技術者100名に聞きました!
産業IoTの
理 想 と 現 実
は じ め に
コロナ禍での感染症対策なども後押しし加速する「DX」や
「IoT」ですが、製造業の現場では活用状況は今、どうでしょう?
IoTといえば、数年前は確かに「どこもPoC止まりじゃないか」
「古い装置ばかりでどうしようもない」「情報漏えいが心配で
無理」といった声がよく聞こえてたものですが、変わってきた
のでしょうか?
今回は、製造業の現場で働くアペルザユーザー94人の方に、
産業IoT導入についての現場の実情や、率直に「どう思うか」
などお尋ねしました。
目 次
実態調査:アンケート結果
・回答者のプロフィール……………………………………………03
・産業IoTについて…………………………………………………04
・IoTの素朴な疑問、勘違いなど…………………………………09
実態調査:技術者インタビュー
・Aさん:「実験的、部分的に運用」
(目的=コスト削減、予知・予兆保全など)…………………11
・Bさん:「実験的、部分的に運用」
(目的=業務の自動化、生産性や業務効率の改善 ほか)……12
・Cさん:「業務で本運用している」
(目的=生産性や業務効率の改善、コスト削減 ほか)………13
概 要
調査時期:2022年2月8日~2月16日
対象者: 産業や工場IoT導入に携わる、生産技術者、生産管理者、
製造担当者、設計技術者
回答数:192
有効回答数:94
02
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アペルザ様_wp⑱_03[アンケート]
回答者のプロフィール 産業や工場IoT導入に携わる、生産技術者、生産管理者、製造担当者、
設計技術者を主な対象として、工場や設計製造での産業IoT活用の
取り組みや課題についてお尋ねしました。
今回は、94名の方に回答をいただきました。
Q 所属する企業の業態を 電子部品・デバイス・電子回路
教えてください。 その他 21%
29%
産業機械
医薬品 1% 21%
食品 2%
自動車・航空・船舶など輸送機器
家電、事務機器 3% 17%
部品加工・生産 5%
Q 所属する企業の
従業員数を教えてください。
1~9人 5
10~19人 2
20~49人 6
50~99人 10
100~299人 18
300~499人 5
500~999人 12
1,000~2,999人 13
3,000~4,999人 6
5,000~9,999人 9
10,000~19,999人 4
20,000人以上 4
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20
Q あなたの職種を 経営 CAE あなたの職場では何を
教えてください 3% 1 Q 製造していますか?
% その他
情報システム 3% 3% 今回の回答の一部をご紹介します。
ソフトウェア開発
4% 生産 主 な 製 造 物
技術
生産管理 ●
21 コイル、コネクタ製造装置 ● サーミスタセンサ
%
5 ●
% サージアブソーバ ● シール・ラベル類
● ショットブラスト装置 ● スマート農業機器
製造 7% 機械 ● パワーエレクトロニクス製品 ● ヒートセラミックス
設計 ● 光学センサー ● トラックの荷台 ● プロペラシャフト
品質管理/
7 12% ● 産業用ディーゼルエンジン
品質保証 %
保守/ 電機/ ……など、他にもさまざまな製品があがっていました。
研究開発
メンテナンス 制御設計
11 10 12%
% %
03
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アペルザ様_wp⑱_04[アンケート]
Q 設計している製品の生産数や種類
(複数担当する方は、現在、メインで設計している製品について)
その他 多品種少量生産
17% (生産数が1000台に届かない)
30%
少品種大量生産
13% 多品種かつ単品~数台
27%
変種変量生産
14%
産業 IoTについて
Q 産業 IoT について、あなたの職場で取り組みがありますか、あるいは検討中ですか?
約6割が取り組み中、もしくは検討中という回答でした。
いいえ
38%
はい
62%
「はい」と回答いただいた方に伺いました
Q IoT への取り組みのフェーズについて IoT の活用について、
検討や情報収集段階であるという回答が過半数で、業務 Q 職場の理解は得られていますか?
