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医薬品試料の連続測定から、定性・定量分析までを自動的に行うことが可能な、理想的なスクリーニングシステム
近年、製薬産業では創薬プロセスと同様に、製剤開発プロセスにおけるハイスループットスクリーニング技術が重要視されています。特に、固体形状での識別および分類には、高水準のオートメーションが同時に要求されます。これは、固体形状での挙動を理解することは、医薬品の有効性や安全性の開発へつながると考えられるためです。例えば、医薬品有効成分(API)の結晶構造が、長期安定性や体内での溶解性、効能などに大きく影響するということがわかっています。
ラマン分光法は、医薬品の分野では幅広く利用されており、固体構造を分子レベルで解析することができる有用な分析手法です。特に、非接触、非破壊分析法であることから、製剤原料の判別分析をはじめ、最終形状における結晶多形の判別や、各種成分の均一性および定量分析、さらには温度や湿度の変動に対する安定性評価など、その用途は多岐にわたります。
また、ガラス越しにも測定できることから、ガラス容器内の溶液成分の判別や、溶質成分の定量分析、塩の形成挙動解析などにも適しています。ここでは、ブルカー・オプティクスが提供するFT-ラマン分光計とハイスループットスクリーニング(HTS)アクセサリを用いた、医薬品の定性、定量分析への応用例について紹介します。
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このカタログについて
ドキュメント名 | 【アプリケーションノート】FT-ラマンによる医薬品のハイスループットスクリーニング MultiRAM |
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ドキュメント種別 | 製品カタログ |
ファイルサイズ | 658.1Kb |
登録カテゴリ | |
取り扱い企業 | ブルカージャパン株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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3500 3000 2500 2000 1500 1000 500
Wavenumber cm-1
Application Note
FT-ラマンによる医薬品の
ハイスループットスクリーニング
はじめに FT-ラマンシステム
近年、製薬産業では創薬プロセスと同様に、製剤開発プロ FT-ラマン分光計
セスにおけるハイスループットスクリーニング技術が重要視 ブルカー・オプティクスが提供するF T-ラマン分光計に
されています。特に、固体形状での識別および分類には、高 は、FT-ラマン専用機のMultiRAMと、FT-IR分光計にFT-ラ
水準のオートメーションが同時に要求されます。これは、固体 マンモジュールのRAM IIを接続したハイブリッドタイプがあ
形状での挙動を理解することは、医薬品の有効性や安全性 ります(図1、2)。
の開発へつながると考えられるためです。例えば、医薬品有
効成分(API)の結晶構造が、長期安定性や体内での溶解性、
効能などに大きく影響するということがわかっています。
ラマン分光法は、医薬品の分野では幅広く利用されており、
固体構造を分子レベルで解析することができる有用な分析
手法です。特に、非接触、非破壊分析法であることから、製
剤原料の判別分析をはじめ、最終形状における結晶多形の
判別や、各種成分の均一性および定量分析、さらには温度や
湿度の変動に対する安定性評価など、その用途は多岐にわた
ります。また、ガラス越しにも測定できることから、ガラス容
器内の溶液成分の判別や、溶質成分の定量分析、塩の形成
挙動解析などにも適しています。
ここでは、ブルカー・オプティクスが提供するFT-ラマン分光
計とハイスループットスクリーニング(HTS)アクセサリを用い 図 1.FT - ラマン分光計 MultiRAM
た、医薬品の定性、定量分析への応用例について紹介します。
Raman Intensity
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図 2.FT - IR / ラマンハイブリッドシステム( VERTEX 70 + RAM II ) 図 3.HTS - ラマンアクセサリ
FT-ラマンは分散型ラマンと比較して、高い波数分解能(最
高0.5cm-1)でスペクトルを取得することができます。フーリエ
変換型分光法で得られるスペクトルの波数精度は、分散型と
比較して1~2桁程度高く、正確にピーク位置を捉えることがで
きます。その結果、より細かくピークが分離されたスペクトル
を得ることができ、わずかなピークシフトも再現性良く捉える
ことが可能です。また、測定時間はスペクトルの波数範囲に影
響を受けないため、スペクトル全体を数回に分けて測定しな
ければならない分散型ラマン分光計(特に高分解能測定時)
よりも時間を短縮することができます。
一般的にラマン測定では、ラマン散乱光を覆い隠してしま
う蛍光が問題となることが多く、この場合には蛍光の影響を
抑制するために、波長の長い励起レーザーが使用されます。
本システムでは、1064nmおよび785nmの近赤外レーザーを 図 4.OPUS/LAB 測定ポジション設定
使用することで蛍光の影響を抑制することができ、更にゲル
マニウム検出器との組み合わせで、高感度、低ノイズでスペク 判別分析
トルを取得することができます。例えば、医薬品原料の判別で ハイスループットスクリーニングにおいて典型的なア
あれば、1検体あたり数秒程度の測定で分析することが可能 プリケーションは、医薬品有効成分(API)の結晶形や原
です。 材料の判別分析です。測定で得られた試料のスペクトルは、
事前に測定した既知試料の標準スペクトルと比較され判別
HTS- ラマンアクセサリ されます。ここでは、APIとその他の賦形剤をリファレン
