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【アプリケーションノート】可搬型FT-IRと混合物サーチ機能を用いた薬物の定性分析 ALPHA II

製品カタログ

使用場所を選ばず簡単な操作で、純物質の薬物および混合薬物を迅速に測定が可能

薬物には、覚せい剤、麻薬、大麻、危険ドラッグなどが含まれ、さまざまな化学的特徴および薬理学的特徴を有します。法律では規制薬物の対象範囲が広げられてはいるものの、近年、社会問題になっている危険ドラッグについては、その規制の網をすり抜けるために化学構造や作用が類似した薬物が新たに作り出され、市場に流通する種類は絶えず増え続けています。薬物は、単一成分から成ることもありますが、多くの場合、多成分の混合物として存在します。

これは、化学的性質の類似した希釈成分を加え、高価な主成分の使用量を減らすために行われます。また、一部の物理的性質の類似した希釈成分が混合され、重量や体積の調整に使用されることもあります。その結果、化学的にも物理的にも類似した性質をもつ薬物となるため、規制されている薬物か否かを簡単に見分けることは困難となります。

そして、このような混合薬物の副作用がトラブルを招き、最悪の場合、死をもたらすこともあります。規制薬物の密輸や販売といった犯罪行為を摘発するためにも、薬物に含まれている各成分を迅速に同定することが今まさに強く必要とされています。ここでは、薬物の分析に最適な赤外分光計と、そのスペクトル解析ツールとして有効な混合物サーチ機能を用いた、危険ドラッグの定性分析事例について紹介します。

