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制御機器の基礎知識 (5) 各論 リードリレー

ハンドブック

リレー編

制御用リレーの仕組みや選び方・使い方を解説した制御機器の基礎知識【リレー編】。
下記章がありますが、本章では、リードリレーについて紹介しています。
他の章や制御用リレーのカタログは制御用リレー特集 https://www.aperza.jp/feature/page/102/  にてご確認ください。

1. 制御用リレーとは
2. 総論
3. 各論 ヒンジ形リレー
4. 各論 プランジャ形リレー
5. 各論 リードリレー
6. 各論 特殊用途リレー
7. 各論 半導体リレー
8. 資 料 編

※規格に関しては、必ず現行規格のご確認をお願いいたします。
※NECA Webサイトにも、リレー編を掲載しています。https://www.neca.or.jp/standard/howto/relay/

※本コンテンツの商用目的、営利目的での利用、また無断転載を禁じます。
(本コンテンツは、一般社団法人 日本電気制御機器工業会及び第三者が有する著作権により保護されております。)
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このカタログについて

ドキュメント名 制御機器の基礎知識 (5) 各論 リードリレー
ドキュメント種別 ハンドブック
ファイルサイズ 2.1Mb
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このカタログの内容

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リレー 編 各論 リードリレー
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制御機器の基礎知識 リレー編 3 各論 目次 3.3 リードリレー ................................................................................ 94 3.3.1 概説 ........................................................................................... 94 3.3.2 定格と特性 ............................................................................. 103 3.3.3 選び方 ..................................................................................... 105 3.3.4 使い方 ..................................................................................... 117 3.3.5 故障と対策 ............................................................................. 122 3.3.6 検査 ......................................................................................... 122 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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3.3 リードリレー、3.3.1 概説、3.3.1.1 定義、3.3.1.2 沿革

制御機器の基礎知識 リレー編 各論 3 3.3 リードリレー 3.3.1 概説 3.3.1.1 定義 制御用リードリレーは“リードスイッチを組み込んだ制御用電磁リードリレー”と定義され、コイルに 操作入力を加え、または除くことによりリードスイッチのリード接点が開閉を行う機構である[1]。 ここで、リードスイッチはガラス管中に2本のリード接点を不活性ガスとともに封入した接点素子であ る[2]。 3.3.1.2 沿革 リードスイッチは 1930 年代後半米国ベル研究所で開発され、初期には通信機器用切換えスイッチに用い られた[2]。その後 1950 年代中頃には、我が国でも生産が開始され、その高速性と耐環境性に富む点から 通信機器、制御機器に広く用いられるようになった。特に 1959 年フェリードが米国電子交換機の通話路ス イッチに適用され[3]、高信頼度部品としての実績を積むとともに、1967 年頃からプリント基板実装や制御 盤実装にも対応可能にして電子部品との共用化を図りつつ、電磁形のリードリレー特有の性能を生かし、 制御装置への適用拡大を図った。 また、プリント基板実装法の一つである SIP 形の発売(1983 年)による縮小化(実装面積:2 M×2 M ×2 M(M=2.54mm))や基板実装による接続電線の省力化と制御盤の小形化、耐電圧 1 000 VRMS~2 000 VRMS 及びプリント基板実装法の別の形で 4 端子ピン構造の DIP 形の発売(1974 年)などの実績により、 マイクロシグナルレベル信号の高頻度による数億回の動作に耐える自動試験装置のスイッチングマトリッ クスへのリードリレーの適用の判断根拠になったとされている[4]。 さらに、1990 年代後半、自動テスト装置、電子計装や高周波信号等情報通信機器の用途を開拓した。低 い漏電流(フェムトアンペアのオーダーで、例えば回路を取り扱っている光電子増倍管探知器)を利用す る用途、電子レンジの切替からオシロスコープなどの計測器類に適用されている。テスト・システムのハ ードウェア・アーキテクチャと測定器の選択によれば、システム機器と負荷を DUT に相互接続するスイ ッチ(またはリレー)は、ほとんどのテスト・システムに不可欠な要素である。適切なスイッチ・タイプ とトポロジーの選択は、テスト・システムのコスト、速度、寿命、安全性、全体の機能に影響を及ぼす。 スイッチング・サブシステムに採用するリレーのタイプにより、テストできる回路やシステムのタイプが 決まる。高速システムにはリードリレーや FET が最適で、中でもリードリレーは、高い定格電圧/電流を 備えている。