制御機器の基礎知識 【スイッチ・表示灯】
11.ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)
目次
11.1 定義 ............................................................................. 2
11.1.1 定義 ......................................................................... 2
11.2 種類 ............................................................................. 2
11.2.1 インタロックの技術方式による分類 ............................................. 2
11.2.2 機能分類 ..................................................................... 4
11.2.3 本体材質による分類 ........................................................... 5
11.2.4 アクチュエータの分類 ......................................................... 5
11.2.5 接点回路構成上の分類 ......................................................... 5
11.2.6 保護構造による分類 ........................................................... 6
11.3 原理と構造 ....................................................................... 6
11.3.1 ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)の要件 ............................... 6
11.3.2 ドアロック無しドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)の構造例 ............... 7
11.3.3 ドアロック付きドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)の構造例 ............... 7
11.4 定格と特性 ....................................................................... 8
11.4.1 定格 ......................................................................... 8
11.4.2 特性 ......................................................................... 8
11.5 正しい選び方 .................................................................... 10
11.5.1 安全の考え方 ................................................................ 10
11.5.2 機械設備の特長による選定 .................................................... 10
11.5.3 使用条件による選定 .......................................................... 11
11.6 上手な使い方 .................................................................... 12
11.6.1 取付け時の注意点 ............................................................ 12
11.6.2 配線時の注意点 .............................................................. 13
11.6.3 保管及び使用上の注意点 ...................................................... 13
11.7 故障と対策 ...................................................................... 14
11.8 検査(試験) .................................................................... 14
11.8.1 形式検査 .................................................................... 14
11.8.2 受け渡し検査 ................................................................ 14
11.8.3 抜き取り検査 ................................................................ 14
11.8.4 特殊検査 .................................................................... 14
11.9 最新の技術動向 .................................................................. 15
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11.1 定義、11.1.1 定義、11.2 種類、11.2.1 インタロックの技術方式による分類
11.1 定義
11.1.1 定義
ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)とは、一般的にガードなどに取り付けるインタロック装置のこと
をいう。
「インタロック」とは、安全情報(安全装置等により安全が確認されているときに限り生成される情報)にも
とづき、機械の可動部の動作を許可したり、禁止したりする仕組みのことであり、「インタロック装置」は、関連
安全規格 ISO 12100(Safety of machinery - General principles for design - Risk assessment and risk
reduction)/JIS B 9700(機械類の安全性-設計のための一般原則-リスクアセスメント及びリスク低減)、及び ISO
14119(Safety of machinery -- Interlocking devices associated with guards -- Principles for design and
selection)/JIS B 9710(機械類の安全性-ガードと共同するインタロック装置-設計及び選択のための原則)にお
いて、「特定の条件(一般的にはガードが閉じていない場合)のもとで機械要素の運転をやめるための機械的、電
気的、その他の装置」と定義される。