で本運用しているという回答は12%に留まりました。 「職場の理解が得られている」という回答が過半数でした。
部分的に 検討、情報
運用を準備中 収集段階 はい
2% 50% いいえ 55%
10%
業務で
本運用
している 実験的、 なんとも
12% 部分的に いえない
運用 34%
36%
04
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アペルザ様_wp⑱_05[アンケート]
「はい」と回答いただいた方に伺いました
Q IoT活用の目的を教えてください。
1位は生産性や業務効率の改善。稼動監視、業務の自動化と続きました。
トレーサビリティ 1
太陽光発電所の発電量監視と
トラブルの警報発信用 1
品質向上 1
コロナ対策 4
マーケティングなど顧客分析 5
従業員数を削減したい 10
新しいビジネスや製品の創出 10
人を単純作業から解放、創造性ある作業に 23
コスト削減 26
予知・予兆保全 33
業務の自動化 35
稼働監視 36
生産性や業務効率の改善 45
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50
Q IoTの取り組みで、どういう技術を採用していますか、
もしくは検討していますか。
回答の最多は、AIや機械学習で、画像処理システム、スマートフォンやタブレットなど
モバイルと続きました。
デジタルタグ管理 1
CO2センサー 1
シグナルタワーの点灯状態を
センサーで監視 1
電流、電圧などの計測 1
エッジコンピューティング 3
3Dスキャナー 7
VR/AR/MR 7
360度カメラ 7
CCDカメラ 8
加速度センサー 9
3Dプリンタ 9
振動センサー 14
温度センサー 15
クラウドシステム 22
スマートフォンやタブレットなどモバイル 24
画像処理システム 32
AIや機械学習 34
0 5 10 15 20 25 30 35 40
05
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アペルザ様_wp⑱_06[アンケート]
「はい」と回答いただいた方に伺いました
Q レトロフィットシステム(※)を利用もしくは検討していますか。
※通信機能を備えない古い設備や既存設備に後付けをし、通信やセンシングを行えるようにするシステムのこと。
約過半数が「はい」と回答していることから、
後付けIoT的製品のニーズが高いことが
うかがえます。
はい
いいえ 45%
55%
Q IoT を用いて、具体的にどのようなことをしているか、もしくは検討しているか教えてください。
フリーコメントの回答の一部を紹介します。
検査関連や稼働監視関連が多くを占めています。
●カメラでの検査工程の自動化 ●設備の稼働管理 ●生産品質・量拡大からトレサへの連携 ●工場設備の稼働率監視
● 装置の稼働状況を収集する ●設備稼働状態の集計、生産効率の見える化など ●設備監視による予防保全・予知保全
●設備故障管理 ●監視作業の置換、異常検知 ● 稼働監視、保全
● 稼働監視を行い、生産ラインの可動率、停止時間などの情報を収集し、生産改善のトライアル中
● 稼働状況の監視(稼働率、停止内容等) ●産業機械の稼働状況監視、NGの切り分け ●自動監視システムを作成する
●海外の稼働状況確認や改善の目星 ●クラウドによる管理、またお客様への新たな商材
●生産数と不具合情報等の統合、品質管理など ● 製品の品質(温度データ)記録 ●クラウド上でのデータ管理・データ活用
●ロボット動作データの蓄積と取得 ● 稼働データの収集、保全優先度の検討
●既存設備のシグナルタワーの状態を監視する機器を後付けし、停止時間やタイミングの情報収集を行っている
● AIを用いて測定データから調整データを先読みして調整時間短縮している ● 稼働率算出、数量把握、重量把握、在庫把握
● DCSによる製造データなどから予兆検知 ●カーボンニュートラルを見据えた、古い設備の監視システム・可動データ収集機構の構築
●デジタルタグによる製品生産進捗管理・紙媒体によるQCコントロールから、IoT導入による管理、および深い分析が可能な環境の構築
● 現地の機械とリモート接続し不具合情報を入手、および手直し ●遠隔操作を可能にして在宅ワークの幅を広げたい ●照明器具の遠隔管理
●外観検査の自動化 ● 製品検査の自動化 ●自動外観検査装置の検討を行っている ●各種センサートと通知、BLEの活用
● 機械の稼働集計、製品検査 ● 検品作業ができないか検討 ●作業の効率化 ●情報共有化、仕事の単純化、労務費削減
●設計→部品手配の省力化 ●組込製品でのセキュリティ監視機能の実装、遠隔監視や攻撃検知の実現手段として
●太陽光発電用インバーター(パワーコンディショナー)の古い年式の物に後付けで遠隔・制御装置を取付けたい。現在、対応中
●点検の電子化、高所配管等設備の見える化 ●販売納品した設備の遠隔監視によるアフターサービス
●品質トレーサビリティの構築とデータ分析による品質向上 ● 不良低減、不良品の検査
Q IoT の取り組みで社外組織と連携・協調していますか
IoTは単一の分野だけで成り立たない仕組みであることから、社外の連携も必要になる場合があります。
回答者の方についてはどうなのか、尋ねてみました。
はい
31%
いいえ
38%
今後
検討中
31%
06
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アペルザ様_wp⑱_07[アンケート]
「はい」と回答いただいた方に伺いました
Q 協業している
組織は?