リードリレーは、測定器と低電流信号を DUT に接続するのに最適で、マトリクス配列は、 任意の測定器を DUT の任意のピンに接続することができる最良の方法を提供するだけでなく、新しい測 定器をシステムに追加する場合や DUT のピン数が増えた場合の拡張も容易である[5]。 なお、高耐圧形リードリレー(1980 年に発売)数 kV の負荷に耐えるため、真空リレーの代わりにも使 われている。トナーを吸着させる複写機など事務機器の高電圧回路、半導体製造装置ではコンデンサの耐 圧試験回路から X 線レントゲン装置など医療機器類に適用されている。 一方、リードスイッチは開閉容量が小さいことから重産業用途に適さないとされていたが、1965 年に Cutler-Hammer 社(米国)により、“パワーリードスイッチ”が発表され、ついで、Allen-Bradley 社(米 94 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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制御機器の基礎知識 リレー編 表3.3.1-リードリレーの変遷例 適用分野 ~1970 ~1980 ~1990 ~2000 ~2010 ~2017(年) 装置のデジタル化に伴い、 1) 小形 リードリレーは不採用 電話 電話/FAX用(1985),通話監視用(1990) 1) 2) 家電製品 空調機、防災セキュリティ 防災機器 に採用 医療機器 DIP 形の採用(1985) 2) 1) 電子計装 データロガーに採用 SIP 形の採用 情報通信 3) 3) 9.3mm(1998) Transfer(2000) 9.3mm(2007) 7.95mm(2010) 家電製品 3) 3) 3) 3) 小形 化 自動 試験装置 PCB 形の採用(1982) SMD 形の採用(1990) 医療機器 ラジアル形の採用(1985) 3) 小形化 事務機器 真空リレー 装置のデジタル化(コンピュータ導入) 4) 4) 4) 輸送機器・ 小形 化 小形化 信号 接点無保守 多接点 ワイヤスプリングリレー RL 形式鉄道車両用継電器 PCB 形の採用(1986) プラグイン形の採用(1994) PCB 形の採用(1980) 装置のデジタル化(コンピュータ導入) 水銀リレー生産中止(1995) 4) 4) 電力設備 小形 化 多接点 水銀リレー 出典;1)タイコエレクトロニクスジャパン、2)日本アレフ、3)サンユー工業、4)安川コントロール 95 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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3.3.1.3 代表的な生産品種(機種・構造別)

制御機器の基礎知識 リレー編 国)により重産業用 Hazardous location に適用する押しボタンスイッチ、固定形タイマーリードリレーな どが発売された。さらに、我が国においては、1977 年、New パワーリードスイッチが生産され始め、1980 年より重産業用リードリレーとして実用化され、例えば、新幹線車両制御などの輸送産業や ATS など鉄道 信号に適用されている。1995 年の水銀リードリレーの生産中止に伴い、車両ドア制御や電力保護継電器(デ ジタルリレー)などに適用され、現在に至っている。 1970 年以降を対象に主な適用分野と代表的な製品機種等リードリレーが採用された変遷例を表 3.3.1 に 示すが、1980~1990 年代に始まった制御装置のデジタル化に伴い、リレー取付けの省スペース化、基板実 装高密度化、接点面の無保守化、多接点化のニーズや環境問題等によって製品の構造が変化している。 3.3.1.3 代表的な生産品種(機種・構造別) 市場は、概略 1,000 億円/年と推定され、国内では、(株)沖田製作所、サンユー工業(株)、三協イ ンターナショナル(株)、日本アレフ(株)、安川コントロール(株)等が生産している。 北米地区では、Aleph America、Coto Technology、Littelfuse など、欧州地区では、Standex Meder Electronics、 GÜNTHER Switch Technology、COMUS International、Pickering Electronics、Cynergy 3 など、中国地区では、 HAMLIN、ALEPH、HASCO など、インド地区では、COMUS、RRE など、図 3.3.1 に代表的な製造業者を 示すが、約 40 社と思われる。 図3.3.1-代表的な製造業者 国内製造業者 6 社の製品カタログから内蔵リードスイッチ(3.3.1.5.1 参照)、構造別(3.3.1.5.3 参照) で層別した結果を表 3.3.2 に示すが、これに接点構成(3.3.1.5.2 参照)、コイル定格電圧(表 3.3.6 参照) などの詳細を加味すれば、約 10,000 品種になることが予測される。詳細は、3.3.3 選び方で紹介する。 表 3.3.2-国内製造業者が生産する品種 適用リードスイッチ PCB 形 ラジアル形 DIP 形 SIP 形 SMD 形 プラグイン形 合計 リードスイッチ 70 0 23 27 19 0 136 高耐圧形リードスイッチ 3 39 0 0 0 0 42 重負荷形リードスイッチ 29 0 0 0 0 10 39 96 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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制御機器の基礎知識 リレー編 3.3.1.4 原理と構造 3.3.1.4.1 動作原理 図3.3.2に示す通り、励磁コイルへの通電による磁束によって発生する磁気吸引力がリード接点ばねの復 元力(開離力に相当)を上回った時、対向する接点が閉成する。他方、励磁コイルの通電が除かれると、 接点ばねの復元力により接点が復帰する。この吸引力と開離力の大小を通電量によって制御することが動 作原理の基本である。 F03 磁気吸引力曲線 F02 F 開離力曲線 01 w X SX/2 t Fm3 L1 Fm Fm2 L a 1 2 x x1 g0 X 接点ギャップ 図3.3.2-リードスイッチの動作原理(空心コイル) 3.3.1.4.2 基本構造と部品名称 プリント基板形リードリレーの一般的な基本構造を図3.3.3及び表3.3.3に示す。