また、関連規格 GS-ET-15(Principles of testing and certification for positively opening position switches)
において、強制開閉する安全機能用位置検出スイッチは「カテゴリ 1:本体とアクチュエータが一体構造のもの」
と「カテゴリ 2:本体とアクチュエータが分離構造のもの」に区分され、カテゴリ 1がリミットスイッチ、カテゴ
リ 2が説明するドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)に相当する。
また、ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)の呼称は、
安全リミットスイッチ、ドアスイッチ、など様々であるが、特に
事故を予防し、安全を確保することから総称として「安全スイッ
チ」と称されることがある。
図 11.2 非接触形ドアインタロックスイッチ
図 11.1 接触形ドアインタロックスイッチ
11.2 種類
11.2.1 インタロックの技術方式による分類
インタロック装置はその技術方式により、以下各項目のとおり分類される。この中で、位置検出式のインタロ
ック装置(11.2.1.1項及び 11.2.1.2 項)がドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)に相当する。
また、ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)には、接触形と非接触形があるが、この章では以後接触形
(特にタング操作式)のドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)に限定して説明する。
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11.2.1.1 接触形位置検出方式
ガードの開閉状態を位置検出器で検出してインタロックをとる。検出器には、機械的に操作を行うカム操作方
式とタング(特殊な形状のアクチュエータ)操作方式がある。図 11.3、図 11.4にそれぞれ一例を示す。
図 11.3 カム操作方式 図 11.4 タング操作方式 図 11.5 非接触形位置検出方式
11.2.1.2 非接触形位置検出方式
ガードの開閉状態を位置検出器で検出してインタロックをとる。検出器には、リードスイッチ、ホール素子、
磁気センサ、電磁誘導などを利用した方式があり、この方式では機械的に操作を行わない。図 11.5 に一例を示す。
11.2.1.3 キー連動(キーインタロック)方式
キーが、ガードのロック用とインタロック装置(制御素子
のロック)用とで共通になっていて、キーのロックに連動し
てインタロックをとる。条件としてガードのロック解除状態
ではキーがスイッチから外され、機械の運転を不可能にする。
この方式には、掛け止めキー連動方式があり、図 11.6 に一例
を示す。
11.2.1.4 プラグ/ソケット方式
図 11.6 掛け止めキー連動方式
プラグとソケットの挿入/引き抜きをガードの開閉に連動
させてインタロックをとる。図 11.7、図 11.8 に一例を示す。
図 11.5 非接触形位置検出方式
図 11.7 プラグ/ソケット方式(全体)
図 11.8 プラグ/ソケット方式(詳細)
11.2.1.5 機械的連動方式
ガードと機械可動部の機械的連動によりインタロックをとる。この方式は、制御システムは何も中間的役割を
せず、直接機械可動部の切り離しを行う(動力のインタロック装置)。図 11.9に一例を示す。
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ガード閉
ガード開
可動要素がフリー
可動要素が開放されない限りガードは
閉位置にロックされる。 可動要素ロック状態
可動要素が開放されるとガードを開くこ
とができる。
図 11.9 機械的連動方式
11.2.2 機能分類
ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)は代表的機能として、ガードの錠(ロック)の有無により大きく
2種類に分類される。これらを以下各項目で説明する。
11.2.2.1 ガード(ドア)ロック無しドアインタロックスイッチ アクチュエータ
(安全スイッチ)
ロック無しタイプは常にガードを開閉することができ、その操作
により接点出力が切り替わる。その信号を安全回路に取り込んで、
機械はガードが閉じるまでは運転できない状態、機械運転中にガー
ドが開くと機械停止の指示がでることとなる。なお、ガードが閉じ
ると機械は運転可能となるが、それが自動運転開始とはならないよ
うにする必要がある(再起動防止制御)。
図 11.10 にドアロック無しドアインタロックスイッチ(安全スイッ 直接開路動作機構
チ)の一例を示す。
図11.10 ドアロック無しドアインタロックスイッチ
11.2.2.2 ガード(ドア)ロック付きドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)
ロック付きタイプはロック解除しないとガードを開けるこ
とができないスイッチであり、ガードの開閉信号とロック有 直接開路動作機構
無の信号が出力されている。それらの信号を安全回路に取り アクチュエータ
込み、機械はガードが閉じてかつロックされるまで運転は不
可能とし、機械運転に伴うリスクが無くなるまでガードは閉
じてロックされている。なお、ガードが閉じてかつロックさ
れていると機械は運転可能となるが、それが自動運転開始と
はならないようにする必要がある(再起動防止制御)。
図 11.11 にドアロック付きドアインタロックスイッチ(安
全スイッチ)の一例を示す。
(1) ロック解除条件 ロック/ロック解除
ZMS対応ドアロック機構 モニタ接点
ドアロック付きドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)
はロック解除条件により、次の2種類に分類される。
図 11.11 ドアロック付きドアインタロックスイッチ
無条件ロック解除:ガードのロック解除に要する時間
が、危険状態が消滅するのに必要な時間よりも長いものであり、いつでもロック解除を開
始できる形式。
条件付きロック解除:「停止命令を発した後に危険状態が消滅するのに必要な時間よりも長い時間が経過する」
または「危険状態の消滅が検出される」という条件が満たされたときのみ、ロック解除
が可能である形式。
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11.2.3 本体材質による分類、11.2.4 アクチュエータの分類、11.2.5 接点回路構成上の分類
(2) ロック/ロック解除の操作方式
ガードのロック装置として、ロック/ロック解除の操作方式は次の4種類がある。
手動ロック/手動ロック解除(図 11.12参照)
ばねロック/動力ロック解除(図 11.13参照)
動力ロック/ばねロック解除(図 11.14参照)
動力ロック/動力ロック解除(図 11.15参照)
リスクアセスメントの結果、安全上ロックが必要な場合は、ばねロック/動力(ソレノイド)ロック解除方式
としなければならない。(11.3.1.1項参照)
a)ばねで作動・・・ ・・・動力で開放
位置検出器
ガード
図 11.13 ばねロック/動力ロック解除
閉鎖 b)動力で作動・・・ ・・・ばねで開放
開放
図 11.12 手動ロック/手動ロック解除
図 11.14 動力ロック/ばねロック解除
c)動力で作動・・・ ・・・動力で開放
図 11.15 動力ロック/動力ロック解除
11.2.3 本体材質による分類
ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)の本体材質は、主に堅牢タイプの金属(ダイカストなど)製及び
