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製品開発へのラピッドプロトタイピング導入方法、そしてその活用法やラピッドプロトタイピングに用いられるものは。
製品開発において試作品製作は重要ですが、ボトルネックになってしまうこともあります。プロダクトデザイナーやエンジニアは、簡単な概念実証用モデルを製作する時には基本的なツールだけで事足りますが、機能試作や設計検証、生産検証用の試作を行う際には多くの場合、最終製品同様の工程を踏む必要があります。
射出成形やプレス加工等の従来型製造法では、切削加工等での金型や治具等の製作費が高額であるだけでなくその製作期間も課題となり、試験的な少量生産を行うにはかなりの時間的・費用的コストを要してしまいます。そのため多くの企業は、迅速に概念実証用モデルを製作し、更に最終製品同様の外観・機能を持つ高度な試作品を製作し、一連の検証を経て大量生産に向けた準備を高速に進める「ラピッドプロトタイピング」を採用しています。
ラピッドプロトタイピングの導入により、これまで以上に高速でCADデータから試作品を製作し、実際の環境に適合するかの検証試験を行い、その結果から設計を調整し再度試作を行って再検証するという反復検証サイクルを高速で回しながら短期間で設計を固められるようになります。
本ガイドブックでは、製品開発へのラピッドプロトタイピング導入方法、そしてその活用法やラピッドプロトタイピングに用いられるツールを解説していきます。
このカタログについて
ドキュメント名 | ラピッドプロトタイピング総合ガイドブック |
---|---|
ドキュメント種別 | ホワイトペーパー |
ファイルサイズ | 1.6Mb |
登録カテゴリ | |
取り扱い企業 | Formlabs株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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WHITE PAPER
Guide to Rapid Prototyping
for Product Development
製品開発において試作品製作は重要ですが、ボトルネックになってしまうこともあり
ます。プロダクトデザイナーやエンジニアは、簡単な概念実証用モデルを製作する時
には基本的なツールだけで事足りますが、機能試作や設計検証、生産検証用の試作を
行う際には多くの場合、最終製品同様の工程を踏む必要があります。
射出成形やプレス加工等の従来型製造法では、切削加工等での金型や治具等の製作費
が高額であるだけでなくその製作期間も課題となり、試験的な少量生産を行うには
かなりの時間的・費用的コストを要してしまいます。そのため多くの企業は、迅速に
概念実証用モデルを製作し、更に最終製品同様の外観・機能を持つ高度な試作品を製
作し、一連の検証を経て大量生産に向けた準備を高速に進める「ラピッドプロトタイ
ピング」を採用しています。
ラピッドプロトタイピングの導入により、これまで以上に高速でCADデータから試作
品を製作し、実際の環境に適合するかの検証試験を行い、その結果から設計を調整し
再度試作を行って再検証するという反復検証サイクルを高速で回しながら短期間で設
計を固められるようになります。
本ガイドブックでは、製品開発へのラピッドプロトタイピング導入方法、そしてその
活用法やラピッドプロトタイピングに用いられるツールを解説していきます。
����年�月| Formlabs.com
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Contents
ラピッドプロトタイピングとは?. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .�
ラピッドプロトタイピングの利点 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .�
ラピッドプロトタイピングの用途 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .�
ラピッドプロトタイピング用ツールと手法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .��
ラピッドプロトタイピング用ツールの比較 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .��
ラピッドプロトタイピングを導入するには . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .��
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ラピッドプロトタイピングとは?