絶縁材料で形成されたボ ビン②に絶縁電線を巻いたコイル③の中にリードスイッチ①が収納されてあり、コイルにはコイル端子④ が、リードスイッチには接点端子⑤がそれぞれ中継接続されている。リレー本体の保護用としてカバー⑦ を被せてその間に絶縁樹脂⑥を流し込んでいる。カバーには、絶縁材料で形成されたものと、金属性の磁 性材料でできたものがある。磁性材料のカバーは、外部磁界の影響を防止すると共に内部磁界を集束して、 リードスイッチを駆動する磁気効率を上げる効果もある。 表3.3.3-リードリレーの構成部品 ⑦ ② ③ ① No. 部品名称 構成材料(代表例) ① リードスイッチ ガラス管と鉄ニッケル合金 ⑥ ② ボビン ナイロン、エポキシ樹脂 ③ コイル ポリウレタン線 ④ コイル端子 黄銅 ⑤ 接点端子 黄銅 ⑤ ⑥ 絶縁樹脂 シリコーン樹脂、エポキシ樹脂 ④ ⑦ カバー 鉄板、絶縁樹脂 図3.3.3-リードリレーの基本構造 3.3.1.5 種類と分類 リードリレーの分類は、いろんな観点からユーザ、メーカ、関連規格、文献などにより様々な分け方を されているが、ここでは内蔵リードスイッチ、形状・接続、接点形式、取付け構造及び動作方法により分 類する。 97 Copyright 2018 NECA All rights reserved. 磁気吸引力 Fm、開離力 Fr
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制御機器の基礎知識 リレー編 3.3.1.5.1 内蔵リードスイッチによる分類 JIS C 62246-1(リードスイッチ)では、リードスイッチの特性をリードスイッチ、高耐圧リードスイッ チ、重負荷形リードスイッチ及び磁気バイアス形リードスイッチに分類している。 a) リードスイッチ 一対の磁性材料を各々弾性的に可動できるように、その一部をプレス加工した線材 に適切な重なり及び間隔をもたせ、封着用ガラス管に封入した磁気で駆動するスイッチ(図3.3.4参照) b) 高耐圧形リードスイッチ 高電圧を開閉するためハーメチックシール管内を真空又は加圧して封着 したリードスイッチ。 c) 重負荷形リードスイッチ より大きな接点開閉容量を持つリードスイッチ(図3.3.5参照)。 封着用ガラス管 封入ガス 可動リード バックストップ機構 磁極面 ガラス管 戻しばね 端子 接点(ロジウム、金) リード片(鉄-ニッケル合金) 固定接点 ( 接触ばね ) 可動接点 封入ガス 図3.3.4-リードスイッチの構造 図3.3.5-重負荷形リードスイッチの構造 一対の接点チップ又は磁極部と通電部を完全に分離させ、接点チップ及び戻しばねを接点片に追加し たリードスイッチ。図3.3.6に動作原理を示す。基本的にはリードスイッチと同じであるが、接点動作時 のステップ②から④の間にワイピング効果が有り、磁極部が接触することで接点接触圧が一定となり接 触抵抗が安定する。復帰時のステップ②から①の間に固定接点ばね圧のハンマリング効果で接点溶融ブ リッジの破断など遮断に優れている。 ばね力 ば 感動アンペアターンに STEP ね おける吸引力カーブ ① 負 担 釈放アンペアターンに 復帰 動作 力 及 おける吸引力カーブ ② び 吸 引 感動アンペアターン ③ 力 釈放アンペアターン ④ ON(接点部) 接点ストローク OPEN STEP ④ ③ ② ① 図 3.3.6-重負荷形リードスイッチの動作原理 d) 磁気バイアス形リードスイッチ 機能特性、並びに動作位置及び復帰位置を決めるために磁界でバイ アスされたリードスイッチ。 3.3.1.5.2 接点形式による分類 リードスイッチは、a接点、b接点、c接点の三つの接点形式が基本となる。c接点には、メイクビフォア ーブレークコンタクト接点(オーバーラップ有り)とメイクアフターブレークコンタクト接点(順序動作) の2種類がある。 a) a接点リードリレー コイルに入力を加えることにより接点が閉じ、入力が除かれると接点が開くタ 98 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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制御機器の基礎知識 リレー編 イプのリードリレーで、メーク接点リレーとも呼ぶ。 b) b接点リードリレー コイルに入力を加えることにより接点が開き、入力が除かれると接点が閉じる タイプのリードリレーで、ブレーク接点リレーとも呼ぶ。 c) c接点リードリレー a接点、b接点ともに備えた接点構造で可動接点の導電部が共通のリードリレーで ある。トランスファー接点リレーとも呼ぶ。 一つのリードリレーに内蔵される接点の数を極数と言う。リードリレーでは1~4極のものが一般的であ るが、表3.3.4に示す接点構成の組み合わせがある。 表3.3.4-リードリレーの接点極数 接点 極数及び接点構成 a 接点 1 2 3 4 6 8 b 接点 1 2 3 4 6 8 c 接点 1 2 組み合わせ 2a1b 2a2b 3a3b、4a2b 4a4b、6a2b 3.3.1.5.3 取付構造による分類 取付構造(基板実装、制御盤実装)によりプリント基板形、ラジアル形、及びプラグイン形の三つに分 類でき、プリント基板実装の端子配列は、表 3.3.5 に示す PCB 形、DIP 形、SIP 形、ZIP 形及び表面実装の SMD 形に分類できる。 表3.3.5-端子配列による種類、テープとリールの形状 取付構造 端子配列 テープとリールの形状 リード線端子が 2.54 mm ピッチ又は 2.50 mm ピッチの格子点に PCB 形 非該当 引き出されたもの、又は製造業者が指定するピッチ。 DIP 形 リード線端子が 2 列に配置されたもの。 製造業者の推奨値 プリント基 SIP 形 リード線端子が 1 列に配置されたもの。 製造業者の推奨値 板実装形 ZIP 形 リード線端子がジグザグに配置されたもの。 製造業者の推奨値 プリント基板に表面実装し、はんだ付けできる端子をもつもの。 JIS C 0806 に合致 SMD 形 (自動実装用部品のパ ッケージング) リード線の引出構造により、両側に出ているリード線端子 ラジアル形 非該当 反対方向が一般的である。 リレー本体と適用ソケットが着脱形になっているもの。 プラグイン形 内部接点構成で、端子ピン構造は異なる。 非該当 接続は、適用ソケット側で行う。 a) PCB 形リードリレー 基板にはんだ付けにより取付ける構造をもったリードリレーである。