汎用タイプの樹脂製に分類される。これらは使用環境、廃棄性などを考慮して選定されるべきである。
11.2.4 アクチュエータの分類
ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)における無効化防止(11.3.1.3 項参照)の特長から、アクチュエ
ータの形状は特殊となる。無効化防止の構造はいろいろな方法で実現されるため、アクチュエータの形状も多種
多様である。
また、アクチュエータは取付け方向により、主にストレートタイプ及びLアングルタイプに分類される。無効
化の効果をあげるためアクチュエータ取付けは溶接、リベット、一方向ねじなど一般的な工具で容易に外されな
い方法が考えられる。
さらに、アクチュエータは可動タイプと固定タイプに分類される。どちらもガードへの取付け部分は確実に固
定されるものであるが、可動タイプはアクチュエータ先端(ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)本体へ
挿入される部分)を動くようにしたもので、例えば回転扉の許容最小半径がより小さくできるなど自在性を増す
ものである。
11.2.5 接点回路構成上の分類
ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)は基本として安全制御を行うメイン回路及びモニタなどを行う補
助回路で構成される。メイン回路はノーマルクローズ(NC)接点に限定され、必須のものであるが、補助回路に
ついてはノーマルオープン(NO)接点及び NC接点の限定は無く、目的に応じて使用される。よって、ドアインタ
ロックスイッチ(安全スイッチ)の回路数や回路構成は多様で、モニタ用の表示灯を内蔵したものなどもある。
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11.2.6 保護構造による分類、11.3 原理と構造、11.3.1 ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)の要件
11.2.6 保護構造による分類
ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)の固形異物や水及び油に耐える能力の程度(保護構造)を関連規
格 IEC 60529(Degrees of protection provided by enclosures (IP Code))/JIS C 0920(電気機械器具の外郭によ
る保護等級(IPコード))にもとづき分類していく。保護構造は IP コードで示され、1.2 用語の定義、1.2.10 IPコ
ード表 1.3の第 1特性数字と第 2特性数字の組み合わせからなる。
また、保護構造に大きくかかわる要素にドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)へのケーブル引き込みが
あり、一般的には多芯ケーブルやフレキシブルコンジットを使用するコネクタ取付けタイプと、ケーブルがドア
インタロックスイッチ(安全スイッチ)と一体でシーリングされるタイプがある。
11.3 原理と構造
11.3.1 ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)の要件
ガードの開閉検出には、従来からリミットスイッチが広く使用されてきたが、接点溶着によりガードの位置検
出ができないことやレバー形アクチュエータ部分をガードの開閉と関係なく意図的に無効化されることなど、確
実なインタロックをとることができなかった。
それに対し、ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)はインタロックを確実にする目的で発展してきた。
ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)に求められる要件は、大きく次の二つである。
(1) 構成要素の故障が安全側故障となるフェールセーフ機構
(2) インタロックの無効化防止機構
以下にそれぞれ具体例を挙げ説明する。
11.3.1.1 フェールセーフに関する構造要件
(1) ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)のメイン回路には、原則として直接開路動作(11.3.1.2 項参
照)の NC 接点を使用する。仮に、NO 接点を使用した場合、接点溶着、ばねの破損もしくは摺動部の固着な
どが生じたとき、機械を停止できなくなり危険である。
(2) リスクアセスメントの結果、安全上のロックが必要な時に使われるドアロック付きドアインタロックスイ
ッチ(安全スイッチ)の場合、ロック/ロック解除の操作方式は、ばねロック/動力ロック解除方式としな
ければならない。仮に、動力ロック方式とした場合、動力部の断線や故障で容易にロック解除してしまう。
また、停電時はガードが開放される上に、復旧とともに機械が運転開始される恐れがあり危険である。その
ため動力ロック方式は作業者の安全を目的としたロックではなく、設備が破壊される危険性のある急停止防
止用として使用される。
(3) (2)項の要件にともない、ばねロック/動力ロック解除方式の場合は手動ロック解除手段を設ける必要
がある。また、手動ロック解除手段は停電などの非常時のほか、配線前や通電前のガードの動作確認などに
使用される。
(4) ドアロック付きドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)のロック装
置は剛性部品のかみ合わせによるものとする。仮にばねなどの構成部品
が破損しても容易にロック解除しないものとする必要がある。
(5) ドアロック付きドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)の場合、完
全にロックするまで機械が運転開始できないように、ガードのロック状
態をモニタする必要がある。すなわちメイン回路は図 11.16 のような構
成となる。
(6) ドアロック付きドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)の場合、機
械の正常運転時にガードにかかる力に耐えるロック強度が必要である。 図 11.16 メイン回路の構成
製造者(メーカ)は以後の使用に影響しないで耐え得るロック強度を使
用者(ユーザ)に情報提供しなければならない。なお、関連規格 GS-ET-19(Principles of testing and
certification for interlocking devices with solenoid guard-locking)においては、ロック強度 1000N
以上が理想とされている。
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11.3.2 ドアロック無しドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)の構造例、11.3.3 ドアロック付きドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)の構造例
11.3.1.2 直接開路動作機能 F2(N)
ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)の重大要件である直接開路
動 作 機 能 に つ い て 説 明 す る 。 直 接 開 路 動 作 機 能 と は
IEC60947-5-1(Low-voltage switchgear and controlgear - Part 5-1:
