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安価なIoTデバイスで中小企業の向上での機器の稼働状況の見える化を行うための実践レポート。実際に利用したデバイスから検討事項・振り返りまでをレポートしています。
⚫ 工作機械の稼働状況の見える化
工作機械が加工中か停止中かを判別し、現在の状況を表示する。また、1日単位や、 1週間単位、 1ヶ月単位で稼働率や加工回数を集計し、グラフ等で表示、見える化する。
⚫ 水溶性加工液の状態の見える化
水溶性加工液の温度測定と水位測定もして欲しいという要望があがったため、水溶性加工液の状態を見える化するシステムの検討をおこなった。
⚫ クラウドシステムによる見える化
ウドシステムに、プラットフォーム事業者の NTT西日本様にご提供いた だく IoTクラウドシステムである「 Things Cloud」を採用し、 IoTデバイスより収集したデータの見える化を図る。また、同時に「 Google Cloud Platform」による分析もおこなえるシステムの開発をおこなった。
このカタログについて
ドキュメント名 | IoTデバイスによる工場内の機器の稼働状況の見える化の実践レポート |
---|---|
ドキュメント種別 | ホワイトペーパー |
ファイルサイズ | 1.3Mb |
登録カテゴリ | |
取り扱い企業 | デジタルソリューション株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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IoT デバイスによる機器の稼働状況の見える化
価格競争が激しくなっている今日の製造業において、生産性の向上やコスト削減のた
めに設備の稼働状況を把握することが重要になっている。コンソーシアム企業様も例外
ではなく、設備の稼働状況を把握したいと考えておられるが、最新の機械や高額なオプ
ションが必要になる場合が多く、なかなか導入できない。そこで、工作機械やその周辺
機器に安価な IoT デバイスを取り付け、データをプラットフォーム事業者に用意して
もらったクラウドシステムに送信し、現在の値や、集計情報など、稼働状況を表示する
システムを開発することにした。
⚫ 工作機械の稼働状況の見える化
工作機械が加工中か停止中かを判別し、現在の状況を表示する。また、1 日単位
や、1 週間単位、1 ヶ月単位で稼働率や加工回数を集計し、グラフ等で表示、見え
る化する。
➢ 開発
照度測定用の IoT デバイス
一般的な 3 層の積層信号灯に取り付けることを想定し、3 灯の点灯状態
が把握できるようシステムを組んだ。テスト用にスイッチで ON/OFF する
汎用照度センサ回路 (アドレス設定機能使用)
タイプの 3 層積層信号灯を使用した。汎用の照度センサ(TSL2561 照度
センサモジュール)を使用し、テストをおこなった。問題なくデータ取得
でき、回路もシンプルであるため、実機へ取り付ける方針とした
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➢ テスト機への取り付けと試験運用
照度測定用 IoT デバイス
前述の信号灯検出用IoTデバイス同様、津田製作所様にご協力いただき、
テスト機への取り付けをおこなった。取り付けた機械は牧野フライス社製
a71 横型マシニングセンタで、3 色の積層信号灯に照度センサを結束バン
ドで固定し、Raspberry Pi 本体を信号灯の横に設置した。Raspberry Pi
までの電源供給として、20m の延長電源コードを使用し、機械裏側にある
コンセントから機械天井を伝って配線した。
試験開始時は点灯したと判断するための照度センサの閾値が高すぎて
実際は点灯しているのに消灯と判断されてしまったり、プログラムの問題
で長時間稼動していると停止したりしていたが、閾値の見直しとプログラ
ムの改良により、安定稼動するようになった。
照度測定用 IoT デバイステスト状況
➢ 他の機械への展開
テスト機による動作確認が完了したため、他の機械への照度測定用 IoT デバ
イスの設置をおこなった。まずは津田製作所様のNC機 23 台に設置するため、
電線工事をおこなった。電源は積層信号灯付近に 1 箇所と、同時に設置した温
度センサ用にクーラントタンク付近に 1 箇所の合計 2 箇所ずつ、各機械に配線
をおこなった。取り付けを予定していた 23 台のうち 13 台は信号灯が 1 灯の
