seiden 2019 特別号
特集1
5ZEROマニュファクチャリング
NECAが目指すものづくりの将来像
~5ZEROマニュファクチャリング実現に向けて~
● 導入ガイドライン
● ユースケース
特集2 世界における安全・安心の新潮流
特集3 NECA委員会活動紹介
● 環境委員会
● 技術委員会
● 模倣品対策研究会
seiden 2019 特別号 Webサイトのご紹介
一般社団法人 日本電気制御機器工業会(NECA)では一般 及び 会員企業の皆さまに役立つ
contents 情報をタイムリーに配信しています。
1 「seiden特別号 2019」の発行にあたり
(一社)日本電気制御機器工業会 会長 尾武 宗紀
Part1 NECAが目指すものづくりの将来像
~5ZEROマニュファクチャリング実現に向けて
2 第1章 5ZEROマニュファクチャリングの概要
7 第2章 5ZEROマニュファクチャリング導入ガイドライン
10 第3章 5ZEROマニュファクチャリング導入ツール
14 第4章 CEATEC JAPAN 2018でのパネルディスカッション
21 第5章 5ZEROマニュファクチャリングのユースケース
31 第6章 今後の検討課題
Part2 世界における安全・安心の新潮流 各種コンテンツ 会員サイト
33 協調安全Safety2.0とVision Zero(ビジョンゼロ) 会員サイトでは、一般サイトよりもより詳しい
─NECAが取組む新しい安全コトづくり─ 各種情報を会員企業様へ提供しております。
掲載例
■出荷統計細目
Part3 NECAの委員会紹介 ■委員会成果物の無償ダウンロード
5ZEROマニュファクチャリング関係
39 第1章 環境委員会 環境レポート
NECA規格・技術資料 など
41 第2章 技術委員会 ■参画委員会での専用ページ内情報交換
■会員限定セミナー案内
43 第3章 模倣品対策研究会 ■弊会発行書物の会員割引販売
など
詳しくはこちらから➡ www.neca.or.jp
「seiden特別号 2019」の発行にあたり
一般社団法人 日本電気制御機器工業会
会長 尾武 宗紀
近年、我々製造業を取巻く環境は少子高齢化に伴う深刻な人材不足や、熟練生
産者の不足とともに、国内外の生産拠点での人件費高騰など、日々、その厳しさ
が増しています。その中でさらに、生産性や品質を向上させるため、IoTやビッ
グデータ、AI、ロボットなど、デジタル応用技術を積極的に活用する“ものづく
り”が、ますます重要になっています。
このような中、一般社団法人 日本電気制御機器工業会(NECA)では、
2017年1月に、第4次産業革命への対応として、「NECAが目指すものづくり
の将来像~5ZEROマニュファクチャリング~」を提唱し、同年11月、5ZERO
マニュファクチャリングの内容を掲載した「seiden特別号」を発行いたしました。
提唱から2年余が経過し、この5ZEROマニュファクチャリングを、より具体
的に実現させるため、導入ガイドラインの検討とまとめを実施してまいりました。
その成果を「seiden特別号 2019」として発行いたします。この冊子を是非、
課題解決のヒントとして、製造現場の改善に活用していただきたいと考えます。
また、本「seiden特別号 2019」では、NECAの重点施策である3S
(Standardization:標準化、Safety:安全、Sustainable Society:環境)
の取組みの最新情報も含め、NECA活動の濃縮版としても、お届けさせていただ
きます。是非、お手に取っていただき、NECA活動のご理解を深めていただけれ
ば幸いです。
今後とも、当工業会活動のご理解、ご支援を賜りますように宜しくお願い申し
上げます。
seiden 2019 特別号 1
Part NECAが目指すものづくりの将来像
1 ~5ZEROマニュファクチャリング実現に向けて
NECAでは、第4次産業革命検討WGを2015年5月に発足後、IoT、ビッグデータ、AI、ロボットなどの活用による
ものづくりの進化に関する検討活動を開始し、2017年1月にものづくりの将来像としての5ZERO マニュファクチャ
リングを提唱しています。その後、本WGの後継委員会であるものづくり・ことづくり委員会が5ZERO マニュファク
チャリングの要件定義、導入のポイント、導入ツール、ユースケースなどに関する検討作業を進めてきました。
本特別号のPart1では、わが国のものづくりの強みを将来にわたり進化させていくためにNECAが提唱する
5ZERO マニュファクチャリングの全貌を余すことなくご紹介させていただきます。
第1章 5ZEROマニュファクチャリングの概要
栄を継続的に享受していくためには、いかにものづくり
1-1 5ZERO マニュファクチャリングの提案背景
の強みを維持、発展していけるかが問われていると言え
わが国のものづくりは、これまでトヨタ生産方式に代 る。(図1)
表される現場主導によるPDCAを通じたカイゼン活動
が強みとされて、生産性や品質を維持、向上させてきた。 その場合、前述のような従来からの日本のものづくり
欧米各国に比べ、GDP全体に占める製造業の比率が高 の強みは活かしつつ、第4次産業革命と称されるIoT、
い産業構造を抱える日本が、少子高齢化時代による労働 ビッグデータ、AI、協調ロボットなどのデジタル応用技
力人口の急速な減少が予測される将来において、その繁 術を積極的に導入しながら、ものづくりを発展させてい
各国の老齢人口比率 く必要性があると想定される。各国のGDPにおける製造業比率
45 このような第4次産業革命による技術の革新を踏まえ%
40 中国て、将来的に目指すべき未来社会29で.3%あ る「Society5.0」
日本 (26.7) 実績
35 予測ドイツ (21.2) 韓国 27.6%
日本を実現していくため、様2々1.2な%繋 がりによって新たな付加30 中国 (9.6)
アメリカ合衆国(14.8) ドイツ
25 価値の創出や社会課題の
20解.7%決 をもたらす、「Connected
先進地域 (17.6) インド 15.0%
20 開発途上地域 (6.4) イタリアIndustries」を経1済4.7%産 業省が提唱している。
15 ロシア 11.9%
10.3%
10 米国
ブラジル NECAは、1こ0.2の% ような社会、産業動向を背景に、もの
5 フランス 10.1%
0 英国づくりのQ(9.品2%質 )・C(生産性)・D(納期)・S(安全・
年 0セ.0%キュリテ10.0ィ%)・MT20(.0%設備保3全0.0%)の各領域で、下記の
ような5つの「ZERO」を達成することを最終目標とす
世界全体での老齢化が進む中、日本は世界 日本の産業全体では、製造業は2割程度を
で最も早く老齢化が進む 占るめる5重Z要ERなO基 マ幹ニ産ュ業フでァあクるチャリングというものづくり
の将来像を2017年に提唱している。(図2)
【図1: 日本のものづくりの生産性向上の必要性(出所:国連統計、世界銀行)】
各国の老齢人口比率 各国のGDPにおける製造業比率 (Quality:品質)
45 Q Zero Defect% 欠陥ゼロ
40 中国 29.3% (Cost/ Efficiency:生産性)
日本 (26.7) 実績 予測 C Zero Production Loss35 ドイツ (21.2) 韓国 27.6% 生産ロスゼロ
30 中国 (9.6) 日本 21.2% ( Delivery time:納期)
アメリカ合衆国(14.8) ドイツ 20.7% D Zero Late Delivery
25 先進地域 (17.6) 納期遅延ゼロインド 15.0%
開発途上地域 (6.4) (Safety& Security:安全、セキュリティ)20 イタリア 14.7% S Zero Accident
15 ロシア 11.9% 事故ゼロ
米国 10.3% (Equipment Maintenance)10 Zero Downtime
ブラジル 10.2% MT 生産ライン停止ゼロ
5 フランス 10.1% 【図2: 5ZERO マニュファクチャリングの基本コンセプト】
0 英国 9.2% 図2 5ZEROマニュファクチャリングの基本コンセプト
年 0.0% 10.0% 20.0% 30.0%
本特別号では、この5ZERO マニュファクチャリン
世界全体での老齢化が進む中、日本は世界 日本の産業全体では、製造業は2割程度を グの全体像を提示するために、第1章以降、以下のよう
で最も早く老齢化が進む 占める重要な基幹産業である な構成としている。(図3)
【図1: 日本のものづくりの生産性向上の必要図性1( 出日所本の:も国の連づ統く計り、の世生界産銀性行向)上】の必要性 まず、第1章では、5ZERO マニュファクチャリン
(出所:国連統計、世界銀行) グにおいて、5つのゼロを規定する要件定義や目標指標
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Part1 NECAが目指すものづくりの将来像~5ZEROマニュファクチャリング実現に向けて
をコイルの生産ラインを参照しながら5ZERO マニュ
ファクチャリングの概要として説明する。 レベル1 レベル2 レベル3 レベル4
5ZERO マニュ 手動 一部自動化 自動化 自律自動化
次に第2章では、5ZERO マニュファクチャリング ファクチャリング 一部協調 協調 AI適用のレベル区分
を導入する際に重要なプロセスとなる自動化、データの
収集・解析方法について、その押さえておくべきポイン
データ活用の切 紙データ管理 電子データ ビッグデータ AI
トを論述する。 り口で区分する 見える化 解析 自律制御と・・・
第3章では、5ZERO マニュファクチャリングを実現
する場合に活用すべきセンサやコントローラによるデー つながる範囲の 個別生産ライン内 複数生産ライン間 複数工場間 複数企業間
切り口で区分
タの収集、解析方法について『導入ツール』として述べる。 すると・・・
