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制御機器の基礎知識 (5) カムスイッチ

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スイッチ・表示灯編

操作用スイッチや表示灯の仕組みや選び方を説明した制御機器の基礎知識【スイッチ・表示灯編】。
下記章がありますが、本章では、カムスイッチの仕組みや選び方を解説。
他の章や操作用スイッチのカタログは操作用スイッチ特集 https://jp.cluez.biz/feature/page/101/ にてご確認ください。

1.安全規格と用語の説明
2.押しボタンスイッチ
4.表示灯
5.カムスイッチ
6.多方向スイッチ
7.トグルスイッチ
8.設定/信号入力用スイッチ
9.マイクロスイッチ
10.リミットスイッチ
11.ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)
12.3ポジションイネーブルスイッチ
13.資料編
※第3章は統合による欠番
※第1,2,4,5,6,7,8,9,11,12,13章はNECA Webサイトにてご確認を
お願いいたします。http://www.neca.or.jp/standard/howto/switch/
※規格に関しては、必ず現行規格のご確認をお願いいたします。

※本コンテンツの商用目的、営利目的での利用、また無断転載を禁じます。
(本コンテンツは、一般社団法人 日本電気制御機器工業会及び第三者が有する著作権により保護されております。)
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このカタログについて

ドキュメント名 制御機器の基礎知識 (5) カムスイッチ
ドキュメント種別 ハンドブック
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このカタログの内容

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スイッチ・表示灯編 カムスイッチ
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制御機器の基礎知識 【スイッチ・表示灯】 5.カムスイッチ 目次 5.1 定義 ..................................................................................... 2 5.2 種類 ..................................................................................... 2 5.2.1 標準型 ............................................................................... 2 5.2.2特殊型 ................................................................................. 4 5.3 原理と構造 ............................................................................... 6 5.4 定格と特性 ............................................................................... 7 5.4.1 定格値と規格値 ....................................................................... 7 5.4.2 使用負荷種別 ......................................................................... 7 5.4.3 正常及び異常負荷特性 ................................................................. 7 5.4.4 耐久性 ............................................................................... 8 5.4.5 保護構造 ............................................................................. 8 5.4.6 ノッチと開閉状態 ..................................................................... 8 5.4.7 標準使用条件 ........................................................................ 10 5.4.8 操作部の強度 ........................................................................ 10 5.4.9 端子部の強度 ........................................................................ 10 5.4.10 耐振動性及び耐衝撃性 ............................................................... 11 5.5 正しい選び方 ............................................................................ 11 5.6 上手な使い方 ............................................................................ 12 5.6.1 設計上の注意点 ...................................................................... 12 5.6.2 定期点検、保守 ...................................................................... 13 5.7 故障とその対策 .......................................................................... 13 5.8 検査と試験 .............................................................................. 14 5.8.1 形式試験 ............................................................................ 14 5.8.2 受渡試験 ............................................................................ 14 5.8.3 NECA 規格における検査の種類 .......................................................... 14 Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 1
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5.1 定義、5.2 種類、5.2.1 標準型

5 カムスイッチ 5.1 定義 カムスイッチとは低圧の電路に接続されて主回路の開閉、及び制御回路での信号の伝達及びインターロックな どに使われるもので、1~3 回路分の固定接触子と円板状のカムの形に従って動作する可動接触子を一体に組合せ たコンタクトエレメントを必要回路数に応じて積重ねたものを、取っ手の回転により操作し、多様の開閉状態を 得るスイッチである。 国際規格である IEC 60947-5-1 を翻訳し作成された JIS C 8201-5-1(低圧開閉装置及び制御装置第 5 部:制御 回路機器及び開閉素子 第1節:電気機械制御回路機器)が、国内規格として適用されている。 なお、詳細な規格としては、一般社団法人日本電気制御機器工業会規格 NECA C 4522(制御用カムスイッチ)があ る。 5.2 種類 5.2.1 標準型 カムスイッチは取付方法及び大きさ(表 5.1 及び図 5.1~5.3)、取っ手の形状(図 5.4)、及び操作方法(表 5.2) によって種類分けをしている。 表 5.1 スイッチの取付方法及び大きさによる種類(NECA C 4522 による) 形名 スイッチの取付方法 スイッチの大きさ 形状及び寸法 A22形 1 個の締付リングで取り付け 取付部の直径が 22mm 図 5.1 の A22による。 A25形 る。 取付部の直径が 25mm 図 5.1 の A25による。 A30形 取付部の直径が 30mm 図 5.1 の A30による。 B60形 2 本のねじで取り付ける。 ノッチ記号板台(正方 図 5.2 の B60による。 C60形 4 本のねじで取り付ける。 形)の一辺が 60mm 図 5.3 の C60による。 図 5.1 形状及び寸法 A型(NECA C 4522 による) Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 2
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図 5.2 形状及び寸法 B型(NECA C 4522 による) 図 5.3 形状及び寸法 C型(NECA C 4522 による) 図 5.4 取っ手の形状(NECA C 4522による) Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 3
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5.2.2特殊型