民間企業との協業という回答が多数でした。
経産省など政府省庁関係 1
市町村自治体 1
大学など教育・研究機関 3
IT系民間企業 9
製造業系民間企業 14
0 2 4 6 8 10 12 14 16
Q パートナーとの協調について、課題や苦労を教えてください。
フリーコメントの回答の一部を紹介します。
●アドバイザ料の増価 ●やってみないと成果が出るかどうか分からないにもかかわらず、コストが高い
●コロナで会えない ●荷台部分は、デジタル化どころかただの空間なので、それに載る荷物の情報を得ることが難しい
●今は電子でのやり取り、またIoTの組み立て ●仕様が限られている ●社内知見者の不在による開発時の遅れ
●専門的な事柄についての理解を深める努力 ●技術レベルの違いによるコミュニケーションの不一致
●方向性が合わない ●複数社が関係する場合、どの会社が主幹になるか不明瞭 ●全体周知・理解を得るのが難しい
●要件定義、認識のすり合わせがなかなかすんなりといかない ●要件定義とプロセス設計に苦労しています
Q パートナーとの協調により、
プロジェクトをうまく進めるためにはなにが大事ですか?
フリーコメントの回答の一部を紹介します。
コミュニケーションや情報発信などが課題であるようです。
●コミュニケーションの取り方 ●異分野の知識習得や学習意欲 ●知見や実績を活かした提案型の開発
● SNSでの情報発信・共有 ●セミナーやイベントの開催
Q IoT活用で抱えている課題は?
「活用のための技術的な知識」が最多で、「十分に取り組むための時間がない」「現場の理解向上」と続きました。
そのほか「自動化するより人がやった方が早く、検出精度が高い」「経営陣の積極性」といった課題があがって
いました。
導入した仕組みが使われない 6
活用の効果が具体的に出ていない 11
情報が足りない 11
活用が広まらない 13
人材が足りない 14
コストが十分に割けない 16
現場の理解向上 17
十分に取り組むための時間がない 22
活用のための技術的な知識 25
0 5 10 15 20 25 30
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アペルザ様_wp⑱_08[アンケート]
「はい」と回答いただいた方に伺いました
Q IoT活用で抱えている課題について、詳しく教えてください。
フリーコメントの回答の一部を紹介します。
●事例や確かな情報が少ないため優先順位が低くなってしまう
●客先の個別案件の対応が優先になってやりたいことが進まない ● 現業に追われ、改善業務の時間が取れない
● 1人でいろいろしているので手が回らない
●専門知識がたりない。また専門知識をもった人材がいない。費用対効果を求められる
●導入、運用にかかわるスタッフがほぼ居ない(詳しい人間がいない)
● 「どこに、何に、何のために」を考える人材不足、社内に浸透しない ● 装置などの予知予防保全への普及ができていない
●各部門独自で推進し、横の展開(拡大)がない ●担当部署が製造部門ではない ●現場との温度差をどう揃えていくか
●現場側、上層部の理解度が不足しており、収集するデータが具体化できない
●現在はとりあえずたくさんのデータの吸い上げを実施している。しかしすべてのデータが改善作業に反映できず、不要な
情報も蓄積してしまってる。必要なデータを選択し、無駄なく改善の展開する仕組みが課題
●多品種生産での導入事例が少なく、どのようなものを適用すべきかが見えない
●取得データの分析・利用が不十分 ●欲しいデータの収集が上手くできない、収集したデータが活用できない
●新しいロボットなどの情報が不足している ●使用方法を説明すること ●活用のための知識不足
●思うように活動・改善が進まない ● AIやIoTの必要性はあるが、応用力に乏しい ●運用までたどり着かない
● IoTのプラットホームが多数存在するが、機能とコストとのトレードオフが必要。またIoT自体のセキュリティを考慮しないと
乗っ取られ、DDoS攻撃などの踏み台にされてしあう恐れがある。IoTに特化した(スケール、ボリューム)有効なセキュリ
ティ対策の情報が欲しい
● PLC一つにしても、IoT対応型はコストが上がってしまう。また、現状はIoTを導入するための明確な目的(効果)が明確に
