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貴重な試料についても高い精度で解析を行うことが可能
生体を構成する成分は、いずれも生命にとって重要な機能を果たしており、その中でもタンパク質は多岐にわたる働きを有するため、生命活動の仕組みを知る上で、その基本的性質の研究が必要不可欠です。
タンパク質の機能と構造には非常に深い関連性があり、タンパク質が多様な働きを発揮できるのは、それぞれに適した高次構造を取ることができるためと考えられています。タンパク質の凝集やフォールディング現象などは、アルツハイマー病、プリオン病などの疾病にも関係を持つとされています。
赤外分光法を用いることで、タンパク質の二次構造の解析が可能となります。タンパク質の二次構造を解析する代表的な手法として、紫外可視域における円二色性(CircularDichroism:CD)分光法が一般的に用いられていますが、固体や懸濁液では測定ができない、分解能が低いなどの問題があります。これに対して赤外分光法では、試料の状態に影響されることなく、二次構造の定量的な解析や、折り畳み、凝集などのプロセスの追跡が可能です。
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このカタログについて
ドキュメント名 | 【アプリケーションノート】タンパク質分析用FT-IRシステムCONFOCHECKによる軽水中のタンパク質の二次構造解析 |
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ドキュメント種別 | 製品カタログ |
ファイルサイズ | 592Kb |
登録カテゴリ | |
取り扱い企業 | ブルカージャパン株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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Bruker Optics
Application Note
タンパク質分析用 FT-IRシステム CONFOCHECK による
軽水中のタンパク質の二次構造解析
はじめに
生体を構成する成分は、いずれも生命にとって重要な機
能を果たしており、その中でもタンパク質は多岐にわたる
働きを有するため、生命活動の仕組みを知る上で、その
基本的性質の研究が必要不可欠です。タンパク質の機能
と構造には非常に深い関連性があり、タンパク質が多様な
働きを発揮できるのは、それぞれに適した高次構造を取る
ことができるためと考えられています。タンパク質の凝集
やフォールディング現象などは、アルツハイマー病、プリ
オン病などの疾病にも関係を持つとされています。
赤外分光法を用いることで、タンパク質の二次構造の解
析が可能となります。タンパク質の二次構造を解析する代
表的な手法として、紫外可視域における円二色性(Circular
Dichroism: CD)分光法が一般的に用いられていますが、
固体や懸濁液では測定ができない、分解能が低いなどの
問題があります。これに対して赤外分光法では、試料の状
態に影響されることなく、二次構造の定量的な解析や、折
り畳み、凝集などのプロセスの追跡が可能です。
タンパク質の二次構造の違いは、赤外スペクトルに
おいて、図 1に示すように Amide I 吸収帯(1700 ~
1600 cm-1)に反映されます。しかしながら、この波数領 図 1. タンパク質の二次構造の違いを反映する
Amide I 赤外吸収帯( 波数は各構造の平均的な値)
域は、タンパク質にとって重要な存在である水(軽水)に
よる強い吸収と重なるため、とくに水溶液中のタンパク質 試料、分析システム
について、その二次構造の僅かな変化を精度よく解析する
試料タンパク質としてリボヌクレアーゼ A(RNase A)を
ためには、高い感度と広い測光ダイナミックレンジを併せ
用い、その軽水溶液を 10 μg / μlに調整しました。
持つ赤外分光計が求められます。
測定には、タンパク質水溶液分析用 ATRアクセサリー
ブルカー・オプティクスの “CONFOCHECK” は、この
“Bio-ATR II” を装着した CONFOCHECKを使用しまし
ような要求に対応する FT-IR システムであり、軽水溶液中
た。この組み合わせは、水溶液中の微量タンパク質につい
のタンパク質の定性および定量、二次構造の定量的解析、
て、環境変動に伴う二次構造の変化の分析に適しており、
さらには環境に依存した二次構造の変化に関する動的解
溶液の量も 20 μl 程度と少量で測定が可能です。ここでは、
析を可能にします。ここでは、CONFOCHECK による、
試料溶液20 μlを25 ℃から75 ℃の間を昇降温し(2℃間隔)、
タンパク質の二次構造の温度依存性に関する解析事例に
各温度での赤外スペクトルを連続的に測定することで、二
ついて紹介します。
次構造の変化とその可逆性に関する解析を行いました。
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結果
図 2-aに、昇温過程におけるRNase Aの赤外スペクト
ルのAmide I 吸収帯を示します(溶媒のスペクトルを差し
引いたデータ)。まず、昇温開始直後のAmide I吸収帯
においては、ピークトップが 1640 cm-1以下と比較的低い
波数にあることから、室温付近の軽水中におけるRNase
A には、βシート構造が多く存在していることが分かりま
す。続いて、昇温とともにこの構造が減少、70℃以上でほ
ぼ崩壊し、これに代わって高波数側の吸収強度が増加し
ていることが分かります。このことは、昇温により不規則
構造、あるいはそれに近い構造の比率が増加していること
を示唆しています。これらの挙動は、各温度で測定したス
ペクトルについて、初期状態(25℃)におけるスペクトルと
の差分を求めることで、より明確に捉えることができます
(図 2-b)。
さらに、各構造に帰属されるピークの強度変化を追跡す
ることで、二次構造の温度依存性をより正確に理解するこ
とが可能となります。そこで、試料温度に対して、βシート
構造と不規則構造に由来するそれぞれのピークについて積
分強度をプロットした結果を図2-c (beta sheet/1649 ~ 1610
cm-1および disordered structure/1700 ~ 1648 cm-1) に示
します。この結果から、RNase A は、昇温から降温の過
程において、可逆的に構造を変化させていることが確認で
きます。これに加え、各ピークの強度から定量的な評価へ
展開することも可能になります。
まとめ
この解析例が示すように、赤外分光タンパク質分析シス
テムCONFOCHECKを用いることで、軽水溶液中におけ
る微量タンパク質の二次構造の変化を解析することが可能
です。測定に必要な試料の量は 20 μlと微量であり、貴重 図2. 軽水中におけるRnase Aの赤外スペクトルの温度依存性
な試料についても高い精度で解析を行うことができます。 a) 昇温過程における赤外スペクトル
b) 昇温過程における赤外差スペクトル(25℃ との差分)
ここでは、温度依存性に関する解析例を紹介しましたが、 c) β シートおよび不規則構造に由来するピークの強度変化
CONFOCHECKは、pHやストレスなどの環境変化に伴
う変性の追跡や、リガンドとの相互作用の解析などにも応 参考文献
用することが可能であり、CD法等の他の手法と併用する Alexander Wittemann, Matthias Ballauff, Analytical
ことで、タンパク質の高次構造に関するより詳細な知見が Chemistry, 76(10), (2004)
得られるものと期待できます。 Amanda S. Lee, Charles Galea et al, J. Mol. Biol. 327, 699
(2003)
ブルカー・オプティクス株式会社
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