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センサ編
検出用スイッチ(センサ)の仕組みや選び方を説明した制御機器の基礎知識【センサ編】。
センサの基本的内容を記載した「センサとは」及び近接スイッチの仕組みや選び方を解説した「近接スイッチ」があり、本章は「センサとは」です。他の章やセンサ(検出用スイッチ)のカタログは検出用スイッチ特集 https://jp.cluez.biz/feature/page/104/ にてご確認ください。
※規格に関しては、必ず現行規格のご確認をお願いいたします。
※NECA Webサイトにも、センサ編を掲載しています。https://www.neca.or.jp/standard/howto/sensor/
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2020年8月改正版
このカタログについて
ドキュメント名 | 制御機器の基礎知識 (1) センサとは |
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センサ 編
センサとは
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制御機器の基礎知識 【センサ】
センサとは
目次
1 センサとは .................................................................................... 2
2 FA センサの歴史 ............................................................................... 2
3 センサの上手な使い方 .......................................................................... 4
3.1 保護等級(IP コード) ....................................................................... 4
3.2 ノイズ対策 ................................................................................. 5
3.3 出力 ....................................................................................... 9
3.4 センサと他の機器との接続 .................................................................. 12
3.5 故障原因とその対策 ........................................................................ 15
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センサとは
1 センサとは
本書では工場における生産工程の自動化を図るシステム(FA:Factory Automation)に使用するセンサを対象と
している。
自動制御装置は基本的に、目鼻にあたる検出部、頭脳にあたる制御部、そして手足にあたる操作部の 3 ブロッ
クで構成されている。センサは、この検出部を構成する重要な要素となっている。代表的なものとして、マイク
ロスイッチなどの接触動作形と、近接スイッチなどの非接触動作形がある。情報通信技術の進展を背景として産
業の国際化が進んでおり、マイクロスイッチ、近接スイッチといった代表的なセンサについては国際規格である
IEC 規格で規格化され、国内標準である JIS 規格もこれに準拠して規格化されている。センサを動作させるには、
何らかの駆動エネルギーの媒体が必要であり、たとえばマイクロスイッチでは押ボタン部分を押す機械的なエネ
ルギーがそれにあたる。このような媒体エネルギーには表 1 のような種類があり、各種のセンサに応用されてい
る。
表1 センサに応用されるエネルギーの種類
エネルギーの種類 検出の媒体 センサの具体例 検出の対象物 検出方式
誘導形近接スイッチ 金属導体
磁界 非接触
磁気形近接スイッチ 永久磁石
電磁エネルギー 静電容量形近接スイッチ 絶縁物 非接触
電界
静電容量式レベルスイッチ 高誘電率物体 接触
電波 (レーダ) 電波反射物体 非接触
光電形近接スイッチ 透明・不透明物体
フォトインタラプタ 不透明物体
変位センサ 透明・不透明物体
光エネルギー 光 非接触
