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潤滑油中の添加物や汚染物質の濃度変化などを容易に視覚化
赤外分光法を用いることで、使用潤滑油の中の変質副生成物、汚染物質、添加剤などの量を日常的にチェックすることが可能です。
しかしながら、赤外分光法が潤滑油の標準分析法のひとつとして認められながらも、積極的に利用されるケースはさほど多くはありません。その一番の理由としては、エンジンと潤滑油の性能について、従来からの物理的および化学的な手法による評価が伝統的に行われており、それらに基づくデータが長年にわたり蓄積されてきたことが挙げられます。
今日、フーリエ変換型赤外分光計(FT-IR)は、性能が向上する一方で低価格化が進んできたことにより、潤滑油の分析手法として、あらためて注目を集めるようになっています。とくに使用済み潤滑油の分析においては、より迅速にデータを取得する必要性が高まっており、FT-IRは時間を要する従来の湿式物理分析法および化学分析法と置き換わっていくと予想されます。FT-IRによる使用済み潤滑油の分析については、代表的な標準分析法であるASTM E2412「FT-IRを使用したトレンド分析による使用済み潤滑油の状態監視」として示されており、この分野においてFT-IRのさらなる展開が期待されます。
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このカタログについて
ドキュメント名 | 【アプリケーションノート】FT-IRによる潤滑油のルーチン分析 |
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ドキュメント種別 | 製品カタログ |
ファイルサイズ | 701.9Kb |
登録カテゴリ | |
取り扱い企業 | ブルカージャパン株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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Application Note AN M57
FT-IRによる潤滑油のルーチン分析
赤外分光法を用いることで、使用潤滑油の中の変質副生成物、汚 腐食を防止し、エンジンの寿命を長く保つことにあります。ディー
染物質、添加剤などの量を日常的にチェックすることが可能です。 ゼルエンジンでは、潤滑油は燃料の不完全燃焼により生じた煤を
しかしながら、赤外分光法が潤滑油の標準分析法のひとつとして 洗浄する役割も担っています。使用中の潤滑油の組成を分析する
認められながらも、積極的に利用されるケースはさほど多くはあ ことで、燃焼ガスがどこから漏出したか、また、基油が変質してい
りません。その一番の理由としては、エンジンと潤滑油の性能につ ないかを確認することができます。さらに、エンジン部品に異常
いて、従来からの物理的および化学的な手法による評価が伝統 がないか、危険な状態で稼働していないかなど判断するための情
的に行われており、それらに基づくデータが長年にわたり蓄積され 報も得られます。このように、潤滑油の状態を日々モニターするこ
てきたことが挙げられます。 とで、潤滑油を最適なタイミングで交換できるようになるとともに、
今日、フーリエ変換型赤外分光計(FT-IR)は、性能が向上する一方 エンジンの稼働具合を把握できるようになり、結果としてランニン
で低価格化が進んできたことにより、潤滑油の分析手法として、あ グコストの低減とエンジンの長寿命化が同時に期待できます。
らためて注目を集めるようになっています。とくに使用済み潤滑油
の分析においては、より迅速にデータを取得する必要性が高まっ 変質油の特徴と従来分析法
ており、FT-IRは時間を要する従来の湿式物理分析法および化学分
析法と置き換わっていくと予想されます。FT-IRによる使用済み潤 燃料の残留物
滑油の分析については、代表的な標準分析法であるASTM E2412 一般的に、燃料の残留物が潤滑油中に混入する原因には、燃料と
「FT-IRを使用したトレンド分析による使用済み潤滑油の状態監視」 空気の不適な成分比率、ピストンリングの摩耗、燃料の漏出など
として示されており、この分野においてFT-IRのさらなる展開が期 があります。燃焼室でのブローバイガスの発生により燃料の高沸
待されます。 点留分は潤滑油を汚染します。一方、発生頻度は低いものの、配
管からの漏出による燃料の低沸点残留成分が潤滑油へ混入し汚
染することがあります。いずれの場合も、使用した潤滑油中に燃
使用中の潤滑油の分析が必要とされる理由 料が存在するか判別することは、重要な分析項目のひとつです。
使用中の潤滑油を分析する目的は、潤滑油の状態を診断し、交 燃料成分の比率が高いと(通常2%)、潤滑油の粘度を低下させ、
換の最適なタイミングを図ることにあります。例えばエンジン用 エンジン効率の低下につながります。さらに、ディーゼルエンジン
潤滑油の役割は、エンジン可動部の動作を滑らかにしつつ摩耗や
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オイル中に含まれる燃料成分の存在は特に重要で、燃料漏れによ 酸素との反応-全ての潤滑油は、酸素が存在する環境で高温お
る火災の危険性を高めることになります。 よび高圧下におかれることで炭素と酸素の結合が形成され、最
ディーゼル燃料および潤滑油は、共に原油蒸留からの生成物で 終的にはカルボン酸が生成されます。燃焼によりエステル、ケトン、
あるため、化学的組織と物性が非常に類似しています。したがっ アルデヒド、炭酸塩、および炭酸等の多様な副生成物が生成され
て、潤滑油中のディーゼル燃料希釈成分を同定することは非常に ます。これら全ての副生成物の分布や組成はとても複雑です。潤
困難です。通常、このような分析にはガスクロマトグラフィー(GC) 滑油に溶解する化合物もあれば、添加剤に吸収される化合物も
が用いられますが、質の高いデータを蓄積することで、FT-IRでも あります。カルボン酸の存在は、潤滑油の酸性度に寄与し、その
迅速かつ簡単に分析することが可能になります 。 構成は全酸価(TAN)を利用して解析されるか、間接的に全塩基価
(TBN)から解析されます。これにより、潤滑油中の添加剤の基質
水および冷却剤による汚染 がどれだけ消耗されているかを評価します。
水は燃焼の副生成物であり、エンジンの動作環境においては汚
染物質となる可能性は低いものの、冷却剤漏出の指標となりま 窒素との反応 -有機化合物が窒素と酸素が存在する環境で高温、