なっていないので、お金と時間をかけて導入したとしても活かされない
●予算が基本仕様の部分で埋まってしまい、十分な予算が取れない
●製造者側で、収集したデータをフィードバックしての改善まで可能な知識が不足している
●十分に取り組むための予算と設備改造の時間がない ●目に見えにくい効果も多いので、投資効果の算出が難しい
●費用対効果を求められるので、なかなか具体化できない
●検出精度の向上については照明、カメラセットの分解能の向上が必要で数年先と思われる
「いいえ」と回答いただいた方に伺いました
Q あなたの職場でIoTの取り組みや検討をしていない理由について教えてください。
「知識がない」「経営者が興味がない」と職場内のリテラシーや意識の課題があがり、
「必要がないから」という理由で取り組まないというわけでもなさそうです。
Iotが何かわからない 2
予算がない 9
必要がないと考えるため 9
経営者が興味がない 11
知識がない 17
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18
08
Page9
アペルザ様_wp⑱_09[アンケート]
IoTの素朴な疑問、勘違いなど
Q 「IoT」について素朴な疑問を教えてください。批判でもなんでも結構です。
フリーコメントの回答の一部を紹介します。
意見、批判
● IoTといえば物理的に実態があるものを指しているようですが、自立移動型Agentと呼ばれるソフトウェアのみでネットワークを
渡り歩くものも存在します。これもある意味実体のないIoTと呼べるのではないかと思います。こういった存在を取り上げて
ほしいと思います
●昔からある概念をわざわざIoTと大げさに叫ぶ必要はないと感じる
●言葉のイメージがかなり先行してしまっている印象があるが、流行り出す前からできているところはできているし、できていない
ところは必要ではなかっただけではないか? 何をもってIoTができているとするのか? イメージ先行で不要なところに無駄な
コストをかけようとしている気がする
● IoTの概念は幅広いので社員の理解を深めるためにIoTという言葉は極力避けている ● IoTの枠組みが大きいと感じる
●言葉が独り歩きして、実態が広く知られていないと感じる ●どの程度の規模であればメリットが出るのかが分かりづらい
● 社会全体が漠然とIoTをアピールしているが、導入しても減価償却できていないところがほとんどではないのだろうか
● 機構を構築する技術者はいても、コストを捻出する管理者、データを運用する作業者の不足が中小企業での展開を妨げてると感じます
● 実験は行われているが、現実的に導入に至っていない ●完全に中国に抜かれている。国や企業TOPの意識の低さ、取り組み体制に問題あり
●日本の企業はIoTが遅れていると感じるし、弊社も特に必要性を感じられていないのが現状です
●つながりやすいモノと難いモノがあり、統一した通信方法が必要だと思います
●最近の設備保全システムには、よくAIで判断とあるが、すべてをAIに任せると技術者の技術低下につながると考える。数値を収集
するだけで傾向が現れれば現地現物で確認することが重要と考えています
●使う側を選ぶ技術。デジタルな社会は決して人に優しくないです
● 理想と現実のギャップがある。セキュリティなどの問題で個人の判断、現場の判断でできることではない
● IoTの理解ができていないので疑問がない
疑 問
● (工場などの)全体最適化との差異がよく分からない
● 装置メーカーとして検討する必要はあると思うのですが、今のところエンドユーザーからその依頼が少ないため、本当に需要はある
のか疑問です
● 繊維アパレル製品製造(縫製業)は手作業が主でIoTで生産性向上が見込めるか疑問あり
●工場の生産設備をインターネット接続で管理したいと思っても、旧設備やインフラが整っていないとほとんどの場合は、設備改造
やインフラ整備費の費用を考えると、諦めてしまうような気がします。100人規模の中小製造会社などでもIoTに積極的に取り組ん
でいるのでしょうか?
●制御装置、センサーもない環境で最小投資で管理可能なIoTは何があるのでしょうか
●もしIoTが大幅に進んだあと、アナログな方法が使えるのか?