測長センサ 透明・不透明物体
カラーセンサ 物体表面色
ロータリエンコーダ スケール
エアスイッチ 物質一般
流体 電磁式レベルスイッチ 液体 接触
力学エネルギー 圧力センサ 気体・液体
(機械的) 音 超音波形近接スイッチ 固体・液体 非接触
位置 マイクロスイッチ
カム、アクチュエータ 接触
(変位) リミットスイッチ
X 線 (レントゲン) X 線の不透過物体
核エネルギー 非接触
放射線 放射線のスイッチ 放射線の不透過物体
化学エネルギー 化学反応 (ガス検知器) 可燃性ガスなど 非接触
熱エネルギー 熱(温度) 温度スイッチ 発吸熱体、温度差 非接触
2 FA センサの歴史
わが国で最初にマイクロスイッチを開発したのは 1940 年頃といわれているが、生産、需要の拡大が始まったの
は戦後の工業復興を経てオートメーション時代に入る 1940 年代半ばから 1950 年代にかけてである。工業におけ
る自動化が急速に進み、その内容も複雑高度化するにつれ、より高速で高頻度に耐えるセンサが要求され、トラ
ンジスタの発明に端を発した電子技術の発達と共に生まれたのが、非接触で検出できる近接スイッチであった。
1960 年代に生まれた誘導形近接スイッチは、初の非接触センサとして革新的なものであった。1960 年代中頃に
入ると検出対象が限定されず動作距離も長い光電形近接スイッチが現れた。光電形近接スイッチは 1970 年代に入
ってから、光源が短寿命のランプから LED(発光ダイオード)になり需要を拡大していくこととなった。1980
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年代になるとマイクロメートルオーダの分解能で高精度の検出をおこなう変位センサ、測長センサ、光のもつ波
長特性を応用したカラーセンサなどの FA インテリジェントセンサが開発され、検査、計測のインライン化を可
能とし、この分野の生産性向上に貢献している。1990 年以降は、センサへの通信機能が付加されるとともに、モ
ノの存在検出だけでは無く、形状検出、人の検知といった新たな機能により、安全や予知保全などの付加価値を
提供できるようになった。更には、工場における生産工程の多様化やセンサを構成する電子部品の小形化などに
より、それぞれのセンサも多種多様な発展を遂げている。
1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020年
マ 一般形基本スイッチ
イ 一般基本形
ク 小形・ 超小形基本スイッチ
ロ 小形・ 超小形ス
イ ・
ヨ コ形封入スイッチ タテ形封入スイッチ
封入形
ッ リ
防爆形
チ ミ 防爆形
ッ 無接点形
ト 無接点形
・
高周波発振形 オールメタル形
誘 高周波発振形
差動トランス形
導
形 誘導ブリッジ形 誘導ブリッジ形
静 静電容量形レベルスイッチ/静電容量形近接スイッチ
電
容 電極分離形 静電容量形
量
形
近 リードスイ ッチ形
接 磁
ス 気 磁気素子形 磁気形
イ 形
ッ
チ
超 対向形 対向形
音
波 反射形 反射形
形
ラ ンプ式(透過形・反射形) LED式
マークセンサ
発光ダイ オード式 半導体レーザー式 青色LED式 白色LED式
透過形・ 反射形
測距形
光 画像処理 測距形
電
形 光ファ イバ式 光ファ イバ式
TOF式(Time of flight)
TOF式
オンオフ出力形
出 オンオフ出力
力 アナログ出力形
方 アナログ出力
式 IO-L ink式
デジタル出力
測長センサ
イ 測長センサ
ン 変位センサ
テ 変位センサ
セ リ カ ラ ーセンサ
ン Fジ カ ラ ーセンサ
サ A
ェ ラ イ トカーテン
ン ラ イ トカーテン
ト レーザースキャナ
レーザースキャナ
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3 センサの上手な使い方
センサの性能を十分に発揮させるためには、その特性を考慮した使い方が必要である。ここではセンサに共通
する保護等級(IP コード)、ノイズ対策、出力、他の機器との接続、端子及びリード線色、故障原因とその対策に
ついて述べる。
3.1 保護等級(IP コード)
3.1.1 はじめに
センサには、さまざまな環境で使用され、それらの環境下で正常に動作するよう保護構造を備えているものが
ある。IP コードは、人体及び固形異物に対する保護と水に対する保護の程度により表され、これを規定した規格
には、IEC 60529(エンクロージャによる保護等級)、JIS C 0920(電気機械器具の外郭による保護等級(IP コード))
がある。この項では IP コードの一般的概要を述ベる。
3.1.2 保護方式の内容
IEC 60529 の IP(International Protection)コードの要素とその意味を表 2 に示す