ラピッドプロトタイピングは、3DCADデータから実際のパーツまたはアセンブリの縮尺モデルを高速
で製作する手法の総称です。ラピッドプロトタイピングでのパーツやアセンブリ製作には通常、
従来の切削等とは違い、アディティブマニュファクチャリングや3Dプリントが用いられるため、
ラピッドプロトタイピングはしばしば3D造形による試作品製作と同義語として使われます。
アディティブマニュファクチャリングという技術は試作品の製作に非常に適したもので、3Dプリ
ントには作るものの形状に制約らしい制約がほぼなく、機械加工も不要で、成形等の古くからの
製造方法で用いられる多くの材料と非常に近い機械的特性を持つ造形品が製作できます。1980年
代に誕生した3Dプリント技術は、その黎明期においては非常に高額で複雑な技術であったために
導入できるのは一部の大手企業に限られていました。当時の中小規模の企業では3Dプリントの導
入は非現実的で、外注に頼った試作品製作は反復検証サイクルを非常に長い期間をかけて行うの
が当たり前のものにしてしまっていました。
3Dプリントの活用により、試作後の検証試験の結果を受けて設計を調整し、再試作を繰り返す反復検証サイクル
を高速・低コストで行えるようになり、開発期間は数週間~数ヵ月単位で短縮が可能となった。
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デスクトップ型等の小型3Dプリンタが開発されると、3Dプリントを取り巻く状況が一変し、多く
の企業が3Dプリントの導入を始めました。設計者やエンジニアは試作品を製作して検証を行い、
その結果を基に設計を調整して再度試作を行うというサイクルを自分自身で手早く進めることが
可能となりました。今ではその日のうちに試作を完了し、実際の使用環境での適合試験や各種の
分析結果に基づいて自身の考案した製品のデザインや仕様、寸法、形状や組立方法など、非常 に
多角的な検証が以前では考えられないスピードで行えるようになっています。そのためラピッド
プロトタイピングは、競合メーカーに先駆けてより良い製品を市場に投入するための必須手段と
考えられるようになったのです。
ラピッドプロトタイピングの利点
コンセプトをよりスピーディに掘り下げ、形にすることができる
ラピッドプロトタイピングは、時間をかけず低リスクに初期の概念実証(PoC)を行い、実際
の製品に近付けていくことを可能にしました。これによって設計者は画面上の情報を想像と
経験で補いながら設計を進める作業から解放され、物理的な形をもった試作品で外観や触感、
機能を確認した上でより確実に最終設計にまとめ上げていくことができます。
アイデアを説明・確認するコミュニケーションをより効率的で確実なものにできる
設計者は自身の設計案から製作した物理的な試作品を使って同じ開発チームのメンバーやクライ
アント、社外のサプライヤー等にプレゼンテーションが行えるため、より効率的で間違いのない
コミュニケーションが行えます。ラピッドプロトタイピングでは、製品ユーザーの実際のニーズ
を理解する上で決定的に重要な、各種検証やベータテスト等を通したユーザーからのフィードバ
ックを即座に設計に反映して改良し、より高品質な製品を世に送り出すことも可能にします。
設計を反復的に検証し、即座に製品設計を改良できる
初期の設計案を最終設計案に昇華させるためには、試験・評価・改良を幾度も繰り返す必要が
あります。3Dプリントによるラピッドプロトタイピングでは、より実物に近い試作品をより高速
に製作できる柔軟性が得られ、試行錯誤のプロセスを最速化することができるのが利点です。
FormlabsのSLAプリンタで製作した仕分け用ロボットのグリッパの試作品で実施した反復検証プロセス。
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良い例としては、24時間でのデザインサイクルが挙げられます。日中の勤務時間内に設計を固め、
退社前に3Dプリントを開始し夜間に造形。翌朝に後処理を施した後に各種検証を行い、設計調整
を行い、再度24時間のサイクルで再試作と検証を繰り返します。大幅な高速化が図れるでしょう。
