン現 ティブボックスをコミュニケーションのハブにしたいというの あ 新しいアイデアは新しいやり方で生み出す 扱いや換気、洗浄など、とにかく取り扱いが大変だというイ 場ならではの活用理由について尋ねた。 も、オープンソースなど開かれた開発手法を取り入れなけれ と クリエイティブボックスが導入した 3D プリンタは光造形 メージを持っていました。それが、Formlabs さんにお話を ば、これからは勝負できないという考えから、社外の人もフ 2 もうひとつは、新しいことをやる、新しいものを作るための (SLA)方式の「Form 2」と熱溶融積層(FFF)方式で、 聞いたり、3D データを試しに出してもらったりしているうち 常に新しいものが求められる現場に ラットに入ってこられるようにすることを目指しているからだ。 方法論だ。 いわゆる産業用の大型機ではない。日産自動車へのデザイ に、メンテナンスはそんなに大変ではなく、デスクトップでも 必要な「失敗」 原宿という立地を生かし外部クリエーターなどともアジャイ ン提案では、従来同様に外部の出力業者に3Dデータを送っ 使えるということが分かって導入を決定しました」 ルなプロトタイピングを進めている。 「クリエイティブボックスへご依頼いただくのは、基本的にい て高品質な出力モデルを作っている。ただ、3D プリンタを 西川氏は日産自動車に入社以来「スカイラインクロスオー ままでとは違う新しいアプローチ実現への期待値が高く、プ 社内に持つことで、外部に出力を依頼する前に自分たちで 3 バー「」NV350キャラバン」など数々のプロジェクトに携わり、 「1 つのゴールに対して、ミーティングを重ねて一歩一歩進 ロセスのひな形はありません。5 人がみっちり 2 週間掛けた ~ 4 回モデルを出力するようになり、最終的なデザインのク 最近の数年では東京モーターショーや海外のモーター み、高い目標のものを作るのが通常のやり方。それを否定は 方がいいと判断すればそうするし、1~ 2 日でやったほうが オリティが向上したという。以前は、PC ディスプレイ上の ショー向けに作るコンセプトカーなど先行開発を担当するな しませんが、1 つの成功のために 10 人で会議を 10 回する いいアイデアが出ると思えばそうします。大きな組織ではマ デジタルデータだけで試行錯誤していたため、外部業者の出 ど、「新しい時代の未来へ向けた自動車を取り巻くデザイン よりも、10 人がバラバラのことを 10 回やった方が面白いも ネージャーが『もっと新しいアイデアない?』で終わりですが、 力が出来上がるまで手触りなどは検証できず、デザイナー自 の提案」といった新しい方向の仕事を手掛けている。クリエ のが生まれると私たちは考えています。3D プリンタもそうで ここでは新しいことを積極的に試していい。その時々でやり 身の勘に頼っていた。自分たちで3~4回出力するようになっ イティブボックスに在席するデザイナー、3D モデルを作る すが、自分たちでどんどんいろんなことを試すのがここのスタ 方も変わりスケジュールも変わります。新しいことをやるには、 たことで、PC ディスプレイ上では分からないことに気付ける デジタルモデラーと呼ばれるデザイン部隊を率いる西川氏の イルです。例えば、今では自動車業界に当たり前になった 新しいやり方をするのが一番早いというのが私の考えです」 ようになったからだという。 方針は、「新しい価値を創造するためには何をやってもいい」 VR を使った開発も、敏速に導入、検証し有用性や活用方 と、およそ大会社の組織のイメージとはかけ離れたものだ。 法などを本社に提案したりしています」 クリエイティブボックスの 1 階はラボラトリーフロアで、例え 「デジタルデータだけでも良いデザインはできると思います 西川氏の着任後、クリエイティブボックスは “クリエイション” ば東京モーターショーのモデルを作るときは車のモデルを入 し、そういうスタイルがあってもいい。ただ、業界全体がデ (アイデア)、”“ハブ(” 外部とのつながり)、“ラボラトリー(” 研 れていろいろ検討したり、オープンなスペースとして外部の ジタル寄りなので、そうではないスタイル、ものづくりのい 究開発やプロトタイピング)、という大きく3 つの柱を立てて 人との交流にも使われたりしているが、ガラスで囲まれた一 わゆるフィジカルと呼ばれる実際手を動かす部分と、効率的 進んでいる。 角には「Form 2」をはじめとして3Dプリンタやレーザーカッ なデジタルの部分のフュージョン(融合)を目指しています。