第4章では、5ZERO マニュファクチャリングのユ
ースケースにおけるレベルアップのポイントを 図5 5ZERO マ【図ニ5:ュ5ZフERァO マクニュフチァクャチャリリングンのレベグル区の分のレ考ベえ方ル】 区分の考え方
CEATEC JAPAN 2018でのNECAものづくり・こと
づくり委員会によるパネルディスカッションの模様を紹 1-2-2 要件定義と目標指標
介することにより提案する。 本項では、制御リレーや電動機などに搭載されている
さらに第5章では、ものづくりの実務者の参照となる コイルの生産ラインを参照しながら、5ZEROマニュフ
ものづくりの先進的な取り組みを5ZERO マニュファ ァクチャリングのQ(品質)、C(生産性)、D(納期)、
クチャリングのユースケースとして紹介し、最終章では、 MT(設備保全)の各領域における各レベルに関する要
5ZERO マニュファクチャリングの課題を分析する。 件定義や目標指標を提示したい。
さらに参考までにレベル2からレベル3に向上するた
めのポイントを図示する。
第2章 導入ガイドライン
ものづくりのQ/C/D/S/MTを向上させるキー NECA会員
ポイントを解説
ものづくりQ/C/D向上
製品売上拡大 ①コイル生産ラインの構成
コイル生産ライン構成は、エナメル線をコイル状に加
第1章 概要 第4章・第5章
ユースケース NECA会員の
第3章 導入ツール 工し、端末を処理する工程から成り立っている。その詳5ZERO マニュファクチャリ 顧客
5ZERO マニュファクチャリ ングを達成した実例やレ
ング(レベル3~4)の実現を支 ベルアップのポイントを要 ものづくりQ/C/D向上 細は下記のとおりである。(図6)
援する製品・サービスを紹介 件定義にもとづき紹介
巻線機 ハンダ漕 テープ巻線機 特性検査装置 外観検査装置
【図3: seiden特別号の5ZEROマニュファクチャリング関連コンテンツ】
図3 本特別号の5ZEROマニュファクチャリング関連コンテンツ ノズル エナメル線
1-2 5ZERO マニュファクチャリングの概要 ボビン
1-2-1 全般的なレベル区分 設備 巻線機 ハンダ漕 テープ巻機機 特性検査装置 外観検査装置
作業 巻線作業 ハンダ付け 絶縁処理 特性検査 外観検査
前述のように、ものづくりの将来像である5ZERO からげ作業 エナメル線端末処理
段取り替 エナメル線交換 ハンダ量調整 テープ交換
マニュファクチャリングでは、ものづくりのQ(品質)・ (C、D) 巻き数設定
品質管理 テンション管理 成分分析 テンション管理
C(生産性)・D(納期)・S(安全・セキュリティ)・ (Q)
設備管理 設備故障診断、設備保全、チョコ停対応 測定器校正 検査器校正
MT(設備保全)の各領域におけるレベル1~4の要件 (MT) ノズル交換
を定義するとともに、その実現時期を2030年までの長 【図6: コイル生産ラインの構成】図6 コイル生産ラインの構成
期的視点にもとづくロードマップで示している。(図4)
また、そのレベルはデータ活用の形態やデータがつな ②品質向上(Q)に関する要件定義、目標指標
がる範囲により凡そ区分することが可能である。(図5) 品質に関して、レベル1の作業者の検査強化による再
発防止から、レベル2では機械化された仕組みにより源
流改善を行う再発防止に向上し、レベル3では自動的に
取得したセンシングデータにより不適合製品が後工程に
流出しない状態になる。
レベル4では品質ネットワークと人工知能(AI)の融
合により不適合製品が作られないレベルに向上する。こ
のようなレベルアップにともない、工程内の不適合率は、
レベル1の1%から、レベル2の0.1%、レベル3の
100ppmに、レベル4ではゼロにそれぞれ改善するも
のと想定している。(図7)
図4 5ZERO 【マ図4ニ:ュ5ZEフROァ マニクュファチクチャャリンリグのンロードグマッのプ】ロードマップ
seiden 2019 特別号 3
レベル区分 定義 目標不適合率 レベル 2⇒レベル 3のポイント
ゼロに近づくこととなる。(図9)
☑ 完成試験の自動化
➡通電試験
品質ネットワークとAIの ☑ センサの活用 レベル区分 定義 目標 レベル 2⇒レベル 3のポイント
レベル 4 融合による品質確保 ゼロ 生産LT➡ テンション管理 ☑ 1個流しが可能。
➡ ハンダ成分分析 ☑ 自動化の推進が前提。
➡ エナメル線巻き状態 1個流し。停滞 10分 巻き線⇒からげ⇒端末処理センサによる計測で品質
特性を測定し、不適合 100ppm ☑ カメラの活用
レベル 4 ゼロ ⇒絶縁処理⇒特性検査の
レベル 3
品が後工程に流れない ➡ エナメル線供給用ノズル先
自動化
端部状態の管理、監視 自動化のためのセンサ設置 ID、データの管理
品質管理活動のフィード ☑ 品質検査結果のデジタルデータ 1個流し。レベル 3 1時間 搬送手段
バックにより不適合品が 保存 中間在庫あり0.1% ☑ 工程間には、中間在庫が存在。レベル 2 発生しない機械化され 特性検査後に(ヒトが行う)外
たしくみ ノズル部 観検査待ちのトレーに一時
管理 エナメル線 小ロット生産、 保管1日
作業者による品質確認 状態管理 レベル 2 中間在庫なし
レベル 1 を実施 1% 自動化の推進が必要テンション管
理
1個流し
【図7: 5ZERO マニュファクチャリングの要件定義 ≪Q:品質≫】 レベル 1 ロット生産 1週間 最短生産LT (モノカスタ
図7 5ZERO マニュファクチャリングの要件定義《Q:品質》 マイゼーション)
【図9: 5ZERO マニュファクチャリングの要件定義 ≪D:納期≫】
③生産性(C)に関する要件定義、目標指標 図9 5ZERO マニュファクチャリングの要件定義《D:納期》
レベル1ではコイル巻き工程でギアを利用した巻き工
具でひとが作るが(手作業組立)、レベル2ではコイル ⑤設備保全(MT)に関する要件定義、目標指標
巻きの回転部分をモータ駆動にしてエナメル線の配置位 レベル1では、作業者によるブレークダウンメンテナ
置を手動で調整する段階になる(一部自動化)。 ンス(事後保全)と設定した点検項目による定期点検を
レベル3では基本的には工程要素は機械が自動的に行 実施する。
い、工程・設備間の搬送や外観検査のみをひとが行う状 レベル2では、定期点検を不要として設備側でセンサ
態になる(総合的な自動化)。 などにより常時故障監視を行い、異常時にはブザーや接
さらにレベル4ではライン内に作業者は存在せずに、 点信号などで知らせるとともに設備停止する。
設備段替え、故障診断も機械が行うこととなる(完全自 レベル3では、技術者がリアルタイムで遠隔監視を行
律自動化)。これにより、自動化率はレベル1の5%から、 なえる状態になり、現場での故障修理もロボットが実施
レベル2の50%、レベル3の80%にそれぞれ向上し、 できるようになる。
レベル4では自動化率は100%となりライン内の作業 さらにレベル4では、故障診断や修理の判断をAIが行
者は完全にゼロとなる。(図8) うことになり、機械学習により修理作業や故障の予知診
レベル区分 定義 目標 レベル 2⇒レベル 3のポイント 断もAI適用ロボットが自律的に実施する状態に移行す自動化率* ☑ 基本の工程作業は自動化。
巻き線 る。このようなレベルアップにより、設備停止率はレベ
完全自律自動化。無人 100% エナメル線のトラバースレベル 4 化 エナメル線のボビンからげ ル1の5%から、レベル2の3%、レベル2の1%とな
エナメル線の切断
端末はんだ処理
絶縁テープ り、究極のレベル4では0%のダウンタイムゼロを達成
ほぼ自動化。ワーク脱着
レベル 3 は手動 80% 完成試験☑ 設備間の搬送、段取り替え、外 する。(図10)
観試験。ワーク脱着のみヒトが
行う
自動化設備と手作業の 設備
レベル 2 混合作業 50%
レベル区分 定義 停止率* レベル 2⇒レベル 3のポイント☑ センサ、カメラ等でリアルタイムで
使用期間・回数、劣化状況を
自律自動保全 ゼロ 確認⇒部品交換時期を予測
治具等の使用はあるが レベル 4 ☑ カメラによるエナメル線供給用ノ
レベル 1 手作業が中心の工程 5% ズルの状態の遠隔監視、保全
コイル巻線自動機 ➡ ノズル先端部のカケ発見
➡ ノズル部品の供給
(注*)5ZERO マニュファクチャリングの目標値は最終的に「ゼロ」を目指すが、ここでは数値 ➡ ロボットアームでノズル交換
目標を自動化率として「100%」としている レベル 3 遠隔保全 1% ➡試運転で自己診断
図8 5ZERO 【マ図8ニ: 5ュZEフRO ァマニュクファチクチャリンリグのン要件グ定義の≪要C:件生産定性義≫】《C:生産性》
各種センサによる異常検
レベル 2 知 3% ノズル部管理 ノズル部
交換
④納期(D)に関する要件定義、目標指標
オペレータによるマニュア
レベル1では、100個程度の工程ごとの標準品のロ レベル 1 ル保全 5% エナメル線供
給用ノズル
ット生産を行い、工程間を中間在庫としてのトレーに入 (注*)設備停止率=(故障修理、点検、メンテナンスなど設備停止時間)/(設備停止時間+設備稼働時間)
れて移動させる。 図10 5ZER【O図 1マ0:ニ5ZEュROフ マニァュフクァクチチャャリングリの要ン件グ定義の要≪件MT:定設義備保《全M≫】T:設備保全》
レベル2ではロット数を少なくして工程間の在庫をな
くしたものとなり、レベル3ではロット生産は行わず、 このように5ZERO マニュファクチャリングについ
1個流しが可能な状況となるが、外観検査待ちのような て、Q(品質)・C(生産性)・D(納期)・MT(設備保全)の
工程間の在庫は僅かながら存在する。 各領域で要件定義されたコイルの生産ラインの理想的な
レベル4にレベルアップすると全工程が連続的に実施 レベル4では、図11のような手法を取ることが想定さ
されるようになり工程間在庫がなくなる。このようなレ れる。この実現のためには、コイル生産メーカは、ITベ
