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NIR分光計の技術仕様、測定性能に対する影響、他の分光計の技術とそのメリット・デメリットを解説
NIR(近赤外)分光計を構築するために数多くの異なった技術が利用できます。
本書では、FT-NIR(フーリエ変換近赤外)干渉計、回折格子モノクロメーター及び固定回折格子検出器ダイオードアレイの各技術を比較しております。
【目次】
前書き
仕様の定義
仕様の影響
様々な技術の説明
様々な技術の利点及び欠点
まとめ
参考文献
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このカタログについて
ドキュメント名 | NIR分光計の技術比較 |
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ドキュメント種別 | ホワイトペーパー |
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取り扱い企業 | フォス・ジャパン株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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FOSS White paper
NIR分光計の技術比較
このホワイトペーパーは、NIR分光計の技術仕様、測定性能に対する影響、他
の分光計の技術とその利点・欠点を明らかにするものである。
著者:Hans Villemoes Andersen, Håkan Wedelsbäck, Per Waaben Hansen
P/N 1026672, Issue 1, November 2013
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目次
前書き・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 ページ
仕様の定義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 ページ
仕様の影響・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 ページ
様々な技術の説明・・・・・・・・・・・・・・・・・8 ページ
様々な技術の利点及び欠点・・・・・・・・・・・・・11ページ
まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12ページ
参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14ページ
前書き
NIR(近赤外)分光計を構築するために数多くの異なった技術が利用できる。本書では、
FT-NIR(フーリエ変換近赤外)干渉計、回折格子モノクロメーター及び固定回折格子
検出器ダイオードアレイの各技術を比較する。
FT-IR(フーリエ変換赤外線)干渉計は、現時点において、IR(λ > 2500 nm)に対し
て好まれる技術である。回折格子は、UV/VIS(λ < 780 nm)に対して好まれる技術
である。その中間のNIR領域(780 nm < λ < 2,500 nm)においては、両方の技術の
利点が組み合わさるため、適切な設計をすれば、これらは優れた分析機器の設計に使用
することができる。
どんな分光計技術が望ましいかは、常に用途によって変わる。用途が異なれば、各技術
の利点及び欠点が合致すべき要件も異なる。
本書では、共通して使用される仕様の定義、それらの測定性能への影響、様々な分光計
技術並びに各技術の利点及び欠点について述べる。
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仕様の定義
波長及び波数
光の特性は、波長によって決まる。波長は、光が1周期の間に真空中を通過する距離と
して定義される。波長の最も一般的な単位は、10-9 mに相当するnm(ナノメートル)
である。400~780 nmの可視領域では、波長は、光の色として観察される。
光の特性は、周波数によっても決まる。波長と周波数との関係は、次のとおりである。
c = λv
ここで、cは真空中の光速度、λは波長、そしてvは光の周波数である。分光法において、
特にFT-IRを使用する場合、周波数にはcm-1 の単位を使うのが普通である。単位cm-1
は、波数又は毎センチメートルと呼ばれ、長さ1 cm当たりの1波長分の波の個数を表す。
横座標に使われる単位は、互いに逆数であるので、左に大きな値が来るように横座標に