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「自動車開発では、デザイナーにはデザイナーのマネージャー 本業以外の仕事で得られる つ、西川氏が大切に考えているポリシーがある。ひとつは、 ターなど、デジタル工作機が置かれ、デザイン業務ではもち デザインの仕事は基本的に試行錯誤なので、いろいろなやり がいてモデラーにはモデラーのマネージャーがいるというよ “ 気付き”を大切に 何かを自分たちでやるということだ。例えばクリエイティブ ろん、クリエイティブなプライベート用途でも活用している。 方があった方が面白いものが生まれると信じていますし、当 うに、業務ごとに組織が分かれているのが普通ですが、私た ボックスでは 2017 年にフロアをリフォームしたが、そのリ これも、西川氏の 2 つのポリシー、自分たちでやってみて失 社のような規模に向いていると考えています」 ちにはマルチスキルを持つ人間、個性の強い人間を集めてい さらに驚くのは、クリエイティブボックスが日産以外の仕事 フォームプランはデザイナー自身が 3D データで作成し、 敗するためと、新しい機械を使うことで新しいデザインが生 て、業務の垣根はありません。一人一人のスキルやアプロー をしてもよいことになっていることだ。これは、自動車以外の VR 環境で検証した上で発注した。その理由は西川氏のデ まれやすくなるという考えにつながっている。 デザイナーが簡単に扱える「Form 2」が、 チはバラバラでも、同じ目標に向かってそれぞれが何かに取 仕事をしたからこそ得られる “ 気付き ” を、本業に転用でき ザイナー教育についての持論だ。 デザイン開発プロセスを変える り組んでいるというのが理想のイメージです。3 つの柱にお れば良いという考えによる。インテリア関連やデバイス開発 新しい道具やプロセスがデザインに影響する例としては、昔 いても、アイデアはただのアイデアではなく皆さんがより新し など車以外のさまざまなプロダクトデザインなど、西川氏ら 「自分たちでやることにフォーカスしているのは、失敗できる は手で描いていた自動車のデザイン画が、コンピュータで 熱溶融積層方式 3D プリンタを 5 年ほど前に導入し、形を いと感じるアイデアにフォーカスしています。ハブとしての役 が面白いと思ったものはジャンルを問わず協力している。西 からです。今のデザイナーのプロセスは、PC ディスプレイ PC ディスプレイ上に描くようになっていくらでも失敗できる 出力するという意味ではある程度満足していたという西川氏 そのクリエイティブボックスにおいて、デザインの現場を取り 割は、外部の人とつながることがポイントではなく『あり得 川氏は会社としての仕事以外に、プライベートでもものづく の中のデータだけ作業するので現実の物ができたとき失敗す ようになり、アイデアを1つ出すときのサイクル数が増えたり、 が、「Form 2」の導入を決定したのは、レジンの豊富さと 仕切っているのが、クリエイティブデザインマネージャーの ないものを組み合わせ、化学反応を促すコアになる』ことが りに興味があり、渋谷の FabCafe でつながった人や誘われ るかどうか分かりにくい。マネージャーに指導されても、ど 粘土で自動車の形を作っていたものが、3D CAD を使うこ 取り扱いの簡便さが理由だ。 西川 満生氏だ。西川氏はクリエイティブボックスに異動した ターゲットです。ラボのプロトタイピングですが、なかなか た活動などにも、積極的に参加している。これも本業に生か こがだめなのか分からないまま進んでいくこともあります。そ とで粘土では表現できないデザインが生まれたりしたことが 8 年ほど前から、3D プリンタなどのデジタル工作機をデザ 大きい会社は失敗をさせてくれません。失敗しないために会 せると考えているからだ。 れが、自分たちでフロアデザインして、建築してもらったも あげられる。 「一番大きな理由は、エンジニアリングレジンと呼ばれる、 イン現場に積極的に持ち込み、2017 年春には Formlabs 議や資料が山のように必要になります。しかし、私たちは『失 のを見ることで『あ、あれは失敗だった』ということに気付 ゴム質のレジンや強靱なレジンが多種多様にあることです。 の光造形(SLA)方式 3D プリンタ「Form 2」も導入、 敗を恐れず新しい提案を』という考え方でやっています」 「東京はすごい人が集まっているので、自動車デザイン以外 けます。失敗すると、次は同じ失敗は絶対しない。デザイナー 「新しいツールは新しいデザインのきっかけにつながります。 