ベルアップにともない、コイルの生産リードタイムは、 ンダ、情報通信ベンダ、装置メーカ、材料メーカとの連
レベル1の1週間程度から、レベル2の1日、レベル3 携、協力関係を構築することが必要となる。(図11)
の1時間に短縮されて、レベル4では10分と限りなく
4 seiden 2019 特別号
Part1 NECAが目指すものづくりの将来像~5ZEROマニュファクチャリング実現に向けて
機械安全に関する
巻線 ハンダ付け 絶縁処理 規特性格検査の例外観検査
工程 (出典:安全ガイド
ブック第 版 )
センシング テンション カメラ ハンダ成分測定器 振動: 温度 電気で特性検お査装持置 ちの原稿センサ センサデーセンサタ抜(電流・粋電圧・抵抗)
カメラ
にて差し替
データ収集 テンション ノズル形状 ハンダ液成分 モータ軸え受 モおータ巻線願いコイルし電気特ま性 す コイル全体データ 画像 振動 温度 (電流・電圧・抵抗) 画像
解析 巻線状況 ノズル摩耗 ベアリングハンダ付け適合性 摩耗 負荷状況 コイル品質 コイル品質
自律 テンション ノズル制御 自動交換 ハンダ液自動交換 モータ交換 負荷制御 不良製品自動排除 不良製品自動排除
自動制御
Q C Q MT Q C D MT Q MT Q C Q C D Q C D
ITベンダ 情報通信ベンダ 装置メーカ 材料サプライヤ
実現方法 コンピューティング技術 ネットワーク技術 ロボット制御技術 材料品質管理技術
AI適用技術 セキュリティ技術 自動搬送技術
図11 コイル【図生11:産コイラル生イ産ランインででののレベルレ4のベ達成ル方法4】の達成方法
1-3 5ZEROマニュファクチャリングにおける
「S」ー安全への取組み 図12 機械安全に関するISO/IEC規格の例
(出典:NECA安全ガイドブック)
5ZERO マニュファクチャリングにおいてZEROを
達成すべき領域のうち、「S」は「Safety」と「Security」 1-3-2 機械安全の浸透に向けた取組み
から構成される。 日本における機械安全の浸透は、1999年の機械安全
本項ではそのうちものづくりにおいて一般的に「S」 の標準情報(TR)の発行や2001年の「機械の包括的
として定義していた「Safety」に焦点を絞り、国内外 な安全基準に関する指針」の通達から始まったといえる。
の安全に関する動向とNECAのこれまでの安全に関す NECAではこれらの動きに呼応して2000年に制御安
る活動を振り返るとともに、将来のものづくりにおける 全委員会を設立して以来、ものづくり現場での災害防止
安全の考え方について述べる。 に貢献する機械安全の考え方の普及に取り組んできた。
これまでのNECAでの機械安全に関する取組みの中
1-3-1 ものづくり現場における安全の動向 でも代表的なものが、安全ガイドブックの発行とセーフ
日本のものづくり現場における安全の確保は、従来、 ティアセッサ制度の創設である。
作業者が危険に気付いて危険を回避する能力を培うため 安全ガイドブックは、機械安全のコンセプトをわかり
の教育や訓練に大きく支えられてきた。これらは現在に やすく伝える冊子である。(図13)2001年の初版の
至るまで様々な産業現場で活用されている危険予知トレ 発行以後、安全に関する国内外の動向に合わせて改訂を
ーニングや指差呼称といった取組みや、ゼロ災運動にも 実施している。
表れている。しかし、技術の発展に機伴械う安機全械コのン複セ雑プ化ト、紹
製造現場のグローバル化や労働力の介多の様例化などに伴い、
(出典:安全ガイド
それらの教育・訓練だけでは十分に危ブ険ックを第回避版ができ)な
い場面が生じてきたのも事実である。:このよでうおな持中ちでの注原稿
データ抜粋にて差し替
目されてきたのが「機械安全」の考え方お願でいあしるま。す
機械安全とは、使用する機械そのものの安全を機械の
設計段階から達成していく考え方であり、欧州を中心に
発展してきたといわれている。
機械の安全は、機械に潜む危険の度合いとその発生の
可能性を分析し、その分析結果に応じた方策を講じるこ
とで確保が可能であるとされ、その実現に必要な技術的
な基準が、国際規格として各国に拡がっている。
現在では、機械安全の関連規格の全体に共通する基本 図13 機械安全コンセプト紹介の例
思想を示すA規格から、具体的な設計手法を示すB規格、 (出典:NECA安全ガイドブック)
C規格に至るまで、ISOやIECを中心に様々な内容が制
定されている。(図12) 今年度はその価値を伝える対象をこれまで以上に拡げ
ていくことを目的に、改訂版を作成してWebでの公開
を行うとともに、安全ガイドブックの基本コンセプトを
踏襲して初心者向けに再構成したガイドブック「10分
でわかる機械安全」をリリースした。(図14)
seiden 2019 特別号 5
制御安全委員会では、今 をもとに低リスクと判断した領域の中でも最も効率的な
後もこれらの機械安全の浸 ロボットアームの移動が可能な軌跡を演算するための、
透に向けた情報の発信を続 高速なデータ分析と動作制御についても必要となるため
けていく予定である。 である。
セーフティアセッサ制度 現在これらの技術は様々な企業や団体、研究機関等で
は、規格に基づく機械の安 開発が進められていることから、NECAとしては、こう
全設計を進めることのでき いった新しい制御技術を安全に実装するための検討や実
る人材の育成に貢献する要 証を検討していく必要があるといえる。
員認証制度として、2004 NECAが目指す将来のものづくりにおける「Zero
年に運用を開始した。 Accident」は、これまで述べてきたように、安全に関
その後対象とする認証分 する様々な取組みの積み重ねと進化によって達成される
野等を拡げながら制度の拡 図14 10分でわかる機械安全 ものである。制御安全委員会ではその達成に向けて、安
充を図り、2015年には関 (2019年11月公開) 全に関する様々な情報の発信や人材の育成、技術の進歩
連制度における認証者数が に貢献する活動を今後も継続していく。
1万人を突破するまでに成長している。
またこれらの制度運営の経験を活かした安全人材育成
の標準化にも取り組んでおり、この5月にはNECAが原
案作成団体の一つとなったJIS規格「機械安全に関する
要員の力量(JIS B 9971)」が制定された。
現在では、これらの安全人材の活躍の場を拡大し、グ
ローバルなものづくり現場での安全に寄与できるよう、
国際標準化に関する活動も継続的に推進している。
1-3-3 5ZEROマニュファクチャリングにおける安全
5ZEROマニュファクチャリングにおける安全を、こ
れまで述べてきたものづくり現場の安全に対する取組み
の集大成を表すものとして捉えると、レベル1の手動を
中心としたものづくりでは、古くから日本のものづくり
における安全を支えてきた教育・訓練による安全確保が
主体であったといえる。その後レベル2のものづくりに
おいて現場における自動化とともに発展してきたのが、
機械安全の考え方である。
これらは今後のものづくりにおいても普遍的なノウハ
ウとして継承されていくものであるが、レベル3の協調
やレベル4の自律化に向かって進化していく現場におい
ては、安全の観点でも新たな取組みが必要となってくる
と考えられる。
新たな安全に対する技術の側面での取組みの代表例
が、人と機械が作業空間を共有しながら動作する協働ロ
ボットのアプリケーションの実現である。協働ロボット
の安全に関する国際標準の中では、作業者とロボットと
が近接して作業するために必要な安全機能の一つとし
て、作業者との距離に応じたロボットの動作速度や動作
経路の変更が規定されている。
この方策を実施するためには、今後レベル3・4のセ
ンシング技術やデータ解析技術を活用することが求めら
れると考えられる。センシング技術は作業者とロボット
との距離検出にはもちろん、ロボットの動作経路の変更
によって新たな危険を発生させないための周囲の監視に
も必要である。またその経路変更の際には、監視データ
6 seiden 2019 特別号
Part1 NECAが目指すものづくりの将来像~5ZEROマニュファクチャリング実現に向けて
第2章 5ZERO マニュファクチャリング導入ガイドライン
前章では、ものづくりのQ(品質)・C(生産性)・D(納期)・MT(設備保全)の各領域における進化のプロセス
を5ZERO マニュファクチャリングのレベル1からレベル4に変換して、その条件を定義するとともに目標指標を
提示した。
本章では、ものづくりの実務者の視点で、IoT、AI、デジタル化のような先端的な技術を活用したものづくりの自
動化、センシングデータの収集と解析の要点を示すことにより、ものづくりのQCDを改善し、5ZERO マニュファ
クチャリングのレベルアップに寄与することを目指す。
レベル 1 レベル 2
2-1 自動化への取組みについて
5ZERO マニュファクチャリングのもっとも基本的
な基準である自動化の進化について、レベル1では、部
☑部品倉庫からのピッキング作業はヒトが紙の製作指示書、 ☑部品のピッキング作業にバーコードリーダ、PCを導入
材、製品の確認やピッキング、搬送、組立などの作業は 材料表を目視で照合したうえで行なう ☑前準備作業は内段取りから外段取りに進化
人的なもの(手作業)となっているが、レベルが上がる レベル 3 レベル 4
MES/ERP
にともない、部材情報の取得、照合作業にバーコードや コントローラ
部品倉庫 バーコードリーダー
PCなどが導入される一方、搬送作業にもロボット、搬
ロボット 搬送車 設備機器・ロボット 搬送装置
送装置が導入される。さらに、生産計画も製造実行のた
☑部品ピッキング作業に搬送車が導入されて自動化。部材 ☑自動搬送機、自律型搬送ロボットの導入が進む
めの最適スケジューラが活用されて生産性は格段に向上 受け渡しや払い出しもコントローラが導入 ☑ IoT、AI機能を搭載したPCシステムによる4M情報の管理☑部品実装機や画像検査機により組立、検査が自動化 ☑製造実行システム、最適スケジューラによるデジタル生産