cm-1を取ってスペクトルをプロットする手法を採用した。
nm単位のλからcm-1 単位のvへの換算とその逆は、次式によってなされる:
v = 107 / λ 及び λ = 107 / v
波長と波数との間で分解能を変換する場合、この式は注意して使用しなければならない。
分解能のセクションを参照すること。
波長の範囲
NIRの波長の範囲は、780~2,500 nm(12,820~4,000 cm-1)(参考文献9)の範囲
として定義されることが多い。2,500 nmという値がよく使用されるが、短波長につい
ては600~800 nmの範囲で多くの様々な値が使用される(参考文献1)。より短い波長
(400~780 nm)のスペクトル領域は、可視領域と呼ばれる。より長い波長(2,500
~25,000 nm)のスペクトル領域は、中赤外線領域と呼ばれる。
波長正確度及び精度
波長正確度は、計測器の波長軸の標準波長軸との一致の度合いである。波長精度は、計
測器がそれ自体の波長軸をいかに良く再現するかである。波長正確度及び精度は、波長
軸と同じ単位(例えばnm)で測定される。同じ事が波数目盛りにも言え、正確度及び
精度は、cm-1の単位で測定される。
分解能
分光計の分解能Δλ又はΔvは、分解可能なスペクトルの特性を決定付ける。分解能は、
帯域幅、通過帯域又は計測器ライン形状(ILS)とも呼ばれる。分光計の分解能は、通
常、標準処理を含む光学システムによって定義された半値全幅(FWHH又はFWHM)と
して定義される。また分解能は、わずかに異なる数値で表すことのあるレイリー基準で
定義されることもある。この分解能は、サンプル点間の距離とは無関係であることに留
意することが重要である。分解能をカバーする信号となるには、四つほどのサンプル点
が必要である。より高いサンプル密度は、大抵の場合、見せかけの価値しかない。
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分解能は、横座標として同じ単位で測定される。あるいは無次元相対分解能Rを定義す
ることができる。
R(λ) = Δλ / λ 及び R(v) = Δv / v
分解能は、それがΔλであるかΔvであるかによって異なる振る舞いをする。Δλが、λの
関数として一定である場合、Δvは、vの関数としてv2に比例して変化することになる。
異なる目盛りにおけるモノクロメーターの分解能(波長目盛りは不変)
1/波長分解能 2/相対波長分解能 3/相対波数分解能 4/分解能波数
異なる目盛りにおけるFT-NIRの分解能(波数目盛りは不変)
1/波長分解能 2/相対波長分解能 3/相対波数分解能 4/分解能波数
分解能を波長の横座標から帯域幅を定義する二つの波長に換算するために、式1を使用
することができ、新しい横座標上の分解能を得るために差し引くことができる。相対分
解能が小さくR << 1である場合、Rの値は、両方の横座標で同じになり、Rは分解能の
換算に使用することができる。すべての場合において、換算は一つの波長に対してのみ
有効であることに留意すること。
ノイズ
ノイズは、同じ安定したサンプルについて測定を繰り返した場合の信号応答における変
動である。広義には、ノイズはほとんどの測定の精度を制限する。信号対ノイズ比
(SNR)は、同じ信号の多数回の測定における標準偏差として算出された、ノイズに対
する100%伝送時の信号として規定される。信号対ノイズ比の有益な尺度は、スペクト
ルで測定した吸光度に直接関連する吸光度単位(Abs)である。しかし、どのような分
解能、測定時間及び波長範囲で信号対ノイズ比が計算されたかということも述べなけれ
ばならない。というのは、これらの因子が数値に影響するからである。数値は、単位
Absと平方根を用いて時間に関して正規化してもよい。これは、吸光度単位で測定した
ノイズに測定時間の平方根を乗ずることによって行うことができる。
測定時間
測定時間は、サンプルからの信号が測定された積分時間並びにサンプル及び結果を処理
するために使われた処理時間からなる。例えば平均スキャン回数を変更することにより、
信号内のノイズを変えることができる。定常ノイズであれば、積分時間の平方根に比例
して減少する。平均スキャン回数は、積分時間を表す用語としてよく使用されるが、計
測器間で比較可能なスキャン1回当たりの時間という追加情報を必要とする。多数回の
高速スキャンと少数回の低速スキャンは、積分時間が同じになり、したがってノイズも
同じになるため、スキャン回数のみが事前に定義された条件の中で意味を持つ。
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ドリフト