光造形機なので出力ももちろん申し分ないのですが、触り心 ほぼ常時何かを出力しているほどに活用しているという。自 のコミュニティーに触れ、実際にコミュニケーションをとるこ は、失敗させないように指導するより、失敗させた方が早く 3D プリンタをいち早く導入したのもその一環です。3D プリ 地なども大事にデザインしたいと考えているので、特殊な材 動車会社であれば高性能の産業用 3Dプリンタを利用するこ 西川氏のデザイン開発に対する考え方は非常にアグレッシブ とで自動車の絵がうまい人ばかりの中だけでは出ないアイデ 確実に成長します」 ンタでデザインのサイクルを回すことで、いままでとは異なる 料が出せるのは大きいですね。実は『Form 1』の頃から注 とも難しくないように思うが、なぜ「Form 2」なのか。常 で、自動車業界の文化とはまったく異なるものだ。クリエイ アにつながっています」 新しいデザインが生まれると期待しています」 目していたのですが、光造形機は薬品を使うので薬品の取り にいままでにないものが求められる、プロダクトデザイン現 ティブボックスをコミュニケーションのハブにしたいというの あ 新しいアイデアは新しいやり方で生み出す 扱いや換気、洗浄など、とにかく取り扱いが大変だというイ 場ならではの活用理由について尋ねた。 も、オープンソースなど開かれた開発手法を取り入れなけれ と クリエイティブボックスが導入した 3D プリンタは光造形 メージを持っていました。それが、Formlabs さんにお話を ば、これからは勝負できないという考えから、社外の人もフ 2 もうひとつは、新しいことをやる、新しいものを作るための (SLA)方式の「Form 2」と熱溶融積層(FFF)方式で、 聞いたり、3D データを試しに出してもらったりしているうち 常に新しいものが求められる現場に ラットに入ってこられるようにすることを目指しているからだ。 方法論だ。 いわゆる産業用の大型機ではない。日産自動車へのデザイ に、メンテナンスはそんなに大変ではなく、デスクトップでも 必要な「失敗」 原宿という立地を生かし外部クリエーターなどともアジャイ ン提案では、従来同様に外部の出力業者に3Dデータを送っ 使えるということが分かって導入を決定しました」 ルなプロトタイピングを進めている。 「クリエイティブボックスへご依頼いただくのは、基本的にい て高品質な出力モデルを作っている。ただ、3D プリンタを 西川氏は日産自動車に入社以来「スカイラインクロスオー ままでとは違う新しいアプローチ実現への期待値が高く、プ 社内に持つことで、外部に出力を依頼する前に自分たちで 3 バー「」NV350キャラバン」など数々のプロジェクトに携わり、 「1 つのゴールに対して、ミーティングを重ねて一歩一歩進 ロセスのひな形はありません。5 人がみっちり 2 週間掛けた ~ 4 回モデルを出力するようになり、最終的なデザインのク 最近の数年では東京モーターショーや海外のモーター み、高い目標のものを作るのが通常のやり方。それを否定は 方がいいと判断すればそうするし、1~ 2 日でやったほうが オリティが向上したという。以前は、PC ディスプレイ上の ショー向けに作るコンセプトカーなど先行開発を担当するな しませんが、1 つの成功のために 10 人で会議を 10 回する いいアイデアが出ると思えばそうします。大きな組織ではマ デジタルデータだけで試行錯誤していたため、外部業者の出 ど、「新しい時代の未来へ向けた自動車を取り巻くデザイン よりも、10 人がバラバラのことを 10 回やった方が面白いも ネージャーが『もっと新しいアイデアない?』で終わりですが、 力が出来上がるまで手触りなどは検証できず、デザイナー自 の提案」といった新しい方向の仕事を手掛けている。クリエ のが生まれると私たちは考えています。3D プリンタもそうで ここでは新しいことを積極的に試していい。その時々でやり 身の勘に頼っていた。自分たちで3~4回出力するようになっ イティブボックスに在席するデザイナー、3D モデルを作る すが、自分たちでどんどんいろんなことを試すのがここのスタ 方も変わりスケジュールも変わります。新しいことをやるには、 たことで、PC ディスプレイ上では分からないことに気付ける デジタルモデラーと呼ばれるデザイン部隊を率いる西川氏の イルです。例えば、今では自動車業界に当たり前になった 新しいやり方をするのが一番早いというのが私の考えです」 ようになったからだという。 方針は、「新しい価値を創造するためには何をやってもいい」 VR を使った開発も、敏速に導入、検証し有用性や活用方 と、およそ大会社の組織のイメージとはかけ離れたものだ。 