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誘導加熱は、高速性、正確性、クリーン性、再現性のいずれにおいても優れた技術です
【掲載内容】
・誘導コイル
・高周波焼入れ
・高周波焼戻し
・高周波ろう付
・高周波ボンディング
・高周波溶接
・高周波アニーリング/ノルマライジング
・高周波予熱
・高周波後熱
・高周波鍛造
・高周波溶解
・高周波歪矯正
・特殊用途
・誘導加熱の原理
・最適なソリューションの選定方法
・国際認証
・主な納入先
・お客様のあらゆるニーズに応える製品群
このカタログについて
ドキュメント名 | 誘導加熱の用途 プロセスと装置、そしてその利点について |
---|---|
ドキュメント種別 | 製品カタログ |
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登録カテゴリ | |
取り扱い企業 | EFDインダクション株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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誘導加熱の用途
プロセスと装置、そしてその利点について
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目次
はじめに .. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 3 高周波鍛造 .. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .14
誘導コイル .. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .4-5 高周波溶解 .. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .15
高周波焼入れ .. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6 高周波歪矯正 .. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .16
高周波焼戻し .. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 7 特殊用途 .. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .17
高周波ろう付 .. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 8 誘導加熱の原理 ..........................................................................................................19
高周波ボンディング .. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 9 最適なソリューションの選定方法 .............................20-21
高周波溶接 .. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .10 国際認証 .....................................................................................................................................22
高周波アニーリング/ノルマライジング ....................11 主な納入先 .............................................................................................................................23
高周波予熱 .. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .12 お客様のあらゆるニーズに応える製品群 .................24
高周波後熱 .. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .13
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はじめに
