自動車業界 の
技術者60名に聞きました!
CO2削減 、脱炭素 の
取り組みの実際
CO2
CO2
CO2 CO2
は じ め に
世界中の自動車業界で、カーボンニュートラルやCO2削減の
目標達成について厳しい目標達成を目指すべく、強いプレッ
シャーがかかっています。しかし、あまりに厳しい目標に対して、
「本当に達成できるのか」という疑問の声も聞こえてきます。
また、これだけ多くの企業での取り組みの宣言が増えており、
企業の社会責任として取り組まなければならないという意義
については十分理解できるものの、そこに属して働く現場の人
たちにとっては、その成果や恩恵をいまいち実感しづらい状況
であるのではないでしょうか。
この調査では、自動車業界で働く方々に、自社やカーボン
ニュートラルやCO2削減について、どう考えているのか、正直
な気持ちや実情についてお尋ねしました。
目 次
実態調査:アンケート結果
・回答者のプロフィール……………………………………………03
・CO2削減や脱炭素の取り組みと目標…………………………05
・CO2削減や脱炭素に関する取り組み内容……………………05
・カーボンニュートラルについて…………………………………06
・CO2削減や脱炭素の取り組みと課題、不安…………………07
実態調査:技術者インタビュー
・「部署に降りてきている取り組みが、全社の目標に対してどれ
だけ貢献できているのかがよく見えない」
Aさん 研究開発 約30年…………………………………………11
・「どこの企業も、『目標達成は無理』と答えると思う」
Bさん 生産技術 約20年…………………………………………12
・「カーボンニュートラル達成のためには、業界内の設計思想や
ビジネスの在り方がもっと大きく変わっていくべき」
Cさん 品質管理/品質保証 約20年……………………………13
概 要
調査時期:2022年4月7日~4月14日
対象者:生産技術、生産管理、品質管理・保証、設計の従事者
回答数:127
有効回答数:59
02
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アペルザ様_wp㉖_03[アンケート]
回答者のプロフィール 自動車関連企業のCO2削減、脱炭素の取り組みや課題などに
ついて、自動車関連企業で、主に生産技術、生産管理、品質管理・
保証、設計開発に関わる59名の方にお尋ねしました。
Q 所属する企業の業態を教えてください。
※今回は、自動車業界や自動車部品などに関わる方限定としています
その他 25% 自動車 24%
受託試験業務 2%
電子部品・デバイス・電子回路
情報通信機器 2% 20%
部品加工・生産 10%
産業機械 17%
Q 所属する企業の
従業員数を教えてください。
1~9人 4
10~19人 1
20~49人 5
50~99人 2
100~299人 7
300~499人 2
500~999人 11
1,000~2,999人 5
3,000~4,999人 6
5,000~9,999人 6
10,000~19,999人 3
20,000人以上 6
企業に所属していない 1
0 2 4 6 8 10 12
Q あなたの職種を 技術管理 2%
教えてください
ソフトウェア開発 3% 研究開発 20%
保守/メンテナンス 3%
製造 5% 生産技術 19%
経営 7%
品質管理/品質保証 7% 機械設計 14%
技術営業/営業 8%
電機/制御設計 12%
03
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アペルザ様_wp㉖_04[アンケート]
Q あなたの職場では何を製造していますか?
回答の一部を紹介します。
主 な 製 造 物
● 自動車 ● 4輪・2輪のエンジン部品 ●自動運転関連部品 ● FAライン用設備 ●インバータ ●エンブレム
●ロボットシステム ●スパークプラグ ●セラミックコンデンサなどの電子部品 ●鋼材加工製品
……など、さまざまな製品が挙がりました。
Q 設計している製品の生産数や種類
(複数担当する方は、現在、メインで設計している製品について)
その他 14%
・自動車部品加工メーカーへ加工用に機械を販売 自動車向け機構、
・自動車用半導体の検査装置 装置、システム
・自動車部品材料製造
・車載用電子部品の製造 53%
・有料道路料金収受機器
・電気自動車の電池作成用のチタンドラムの作成
・自動車部品
・関わる製品も関わらない製品もある
・自動車部品の評価試験
自動車最終製品
14% 自動車関連向けの部品加工の受託
24%
04
Page5
アペルザ様_wp㉖_05[アンケート]
CO2削減や脱炭素の取り組み 「CO2削減や脱炭素の取り組み」について自動車に関わる
方にお尋ねしました。この項では「、回答者全体「」自動車最
終製品「」自動車最終製品以外」に分類してまとめました。
Q あなたの職場全体で自動化は進んでいますか?