す。また、大気中の水分が、特に冷却したエンジン内で凝縮するこ 高圧下におかれることで、窒素酸化物(NOX)が生成されます。こ
とで汚染の原因となり得ますが、この場合は平均的なエンジンの れらの化合物は分子量の増加を促し、凝集、酸化、光沢化、スラ
動作温度において水は蒸発するため、その影響はそれほど深刻で ッジの形成などを引き起こします。潤滑油の酸性度は、全酸価や
はありません。水の汚染で危惧されることは、潤滑油基油の酸化 全塩基価によって検出され、高分子生成物は粘度の変化を測定す
と添加物の加水分解により酸性度が増加し、エンジンの摩耗と腐 ることで検出されます。
食が促進することです。また、水が存在すると油がゲル化して粘
度が高まり、エマルジョンが生成されるため、エンジンの故障にも 硫黄との反応-潤滑油の添加剤として元々含有する硫黄化合物と
つながります。水分の分析は、カールフィッシャー法またはクラッ 同様に、燃焼中に燃料内の硫黄成分と酸素が反応することにより、
クルテストにより行われ、冷却した油から分離した状態で高精度 副生成物である硫黄化合物は発生します。潤滑油の粘度測定は、
に検出されます。一方、エチレングリコール冷却剤の検出は、シッ 潤滑性能を評価するために用いられます。また、粘度は酸化プロ
フ試薬を用いたカロリメトリー法で行なわれ、GC分析の結果も参 セスを特定するだけではなく、希釈や剪断など他の要因に関する
考にして定量分析されます。 情報も含まれています。したがって、酸化物の生成による潤滑油の
変質については、全酸価や全塩基価の測定に加え、粘度測定を併
煤粒子 用して分析が行われます。
煤は、ディーゼルエンジンの不完全燃焼から発生します。潤滑油
中の煤の増加は、燃焼に問題があるか、また、オイル交換の必要 潤滑油中の摩耗金属
性が高まっているかを示す指標になります。ディーゼルエンジンの 金属や、冷却剤の汚染により生じるケイ素、ホウ素、ナトリウムな
潤滑油には、煤粒子の成長を制御するための分散剤が含まれてい どの検出には、元素分析が用いられます。これらの元素は、赤外
ます。しかし、潤滑油が制御できる一定量以上の煤が発生すると、 分光法においては煤の定量値に影響を与えます。
オイルの粘度が高まり炭素のスラッジが形成され、フィルターやド
レイン配管に目詰まりを引き起こすことになります。煤の大量発 FT-IRを用いた潤滑油の分析
生は、エンジン内の過度なリングの摩耗や、燃費低下の原因とな 潤滑油には多種の化合物が含まれており、さらに実際の使用によ
ります。一般的な煤の分析法は、メンブレン抽出法や、熱重量分析 り、基油や添加剤からの変性物、副生成物、および、汚染物質など
(TGA)です。前者の方法は煤だけを特定する訳ではなく、潤滑油 が混在していきます。基油や添加物の存在下で、低濃度の変質副
中の全ての粒子が求められてしまいます。後者の方法を行う場合 生成物や汚染物質を検出することは容易ではありません。しかし
は、先に全不溶物をペンタン不溶解分として回収するか、ASTMの ながらFT-IRでは、測定した潤滑油試料のスペクトルから基油や添
凝固剤を使用して遠心分離をかけて回収します。TGAは煤の分析 加物のスペクトルを差分処理することにより、変質した成分のスペ
にとても有効な手法です。 クトルを得ることができます。このように、潤滑油の分析にFT-IR
を用いる最大のメリットは、煤、酸化物、ニトロ化合物、硫酸化物、
水分、冷却剤、燃料混入、添加剤の消耗等、複数の項目を同時に
潤滑油の品質 分析できる点にあります。また、変性物や副生成物由来のスペクト
潤滑油は、使用していくことで変質していきます。基油の変質の最 ル変化を解析し、潤滑油中の添加物や汚染物質の濃度変化など
も一般的な兆候は、酸化と剪断の進行です。酸化は、潤滑油が存 を容易に視覚化することができます。さらに、潤滑油の状態は使
在している環境下で酸素と反応することにより起こります。剪断 用している期間中にも分析できるため、時間とともに変化していく
は、潤滑油が過酷な圧力や温度条件下におかれることで起こる 様子を捉えることができます。
物理的な分解です。潤滑油の変質過程は他にもありますが、いず
れの過程も稼働部品に十分な潤滑効果を与えることができなくな
ります。したがって、副生成物の変質レベルを評価する分析手法は、
潤滑油の状態を決定づける重要度の高いものになります。潤滑
油の主な変質過程は、以下の3通りの反応に分類されます。
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Water....................................
Soot………………………………………………...............................................
Oxidation………………………………………….…...................................................
.
Nitration……………………………….........…………......................................................
Sulfation……………………………………………..........................................................................
Ethylenglycole……………………………………………......................................................................
Additives……………………… ………………………………......................................................................
Fuel..................................…………………………………………......................................
4000 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500
Wavenumber cm-1
上記のスペクトルは、使用前後の潤滑油の差異を表します。このうち変化が確認されたエリアを元に、化合物を特定します。
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