図 3に示す HTS-ラマンアクセサリは、96穴のマイク
ロプレートフォーマットを標準とし、MultiRAMおよび
RAM IIの試料室に装着して使用されます(図 3)。測定
対象試料の紛体をウェルの中に入れるだけで、特別な調
整を必要としません。このアクセサリでは、レーザー光
は、ウェルの底面から照射されるため、試料の量に関係な
く測定位置が常に一定に保たれます。レーザー光を上面か
ら照射するシステムの場合は、レーザーの焦点に合わせて
試料の高さを一定にする必要があり、調整に時間を要しま
すが、HTS-ラマンアクセサリは、底面から照射すること
で無駄な調整時間を省き、常に安定した測定を可能にしま
す。さらには、バイアル瓶仕様のプレートを装着することで、
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バイアル瓶の底面からの測定も連続で行うことができます。 Wavenumber cm-1
これらの測定は、OPUS/LABの洗練されたユーザインター
フェースを用いてシンプルな操作で行われます(図 4)。 図 5.アセチルサリチル酸、フルクトース、デンプンの
FT- ラマンスペクトル
Raman Intensity
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スとし、HTS-ラマンアクセサリを用いて全自動測定を行っ 定量分析
た結果を示します。図 5に、アセチルサリチル酸、フルクトー ラマン分光法は、医薬品産業において、定性分析のみな
ス、デンプンを各 3回測定したスペクトルを示します。非 らず、定量分析でも重要な役割を果たしています。OPUS
常に再現性の高いスペクトルが得られていることがわかり ソフトウェアでは、定量モデルの開発に一変量と多変量の
ます。 二つの解析メソッドを使用できます。その機能の一つである、
スペクトルの比較は、スペクトルの相違性や類似性を反 PLSアルゴリズムを用いた検量線作成メソッドでは、定量
映するユークリッド距離やマハラノビス距離などの値を計 に使用する波数領域とスペクトル前処理との最適な組み合
算することによって行われます。判別ライブラリ作成の重 わせを見つけ出す自動計算が行われ、短時間で高精度の検
要なポイントは、図 6に示すクラスター分析結果のように、 量線を作成することができます。ここでは、検量線作成の
それぞれの物質を混同することなく的確に判別できること ため、デンプンやセルロースを含む 4種類の成分の混合比
にあります。F T -ラマン分光法では、最適なライブラリを作 率を変えた 15通りのリファレンス混合物を調製し測定し
成することで、例えば構造の類似した糖類でも、スクロー ました。得られた 15本のスペクトルについて、自動最適
ス、フルクトース、グルコースを的確に判別することがで 化計算機能を用いることで、各成分の検量線を作成しまし
きます。また、とうもろこし、ポテト、米等の由来の異なる た。図 8、9には、デンプンとセルロースの各濃度につい
デンプンも正確に判別することが可能です。図 7は、全 12 て、真値(縦軸)と検量線から求められた値(横軸)との
種類の主薬と賦形剤を登録したリファレンスライブラリを 相関を示します。各々の検量線について、平均予測誤差は
用いて行った、未知試料の判別分析の結果を示します。ラ 2.5%、1.4%と求められ、高い相関が得られることがわか
イブラリ中の化合物の一種と判別できた場合は、その化合 ります。ここで作成した検量線を元に未知試料の定量分析
物名と類似性を示すヒットクオリティ値を確認することが を行うと、図 10のような分析結果画面が表示されます。こ
できます。一方、測定した試料がライブラリ中の化合物で のとき、事前に複数の検量線を設定しておくことで、一度
あっても、スペクトルが部分的に異なり指定した閾値を外 に多項目の定量分析を行うことができ、その結果は一覧で
れた場合は、その結果が警告として表示されます。 表示されます。
図 8.デンプン含有量の真値と多変量解析 PLS アルゴリズムで
図 6.クラスター分析による分類 求めた値との相関
図 7.OPUS/LAB 判別分析結果 図 9.セルロース含有量の真値と多変量解析 PLS アルゴリズムで
求めた値との相関
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参考文献
- Morisette SL, Almarsson OE, Peterson ML, Remenar JF,
Read MJ, Lemmo AV, Ellis S, Cima MJ, Gardner CR. J.
Raman Spectrosc. 2004; 56: 275
- Kachrimanis K, Braun D, Griesser UJ. J. Pharm. Biomed.
Anal. 2007; 43/2: 407
- Schmidt AG, Wartewig S, Picker KM. J. Raman Spectrosc.
2004; 35: 360
- Auer ME, Griesser UJ, Sawatzki. J. J. Mol Struct. 2003; 661-
662: 307
図 10.OPUS/LAB 定量分析結果
まとめ
FT-ラマンとHTS-ラマンアクセサリの組み合わせは、医
薬品試料の連続測定から、定性、定量分析までを自動的
に行うことが可能な、理想的なスクリーニングシステムです。
FT-ラマン分光計の特長である波数精度の高さや、近赤外
レーザーの使用による蛍光の抑制は、製剤のみならず、さま
ざまな化合物に対して非常に有効です。また、直観的な操作
性と充実した解析機能を有するOPUSソフトウェアを用いる
ことで、膨大な量のスペクトルデータも一括で処理でき、迅
速な定性、定量分析を可能とします。
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