法などを本社に提案したりしています」 クリエイティブボックスの 1 階はラボラトリーフロアで、例え 「デジタルデータだけでも良いデザインはできると思います 西川氏の着任後、クリエイティブボックスは “クリエイション” ば東京モーターショーのモデルを作るときは車のモデルを入 し、そういうスタイルがあってもいい。ただ、業界全体がデ (アイデア)、”“ハブ(” 外部とのつながり)、“ラボラトリー(” 研 れていろいろ検討したり、オープンなスペースとして外部の ジタル寄りなので、そうではないスタイル、ものづくりのい 究開発やプロトタイピング)、という大きく3 つの柱を立てて 人との交流にも使われたりしているが、ガラスで囲まれた一 わゆるフィジカルと呼ばれる実際手を動かす部分と、効率的 進んでいる。 角には「Form 2」をはじめとして3Dプリンタやレーザーカッ なデジタルの部分のフュージョン(融合)を目指しています。 西川氏がデザインし、ゴムのような特性を持つFlexibleレジンで作成された ドローン用コントローラのオリジナルスティック
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「自動車開発では、デザイナーにはデザイナーのマネージャー 本業以外の仕事で得られる つ、西川氏が大切に考えているポリシーがある。ひとつは、 ターなど、デジタル工作機が置かれ、デザイン業務ではもち デザインの仕事は基本的に試行錯誤なので、いろいろなやり がいてモデラーにはモデラーのマネージャーがいるというよ “ 気付き”を大切に 何かを自分たちでやるということだ。例えばクリエイティブ ろん、クリエイティブなプライベート用途でも活用している。 方があった方が面白いものが生まれると信じていますし、当 うに、業務ごとに組織が分かれているのが普通ですが、私た ボックスでは 2017 年にフロアをリフォームしたが、そのリ これも、西川氏の 2 つのポリシー、自分たちでやってみて失 社のような規模に向いていると考えています」 ちにはマルチスキルを持つ人間、個性の強い人間を集めてい さらに驚くのは、クリエイティブボックスが日産以外の仕事 フォームプランはデザイナー自身が 3D データで作成し、 敗するためと、新しい機械を使うことで新しいデザインが生 て、業務の垣根はありません。一人一人のスキルやアプロー をしてもよいことになっていることだ。これは、自動車以外の VR 環境で検証した上で発注した。その理由は西川氏のデ まれやすくなるという考えにつながっている。 デザイナーが簡単に扱える「Form 2」が、 チはバラバラでも、同じ目標に向かってそれぞれが何かに取 仕事をしたからこそ得られる “ 気付き ” を、本業に転用でき ザイナー教育についての持論だ。 デザイン開発プロセスを変える り組んでいるというのが理想のイメージです。3 つの柱にお れば良いという考えによる。インテリア関連やデバイス開発 新しい道具やプロセスがデザインに影響する例としては、昔 いても、アイデアはただのアイデアではなく皆さんがより新し など車以外のさまざまなプロダクトデザインなど、西川氏ら 「自分たちでやることにフォーカスしているのは、失敗できる は手で描いていた自動車のデザイン画が、コンピュータで 熱溶融積層方式 3D プリンタを 5 年ほど前に導入し、形を いと感じるアイデアにフォーカスしています。ハブとしての役 が面白いと思ったものはジャンルを問わず協力している。西 からです。今のデザイナーのプロセスは、PC ディスプレイ PC ディスプレイ上に描くようになっていくらでも失敗できる 出力するという意味ではある程度満足していたという西川氏 そのクリエイティブボックスにおいて、デザインの現場を取り 割は、外部の人とつながることがポイントではなく『あり得 川氏は会社としての仕事以外に、プライベートでもものづく の中のデータだけ作業するので現実の物ができたとき失敗す ようになり、アイデアを1つ出すときのサイクル数が増えたり、 が、「Form 2」の導入を決定したのは、レジンの豊富さと 仕切っているのが、クリエイティブデザインマネージャーの ないものを組み合わせ、化学反応を促すコアになる』ことが りに興味があり、渋谷の FabCafe でつながった人や誘われ るかどうか分かりにくい。マネージャーに指導されても、ど 粘土で自動車の形を作っていたものが、3D CAD を使うこ 取り扱いの簡便さが理由だ。 西川 満生氏だ。西川氏はクリエイティブボックスに異動した ターゲットです。