Control circuit devices and switching elements - Electromechanical
control circuit devices)/JIS C 8201-5-1(低電圧開閉装置及び制御装置
-第 5 部:制御回路機器及び開閉素子 -第 1 節:電気機械式制御回路機
器)附属書 K によると「操作部と接点との間に、弾性構造材(例えば、ばね)
を介在することなく、遮断接点素子を動作させる機能」と定義される。具
体的には接点溶着などが生じても接点を確実に引き離す操作であり、直接
開路動作機能を満足する構造は、図 11.17 に示すとおりである。つまり、
F1
閉じられている接点に 10N の力を加えた状態において、メーカが指定する 2 =5N 5N
直接開路動作力を加えたとき、接点を引き離す操作部強度とその接点間に
は 250V の定格絶縁電圧(11.4.1.1 項参照)を満足する絶縁性能、2.5A 以
上の定格通電電流(11.4.1.2 項参照)、AC-15または DC-13の使用負荷種別
(11.4.1.3項参照)が必要となる。なお、メーカは直接開路動作機能を達
成する前述の直接開路動作力と直接開路動作機能が完了するまでの最小ス
トロークをユーザに情報提供しなければならない。また、直接開路動作機
能を満足する接点素子は製品上に のマークを表示する。 備考 F1=必要な開路力=10 N
F2=製造業者指定の力(モ-メント)
11.3.1.3 無効化防止に関する構造要件 図 11.17 直接開路動作機能の構造
(1) ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)は、ねじ、針、板状の金属片、キー、コイン、磁石、ドライ
バなどの常用工具で意図的に無効化できない構造としなければならない。図 11.18 に無効化防止の例を示す。
(2) ドアロック付きドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)の手動ロック解除手段は、意図的な無効化を
防止するため工具で操作するものとする。
専用アクチュエータでのみ 容易に入手できるものでは
接点が開閉可能 接点が開閉できない
図 11.18 無効化防止の例
11.3.2 ドアロック無しドアインタロックスイッチ(安全スイッ
チ)の構造例
図 11.19 に構造の一例を示す。
11.3.3 ドアロック付きドアインタロックスイッチ(安全スイッ
チ)の構造例
図 11.20 に構造の一例を示す。
図 11.19 ドアロック無しドアインタロック
図 11.20 ドアロック付きドアインタロック
スイッチの構造例
スイッチの構造例
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11.4 定格と特性、11.4.1 定格、11.4.2 特性
11.4 定格と特性
ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)個別の定格や特性を規定した規格は存在しないが、関連規格 IEC
60947-5-1/JIS C 8201-5-1にもとづき以下のとおりまとめることができる。また、ドアインタロックスイッチ(安
全スイッチ)はリミットスイッチとインタロックの技術方式や操作部の構造に違いはあっても、接点部は基本と
して類似する。したがって第 10 章のリミットスイッチをあわせて参照されたい。
11.4.1 定格
11.4.1.1 定格絶縁電圧(Ui)
定格絶縁電圧は、耐電圧試験の電圧及び沿面距離の基準となる電圧の値である。また、いかなる場合でも、定
格使用電圧の最大値は定格絶縁電圧の最大値を超えてはならない。一般的に 600V 以下とされるが、ドアインタロ
ックスイッチ(安全スイッチ)は直接開路動作機能を備えるため IEC60947-5-1/JIS C 8201-5-1 附属書 K に従い
最小値を 250Vとする。
11.4.1.2 定格通電電流(Ith)
定格通電電流は、温度上昇試験に使用される試験電流の最大値で、自由大気中における装置の開放熱電流(Ith)
と、特にエンクロージャ(保護構造をもった外郭)内に取付けられた装置の閉鎖熱電流(Ithe)がある。ドアイ
ンタロックスイッチ(安全スイッチ)は直接開路動作機能を備えるため IEC60947-5-1/JIS C 8201-5-1 附属書 K
に従い最小値を 2.5Aとする。
11.4.1.3 使用負荷種別にもとづく電気定格
接点素子の使用負荷種別(投入及び遮断電流容量による級別)は、1.3 用語の説明 1.3.3 使用負荷種別 表 1.8
のとおり分類され、特に、直接開路動作機能の接点は IEC60947-5-1/JIS C 8201-5-1 附属書 K に従い種別を AC-15
または DC-13 とする。使用負荷種別が指定されている開閉素子に関しては、あらためて投入及び遮断容量を規定
する必要はない。
また、使用負荷種別にもとづく電気定格は 1.3 用語の説明 1.3.3 使用負荷種別 表 1.9、表 1.10 にまとめられ
る。
11.4.1.4 定格インパルス耐電圧(Uimp)
定格インパルス耐電圧は、指定の試験条件下で故障なしに耐えることができる規定の波形と極性を持つインパ
ルス電圧のピーク値で、空間距離の値の基準となる。なお、定格インパルス耐電圧は、メーカが宣言する場合と
宣言しない場合がある。
11.4.2 特性
11.4.2.1 動作特性
接点素子の動作値及び復帰値は、動作特性の一定な上昇値と正常な下降値で決定しなければならない。また、
その変化率は規則的なものとする。
11.4.2.2 温度上昇
試験周囲温度 10~40℃(及び 10K 以下の変化)において、定格通電電流を試験電流として実施した場合の各部
の許容温度上昇値は 1.3用語の説明 1.3.2 温度上昇 表 1.6、1.7 による。
11.4.2.3 絶縁抵抗
DC500V の絶縁抵抗計で、スイッチの異極端子間、各端子と非充電金属部(及びアース)間、及び開路時の同極
端子間を測定したとき 100MΩ 以上であるものとする。(NECA C 4508(封入形マイクロスイッチ)による)
11.4.2.4 耐電圧性能
(1)メーカが定格インパルス耐電圧を宣言している場合
メイン回路における開路時の同極端子間、各端子と非充電金属部(及びアース)間、及び異極端子間において
は、表 11.1 に示す定格インパルス耐電圧に応じた試験電圧(1.2/50μs のインパルス電圧を最小 1 秒の間隔で 3
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回印可)を加えたとき、これに耐えるものとする。 表 11.1 インパルス試験耐電圧
単位 kV
(2)メーカが定格インパルス耐電圧を宣言してい 定格インパ 試験電圧及び対応標高
ない場合 ルス耐電圧 U1.2/50
異極端子間、各端子と非充電金属部(及びアース) Uimp 海水面 200m 500m 1000m 2000m
間、及び開路時の同極端子間に加え、各端子と金属
0.33 0.35 0.35 0.35 0.34 0.33
はくで覆われた使用中に触れる恐れのある表面間
0.5 0.55 0.54 0.53 0.52 0.5
は、表 11.2 に示す試験電圧を 1 分間印可し、これ
0.8 0.91 0.9 0.9 0.85 0.8
に耐えるものとする。
1.5 1.75 1.7 1.7 1.6 1.5
2.5 2.95 2.8 2.8 2.7 2.5
11.4.2.5 接触抵抗
4 4.9 4.8 4.7 4.4 4.0
電圧降下法(接点を閉路した状態で、DC6~8Vの
6 7.3 7.2 7.0 6.7 6.0