表 2 IP コードの要素とその意味(IEC 60529 より)
要素 数字又は文字 電気機器に対する保護内容 人に対する保護内容
コード文字 IP - -
第一特性数字 外来固形物の侵入 危険な個所への接近
0 (無保護) (無保護)
1 直径≧50 mm こぶし(拳)による
2 直径≧12.5 mm 指による
3 直径≧2.5 mm 工具による
4 直径≧1.0 mm 針金による
5 防じん形 針金による
6 耐じん形 針金による
第二特性数字 有害な影響を伴う水の侵入 -
0 (無保護)
1 鉛直落下
2 落下(15度偏向)
3 散水(Splaying)
4 飛まつ(Splashing)
5 噴流(Jetting)
6 暴噴流
7 一時的潜水
8 継続的潜水
9 高圧噴流
付加文字 - 危険な個所への接近
(オプション) A こぶし(拳)による
B 指による
C 工具による
D 針金による
補助文字 補助表示 -
(オプション) H 高圧機器
M 水の試験中動作させる
S 水の試験中停止させる
W 気象条件
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3.1.3 IPコードの表示方法
IPコードの表示方法を下記に示す。
IP67C
6 第一特性数字-危険な箇所への接近及び外来固形物に対する保護等級を示す。
7 第二特性数字-水の浸入に対する保護等級を示す。
C 付加文字-危険な箇所への接近に対するIPコードを示す。付加文字・補助文字は、省略可。
3.1.4 IPコードの選び方
センサのIPコードを選ぶ場合、実際に使用される環境条件を十分検討し、下記に述べる点に注意して選択するこ
とが必要である。
(1) センサにふりかかるじんあい、水などの量はどの程度か、直接的または間接的にふりかかるか、圧力をもって
ふりかかるかなど。
(2) じんあいが多量に存在する場所では、しゅう動部は露出していないか、動作に悪影響を及ぼさないか。
(3) 水がかかる場合は、サビの発生によって動作に悪影響を及ぼさないか。
3.2 ノイズ対策
3.2.1 はじめに
電子機器は処理速度の高速化、低消費電流化およびデジタル機器から発生する高周波ノイズの増大などノイズ
環境が悪化していく中で高い信頼性をあげるためノイズに関する議論が盛んになっている。1996年1月、欧州では
電気・電子機器の電波障害を規制するためのEMC指令(Electromagnetic Compatibility;電磁的両立性)が発効され、
CEマーク表示が義務づけられることになった。IECのEMC規格づくりも欧州の動きを反映して活発に進められ、
多くの国際規格が制定されることになり、これらの規格と整合性を取りつつJIS化も行われている。
これら規格は、製品ごとに制定されており、近接スイッチでは、IEC60947-5-2(JIS C 8201-5-2)及びIEC60947-5-7
の中で要求事項が規定されている。
個々の電子機器に対する要求事項は、規格を参照することとし、ここではノイズに対する一般的知識を述べる。
3.2.2 ノイズ発生源とその経路
(1) ノイズ発生源
ノイズとは「信号の伝達を妨害または悪影響を及ぼすような電気的変化」として定義できる。しかし、ここで
は誘導負荷をリミットスイッチなどで開閉した時に発生するサージについても含めて考えることにする。
ノイズにはスイッチング電源や自動車の点火プラグなどから発生する人工ノイズと、雷や大気の電離作用など
による自然ノイズとに分ける分類方法や、物理的な発生要因別に分ける方法など、様々な分類をされているが、
ここでは表 3 に示すように、ノイズ発生源が機器の内部か、また外部からかに分けて発生原因及び発生場所の概
要を示してある。
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表 3 ノイズの原因と発生場所
種類 発生原因 発生場所
熱雑音 電子の不規則な熱運動により発生する 抵抗、トランジスタ
ハム雑音 電源トランスの漏れ磁束、平滑回路の機能不十分 電源トランス、ヒータ回路、
内 により直流回路へ交流分が混入 パイロットランプ
部 ショット、 電子放出やキャリアの時間的不均一によるもので トランジスタ、電子管
雑 フリッカ雑音 誘導率の変化、印加電圧によって生じる
音 誘導雑音 回路、配線又は部品相互間の静電誘導、磁気誘導、 プリント基板、配線間
電磁誘導による
クリック雑音 回路の接触不良によって生じる 端子端、開閉器、接点
外 放電 放電を利用した装置、高圧の送電線および自然界 自動車のイグニッション、溶接機、放電加工機、
部 の放電現象による 蛍光灯、雷放電、送電線
雑