端子は 0.1 インチ又は、2.5 mm ピッチの格子点上に配置されているのが一般的である。一般プリント基板用はさら に樹脂などでモールドされた密閉形と、密閉されていない開放形に分けられる。各々の代表例を図 3.3.7 (出典:サンユー工業)及び図 3.3.8(出典:タイコエレクトロニクスジャパン)に示す。外部使用環境 が厳しい用途では、磁気シールドタイプの重負荷形リードリレー等が有り、代表例を図 3.3.9(出典:安 川コントロール)に示す。 注記 開放形はコスト的に安価である半面、外部環境の影響を受け易い。接点構成は、密閉形に比べ少ない。 99 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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制御機器の基礎知識 リレー編 接点構成は、1a~4a、1b~2b、1c~4c と多種多様である。 1 2 P1(-) P2(+) 図 3.3.7-PCB 形(密閉)の形状と接続例 図 3.3.8-PCB 形(開放)の形状と接続例 注記 重負荷形は、1a~4a、 1b~4b、 1a1b、 2a1b、 Ia2b と多種多様である。全て、磁気シールド構造である。 図 3.3.9-PCB 形(重負荷形)の形状と接続例 b) DIP(Dual Inline Package)形 図 3.3.10(出典:サンユー工業)及び図 3.3.11(出典:サンユー工業) に示すように、端子が 2 列出ているリードリレーで、端子の間隔は 0.1 インチ及びその整数倍である。 注記 IC と端子ピッチが同じで、IC 回路などに直接組み込みが可能である。接点構成は、1a~2a、1c 等がある。 14 13 9 8 16 11 10 1 2(+) 6(-) 7 1 2(+) 6(-) 7 図 3.3.10-JIS DIP 形の形状と接続例 図 3.3.11-一般 DIP 形の形状と接続例 c) SIP(Single Inline Package)形 端子間隔は DIP 形と同様であるが端子が一列に出ているリードリレ ーである。図 3.3.12(出典:サンユー工業)に SIP 形の代表的な形状と接続を示す。 注記 集積密度を上げるため、IC 回路などに直接組み込みが可能である。接点構成は、1a~2a、1c、1b 等がある。 d) ZIP(ZIGZAG Inline Package)形 端子間隔は SIP 形と同様であるが端子が交互にジグザグに出てい るリードリレーである。図 3.3.13(出典:サンユー工業)に ZIP 形の代表的な形状と接続を示す。 注記 接点構成は、1a、1c 等である。ZIP 形は DIP 形の省スペース化によって開発されている。 15 13(+) 11 9 1 3(+) 5(-) 7 1 3 5(-) 7(NC) 図 3.3.12-SIP 形の形状と接続例 図 3.3.13-ZIP 形の形状と接続例 100 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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制御機器の基礎知識 リレー編 e) SMD(Surface Mount Device)形 図 3.3.14(出典:サンユー工業)に形状と接続方法の例を示すが、 基板上に表面実装できるように、端子が 2 列出ているリードリレーで、端子の間隔は 0.1 インチ及びそ の整数倍である。自動はんだ付け対応できるように、リールに巻かれたテープ上に梱包されている。 注記 接点構成は、1a、2a、1c、2c 等である。 1 8 2 7 P1 3 6 2 4 5 P2 図 3.3.14-SMD 形の形状と接続例 図 3.3.15-ラジアル形の形状と接続例 f) ラジアル形 筒状の形状をもったリードリレーを総称してラジアル形リードリレーと言う。しかし、 一般的には図 3.3.15(出典:サンユー工業)のように端子が両方から出ているものをラジアル形、図 3.3.16 (出典:サンユー工業)のように端子が片方から出ているものを自立形(スタンド形)と呼ぶ場合が多 い。 注記 接点構成は、1a~3a 等である。 P1 G 1 2 3 4 5 6 P2 図 3.3.16-同自立形の形状と接続例 図 3.3.17-プラグイン形の形状と接続例 g) プラグイン形 専用ソケットと結合及び取外しができるものをプラグイン形リードリレーと呼ぶが、 その特徴は、図 3.3.17(出典:安川コントロール)に示すように多極接点構成で、全波整流回路を内蔵 した交直両用の操作コイルが多い。 注記 接点構成は、3a~6a、2a1b、2a2b、3a3b、4a2b、6b 等多様である。 3.3.1.5.4 動作方法による分類 リードリレーの動作は、コイル励磁動作と永久磁石とコイル励磁の複合動作に分類される。 a 接点形は、空心コイルの励磁によりリードスイッチの接点が閉じ、励磁が除かれると接点が開く(図 3.3.18 参照)。永久磁石保持による b 接点形は、コイル励磁により永久磁石を使ったバイアス MG の磁界 を打消して接点を開く。励磁が除かれると接点は閉じる(図 3.3.19 参照)。この場合、コイル励磁が大き すぎると、永久磁石の磁界に打ち勝って再動作をしてしまうので、最大許容印加電圧値以内で使用するこ とが望ましい。 101 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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制御機器の基礎知識 リレー編 リードスイッチ 重負荷形リードスイッチ 永久磁石 空心コイル S N コイル コイル励磁電源 コイル励磁電源 図 3.3.18-a 接点形リードリレー 図 3.3.19-永久磁石保持による b 接点リードリレー リードリレーは直流コイル駆動が多いが、一般工場電源の交流電圧駆動が可能である。全波整流回路を 収納するプラグイン形リードリレーは、磁性ヨーク付き電磁コイルでコイル外部に設置したリードスイッ チを駆動し、バイアス磁石との組合せで他接点構成が可能となる。また、動作表示の LED 点灯が特徴であ る(図 3.3.20 参照)。 サージ吸収器 ダイオード 重負荷形リードスイッチ 永久磁石 リードスイッチ N S N 交流電源 S コイル 空心コイル コイル励磁電源 磁性ヨーク 図 3.3.20-交流/直流駆動の構造例 図 3.3.21-自己保持形の構造例 3.3.1.5.5 特殊タイプリードリレー リードリレーには、上記のほかに用途に応じて種々の特殊タイプがある。