● 業務で個人のスマートフォンのカメラ機能を使用することについてどう思いますか?(社内情報の持ち出しや、外部インター
ネットへのアクセスリスクなど)
● 従業員による情報漏洩はどのように防ぐか?
●住宅内においては活用が進んでいるが、職場内での活用は進んでいないイメージがある。それはなぜか?
● 社内での作業は機械ではなく、人がメインの作業の場合、IoTをどう生かしますか? ●モノまでIoTを広げて行くべきなのか?
● AIを活用する必要があるのか ● 乗っ取りリスクと乗っ取り防止コスト(生産性の向上とコストの費用対効果)
知りたいこと
● CPUのない人だけの作業時の対応策が知りたいです ●他社がどうやっているか ●他社の取り組みや苦労話を聞きたいです
● 統一規格はありますか ● 導入事例、成功・失敗例 ● 開発部門での活用法
苦労や悩み
● 実際にいろいろな種類の設備があると、それぞれ通信方式などの違いがありまとめるのが難しい
●決まった動きが少ない形態のものに対応は難しい面がある ●簡単に周知できない、有用性、理解が得られない(説明できない)
●最新最先端の技術をすぐに知りたいが広範囲の調査が必要になる
●リソースの限られている中小企業でIoTはどこまで対応すればよいのか分からない
● 導入コストやメリットが現場担当者だけでなく、上層部にも伝わりにくい ● IoTは気が利かないので、細かく定義しないといけないのが大変
● 導入例には具体的な情報が出ておらず、現場や上層部に提案しにくい(稼働監視と一口に言っても何を監視するためにどんな
データやセンサーが必要なのかが伝わらない)
●データを取得しても、活用までを検討するのが難しい
09
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アペルザ様_wp⑱_10[アンケート]
Q 「IoT」について、「何か、勘違いしているのでは?」「これは間違っているのでは」
ということを見聞きした経験があれば、どんなことか教えてください。
フリーコメントの回答の一部を紹介します。
●≒AIという考え。 ● Android系のスマートスピーカーが突発的に「よく聞き取れませんでした」と話し出す
● IoTという名前からして単体でネットワークに接続できるものだけがIoTと思われがちですが、自身でネットワークインターフェース
を持たずとも、USBやI2Cなどの物理ポートからネットワーク機器と強調してIoT化するものも考慮するべきだと思います。逆に
そういったデバイスの存在を軽視したために、サイバーセキュリティ攻撃の抜け道となってしまった例もあるかと思います。IoT
ならではのセキュリティ対策をもっと取り上げていただきたいと思います
●セキュリティに弱いという認識の人が多い ●がちがちの見せかけセキュリティ対策(申請・承認までのハードルが高く、しばりが多い)
● なんでもかんでもIoTという言葉を出せばいいと思っている人がいるような気がする。IoTをやることが目的になっていて、本当に
必要なやった先の効果が見えていない
●一時期言葉が先走りしている印象であった。何につけても「IoTで!」と言われるが、誰も具体的に何をどうするか分かっていなかった
● 具体的な施策で説明し、「これもIoTなんだよ!」と指導している ● IoTが業務を整理してくれると勘違いしている人がいる
●パソコンを操れる技術だと思われている点
● IoTにより管理フリーとなることで現場担当者が現場を知らなくても大丈夫になると勘違いされていることを聞いたことがある
● IoTを導入することによって、費用対効果が出るものなのか?
●予算面でも必要、不必要を切り分ける必要があるが、その切り分けが難しい
●ソフトのみ入れ、ソフト間の連携・全体設計をしていない ●すべてを新しいシステムにしなければならないような雰囲気
● 具体的にどのようなセンサーや技術があるのか把握できておらず、他社事例で話を進める。活用するイメージを持っていない
●データを収集するだけにとどまり、特に改善が見られないものはIoTではなく、そのデータを使って何かを改善、保全できるものが
IoTだという認識です
●とりあえずネットワークにつなげば導入完了と考えている人が一定数見られる ●その段階に達していないかも……
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アペルザ様_wp⑱_11[インタビュー]
interview 01 回答者プロフィール
Aさん/保守:約4年 仕事の内容
産業機械メーカー(社員数500~999人) 工場全体の設備管理・保全を担当。
IoT導入フェーズ:「実験的、部分的に運用」
IoT導入の目的:「コスト削減、予知・予兆保全など」
Q 職場で、IoT をどのように活用しているか、 Q 入社された当時から既にIoTが、ということ
教えてください。 だったのですが、もしなかったとしたら
相当大変だったと思いますか?