所要日数とコストを共に大幅削減
外部委託で試作を行う場合、委託先の人件費や設備の維持費等が製作コストに計上され、概して
内製よりもかなり高額となる上、製作期間も1-2週間程度を要します。内製でのラピッドプロト
タイピング導入により、それらのコストと日数は大幅に削減することができます。また、設計変
更時もすぐに再試作がその場で行えるため、開発における反復検証サイクルにおける「待ち時間」
を最小化することができます。ご存知の通り、開発段階で時間的・コスト的なゆとりが持てると
いうことは、更なる品質向上にも繋がる上、量産開始までの後工程までのスケジュール面での
リスクも低減することができ、より迅速により高品質な製品を市場に送り出すことに繋がります。
徹底的な検証を行う余裕があらゆるリスクを最小化する
製品設計や生産工程においては、設計ミスをできるだけ早期に発見・修正することが重要です。
工程が進んだ後で設計の見直しや加工方法に変更が入ると大きなコスト増となってしまいます。
ラピッドプロトタイピングは単に試作・検証サイクルを高速化するアジャイル化だけを利点と
するものではなく、外観や機能を最終製品に近付ける各種検証試験をより徹底的に行う時間的
余裕をもたらします。量産移行前に万全の検証が行えれば、製品の品質だけでなく生産面での
リスクも最小化でき、後工程で起こり得るあらゆるトラブルも未然に防ぐことができるのです。
ラピッドプロトタイピングの用途
プロダクトデザイナーやエンジニアは、ラピッドプロトタイピングに様々な技術や材料が利用でき
るようになったことで、初期の概念実証からEVT、DVT、PVTでの各種有効性確認試験や量産段階
に至るまで、あらゆる段階でラピッドプロトタイピングを活用できるようになっています。
ハードウェア開発プロセス出典:Ben Einstein, Bolt(和訳:Formlabs株式会社)
概念実証(POC)用試作とコンセプトモデル
コンセプトモデルまたは概念実証(PoC/Proof of Concept)用試作は、プロダクトデザイナー
のアイデアの有効性を見極め、製品の実現可能性検証に大いに役立ちます。物理的なコンセプト
モデルは、設計者が考案したアイデアを形にして関係者間で確認・議論し、より低リスクにその
アイデアの是非を検証することに役立ちます。
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PoC用試作は製品開発の非常に早い段階で実施します。そこで製作された試作品には製品開発を
より具体的に進める前に初期の想定に大きな欠点がないかを確認するための最低限の機能しか
備わっていないのが通常です。
概念実証には簡単な試作品で事足りることも多い。ある程度の基礎的な機能確認を行うことが目的となる
からだ。例えば、充電用スタンドを設計する際のPoC用モデルは、充電用の標準的なUSBケーブルを接続でき
る筐体を�Dプリントするだけで十分である場合が多い。
コンセプトモデリングを成功させる鍵は、スピードです。設計者は物理的なモデルを製作して
評価作業を進める前に多くのアイデアを考案・吟味する必要があります。この段階では製品の
有用性や品質はまだそれほど重要でなく、設計部門は可能な限り既製品を用いてアイデア検証
を行います。
スイスの設計コンサルタント兼スタジオPanter&Tourronのデザイナーは、SLA方式の�Dプリントを使って、
コンセプト発案から僅か�週間で最終設計を固め、最終設計案のモデルを製作できるようになった。
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3Dプリンタはコンセプトモデル製作に非常に適したツールです。3Dプリンタがコンピュータ上
のファイルから試作品を造形して形にするまでの時間は多くの場合数時間~1日以内で、設計者
にはコンセプトの別バージョンを準備して検証する余裕も生まれます。また、デスクトップ型の
小型3Dプリンタはその他多くの生産設備と違って非常に小さな設置スペースしか必要としない
ため、オフィスにも最低限のスペースで設置することができます。
外観確認用プロトタイプ