その内一部代表的なものにつ いて述べる。 a) 自己保持形リードリレー 入力の信号を取り除いても以前の状態を保持することを特徴とするリード リレーである。動作用入力と復帰用入力の 2 種類の入力が必要であるが、メモリー回路や長時間保持回 路などには有効である(図 3.3.21 参照)。 b) 磁気シールド形リードリレー リードリレーの発生する磁界による周囲への影響を防ぐとともに、周 囲の磁界によるリードリレーの特性変動を防ぐために、磁気シールドを施したリードリレーである。多 数のリードリレーを 1 枚の基板に密集して使用する場合、周囲にソレノイドやスピーカなどの磁界発生 源が存在する場合などに有効である(図 3.3.3 参照)。 c) 静電シールド形リードリレー コイル入力と接点出力間で、静電ノイズの影響を少なくするため、リ ードスイッチとコイル間に銅製金属の障壁で仕切りアースに連結した構造である。 d) 高周波形リードリレー 高周波数の信号伝送においては、同軸ケーブルの外部導体を模擬するためリ ードスイッチの両側に銅製金属が 2 端子に連結した構造である。微小信号を制御する回路、高周波伝送 回路などに有効である。代表的な接続を図 3.3.22(出典:サンユー工業)に示す。 注記 メーク接点は、インピーダンス整合(50 Ω/75 Ω)している。 e) 高耐圧形リードリレー 各導体間絶縁耐電圧が DC 10 000 V 以上あるプリント基板用高耐圧形リード リレーの代表的な形状と接続を図 3.3.23(出典:サンユー工業)に示す。 注記 耐電圧分類は、1 kV、5 kV、10 kV、15 kV、20 kV 等である。 102 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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3.3.2 定格と特性

制御機器の基礎知識 リレー編 P1 1 2 P2 図 3.3.22-静電シールド形の接続例 図 3.3.23-高耐圧形の形状と接続例 f) 高絶縁形 接点対アース間の絶縁抵抗が 1013 Ω~1014 Ω 以上ある高絶縁形リードリレーの代表的な形 状と接続を図 3.3.24(出典:サンユー工業)に示す。 注記 接点構成は、1 a~3a 等である。 図 3.3.24-高絶縁形の形状と接続例 3.3.2 定格と特性 リードリレーは、高感度すなわち小駆動電力で動作し、安定した負荷開閉の動作をを行い、小型で外部 雰囲気の影響を受け難いなどの特徴を持っている。このことは特に半導体回路と組合せて用いるのに適し ていると言えるが、それを定格と性能で規定すると以下の通りになる。 3.3.2.1 定格 表3.3.6に、コイル部/接点部の定格を示す。JIS C 4523に規定される項番号を( )内に示す。 表3.3.6-定 格 部 位 項 目 定格値の範囲 コイル部 コイルの定格電圧(5.10) AC:24~230 V、 DC:3.3~110 V 接 点 部 動作電圧(5.2) 動作電圧/電流試験、復帰電圧/電流試験、最大許容電圧/電流試験を 行った時、次のいづれかのクラスを製造業者が指定する。 -クラス1:コイル定格電圧の80~110 % -クラス2:コイル定格電圧の85~110 % 復帰電圧(5.3) 復帰電圧/電流試験の試験時、コイル定格電圧の5 %以上。 絶縁耐圧(5.4) AC:30~1 000 V、DC:30~18 000 V 定格使用電圧(5.5) AC:6~200 V、DC:1~12 000 V 定格通電電流(5.6) 0.1~10.0 A 定格使用電流(5.7) 0.001~5.0 A 周波数帯域(5.8) DC 1 1010~ × Hz リレー動作 周囲温度(5.11) 特に指定の無い限り、-10~+60 ℃ 3.3.2.2 性能 表 3.3.7 に、基本性能の試験方法と規定値を示す。JIS C 4523 に規定される試験方法の項番号を( )内 に示す。 103 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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制御機器の基礎知識 リレー編 表 3.3.7-基本性能の試験方法と規定値 項 目 試験方法 基 本 性 能 動作電圧/電流 動作電圧/電流試験(8.3 a) 動作電圧はコイル定格電圧の 85 %以下 復帰電圧/電流 復帰電圧/電流試験(8.3 b) 復帰電圧コイル定格電圧の 5% 以上 基 本最大許容 最大許容電圧/電流試験 最大許容電圧はコイル定格電圧の 110 %以上で、かつ最 動電圧/電流 (8.3 c) 大許容電流はコイル定格電電流の 110 %以上 作 性動作時間 動作時間試験(8.3 d) 製造業者が規定する動作時間以下 能復帰時間 復帰時間試験(8.3 e) 製造業者が規定する復帰時間以下 バウンス時間 バウンス時間試験(8.3 f) 3ms 以下 接触抵抗 接触抵抗試験(8.4) 500 mΩ 以下 絶縁抵抗 絶縁抵抗試験(8.5) 接点間:5 MΩ/電気回路一括対地間:10 MΩ 以上 電耐電圧 耐電圧試験(8.6) 50 Hz または 60 Hz の正弦波に近い電圧で 1 分間加え、 気 これに耐える。漏れ電流:3 mA 以下 的 接雷インパルス耐電圧 雷インパルス耐電圧試験 標準波形(1.2/50 µs)の試験電圧を正負極性別に各 3回 性 (8.7) 印加し、絶縁破壊やフラッシュオーバーがないこと。 能コイル温度上昇 コイル温度上昇試験(8.8) コイルボビン等の材料は、耐熱クラス(JIS C 4003 参照) を超えないこと。 接点開閉容量 接点容量試験(8.18) 閉路容量の通電及び開路容量の遮断後、接点は、粘着等 の支障があってはならない。 静電容量 静電容量の測定(8.21) 使用者側と製造業者とが合意した管理値を満足する。 高周波特性 高周波特性の測定(8.22) 周波数帯域は、挿入損失が電力比で、-3dB となる最大周 波数値より低い周波数を用いる。下記項目の管理値を満 足する。 1)アイソレーション 2)インサーションロス 3)リターンロスの 3 項目 耐振動性 振動試験(8.9) 誤動作振動性:共振による有害な影響がなく、接点の チャタリングが 10 µs 以下であること。 