音 放射電波 高周波の電磁波が直接機器や線路に侵入する 無線機、レーダ、パソコン、IH 調理器、携帯電話
誘導雑音 大電力の送電線と接近している低レベルの信号線 配電盤、送電線、電力線
に影響を与える
電子的 SCR やパワートランジスタの開閉時のように、電 スイッチング電源、インバータモータ、
スイッチング 波の急激な変化により高周波のノイズが発する インバータ調光器、SCR、トライアック
接点開閉 リレー、ソレノイドなどの開閉時のサージや、イ リレー、ソレノイド、モータ、白熱ランプ、
過渡時 ンラッシュカレントなどによる温度的雑音 電磁弁
配線、設置、 接地抵抗や電線のインピーダンスにより電位差が 接地、プリント線導電部、電線
抵抗 発生しノイズとなる
(2) ノイズの侵入経路
表3に示すノイズの中で内部雑音は回路設計や部品選定、取付けなど製品の開発段階で十分注意すれば防げる問
題が多い。一般に応用上問題となるのは外部雑音に起因する場合が多い。このような外部雑音は図1に示すような
経路をたどって電子機器に侵入する。
ノイズ問題が発生した場合には、ノイズ源を発見することと、それがどのような経路をたどって侵入したかを
見つけだすことが重要であり、そのことが有効な対策へと結びつく。
図 1 外部雑音の電子機器への侵入経路
3.2.3 雑音の形態
信号に対しノイズが印加される状態には次のニつの形態がある。
(1) ノーマルモードノイズ(正相雑音)
図2に示すように信号電圧とノイズが直列に加わる形で印加される場合をノーマルモードノイズと呼ぶ。
(2) コモンモードノイズ
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図3に示すように、2本の信号線とアースとの間にそれぞれ共通に加わる場合をコモンモードノイズと呼ぶ。コ
モンモードノイズは、それぞれの信号線とアースとのインピーダンスや負荷のインピーダンスに不平衡が生じて
いる場合に発生する。
負荷
図2 ノーマルモードノイズ
負荷
図3 コモンモードノイズ
3.2.4 ノイズ対策について
センサは、回路技術、ノイズ解析、ノイズシミュレーション技術の進歩により耐ノイズ性は強くなっているが、
ノイズの発生源及びその伝播の形態はすでに述べたように複雑であり、使用場所によって異なるため、実際の機
器において確認し、最適な対策を行う必要がある。
次にノイズ対策として一般的な方法を説明するが、ノイズ対策はSuppression(抑制)、Shield(遮蔽)、Separate
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(分離)が基本である。
(1) 抑制
電磁開閉器などの誘導性負荷の場合、ダイオード、バリスタ、CR などのサージキラーを付けることにより、ノイ
ズの発生を少なくすることができる。
a) ダイオードによる保護
b) CRによる保護
c) バリスタによる保護
図4 誘導性負荷のノイズ対策
(2) 遮蔽
信号が微弱の場合、特に信号線の配線について注意する必要があるが、シールド線、ツイストペア線を使用す
ることが望ましい。また、直流電源の場合は0(ゼロ)Vラインの接地、交流電源の場合ラインフィルタの使用が
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効果的である。
(3) 分離
ノイズを発生するモータ、電磁開閉器、ソレノイドなどから離して設置し、配線も分離し別配管、別ダクトと
することが望ましい。
(4) その他
機器の小形・軽量化に加えエネルギー変換効率を上げるため、電源ではスイッチングレギュレータ、モータで
はインバータモータの使用が増大し、これらが発生させる高周波ノイズによりセンサが誤動作する場合があるが、
スイッチングレギュレータやインバータモータのFG(Frame Ground)を接地することにより解決する場合が多い。
また、携帯電話やトランシーバをはじめとした携帯通信機器も急速に普及しており、心臓ペースメーカや医療
機器への影響も懸念されているがセンサも例外ではなく影響を受けて正常に動作しない場合がある。このような
機器をセンサおよびその配線付近に近づけないような注意も必要である。
3.3 出力
3.3.1 はじめに
センサはその用途に応じて様々な出力を備えている。ここでは、各々の出力の特徴について述べる。
3.3.2 接点出力式
マイクロスイッチ、リミットスイッチやリレーの接点を出力開閉素子とするもので、電磁開閉器、小形モータ、
ソレノイドなどと接続することを主目的とし、数Aの電流が開閉できる。制御機器と接続する場合はバウンス時間、
最小使用(=負荷)電流に注意が必要である。
図5 接点出力式
3.3.3 フォトカプラ出力式
検出回路と電気的に絶縁されており、接点出力式と同様に絶縁形として使用でき、接点出力式に比べて高速、