ラボのプロトタイピングですが、なかなか た活動などにも、積極的に参加している。これも本業に生か こがだめなのか分からないまま進んでいくこともあります。そ とで粘土では表現できないデザインが生まれたりしたことが 8 年ほど前から、3D プリンタなどのデジタル工作機をデザ 大きい会社は失敗をさせてくれません。失敗しないために会 せると考えているからだ。 れが、自分たちでフロアデザインして、建築してもらったも あげられる。 「一番大きな理由は、エンジニアリングレジンと呼ばれる、 イン現場に積極的に持ち込み、2017 年春には Formlabs 議や資料が山のように必要になります。しかし、私たちは『失 のを見ることで『あ、あれは失敗だった』ということに気付 ゴム質のレジンや強靱なレジンが多種多様にあることです。 の光造形(SLA)方式 3D プリンタ「Form 2」も導入、 敗を恐れず新しい提案を』という考え方でやっています」 「東京はすごい人が集まっているので、自動車デザイン以外 けます。失敗すると、次は同じ失敗は絶対しない。デザイナー 「新しいツールは新しいデザインのきっかけにつながります。 光造形機なので出力ももちろん申し分ないのですが、触り心 ほぼ常時何かを出力しているほどに活用しているという。自 のコミュニティーに触れ、実際にコミュニケーションをとるこ は、失敗させないように指導するより、失敗させた方が早く 3D プリンタをいち早く導入したのもその一環です。3D プリ 地なども大事にデザインしたいと考えているので、特殊な材 動車会社であれば高性能の産業用 3Dプリンタを利用するこ 西川氏のデザイン開発に対する考え方は非常にアグレッシブ とで自動車の絵がうまい人ばかりの中だけでは出ないアイデ 確実に成長します」 ンタでデザインのサイクルを回すことで、いままでとは異なる 料が出せるのは大きいですね。実は『Form 1』の頃から注 とも難しくないように思うが、なぜ「Form 2」なのか。常 で、自動車業界の文化とはまったく異なるものだ。クリエイ アにつながっています」 新しいデザインが生まれると期待しています」 目していたのですが、光造形機は薬品を使うので薬品の取り にいままでにないものが求められる、プロダクトデザイン現 ティブボックスをコミュニケーションのハブにしたいというの あ 新しいアイデアは新しいやり方で生み出す 扱いや換気、洗浄など、とにかく取り扱いが大変だというイ 場ならではの活用理由について尋ねた。 も、オープンソースなど開かれた開発手法を取り入れなけれ と クリエイティブボックスが導入した 3D プリンタは光造形 メージを持っていました。それが、Formlabs さんにお話を ば、これからは勝負できないという考えから、社外の人もフ 2 もうひとつは、新しいことをやる、新しいものを作るための (SLA)方式の「Form 2」と熱溶融積層(FFF)方式で、 聞いたり、3D データを試しに出してもらったりしているうち 常に新しいものが求められる現場に ラットに入ってこられるようにすることを目指しているからだ。 方法論だ。 いわゆる産業用の大型機ではない。日産自動車へのデザイ に、メンテナンスはそんなに大変ではなく、デスクトップでも 必要な「失敗」 原宿という立地を生かし外部クリエーターなどともアジャイ ン提案では、従来同様に外部の出力業者に3Dデータを送っ 使えるということが分かって導入を決定しました」 ルなプロトタイピングを進めている。 「クリエイティブボックスへご依頼いただくのは、基本的にい て高品質な出力モデルを作っている。ただ、3D プリンタを 西川氏は日産自動車に入社以来「スカイラインクロスオー ままでとは違う新しいアプローチ実現への期待値が高く、プ 社内に持つことで、外部に出力を依頼する前に自分たちで 3 バー「」NV350キャラバン」など数々のプロジェクトに携わり、 「1 つのゴールに対して、ミーティングを重ねて一歩一歩進 ロセスのひな形はありません。5 人がみっちり 2 週間掛けた ~ 4 回モデルを出力するようになり、最終的なデザインのク 最近の数年では東京モーターショーや海外のモーター み、高い目標のものを作るのが通常のやり方。それを否定は 方がいいと判断すればそうするし、1~ 2 日でやったほうが オリティが向上したという。以前は、PC ディスプレイ上の ショー向けに作るコンセプトカーなど先行開発を担当するな しませんが、1 つの成功のために 10 人で会議を 10 回する いいアイデアが出ると思えばそうします。