電圧で 1A の電流を通電後、電圧降下値を電流値で
8 9.8 9.6 9.3 9.0 8.0
割る)による接触抵抗値は初期値で 100mΩ 以下と
する。ただし、ケーブル一体でシーリングされたタ
12 14.8 14.5 14 13.3 12.0
イプはこの限りではない。 注記 表 12は、均一電界、ケース Bの特性を用いている(2.5.62参照)
表 11.2 定格絶縁電圧に対する耐電圧試験電圧
11.4.2.6 動力(ソレノイド)使用電圧
単位 V
特にドアロック付きドアインタロックスイッチ
定格絶縁電圧値 耐電圧試験電圧 耐電圧試験電圧 b)c)
(安全スイッチ)の動力(ソレノイド)の定格使用
U (交流、実効値) (直流)
電圧(Ue)は、定格値の 85~110%及び-5~40℃の i
条件で動作できるものとする。
Ui ≦ 60 1000 1415
60 < Ui ≦ 300 1500 2120
11.4.2.7 耐久性(寿命) 300 < Ui ≦ 690 1890 2670
機械的耐久及び電気的耐久はメーカが任意に指 690 < Ui ≦ 800 2000 2830
定するもので、耐久性(回数)については、別項の 800 < Ui ≦ 1000 2200 3110
1000 < U ≦ 1500 a)説明を参照すること。 i - 3820
注 a)
一般的に特殊要素(鍵操作など)がない場合は、
直流用。
b) IEC60664-1の 4.1.2.3.1の第 3パラグラフによる試験電圧。
機械的耐久(無負荷試験)が 100万回以上、電気的 C) 直流試験電圧は交流試験電圧が適用できない場合にだけ使用して
耐久(定格負荷試験:誘導負荷 AC-15/DC-13 及び よい。8.3.3.4.1の 3)b)ⅱ)を参照。
抵抗負荷 AC-12/DC-12)が 10 万回以上とされる。
ただし、開閉操作頻度により耐久性が変化する場合があるので、あわせて指定することが望ましい。一般的に開
閉操作頻度は 10回/min以上で指定される。
11.4.2.8 条件付き短絡電流
開閉素子は、メーカが規定している短絡保護装置(SCPD)によって保護されているとき、図 11.21 に示す試験
回路の短絡電流(推定 1000A 以上)に耐えるものとする。また、メーカは短絡保護装置の形式と特性を示すとと
もに、条件付き短絡電流が 1000A 以下の場合は、ユーザに情報提供するものとする。
図 11.21 試験開路
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11.5 正しい選び方、11.5.1 安全の考え方、11.5.2 機械設備の特長による選定
11.5 正しい選び方
一定の使用条件における所定機械に最も適したドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)を選定するため、
機械設計者は関連規格 ISO 12100/JIS B 9700 に規定されるリスクアセスメント(11.1.1項参照)を実施する必要
がある。この際、ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)の安全機能が働かなかった場合に生じるリスクを
評価し適切な選定を行う。
また、ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)を選定する場合、そのライフサイクルの全ての段階を考慮
し、機械設備の特長や目的用途に適合すること及び使用条件に適合することを確認の上、選定しなければならな
い。
(Unacceptable risk)
11.5.1 安全の考え方
安全とは「受け入れ不可能なリスクがないこと」であ (Tolerable risk)
(Acceptable risk)
り、別の言い方をすれば、残留リスクが残っていても、
広く受け入れ可能なリスクであれば、「安全」として認め
るということである。なお、リスクとは「傷害及び健康
障害の発生確率とそのひどさの組み合わせ」のことであ (Protective measure)
(residual risk)
る。機械の安全を構築するうえで、機械が持つ危険源を 綺麗なデータあれば差換え
見つけ評価するリスクアセスメントが特に重要視される。
図 11.22 に許容可能なリスクと安全の範囲を示し、図
11.23 にリスクアセスメントの手順を示す。リスク低減
のための安全対策として、設計段階での本質安全設計と 図 11.22 許容可能なリスクと安全
安全防護があり、ドアインタロックスイッチ(安全
スイッチ)は、安全防護を支える一要素である。
安全防護の考え方は、まず人と機械を空間的に分
離すること(隔離の原則)であり、具体的な方法と
して安全柵(以下ガードとする)が挙げられる。た
だし、人の進入を許す可動式ガードについては、次
に人と機械を時間的に分離すること(停止の原則)
が必要となる。
具体的には、可動式ガードの開閉検出を行い、ガ
ードが開いたら機械は止まるもしくは動かなくなる
といった方法であり、この開閉検出を行い機械運転
を制御する装置を規格上インタロック装置という。
11.5.2 機械設備の特長による選定
図 11.23 リスクアセスメントの手順
ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)
は機械の安全レベルに応じて選定するが、その
中でドアロック無し/付きドアインタロック
スイッチ(安全スイッチ)の選定は、安全距離
(ガードと危険源の間の安全を確保する最小
距離)と機械の惰性動作の有無及び惰性動作時
間が選定の基準となり、図 11.24 にその基準及
び考え方を示す。安全距離の考え方は関連規格
ISO 13857(Safety of machinery -- Safety
distances to prevent hazard zones being
reached by upper and lower limbs)、及び ISO
13855(Safety of machinery -- Positioning of
safeguards with respect to the approach
speeds of parts of the human body)に規定さ 図 11.24 機械の惰性動作対策の考え方
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れているもので、図中の簡易式で表されるように、機械の惰性動作によりドアロック無しのドアインタロックス
イッチ(安全スイッチ)では危険源と人を時間的に分離する停止の原則が守られない(すなわち安全距離が足り
ない)と判断される場合は、ドアロック付きドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)を使用し惰性動作対策
とする。
また、安全距離が大きい大型設備などの、人がガード内に入り込んでしまうような場合は、第3者によるイン
タロック破壊を防止するためプラグやキーなどをお守りとして携帯するホステッジコントロールの機能を取り入
れる必要がある。
なお、ドアロック付きドアインターロックスイッチ(安全スイッチ)は安全距離による選定以外にも、機械運
転中に突然運転を止められたくないといった設備の都合上選定されることも多い。
11.5.3 使用条件による選定
以下に選定の際に考慮すべき主な使用条件項目について説明する。
11.5.3.1 環境条件
ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)は、通常以下の使用環境を想定して設計されている。
(1) 使用周囲温度は、一般的に-25~70℃を基本とするが、ソレノイドや LED 表示灯などの温度上昇ほか、製