誘導加熱は、高速性、正確性、クリーン性、エネルギー効率性、制御性、再現性のいずれにおいても
優れた技術です。 EFD Induction は、この素晴らしい技術をあらゆる工業加熱用途に応用するノウ
ハウを知り尽くしています。 先進加熱技術の先進活用のことなら、 EFD Induction にお任せくださ
い。
EFD Inductionは、1996年、ドイツのFritz Düsseldorf 現在、EFD Inductionのソリューションは、水栓金具か
Induktionserwärmung社とノルウェーのELVA Induk- ら太陽電池、ブルドーザー、さらには宇宙船に至るま
sjon社の合併により誕生しました。誕生以来、急成長 でのあらゆる製品の製造に利用されています。EFD
を遂げ、誘導加熱業界において欧州最大手、世界第2 Inductionの装置は、その多くがコンパクト設計で可
位の企業としての地位を確立しています。これまでに 搬性に優れているため、洋上プラットフォーム、ウィン
約2万のシステムが EFD Induction の生産拠点、研究 ド・ファーム、発電所などでも幅広く活躍しています。
拠点、営業拠点、代理店を結ぶ世界規模のネットワー
クを通じて世界中のお客様に納入され、稼働していま 次のページから、弊社製品の主な応用分野を簡単に
す。 ご紹介します。もちろん、本資料でご紹介する用途は
ごく一部にすぎません。誘導加熱の技術的利点やビ
弊社は、創業以来、可能な限り幅広い工業用途に誘導 ジネス上の利点についてさらに詳しくお知りになりた
加熱の恩恵をもたらすことを目指してきました。この い方は、弊社までお気軽にお問い合わせください。弊
姿勢により、造船業界における甲板や隔壁の歪矯正 社WebサイトのURLは、裏表紙に記載されています。
を誘導加熱の用途として他社に先駆けて開拓しまし
た。また、ソリッド・ステート技術の導入により、誘導加
熱装置の小型化、安全性向上、多機能化、高信頼化を
実現したのも EFD Induction です。
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誘導コイル
誘導コイル(「インダクタ」とも呼ばれます)は、誘導加熱プロセスに不可欠です。誘導コイルの有効
性は、設計配慮、使用する材料の品質、形状、保守、電源との正確な整合などのさまざまな要因に
よって決まります。だからこそ、専門業者(理想的には誘導加熱システムと同じメーカー)によるコ
イル製作・保守にこだわることが極めて重要です。
EFD Induction では、世界最先端レベルのコイル製作 EFD Induction のコイルは、その1つ1つの詳細がデー
/コイル保守体制を確立しています。あらゆる素材や タベースで管理されています。そのため、どのコイル
用途に合わせた特注コイルの設計・製作はもちろん、 の交換や修理にも、品質や生産性に妥協することな
予防保全ソリューションやコイル・ロジスティクス・ソ く、迅速かつスムーズに対応することができます。
リューションもご用意しています。それにより、常にお
客様の使用目的に合ったコイルを提供し、その実用
寿命を最大限に引き延ばします。
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誘導コイルの適切な設計・製造・保
守は、誘導加熱ソリューション全体
の効率を決定付けます。そこで、EFD
Inductionでは、優秀なコイル技術
者の育成と先進的なコイル設計装
置に多くの資金を投じています。そ
の効果は、お客様固有のニーズや
条件に合わせて特注設計されたコ
イルの形で具現化されています。
EFD Induction の誘導コイル
EFD Induction では、コイルに関する
独自の専門知識と設備を駆使して、
あらゆる特殊用途向けの特注コイル
を設計・製作することができます。ま
た、左の写真が示すように、超大規模
コイルの製造実績もあります。
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高周波焼入れ
高周波焼入れとは また、被加工物ごとに最適化した処理パラメータをサ
高周波焼入れは、誘導加熱と急速冷却(急冷)を利用 ーバーに保存することもできます。高周波焼入れは、
して鋼の硬度と耐久性を高める処理です。誘導加熱 クリーンかつ安全で、概して場所を取りません。しか
は、制御可能な形で瞬時に極高温まで局部加熱する も、焼入れが必要な部分のみを加熱するため、エネル
非接触処理です。誘導加熱では、焼入れが必要な部 ギー効率性の点でも非常に優れています。