タイプで、このタイプだと稼動が判定できないことがわかったため、照度セン
サは 10 台のみ設置した。残りの 13 台については積層信号灯に改造後、順次
設置していく。
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➢ 稼働状況の見える化
設置した IoT デバイスからのデータは、IoT プラットフォームである NTT
コミュニケーションズの「Things Cloud」および Google の「Google Cloud
Platform」に送信、蓄積しおり、データの可視化はこれらのプラットフォーム
上でおこなうことにした。各加工機の稼動状態をリアルタイムで表示したり、
日ごと、週ごと、月ごとの稼働率の集計を表示したりすることで、稼働状況の
見える化を実現する。詳細は「クラウドシステムによる見える化」を参照。
⚫ 水溶性加工液の状態の見える化
コンソーシアム企業様より、水溶性加工液の温度測定と水位測定もして欲しいと
いう要望があがったため、水溶性加工液の状態を見える化するシステムの検討をお
こなった。水溶性加工液は工作機械で加工をおこ
なう際に、加工箇所に向けて放出する液体で、切
りくずの排出、冷却、潤滑など重要な役割を担っ
ている。この水溶性加工液の温度、水位、濃度、
pH などを測定し、現在の状態を表示、一定期間
での集計をおこない、統計分析や要因分析がおこ
なえるようにする。
水溶性加工液を使った切削
➢ 検討したデバイス
水温測定用 IoT デバイス
防水加工された温度センサで、工作機械の水溶性加工液の温度を測定す
る。測定温度域は室温+α程度。
⚫ Raspberry Pi
⚫ A/D 変換機 (ADS1115)
⚫ サーミスタ (10kΩ)
水位測定用 IoT デバイス
⚫ Raspberry Pi
⚫ Arduino Mega
⚫ 水位センサ (Milone Tech 社製: eTape liquid level sensor)
⚫ A/D 変換機 (ADS1115)
⚫ アクリルパイプ (センサ保護用)
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➢ 開発
水温測定用 IoT デバイス
防水加工された温度センサを工作機械のクーラントタンク内に取り付
け、水溶性加工液の温度データを収集する。常温域で安定した測定ができ
るということで、サーミスタのテストをおこなった。アナログ出力のため、
A/D 変換器(ADS1115)が必要だが、それ以外にハードウェア的に特に
難しい部分は無く、後述の水位測定と機材が共用できる。水道水でのテス
トも良好だったため、実機に取り付けてテストをおこなうことにした。
水位測定用 IoT デバイス
水位測定用のセンサを工作機械のクーラントタンク内に設置し、クーラ
ントの水位を測定する。センサは Milone Tech 社製の eTape liquid level
sensor を、水温測定同様、ADS1115 という A/D 変換器と組み合わせて
使用した。回路が単純でプログラムも組みやすいため、この方式で実際に
水につけてテストをおこなった。
実際にテストをおこなってみると eTape liquid level sensor には下記
のような特徴があることがわかった。
A/D 変換機(ADS1115)を使用した水位測定回路
✓ センサが揺れると出力が安定しなくなるため、揺れないように固
定する必要がある。
✓ センサが曲がっている出力が変わってしまうため、センサ自体が
曲がらないように設置する必要がある。
✓ センサ上部は補強可能だが、測定部に両面テープ等を貼ってはい
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けない。
センサを透明のアクリルパイプに入れたところ、安定した計測が可能であ
ることが判明したため、実記でのテストをおこなった。
➢ テスト機への取り付けと試験運用
水温測定用 IoT デバイス
広陵発條製作所様にご協力いただき、テスト機に取り付けをおこなった。
取り付けた機械は森精機社製 NV5000α縦型マシニングセンタで、クーラ
ントタンクのメンテナンス用窓からセンサを入れ、水溶性クーラントに浸
かるようにマグネットクリップで固定した。Raspberry Pi へは 10m の延
長電源コードを使用して機械裏側のコンセントから電源供給をおこなった。
安定した温度測定がおこなえており、他の機械への展開を検討した。