外観確認用試作はその名の通り外観や形状面の確認が目的であり、機能面の多くはまだ欠けて
いる状態です。最終製品に求める外観を更に向上するための叩き台として、ユーザーが製品を
どのように扱うかをより深く理解するために行われます。外観確認用試作では、実装する機能
を本格的に作り込む前段階で人間工学やユーザーインターフェース、そしてユーザーエクスペ
リエンスと呼ばれる全般的な製品の使用体験を検証し、その後の詳細設計やエンジニアリング
に繋げていくためのものと位置付けられます。
外観確認用試作は通常ラフスケッチを描き、発泡スチロールやクレイモデルから始まることが
多く、そこからCADでのモデリングに移行します。設計後に試作と検証を反復的に繰り返しな
がら改良を重ねて行きます。設計が最終案に近付くに連れ、デザインチームは実際に製品で使
用される彩色、材料、仕上げ(CMF/Color, Material, Finishing)を使い、外観確認用試作を次
第に最終製品同様の外観に近付けていきます。
様々なソリューションで製作されたFormlabsのSLA光造形�DプリンタForm �の外観確認用試作品。レジンカート
リッジの設置方法の検証に用いられた。
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機能確認用プロトタイプ
エンジニアリングチームは、設計プロセスと並行して別個に試作を行い、製品に実装する機械系、
電気系、熱系統のシステムを試験しながら反復検証を繰り返します。機能確認用試作品は外観が
最終製品にそれほど近いものではなくても実際に製品に搭載される中核技術や主要な機能を開発
して検証するために必要な要素が盛り込まれます。
多くの場合、重要な機能は別のサブユニットで開発され、そこで試験を重ねてから一つの製品と
して機能確認用試作品に搭載されます。このようにサブシステムを用いて製品開発を進める手法
は、各機能系統の開発担当チームごとに役割を分担することで、より詳細に各チームが担当する
機能の品質や信頼性を向上するために採用され、一定の完成度を得た段階で最終製品に実装され
る全ての要素が機能確認用試作品に組み込まれていきます。
Formlabsの大容量SLA光造形�Dプリンタ Form �Lの初期段階での機能確認用試作品。
技術確認用プロトタイプ
技術確認(検証)用試作では、製品設計チームと製品技術チームが協業して最終製品を実際に
販売する際の主要機能を搭載した、DFM(Design for Manufacturability/製造容易性設計)の
ために行う試作です。この技術確認用試作品は、選ばれた一部ユーザーに対するラボベースで
のユーザーテストに使用されたり、後工程の製造担当技術者に生産意図を伝えるため等に使用
されます。また、最初の営業部門とのミーティングでデモ機として使用されることもあります。
この段階から徐々に設計のディテールが重要となり、細かな点を詰める作業が増えていきます。
3Dプリントの活用により、エンジニアは最終製品を高水準で再現した試作品を高速かつ安価で
製作することができます。変更が発生した際に大きな時間とコストが必要となる量産用金型の
製作や製品生産開始前に、設計、適合性、機能、および製造可能性をより簡単に検証すること
ができるのです。
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潜水用カメラメーカーのParalenzが�Dプリントで製作した水深���メートル以下での機能検証に耐えた試作品。
先進的な3Dプリント用材料を使用すれば、射出成形等での成形品のような外観と質感、いわゆ
るルック&フィールや材料特性に非常に近いものを製作することもできます。精密で複雑な構
造、柔らかさ、滑らかさ、低摩擦な表面、高い剛性と強度を備えた筐体、透明パーツ等、多彩
な特徴を再現できる材料が3Dプリント用に次々と実用化され、Formlabsの材料ライブラリも
拡充を続けています。3Dプリント品はサンドペーパーや研磨、塗装、電気めっき等の後加工を
行うことで外観や表面特性を最終製品に近付けることもでき、複数の部品や材料でアセンブリ