大きな組織ではマ デジタルデータだけで試行錯誤していたため、外部業者の出 ど、「新しい時代の未来へ向けた自動車を取り巻くデザイン よりも、10 人がバラバラのことを 10 回やった方が面白いも ネージャーが『もっと新しいアイデアない?』で終わりですが、 力が出来上がるまで手触りなどは検証できず、デザイナー自 の提案」といった新しい方向の仕事を手掛けている。クリエ のが生まれると私たちは考えています。3D プリンタもそうで ここでは新しいことを積極的に試していい。その時々でやり 身の勘に頼っていた。自分たちで3~4回出力するようになっ イティブボックスに在席するデザイナー、3D モデルを作る すが、自分たちでどんどんいろんなことを試すのがここのスタ 方も変わりスケジュールも変わります。新しいことをやるには、 たことで、PC ディスプレイ上では分からないことに気付ける デジタルモデラーと呼ばれるデザイン部隊を率いる西川氏の イルです。例えば、今では自動車業界に当たり前になった 新しいやり方をするのが一番早いというのが私の考えです」 ようになったからだという。 方針は、「新しい価値を創造するためには何をやってもいい」 VR を使った開発も、敏速に導入、検証し有用性や活用方 と、およそ大会社の組織のイメージとはかけ離れたものだ。 法などを本社に提案したりしています」 クリエイティブボックスの 1 階はラボラトリーフロアで、例え 「デジタルデータだけでも良いデザインはできると思います 西川氏の着任後、クリエイティブボックスは “クリエイション” ば東京モーターショーのモデルを作るときは車のモデルを入 し、そういうスタイルがあってもいい。ただ、業界全体がデ (アイデア)、”“ハブ(” 外部とのつながり)、“ラボラトリー(” 研 れていろいろ検討したり、オープンなスペースとして外部の ジタル寄りなので、そうではないスタイル、ものづくりのい 究開発やプロトタイピング)、という大きく3 つの柱を立てて 人との交流にも使われたりしているが、ガラスで囲まれた一 わゆるフィジカルと呼ばれる実際手を動かす部分と、効率的 進んでいる。 角には「Form 2」をはじめとして3Dプリンタやレーザーカッ なデジタルの部分のフュージョン(融合)を目指しています。 「Form 2が走ったら?」というコンセプトで誕生した「Form 2 Runner」。 ミニ四駆をベースにしながらも、レジンタンクや電源ケーブルが外せるなど、 実物と同様の機構を持つ
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「Form 2」で出力するものは、デザインした部品、10 分 「Form 2」で、作りたいデザインを の1や20分の1の自動車のスケールモデルが多い。スケー 納得いくまで試す ルモデルはモーターショーのブースのデザインを検討するた めにも使用している。モーターショー直前にコンセプトカー 「Form 2」の出力品質は、クリエイティブボックスが自動 の小さな部品が傷ついたときに、「Form 2」で出力したも 車モデルを発注するようなモデルメーカーの品質には及ば ので対応したこともあるという。また、インテリア系プロダ ない。しかし、そうした高品質モデルを作るには、当然費 クトメーカーとの仕事では、通常、最初のデザイン案 10 用も期間もかかる。その感覚からすると「Form 2」は、か ~ 20 点は CG だけ提示していくつかを選んでもらうところ かる費用に対して、得られる出力の価値が非常に高いとい を、初めからすべてのデザイン案の原寸大モデルを「Form う。そして最も西川氏が重視するのが、社内で出力すること 2」で出力し塗装して提示した。身に着けるプロダクトだっ によるタイムラグの極小化だ。 たこともあり、手に取って体験して選んでもらえた。 デザイナーから、もう 1 台導入してくれという声が上がるほ 「FFF 方式の 3D プリンタはコスト安いが『まあこの程度だ ど稼働している「Form 2」だが、西川氏はさらに活用でき 「カタログ写真などを見ると分かると思いますが、デザイナー よね、安いから』という値段なりの結果。しかし『Form るプランを考えている。 はかっこよく見えるように CG を描くので、CG だけで選ぶ 2』は『え、このコストでこんなに?』というのが私たちの と実際のモデルになったとき『あれ、なんか違うね』という 感覚です。それから “ 時間 ” はクリエイティビティを加速す 「何か実際に販売できるようなオリジナルのプロダクトを、う ことも起こります。CGとモデルを合わせて提示できたことで、 るためにものすごく大事で不可欠な要素です。今の時代は、 ちのメンバーで作りたいと伝えています。