既存のIoTシステムを自社向けにカスタムす
る形で導入している。点検の電子化、および そう思う。特に、導入から関わったら大変
高所にある設備の見える化などに対応している。 だっただろうと思う。
また各機器の使用状況などをネットワーク上
で遠隔監視できるようになっている。設備の 今後、
異常値もアラートしてくれる。コンプレッサー Q IoT に期待するところは?
のエアの圧力、水の使用量(流量計)など。今 データを見て人が判断するところがまだ多い
も保守業務やトラブル対応は、現地での作業に ので、AIなどでもう少し自動化されてくれば
なるが、事前にある程度情報を把握してから よいのではと思う。また、現状は紙や帳票
現地に向かえるようになっている。遠隔監視の ベースでの作業になっており、いちいち事務所
仕組みは、コロナ禍で在宅勤務になっても一部 に戻って印刷や入力をする作業が発生するため、
の業務ができるため、便利である。しかし遠隔 製造部門の方に導入されているタブレットが
監視の仕組みは、社内のまだすべての設備に 保守の方にもあると便利であると思う。工場の
導入はしていない。 中で無線化も進められているため、そうした
動きに期待したい。ただ、現状あるタブレット
Q IoT 導入について 端末は、当社の保守の現場で使おうとすると、
課題は? 堅牢さや防水・防塵性能がほしく、それを求め
実は、入社した当時からIoTによる仕組み ると高価で重くなってしまうので、もっと軽く
が導入されていたので、自分自身は「それが て丈夫なものが出てきたらいいのではないかと
当たり前」だと思って仕事をしている。学校で 思う。
もITを使ってきたので、使いづらいなどの苦労
も不満も特にない。ただし、新しい設備を導入
するタイミングで、IoT機器を追加する時に
準備や設定などが複雑で手間がかかっており、
少し分かりづらいと思う時がある。設備ごとで
要件が違うため。
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Page12
アペルザ様_wp⑱_12[インタビュー]
interview 02 回答者プロフィール
Bさん/機械設計:約25年 仕事の内容
産業機械メーカー(社員数1,000~2,999人) 生産設備の設計、およびマネジメント
IoT導入フェーズ:「実験的、部分的に運用」
IoT導入の目的:「業務の自動化、生産性や業務効率の改善、コスト削減、稼働監視、
人を単純作業から解放、創造性ある作業に従業員数を削減したい、
予知・予兆保全」
Q 職場で IoT がどのように活用されているか 遠隔監視・操作のシステムを作ってほしいと
教えてください。 いった要望など。
当部署の設計業務自体ではIoTは使われてい
ない。自社の生産・加工現場ではIoTによる予防 Q 過去、欧米の拠点にいたことがあるとのこと
保全や予知保全が行われている。PLCのデータ ですが、日本拠点と比べてIoTやデジタル
を活用しているが、古い装置の場合はカメラ への取り組みの意識の違いはありますか。
などを取り付けてデータ取得をしている。 やはり欧米の拠点はそのあたり進んでいて、
日本は遅れていたと思う。欧米拠点では、コロ
IoT が導入された ナ以前からWeb会議システムが使われていた。
Q きっかけは? 国土の広さからリモートワークの対応の必要性
が異なり、ワークスタイルや雇用文化も日本と
工場の建て替えのタイミングだった。現状で
は大きく異なるため、差が出てきていると思う。
は「スマートファクトリー」とまではいかない
今は、欧米拠点でのデジタル化の取り組みを、
が、その第一歩といったところだ。見学通路に
日本拠点に取り入れたりしている。
設置した大型画面から、設備の稼働状況や太陽
光発電の発電状況などが確認できるようになっ
ている。 Q 顧客装置での IoT 導入において、
心がけていることは?
今後、IoT化はどのように進んでいく 顧客としっかりコミュニケーションを取り、
Q 予定ですか? 規格や仕様、実装イメージなどについてイメー
ジをなるべくはっきりとさせること。例えばUI
数年かけてDX推進とともにIoTの取り組み
から先に作って、機能をイメージしてもらいや
が加速していく計画だ。
すくしている。
Q ご自身の設計現場の方への
IoT 導入の可能性は?