していく。(図1) 【図2: 自動化のレベルアップのポイント】図2 自動化のレベル区分
レベル区分 定義、状態性 方法・手段
生産実行システムにより生産設備の稼動状態や生産 2-2 センシングデータの収集・管理による改善
レベル 4 進捗等、常時モニタリングされ、遠隔操作・監視を実施
AI適用コントローラや上位システム、自動スケジューラと
連携したリアルタイムのデータ管理 AI適用の上位システムとの連携 常時モニタリング 何らかのエネルギーや事象を検知し、電気信号に変換
ロボットによる制御で部品専用ラックより設備装置、部 する機器であるセンサは技術革新によりその対象、検出
レベル 3 材の取り出し、搬送装置への受け渡し等、搬送が自動
化 自動搬送装置の導入 AGVの導入 速度、容量、大きさ、耐環境性などが向上、拡大すると
ピッキングした部品情報(バーコード・QRコード)を ともに、自動認識機能、簡易設定機能、メンテナンス対
レベル 2 リーダや機器により照合作業が自動化
設備機器やPCにて情報をデータ管理 バーコードの導入 PCでのデータ管理 応機能などの新たな付加価値機能が搭載されるようにな
製作指示書・材料表(用紙)を作業者が確認
レベル 1 部品倉庫より部材のピッキング、材料表との照合作業
っている。
を人が実施
紙の指示書、材料表 人による部品搬送 さらには、ディープラーニングをともなうAI技術の利
【図1: 自動化のレベル区分】
図1 自動化のレベル区分 用により、画像認識用のセンサなどのように、膨大なデ
ータ処理を前提とするアプリケーション例も具体化しつ
また、ここでのレベルアップのポイントとして、レベ つある。
ル1からレベル2へ進化する場合、棚番や部材情報を電 このようなセンサやデータ処理の発達により、ものづ
子データ化する必要がある。この作業をデータ化するた くりの領域でもシステムの制御や工程異常の検知など
めバーコードリーダなどの活用により、部品準備作業が が、より高精度化、高度化、高速化、大容量化されて、
内段取りから外段取りへと変更されて作業性が向上する。 これまで考えられなかったような品質改善、生産性向上、
次に、レベル2からレベル3に進化する場合、部材の 設備保全の合理化などに寄与できるようになっている。
ピッキング、搬送作業など人が主体であるが、制御機器 このようにものづくりの改善に貢献するセンサ活用で
や搬送装置の導入、組立・検査作業に自動化装置が活用 は、どのような対象やデータをセンシングするのかとい
されることで作業がインライン化される。 うことが重要になってくる。
また、生産ラインの装置や部品の状態監視にも、セン ものづくりのQ(品質)・C(生産性)・D(納期)・S(安
サやデジタル計測機器が全面的に導入されて品質レベル 全)・MT(設備保全)の各領域で改善を達成するため
や設備保全の効率が向上していく。 に必要なセンシングの対象や方法との間には相関性があ
さらに、レベル3からレベル4へのレベルアップの際 るために、充分考慮する必要がある。(図3)
には、AI機能を搭載したコントローラや上位システムと
連携したリアルタイムのデータ管理や制御が行われて、
設備稼働も含めた生産計画の最適化がスケジューラによ
り達成されて、究極の自動化が実現すると想定される。
(図2)
seiden 2019 特別号 7
って、その値をデジタル化して送信するツールなどを活
ものづくりの領域 データの種類
用することにより、スモールスタートを図ることも必要
寸法 温度 湿度 検査計量値
Q 品質関連 であると考える。
日付 ロット製造番号 作業者 設備番号
2-3 データ解析、AI適用
C コスト関連 設備稼働率(設備運転時刻) 生産実績
ものづくりの現場に多量のセンサが設置されていわゆ
D 納期関連 部品入荷日 工程内進捗記録 生産計画 るIoT化が浸透していくと、ものづくりで扱われるデー
S 安全関連 事故報告書 ヒヤリハット 安全パトロール記録 記録 タ量は加速度的に増加する。先進的な工場においては、
MT 設備保全 点検項目 故障履歴 総稼働時間 リアルタイムで製造データ収集が進み、ビッグデータを
データ収集と管理にはコストが発生するために、費用対効果も考慮し、記録、保存する対象を決定する必要がある 活用した設備故障の予兆管理や部品までを含む統合的な
【図3: データの種類】
図3 データの種類 トレーサビリティシステムやミリ秒単位の品質管理など
に活用されると想定される。
その一方で、そのセンシングによるデータ収集には、 このようにセンシングにより収集されたビッグデータ
コストが発生するために、費用対効果も考慮しながら、 を活用する場合にも、大容量かつ高速化を両立させるコ
その対象や方法を決定する必要があると想定される。こ ントローラやネットワーク通信技術、さらに現場端末側
のセンシングによるものづくりの改善でも、5ZERO と上位サーバ側の最適処理を実現させるためにエッジコ
マニュファクチャリングの各レベル別の要件が定義され ンピューティング技術が必要なってくることが想定され
ている。 る。さらに、このような膨大かつ高速のデータ処理や解
そのレベル1では、自動化のレベル区分と同様に、セ 析にAIが活用されて、ものづくりの現場における品質異
ンシング作業は人的作業に負うことが多く、センシング 常に対する予兆管理やロボットによる生産性の改善に大
データは紙による記録が中心で、センサも単独で使用す きく貢献することが予測される。
るもの、またはアナログ式の場合が多い。 このようなテクノロジーの発展を背景に、ものづくり
レベル2にレベルアップすると、センサはアナログ出 の品質、生産性、納期、設備保全などの改善に寄与する
力や通信機能が備わったものが使用されるために、セン と想定されるデータの解析についても、5ZERO マニ
サ出力をそのままデータとして収集可能となり、サーバ ュファクチャリングのレベル区分にしたがって定義付け
などの電子機器により保存できるようになる。 ることが可能である。(図5)
さらに、レベル3では高速化、大容量化したセンサが
使われてMESなどでデータ管理できるようになり、レ レベル区分 定義、状態性 方法・手段
ベル4は、センシングのマルチ化、デジタル化、インテ センシング機器や生体監視機器により常時収集された超大量の計測データと制御機器が行う処理データが存在
レベル 4 MES/ERPや複数のアプリケーションを相互に活用して不適
リジェント化が進み、クラウド上にデータが保存されて 合の発生予測や未然防止制御が可能な解析ができている AI クラウド
他社との連携に活用されるようになると想定されてい センシング機器により常時収集された大量の計測データと制御機器が行う処理データが存在
レベル 3 アプリケーションを活用して不適合の未然防止活動が可能な
る。(図4) 解析ができている 大容量解析アプリ ストレージ
センシング機器により収集された計測データを基に中長期的な
レベル 2 傾向管理がPC端末ベースで可能な状態
レベル区分 定義、状態性 方法・手段 仮説に基づいた不適合の未然防止活動が可能な解析ができている 表計算アプリ 装置ログ情報
センシングのマルチ化、デジタル化
生産に関連した全てのデータを自動取集。生産に直接必要の 人によって収集される事後対応や改善に必要なデータ(記
レベル 4 ないデータも収集
録)が存在
レベル 1
データは利用方法に合わせ様々なストレージに保管 短期的な傾向管理に基づく限定的な範囲での予測が可能なセンサのマルチ化 クラウド等での
クラウド上に保管されたデータは、社外との連携にも活用 デジタル化 データ保存 解析ができている 解析担当者 記録・点検表
センシング範囲、データ量の増加。センサ通信の高速化 【図5: データ解析のレベル区分】図5 データ解析のレベル区分
レベル 3 データは社内共用サーバやMESなどに保管され社内での共有
が可能 センサの高容量化 MESなどでの
高速化 データ保存
センサはアナログ出力や通信機能を持ったものを使用
データ収集は紙による記録は残るものの、センサ出力を直接 ものづくりのデータ解析も、自動化やセンシングと同
レベル 2 収集
収集したデータは、部門サーバなどに保管し共有利用が可能 通信機能付センサ 部門サーバでのデータ保管 様にレベル1では解析作業を人が行うのに対して、セン
センサはアナログ式、または単独で動作するものを使用
レベル 1 データ収集は目視により行われ、紙による記録が中心で一部
シングデータ収集の自動化、高速化、大容量化が進むに
はPCなどに入力されデジタル化
紙の記録は棚などに、電子データはローカルPCで管理 アナログ式センサ 紙による記録 したがって、解析の「ツール」も表計算アプリから専用
【図4: センシングデータの収集・管理のレベル区分】
図4 センシングデータの収集・管理のレベル区分 解析アプリ、さらにはクラウドやAI、多変量解析手法な
どを適用したレベルまで進化していくことが予測される。
このようなセンシングデータの収集、管理において、 このような方法により解析されるデータは、レベル1
現在の生産現場担当者の多くが関心を持つレベル1から では人によって収集されることが多いために短期的な傾
レベル2へのレベルアップの場合、データを電子化させ 向管理や限定的な範囲での予測にとどまっているのに対
るための投資に制約がなければ、達成は技術的に難しく して、レベル2ではPC端末ベースで中長期的な傾向管
ない。しかし、実際には費用対効果を踏まえて具体化を 理や不適合品の未然防止活動への活用が可能となる。
検討する際には、計測器の表示を撮影する画像処理を行 さらにレベル3では常時収集された膨大な計測データ
8 seiden 2019 特別号
Part1 NECAが目指すものづくりの将来像~5ZEROマニュファクチャリング実現に向けて