耐久振動性:各部に損傷がなく、動作電圧、復帰電圧、 機 接触抵抗、耐電圧の規定値を満足すること。 械耐衝撃性 衝撃試験(8.10) 誤動作衝撃性:正弦半波パルス衝撃波による有害な影 的 性 響がなく、接点のチャタリングが 10 µs 以下であること。 能 耐久衝撃性:各部に損傷がなく、動作電圧、復帰電圧、 接触抵抗、耐電圧の規定値を満足すること。 端子強度 端子試験(8.11) 端子強度の試験後、基本動作性能、接触抵抗、耐電圧の 規定値を満足し、外観又は気密性に異常がないこと。 電気的寿命 電気的耐久性試験(8.17) 規定の定格負荷動作頻度で動作し、耐久回数経過後、以 下の判定基準を満足すること。 a) 動作電圧:定格の 85 %以下 b) 復帰電圧:定格の 5 %以上 c) 接触抵抗:10 Ω以上 寿 命 d) 絶縁抵抗:2 MΩ以上 特 e) 耐電圧:定格値(漏れ電流:3 mA) 性 機械的寿命 機械的耐久性試験(8.15) 無負荷動作頻度で動作し、耐久回数経過後、動作電圧は 定格の 85 %以下、復帰電圧は定格の 5 %以上。 接触信頼性 接触信頼性試験 (8.16) 最小電圧及び最小電流の負荷動作頻度で動作し、規定回 数経過後、接点の粘着などの各部の支障がないこと。故 障率λは 4.6×10-9を満足すること。 104 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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3.3.3 選び方

制御機器の基礎知識 リレー編 表 3.3.7-基本性能の試験方法と規定値(続き) 項 目 試験方法 基 本 性 能 耐候性 耐寒動作試験、耐寒貯蔵試験、 耐寒動作、耐寒貯蔵、耐熱動作、耐熱貯蔵、温湿度サイ 耐熱動作試験、耐熱貯蔵試験、 クルで、各部に損傷がなく、接点動作に支障がない。 サイクル試験による(8.12) また、耐寒動作では復帰電圧がコイル定格電圧の 5 %以 上、耐熱動作では動作電圧がコイル定格電圧の 95 %以 下、耐寒貯蔵及び耐熱貯蔵では、基本動作特性、接触抵 抗、絶縁抵抗及び耐電圧の規定値を満たしている。 耐塩水噴霧 塩水噴霧試験(8.13) 試験後、各部に損傷がなく、基本動作特性、接触抵抗、 環 絶縁抵抗及び耐電圧の規定値を満足すること。 境 性耐湿性 耐湿性試験(8.14) 試験後、各部に損傷がなく、基本動作特性、接触抵抗、 絶縁抵抗及び耐電圧の規定値を満足すること。 耐火性/耐熱性 グローワイヤ試験 規定するグローワイヤ温度の限界値を満足すること。 ボールプレッシャー試験 規定する温度に対して、ケース等プラスチック材料の機 (8.20) 械的強度が保たれること。 気密性 気密性試験(8.19) ガラス管割れに伴う接点内部ガスの漏れがなく、規定の リーク率又は遮断時間以内にあること。 はんだ付け性 はんだ付け性試験 はんだに浸漬した端子表面の重要な部位の95%以上は欠 (8.11.2) 点のない連続したはんだで覆われていること。 実 装 はんだ耐熱性 はんだ耐熱性試験 試験後、各部に損傷がなく、基本動作性能、接触抵抗、 性 (8.11.3) 絶縁抵抗及び耐電圧、気密性及び構造一般の規定値を 満たしていること。 3.3.3 選び方 リードリレーの機種選定方法を概説するため、まず全体的なリードリレーと他リレーとの特性対比を表 3.3.8 に示し、メカニカルリレー及び無接点リレーとの特性比較を行う。次に、適用事例を述べ、各適用分 野の要求仕様とリードリレーの仕様詳細を紹介する。 表 3.3.8-リードリレーと他リレーとの対比 リードリレー メカニカルリレー メカニカルリレー フォト 項目 重負荷形 SSR リードスイッチ (ヒンジ形) (プランジャ形) MOS 形 リードスイッチ 外形寸法 ◎ △ ◎ △ ○ ◎ 接点極数 ○ ◎ ○ ◎ △ △ 消費電力 ○ △ ○ △ ◎ ◎ 応答速度 ○ △ △ △ ◎ ○ 接触信頼性 ○ ◎ △ △ ◎ ◎ バウンス ○ ○ ○ ◎ △ ○ 絶縁性 ○ ○ ○ ◎ △ ○ 耐久性 ○ ○ ○ △ ◎ ◎ 過渡現象 ◎ ◎ ◎ ◎ △ △ 動作音 ○ ○ △ △ ◎ ◎ 耐振動・衝撃 △ ○ △ △ ◎ ◎ 外部環境性 ○ ○ △ △ ○ ◎ 接触抵抗 ◎ ○ ◎ ◎ △ △ 漏れ電流 ◎ ◎ ◎ ◎ △ ○ 開閉容量 ○ ◎ ○ ◎ ◎ △ 105 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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制御機器の基礎知識 リレー編 3.3.3.1 リードリレーとメカニカルリレーとの対比(出典:リードスイッチの知識) リードリレーがリードスイッチという特殊な接点を有するもので、メカニカルリレーと区別して、互い を比較した特性について述べる。 a) 耐外部環境性 一般的に、接触部とコイル部が外気に触れているメカニカルリレーは、外部環境に左右されやすく、 接点部の酸化や外部からのホコリ、ゴミによる接点障害が起こり易い。この点から見ると、接点部はガ ラス管内に不活性ガス(窒素ガス)と共に封入されているので、接点動作は外気より完全に遮断された ガラス管内の不活性ガス中で動作されると共に、コイル部も樹脂などで完全に外気から遮断されている ので、高い接触信頼性並びに高寿命が得られる。 b) 構造 一般的なメカニカルリレーの機構部分に対し、リードリレーは二つのリード片によって構成される単 純な構造であるため、機械的寿命はメカニカルリレーよりはるかに長く数億回の開閉動作に耐えられる。 c) 高速動作 接点可動部の質量が軽く、固有振動数が小さく、動作間隙が励磁コイルの中央にありコイルのインダ クタンスが小さいので、動作・復帰時間が非常に速く、高速動作が得られる。一般にメカニカルリレー が数 ms から 10 ms 程度であるが、リードリレーの場合には、歪み率 20 ps 以下で高速デジタルパルスの 送信が可能、0.5 ms 以下、大型のものでも 3 ms 以下で高速しゃ断器のトリップ指令が可能である。 d) 消費電力 リードリレーのコイル駆動に要する消費電力はメカニカルリレーに比較して小さい。コイルのインダ クタンスが小さく駆動電力が小さくて済むので、励磁状態における蓄積磁気エネルギーが少ない。定格 電圧 5 V DC、コイル直流抵抗 500 Ω程度のものもあるので、IC、LSI 等半導体によるダイレクトドライ ブが可能である。 