計測器に示される値が時間が経つにつれ次第にずれていくことを、ドリフトと呼ぶ。こ
れは、低周波のノイズと解釈してもよい。これは、単位時間における吸光度(Abs/s)
として測定できる。ドリフトは、多くの場合、積分時間を増加することによって得られ
る信号対ノイズ比を制限する。これは、時間の経過に伴いドリフトによって生じる誤差
が増加する一方で、ノイズは減少するからである。ある時点でドリフトがノイズを上回
り、信号対ノイズ比が再び低下し始める。
迷光
迷光は、検出器に到達した不必要な光で、スペクトルを歪ませる。一つの系において二
つの異なるタイプの迷光が発生することが多い。
一つ目のタイプは、サンプルの取り扱いに関するもので、光の一部がサンプルと相互作
用せずに検出器に到達する、例えば、反射モードでサンプルカップから反射した光が検
出器に到達し、スペクトルのダイナミックレンジを制限する場合などである。透過モー
ドで光がサンプルから逸れた場合も同じことが起こる。
迷光の二つ目のタイプは、選択した帯域幅の外側の波長が、分光計で測定された光に含
まれた場合である。
ダイナミックレンジ及びゲイン
スペクトル内の最大吸光度と最小吸光度との差は、スペクトルダイナミックレンジと呼
ばれる。これは、信号の最大値と最小値の比、又はその比の常用対数として吸光度単位
で測定できる。スペクトルダイナミックレンジは、迷光の影響を受けることがある。
FT-NIR計測器において、スペクトルダイナミックレンジは、時に「測光精度」として
規定され、透過率(%T)として示される(参考文献11)。FT-NIR計測器は、ゼロ吸
光に対して相対的な吸光度目盛りをオフセットする可変ゲインを持つことがある。最高
感度設定におけるノイズレベルと最大許容信号との比は、計測器のダイナミックレンジ
と呼ばれる。これは、比として、又は吸光度単位で測定される。計測器のダイナミック
レンジは、スペクトルのダイナミックレンジより大きい。また計測器のダイナミックレ
ンジは、測光範囲とも呼ばれる。
測光直線性
測光軸の直線性は、真の信号減衰の常用対数に対する信号値の常用対数の直線性からの
ずれである。その値は、一つの波長における二乗平均平方根誤差として計算される。測
光直線性は、迷光と制限されたダイナミックレンジに影響される。FT-NIR計測器にお
いて、「測光精度」は、時に透過率(%T)として規定されることがある(参考文献
11)。この数値は、吸光度単位に換算した場合、前のセクションで述べたように、スペ
クトルダイナミックレンジに相当する。直線性からのずれは、単一ビームスペクトルに
一定の誤差信号が加わることによって起こる。
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仕様の影響
波長及び波数
波長及び波数目盛りは、同程度に良く適用される。伝統的に波長目盛りはNIRで使用さ
れることが多いが、波数もまたよく使用されている。選択は、分光計の技術に基づいて
行われることが多く、回折格子ベースの計測器は波長目盛りを使用し、FTベースの計測
器は波数目盛りを使用する。
波長範囲
波長範囲、分解能、測定時間及び信号対ノイズ比の間には、常にトレードオフがある。
吸収帯の高調波は、各次数の高調波が、より弱い信号及びより深い侵入深さを伴うより
短い波長で生じる。波長の範囲は、その用途で必要とされる吸収帯を含まなければなら
ない。特定の用途については、改善された信号対ノイズ比を有する選択された吸収帯の
範囲を含む限られた波長範囲の方が有利な場合が多い。一例として、透過モードにおい
て穀物や肉のような不均一なサンプルを測定する場合、サンプリング誤差を減らすため
に侵入深さが深い波長領域を使用するのが有効である。より一般的な用途に使用する計
測器は、NIRの全波長領域を対象としていなければならない。
波長正確度
波長正確度は、モデルの転送性及び正確度にとって重要である。波長のシフトは、普通
バイアスを発生させ、転送性を損なう。内部波長標準による較正や波長測定誤差につい
ての予測モデルの確立は、波長ドリフトの影響を軽減するためのよく実証された二つの
方法である(参考文献7及び8)。
波長正確度は、狭い吸収帯の特定のために重要である。
分解能
定量分析を行う場合、分解能は他の特性と比べてそれほど重要ではないことがほとんど
である。
K. H. Norris(参考文献4)及びK. H. Esbensenら(参考文献10)によって、分解能の
拡大による信号対ノイズ比の改善が有利であることが示されている。
P. R. Armstrongら(参考文献3)は、10 nm回折格子計測器と8 cm-1 FT計測器は、