いつもは自動車を 最終的に選ばれたデザインは良い方に変わったと思います。 モデルを 1 つ出すのに 1 週間も 2 週間もかけていたらアイ デザインしていますが、お客様と直にコミュニケーションを プロセスとしては大成功でした」 デアの鮮度が落ちてしまいます。いいデザインを組み上げ、 取ることはほとんどありません。小さな商品が作れれば、お 出力を外部の業者に頼むと、届くまで 10 日ほどかかります 客様の声をダイレクトに聞くことができるなと」 西川氏はさまざまな 3D プリンタを使った経験から、「こん が、届く前に別のデザインアイデアが生まれて『ああ、こう な複雑な形は出せないだろう」という基準のようなものがあ しておけば良かった』となる。結果として出力を依頼するこ 3D プリンタの普及と進化によって、ものづくりに関するデザ るそうだが、「Form 2」では難なく出力できることが多いの とに慎重になり、元々のデザインが持っていた“強さ”が減っ インの制約はなくなりつつあるが、実はデザイナーにとって だという。 てしまう。社内に『Form 2』があるからこそ、いいデザイ 制約がなくなるのは怖いことだとも西川氏は話す。 ンを思い付いたら一晩で出して翌朝には確認できる。外部 「『Form 2』のデザイン仕様から少しだけ逸脱するようなデー に委託する場合の10分の1です。これならアイデアと出力 「通常デザイナーは、制約やルールの下でオリジナリティを タをわざと作って試すのですが、『Form 2』はことごとく出 のタイムラグがなく、本当にやりたかったデザインの意図の 出す方が楽です。自由にできるとなったとき、『よし新しいも せてしまう。これが一番驚いたというか嬉しかった。予想を 純粋さが失われないまま試せます」 のを出そう』という意欲を持つ人と、何もできなくなる人が 良い意味で裏切ってくれました。それに、FFF 方式の3Dプ いる。3D プリンタが進化してものの作り方に革新が起こり、 リンタだとメーカーごとに、どの向きでどうレイアウトすれば 「Form 2」が社内にあることは、西川氏が重視する「デザ デザイナーが制約を言い訳にできなくなってきていますが、 きれいに出るというコツを習得しなければならないのですが、 イナーが失敗できること」につながっている。 3Dプリンタはデザインが新しくなるきっかけになるものです。 『Form 2』はそんなこと気にしなくていい。コツがいらない」 そういう時代にも生き残っていきたいですね」 「失敗しないように作るより、たくさん失敗してたくさん考え 直した方が、絶対に良いものができると信じています。私た ちはプロダクトデザイナーで、手で触れたり目で見たりでき るものを作っています。PC ディスプレイの中だけの検証で は解決しない仕事が多く、プロトタイピングはものすごく大 切にしています」 Form 2導入検討のために西川氏がデザインしたミニ四駆サイズのオリ ジナルデザイン。タイヤはFlexibleレジンを用いて検証した
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「Form 2」で出力するものは、デザインした部品、10 分 「Form 2」で、作りたいデザインを の1や20分の1の自動車のスケールモデルが多い。スケー 納得いくまで試す ルモデルはモーターショーのブースのデザインを検討するた めにも使用している。モーターショー直前にコンセプトカー 「Form 2」の出力品質は、クリエイティブボックスが自動 の小さな部品が傷ついたときに、「Form 2」で出力したも 車モデルを発注するようなモデルメーカーの品質には及ば ので対応したこともあるという。また、インテリア系プロダ ない。しかし、そうした高品質モデルを作るには、当然費 クトメーカーとの仕事では、通常、最初のデザイン案 10 用も期間もかかる。その感覚からすると「Form 2」は、か ~ 20 点は CG だけ提示していくつかを選んでもらうところ かる費用に対して、得られる出力の価値が非常に高いとい を、初めからすべてのデザイン案の原寸大モデルを「Form う。そして最も西川氏が重視するのが、社内で出力すること クリエイティブボックス社内に設置、使用されている「Form 2」 2」で出力し塗装して提示した。身に着けるプロダクトだっ によるタイムラグの極小化だ。 たこともあり、手に取って体験して選んでもらえた。 デザイナーから、もう 1 台導入してくれという声が上がるほ 「FFF 方式の 3D プリンタはコスト安いが『まあこの程度だ ど稼働している「Form 2」だが、西川氏はさらに活用でき 「カタログ写真などを見ると分かると思いますが、デザイナー よね、安いから』という値段なりの結果。