e) 形状・重量 リードリレーに組み込む接点数が少ないときには小型・軽量になる。また、磁気シールド処理を施す ことにより実装占有面積はさらに小さくなり、集積密度は高くなる。メカニカルリレーの場合には、構 造上極端に小型にすることは難しい。 f) 特殊構造 高周波回路に適している同軸構造がリードリレーでは容易にでき、特性上も優れている。この同軸構 造にはラジアル形を用いるのが一般的である。 g) 微小負荷 リードリレーは数 mV、数 µA 程度の微小負荷の制御が可能である。メカニカルリレーにおいては、 接点メッキの種類、および構造上から考えて微小負荷の制御にはあまり適していないといえる。 以上、メカニカルリレーとリードリレーを比較してリードリレーの優れている部分のみを述べてきたが、 全ての面でリードリレーが優れているということではない。メカニカルリレーのリードリレーに勝る部分 は、①高容量制御可能、②1 入力に対して多接点搭載可能、③コイル駆動が交流でも可能の 3 点である。 これらを改良すべく、リードスイッチの弱点とされてきた接点接触圧とスイッチング速度の問題を①接 点のツイン化②可動リードにヒンジと戻しバネを設けること③全波整流回路内蔵の駆動コイルと磁性ヨー クにより多接点化が改良されている重負荷形リードスイッチを内蔵する PCB 形及びプラグイン形リレー は、直流高容量制御にも耐えることで、車両用や電力用としても幅広く使用されている。(出典:継電器 のはなし) 106 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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制御機器の基礎知識 リレー編 3.3.3.2 リードリレーと半導体リレーとの対比(出典:リードスイッチの知識) リードリレーと半導体リレーは、スイッチングという点では同じ働きをするが、性能面では著しく異な っている。ここでは、半導体(特に、トランジスタ)の長所とリードリレーの長所にわけて述べることに する。 a) 半導体の長所 1) 動作速度 半導体の動作速度は ON/OFF 1 周期あたり数 µs 以下で使用することが可能で、バウンス もなく安定性能が得られる。 2) 耐振動性 半導体は機構部分がないことから機械的振動の影響を受けないという利点がある。 3) 寿命 半導体の場合、動作回数よりも使用時間で寿命を表示しているが、機構部分をもたないので 半永久的寿命が得られるといわれている。 4) 価格・形状 価格と形状をリードリレーと比較すると半導体単価では安価で小型であるといえる。 ただし半導体を動作させるためには、その他に多くの部品が必要であり、全体的には必ずしも半導 体が小型で安価であるとはいいきれない。 b) リードリレーの長所 1) 絶縁性 リードリレーの接点間抵抗は ON 時 0.2 Ω以下、OFF 時 1010 Ω程度である。従って、ON 時では短絡と、OFF 時では無限大と考えられるのでスイッチとしては最も理想的である。一方、半 導体では導通時及びしゃ断時においても電力が消費されているため完全な絶縁は得られない。高絶 縁性が要求される用途には、高耐圧形リードスイッチを採用し、1013 Ω~1014 Ω程度の絶縁や 1 000 VDC 回路以上の開閉が可能である。 2) 回路の絶縁性 リードリレーは入力と出力が電気的に完全に絶縁されているが、半導体はアース端 子が共通である。従って、入力回路と出力回路が全く別回路の場合にはリードリレーが便利である。 3) 温度特性 リードリレーの使用温度範囲は一般的に、-30 ℃~+100 ℃程度であるが、半導体の使 用温度は-10 ℃~+60 ℃程度で、それ以上の高温下で使用すると劣化の原因となる。 4) 立上がり・立下がり特性 リードリレーの場合は、出力部が機械的動作をするので、急峻な立上が り、立下がりが期待できるが、半導体の場合はなだらかである。半導体で急峻な立上がり、立下が り特性を得るためには付加回路が必要となる。 5) 耐外部ノイズ性 リードリレーは外部からのノイズ(サージ及び誘導などの過負荷)に対して強く、 破壊したり誤動作したりすることは少ない。 6) 高電圧スイッチング リードリレーの接点間耐電圧には 1 kV 以上のものが数多くあり、高電圧スイ ッチングが容易にできるが、半導体の場合、高電圧型のものは品種が少ない。 7) 自己保持回路 リードリレーには自己保持型リレーというものがあり、単一電源でブレーク接点、 ラッチング機能を得ることが容易にできる。半導体でこの機能を得るためには、複雑な回路構成が 必要となる。 8) 出力数 リードリレーは一つのコイルで 1~6 個の接点を制御することができるので、1 入力で多出 力を得られるが、半導体の場合には 1 入力に対し 1 出力である。 以上、メカニカルリレーは幅広く総合的なソリューションを提供するが、パッケージサイズ、動作速度、 機械的寿命などに制限がある。リードリレーは、パッケージサイズ、実装密度及び動作速度が改善される が、突入電流が存在する環境では破損しやすくなる。半導体リレーは、メカニカルリレーに対してよい代 替リレーとなり得るが、パス抵抗が高く接点間の絶縁が未完全である。従って、効率の良いスイッチング 機能を得るためには、これらのリレーの特徴を十分理解する必要がある。 107 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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制御機器の基礎知識 リレー編 3.3.3.3 適用事例 代表的な適用分野は図 3.3.25 に示すように、一般住宅、ビル・店舗、工場・病院から社会インフラ及び 航空宇宙分野に設置される多種多様な電気機器装置(家電製品、事務機器、計測器、半導体装置、医療機 器、情報通信機器、電力設備、輸送機器等)と適用範囲は非常に広い。 20 GHz MHz 50/60 Hz 信号伝達の周波数帯域Up 30A mA μA 制御回路の開閉電流Up 18,000 VDC max. 5,000VDC 250VDC 高電圧回路の切替 1PΩ 1TΩ 1GΩ 高絶縁回路の切替 航空宇宙分野 高 継電器盤のDownsizing要求に対応した 社会インフラ分野 New製品が市場投入されている。 