品仕様を考慮してメーカが個々に指定する。ただし、最悪でも-5~40℃において使用可能であるものとする。
(2) 標高は、2000m 以下とする。
(3) 空気中の相対湿度は、周囲温度 40℃で 85%以下とする。また、温度変化による結露及び氷結が生じない
ものとする。
(4) 汚損度(IEC 60947-1(Low-voltage switchgear and controlgear - Part 1: General rules)/JIS C8201-1(低
電圧開閉装置及び制御装置 -第 1 部:通則)及び IEC 60664-1(Insulation coordination for equipment
within low-voltage systems - Part 1: Principles, requirements and tests )/JIS C60664-1(低圧系統
内機器の絶縁協調―第 1部:基本原則,要求事項及び試験)による)の中で、汚損度 3の環境下を意図する。
汚損度は 1.2用語の説明 1.2.9汚損度による。
以上より、これらの使用条件に当てはまらない箇所での使用は基本として不可能である。また、ドアインタロ
ックスイッチ(安全スイッチ)は室内使用を想定している場合がほとんど(樹脂製は恐らく全て)であるため、
使用する環境を十分考慮する必要がある。なお、一般的に樹脂製にくらべ金属製のドアインタロックスイッチ(安
全スイッチ)の方が悪条件に耐えるものが多いが、その適正についてはメーカへの確認が必要である。
防塵性や防水性が必要な環境では、メーカ保証の保護構造(11.2.6 項参照)を確認し、適切なものを選定する。
一般的にドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)は IP54以上の気密性を保持するものが多いが、事前に確認
を要する。また、コネクタ取付けタイプは適正なコネクタを取付けてその防水構造を満足する。そのため、コネ
クタ取付けに不安がある場合は、ケーブル一体シーリングタイプを採用する手段もある。
切削油などの耐油性や薬品性が必要な環境では、その種類によっては本体材質やシール性に劣化をおよぼす恐
れがある。一般的に樹脂製にくらべ金属製のドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)の方が影響は少ないと
されるが、事前にメーカとユーザとの間の合意による特殊試験を行うなど、その適正についてはメーカへの確認
が必要である。
11.5.3.2 取り付け条件
取付けスペースに応じた外形寸法のドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)を選定することが望ましい。
しかし、取り付け穴位置に関して、リミットスイッチサイズの M4 ねじ 2 本による 20~22mm 取付ピッチ(EN
50047(Low-voltage switchgear and controlgear for industrial use - Control switches - Position switches
30 x 55 - Dimensions and characteristics)に規定される)以外のものは、特に基準がないため事前に確認が必
要である。
また、ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)はアクチュエータの挿入口を複数個持ち選択できるものが
多く、製品上で挿入口の方向を変更できるものもあるので、使用に応じて選定するものとする。そのほかにもコ
ネクタ取り付け位置を選択できるタイプや、数種類のアクチュエータ(11.2.4 項参照)を選定することにより、
取付けを容易にし、使用範囲を広げることができる。
なお、コネクタの取付けに関して、ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)のコネクタ(コンジット)ね
じは、G1/2、G3/4 など G で表す管用平行ねじ(ISO 228-1(Pipe threads where pressure-tight joints are not made
on the threads -- Part 1: Dimensions, tolerances and designation)/JIS B 0202(管用平行ねじ))や Pg13.5
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11.6 上手な使い方、11.6.1 取付け時の注意点
など Pg で表すドイツ電線管ねじ(DIN 40430(Stahlpanzerrohr-Gewinde; Maße))、M16、M20 など M で表すメート
ルねじ(IEC60423(Conduit systems for cable management - Outside diameters of conduits for electrical
installations and threads for conduits and fittings)/JIS C 8463(電気設備用電線管の外径及びねじ))など
のねじサイズが数種類あるので適切なものを選定する必要がある。
11.5.3.3 負荷条件
従来の一般的な負荷はリレー、ソレノイド、電磁クラッチなどであったが、最近はドアインタロックスイッチ
(安全スイッチ)の信号を安全リレーなどに通して無接点リレーやロジックモジュールに送るといった微少負荷
での使用が増えている。この場合、スイッチの接点には金合金または金めっき接点のものを使用することが望ま
しい。また、微少負荷(最小適用負荷)は、ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)において通常規定され
ないため、メーカに確認する必要がある。
なお、ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)は、補助回路をドアの開閉やメイン回路の接点状態などのモ
ニタに使用したり、メイン回路を二重化して使用したり、数種の使用方法が考えられるので、使用方法に応じた
適切な回路構成のものを選定する。
加えてメンテナンス性から、仮にドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)が故障した場合に早期発見でき
るようLEDなど表示灯を備えたものを選定するのも有効である。
11.6 上手な使い方
以下にドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)を上手に正しく使うために注意する点を説明する。また、
あわせてメーカの発行するカタログや取扱説明書をよく読み、その内容に従い正しく使用することが必要である。
なお、取付け、取外し、配線作業、及びメンテナンスや点検は安全のため必ず電源を切った状態で行うものとす
る。
11.6.1 取付け時の注意点
11.6.1.1 無効化防止
インタロックの無効化防止を実現するため
には、11.3.1.3 項に示したドアインタロック
スイッチ(安全スイッチ)の構造要件に加え
て、取付け時の無効化防止に対する考慮が必
要である。以下にその対応手段を挙げる。
(1) 障壁や覆いを設けるなど、ガードが開
いているときはドアインタロックスイ
ッチ(安全スイッチ)に容易に接近で
きないようにする。ただし、ガードが
図 11.25 無効化されにくいドアインタロックスイッチの設置例
閉まっているときに手動ロック解除が
可能であるものとする。図 11.25 に一
例を示す。
(2) 安全スイッチやアクチュエータは、一方向ねじ、トルクス特
殊ねじ及び溶接などにより恒久的に取付ける。図 11.26 に一