しかし『Form るプランを考えている。 はかっこよく見えるように CG を描くので、CG だけで選ぶ 2』は『え、このコストでこんなに?』というのが私たちの と実際のモデルになったとき『あれ、なんか違うね』という 感覚です。それから “ 時間 ” はクリエイティビティを加速す 「何か実際に販売できるようなオリジナルのプロダクトを、う ことも起こります。CGとモデルを合わせて提示できたことで、 るためにものすごく大事で不可欠な要素です。今の時代は、 ちのメンバーで作りたいと伝えています。いつもは自動車を 最終的に選ばれたデザインは良い方に変わったと思います。 モデルを 1 つ出すのに 1 週間も 2 週間もかけていたらアイ デザインしていますが、お客様と直にコミュニケーションを プロセスとしては大成功でした」 デアの鮮度が落ちてしまいます。いいデザインを組み上げ、 取ることはほとんどありません。小さな商品が作れれば、お 出力を外部の業者に頼むと、届くまで 10 日ほどかかります 客様の声をダイレクトに聞くことができるなと」 西川氏はさまざまな 3D プリンタを使った経験から、「こん が、届く前に別のデザインアイデアが生まれて『ああ、こう な複雑な形は出せないだろう」という基準のようなものがあ しておけば良かった』となる。結果として出力を依頼するこ 3D プリンタの普及と進化によって、ものづくりに関するデザ るそうだが、「Form 2」では難なく出力できることが多いの とに慎重になり、元々のデザインが持っていた“強さ”が減っ インの制約はなくなりつつあるが、実はデザイナーにとって 西川氏が中心となって立ち上げたデザインユニット“t-o-f-u”の だという。 てしまう。社内に『Form 2』があるからこそ、いいデザイ 制約がなくなるのは怖いことだとも西川氏は話す。 ジュエリーコンセプト「poetics」のレンダリング画像(上)。鋳造用 のCastableレジン(青)とスタンダードレジン(グレー)で出力した ンを思い付いたら一晩で出して翌朝には確認できる。外部 造形物(中)。Castableレジンをシルバーで実際に鋳造したリング (下) 「『Form 2』のデザイン仕様から少しだけ逸脱するようなデー に委託する場合の10分の1です。これならアイデアと出力 「通常デザイナーは、制約やルールの下でオリジナリティを タをわざと作って試すのですが、『Form 2』はことごとく出 のタイムラグがなく、本当にやりたかったデザインの意図の 出す方が楽です。自由にできるとなったとき、『よし新しいも せてしまう。これが一番驚いたというか嬉しかった。予想を 純粋さが失われないまま試せます」 のを出そう』という意欲を持つ人と、何もできなくなる人が 良い意味で裏切ってくれました。それに、FFF 方式の3Dプ いる。3D プリンタが進化してものの作り方に革新が起こり、 リンタだとメーカーごとに、どの向きでどうレイアウトすれば 「Form 2」が社内にあることは、西川氏が重視する「デザ デザイナーが制約を言い訳にできなくなってきていますが、 きれいに出るというコツを習得しなければならないのですが、 イナーが失敗できること」につながっている。 3Dプリンタはデザインが新しくなるきっかけになるものです。 『Form 2』はそんなこと気にしなくていい。コツがいらない」 そういう時代にも生き残っていきたいですね」 「失敗しないように作るより、たくさん失敗してたくさん考え 直した方が、絶対に良いものができると信じています。私た ちはプロダクトデザイナーで、手で触れたり目で見たりでき 問い合せ先 るものを作っています。PC ディスプレイの中だけの検証で デジタルファクトリー株式会社 は解決しない仕事が多く、プロトタイピングはものすごく大 〒111-0042 DRS(Digital Revolutionary Solution) 東京都台東区寿3-16-6 鈴政ビル2F 切にしています」 とは、最先端のデジタル技術とアナログ TEL 03-6231-7390  技術、ヒューマンスキルを融合した「、新 しいものづくりの手法」です。お客様と FAX 03-6231-7393 一緒にDRSを実証・検証し、製品開発 info@dfc-3d.com 期間の短縮やコスト削減をめざします。 ※本カタログに記載されている内容・仕様は予告なく変更する場合がございます。 201807 URL http: // www.dfc -3d.com