高頻度で開閉が可能である。
図6 フォトカプラ出力式
3.3.4 直流3線式
(1) 電圧出力形
図7に示す出力回路を持ち、検出時に負荷に対し電圧信号を供給する。電圧出力形は電子カウンタ、ソリッドス
テートリレーなどの制御機器と接続することを主目的に作られたものである。
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負荷
負荷 負荷
図7 電圧出力形
(2) 電流出力形
オープン・コレクタ出力形とも言う。図8に示すように、出力トランジスタ動作時、電流を吸い込むNPN形(カ
レント・シンク)及び電流を吐き出すPNP形(カレント・ソース)がある。出力トランジスタには小容量のパワー
トランジスタが使用されており、50~200 mA程度の電流を開閉できるようになっており、電磁リレー、電磁弁、
直流ソレノイド、表示ランプなどの負荷を直接駆動することが可能である。
負荷
負荷
図8 電流出力形
3.3.5 直流2線式
この方式のセンサはリード線が2本であるため機械的リミットスイッチと同じように取扱うことができ、配線も
容易に行うことができる半面、次のようなことに注意する必要がある。図9に出力回路及び電流の流れを示す。
(1) センサオフ時でも、センサの検出回路への電流供給が必要なので、負荷には、わずかな電流が流れる。この電
流をオフ状態(=漏れ)電流という。オフ状態電流のために負荷両端には「オフ状態電流×負荷の抵抗値」の電
圧が生じるため、高インピーダンス負荷を使用すると復帰不良を生じることがある。
(2) センサオン時にも検出回路に電圧を供給する必要があるので、数Vの電圧降下が発生する。このため電源電圧
は、「電圧降下分+負荷の動作電圧」の電圧値が必要となる。一般にはオフ状態電流1 mA以下、電圧降下3~4 V
程度である。負荷としては、プログラマブルコントローラ(以下PLC)、リレー、ソレノイド、ランプなどが適し
ている。また、無極性直流2線式は図10に示すようにダイオードブリッジを有しており、有極性直流2線式に対し
て、極性に注意することなく取扱うことができる。ただし、有極性直流2線式に対してさらに「電圧降下」が大き
くなるため、この点に注意する必要がある。
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負荷
a)オフ時
負荷
b)オン時
図9 直流2線式の電流の流れ
負荷
図10 無極性直流2線式
3.3.6 交流2線式
AC100 V、AC200 Vの商用電源に接続して使用できるもので、50 mA~1 A程度の交流負荷電流を開閉できる。出
力開閉素子にはサイリスタが用いられており、図11に回路図を示す。動作原理は直流2線式と同じ原理のため、セ
ンサオフ時でも常時負荷を通して電流が流れている。また、センサオン時には内部回路に電流を供給するためサ
イリスタに非導通角を持たせるか、サイリスタと直列にツェナーダイオードなどを挿入するので、電圧降下が発
生する。このため負荷の選定に際して注意が必要である。一般に交流2線式のオフ状態電流は3 mA以下、電圧降下
残は10 V程度である。動作不良、復帰不良の恐れがある場合は、あらかじめ負荷と並列にブリーダ抵抗を付ける
のが望ましい。
負荷
図11 交流2線式
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3.3.7 交流直流両用2線式
DC24~240 V、AC48~240 Vと電源範囲が広範でかつ交流・直流ともに使えるため、電源の種類に応じたタイプ
を準備する必要がなく保守・在庫の面で有効である。直流電源にて使用の場合、オフ状態電流に注意が必要であ
る。
負荷
図12 交流直流両用2線式
3.3.8 アナログ出力
アナログ出力には、計装用の出力方法(電流/電圧、代表例:4~20 mA)と、専用コントローラを組合わせる
出力方法(電圧)がある。リニアライズ回路を内部に有し、センサ出力とアナログ出力のリニアリティ(直線性)
を改善したものを特にリニア出力形と呼んでいる。電流出力形は負荷インピーダンス300 Ω以下であり、図13に
示すように抵抗(250 Ω)を接続することにより1~5 Vの電圧出力が容易に得られる。電圧出力形は1~5 V、
±10 Vなどが一般的である。実際の使用に際しては、応答時間・分解能・温度特性などが個々のセンサで異なる
ため製造業者の発行する技術資料などを参照してもらいたい。
負荷
図13 アナログ出力
3.4 センサと他の機器との接続
3.4.1 はじめに
センサの出力には 3.3 項のような種類があり、直接あるいはリレーを介してソレノイド、モータの駆動、カウン