分のみが加熱されます。加熱サイクル、周波数、コイ
ル/急冷の設計などの処理パラメータを最適化する 主な用途
ことにより、最良の処理結果が得られます。 高周波焼入れは、ギア、クランクシャフト、カムシャフ
ト、ドライブシャフト、トーションバー、ロッカー・アー
主な利点 ム、CVジョイント、チューリップ、バルブ、削岩機、旋回
高周波焼入れは、スループット向上に貢献します。高 リング、インナーレース/アウターレースをはじめと
速性と再現性に非常に優れた処理であり、生産ライン する、さまざまな部品の焼入れに利用されています。
への統合も容易です。誘導加熱では、一般に被加工物
を個別に処理します。そのため、個々の被加工物の仕 対応製品
様に合わせて正確に焼入れすることが可能です。 HardLine は、縦型、横型、回転テーブル、およびセンタ
レスの各種システムをラインアップした、 EFD Induc-
tion の焼入れ装置ファミリです。 EFD Induction の焼
入れソリューションの心臓部を担う Sinac 誘導加熱
装置には、 出力定格 5 kW ~ 2000 kW、 周波数 0.3
kHz ~ 350 kHz の各種システムが用意されています。
EFD Induction では、焼入れ装置のほか、洗浄/歪矯
正処理、プロセス開発、サービス/サポート・プログラ
ムを含めた焼入れ施設全体のターンキー・ソリューシ
ョン(一括請負)も提供しています。
高周波焼入れは、他の加熱技術に比べて高速です。加えて、制御性と再現性も非常に優れているため、自動生産ライ
ンへの統合に最適です 。
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高周波焼戻し
高周波焼戻しとは 対応製品
高周波焼戻しは、焼入れ処理済みの被加工物の機械 HardLineシステムは、いずれも各種焼戻し用途に最
的性質(靱性や延性など)を最適化する加熱処理で 適です。HardLineシステムの最も大きな利点は、1台
す。 の装置で焼入れと焼戻しの両方に対応できることで
す。そのため、他の技術に比べて設置面積を抑えるこ
主な利点 とができ、大幅な時間短縮とコスト削減につながり
誘導加熱は、速度の点で焼戻し炉に大きく勝ります。 ます。それに対し、炉の場合、焼入れ炉と焼戻し炉が
焼戻し炉による処理が数時間を要するのに対し、誘導 別個に必要になります。また、独立型のSinacおよび
加熱の場合は数分、場合によっては数秒で焼戻しが Minacシステムも焼戻し用途に利用されています。
完了します。また、高周波焼戻しは、工程に必要な部
品点数を最小限に抑えられるため、インライン統合に
最適です。加えて、個々の被加工物の品質管理も容易
です。さらに、高周波焼戻しステーションを統合すれ
ば、所要床面積を抑えることもできます。
主な用途
高周波焼戻しは、自動車業界において、シャフト、バ
ー、ジョイントなどの表面焼入れ済み部品の焼戻しに
広く利用されています。また、チューブパイプ業界に
おけるズブ焼入れ済みの被加工物の焼戻しにも利用
されています。高周波焼戻しは、焼入れステーション
で行われる場合もあれば、1カ所または複数の焼戻し 誘導コイルの中で高速回転
ステーションで行われる場合もあります。 するシャフト。高周波焼戻し
は、高速性と正確性におい
て卓越しています。
EFD Inductionの包括的な焼戻しソリューションは通常、電源、コイル、ハンドリング機構、制御ソフトウェアで構成され
ます。また、トレーニング、保守、およびサービス・オプションも用意されています。
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高周波ろう付
高周波ろう付とは EFD Induction のろう付システムは、あらゆるろう付作
ろう付は、金属フィラー(通常はフラックスと呼ばれる 業に使用することができます。 これまでの主な導入事
酸化防止剤と共に)を使用して、密着させた2つの金 例によれば、電機業界では発電機部品や変圧器部品
属を接合する材料接合処理です。母材を溶解させる (バー、ストランド、リング、ワイヤー、SCリングなど)の
のではなく、誘導加熱によってフィラーを溶解させ、毛 ろう付、自動車業界では燃料パイプ、エアコン部品、ブ
管現象によって母材の間に流し込みます。 レーキ部品のろう付、航空業界ではファン・ブレード、
ブレードのケーシング、燃料系/油圧系部品のろう
主な利点 付、家庭用品業界ではコンプレッサ部品、加熱エレメ
高周波ろう付は、幅広い金属の接合に利用することが ント、水栓金具のろう付などに利用されています。