例を示す。
(3) 取り付けられていない予備のアクチュエータによる操作を防
止するため、予備のアクチュエータの管理を行う。
11.6.1.2 設定位置
ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)及びアクチュエータ
の取付け設定位置が狂わないようにするため、次の点を考慮する。 図 11.26 無効化されにくい取付ネジの例
(1) ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)、及びアクチュ
エータの取付けは確実であって、自然に緩まないものとする(ねじロックによる緩み止めなど)。取付けの
際は、メーカの推奨締め付けトルクに従う。また取外すには工具が必要なものとする。
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11.6.2 配線時の注意点、11.6.3 保管及び使用上の注意点
(2) 確実なインタロックをとるため、ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)を取付ける支持部は十分な
剛体であるものとする。
(3) ガードにはストッパを設け、ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)を機械的ストッパとして使用し
ない。これは、衝撃によるスイッチの故障及び接点素子の誤動作を防止することにもなる。
(4) ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)及びアクチュエータの取付け設定はドアインタロックスイッ
チ(安全スイッチ)のインタロック機能を満足させるものとする。(メーカが指定する初期設定位置である
こと)
(5) ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)がガード
の開放を検知する前のガードの変位量は、安全防護の効
果を損なわないものとする。(安全距離が保てる隙間で
あること。)
(6) ドアロック付きドアインタロックスイッチ(安全スイ
ッチ)においては、別途ガードにフック金具などのロッ
ク装置を設けることが望ましい。これは、衝撃によるス
イッチの故障及び接点素子の誤動作を防止するととも
に、ロック解除動作をスムーズなものとする。
(7) ガードの開閉動作において、アクチュエータがドアイ
ンタロックスイッチ(安全スイッチ)操作部以外の箇所
に干渉をしないように取り付ける(取付けセンタ位置ズ
レの防止)。通常アクチュエータとドアインタロックス
イッチ(安全スイッチ)のアクチュエータ挿入口にはガ
タツキに対する余裕度があるので事前に仕様の確認が
必要である。
図 11.27 ガードへの取付け例
(8) 代表的なガードへの取付け例を図 11.27 に示す。
11.6.2 配線時の注意点
(1) 配線時や配管時はドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)内にほこり、水及び油などが入らないよう
にする。ケーブルがドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)と一体でシーリングされるタイプはこの限
りではない。
(2) ケーブルの固定、引き回しに注意する。具体的には、ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)のケー
ブルシーリング部に力が加わらないようにすることや、極度の曲げによりケーブルの絶縁体やシースを損傷
させないこと、及び作業のじゃまにならない引き回しにすることなどが挙げられる。
(3) メーカが推奨する適合コネクタを使用することが望ましい。これは防水性が問われる場合に特に重要とな
る。
(4) 使用環境に応じて多芯ケーブルとフレキシブルコンジットを使い分ける。フレキシブルコンジットなどの
配管の使用は、ケーブルの損傷を防ぐ意味でも効果がある。
(5) メーカが指定する適合電線サイズのものを使用する。電線サイズが不適切な場合、絶縁破壊や断線につな
がる恐れや、端子部の接触不安定及び容量不足から異常に発熱し火災につながる恐れなどがある。
(6) 圧着端子を使用する場合は、メーカ指定の適合圧着端子を使用し、絶縁チューブを併用する。圧着端子は
端子を識別するマークチューブの抜け防止にも有効である。
(7) 配線や配管時において、端子ねじ、コネクタ及びドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)ふたなど、
ねじ部の締め付けはメーカの推奨締め付けトルクに従う。
11.6.3 保管及び使用上の注意点
(1) ほこりや湿気の多い場所、有機ガスが存在している場所、直射日光が当たる場所でのドアインタロックス
イッチ(安全スイッチ)の保管は避ける。
(2) ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)のアクチュエータ挿入口に異物が入ると故障の原因となるの
で、ほこり、切粉、水及び油などが多い場所でドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)を使用する場合
は、覆いなど保護カバーを設けることが有効となる。また、アクチュエータ挿入口は使いやすさを向上させ
るため複数個設けてある場合が多いため、使わない挿入口はふさいでおくことが望ましい。
(3) ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)に覆いなどを設けることで過剰な衝撃など外部要因からの防
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11.7 故障と対策、11.8 検査(試験)、11.8.1 形式検査、11.8.2 受け渡し検査、11.8.3 抜き取り検査、11.8.4 特殊検査
護とする。衝撃は故障や誤動作の原因となることが多く、取付け前の運搬時においても落下防止などに注意
が必要である。
(4) ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)のアクチュエータ操作速度には許容範囲(メーカ指定)があ
る。よって、ガードの開閉操作が許容範囲で行われる必要がある。
(5) メンテナンスや点検は、定期的に行うと効果的である。
11.7 故障と対策
ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)に関する故障や事故原因を追及していくと、機種選定のミスや不
適切な使用方法が要因となっていることが多い。よって、前述の 11.5 項「正しい選び方」及び 11.6 項「上手な
使い方」を十分理解されて、実践することで大半の故障は防止できる。しかし、万一故障が発生した場合は、そ
の故障内容や原因を的確に把握し、対策を行うことが必要である。
また、故障対策の基本的な考え方は、ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)やアクチュエータの取付け
設定に関する位置関係の不良については修繕とし、ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)自体の故障(電
気的、機械的)については、特に安全にかかわるため即交換とする。
11.8 検査(試験)
性能や品質に関して、試験の結果をそれぞれの判定基準にあてはめて検証することが検査であり、この種類は
関連規格 IEC 60947-5-1(EN 60947-5-1、JIS C 8201-5-1)にもとづき、以下各項目の通り分類できる。