最終製品かそれ以外かで、回答に大きな差は見られませんでした。企業としての意思表示があると回答した方が
8割以上を占めました。ただし、そのうち半分が、具体的な目標提示がないという回答でした。
全 体 意思表示も
目標提示もない
12% 具体的な計画と数字が
定められている
取り組みの意思表示のみで、 47%
具体的目標がない
41%
自動車最終製品に関わる方 具体的な 自動車最終製品以外に関わる方 具体的な
計画と数字が 計画と数字が
意思表示も 定められている 意思表示も 定められている
目標提示もない
12% 47% 目標提示もない
14% 45%
取り組みの 取り組みの
意思表示のみで、 意思表示のみで、
具体的目標がない 具体的目標がない
41% 41%
Q 自社のCO2削減や 「製造や加工でのCO2削減」
脱炭素に関する取り組み 「市場に出す製品でのCO2削減」が目立ちました。
全 体 マテリアルリサイクル 1
不良品の削減 1
自社のCO2削減や脱炭素に関する取り組み 1
社員の通勤時のCO2削減配慮 9
再生可能エネルギーを作る 18
執務室や事務作業でのCO2削減 25
再生可能エネルギーを使う 25
市場に出す製品でのCO2削減 26
製造や加工でのCO2削減 38
0 5 10 15 20 25 30 35 40
自動車最終製品に関わる方 自動車最終製品以外に関わる方
マテリアルリサイクル 1 不良品の削減 1
自社のCO2削減や脱炭素に 1 自社のCO2削減や脱炭素に
関する取り組み 関する取り組み 1
再生可能エネルギーを作る 2 社員の通勤時のCO2削減配慮 7
社員の通勤時のCO2削減配慮 2 再生可能エネルギーを作る 16
執務室や事務作業でのCO2削減 5 執務室や事務作業でのCO2削減 20
再生可能エネルギーを使う 5 再生可能エネルギーを使う 20
製造や加工でのCO2削減 6 市場に出す製品でのCO2削減 20
市場に出す製品でのCO2削減 6 製造や加工でのCO2削減 32
0 1 2 3 4 5 6 7 0 5 10 15 20 25 30 35
05
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アペルザ様_wp㉖_06[アンケート]
Q カーボンニュートラルについて、 最終製品に関わる方は、「自社で宣言している」という回答が9割近くを占めました。
自社で宣言していますか? それ以外の方も、過半数近くが「自社で宣言している」という回答でした。
全 体 カーボンニュートラルが
顧客も宣言しておらず、 何か分からない
自社もしていない
14% 3%
顧客が宣言しているが、 自社で宣言している
自社ではしていない 53%
30%
自動車最終製品に関わる方 自動車最終製品以外に関わる方 カーボン
ニュートラルが
顧客も宣言しておらず、
顧客が宣言して 何か分からない
自社もしていない
いるが、自社では
していない 16% 4%
13%
自社で 顧客が宣言して
宣言している いるが、自社では 自社で
していない 宣言している
87% 33% 47%
Q 自社がCO2削減や脱炭素の 全体的に「何ともいえない」という回答が最多でした。
取り組みはうまくいっていますか? 最終製品に関わる方については、25%の方が「うまくいっている」と答えています。
全 体 取り組んでない うまくいっている
12% 14%
うまくいっていない 何とも言えない
8% 64%
自動車最終製品に関わる方 うまく 自動車最終製品以外に関わる方
いっている うまく
25 いっている
% 取り組んでない
15% 12%
うまく
いっていない 何とも
13 何とも
% うまく 言えない
言えない いっていない
62% 8% 65%
「何ともいえない」と答えた理由は?(回答者全体) 「効果が分からない・見えない」「まだこれから」という旨の回答が目立ちます。
●効果が目で見えないため ● 現状、出ているCO2の量を算出する機構までを作成しているため、対策は次段階になる
●目標は掲げているが、それに対する取り組み状況が分かっていないから ● 製品の試験を行う際に計測器なども稼働するため、電力量が多くなっている
●進捗状況が社員全員に共有されていないと考えている ●これからであるし再生可能Engに取りかかる程度
● 具体的な数値目標は出されたが、手立てが決まっていない ● 特段の取り組みをしているとは思えないので
● おおよそうまくいっているが、一部難しいものもある ●まだスタートしたばかりで、すぐには結果が出ない ●一般従業員にあまり展開がない
●法人向けの義務化が法的にないので ● 再生可能エネルギーの使用が進んでいない ●対外的な計画の公表がされていない
06
Page7
アペルザ様_wp㉖_07[アンケート]