と制御機器の処理データに基づき解析用アプリケーショ な計測データを解析するための解析アプリケーションの
ンを活用して不適合の未然防止が可能となり、レベル4 導入が必要となり、その場合には、ものづくりの現場で
ではセンサや生体監視機器により収集された超大量の計 の摺合せのためのベテラン有識者とSIerとの協業を可
測データや制御機器の処理データに基づきMES/ERP 能とする業務フロー設計も必要となってくる。
や複数のアプリケーションが活用されて不適合の発生予 このように、5ZERO マニュファクチャリングでレ
測や未然防止制御が可能な解析が実現できると予想され ベル3以上にレベルアップさせて、ものづくりの品質、
る。 生産性、納期、設備保全の改善を実現させるためには既
また、収集されたデータ活用としての見える化につい 存の制御機器メーカとして保有するリソース(ヒト、モ
ては、レベル1では作業者が日々の生産情報を記入した ノ)にとどまらず、
グラフを製造現場に掲出して改善活動に役立てている ①コンピューティング技術やAI適用技術、トレーサ
が、レベル2ではデータが電子化されてPC端末で集計 ビリティ技術を保有するITベンダ
されて、グラフなどの加工ができるようになる。さらに ②ネットワーク技術やセキュリティ技術を保有する
レベル3では膨大に増えたデータを解析する専用の解析 情報通信ベンダ
アプリケーションが見える化でも活用されるようにな ③ロボット制御技術や自動搬送技術を保有する装置
り、最終的にはレベル4ではAIが活用されてリアルタイ メーカ
ムによる常時監視が可能となる。(図6) ④材料品質管理技術を保有する材料サプライヤ
などとの協力、連携が必須となってくる。また、そのよ
うな連携により、新たなインフラなどのハードウェアや
ソフトウェアを自社のものづくりに導入する際には、そ
れを導入するための投資とその導入によるものづくりの
Q、C、Dの向上としての効果を数値指標化して、適正
な範囲や規模により新しいものづくりのインフラなどを
導入する経営判断が必要となってくる。(図7)
図6 データ【図解6:析デのーレタ解ベ析のルレベ4ルの4の見見ええるる化の化例】の例
2-4 ものづくりの進化におけるセンシングデー
タとデータの活用について(まとめ)
5ZERO マニュファクチャリングでは、ものづくり
のQ(品質)・C(生産性)・D(納期)・MT(設備保全)
の改善を図るために自動化が大きな要素となることを前
図7 5ZERO【 図マ7:ニ5ュZERフO マァニュクファチクチャリンリグのンレベグルアのップのレためベの検ル討ア事項ッ】 プのための
提条件としているが、その要件定義では、レベル2から
検討事項
レベル3へレベルアップする際に自動化が大幅に進展す
るものとされている。
これまで見てきたように、レベル3で自動化を定着さ
せるためには、部材の取り出し、搬送装置の受け渡しの
ためのロボットや搬送装置の導入が必要となってくると
ともに、その部材情報をICタグなどで読み取るための機
器の導入が前提となってくる。
また、センシングされたデータの活用でレベル3にレ
ベルアップするためには、製品固有のIDによりトレー
サビリティを確保してリレーショナルなものづくり体制
を構築して、高速大容量の通信ネットワークやMES対
応の大容量サーバなどのインフラの導入が必要になって
くる。
さらにデータ解析では、レベル3への向上に向けて、
ログデータのレベルからリアルタイムで常時監視が可能
seiden 2019 特別号 9
第3章 5ZERO マニュファクチャリング導入ツール
本章では、前章までの5ZERO マニュファクチャリングの要件定義や導入の指針(ガイドライン)での提案内容
にもとづき、5ZERO マニュファクチャリングを導入する際に有効となるツールとしてのセンサやコントローラに
ついて、それを活用したデータの収集や解析方法を詳述するとともに、5ZERO マニュファクチャリングのレベル別、
あるいはものづくりの領域別適用を述べる。本章が、ものづくりの改善に取り組む方々の制御機器の選定、活用に貢
献することを切望するものである。
3-1 センサ編
ドリーダ)となる。
5ZEROマニュファクチャリングを実現させるため これにより、ロット製造番号だけでなく、商品コード・
のデデーータのタは種多類種多様である。(図1) 製造年月日など多くの製品属性の管理が実現できる。
ものづくりの領域 データの種類
寸法 温度 湿度 検査計量値 (2)コスト関連
Q 品質関連
日付 ロット 作業者 設備番号 ◆生産実績製造番号
C 生産実績データの一例として梱包数量がある。コンベコスト関連 設備稼働率(設備運転時刻) 生産実績
ア上を流れる梱包を近接センサや光電センサでカウント
D 納期関連 部品入荷日 工程内進捗記録 生産計画
し、PLCを介して数量データがPC/サーバ等に保存さ
S 安全関連 事故報告書 ヒヤリハット 安全パトロール記録 記録 れる。
MT 設備保全 点検項目 故障履歴 総稼働時間 このレベルアップの方向性としては、配置するセンサ
データ収集と管理にはコストが発生するために、費用対効果も考慮し、記録、保存する対象を決定する必要がある
図1 5ZEROマニュファクチャリングで必要となるデータの種類 数の増加に対し利便性を向上させる機能装備があるだろ
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う。例えば、I/Oリンク搭載センサを採用することによ
それぞれのデータに対し適切なセンサを選択するため り、設置の標準化・出力データ処理の容易化などの実現
のガイドとして、本項では代表的なデータ種類とレベル が考えられる。
2相当の適用センサおよびレベルアップの方向性につい
て述べる。(P11図2) (3)納期関連
◆部品入荷日
(1)品質関連 部品入荷日に対しては、「(1)品質関連◆ロット製造
◆製品の寸法 番号」と同様にBCRの利用が有効であり、2DCRによる
寸法が基準範囲内か否かを判別するには、変位センサ 情報量増大によるレベルアップが考えられる。
や測長センサが使用される。検出範囲や分解能に応じ豊
富なバリエーションが準備されていることが通常である。 ◆工程内進捗記録
またフィールドバス等を介した通信機能を有する製品 工程内進捗記録用データの一例として、検査装置内の
も多い。寸法計測に関するレベルアップの方向性として、 変位センサによる検査結果があげられる。製品ユニット
画像センサによる外観全体の検査が考えられる。 における部品が所定の位置に正確に組付けられているか
検査するものである。
◆ロット製造番号 このレベルアップとしては、画像センサによる外観全
ロット製造番号に対しては、バーコードを利用したト 体に対する検査・記録が考えられる。
レーサビリティシステムによってレベル2の実現が可能
であり、対応する機器はBCR(バーコードリーダ)で (4)安全関連
ある。 ◆ヒヤリハット記録
このレベルアップの方向性としては、情報量を大幅に ヒヤリハット記録の手段として、ライトカーテン出力
増やすことのできる2次元コードを利用したトレーサビ 記録が一例としてあげられる。制御対象機械の稼働時に
リティシステムがあり、対応機器は2DCR(2次元コー ライトカーテンが停止信号を出力した場合、危険領域に
10 seiden 2019 特別号
Part1 NECAが目指すものづくりの将来像~5ZEROマニュファクチャリング実現に向けて
予期されない侵入があったと判断でき、ヒヤリハットの する際のコントローラおよびその周辺機器の要件を以下
対象となる。 に示す。(P13図9)
このレベルアップとしてはレーザスキャナがあげられ レベル2では現在の生産設備の種々のデータを効率的
る。レーザスキャナにおいては、検出エリアを複数に分 に収集できるシステムとなる。レベル3では新たにセン
割することが可能なので、危険度に応じたエリア分割を サなどの入力機器を接続して、現在は把握することが出
行えばヒヤリハットのレベル管理が可能となる。 来なかった生産設備の情報を収集、分析することで生産
性の向上や品質の向上を実現する。
(5)設備保全 各レベルに求められるコントローラの要件としては扱
◆故障履歴【故障予知】 うデータの増加に伴い、より高い演算性能、メモリ容量、
故障履歴や故障予知に関しては、たとえば電流センサ 高速なネットワークインタフェースが求められる。
による設備供給電流の過剰/過少検知や、加速度(G)
レベル1:記録紙によるデータ管理
センサによるモータの振動異常検知があげられる。
このレベルアップとしては、設備の故障に関わる物理 現場作業者が生産数量や検査結果などを紙に記録し管
量が多様であることから、マルチセンシング化が必要と 理するものづくりの姿である。紙ベースの運用は導入コ
考えられる。 ストが低く簡易な運用形態であるが記入ミスなどにより
なおレベル2の保全に関しては、センサが自分自身の 正確なデータが記録できないリスクがある。また紙ベー
保全情報を持ち、I/Oリンク等を介してその活用が可能 スのデータはその後の効率的な利活用には適していない。
となる機種が商品化されている。 (図3)
たとえば、一つの筐体にG、電流、温度など複数の物
ものづくりの姿 蓄積するデータ データの活用 特徴
理量を計測する機能を搭載し、計測データを保全システ ・現場作業者が ・生産数量 ・作業記録 ・記入ミスのリスク
紙にデータを記録 ・検査結果 ・問題発生時 あり
ムに通信できるセンサは、レベルアップの実現に大きく ・記録された紙を など の原因究明 ・紙面のデータは
保管 など 活用に不便
寄与するものと考えられる。
以上、ものづくりの各領域におけるセンサ活用例を示
記録紙
した。今回示した以外のデータに対しても、センサ選定 生産設備
のためのヒントになるものと考える。 目視確認
3-2 コントローラ編
現場作業者 ・現場作業者が紙にデータを記録
データの収集、分析を切り口として、システムを構築 図3 記録紙によるデータ管理