でき、鉄と非鉄金属の接合も可能です。正確性と高速
性に優れるほか、限定した範囲のみを加熱するため、 対応製品
加熱範囲以外の材料に影響を与えません。適切にろ EFD Induction のろう付ソリューションは通常、可搬型
う付した接合部は、優れた強度、耐漏性、耐食性を示 のMinacシステムまたは定置型の Sinac システムで構
します。また、仕上がりも非常に美しく、通常は追加の 成されます。どちらの製品ファミリも幅広い出力と周
フライス加工、研削加工、または仕上げ加工は不要で 波数に対応するほか、自動整合機能を装備し、ロボッ
す。高周波ろう付は、生産ラインへの統合に最適です。 トにも適合します
主な用途
EFD Inductionのシステムによるろう付。加熱帯が完全に EFD Induction Minacによる発電機巻線のろう付。Minac
視認できることが大きな特徴です。こうしたことは、火炎 の機動性とハンドヘルド・トランスにより、手が届きにく
ろう付ではまずあり得えません。 い場所でも容易に作業が行えます。
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高周波ボンディング
高周波ボンディングとは 用することができるため、必要最小限の予備コイルで
高周波ボンディングは、誘導加熱を利用して接着剤を 運用することが可能です。
キュアリング(硬化)する処理です。誘導加熱は、ドア、
ボンネット、フェンダー、バックミラー、マグネットとい 主な用途
った自動車部品の接着剤やシーラントの標準的なキ 誘導加熱は、自動車業界では標準的なボンディング
ュアリング方法として採用されています。また、複合材 方法として普及しています。鋼板とアルミ薄板のボン
と金属や、炭素繊維同士のキュアリング接着にも利 ディングに広く利用されているほか、軽量複合材や炭
用されています。自動車業界におけるボンディングに 素繊維材といった新素材のボンディング用途への採
は、大きく分けて、接合する材料の一部のみを加熱す 用も進んでいます。その他にも、電機業界におけるコ
るスポット・ボンディングと、材料の接合部全体を加 イルストランド、ブレーキ・シュー、マグネット接着や、
熱するフルリング・ボンディングの2種類があります。 白物家電製品のガイド/レール、棚、パネルの接着な
どの用途にも利用されています。
主な利点
EFD Induction のスポット・ボンディング・システム は、 対応製品
パネルごとに正確なエネルギー入力が可能です。加熱 EFD Induction は、高周波キュアリング分野における
帯が狭い範囲に限定されるため、パネル全体の伸び 世界最大のエキスパート企業です。事実、高周波スポ
が最小限に抑えられます。また、鋼製パネルをボンディ ット・キュアリングは、EFD Induction によって発明さ
ングする際にクランプで固定する必要がないため、余 れた技術です。また、業界最先端のヘム・ボンディン
分な応力や歪みが発生しません。各パネルは、エネル グ・システムであるU-Coil®プロセスも、EFD Induction
ギー入力誤差が許容範囲内かどうか電子的に監視さ が発明したものです。自己整合型で100%の再現性を
れます。フルリング・ボンディングでは、汎用コイルを利 誇るU-Coil®プロセスは、歪みの発生を最小限に抑え
ながら均一加熱を実現します。EFD Inductionは、電
源やコイルなどの個々のシステム要素から、完全サ
ポート型の包括的なターンキー・ソリューションに至
るまで、幅広いお客様ニーズに対応することができま
す。
EFD Inductionの2種類の高周波ボンディング・システム。左の写真はフルリング・ボンディング・ソリューション、右の写
真はEFD Inductionが発明したスポット・ボンディングです。
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高周波溶接
高周波溶接とは 主な用途
高周波溶接では、電磁誘導によって被加工物を加熱 高周波溶接は、チューブ/パイプ業界において、ステ
します。高周波溶接は、高速性と正確性に優れている ンレス鋼(磁性および非磁性)、アルミ、低炭素鋼、高
ため、チューブやパイプのエッジ溶接に最適です。こ 強度低合金(HSLA)鋼その他の各種導電材料の電縫
のプロセスでは、パイプを誘導コイルの中に高速で通 管溶接に利用されています。
しながら、エッジを加熱し、エッジ同士を押し付けるこ
とにより、縦方向に溶接シームを形成します。高周波 対応製品
溶接は、大量生産に特に適しています。また、高周波 Weldacは、EFD Inductionのソリッド・ステート溶接装