設計業務では、IoTの導入は当面ないのでは
ないかと思う。デジタル化自体は、RPAでの自
動化、AR / VRの導入など、すでに取り組んで
いる。解析シミュレーションでは、ビッグデー
タやAIを活用している。設計と関連するところ
だと、顧客向け設備の方でのIoT実装の対応に
なる。こちらの対応はこの1、2年の間で増え
ている。省人化を目的とした自動化を目的とす
るケースが多い。あるいは、作業者が設備内の
産業ロボットの可動域に入らなくて済むよう、
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Page13
アペルザ様_wp⑱_13[インタビュー]
interview 03 回答者プロフィール
Cさん/生産技術:約30年 仕事の内容
その他メーカー(社員数20,000人以上) DX推進を担当
IoT導入フェーズ:「業務で本運用している」
IoT導入の目的:「生産性や業務効率の改善、コスト削減、新しいビジネスや製品の
創出、稼働監視、予知・予兆保全」
Q 職場での IoT の取り組みについて、 人の勘コツ頼りな作業が
教えてください。 Q 自動化しづらいなどの問題ですか?
設備の稼働率を高めるためのデータ分析業務、 顧客個別にかなり細やかに対応しているため、
トレーサビリティを確保することによる品質向上、 業務の情報が属人化しがちであること。作業その
AIを用いたAIの自動化などに取り組んでいる。 ものに問題があるわけではなく、過去の対応業務の
当社がIoTの取り組みを開始して5年以上は経っ 履歴が担当の頭の中にしかないという状態のため。
ている。ただし当社の全ての拠点で見ると、現 もちろん、過去のことを聞いても「そんなものは
時点のIoTの導入率は3割ほどである。 忘れてしまった!」と言われてしまうことがある。
Q 早くから IoT 化への取り組みが
Q IoT の導入や活用で、
始まっていたのですね。 課題や悩みは何がありますか?
導入当初はまだ「IoT」という言葉自体、聞こ 導入後の使い勝手の問題。ボタン1つ押せばいい
えてこなかった。導入当初、鉄鋼大手や化学メー ような仕組みではないことが多く、操作が少し
カーで先進的なIT化の取り組みが聞こえてきて 複雑になってしまう。そうすると現場で使用する
いて、むしろ当社は「少し遅れている」くらいに 際に「面倒」と思われてしまうことがある。
思っていた。
また、人材確保や教育の問題がある。データ
サイエンスに詳しい人材の確保や教育の仕方が
Q 今と当時と比べて、IoT や IT の技術面に
課題だ。設計製造の現場とデータサイエンスの
変化はありましたか? 両方を知っている人が必要であるため、かなり
当時はIoTのようなデータを取得する仕組みを 絞られてくる。社内には、まだまだそういう人材
実装しようとすると、一からシステムを作らな が非常に少ない。採用も行っているが、給料が
くてはいけないような状況であったが、今は便利 高いIT大手企業などに取られてしまうことも多い。
なツールが増えてきていると感じる。設備から
いろいろなデータを取りやすくなった。
Q 現状の IoT の技術で
不足しているところは?
Q そのような状況だと、
職場では、ペーパーレスは センサーの技術がまだまだ足りないと思う。
だいぶ進んでいるのではないですか? またAIやディープラーニングの技術では、モデル
を作るのにかなりの時間と手間がかかるので、
そんなことはない。すべての拠点にIoTがいき
楽に設定ができる技術などが出てきてほしい。
わたっているわけではないこともあり、未だに
紙や帳票の運用が多い。
今後、IoT を使って
Q まだ7割の拠点で Q 行いたいアイデアはありますか?
IoT化されていないということですが、 人の姿勢や目線などのデータを取って、機械
何が課題となっているのですか。 の稼働状況のデータを合わせて効率の良い作業
標準化が課題だ。各拠点の業務が属人化され をしたり、作業の問題の指摘などを行えるよう
ていて、なかなか大変である。 になるといいかなと思う。
13
技術者 100 名に聞きました!
産業 IoTの理想と現実
発行日:2022年3月9日
発行:株式会社アペルザ
問合せ先:aperzacatalog-mail@mail.aperza.jp
リクエスト募集中!
ぜひお声をお聞かせください
https://forms.gle/e2M17aghUfWaFeyD8