Q 自社がCO2削減や脱炭素の取り組みを行う理由
「社会責任として」が最多となりました。
全 体 なんとなく 3
流行だから 6
他社や競合がやっているため 9
業績の向上につなげる 10
顧客が強く求めてくる 18
新たなビジネスチャンスの創出 20
コスト削減につなげる 21
市場や消費者へのアピール 26
社会責任として 36
0 5 10 15 20 25 30 35 40
自動車最終製品に関わる方 自動車最終製品以外に関わる方
流行だから 1 なんとなく 3
新たなビジネスチャンスの創出 2 流行だから 5
他社や競合がやっているため 3 他社や競合がやっているため 6
顧客が強く求めてくる 3 業績の向上につなげる 6
顧客が強く求めてくる 15
コスト削減につなげる 3
コスト削減につなげる 18
市場や消費者へのアピール 3 新たなビジネスチャンスの創出 18
業績の向上につなげる 4 市場や消費者へのアピール 23
社会責任として 8 社会責任として 28
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 5 10 15 20 25 30
Q 自社がCO2削減や脱炭素の取り組みを行ううえでの課題
「社内の意識の低さ、理解の低さ」「対応や推進を行う人材の不足」「取り組みのための知識不足」をそろって選択される方
が目立ちました。最終製品関係者の回答に、ぽつりと「BEVが市場で受け入れられるか(その他コメント)」とありました。
※BEV=二次電池式電気自動車
全 体
市場がBEVを受け入れるか? 1
ポーズだけで実のない活動 13
取り組みのための資金不足 17
取り組みのための知識不足 25
対応や推進を行う人材の不足 26
社内の意識の低さ、理解の低さ 27
0 5 10 15 20 25 30
自動車最終製品に関わる方 自動車最終製品以外に関わる方
市場がBEVを受け入れるか? 1 ポーズだけで実のない活動 11
ポーズだけで実のない活動 2 取り組みのための資金不足 13
社内の意識の低さ、理解の低さ 4
取り組みのための知識不足 21
対応や推進を行う人材の不足 4
取り組みのための資金不足 4 対応や推進を行う人材の不足 22
取り組みのための知識不足 4 社内の意識の低さ、理解の低さ 23
0 1 2 3 4 5 0 5 10 15 20 25
07
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アペルザ様_wp㉖_08[アンケート]
Q 自社がCO2削減や脱炭素の取り組みを行ううえでの不安
「適切な取り組みができているか」が最多。次いで、「ビジネスの成果につながっているのか」が多く選択されました。
全 体 営利目的になりすぎないか 1
企業トップや社内からのプレッシャー 2
自社の目標が厳しすぎて辛い 4
他社や競合より取り組みが遅れている 9
市場や顧客から評価されているのか 13
自社の目標が達成できるのか 13
何をどうすべきか分からない 18
ビジネスの成果につながっているのか 23
適切な取り組みができているか 29
0 5 10 15 20 25 30 35
自動車最終製品に関わる方 自動車最終製品以外に関わる方
自社の目標が厳しすぎて辛い 1 営利目的になりすぎないか 1
何をどうすべきか分からない 1 企業トップや社内からのプレッシャー 2
自社の目標が厳しすぎて辛い 3
市場や顧客から評価されているのか 2 他社や競合より取り組みが遅れている 7
他社や競合より取り組みが遅れている 2 自社の目標が達成できるのか 9
自社の目標が達成できるのか 4 市場や顧客から評価されているのか 11
何をどうすべきか分からない 17
ビジネスの成果につながっているのか 4
ビジネスの成果につながっているのか 19
適切な取り組みができているか 6 適切な取り組みができているか 23
0 1 2 3 4 5 6 7 0 5 10 15 20 25
回答者の皆さんにお伺いしました
自社がCO2削減や脱炭素の取り組みについて、悩みごと、困ったこと、勘違い、批判などあれば、詳しく教えてください。
● 動作条件の見直しなど、低減は可能だが、動けば出るものなので、ニュートラルは難しい。CO2を利用した設備・分解する設備が
必要になる
●法人向けへの周知が必要
●電力使用、廃油発生、発熱等 CO2削減に完全な形で対応ができていないので、すべきことが分かっても、そのためにすべき施策が
非常に高いハードルとなる。今できることから取り組み、時代の流れで世の中の対応に合った施策に順応できていければと考える
●電力使用量=CO2使用量。熱量放出量はどのように判断するのか焼き入れの工程での効率化など
●費用がかかるが儲けにつながらない