小麦中の蛋白質、アミロース、灰分、硬度指標及び水分の定量分析に関して同等の性能
を有すると結論した。
O.Kolomiets及びH. W. Siesler(参考文献6)は、狭帯域医薬品有効成分の定量分析に
関して、高分解能測定は、測定の正確度を高めないと結論付けた。しかし、彼らは、波
長較正が狭帯域波長標準で行われる場合、高分解能によって波長較正の正確度を高める
ことができると主張している。
信号対ノイズ比(S/N比)
再現性は、信号対ノイズ比に強く影響される。波長の関数としてのノイズは、FT-NIR
及び回折格子計測器によって異なり、予測モデルを作成する場合、吸収帯の相対的重み
に影響する。
ノイズは、ランダムノイズと繰り返しノイズからなる。ランダムノイズは、スキャンの
共追加(co-adding)によって平均化できる。検出器及び前置増幅器ノイズは、普通は
ランダムである。読み出しノイズ及びデジタル化ノイズなどの繰り返しノイズは、ス
キャンの平均化によって低減することはできない。 6
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測定時間
測定時間と精度の間でトレードオフが起こることが多い。各スキャンで測定時間が短く
なると、固定されたサンプル分析時間中に平均化できるスキャンが増える。信号対ノイ
ズ比は、ドリフトがランダムノイズを上回り始める時点まで、スキャン数の平方根で改
善されることになる。
ドリフト
測光安定性は、計測器の性能にとって重要である。ドリフトの通常の原因は、検出器や
ランプの温度変化である。また、水蒸気の変化が、スペクトルの変化を引き起こすこと
がある。これは、ドリフトより速い速度で測光参照標準を測定し、この情報を修正のた
めに使用することによって修正できる。通常この修正は、測定した全サンプルについて
行う。
迷光
サンプル取扱いユニットに関連した迷光は、吸光度の最大測定値を迷光のみによって生
じたレベルに制限する。例えば、サンプル照度の1%が、サンプルとの相互作用なしに
検出器に到達する場合、測定できる最大吸光度レベルは、2 AUである。この吸光度レ
ベルに近付くと、測光の直線性に影響が及び、飽和する。
またスペクトルの迷光は、測定性能をも制限することになる。この誤差源からの影響は、
サンプル及び用途に対する依存性が非常に高い。一般的に、迷光は、選択した波長に近
い波長で発生した場合は、それほど重大ではない。
ダイナミックレンジ
計測器のダイナミックレンジに対する要求は、反射率の測定(2~3 AU)に対するより
も透過率の測定(4~6 AU)に対する方がはるかに大きい。要求を満たすために、標準
測定用のプログラム可能ゲイン検出増幅器や光減衰器が使用される。
測光直線性
NIR分光法において、有用なNIRの生の信号は、強い背景に重ね合わされた弱い変調に
よって得られる。背景の強度と無関係に測定を行うために、良好な測光直線性が求めら
れる。測光直線性に対する要求は、回折格子計測器と比較してFT計測器に対する方が高
い。この理由は、信号対背景比がより不良で、フーリエ変換が行われる際に、非直線性
がかなりの歪みを生じさせるからである。
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様々な技術の説明
回折格子 モノクロメーター
この設計について鍵となる構成要素は、回折格子である。回折格子は、周期構造を備え
た光学構成要素で、光を様々な方向に進む複数の光束に分割し、回折させる。これらの
光束の方向は、周期構造の間隔と光の波長によって変わる。この間隔と、光の入射及び
回折角度との関係は、回折格子の式として知られている。
mλ = d(sinα + sinβ) m:回折次数
λ:波長
α:格子法線に対する入射角度
β:格子法線に対する反射角度
d:格子間隔
光源から出た光は、入口スリットを通ってモノクロメーターに入り、格子によって分散
され、出口スリットで特定の波長の光のみを取り出す。スペクトルの限られた波長領域
の光のみが出口スリットを通過してモノクロメーターの外に出て、分析対象のサンプル
を照射する。広帯域検出器は、サンプルを透過した(又はサンプルによって反射され
た)光を検出する。
波長の選択は、モータで格子を回転させることによって行われる。格子の角度は、継続
的に測定され、スリットを通って出ていく波長領域の中心波長を得るために換算される。
波長の範囲は、格子回転の角度範囲と格子の分散によって決まる。分解能は、格子の分
散と入口・出口スリットの幅によって決まる。
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固定回折格子検出器 ダイオードアレイ