タ、PLC の入力に使用されている。センサと他の機器との接続で信号を正しく伝えるためには、電源の種類、電
流・電圧仕様が入出力間で整合している必要がある。ここでは PLC、カウンタなどとの代表的な接続とその留意
点について述べる。
3.4.2 接点出力形センサと PLC の接続
図14に接点出力の接続について示す。PLCの入力モジュールとしてAC、DC入力モジュール両方の使用が可能で
あるが、入力モジュールに電流制限があるため、センサの出力接点の接触信頼性を考慮しておく必要がある。こ
の対策の例として、入力モジュールに並列にダミー抵抗をつなぎ接点に流す電流を多くする、あるいは微小電流
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用の接点を持つセンサを使用する方法がある。
図14 接点出力の接続
3.4.3 直流閉閉出力形センサの接続
図15に直流開閉出力形センサの接続図(マイナスコモンの場合)を示す。センサの最大出力電流(シンク電流)
がPLC入力モジュールのオン電流以上であることを確認する。電圧出力形センサの場合はセンサ電源への電流の流
れこみによる誤動作を防ぐために、センサ電源と入力モジュールの電源を同じ電圧で使うことに留意する必要が
ある。
図15 直流開閉形マイナスコモン出力の接続
3.4.4 2線式センサの接続
図16に直流、図17に交流2線式センサの接続図を示す。センサオフ時のオフ状態電流がPLC入力モジュールのオ
フ電流以下であること、また電源電圧からセンサオン時の残留電圧を引いた値がPLC入力モジュールの入力オン電
圧よりも大きいことを確認する。センサオフ時のオフ状態電流がPLC入力モジュールのオフ電流以上の場合は入力
モジュールに並列にブリーダ抵抗をつないで、PLC入力モジュールに流れる電流を少なくすればよい。発光ダイオ
ード付きのリミットスイッチなどを使う場合も、同様の配慮が必要である。
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図16 直流2線式センサの接続
図17 交流2線式センサの接続
3.4.5 センサとカウンタの接続
図18にカウンタとの接続図を示す。カウンタには無電圧入力形と電圧入力形がある。電圧入力形の場合は、電
圧出力形のセンサを使用し「H」「L」レベルの整合を確認する。無電圧入力形の場合は直流開閉形マイナスコモ
ン出力または接点出力形と組合わせて使用する。接点出力形との組合わせでは、カウンタから流出する数mAの電
流を確実に開閉できる性能をもつことを確認する。
a)無電圧入力タイプの接続
b)電圧入力タイプの接続
図18 カウンタとの接続
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3.4.6 センサと誘導性負荷との接続
図19に誘導性負荷との接続図を示す。誘導性負荷(マグネット、リレー、ソレノイド)を開閉した場合、遮断
時に数kVの逆起電圧が発生する。このため無接点出力形では出力素子の破壊、接点出力形では接点表面の荒れに
よる接触不良が発生することがある。この対策として、誘導性負荷に並列になるべく負荷に近い所で逆起吸収素
子(CR、バリスタ、または直流の場合はダイオード)を付ける。
誘
導
性
負
荷
図19 誘導性負荷との接続
3.4.7 端子及びリード線色
近接スイッチに関しては端子及びリード線色がJIS C 8201-5-2で規格化されており、これに従って配線する必要
がある。
3.5 故障原因とその対策
3.5.1 負荷短格と誤配線
誤配線や活線作業により、負荷の短絡があるとセンサに大電流が流れ、出力回路を焼損する可能性がある。
(1) 直流開閉出力[図20のa)、b)、c)、d)]
負荷または出力端子の短絡に対しては、a)及びc)の場合、短絡電流Iは大電流となり、トランジスタを焼損する。
b)及びd)の場合、短絡電流Iは負荷を通して流れるので、電流値は定格負荷電流に等しく、センサが損傷を受ける
ことはない。短絡保護対策としてセンサ外で行う方法としては、速断ヒューズで短絡電流を遮断する方法がある
が、センサ内の出力トランジス夕の容量に余裕が少ないため100 %の効果は望めない。速断ヒューズは、図21に示
すように出力端子側に入れること。負荷の電源側に入れたときは、センサのリード線側で短絡が起きると保護で
きない。速断ヒューズの容量は定格負荷電流値の2倍以上で、かつセンサの定格出力電流値以内で、通常の使用時
にヒューズが切れない値でなければならない。このようにヒューズの選定がむずかしい上に短絡時に短時間では
あるが大電流が流れるので、出力トランジスタを保護できないこともある。
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負 負
荷 荷