を行うためにねじ部を設けることも勿論、可能です。
Wöhlerのエンジニアは、複数の材料を用いて高強度な筐体と柔らかいボタンを持つ外観確認・機能確認
両用の水分計試作品を製作している。
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技術確認(検証)用として試作する部品やアセンブリは、最終製品が実際に晒される使用環境や
条件下において想定通りに機能するかを確認する非常に多岐にわたる機能検証試験に、最終製品
同様に耐えられるよう製作する必要があります。現在では様々なレベルで熱応力や化学的・機械
的ストレスに耐えられる高性能な試作品を3Dプリントで製作することが可能になっています。
検証試験と製造
ラピッドプロトタイピングを活用すれば、エンジニアは少量生産やワンオフ品の受注生産、アセ
ンブリ品等を技術検証(EVT)、設計検証(DVT)そして生産検証(PVT)を通して製造可能性の
検証に役立てることも可能です。
3Dプリントの活用により、実際の製造工程を想定した公差検証や、量産移行前の総合的な社内試
験・実地試験をより簡単に行うことができます。
3Dプリント製の金型(樹脂型)や治具を活用する「ラピッドツーリング」では、射出成形、熱成
形、シリコン成形等に導入することで、より高速・柔軟に、高いコスト効率で製造プロセスを強
化する手法です。このラピッドツーリングを用いれば、カスタム品の試験治具や固定具を製作す
る効率的なソリューションとなり、データ収集を一貫して行えるため機能試験や認証取得もより
簡単に行うことができます。
医療機器設計会社のCoalesceが�Dプリントで製作した社内試験用の試験治具。
3Dプリント導入のもう1つのメリットは、生産開始後も設計の修正が簡単に行える点です。ラピッド
プロトタイピングによって製品や金型等を継続的に改善し、ライン上に問題が発生した場合は即座に
ラピッドツーリングで治具や固定具を製作して組立やQAプロセスを改善することができます。
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ラピッドプロトタイピング用ツールと手法
アディティブマニュファクチャリング
ラピッドプロトタイピングは、基本的にアディティブマニュファクチャリングや3Dプリントを
活用することが前提となっています。3Dプリントの造形方式には様々なものがあり、中でもラ
ピッドプロトタイピングで最もよく使われるのは、熱溶解積層(FDM)方式、光造形方式、そ
して粉末焼結積層造形(SLS)方式です。
熱溶解積層(FDM)方式
熱溶解フィラメント方式(FFF/Fused Filament Fabrication)とも呼ばれるFDM方式では、 フィ
ラメントと呼ばれる熱可塑性樹脂材料を溶かしてプリンタのノズルから押し出して積層します。
FDMは、元は模型製作を趣味とするユーザー間での需要の高まりと共に普及し、工業用のものは
主に初期段階の試作においてプロダクトデザイナーやエンジニアに最も広く活用されています。
非常に高額でハイスペックな一部のものを除き、樹脂材料を用いた3Dプリントの中ではFDMの
解像度や精度は低く、精密で複雑な形状を表現する用途には不向きと言えます。FDMでの造形品
をより高品質に仕上げる必要がある場合は、化学的または機械的な後加工を行うことをおすすめ
します。また、工業用のFDMプリンタの中には水溶性のサポート材を使用できるものもあり、そ
うしたものでは微細な形状を造形した際に造形品を損傷するリスクなくサポートの除去が行えます。
FDM方式の3Dプリント材料は、ABSやPLA等の一般的な熱可塑性樹脂やそれらのブレンド材を使
用することができます。ハイエンドモデルではより幅広い材料に対応し、中には炭素繊維等の複
合材を使用できるものも登場しています。FDMプリンタをラピッドプロトタイピングに活用する
際には、通常は切削加工で製作するような比較的シンプルな部品の場合に特に有効です。
SLA光造形方式
SLA光造形方式の3Dプリンタは、紫外線レーザーで液体の光硬化性樹脂を光重合というプロセス
で硬化させて造形します。SLAの光造形は、解像度・精度が非常に高く、使用できる材料の幅も