● 脱炭素でCO2そのものを減らすだけでなく、過程で結果的に減らす活動でも貢献できるという認識がない
●目標に対して現状どうなのか? 分かりづらい
●会社としての社会的責任とそれに対する社員お意識づけがうまくいかないのではないか
●もしやらなければどうなるといったところの危機感がうまく社内共有できていない
● 再生エネルギーを購入、使用しているが、電力が再生エネルギーか否かの証拠は取れるのか?
● 再生エネルギーは自社では作り出せないので、再生エネルギーを作り出せるメーカーから電気を買ってくるような形態があるが、
これは本当に効果があるのか?
● 各自の日常に影響がはっきりと見えない限り、脱炭素への意識が浸透しないと思う。私が勤めている会社は、電気自動車の充電
器を製作・販売しているが、社長はタクシー(ハイブリッド車)に乗って通勤している。製品のアピールができていないうえ、CO2
を排出している
● 事業部門はコスト削減を主眼に置いているため、脱炭素への意識が低くなっている。脱炭素による効果を金額換算する仕組みが
必要になる
●各国の目標値はあるが、それすらも新しい市場を作るための施策にしか思えない。ただお金を取るのが今やることなのか?
● CO2削減の本来の目的は何なのか? 地球保護? 会社利益? 切り離して考えてべきではないか
● 政府は旗振りで実際の市場が商品を受け入れてくれるか?
●電気自動車の電気は火力発電で作るので、同じではないか
●目標を作っている部署が、工場の実態を解っていない
08
Page9
アペルザ様_wp㉖_09[アンケート]
Q CO2削減や管理に関して、IT ソリューションやシステムを導入していますか?
全体的には「していない」が最多。最終製品関係者については「検討中」が僅差で最多となりました。
全 体 している
13%
していない
58% 検討中
29%
自動車最終製品に関わる方 自動車最終製品以外に関わる方
している
25 している
% 12%
していない していない
37% 検討中
検討中 61% 27%
38%
ITソリューションの導入に関して
ITソリューションやシステムを導入している方にお尋ねしました。
Q CO2削減や管理に関して、
ITソリューションやシステムについて求めていること
「導入コストが安い」が最多、次が「導入が簡単である」と、導入に関するところが目立ちました。
適切なコンサルやサポートが受けられること 3
ドキュメント生成がしやすい 6
目標達成の具体的指標や指南が受けられる 8
新ビジネスの創出 8
操作が簡易である 10
CO2削減関連の管理の手間が減らせる 11
加工や生産の効率化 16
導入が簡易である 18
導入コストが安い 20
0 5 10 15 20 25
09
Page10
アペルザ様_wp㉖_10[アンケート]
ITソリューションやシステムを導入している方にお尋ねしました。
Q CO2削減や管理に関する
ITソリューションやシステムについての不満
ダントツで多かったのが「コストが高い」でした。
未導入 1
完全ではないので満足度は
これから上げられるよう対応を強化要 1
使うにあたり知識が必要 3
自社の業務に適用できない 3
なし 3
余計な手間が増える 5
使いづらい 5
導入が難しい 6
コストが高い 13
0 2 4 6 8 10 12 14
ITソリューションやシステムを導入していない方にお尋ねしました。
Q 導入しない理由を教えてください。
こちらでも「コストが高い」が最多回答に含まれていました。
「使いこなすナレッジがない」「人材不足」も同数で最多となりました。
まだソリューションの検討段階にある 1
取り組み姿勢が見られない 1
適切なソリューションがない 3
時間がない 4
必要がないと考える 9
人材不足 10
使いこなすナレッジが社内にない 10
コストが高い 10
0 2 4 6 8 10 12
10
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アペルザ様_wp㉖_11[インタビュー]
interview 01 回答者プロフィール
Aさん/研究開発:約30年 仕事の内容
製造業[電子部品・デバイス・電子回路] (社員数:20,000人以上) 電子部品関連の研究開発
今回のお話 部署に降りてきている取り組みが、全社の目標に対して
どれだけ貢献できているのかがよく見えない
Q 自社での二酸化炭素削減や Q 自社がCO2削減や脱炭素の取り組みについて
カーボンニュートラルの取り組みについて の厳しい目標の数字も掲げており、再生可能
2019年頃から、サステナビリティやカーボ エネルギーを使用していらっしゃるようですが、
ンニュートラルといった取り組みについて自社 ご自身の周りの業務にその影響は出ていますか?