溶接装置にコンタクト・ヘッドを装着することもでき、 置です。高い効率性(>85%)を実現しているほか、堅
インダクション・コイル方式とコンタクト・ヘッド方式 牢なIGBTトランジスタの採用により、短絡に強い装置
の、どちらにも対応することができます。 です。低リップルにより均一な溶接ビードが得られる
ため、アルミ溶接やステンレス鋼溶接に特に適してい
主な利点 ます。
誘導加熱を利用した自動電縫管溶接は、信頼性が高
く、ハイスループットです。 EFD Induction の溶接シス
テムは、高い効率性と低消費電力によるコスト削減に
加え、優れた制御性と再現性によってスクラップを最
小限に抑えます。また、自動負荷整合機能によって幅
広いチューブ・サイズにわたって全出力運転が可能と
いう点で柔軟性にも優れています。しかも所要床面積
が小さく、生産ラインへの統合または設備更新も容易
です。
Weldacは、誘導コイルと高速昇降コンタクト・ヘッドのど 高速スループットと高信頼性を両立した高周波溶接は、
ちらも装着可能です 。 チューブ/パイプ業界に最適です。
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高周波アニーリング/
ノルマライジング
高周波アニーリングとは 対応製品
高周波アニーリングは、工程を経て加工硬化が生じ EFD Inductionのアニーリング・システムは、お客様固
た金属を加熱することにより、硬度を下げ、延性を高 有の要件に合わせて設計・製造されます。各システム
め、内部応力を除去する処理です。フルボディー・アニ の心臓部には、自動負荷整合機能を搭載したSinac誘
ーリングは、被加工物全体をアニーリングする処理で 導加熱装置を採用し、出力レベルにかかわらず力率
す。シーム・アニーリング(厳密に言えばシーム・ノル を一定に保ちます。弊社アニーリング・システムのほと
マライジング)は、溶接工程で発生した熱の影響を受 んどは、ハンドリングと制御を含めた特注ソリューショ
けた部分のみを処理します。 ンとして納入されています。
主な利点
高周波アニーリング/ノルマライジングには、高速
性、信頼性、局部加熱、正確な温度制御、容易なインラ
イン統合といった利点があります。 EFD Induction の
アニーリング・システムでは、制御システムで処理過
程全体を継続的に監視・記録しながら、個々の被加工
物をそれぞれの仕様に合わせて処理します。
主な用途
高周波アニーリング/ノルマライジングは、チュー
ブ/パイプ業界において広く採用されています。ま
た、ワイヤー、ストリップ、ナイフ・ブレード、銅チューブ
などのアニーリングにも利用されています。高周波ア
ニーリングは、事実上すべてのアニーリング作業に適
しています。
EFD Inductionのシーム・ノルマライジング・ソリューショ この写真のEFD Inductionノルマライジング・システム
ンの細部。パイプ上部に位置する赤い水平ユニットが誘 は、コイルの軌道運動により溶接シームを正確に追跡し
導コイルです。 ます。ノルマライジングは、石油/ガス業界で使用される
パイプには不可欠な処理です 。
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高周波予熱
高周波予熱とは 主な用途
高周波予熱は、何らかの加工を行う前の材料または 高周波予熱は、自動車、機械、航空、電機、白物家電、
被加工物を誘導加熱によって加熱する処理です。予 造船などの業界で採用されています。主な用途は溶
熱が必要な用途はさまざまです。たとえば、ケーブル 接前の予熱です。海洋分野における現場での溶接前
ワイヤー業界における絶縁押出工程前のケーブル芯 の予熱には、可搬型のMinacシステムが利用されて
線の予熱、鋼ストリップの酸洗浄/亜鉛被覆処理前 います。Minacは、洋上プラットフォームや空港での修
の予熱のほか、曲げ加工前の金属の軟化処理やチュ 理・保守に携行されることもよくあります。
ーブ/パイプ溶接の前処理としても高周波予熱が利
用されています。可搬型の予熱ソリューションは、ベア 対応製品
リング・アセンブリの現場修理に役立ちます。 EFD Inductionでは、鋼ストリップおよびケーブル/ワ
イヤーの予熱専用システムを設計・製造しています。
主な利点 これらのシステムは通常、Sinac誘導加熱装置を中心
EFD Induction の予熱システムは、極めて効率性に に構成され、横型または縦型のコイル・レイアウト設
優れており、大幅なエネルギー節約に貢献します。鋼 計が可能です。また、特注レイアウトに対応することも