広いため、3Dプリントを専門で受託する事業者に最も多く活用される造形方式の1つです。光造
形にはレーザーを用いて精緻に「点」で造形を行うSLA方式の他に、プロジェクタから紫外線光
を積層する層ごとに投影して「面」で造形するDLP方式、プロジェクタではなく液晶パネルを用
いるLCD方式等があります。いずれもデジタル画像から造形するという方式で、デジタル画像を
拡大するとモザイク状のピクセルが見えるのと同様に、拡大するとボクセルと呼ばれる立方体の
集合で、特にアール面等で独特の表面荒れが生じます。ハイエンドモデルではプロジェクタや液
晶が高解像度になりボクセルは小さくなるものの、原理は変わりません。一方でDLPやLCD方式
のメリットは、造形スピードが非常に速いという点です。
FormlabsのSLA�Dプリンタ Form �で製作した腕時計のラピッドプロトタイプ(左)と最終製品(右)。
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SLA方式での造形品は、樹脂材料での3Dプリント方式では最も解像度、精度、ディテールの表
現、表面の滑らかさに優れており、FDMと違って異方性のない、完全な等方性を備えることも
特筆すべき特徴で、外観確認から機能確認まで非常に幅広い検証に耐えるだけの造形品質が期
待できます。そのためSLA光造形はラピッドプロトタイピングに最適な造形方式と言えます。
しかしSLA方式最大のメリットは、実は他にあります。それは使用できる材料(レジン)の豊
富さです。現在では多くの化学メーカーが一般的な熱可塑性樹脂やエンジニアリング用プラス
チックの機械的特性や熱特性に非常に近い物性を持つよう調合された先進的な光造形3Dプリン
ト用材料を開発しており、Formlabsはその3Dプリント用レジンもFormlans製プリンタで最大の
パフォーマンスが発揮できるよう特性を最適化する形で自社開発しています。
例えば、Formlabsのラピッドプロトタイピング用材料であるDraftレジンでは、最大でFDMの
10倍のスピードで造形が行え、SLA方式が持つスピードという短所をカバーしています。
Form 3とDraftレジン
FORM 3 FDM 比較
Draftレジン
積層ピッチ200ミクロン 積層ピッチ200ミクロン 差異
造形品の
中空状態 中空なし 30%充填
粉末焼結積層造形(SLS)方式
粉末焼結積層造形法(SLS)とは、多くの業界のメーカーから高強度な機能部品製作において特
に信頼性の高い造形方式と見なされるもので、高分子粉末の熱可塑性樹脂に高出力レーザーを
照射し、熱で溶融させることで造形を行う造形方式です。
SLS方式の3Dプリンタは造形スペース全体に粉末を一層ごとに敷き詰めて造形を行います。造形
で使用されない未溶融の粉末は造形品の周囲にそのまま粉末状で残り、造形品を支える役割を果
たすため、サポート材を必要としない3Dプリント方式でもあります。そのためSLS方式は、内部
に屈折した流路を持つもの、成形では作れない複雑な形状、薄肉構造や凹面等の製作に困難を伴
う形状でも問題なく造形できる方式として知られています。SLS方式での造形品は、射出成型品
に比肩する強度等、非常に優れた機械的特性を発揮することができます。
また、3Dプリントは平面上に複数のモデルを配置すれば複数の造形を一度に行うことが可能です
が、高さ方向に積み上げて造形することはできません。しかしSLS方式では高さ方向に造形品を
積み上げてバッチ生産を行うことができる点に最大の特徴があります。多くの試作品や生産治具
を非常に高効率に製作できるというメリットも注目すべき点ですが、現在欧米を中心にSLSが急
速に普及している原因の一つは、この特徴を活用して最終製品/部品をSLSでの連続生産によって
行うという流れが背景にあり、成形で生産した部品を長期間在庫しておくコストや設計変更が発
生した際にそれらが使用できなくなる等のリスクを低減し、より柔軟に、そして安価で高速に製
品や部品を製作する手段としてもSLSはそのメリットを発揮しています。