ものづくりの領域 データの種類 使用するセンサ(例) レベルアップの方向性
寸法 変位センサ 画像センサ
Q 品質関連
ロット バーコードリーダ
製造番号 (1D) 2Dコードリーダ
C コスト関連 生産実績 光電/近接センサ 通信化
部品 バーコードリーダ
入荷日 (1D) 画像センサ
D 納期関連
工程内
進捗記録 変位センサ 2Dコードリーダ
S 安全関連 ヒヤリハット ライトカーテン レーザスキャナ記録 (単一エリア) (エリア分割可)
故障履歴 電流センサ マルチ
MT 設備保全 センシング
故障予知 加速度センサ 通信化
図2 レベル2で適用されるセンサとレベルアップの方向性
seiden 2019 特別号 11
はネットワークインタフェースが必要になる。近年は
レベル2:データ収集の効率化
Ethernetベースのネットワークが主流である。
◆PCによるデータの管理 データを読み出す手段(通信プロトコル)は複数存在
レベル2ではデータの電子化を図る。現場作業者はキ する。データ量、読出の頻度などから適切な手段を選択
ーボードやマウスによって現場情報をPCに入力する。 する必要がある。(図6)
PCに入力されたデータは市販の表計算ソフトなどを活
用することで進捗状況の見える化や問題発生時の原因究
ものづくりの姿 蓄積するデータ データの活用 特徴
明などに活用することができる。(図4) ・PLCでPCへ自動的に ・生産数量 ・現場業者への ・作業者が介在
データ収集 ・生産プロセス 進捗状況の しないデータ管理
・表計算、DBソフトで ・レシピ 見える化 により入力ミス、
管理 ・検査結果 ・生産性、品質 作業者の工数
など 改善 必要無し
ものづくりの姿 蓄積するデータ データの活用 特徴 ・問題発生時の ・システム構築の
原因究明 難易度が少し
・現場作業者が ・生産数量 ・進捗状況の ・表計算ソフトで 高い
PCにデータ入力 ・検査結果 見える化 データの加工が 表計算ソフト、データベースソフト
・表計算ソフトで など ・生産性、品質 容易 Ethernet
管理 改善のための ・入力ミスのリスク
分析 あり ・・・・・・・
・問題発生時の 自動的にデータ収集
原因究明 PLC ・独自プロトコル(Ethernet対応) ・FTPサーバ/クライアント・SQLクライアント
・独自のデータ読出しアプリケーション
生産設備 生産設備 ・通信ミドルウェア
表計算ソフト
目視確認 ・・・・・・・ 図6 データ収集の効率化/PCで自動的にデータ収集
PC
現場作業者
3 レベル3:収集データの拡充
図4 データ収集の効率化 / PCによるデータ管理
◆新規に設備情報を収集データに追加
◆PCで電子的にデータ収集 レベル3では新たにセンサなどの入力機器を追加し従
メモリカード(SDカードやCFカードなど)を装着可 来は把握することが出来なかった生産設備の新しい情報
能なPLCを使用することで、PLCに一時的にデータ保 を収集して活用する。例えば温度、振動、電圧、電流な
存することができる。現場作業者が定められたタイミン どのデータを収集して製造品や生産設備の状態を診断
グで当該メモリカードのデータをPCへ取り込むことで し、生産性や品質の向上を図ることが可能になる。
キーボード等による入力ミスを無くすことができる。 元々装置を制御しているPLCに新たなデータ収集の
さらにPLCのプログラムによってより精緻で多岐に 機能を担わせることも可能だが、レベル3への過渡期と
渡るデータをメモリカードへ保存することが可能になる。 してはデータ収集用PLCを別途設置するという手段も
(図5) あり得る。(図7)
ものづくりの姿 蓄積するデータ データの活用 特徴
ものづくりの姿 蓄積するデータ データの活用 特徴 ・センサなど入力 ・生産数量 ・検査の自動化 ・人の熟練度に
・PLCでPCへ電子的に ・生産数量 ・現場業者への ・入力ミスの 機器を追加 ・検査結果 ・生産性、品質向上 左右されない
データ収集 ・生産プロセス 進捗状況の リスク無 ・大量のデータを収集 ・製造品の状態 ・予防保全 収集と分析
・表計算、DBソフトで ・レシピ 見える化 ・現場作業者の ・解析アプリケーション ・生産設備の ・入力機器の追加
管理 ・検査結果 ・生産性、品質 工数がかかる で分析 状態
など 改善 (温度、振動、圧力、電流、電圧など)
・問題発生時の
原因究明
表計算ソフト、データベースソフト Ethernet ・・・・・・・
PLC
(Ethernet対応)
自動的にデータ収集
メモリカード ・・・・・・・ ・独自プロトコル
・FTPサーバ/クライアント
PLC データ収集ソフト計測用センサ追加 ・SQLクライアント (解析アプリでデータの見える化・分析)(メモリカード対応) ・独自のデータ読出しアプリケーション
・通信ミドルウェア
生産設備
生産設備
現場作業者 図7 データ収集の効率化/新規に設備情報を収集データに追加
図5 データ収集の効率化/PCで電子的にデータ収集
◆エッジコンピューティングによるデータの収集、分析
◆自動的にデータ収集 複数台の生産設備からのデータ収集、分析を行なうこ
データ収集の更なる自動化の姿としてはPCからネッ とにより全体最適な生産性の向上や品質向上を図ること
トワーク経由で生産設備のデータを収集する。PLCに が可能になる。大規模システムの場合、各装置から収集
12 seiden 2019 特別号
Part1 NECAが目指すものづくりの将来像~5ZEROマニュファクチャリング実現に向けて
するデータ量は大きくなるため製造現場近くにサーバを
レベル4:AI による収集データの活用
置く形態(エッジコンピューティング)も提唱されてい
る。データ利活用サービスを提供するIoTプラットフォ レベル3のシステムに加えてAI技術によりデータの
ームを活用する方法もある。(図8) 分析を行うことで、生産設備の制御へフィードバックを
行なったり、生産設備の自己診断をするシステムを構築
ものづくりの姿 蓄積するデータ データの活用 特徴
・センサなど入力 ・生産数量 ・精緻な情報により ・データ自動収集、 したりすることが可能になる。
機器を追加 ・検査結果 検査の自動化、 分析
・大量のデータを ・装置/製造の 全数検査 ・システム構築の これらの情報はクラウドサービスを通じてグローバル
常時/自動的に 状態情報 ・生産設備への 難易度が高い
収集 (温度、振動、圧力、電流、電圧など) リアルタイム レベルで共有、活用される。
・解析アプリケーションで ・製造ライン全体 フィードバックで
分析 の情報 生産性や品質を
・エッジコンピューティング 向上
(IoTプラットフォームの活用)
データベース サーバPC
解析アプリケーション
解析用データ収集
エッジコンピュータ
IoT プラットフォーム 簡易解析・判定
高速なネットワーク フィードバック データ収集
インタフェース Ethernet等
PLC
生産設備 計測用センサ追加 7
図8 データ収集の効率化/エッジコンピューティングによる
データ収集・分析
5ZEROマニュファクチャリングのものづくりの姿と必要なコントローラ周辺機器、要件を定義
レ 課題 ものづくりの姿 入力 PLC ストレージ/サーバ アプリケーションソフト
ベ 機器
ル
センサ 標準レ 高速 標準レ 高速 PC PC クラウ 表計算 解析 AI
等(新 ベルの 演算、 ベルの な (現 サーバ ドサー ソフト アプリ
規に追 演算性 大容 ネット ネット 場設 (エッ バ /DBソ ケー
加) 能、メモ 量メ ワーク ワー 置) ジ) フト/BI ション
リ容量 モリ I/F クI/F ツール
2 データ 現場作業者がPCにデータ入力 〇 〇
収集の 表計算ソフトで管理
効率化
PLCでPCへ自動的にデータ収集 〇 〇 〇 〇
表計算、DBソフトで管理
PLCでPCへ自動的にデータ収集
PLC間/PC間は高速ネットワーク
表計算、DBソフトで管理 〇 〇 〇 〇
3 収集 センサなど入力機器を追加
データの 大量のデータを常時/自動的に収集
拡充 解析アプリケーションで分析 〇 〇 〇 〇 〇
上記+エッジコンピューティング 〇 〇 〇 〇 (〇) 〇
4 AIに AIを用いたデータ解析と制御への 〇 〇 〇 〇 (〇) 〇 〇
よる収 フィードバック
集データ
の活用
図9 データ収集、分析システムの導入ツール
seiden 2019 特別号 13
第4章 CEATEC JAPAN 2018でのパネルディスカッション
CEATEC JAPAN 2018カンファレンスにて「NECAが考えるものづくりの将来像:5ZEROマニュファクチャ
リングの進化」と題したパネルディスカッションを実施した。
本章では「プリント基板生産ライン」と「コイル生産ライン」を取り上げ、会員4社の「Q」「D」「C」「MT」の
レベルアップのポイントの討論内容を再現する。
4-1 本パネルディスカッション登壇メンバー
者の気付きが促進されることがあるかもしれません。ま
・葉山陽一(ものづくり・ことづくり委員会委員長) た、その次のレベル3になると、さまざまなセンサから
・杉山信幸(アズビル) 収集されたセンシングビッグデータが複数のサーバなど
・水島謙二(オムロン) に保存されたうえで、それにより、たとえば、品質、納
・小川拓(富士電機機器制御) 期、生産性、設備保全の面での課題、原因が解析できる
・福島孝真(安川コントロール) ことを想定しています。
モデレータをNECA西岡が担当した。 さらに、レベル4に達すると、AIが活用されて、それ
らの原因を瞬時に解析するとともに、その対策をロボッ
葉山委員長から「5ZEROマニュファクチャリング」 トなどにより自律的に講じるようになるのではないでし
概要説明の後、二つのテーマ「レベルの意味」と「レベ ょうか?(図2)
ルアップのポイント」に絞り込みディスカッションを行 西岡:ものづくりのつながる範囲の切り口で、レベルを
った。(図1) イメージするとどうなるでしょうか?