サーミスタテスト状況
水位測定用 IoT デバイス
水温同様、広陵発條製作所様の NV5000α縦型マシニングセンタに設置
した。マグネットスタンドにクリップを取り付け、アクリルパイプに入れ
たセンサをクリップで固定してクーラントタンクに入れた。大きな問題も
無くデータが取得できているため、他の機械への展開を検討した。
➢ 他の機械への展開
サーミスの水温測定用 IoT デバイスを津田製作所様と広陵発條製作所様の
他の機械への取り付けた。また、水位測定用の IoT デバイスを広陵発條様の機
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械へ取り付けた。どちらも安定稼働しており、これらの方式でデータ収集を継
続することにした。
➢ 稼働状況の見える化
稼働状況の見える化同様、IoT デバイスからのデータは、「Things Cloud」
および「Google Cloud Platform」に送信、蓄積されており、可視化もこれら
のクラウド上でおこなう。現在のところは、「最新の値を表示する」、「不具合が
発生日のデータを表示する」ことを目指して開発をおこなっている。詳細は詳
細は「クラウドシステムによる見える化」を参照。
⚫ クラウドシステムによる見える化
工場などに設置される機械には多数のセンサが取り付けられているが、従来、こ
れらのセンサ情報は機械の中でのみ使用され、定期的にデータを収集したり、集計
したりということは、難易度が高かった。しかし、ここ数年の IoT デバイスとクラ
ウドシステムの進化により、必要データの収集が容易になっており、収集、集計の
みならず、AI を使った分析など、従来、非常に高コストで難易度が高かったこと
が、低コストで簡単にできるようになってきている。本コンソーシアムでは、クラ
ウドシステムに、プラットフォーム事業者の NTT 西日本様にご提供いただく IoT
クラウドシステムである「Things Cloud」を採用し、IoT デバイスより収集したデ
ータの見える化を図る。また、同時に「Google Cloud Platform」による分析もお
こなえるシステムの開発をおこなった。
➢ Things Cloud の開発
NTT 西日本様よりご提供いただいた IoT クラウドシステムの「Things
Cloud」では、IoT デバイスの管理、計測データの収集/閲覧、不具合発生時の
アラームの通知など、基本的な機能がそろっており、比較的容易に IoT デバイ
スを使ったデータ閲覧 WEB システムが構築できるのが特徴となっている。こ
のシステムを利用して、前述の IoT デバイスからのデータを見える化するシ
ステムを構築する。
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Things Cloud への IoT デバイス登録
Things Cloud で IoT デバイスからのデータを収集、閲覧するためには、
デバイスを Things Cloud に登録する必要がある。今回の IoT デバイスは
Raspberry Pi を使用しているため、Things Cloud のデバイスガイドに従
い、エージェントという、デバイス管理用のプログラムをインストールし、
Things Cloud の管理コンソールより登録をおこなった。ただ、デバイス
ガイドにて提供されているエージェントでは登録できなかったため、開発
元と思われる Cumulocity 社のページよりダウンロードしたエージェント
を使用した。
デバイス一覧画面
Things Cloud へのデータ送信
Things Cloud へデータを送信するには、先ほどのデバイス登録だけで
なく、データ送信用のプログラムを開発する必要がある。ただ、データ登
録するための WEB API はあらかじめ用意してあるため、Raspberry Pi 用
にデータ登録用の WEB API をコールする送信用 Python プログラムを開
発した。このプログラムは Raspberry Pi のサービスとして動作し、起動
時に実行されるようになっている。また、送信に不具合が発生した場合に
再起動をさせる機能やログを収集する機能も開発した。
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Things Cloud によるデータの見える化
Things Cloud では登録されたデバイスの管理をはじめ、ユーザの管理