ストリップやケーブル/ワイヤーの予熱中は、ダイオ できます。作業現地での予熱用途には、可搬型でコン
ード整流器によって力率が一定(0.95)に保たれるた パクトなMinacが利用されています。
め、無効電力に伴うコストの削減につながります。ま
た、サイクル・タイムが短いことも利点です。さらに、連
続自動整合機能により、1種類のコイルで幅広い製品
範囲に対応することができます。高周波予熱システム
はコンパクトなため、新規生産ラインはもちろん、既
設ラインへの統合も容易です。
EFD Induction Sinac中周波システムによる海底パイプ 粉塵、ヒューム、騒音は一切発生しません(写真は、EFD
ライン用シームレス・パイプのコーティング予熱処理。 Inductionの加熱装置による170 mm陽極棒の予熱処
理)。
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高周波後熱
高周波後熱とは 主な用途
高周波後熱は、誘導加熱を利用して、工程を経て残留 EFD Inductionの後熱処理ソリューションは、主にケー
応力が生じた被加工物または材料を加熱する処理で ブル/ワイヤー、チューブ/パイプ、電機、航空などの
す。たとえば金属部品や溶接部位は、大抵の場合、前 業界で利用されています。自動車業界における主な
工程で生じた内部応力を後熱処理によって除去しな 用途は、リング、シャフト、ジョイント、ギアの後熱、ブレ
ければなりません。高周波後熱は、ケーブル芯線の押 ーキディスク・カバーの耐食コーティングのキュアリン
出後の加熱処理にも利用されます。 グです。また、錫めっきリフローに利用されることもあ
ります。
主な利点
高周波後熱は、高速性、汎用性、正確性、制御性に優 対応製品
れるため、さまざまな後熱処理作業に最適です。たと 定置型のSinacシステムは、さまざまなオプションや
えば、 EFD Induction のケーブル/ワイヤー後熱処理 制御/ハンドリング機能との組み合わせた形で、ケー
システムは、ケーブル芯線を直接、局部加熱します。そ ブル/ワイヤーその他の大量生産用途に広く利用さ
のため、絶縁体のポリマーを極めて短時間に架橋さ れています。可搬型のMinacシステムは、洋上プラット
せると同時に、ケーブルの変形を最小限に抑えること フォーム、ウィンド・ファーム、発電所など向けの高周
ができます。可搬型のMinacシステムは、海底油田/ 波後熱ソリューションを実現します。
ガス田の洋上プラットフォームといった火気厳禁の現
場に高周波後熱の恩恵をもたらします。
石油/ガス業界における現場後熱処理は、EFD Induction製品の応用分野として成長しています。上の写真は、可搬型
Minac(左)および定置型Sinac(右)によるパイプラインの処理作業の様子です。
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高周波鍛造
高周波鍛造とは 主な用途
高周波鍛造は、誘導加熱を利用して金属部品を加熱 高周波鍛造は、金属/鋳物業界において、ビレッ
した後、プレスまたはハンマーで加工する(つまり「変 ト、バー、バーエンドの加熱に広く利用されていま
形」させる)処理です。 す。EFD Inductionのシステムは、主にアルミ、真鍮、
銅、鋼、ステンレス鋼などの金属材料の鍛造に使用さ
れています。
主な利点
高周波鍛造は、さまざまな点で鍛造炉よりも有利で
す。まず、優れた高速性と制御性により、ハイスループ 対応製品
ットを実現します。また、酸化を最小限に抑え、冶金的 EFD Induction 製品では、 HeatLine、 Sinac、 および
性質の維持に役立つほか、正確な局部加熱によりエ Minac ファミリが鍛造用途に利用可能です。 HeatLine
ネルギー節約にも貢献します。加えて、一貫性と再現 には、ビレット、バー、バーエンド、ボルト、予備成形部
性にも優れているため、自動生産ラインへの統合に 品の連続鍛造向けに特別設計された各種モデルが用
最適です。 意されています。
EFD Inductionの縦型バーヒーター。このシ
ステムには、必要な数の誘導コイルを装着
可能であることに加え、IGBT式とサイリスタ
式が用意されています。
EFD Inductionの鍛造ステーションで加熱さ
れたビレット。
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高周波溶解
高周波溶解とは 主な用途
高周波溶解は、誘導炉のるつぼ内で金属を液状に溶 EFD Inductionの溶解システムは、鋳物業界、大学、試