11.8.1 形式検査
ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)の設計の適合性を検証するものであり、主に以下の事項が挙げら
れる。
(1) 温度上昇
(2) 耐電圧特性
(3) 開閉素子の投入及び遮断容量(使用負荷種別の検証)
(4) 条件付き短絡電流における性能
(5) 構造上の要求
(6) 動作性能
(7) 保護構造
11.8.2 受け渡し検査
ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)の仕上がり不具合の発見と、正しく機能するかどうか確かめる検
証で、製品全てに対し、メーカの責任をもって行う検証である。通常、機械的検査と機械的動作の検証及び耐電
圧特性の検証がある。
11.8.3 抜き取り検査
技術的及び統計上の解析によって、受け渡し検査が必要ないことが検証されたとき、受け渡し検査のかわりに
行う検証である。
11.8.4 特殊検査
メーカとユーザとの間の合意による検証で、耐久性の検証を含むものである。
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11.9 最新の技術動向
操作ヘッド部を外してアクチュエータの挿入方向を変更するタイプのドアインタロックスイッチ(安全スイッ
チ)は、一般的に操作ヘッド部を本体から分離すると NC 接点が ON(機械運転可能)になるため、今日では操作ヘ
ッド部を外すと NC 接点が OFF となるタイプも開発されている。
操作ヘッド部の分離が検出可能なドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)の一例を図 11.28 に示す。
・操作ヘッド部の分離が検出できない従来の全スイッチ
アクチュエータ引抜時 アクチュエータ挿入時 操作ヘッド部外れ時
メイン回路(11-12)(NC) OFF ON ON
モニタ回路(21-22)(NC) OFF ON ON
・操作ヘッド部の分離が検出可能な安全スイッチ
アクチュエータ引抜時 アクチュエータ挿入時 操作ヘッド部外れ時
メイン回路(11-12)(NC) OFF ON OFF
モニタ回路(21-22)(NC) OFF ON ON
注) 操作ヘッド部外れ検出機能は直接開路動作機能ではありません。
図 11.28 操作ヘッド部の分離が検出可能なドアインタロックスイッチの一例
また、従来から安全装置として日本で広く使用されているセーフティプラグには無効化防止の機能が無いため、
ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)の無効化防止の機能を利用してセーフティプラグの代わりに使用す
ることができるタイプのアクチュエータや、危険区域に接近する前に動力 OFF を南京錠で固定する米国の安全方
策であるロックアウトの考え方を活用し、ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)のアクチュエータ挿入口
を塞いで南京錠を掛けるパドロックハスプも用意されている。(図 11.29)
図 11.29 プラグ形アクチュエータとパドロックハスプの一例
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(参考 A) 関連規格
以下にドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)に関連の深い規格を挙げる。もちろんこれらが全て
ではないが、ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)をメーカとして設計もしくはユーザとして使用
する際に、参考になるものと考える。ただし本文に掲載する規格年号は参考で、改正された場合は最新の
ものを参照されたい。
(1) ISO12100: 2010、Safety of machinery -- General principles for design -- Risk assessment and
risk reduction
(2) JIS B 9700: 2013、機械類の安全性-設計のための一般原則-リスクアセスメント及びリスク低減
(3) ISO14119: 1998、 Safety of machinery -- Interlocking devices associated with guards --
Principles for design and selection
(4) JIS B 9710: 2006、機械類の安全性-ガードと共同するインタロック装置-設計及び選択のための原
則
(5) GS-ET-15: 2011、Principles of testing and certification for positively opening position
switches
(6) IEC60529: 2001、Degrees of protection provided by enclosures (IP Code)
(7) JIS C 0920: 2003、電気機械器具の外郭による保護等級(IPコード)
(8) GS-ET-19: 2011、Principles of testing and certification for interlocking devices with solenoid
guard-locking
(9) IEC60947-5-1: 2009、Low-voltage switchgear and controlgear - Part 5-1: Control circuit devices
and switching elements - Electromechanical control circuit devices
(10) JIS C 8201-5-1: 2010、低圧開閉装置及び制御装置-第5部:制御回路機器及び開閉素子-第1節:
電気機械式制御回路機器
(11) ISO13857: 2008、Safety of machinery -- Safety distances to prevent hazard zones being reached
by upper and lower limbs
(12) JIS B 9718: 2013、機械類の安全性-危険区域に上肢及び下肢が到達することを防止するための安
全距離
(13) ISO13855: 2010、Safety of machinery -- Positioning of safeguards with respect to the approach
speeds of parts of the human body
(14) JIS B 9715: 2013、機械類の安全性-人体部位の接近速度に基づく安全防護物の位置決め
(15) IEC60947-1: 2007、Low-voltage switchgear and controlgear -- Part 1: General rules
(16) JIS C 8201-1: 2007、低電圧開閉装置及び制御装置 -第 1部:通則
(17) IEC60664-1: 2007、Insulation coordination for equipment within low-voltage systems - Part
1: Principles, requirements and tests
(18) JIS C 60664-1: 2009、低圧系統内機器の絶縁協調―第 1部:基本原則,要求事項及び試験
(19) IDEC 安全コンセプトブック:2008
無断複写・転載を禁じる。
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