表 5.2 操作方法の種類(NECA C 4522による) 取っ手の押し又は引き操作の有無 復帰方式 ロックの有無 区分 記号 区分 記号 区分 記号 押し回し手動戻し J 手動復帰 M キーロック(機械式) K 押し回し自動戻し P 自動復帰 A マグネットロック(電気式) E 引き回し手動戻し Q 手動自動復帰 C ロックなし - 引き回し自動戻し R 一方回転 N 押し引きなし - 操作方法種類の説明 (1) 記号 J、P、Q、R 取っ手の押しまたは引き 取っ手を回すとき、事前に押しまたは引かないと回すことのできないもの。押し引は特定ノッチに限り他のノッ チでは普通の回転操作をするもの、また押し引動作の戻りが自動的に行われるものなどがある。不用意に回転操 作をすると重大な危害の起こる恐れのある化学プラント及び交通、移送機械などの運転に当たり、操作直前での 状況確認の徹底並びにインターロックのために使われる。これはスイッチの普通の軸の外側に滑合する太い軸を はめた二重軸、並びに復帰スプリング及びロック機構等を備えたものである。 (2) 記号 A 自動復帰 取っ手をあるノッチまで回転操作し手を離すと、予め決められているノッチまで自動的に戻るもので、機械の寸 動運転を行う時などに使われる。これは取っ手を回すときに、たわませて復帰力を貯えるねじりスプリングなど を使った復帰機構をスイッチの軸に結合したものである。 (3) 記号 M 手動復帰 取っ手をあるノッチまで回転操作して手を離すと、その位置を保持するものでいわゆる基本的なカムスイッチで ある。 (4) 記号 C 手動自動復帰 あるノッチ間は、予め決められているノッチまで自動的に戻る自動復帰タイプで、これとは異なるノッチ間はそ のノッチで手を離すと、その位置を保持する手動復帰タイプで、上記の (2)、(3)を組み合わせたものである。 (5) 記号 N 一方回転 取っ手はある方向だけに回転操作することが出でき、反対方面には回転操作することの出できないもので、順序 起動を行う電動機群及び進相用コンデンサの投入などに使われる。これは平板状の一方クラッチを機構部に組込 み、軸の逆転を制止するものである。 (6) 記号 K、E 取っ手のロック形 取っ手を特定のノッチで動かせないよう、キーによりロックするもの、または電気的な信号でロックするものが ある。これは取っ手の内部にシリンダロックを組込んだもの、あるいは軸につばを付け、ソレノイドで歯止めを つけるなどによるものである。 このとき使用するロック用電磁石の定格使用電圧は NECA C 4522 では表 5.3のように規定している。 表 5.3 ロック用電磁石の定格使用電圧(NECA C 4522による) 単位 V 交流・直流の別 ロック用電磁石の定格使用電圧 交流 100 200 直流 6 12 18 24 48 5.2.2特殊型 カムスイッチの特長を活かした下記のような特殊タイプもある。 ・接点ユニットと並列に色々な位置決め機構を容易に配置できる Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 4
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・ 接点ユニットを容易に複数積み重ねることができる ・ この複数積み重ねたひとつの接点アセンブリーを取っ手に対し並列に配置したりすることで ・ 一度に多くの回路を切り替えることができる。これらの特長を用いてさまざまの用途にカムスイッチが使用さ れている。 ・ 図 5.5~5.7 にその代表的な例を示す。 図 5.5 特殊型カムスイッチの例 1 図 5.6 特殊型カムスイッチの例 2 図 5.7 特殊型カムスイッチの例 3 Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 5
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5.3 原理と構造