が発表している。それ以前から社長が環境問題 厳しい目標が掲げられている中で、自分の
への課題感や取り組みについて積極的に発信 仕事に変化は特にない。再生可能エネルギー
していた。 についても、使う方としては、あまり実感が
ない。
Q そういう状況ですと、社内では、
環境に配慮する社会責任といった意識は 自社が CO2 削減や脱炭素の取り組みは
既に育っている状況でしょうか。 Q うまくいっているかについて「何とも言え
そうだと思う。自社が掲げる理念を意識し ない」とご回答されていました。
て、「いいものを作りたい」という思いを持っ 一応、全社員に事業部や拠点ごとの環境関連
て開発に取り組むことが、社会責任を果たす の目標の進捗について共有が、年に数回ほど
ことにつながっていくのではと考える。 ある。部署ごとでも目標が展開されているが、
そこでは省電力より省資源化がメインだ。それ
が、全社の目標に対してどう貢献できているの
Q 特にカーボンニュートラルなどの話題がよく
かどうかが、よく見えない。
聞こえてくるようになってきたこの数年で、
業務の仕方、考え方などに変化はありましたか? また、自社や市場、社会でのこうした取り組
新しく作る製品の性能として、今まではそ みが、果たして正しい方向に行っているのか、
れほど求められなかった「軽量」「省資源」 効率のよい道を進んでいるのかどうかが、正直
「低消費電量」などが重視されるようになって よく分からない。
きている。自分たちの仕事周りでは、印刷物 とにかく、地道に顧客の要望に応えながら、
削減など「紙を減らす」ことを地道に行って 技術者としての責任をまっとうしていくのだと
いるような状況だ。 思う。
設計開発においては、業界の電動化やシス
テム化などの流れを受け、部品単体を組み合わ
せる形から、システムで設計する形に変わっ
てきており、ソフトウェアの比重も増えてい
る。また、以前は1人がものづくりや検査、出
荷までを担当するようなことも多かったが、
今はチームのプロジェクトで動くことが多い。
軽量化と高剛性を両立するためのシミュレー
ションの活用も必須になっている。
11
Page12
アペルザ様_wp㉖_12[インタビュー]
interview 02 回答者プロフィール
Bさん/生産技術:約20年 仕事の内容
製造業 [自動車最終製品] (社員数:20,000人以上) 生産ライン設計関係
今回のお話 どこの企業も、『目標達成は無理』と答えると思う
Q 自社での CO2やカーボンニュートラルの Q 再生可能エネルギーへの
取り組みによって、自身の業務に変化は 取り組みはいかがですか?