5ZERO マニュファクチャリングのレベル区分の考え方
レベル1 レベル2 レベル3 レベル4
5ZERO マニュ 手動 一部自動化 自動化 自律自動化
ファクチャリング 一部協調 協調 AI適用
のレベル区分
データ活用の切 紙データ管理 電子データ ビッグデータ AI
り口で区分する 見える化 解析 自律制御
と・・・
つながる範囲の 個別生産ライン内 複数生産ライン間 複数工場間 複数企業間
切り口で区分
図1 CEATEC JAPAN2018 パネルディスカッション風景 すると・・・
4-2 テーマ1:5ZEROマニュファクチャリング
図2 5ZEROマニュファクチャリングレベル区分の考え方
のレベルの意味について
西岡:5ZEROマニュファクチャリングでは、究極の 小川:最初のレベル1では、個別の生産ライン内ごとに
「ZERO」が実現された状態を「レベル4」として、レ 製品の生産数量、完成試験データを持って、福島さんが
ベルを4段階に設定しています。レベルの意味の理解を ご説明されたように、紙ベースで管理している段階かと
深めるために、「ものづくりのデータ」の切り口で解説 思います。これが、次のステップに進むと、ひとつの工
をお願いします。 場内の複数の生産ラインがつながり、コンピュータ上で
福島:まず、レベル1では、データの管理が紙の資料や 一括で生産や品質状況を把握できる段階に進むものと想
ファイルで手書きや印刷で行なわれている段階になるか 定しています。
と思います。これが、レベル2になると、だんだん電子 さらに、レベル3では、同一の会社の本社や事業部が
データ化されて、自動でデータが記録されたり、データ 各工場内と同一レベルの詳細データをリアルタイムに全
がサーバに保存されて関係者で共有される段階に進むと 社レベルで把握、管理できる段階に進むと考えています。
思います。また、その際に、自動でデータがグラフ化さ さらにレベル4に至ると、サプライヤや顧客までも含
れて状態、状況、原因が見える化されることにより関係 めた生産、品質、納期などのものづくり上のデータがス
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Part1 NECAが目指すものづくりの将来像~5ZEROマニュファクチャリング実現に向けて
クリーニングされた上で必要に応じて、リアルタイムに も自動化率を高めていきたいと考えています。また、ト
共有されることになり、現状の課題とその対策がスピー レーサビリティ管理や常時センシングも一部で始めてい
ディーに打てるようになることを予想しています。 ますが、まだ限定的です。
西岡:それぞれの項目の困難度のレベルを感覚的にご説 多変量解析や傾向分析等のデータ分析手法を活用し品
明いただくとすると、どうなるでしょうか? 質データをリアルタイムで分析する取組も検討を始めて
杉山:そうですね。レベル1が跳び箱の1段目と考える いますが、実ラインへの適用はもう少し先になると考え
と、レベル2は2段目、レベル3になると6段目といっ ています。
たところでしょうか。 福島:弊社は未だレベル1から2の中間位の状況です。
西岡:そうなるとレベル4のイメージは? どちらかと言うとレベル1に近い感じですね。
杉山:跳び箱で考えると20段くらいではないでしょう 品質管理の精度upで数値管理できるところは数値記
か。到底飛べないという意味ではなく困難度はレベル4 入を進めているのですが、やはり生産現場では作業者に
で大きく跳ね上がるという意味です。ひとりで飛び越え よる出来栄え管理で目視の品質確認が主になっていま
ることは出来なくても協力していろいろなツールを利用 す。
して乗り越えることが出来ると思います。はしごを使っ 現在数値による傾向管理は設備点検(プロセス管理)
て乗り越えるイメージです。このはしごにあたる部分を が主になっています。
考える必要があり、それが5ZEROマニュファクチャリ
ングでの取り組みとなります。 PLC用PCB生産ラインの品質レベル
4-3 テーマ2:5ZEROマニュファクチャリング 1.クリームはんだ印刷機 3.電子部品実装機 5.リフロー炉
2.はんだ印刷検査機 4.部品実装検査機 6.はんだ付け外観検査機
のレベルアップのポイントについて
西岡:5ZEROマニュファクチャリングのレベルの意味
は概略ご理解いただけたと思いますが、皆様のご関心が
高いのは、現状のレベルからどのようにしてレベルアッ レベル 定義 実装欠点率*
レベル1 作業者による検査で不良の流出防止 500ppm
プを図っていけば良いかになると思います。具体的な自 レベル 2 検査を一部自動して不良の再発防止 10ppm
社の事例をご説明下さい。 レベル 3 常時センシングと監視で不良の連続発生を防止 100ppb
レベル 4 常時センシングと自律調整で不良を未然に防止 ゼロ
(注*)実装欠点率: はんだ付け不良があった部品点数/実装部品点数
~Q(品質)~ 図3 PLC用PCB生産ラインの品質レベル
「Q(品質)」についての自社の現状レベル
水島:レベル1から2では不適合品である不良の流出を 「Q(品質)」レベルアップの取り組み
防止する検査の一部を自動化して不良の流出防止から再 西岡:各社の現状のQ(品質)の現状のレベルは了解い
発防止に繋げていくステップとおいています。 たしました。この現状を踏まえて、どのような取り組み
レベル3では不良の発生自体を最小化させ、レベル4 をされているか、そのポイントをお聞かせ下さい。
では不良の発生を未然に防止するいわゆる「Zero 水島:当社草津工場では「Zero Defect」の入口にあ
Defect」 を実現するステップとしています。 たるレベル3に向けて取り組んでいます。
当社草津工場では、このレベル表現するならばレベル 電子部品実装ラインにおいて製造プロセスデータと検
3に向けてチャレンジしている段階です。IEやQCをベ 査計測データを製造実行システムにある4M(Man、
ースに製造実行システムやエラープルーフのしくみを既 Machine、Material、Method)変化データと紐付け
に取り入れており、レベル2を実現していると考えてい 不良の発生を未然防止することで、欠点率の二桁改善を
ます。(図3) 目標に掲げて取り組んでいます。
小川:弊社では、レベル2とレベル3に並行してチャレ このような取組みを成功させるには社内外とのコラボ
ンジしている状況です。検査については多くの検査が自 レーションが重要となります。当社では社内の技術部門
動化されてきていますが、異形状部品の実装や外観検査 やIT部門、社外では装置メーカ様との協業体制で進めて
等まだ人に依存している作業も多く残っている状況です。 います。
自動化技術や画像処理技術のレベルアップにより今後 小川:レベル4を達成するには解決すべきいくつかの課
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題があると考えますが、2つほどお話します。 ここでのポイントは完全にシステムによる段取り化と
一つ目は、「ものづくりに関するすべての生産条件 最適スケジューラーによる生産能力のフル活用にあり、
4M」を正確にセンシングすることが必要と考えます。 設備では自動で専用部品やタイプ交換が実施される。ま
そのためにセンシング機器や技術の進化に加えてセンシ た、生産計画など、受注情報と連動し最適生産スケジュ
ング方法にも工夫が必要であると考えます。 ーラーによって生産能力をフル活用することで生産リー
二つ目は、収集した情報の活用です。「Zero ドタイムの最短化を実現する。
Defect」を目的とした情報の活用とは主に不良を予知 このようにレベル1から4までの定義を考えていま
するための解析になると考えます。 す。(図4)
レベル4の実現には、高い確度の解析結果を迅速にも レベル 定義 生産L/T
のづくり現場へ反映させることが必要になります。解析 レベル1 ロット生産、内段取り 1週間
レベル2 小ロット生産、外段取り 3日
においても技術進化に加えて解析方法の工夫が必要と考
レベル3 工程結合、割り込みスケジューラー 8時間
えます。 レベル 4 1個流し、最適スケジューラー 30分
※生産リードタイムのレベル4の数値目標である30分を達成すると、5ZEROマニュファクチャリング
の目標である納期延長ゼロが達成できる。
~D(納期)~ 図4 PLC用PCB生産ラインの納期レベル
「D(納期)」についてのレベルの定義
西岡:話題をD(納期)に移します。 「D(納期)」についての現状のレベル
福島:基板実装ラインでの生産リードタイムについて、 西岡:今ご説明頂いた定義に基づくと現状のレベルは?