解する処理です。溶解した金属をるつぼから(通常は 験所、研究センターなどで利用されています。鉄/非
鋳型に)鋳込みます。 鉄金属から核物質や医療/歯科用合金に至るまでの
あらゆる材料の溶解に適しています。
主な利点
高周波溶解は、高速性、クリーン性、均一性に非常に 対応製品
優れています。適切に行えば、他の溶解方法では必要 EFD Induction では、幅広いお客様ニーズに対応す
な清浄化工程を省くことが可能なほどのクリーンさで るために、一軸式可傾炉、二軸式可傾炉、可動コイル
す。また、材料の均一な加熱により、製品の高品質化 炉、回転炉、実験室炉の5種類の炉製品群を用意して
にも貢献します。EFD Inductionの溶解システムは、人 います。
間工学的にも先進的な特徴を備えており、作業環境
の安全性向上に加え、溶解工程の時間短縮と作業者
の快適性向上による生産性向上効果も実現します。
EFD Inductionの一軸式可傾炉。このシステムは、鉄/非 可動コイル溶解炉で溶解した状態の銅。定形るつぼ(粘
鉄金属(銅およびアルミ合金)の溶解に適しており、容量 土・黒鉛混合材)は、溶解サイクル全体にわたって静止し
に応じて各種モデルが用意されています。定形るつぼま たままで、コイルの方がるつぼの周囲を非接触で移動し
たはラミング材によるライニング施工に対応しています ます。専用るつぼ(取鍋としても機能)により、合金間の汚
(容易に変更可能)。 染をなくします。
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高周波歪矯正
高周波歪矯正とは 主な用途
高周波歪矯正は、誘導コイルを利用して所定の加熱 高周波歪矯正は、船舶の甲板や隔壁の歪矯正に広く
帯を局部加熱し、加熱帯が冷却に伴って収縮する際 利用されています。また、建設業界における梁の歪矯
に生じる「引張力」によって金属を平滑な状態にする 正のほか、機関車、鉄道車両、重量物運搬車の製造お
処理です。 よび修理への採用例も増えています。
主な利点 対応製品
高周波歪矯正は極めて高速です。船舶の甲板や隔壁 EFD Induction の Teracシステムは、船舶の歪矯正用
の歪矯正の場合、従来の方法に比べて50%以上の時 途向けに特別に設計されたシステムです。周波数変
間短縮につながることが数多くの導入事例によって 換器、冷却システム、操作パネル、およびデッキ加熱
実証されています。大型船の場合、高周波歪矯正以外 ユニットで構成され、隔壁の歪矯正を行う場合はデッ
の方法では、工数が延べ数万時間を優に超えることも キ加熱ユニットをハンドヘルド・ユニットに交換しま
あります。また、優れた正確性により、生産性向上にも す。船舶以外の歪矯正用途には、可搬型のMinac誘導
貢献します。周囲の材料に影響を与えることなく正確 加熱装置が利用されています。
に加熱できるため、トラック・シャーシなどの歪矯正を
行う際に、熱に弱い部品を取り外す必要がなくなりま
す。
EFD InductionのTeracシステムは、フェイルセーフ機能により、磁性 高周波歪矯正がもたらす恩恵は、造船業界
鋼の過熱を確実に防止します。しかも、加熱源から有毒ガスや騒音が にとどまりません。上の写真は、ある建設工
一切発生しません。 事において、EFD InductionのシステムでT
形梁の歪矯正を行っている様子です。
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特殊用途
以上、EFD Inductionのシステムおよびソリューションの主な応用分野を紹介しました。EFD Induc-
tion製品は、その他にも発電、食品包装、アパレル製造をはじめとするさまざまな業界で、多種多様
な用途に利用されています。以下は、そうした用途のごく一部の例です。
焼嵌め チェーンのインライン熱処理
EFD Induction のシステムは、自動車業界におけるギ EFD Induction では、特注設計のチェーン焼入れ/焼
アやリングの焼嵌めのほか、航空機、列車、トラックな 戻しシステムを製造しています。このシステムは、ハン
どの修理時の焼嵌めにも利用されています。洋上プラ ドリングを最小限にとどめながら、特定のパラメータ
ットフォームでの焼嵌め作業には、可搬型システムが に基づいてチェーンを処理します。誘導加熱は、ピッチ
使用されます。また、発電所のタービンを固定する大 の細かい高品質チェーンの製造に最適です。
型ナット/ボルトの取り外しに使用される例も増えて
きています。 大径旋回リングの焼入れ
EFD Induction は、 風力タービンに使用される大径