ありますか。 太陽光発電などは社内で導入されている。
ある。自分の担当しているラインは熱処理な しかし、太陽光発電は天候の変化で電力量が
どを伴うため、製造全体でのCO2排出量の中 変わり、かつ電圧も不安定であるため、生産
で比率が多く、なるべく削減できるようにする ラインではそれに全て置き換えることはでき
ことが求められている。環境に配慮した材料や ない。
素材開発も行っている。
また、CO2を使用している工程で、水素に
さらに、ラインで使用する照明をLED化す 置き換えようという動きが始まっている。そ
るなどしている。しかし照明は、作業効率に影 もそも、水素を供給してくれるステーション
響してくるため、置き換えると困る工程もある。 がまだ存在しないため、本格的に導入される
工場内の冷房の設定温度を上げるなども行っ のだとしても、先だろう。
ているが、これも夏場だとかなり厳しく、熱中
症の原因にもなってしまうため、むやみに行う Q 自動車業界全体で、かなり厳しい目標が
ことはできない。 課せられていますが、期日までに達成
できると思いますか?
最近はCO2削減の目標などがますます厳し
くなったことで、対策を講じなければならない どこの企業も、「達成は無理」と答えると
ところがあちこちに出てきたことで、かえって 思う。その目標を達成できる技術開発も含めて、
消費電力などが増えてしまうこともあり、トー 自社だけではもはや対応できない問題であると
タルの効果としてはCO2は減っていないと考 思う。そのため、業界内の企業で連携して、
えられる。 取り組むしか解決の道はないのではないだろ
うか。
12
Page13
アペルザ様_wp㉖_13[インタビュー]
interview 03 回答者プロフィール
Cさん/品質管理/品質保証:約20年 仕事の内容
製造業 [自動車関連] (社員数:3,000~4,999人以上) 製品の品質管理
今回のお話 カーボンニュートラル達成のためには、業界内の設計思想や
ビジネスの在り方がもっと大きく変わっていくべき
Q 自社での CO2 削減や Q 自社でのCO2削減やカーボンニュートラル
カーボンニュートラルの取り組みについて の取り組みについて、どう進めていますか?
自動車関連企業であるため、自動車最終品 各部門長が集められ、カーボンニュートラル
メーカーに準ずる形で、自社もカーボンニュー の推進グループを組んでいる。そこでの情報
トラルなどを目標にして取り組んでいる。最終 や目標を部門長らが担当部門の人たちに展開
品メーカーを飛び越して、そのPRなどをあま している。多忙な業務の中で行っており、どう
りしない風潮だと思う。社内のイントラネット しても片手間になってしまうため、十分に活動
でのページなどで、社内向けに進捗などの情報 が行えていないのではないかと思う。今、環境
が共有されている。 問題対応の情報が世の中にあふれかえってい
る状態であり、それを精査して、正しい情報や、
環境問題への対応自体は、以前からずっと
自社のためになる情報を取捨択一する時間が
環境ISOに準じて取り組んでいる。工場では、
ないと思う。
主に太陽光発電を導入しているが、簡易的な
電灯のみで、生産設備では使用していない。 また、担当している人にとっても、自分の
業務にとって大きな利や得がなく、売り上げ
や生産力に直結しないため、どうしてもモチ
Q 自社の取り組みについてうまくいっている
ベ―ションは落ちてしまうのではないだろう
かどうかについて「何ともいえない」と
か。われわれ製造業の人間は、「作りだす」こ
ご回答されていました。
とがモチベーションになるので、「削減する」
生産設備に関しては、効果の可視化が難し ことにあまり目がいかない性分であるのも関
いため。 係しているように思う。
Q この数年、自身の業務に
Q 自動車業界全体で、かなり厳しい目標が
変化はありましたか? 課せられていますが、期日までに達成
直接的には変化はないが、節電などの呼び できると思いますか?
かけは確かに増えている。 国民の皆が「無理だ」と思っているだろう。
また、従来の日本の設計思想で作られた生産
ラインに対し、カーボンニュートラルに適し
た改造を施すのは難しいのではないかと思う。
業界内の設計思想やビジネスの在り方がもっ
と大きく変わっていかないと、なかなか達成
は厳しいのではないかと思う。
13
自動車業界の
技術者 60 名に聞きました!
CO2 削減、脱炭素の取り組みの実際
発行日:2022年5月18日
発行:株式会社アペルザ
問合せ先:aperzacatalog-mail@mail.aperza.jp
リクエスト募集中!
ぜひお声をお聞かせください
https://forms.gle/e2M17aghUfWaFeyD8