工場・病院分野 • 更なる小型高密度化 • 自動はんだ付け対応(Package) • 基板実装 110V dc コイル対応 信 頼 ビル・店舗分野 性 住宅分野 小 市場 大 図 3.3.25-適用市場 適用分野と適用事例を選別して、表 3.3.9~表 3.3.16 に各分野の要求仕様、適用装置イメージ、関連規格 例、適用機種例を紹介し、該当機種の実装面積、コイル仕様、接点性能及び耐外部環境性を関連付けして いる。選定基準は、この項目以外に、実績、価格、品質、特殊機能など各種の項目が考えられ、使用者及 び装置設計者各々の用途にマッチした機種の選定は、製造業者と協議して最終的に決定する必要がある。 108 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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制御機器の基礎知識 リレー編 3.3.3.3.1 家電・事務・医療機器の事例 トナーを吸着させる複写機など事務機器の高電圧回路から電子レンジなど家電製品類に適用されている 事例を紹介する(表 3.3.9 参照)。 表 3.3.9-家電・事務・医療機器への適用事例 家電・事務・医療機器 要求仕様 ■高電圧回路の切替(省スペース化)  家電・事務製品: 電子レンジ、コピー機等  試験装置:PLC の絶縁 ラジアル形 ・耐電圧試験、GO/NG 信号、 HI ポット試験等 電子レンジ 高  医療機器:CT スキャン、 複写機 電 X ~ 圧 線装置、心電図等 電 適用装置イメージ 源 ネットワーク端末 耐電圧試験機 JIS C 9355-2-25:家庭用及びこれに類する電気機器の安全性第 2-25 部:電子レンジ関連規格代表例 及び複合形電子レンジの個別要求規格 ※ 適用代表機種事例 出典:サンユー工業 ラジアル形※ 実装面積例 28 mm(W)×12.2 mm(L)×8.5 mm(H)※ 5、12、24 VDC コイル仕様例 入出力間耐電圧:2 500 VDC 接点構成例 1a、2a 形 電気的寿命:1 億回 with 1V 10mA 耐電圧:2 500 VDC 絶縁抵抗:1013 Ω以上 接点性能例 最大開閉電圧:1 000 V max(抵抗負荷) 最大開閉電流:1.0 A max(抵抗負荷) 動作時間:1.0 ms(バウンス時間含む) 耐振動性:20G(196m/s2: 10 Hz~2,000 Hz) 耐外部環境性 耐衝撃性:50G(490m/s2) 使用温度範囲:-20 ℃~+80 ℃ 109 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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制御機器の基礎知識 リレー編 3.3.3.3.2 自動計測器の事例 スイッチングモジュール、プログラマブル抵抗モジュール、増幅器・減衰器モジュール、電源・バッテ リシミュレーションモジュール、フォルトインサーションモジュール、RF マイクロウェーブモジュール等 自動計測システムが要求するリードリレーの適用事例を紹介する(表 3.3.10 参照)。 表 3.3.10-通信計測器への適用事例 通信計測器 計測時間、データ収集時間の短縮、計測システムのコスト削減、計測システムの省スペー ス化及び製品の信頼性向上。 要求仕様例 電磁式リレーを Carry out に使用した場合、寿命は 100 万回程度で、1 年も持たない。 高信頼性、長寿命 マトリックススイッチモジュール 計測モジュール 特性インピーダンス 50 Ω 電圧測定用マルチメータ 接点性能:デジタルパルスの 高速伝送、skew rates less than 20 ps 波形観察用オシロスコープ RF 信号の伝送:DC~20 GHz ファンクションジェネレータ 、静電容量≦0.5pF、 任意信号発生器ジュール 適用装置イメージ 接点耐電圧:200 V プログラマブル抵抗電源モジュール モジュール 電源1 センサ入力1 電源2 センサ入力2GND GND 検査ターゲット基板 出典:アンドールシステムサポート JEITA IT-1004:産業用情報処理・制御機器設置環境基準 関連規格代表例 JIS C 1010-1: 計測、制御及び試験所使用電気機器の安全要求事項 JIS C 6950-1:情報技術機器-第 1 部:一般要求事項 適用代表機種事例 Pickering Electronics 社製リードリレーを使用 実装面積例 コイル仕様例 入出力間耐電圧: 接点構成例 電気的寿命: 静電容量: 絶縁抵抗: 接点性能例 RF 特性: 最大開閉電圧: 最大開閉電流: 動作時間: 耐振動性: 耐衝撃性: 耐外部環境性 使用温度範囲: 保護構造: はんだ耐熱性: 110 Copyright 2018 NECA All rights reserved.
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制御機器の基礎知識 リレー編 3.3.3.3.3 有線・無線通信機器の事例 有線・無線通信機器が要求する仕様に対応するリードリレーの事例を紹介する(表 3.3.11 参照)。 表 3.3.11-有線・無線通信機器への適用事例 有線・無線通信機器 ■正確な情報伝達 要求仕様例 ■高周波送受信行列の開閉 ■耐使用環境(塵埃、高温・高湿等屋外使用)  携帯無線通信機 3 MHz~30 MHz  有線通信:TV、CATV  医療機器: 適用装置イメージ 出典:Standex Meder Electronics 関連規格代表例 JIS C 6950-1:情報技術機器-第 1 部:一般要求事項 JIS T 0601-1:医用電気器具-第 1 部:安全に関する一般的要求事項 適用代表機種事例 ※ 出典:Standex Meder Electronics PCB 形※ 実装面積例 3.3mm(W)×8.6mm(L)×3.5mm(H)※ 5 VDC コイル仕様例 入出力間耐電圧:1,500 VDC 接点構成例 1a、1b インサーションロス (@ -3dB):7GHz 耐電圧:210 VDC 絶縁抵抗:1010Ωat 100 VDC 接点容量:10W 接点性能例 最大開閉電圧:170 V 最大開閉電流:0.5 A 最大通電電流:1.0 A 動作時間:0.6 ms(バウンス時間含む) 耐振動性:20 G(196m/s2: 10 Hz~2 000 Hz) 耐外部環境性 耐衝撃性:50 G(490m/s2)、11 ms half sine pulse 使用温度範囲:-40 ℃~+125 ℃ 111 Copyright 2018 NECA All rights reserved.