グラスウールの繊維化 旋回リングの焼入れソリューションで特許を取得して
誘導加熱は、グラスウール製造の繊維化工程に必要 います。従来の方法で大径リングを高周波焼入れする
な熱の発生に利用されています。この用途では、溶解 と、「ソフト・ゾーン」が残ってしまい、風力発電用途
ガラスを加熱しながら、遠心紡糸装置のオリフィスか に不向きでした。EFD Inductionは、望ましくないソフ
ら繊維状に押し出します。 ト・ゾーンを残さずに大径リングを焼入れできるマル
チコイル・システムを開発することにより、この問題を
解決しました。
焼嵌めの例 - EFD Inductionの装置は、従来のガス加 EFD Inductionの垂直走査型焼入れ装置による大径リン
熱や抵抗加熱に比べ、わずかの時間で大型ナット/ボル グの焼入れ処理。
トを取り外します 。
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誘導加熱の原理
誘導加熱は、金属棒の正確に限定した部分を、火炎を使用せずに数秒でチェリーレッドまで加熱す
ることができる非接触加熱方法です。なぜ、そのようなことが可能なのでしょうか。
交流電流がコイルを流れると、磁場が生成されます。
磁場の強度は、コイルを流れる電流の強度に応じて変
化します。磁場はコイルで囲まれた部分に集中し、そ
の部分における強度は、電流の強度とコイルの巻数に
よって決まります(図1)。
たとえば金属棒のような導電性物体をコイル内部に置
くと、その物体内部に渦電流が誘導されます。その結
果、渦電流が流れる部分が抵抗現象によって発熱しま
す。磁場の強度を高めると、加熱効果も高まります。た
だし、全体の加熱効果は、物体の磁気特性や、物体と
コイルの距離によっても影響されます(図2)。
また、渦電流自体も、コイルによって生成された元の
磁場とは逆の磁場を生成します。この逆の磁場は、元
の磁場がコイルによって囲まれた物体の中心に直接
侵入するのを防ぎます。渦電流は、被加熱物の表面付
近に最も大きく作用しますが、被加熱物の中心に向か
うにつれて強度が著しく低下します(図3)。
被加熱物の表面から、電流密度が37%まで低下する
深さまでの距離を浸透深さといいます。この深さは、
周波数が低くなるにつれて増加します。したがって、目
的の浸透深さを得るためには、適切な周波数を選択
することが非常に重要です。
電流密度
先進加熱技術 - 誘導加熱は、電磁誘導の法則を利用し 浸透深さ 表面からの距離
て、被加工物を制御可能な形で直接発熱させる技術で
す。コイルは被加工物に接触しません。
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最適なソリューショ ン
の選定方法
以下のガイドは、誘導加熱の効率を検討し、目的の用途に最適な周波数を選定する際の目安です。
さらに詳しくお知りになりたい方は、最寄りのEFD Induction事業所までお問い合わせください。
kWh/kg
必要なエネルギーの量 0.40
エネルギー要件を計算する前に、まず以下の情報を
把握する必要があります。 0.35 Al
Mg
0.30 Castings
• 材料の種類(鋼、銅、真鍮など) Steel
• 被加工物の寸法 0.25 Cr
Ni
• 目的の毎時処理量 0.20 Cu
• 目的の最終温度 Zn
Brass
0.15
Ag
エネルギー要件の計算 Au
0.10
ステップ1: まず、材料のエネルギー吸収率を調べま Pt
Pb
す。図1は、一般的な材料の吸収率です。 0.05 Sn
0
ステップ2: エネルギー吸収率に目的の毎時処理量 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 C° Temp.
(kg/h)を掛けます。その結果が所要電力です。
ステップ3: 使用する誘導加熱装置全体の効率レベ
ルを確認します。図2は、一般的な誘導加熱装置の一 図1 各種材料のエネルギー吸収率
般材料に対する効率レベルです。ステップ2で計算し
た所要電力を装置の効率レベルで割ります。その結 材料 最終温度°C 効率
果が総所要電力です。 炭素鋼 1250 0.65
炭素鋼 700 0.80
ステンレス鋼 1250 0.60
真鍮 800 0.50
銅 900 0.40
アルミニウム 500 0.40
図2 一般的な誘導加熱装置の効率レベル。上の値は、
外巻きのマルチターン・コイルを使用する場合を想定し
ています。コイル設計が異なる場合、効率レベルに影響
することがあります。たとえば、銅の場合、一般に使用さ
れるコイル・タイプでの効率レベルは0.1~0.2程度にな
ります。