光源から出た光は、分析対象のサンプルを照射する。サンプルを透過した(又はサンプ
ルによって反射された)光は、入口のスリットを通って分光計に入り、格子によって分
散され、検出器アレイで検出される。
検出器アレイの異なるピクセルを読み取ることによって波長の選択が行われる。
波長の範囲は、検出器アレイの幅と格子の分散によって決まる。光学的分解能は、格子
の分散と入口スリットの幅によって決まる。検出器は、波長範囲及び分解能によって要
求されるピクセル数を備えていなければならない。
FT-NIR
様々なタイプが存在するが、特性は共通している。FT-NIR分光計は、マイケルソン干
渉計の原理に基づいている。これを下図に示す。平行な光束が、干渉計を通過し、ビー
ムスプリッターにより二つの光束に分割される。それらは、2枚の鏡で反射されてビー
ムスプリッターに戻され、再び合成される。距離が等しければそれらは打ち消し合うこ
となく合成されるが、光路長が異なると干渉波が生じる。この干渉波は、鏡の一つを動
かすことによって強度が変化する。鏡の動きの関数としてのこの干渉波は、インター
フェログラムと呼ばれる。
インターフェログラムは、複数の等間隔の光路長差においてサンプルを採取しなければ
ならない。光路長差についての情報は、レーザーを干渉計内の第二の光源として使うこ
とによって得られる。1 nm未満の変動が性能に影響する。これが、振動及び音に対す
る固有感度の理由である。次の図を見てみよう。レーザーのインターフェログラムは、
1周期がレーザー光の1波長の光路差又はレーザー波長の半分の鏡の物理的な動きに等し
い正弦波である。
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インターフェログラムは、複数の等間隔の光路長差においてサンプルを採取しなければ
ならない。光路長差についての情報は、レーザーを干渉計内の第二の光源として使うこ
とによって得られる。1 nm未満の変動が性能に影響する。これが、振動及び音に対す
る固有感度の理由である。次の図を見てみよう。レーザーのインターフェログラムは、
1周期がレーザー光の1波長の光路差又はレーザー波長の半分の鏡の物理NIRのインター
フェログラムは、レーザーインターフェログラムから決定される同じ光路長差でサンプ
ルが採取され、スペクトルを得るためにフーリエ変換される。この生のスペクトルは、
単一ビームスペクトルと呼ばれる。下の図を見てみよう。インターフェログラムの横座
標の単位は長さであるため、スペクトルの横座標の単位は長さの逆数である。これは波
数に比例するが、これがFT-NIR システムで横座標としてcm-1が使用される理由である。
な動きに等しい正弦波である。
Interferog
ram
鏡の移動距離が増えると、スペクトルの分解能がだんだん狭くなる。これが干渉計を通
過する光を制限する。これは、モノクロメーターのスリット幅に等しい。スペクトルの
分解能は、波数目盛り上では一定であり、これは相対的分解能が波長の増加につれて減
少することを意味する。単一ビームスペクトルのノイズは、スペクトル全体を通じて同
じである。
光路にサンプルを置くことによって、サンプルのスペクトルの測定が可能になる。透過
及び反射両方の測定が可能である。干渉計のすべての光が常にサンプルに当たる。
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様々な技術の利点及び欠点
回折格子 モノクロメーター
+ S/N比が最良。
+ 特に可視領域において波長範囲が最良。
+ 前分光方式のため、サンプルの加熱がほとんどない。
- 良好な波長精度を達成するためには、精確な内部波長標準が要求される。
- 広い波長範囲を持つ計測器の場合、格子の異常によって急激な強度変動のある波
長領域が生じる。
- 広い波長範囲を持つ計測器には、次数選択フィルターが必要(> 1オクターブ)。
固定回折格子検出器 ダイオードアレイ
+ 堅牢で耐振動性のある設計。
+ 全スペクトルの同時測定により、サンプルの動きに影響されない。
- 波長範囲、分解能及びS/N比の間でのトレードオフが必要である。一般的に、S/N比に対
する要件を満たすことができるように、波長範囲を限定する必要がある。
- 個々のオフセット及びドリフト特性を備えた独立した検出器。規格化が必要。
- 各検出器技術について波長範囲の上限辺りのS/N比が悪化する。例えば、Si検出器では
1,050 nm辺り、InGaAsでは1,600~1,650 nm。
- 広帯域サンプル照射によるサンプルの著しい加熱。
- 広い波長範囲を持つ計測器には、次数選択フィルターが必要(> 1オクターブ)。
FT-NIR