事例説明とさせて頂きます。品質と同じ設備構成になり 福島:弊社の現状としては、ようやくレベル2に足が入
ますが、生産ラインをイメージして頂ければと思います。 った感じです。他社と比べるとかなり遅れた生産ライン
レベル1の定義では、数百台規模のロット生産が多く、 だと思いますが、生産効率の向上を行う事でリードタイ
段取り替えも少ないため、装置を止めての内段取り替え ムの短縮を図っています。主に外段取り時間の短縮とヒ
となり、生産ラインとして連結されて無い為に途中に人 ューマンエラー対策に関する段取り改善システムの導入
作業が介在するため工程前後・工程間での仕掛りも発生 を行いました。このシステムの運用で人による確認作業
し正味加工時間より停滞時間が増えることで生産リード からバーコードによる照合作業に変わりセットミス防止
タイムも約1週間かかる。 等の一部自動化を取り入れた運用を進めている状況です。
レベル2の定義では、内段取り時間が改善され大量ロ 杉山:弊社のPWA生産も、レベル2ですね。
ット生産から、ある程度の小ロット生産になることで工 フィーダーセットとリールのそれぞれにバーコードを
程前後・工程間の仕掛り量も減り生産リードタイムも3 付けて管理しています。部品の搭載ミスはシステム側で
日程度に短縮できる。また、生産ラインでの作業に於い 判別するようにしています。
ても人の介在する作業から外段取り化をサポートする仕 段取り替えは出来るだけ短い時間で実施するようにし
組み(バーコードによる照合・RF-IDを組み込んでヒュ ていますがゼロには出来ていません。工程も手差し部品
ーマンエラーの防止)が使われてくる。 の工程は別となっていて、工程が分断している状況です。
レベル3の定義では、生産ラインが一部分断されてい 水島:弊社もレベル2の状況にあります。段取り替えは
た工程が全て連結され更に仕掛り量が減ることで生産リ 外段取り化を実施しており、部品の搭載ミスはシステム
ードタイムが短縮される。また工程連結の為にも、もの 側で防止するしくみを構築しています。
の流れの整流化、ラインバランスのロスを無くす工程設 これにより品種毎の最小ロット単位での生産が可能な
計が必要になる。さらに、多品種少量生産のケースが多 状況です。
い制御機器で実現するには製品のモジュール化が鍵とな
るでしょう。共通部分を揃えて生産し易くする。多品種 「D(納期)」レベルアップの取り組み
であっても同じラインでバランスを保って生産できる様 西岡:納期に関する各社の現状は、理解できました。そ
になり生産リードタイムも8時間程度に短縮できる。 れでは、今後、さらにレベルアップしていくために、ど
レベル4の定義では、工程間が結合され完全1個流し のような取り組みをされようとしているのか、安川コン
が実現され生産リードタイムも正味加工時間に近くな トロール様では如何でしょうか?
り、最短時間のリードタイムを実現するでしょう。 福島:ここからが大きな変化点になるのではと思ってい
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Part1 NECAが目指すものづくりの将来像~5ZEROマニュファクチャリング実現に向けて
ます。各企業でも導入されている上位のシステムが必要 また、コイルの場合、電線や巻数の違いでかなり多く
になってくると思います。例を挙げるとMES等です。 の品種を生産する必要がありますが、段替えに手間がか
このシステムの導入と簡単に言えますが、実際の生産 かるため少ロット品については手作業で実施しているラ
現場とシステムの繋がりを構成させるためのセンサ機器 インも多く、このあたりも課題と思っています。
を設置できる「環境・仕組み」を作るまでが大きなポイ 西岡:安川コントロール(株)様、アズビル(株)様の
ントになるのではと感じています。 それぞれの現状は如何でしょうか?
ここが出来る様になるまでの管理項目や判断基準を明 福島:弊社もレベル3の段階です。基板実装ラインとし
確にする。この領域に達するとレベル3への移行となる て部品実装の自動化、画像検査の自動化、段取り替えが
のではと思います。まだ弊社ではレベル2の域ですが、 一部自動化のレベルで生産している状況で、これ以外は
関係会社の方ではレベル3、4の域の取り組みを去年よ 殆ど人手による作業となっています。
り形にして検証を開始しています。 杉山:当社の自動化取組は一部のラインにてレベル3か
ら4にあたる完全自動化を行っているところです。そこ
~C(生産性)~ では設備へのパーツ供給以外は全て機械が行っていま
「C(生産性)」についてのレベルの定義 す。工程間の移動も機械化されているため、ものづくり
西岡:次のテーマである、C(生産性)に移りたいと思 はすべて自動で行います。
います。先ず、レベルの定義からお願いします。 このように自動化のレベルは高いのですが、この後の
小川:こちらはNECAの会員企業で良く行われているコ お話に出てくる設備保全のレベルは2なので、設備保全
イル巻線ラインを例にレベル定義した資料となります。 要員がライン内にいる状態です。半田のコテ先の交換な
生産性のレベル定義は非常に単純で、自動化率の進化を どは定期的に必要ですし、メンテナンスの部分を自動化
レベルで定義しています。自動化レベルを上げながら最 しないと完全自動化とは言えません。
後のレベル4では工程内の作業だけでなく段替えや故障 Q(品質)・C(生産性)・D(納期)・MT(設備保全)
診断など周辺作業も自律的に実施される完全自動化を定 はすべて揃ってレベルを上げていく必要があると思いま
義しています。(図5) す。
巻線 端末処理 絶縁処理 特性検査 外観検査 周辺作業
巻線作業 生産管理
実作業 はんだ付け 絶縁作業 特性検査 外観検査
レベル 定義 自動化率 からげ作業 ・生産計画作成
部品供給 ・需要予測
レベル1 治具等の使用はあるが手作業が中心の工程 5% テープ供給段替え 電線交換 成分分析
テンション ・在庫管理
2 50% 品質管理 テンション はんだ供給レベル 自動化設備と手作業の混合工程 管理 ・みずすまし管理
3 80% 少ロット品生レベル ほぼ自動化。ワーク脱着は手動 設備管理 設備故障診断、設備保全、チョコ停対応 測定器校正 検査器校正 産
レベル 4 完全自動化。無人化。 100% (手動ライン)
黒色: 多くが自動、緑色:一部自動化、赤色:作業者に依存
改善活動 5
図5 コイルラインの生産性レベル 図6 コイルラインの生産性の現状
「C(生産性)」についてのレベルの現状 「C(生産性)」レベルアップの取り組み
小川:他の項目と比較して、自動化は先行して取り組ま 西岡:それでは、富士電機機器制御(株)様と安川コン
れている企業が多いと思います。弊社でも現状はレベル トロール(株)様のそれぞれのレベルアップの取り組み
3に近い状態で今後レベル4にチャレンジしていきたい についてお聞かせ下さい。
と考えています。 小川:レベルアップのために実現しなければならない事
図6は、弊社のコイル巻線の自動化率をイメージした は多々ありますが、弊社としてはまずは多品種少量生産
資料になります。 の実現を目指していきたいと考えています。
小川:実作業の多くは自動化が進んでいますが、段替え そのためには例えば現状では多軸巻線時に全ての軸で
や各種間接業務については、まだまだ多くを人に頼って 同じ品種の生産を実施していますが、各軸毎に違う品種
いるのが実態です。 を巻ける様にしたり、人の手を借りずに瞬時に段取りが
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できる設備技術や、生産・製造システムとの連携が必要
と思っています。
もう一つは間接業務の自動化です。実作業はかなり自
動化が進んできていますので、次の課題は生産管理や設
備メンテなど周辺作業の自動化となります。AIやRPA
など最近の技術を使って人の作業をデジタル化し自動化 レベル 定義 設備停止率
していく事を検討し始めています。 レベル1 オペレータによるマニュアル保全 5%
レベル 2 各種センサーによる異常検知(CBM) 3%
これらの自動化を進めていく中で、弊社で重要視して レベル 3 遠隔保全 1%
いるのが、継続的な改善のために人の知恵をどの様に活 レベル 4 自律保全 ゼロ
用していくか、という事です。自動化や自律化が実現す 図8 コイルラインの設備保全レベル
ると人の知恵が介入しづらくなり改善が止まってしまう
事を懸念しています。より高度な改善につなげていくた 杉山:現状はレベル1から2の状態です。コイル生産ラ
めの工夫も重要だと思っています。(図7) インでの各レベルの状態を整理すると、レベル1では、
ブレークダウンメンテナンスの他、設定した点検項目に
関する定期点検を行っている状態です。故障が想定され
多品種少量生産の実現 間接業務の自動化 ている部位に関しては検査で発見できるが、想定外の故
(一個流しの実現)
・リアルタイム自動生産計画 障予知はなかなか難しい状況です。点検項目は随時見直
・各軸独立制御巻線 ・生産状況の見える化
・自動段取り替え ・需要予測システム しを行い、可能な限り予防保全を行えるように活動して
・生産・製造システムとの連携 ・自律設備保全 いる状況です。
レベル2では、定期点検をほぼ不要とし設備側で常時
難作業の自動化 継続的な生産性向上
故障監視を行える状態です。たとえば巻き線機では振動
・官能作業の自動化 ・改善活動の支援・加速
(外観検査等) が大きくなったことを検知してモータ異常やベアリング
・技能のデジタル化
の摩耗を検出します。そのための振動センサーを軸受部、
図7 レベルアップのポイント モータなどに設置する必要があります。異常判定の閾値
は設備側に設定されていて、異常時はブザーや接点信号
福島:生産ラインを繋ぐために、今からは材料供給や設 などで知らせると共に設備停止します。故障時は現場に
備の点検、部品交換等の自動化をユニット単位で完成さ ひとが出向いて修理を行う。故障検知は自動化されてい
せて行ければと考えています。その後、装置と自社開発 ますが、対応はひとが行うのがレベル2と言えます。
ユニットの繋ぎを連携させる事が大きな取り組みになっ 当社も含め、レベル2の状態にあるラインは多いと思
てくるのではないかと思います。 います。
水島:レベル2の装置が、いくつか出来始めています。
~MT(設備保全)~ 例えば、当社の工場では、部品のピック&プレース型
「MT(設備保全)」についてのレベルの定義と現状 装置において、部品をバキューム吸着する先端部分のつ
西岡:それでは最後にMT(設備保全)の議論に移りた まりを、プレース後の状態やエア流量などのセンシング
いと思います。先ずは、先ほどまでと同様に、現状のレ データから予測している事例もあります。まだ手動での
ベルについてアズビル(株)様とオムロン(株)様、富 メンテナンスがメインですが、一部では専用の自動メン
士電機機器制御(株)様の順で説明をそれぞれお願いし テナンス装置を利用している事例も出ています。
ます。(図8) データの確からしさと、その分析能力がより重要にな
っていくと感じています。
杉山:レベル3では、技術者が設備を遠隔操作して修理
を行います。現場に技術者が行かなくとも設備保全が行
える状況になり同じ技術者が違う工場の設備を複数担当
することが可能となります。故障検知の自動化に加え、
対応を遠隔操作で行える状態です。
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