やアプリケーションの管理、アラームやイベントの設定など、様々なこと
ができるが、今回の開発では、IoT デバイスから送られてくるデータを見
える化することに目的を絞って設定をおこなった。
Things Cloud によるデータの可視化は、基本は、あらかじめ用意して
ある「ウィジェット」という部品を「ダッシュボード」に配置することで
実現される。「ウィジェット」自体も開発可能だが、本年度の開発では、そ
こまでには至らなかった。今回、見える化したいデータは、「照度」、「温度」、
「水位」で、現在の値を表示する「放射状ゲージ」と時系列データを表示
する「データポイントグラフ」を配置して可視化した。
稼動状態の一覧表示
水位、水温、照度の表示
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➢ Google Cloud Platform の開発
Things Cloud は簡単に IoT デバイスが管理できる反面、データの表示方法
のバリエーションが少なく、表示のカスタマイズや集計をおこなおうとすると、
難易度が急に上がってしまう。また、今後、AI を使ったデータ分析システムの
開発を検討しており、この手の開発は Things Cloud では困難であるため、
Google Cloud Platform (以降、GCP)を利用した開発もおこなった。
GCP でのデバイス管理
Things Cloud 同様、GCP にも「IoT Core」というデバイス管理の仕組
みがある。この「IoT Core」ではデバイスの登録・削除のほか、デバイス
状態の確認やデバイスの再起動、ソフトウェアの配信、コンフィグファイ
ルの変更など、IoT デバイスの一元管理が可能となっている。まずは、津
田製作所様に設置した IoT デバイスを登録し、見える化の準備をおこなっ
た。
GCP の IoT デバイス管理画面
GCP によるデータの見える化
GCP には Things Cloud のような簡易的にデータを表示する仕組みは無
いため、WEB サーバ (https://sb34.work)を構築し、閲覧できるシステ
ムを開発した。データは Things Cloud にて収集したものを定期的に GCP
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に取り込む方法で取得するようにした。
⚫ 稼働状況データ
津田製作所様に設置した IoT デバイスを中心に、稼動データの可視
化のテストをおこなった。まだ、集計、分析等はおこなっていないた
め、Things Cloud でできる内容と重複しているが、Things Cloud の
稼働状況の見える化に比べると、表示方法の自由度が高いため、非常
にわかりやすい表示が可能となった。
GCP による稼動状況の表示
⚫ ログデータ
Things Cloud でのデータ取得において、データ取得ができないと
いう現象がたびたび発生しており、なかなか原因の分析ができなかっ
た。そこで、Raspberry Pi のログデータを直接 GCP に出力して、原
因の分析ができるよう、ログデータを収集する仕組みを開発した。こ
れにより、プログラムの不具合やデバイスの性能、ネットワークの状
況などが分析できるようになった。
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⚫ デバイスデータ
Kibana というシステムを導入することで、デバイスの詳細な状態
が分かるようになった。CPU の使用率やメモリ使用率、ネットワーク
使用率など、不具合発生時の原因の詳細な分析が可能となり、対策を
しやすくなった。
Kibana によるデバイス状態の表示
⚫ 今後の開発
今年度の開発では、工場内の機器の状態がある程度見える化されてきた。ただ、
IoT デバイスからのデータが突然取得できなくなってしまったり、センサの取り付
け状態に不備があって正常なデータが取得できていなかったりと、まだまだ不具合
のある部分は多い。データの集計や分析までには至っておらず、不具合の修正とデ
ータ集計、分析システムの開発が今後の課題となる。
また、コンソーシアム企業様より、新たな要望もあがっており、水溶性加工液の
濃度管理など、新たなデバイスを検討する必要がある項目も多い。これまで開発し
た IoT デバイスと新規の IoT デバイスを共存させつつ、コンソーシアム企業様に
とってより使いやすいシステムを構築していく予定である。