+ 最良な波長軸精度が、スペクトルの転送を容易にする。
+ 高スペクトル分解能を得ることができる。高分解能は、物質の同定に有益であるが、定量
測定には不可欠ではない。
+ 分解能の変更が可能。
- 特に短波長において、S/N比がモノクロメーターより低くなる。これは分解能を低くするこ
とによって改善できる。
- 可視領域における波長範囲が制限される(850 nm以下)。
- 振動に最も敏感な技術。
- 広帯域サンプル照射によるサンプルの著しい加熱。
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まとめ
FT-NIR干渉計、回折格子モノクロメーター及び固定回折格子検出器ダイオードアレイの各技術
これら三つの分光計技術を比較すると、すべてにそれぞれの利点及び欠点がある。
各分光計技術の主な特徴
+ -
∙ 波長の正確度を改善す
∙ 信号対ノイズ比
モノクロメーター るための方策が必要
∙ 波長範囲
∙ 分解能が低め
ダイオードアレイ ∙ 堅牢性 ∙ 堅牢性
∙ 波長の正確度 ∙ 振動に敏感
FT-NIR
∙ 分解能 ∙ サンプルの加熱
各技術のよく使用される用途
用途
モノクロメーター ∙ 食品及び農産物の定量測定
ダイオードアレイ ∙ プロセス計装
∙ 研究室における定性測定(同定)
FT-NIR
∙ 狭帯域吸収体の定量測定も可能
分光計技術を選択する場合、要求される用途が良い指針となる。異なる用途には分光計に対す
る異なる要件があり、どの分光計技術が望ましいかは常に用途に依存する。
食品及び農産物の定量測定
食品産業及び農産業におけるルーチン分析用途については、回折格子分光計が実証済みの選択
肢である。これには、穀粒、飼料、粉乳、ひき肉等の卓上成分分析や不純物混入のスクリーニ
ングが含まれる。
このタイプの分光計は、信頼できる再現性のある正確度で、幅広い用途における定量測定に理
想的である。広い波長範囲が、魚肉の色や同様の可視領域を必要とするものなどを含め、非常
に広範囲の用途に対するこの技術の使用を可能にしている。近赤外光の透過を不均一な穀物や
肉のサンプルの測定に使用する場合、光の透過が良好で走査回折格子モノクロメーターの優れ
た信号対ノイズ比が不可欠な短波近赤外(SWIR)波長帯域(850~1,050 nm)を使用するの
が有利である。さらなる利点は、サンプルがモノクロメーターで照射されてもサンプルがほと
んど加熱されないことである。
欠点は、FT-NIRに関しては、波長の正確度が設計によって得られないことである。良好な波長
の正確度を達成するためには、正確な内部波長標準が要求される。しかし、NIR技術の他のす
べての側面と同様に、走査回折格子分光計は常に進化しており、最新世代の分光計の多くはこ
の内部波長標準を使用しており、良好な波長の正確度を実現できるため、この選択肢は多くの
用途にとって最適な選択肢であり続けている。
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プロセス計装
生産工程に関連した測定の場合、例えば、飼料工場において分析器が加工ラインの近くで使用
される場合又は連続的インライン測定のために工程内に直接設置される場合は、ダイオードア
レイ方式が最良の選択肢である。
生産プラント内での使用に理想的な、堅牢で耐振動性のあるダイオードアレイ方式を使用する
ことができる。また、全スペクトルの同時測定により、サンプルの動きにも影響されない。す
なわち、これはインライン用途に望ましい技術である。
しかし、欠点も考慮する必要がある。具体的には、波長範囲、分解能及び信号対ノイズ比の間
でトレードオフをしなければならない。必然的に、許容できる信号対ノイズ比を達成するため
に波長範囲を限定しなければならない。
研究室における定性測定
狭帯域が必要とされる高純度化学物質の分光分析には、FT-NIRが有利である。高分解能である
ため、狭吸収帯域を持つ物質の同定に使用できる。波長軸の正確度の高さにより、スペクトル
の転送が容易になり、波長分解能と信号対ノイズ比の間で最良のトレードオフを得るために分
解能を調節することができる。
欠点には、特に短波長及び除外した可視波長範囲(850 nm以下)において、S/N比がモノク
ロメーターより低くなることが含まれる。またFT-NIRは、振動に敏感な技術でもあり、生産環
境で使用する場合は、このことを考慮して計測器を設計しなければならない。
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参考文献
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