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このカタログについて

ドキュメント名 【アプリケーションノート】可搬型FT-IRと混合物サーチ機能を用いた薬物の定性分析 ALPHA II
ドキュメント種別 製品カタログ
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Bruker Optics Application Note 可搬型FT-IRと混合物サーチ機能を 用いた薬物の定性分析 はじめに  薬物には、覚せい剤、麻薬、大麻、危険ドラッグなどが 含まれ、さまざまな化学的特徴および薬理学的特徴を有し ます。法律では規制薬物の対象範囲が広げられてはいるも のの、近年、社会問題になっている危険ドラッグについて は、その規制の網をすり抜けるために化学構造や作用が類 似した薬物が新たに作り出され、市場に流通する種類は絶 えず増え続けています。薬物は、単一成分から成ることも ありますが、多くの場合、多成分の混合物として存在しま す。これは、化学的性質の類似した希釈成分を加え、高価 な主成分の使用量を減らすために行われます。また、一部 の物理的性質の類似した希釈成分が混合され、重量や体積 の調整に使用されることもあります。その結果、化学的に 図 1.可搬型 FT-IR ALPHA-P も物理的にも類似した性質をもつ薬物となるため、規制さ れている薬物か否かを簡単に見分けることは困難となりま 分析方法 す。そして、このような混合薬物の副作用がトラブルを招  可搬型 FT-IR ALPHAは、A4サイズというコンパクト き、最悪の場合、死をもたらすこともあります。規制薬物 さ故に使用場所を選ばず、純品の規制薬物や危険ドラッグ の密輸や販売といった犯罪行為を摘発するためにも、薬物 の識別に有効な分析ツールです。測定の原理は赤外分光法 に含まれている各成分を迅速に同定することが今まさに強 に基づきます。物質に赤外 (IR)光を照射すると分子振動が く必要とされています。ここでは、薬物の分析に最適な赤 誘起され、その振動モードに伴った特定波長のエネルギー 外分光計と、そのスペクトル解析ツールとして有効な混合 が選択的に吸収されます。測定で得られるスペクトルは、 物サーチ機能を用いた、危険ドラッグの定性分析事例につ IR光の各波長における吸収強度で表され、分析対象物の いて紹介します。 化学構造を反映することから、薬物の識別や定性にも有効
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です。薬物の測定は、一回反射ダイヤモンド ATRモジュー の類似性はヒットクオリティという数値で表され、1000 ルを装備する ALPHA(ALPHA-P)により、簡単、迅速 ポイントが最大であり、このとき、両者が完全に一致して に行うことができます。試料をダイヤモンドプリズムの上 いることを示します。このサーチ結果では、ヒットクオリ に置き、圧力クランプで密着させるだけで、20秒程度で ティは 967ポイントと非常に高く、スペクトルパターンも 測定が完了します。ATR法は試料調製を必要としないため、 ほぼ一致していることから、本試料はメフェドロンの純物 追加で使用する薬品や消耗品もありません。 質であると判断できます。 しかしながら、このような純物質のケースは稀であり、現 ライブラリ・混合物サーチ機能 実的には、複数の成分が混合された状態で流通しています。  それぞれの薬物試料の同定は、成分が特定されてい る物質の IRスペクトルデータが収録されたライブラリ 例:コカイン塩酸塩混合薬物の分析 と、ALPHAの制御およびスペクトルの解析に使用される OPUSソフトウェアの自動スペクトルサーチ機能によって  ここでは、コカイン塩酸塩が別の物質で希釈された混合 行われます。このアプリケーションノートの中で紹介する 薬物の分析例を示します。図 3に、ALPHA-Pを用いて測 薬物のサーチ分析は、最新の薬物が 200件以上収録された 定した混合薬物のスペクトルと、その混合物サーチの結果 TICTACライブラリ(http://www.tictac.org.uk/)と、多 を示します。赤色は測定した試料のスペクトル、紫色は検 分野にわたるさまざまな物質が 26,000件以上収録された 索で得られた 2成分のスペクトルを足し合わせた複合スペ ATRコンプリートライブラリを使用して行われました。 クトル、緑色は試料のスペクトル(赤色)から複合スペク FT-IR分光計 ALPHA-Pとこれらのライブラリとを組み トル(紫色)を差分した残差スペクトルを示します。 合わせることで、純物質の薬物のみならず、混合薬物も同 定することができます。OPUSソフトウェアの “ 標準サー チアルゴリズム”は、測定したスペクトルをライブラリデー タに照合させ、その中から最もスペクトルパターンが類似 する物質を見つけ出す強力な機能を有します。しかし混合 薬物の場合、測定したスペクトルは複数の成分に由来する ピークが混在するため、各成分を同定することは困難にな ります。このような混合スペクトルの定性的な解析には、 OPUSの “ 混合物サーチアルゴリズム ” が威力を発揮しま す。混合物サーチ機能を実行すると、スペクトルパターン が最も類似する複数成分の組み合わせが自動計算され、最 終的に混合物に含まれる各成分の候補が導き出されます。 例:純物質薬物の分析  メフェドロンは世界的に規制薬物と定められており、日 図 3.コカイン塩酸塩を含む混合薬物の混合物サーチ結果( 赤色 = 測定スペクトル、 紫色 = 検索結果の 2 成分のスペクトルを足し 本でも麻薬のひとつとして指定され、輸入や所持等が全面 合わせた複合スペクトル、緑色=残差スペクトル;赤色-紫色) 禁止されています。図 2に、ALPHA-Pを用いて測定した メフェドロンの IRスペクトルと、そのライブラリサーチ 結果を示します。測定スペクトルとライブラリスペクトル 図 2.メフェドロンのライブラリサーチ結果(赤=測定スペクト 図 4.コカイン塩酸塩を含む混合薬物の測定スペクトルと ル、青=ライブラリスペクトル) 検索でヒットした化合物のスペクトル
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 残差スペクトルが平坦に近づくほど、両者の類似性が高 明しました。アセトフェネチジンは弛緩薬や抗うつ剤とし いことを表します。この解析結果では、残差スペクトルの て使用されていましたが、その腎臓毒性により現在ではほ 強度は小さく、測定したスペクトルと複合スペクトルはほ とんどの国で使用が禁止されています。しかし現在でも、 ぼ一致していることから、主成分のコカイン塩酸塩に加え、 希釈物質として使用されており、この分析結果のように高 局所麻酔薬のアネステジン(ベンゾカイン)が含まれてい 濃度で検出されることがあります。 ると考えられます。また、サーチ結果において成分 [%]に 示される数値から、試料に含まれる各成分のおおよその濃 まとめ 度を見積もることもできます。図 4は、図 3で表示した測 定スペクトルと、検索で得られた複合スペクトルおよび各  可搬型 FT-IR ALPHAは、使用場所を選ばず簡単な操作 単一成分のスペクトルを並べて表示したものです。コカイ で、純物質の薬物および混合薬物を迅速に測定すること ン塩酸塩とベンゾカインのスペクトルは非常に類似してい ができます。測定した IRスペクトルの定性的な解析には、 ますが、混合物サーチ機能は、混合薬物中の各成分を的確 最新の薬物が収録された TICTACライブラリと多分野に に捉えることができました。 わたる化合物が収録された ATRコンプリートライブラリ を使用できます。また、ユーザ自身が測定した新たな薬物 のスペクトルをライブラリに追加登録することも可能で 例:クラックの分析 す。近年、社会問題となっている危険ドラッグにおいては、  クラックは、コカイン塩(多くはコカイン塩酸塩)を炭 類似した化合物が年々増え続けていることから、ライブラ 酸水素ナトリウム(重曹)と共に加熱することにより生成 リを更新することは重要です。このようなライブラリを元 される高純度コカインを主成分とします。高純度コカイン に、OPUSソフトウェアの混合物サーチ機能を用いて解 はコカイン塩酸塩とは対照的に融点が低く揮発性が高いた 析することで、広範な薬物を迅速に同定することができ、 め、クラックを喫煙する形で体内に取り込まれます。クラッ 密輸や販売などの犯罪行為の摘発に役立つことが期待さ クも通常は他の成分と混合されており、純品として扱われ れます。 ることは稀です。図 5に、ALPHA-Pを用いて測定した実 際のストリートドラッグの混合物サーチ結果を示します。 その結果、本試料も局所麻酔薬のアネステジンが混合され ていることがわかりました。さらに、鎮痛剤のアセトフェ ネチジン(フェナセチン)も相当量含まれていることが判 図 5.クラックの混合物サーチ結果(赤色=測定スペクトル、紫 色=検索結果の 3 成分のスペクトルを足し合わせた複合ス ペクトル、緑色=残差スペクトル;赤色-紫色) ブルカー・オプティクス株式会社 本社: 〒104-0033 東京都中央区新川 1-4-1 住友不動産六甲ビル Phone: 03-3523-6870 Fax: 03-3523-6871 大阪営業所: 〒532-0004 大阪市淀川区西宮原 1-8-29 テラサキ第2ビル Phone: 06-6394-8118 Fax: 06-6394-9003 www.bruker.com marketing@bruker-optics.jp Application.Note.AN-JP.11