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SLS方式�Dプリントは強度が高く、機能検証用の試作品や厳密な製品機能試験を行うための技術検証用
試作品が製作できる。
SLS方式3Dプリントは、ラピッドプロトタイピングでは主に、製品(例:ダクト、ブラケット)
の厳格な機能確認試験や実地で顧客のフィードバックを得るための、機能検証や技術検証用試
作に活用されています。
CNCツール
CNCのマシニングは、アディティブマニュファクチャリングとは違い、切削によってものづくり
を行うサブトラクティブマニュファクチャリングです。CNCによる製作工程は、まず樹脂や金属
等の材料をブロック状やシート状、棒状に加工した切削用材料を準備するところから始まります。
それらの材料をカットし、穴あけを行い、切削や研磨を行いながら設計した形状に仕上げます。
CNC加工には、固定したパーツを旋盤で削るフライス加工やパーツを回転させて固定した刃に当
てる旋盤加工があります。レーザーカッターでは幅広い材料に彫刻やカッティングを施すことが
でき、ウォータージェットでは事実上すべての材料を高圧の水噴射で研磨したり切削することが
できます。多軸式のCNCマシンではより複雑な形状の加工が可能ですが、レーザーやウォーター
ジェットはどちらかと言えばフラットな形状のものを加工する方が適していると言えます。
CNCマシンでは樹脂、軟質金属、硬質金属、木材、アクリル、石、ガラスや複合材など、非常に
幅広い種類の材料を削り出してパーツの製作が行えますが、アディティブマニュファクチャリン
グと比べるとCNCマシンは操作が非常に複雑で、専門の技術を要します。設計によっては特殊な
ツールや取扱方法、設置場所や処理方法が必要なケースもあり、一度限りのワンオフ品や試作品
の製作では3Dプリントよりも高額なコストが必要となってしまいます。
ラピッドプロトタイピングでは、CNC加工はよりシンプルな設計や構造、あるいは3Dプリントで
は製作できない金属部品等の製作に用いられます。
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ラピッドプロトタイピング用ツールの比較
熱溶解積層法(FDM) 光造形(SLA) 粉末焼結積層造形(SLS) CNCツール
解像度 ●● ●●●●● ●●●● ●●●●●
精度 ●●●● ●●●●● ●●●●● ●●●●●
表面仕上げ ●● ●●●●● ●●●● ●●●●●
使いやすさ ●●●●● ●●●●● ●●●● ●●●
複雑な設計 ●●●● ●●●● ●●●●● ●●●●
造形サイズ 最大��� x ��� x ���mm 最大��� x ��� x ���mm 最大��� x ��� x ���mm ツールによる
(デスクトップやベンチ (デスクトップやベンチ ( ベンチトップ型工業用
トップ型�Dプリンタ) トップ型�Dプリンタ) �Dプリンタ)
価格帯 ローエンドのプリンタは 工業用のデスクトップ型 ベンチトップ型の工業用シ 小型のCNCマシンは、
安価なものであれば数 プリンタは約��万円程 ステムなら���万円程度 安いものは��万円程度
万円程度で購入可能。 度から、大容量タイプ から。伝統的な大型機の で購入可能。工業用の
ミドルエンドのデスク になれば���万円程度、 場合は�,���万円強から 業務用機はより高額。
トップ型プリンタは約 工業用の大型機になれ モデルによってはそれ以 ベーシックな研磨機な
��万円から、工業用の ば�,���万円程度の価 上のものも。 ら�万円程度だがミド
ハイエンド機は���万 格となる。 ルエンドのレーザーカ
円程度~が相場となる。 ッターでは安くとも
��万円程度となる。
ウォータージェットは
もう少し高価で���万
以上のものが多い。
材料 ABSやPLAといった標準 様々な系統のレジン(光 エンジニアリング用の熱可 プラスチック、軟質金属、
的な熱可塑性樹脂とそ 硬化性樹脂)。汎用材、 塑性材料。一般的にはポ 硬質金属(工業機械)、
れぞれのブレンド材料。 エンジニアリング用 リアミド(ナイロン)系 木、アクリル、石、ガラス、