a) b)
負 負
荷 荷
c) d)
図20 直流開閉出力形の短絡電流
負荷
負荷
図21 短絡保護ヒューズの入れ場所
(2) 2線式出力形
交流2線式出力形は図22に示すような回路となっている。短絡場所は同図a)の負荷そのものの短絡と、同図b)の
ようなセンサ側での短絡が考えられる。a)の場合、センサ内部回路を通じて、大電流が流れ、内部のダイオードや
サイリスタを焼損する。交流開閉出力形はAC100~200 Vの高電圧で使用されるため、短絡電流の値も大きく短絡
保護は最も困難である。b)の場合、短絡電流は負荷を通して流れるので、その値は定格負荷電流値に等しくセンサ
は何の影響も受けない。
ヒューズによる保護を行う場合、ヒューズの入れ場所は図23に示す場所に入れると、負荷短絡の他に地絡に対
しても保護作用がある。直流2線式出力形についても交流2線式出力形と同様である。
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負荷
a)
負荷
b)
図22 交流2線式の短絡電流
負荷
図23 短絡保護ヒューズの入れ場所
3.5.2 ノイズによる破損
3.2項で解説したように電気回路、特にパワー開閉部にはノイズが付きものであるから、ノイズにより破損する
場合もある。よって、ノイズによる影響を受けないよう対策する必要がある。例えば、誘導負荷が開閉する度に
センサが瞬間誤動作をする場合はノイズによる誤動作であるから、3.2項に解説してあるノイズ対策をほどこす必
要がある。
3.5.3 電源
電源電圧が定格値を超えた場合、センサは表面上正常な動作を続けることが多いが、内部の発熱が増大し、半
導体やコンデンサに印加される電圧も高くなるので、寿命は著しく低下する。電源電圧が定格値を下まわる場合
は、正常に動作しなくなる。センサに供給する電源電圧の許容範囲はカタログなどに記載されているから、その
値からはずれることのないよう注意すべきである。電源電圧が変動する場合は安定化電源装置を使用し電圧を安
定させる必要がある。
DC電源には、絶縁トランスを用いた回路を使用する。オートトランス(単巻トランス)や一方が接地された蓄
電池は、図24の破線のようなまわり回路を形成し危険でありセンサの破損の原因になる。
使用電源には、ノイズ・サージの少ないものを用い、ソレノイド、コンタクタおよびブザーのようなノイズ発
生源に対しては、ノイズ吸収対策を施す。スイッチングレギュレータ方式の定電圧電源には、パルス性のノイズ
を発生するものもあり、動作が不安定になることがある。さらに、シリーズレギュレータ方式の定電圧電源にあ
っては、センサの出力で、リレーを駆動している場合、リレーのサージ吸収が完全でないと、定電圧電源の出力
電圧が大きく変動するものもあり動作が不安定になることがある。このときセンサは、絶縁して取付け、レギュ
レータの2次側の0 Vを接地すれば、安定になる場合がある。
金属ケースのものには、ノイズ・サージの影響をさけるために、電気回路の0 Vとケースを直接接続(ケースア
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ース)、コンデンサにより接続、非接続している3種がある。接地されているものは、なるべく、周囲金属から絶
縁した取付けを行う。
センサの0 Vラインがケースに接地されているもので、制御部・電源部の接地端子を接地すると、工事の際に溶
接などを行う場合、0 Vラインの破損などの事故が発生することがあるので、工事の時は、接地線をはずすなどの
注意が必要である。また、アースの位相の関係で動作が不安定になることがある。
a) コンデンサアースされている
b) 望ましいDC電源回路
c) 良くないDC電源回路
図24 ノイズ・サージとケースアース
3.5.4 電源投入時の動作
電源投入時とセンサが正しく動作するまでには時間差があり、電源リセット時間、電源遅延時間、使用可能に
なるまでの遅れ時間などと呼ばれて内部にその防止回路が組込まれているものもある。この時間の間は、入力に
相対した出力信号が得られない。
また、センサは、ノイズ対策のために比較的容量の大きなコンデンサが内蔵されているので、電源投入時に過
電流が流れ、電源の過電流保護回路が動作することがあるので、多数並列使用する場合注意を要する。
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センサとは 執筆会社
主 査 光洋電子工業
副主査 オムロン
委 員 IDEC
委 員 アズビル
委 員 ベスタクト・ソリューションズ
委 員 パナソニック デバイス SUNX
技術委員長 パナソニック
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