(ABS、PP、PE、PEEK 材料やその複合材料が多 複合材等。
ライクやシリコンライ く使用される。
クで強度・剛性・弾性 汎用材のPA �� (Formlabs
や耐熱性等)、ロスト のFuse �用材料ではNylon
ワックス鋳造に対応す ��)は滅菌可能な生体適合
るもの、歯科や医療用 性材料。
の生体適合性材料等。
用途 基本的な概念実証用モ 厳しい精度要件が設定 複雑な形状、機能検証や シンプルなデザイン、
デルや低コストで実現で されたり、滑らかな表面 技術検証等、高度な検証 構造材、金属部品
きるシンプルなパーツの 仕上げが求められる、短 を行う際の高機能試作品
プロトタイピング 期間で完成できるプロト での活用にメリットを発
タイプ、外観確認用試作 揮。SLA同様に幅広い試
や機能検証、技術検証 作に対応。バッチ生産が
用試作等、幅広い段階の 可能である点も用途に影
試作品に対応。 響する。
FORMLABS:製品開発用ラピッドプロトタイピングのガイド ��
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Formlabsの�Dプリントソリューション
SLA光造形方式
左:デスクトップSLA光造形プリンタ Form �+
中:専用自動洗浄装置 Form Wash
右:専用自動二次硬化装置 Form Cure
3Dプリントの中でも最高水準の造形精度、ディテール、
表面品質と完全な等方性を備えるSLA光造形に独自の
特許技術「LFS(Low Force Stereolithography™)
テクノロジー」を搭載し、更なる精度と表面品質、そし
て造形スピードを向上した次世代光造形3Dプリンタと
一貫した品質で後処理が可能な自動後処理機。
左:大容量SLA光造形プリンタ Form �L
中:専用自動洗浄装置 Form Wash L
右:専用自動二次硬化装置 Form Cure L
特許技術LFS™テクノロジー」を搭載したまま
大型造形や複数パーツの一括造形に対応
する極高精度な大容量3Dプリンタ
と大型造形にも対応し、一貫
した品質で後処理が自動化で
きる専用後処理機。
粉末焼結積層造形(SLS)方式
左:粉末焼結積層造形(SLS)
方式�Dプリンタ Fuse �
右:後処理・粉末再利用装置
Fuse Sift
これまでは巨大かつ数千万円の
投資を要しながらも粉末の飛散
等の課題も多く国内では普及し
なかったSLS。Formlabsが開発
したFuse 1 & Siftでは、特許技
術「Surface Armorテクノロジ
ー」により従来のSLS以上の造
形品質に加え、陰圧システムを
搭載した後処理機で粉末の飛散
をなくし、安全かつ効率的な粉
末の再利用も同時に実現。導入
も運用も低コストで簡単な初の
実用的SLSプリントシステム。
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ラピッドプロトタイピングを導入するに は
ラピッドプロトタイピングは、大手有名メーカーから中小規模のメーカーまで幅広く導入されて
います。当然ながら中にはラピッドプロトタイピングの適用が難しいケースもありますが、その
目的は開発のアジャイル化・高速化と低コスト化を両立させることであり、全試作品製作のうち
数十パーセントに活用できればそれだけでも大きなメリットが期待できるものです。
関係者間のコミュニケーションをより効率的で精度の高いものとし、品質向上にまで寄与するこ
とが期待できるラピッドプロトタイピングは、3Dプリント技術と材料技術の進歩により、つい数
年前と比較しても大きく活用の幅を広げており、今後数年間で更に拡大することは確実です。
3Dプリントは徐々に、そして確実にものづくりにより広く深く浸透を続けており、あらゆる段階
に高速化と低コスト化をもたらし、開発・生産プロセスをより柔軟なものとしています。競合が
より高速・低コストで高品質な製品を開発し続ける前に、3Dプリントの知識とノウハウを社内に
蓄積しておくことは、想像以上に重要となる可能性があるのです。
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