5.3 原理と構造 図 5.8 にカムスイッチの基本的な構造を示す。一つのカムスイッチは図中に記したようにその機能に従って、 接点部と位置決め機構部に分けられる。 (1) 接点部 接点部は一つまたは、複数のコンタクトエレメントから成り立っている。この一つのコンタクトエレメントは 一端に接点片を、また他端に端子ねじを備えた固定接触子の数組と、これに対応して両側に接点片を付けた可動 接触子と、またこれを固定接触子に圧接するためのスプリング及び、カムの状態を可動接触子に伝えるカムフォ ロアが組込まれる。ケースの中央部には取っ手によって回される軸が貫通し、そこに円板状のカムが固定され、 カムの凹部にカムフォロアが落ち込むと、固定及び可動接触子は接触して回路は閉となる。また、カムに切込み のない位置では一定の間隔に離されて回路は開かれる。 接点片は銀または銀合金、接触子は銅または銅合金で造られ、さびを防ぐ表面処理が施され、その形状は通電 による温度上昇が接触子自身並びに近接したケースやその他の部品に危険でないような形に決められ、またそれ らの配列は電圧に対して漏電、混触及び接地などが生じないよう安全な距離を保つため、JIS C 8201-1(低圧開閉 装置及び制御装置-第一部:通則)に示された寸法に準拠している。 一つのコンタクトエレメントには通常 2 回路、時には 1 または 3 回路分の接触子が組込まれ、これを積重ねて 希望の回路数のユニットを造るが、一般には 10 段 20 回路位までのものが多い。ケースの端子ねじ部には一連の 端子番号が明瞭に記入されている。 (2) 位置決め機構部 機構部はケースと蓋で箱状に造られ、ケースの前端はスイッチを盤などに取付けるときのつばとなっている。 なお、小形のスイッチでは、ねじと回り止め座金及びリングナットとなっている。 機構部内側の軸にはスターホイルがはめ込まれ、更にその外周にはスプリングで押付けられたローラまたはボ ールなどが組込まれている。スターホイルは切込み凹部とローラの中心が一致した位置で軸を止めて保持し、又 凸部では止まりにくく切込位置まで速やかに自動的に回って停止するように造られている。この停止する位置は アクチュエートポジション、またはノッチと呼ばれる。 カムスイッチを盤などに取付けると、位置決め機構部及び接点部は取付面の内側となり、軸は盤にあけられた 軸穴を貫通して前面に突き出し、ここに取っ手が組付けられる。また盤面にはノッチとそこでのスイッチの作動 などを記した銘板が取付けられて、取っ手の底部にある指標により、その時の状態を表示する。取っ手は銘板な どとこすれることなく、滑らかに操作できることが必要で、このため、取っ手には取付盤の厚さに応じて、取っ 手を軸上の任意の位置に確実に固定することができるような、特別な構造の支持具を組合せたものもある。 図 5.8 カムスイッチの構造 Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 6
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5.4 定格と特性、5.4.1 定格値と規格値、5.4.2 使用負荷種別、5.4.3 正常及び異常負荷特性

5.4 定格と特性 ここでは、JIS C 8201-1及び JIS C 8201-5-1で規定している主な定格と特性について述べるが、その詳細は 前章の用語の定義及び用語の説明を参照されたい。 定格と特性は、複雑であり、カムスイッチ本体にそのすべてを表示することは困難で、通常は定格絶縁電圧(Ui) と開放熱電流(Ith)、並びにそのスイッチの形式記号などが表示され、個々の用途における使用上の性能は、納 入仕様図、カタログ及び技術資料など記載される。使用に際しての要求が、これら資料による保証値で満足でき ないときは、製造業者と使用者の間で十分打合わせをすることが必要で、要求をはっきりするために、性能の各 項について数値と、あわせて試験方法を明示し、判定の基準を確定しておくことが大切である。 5.4.1 定格値と規格値 (1) 定格使用電圧(Ue) 定格使用電圧は、定格使用電流と組み合わせて、カムスイッチの運用を決める電圧の値で、関係する試験及び 使用負荷種別がこの値を基準にして決められる。 (2) 定格絶縁電圧(Ui) 定格絶縁電圧は、カムスイッチの耐電圧試験の電圧及び沿面距離の基準となる電圧の値である。いかなる場合 でも、定格使用電圧の最大値は定格絶縁電圧の最大値を超えてはならない。なお、定格絶縁電圧の指定がない場 合、定格使用電圧の最高値を定格絶縁電圧とみなす。 (3) 耐電圧 耐電圧の特性はカムスイッチの製造者が定格インパルス耐電圧(Uimp)を宣言している場合には JIS C 8201-1 の 8.3.3.4による。カムスイッチの製造者が定格インパルス耐電圧(Uimp)を宣言していない場合には JIS C 8201-5-1 の 8.3.3.4.1、8.3.3.4.2及び 8.3.3.4.3 による。 (4) 開放熱電流(Ith)[定格通電電流(Ith)] カムスイッチの温度上昇試験に使用される試験電流の最大値で、開閉なしに連続通電できる電流の最大値であ る。 (5) 閉鎖熱電流(Ithe)[閉室における定格通電電流(Ithe)] カムスイッチを指定のエンクロージャー(カムスイッチの場合、通常は操作箱)内に取り付けたときの温度上 昇試験に使うための、カムスイッチの製造業者によって定められた電流値である。カムスイッチが製造業者のカ タログなどで箱入り装置として説明されており、かつ、指定された形式及び大きさの操作箱と一緒に使うことを 意図している場合、この種の試験は強制となる。 (6) 定格使用電流(Ie) 定格使用電流は、定格使用電圧と組合わせて、カムスイッチの運用を決める電流の値で、関係する試験及び使 用負荷種別がこの値を基準にして決められる。 (7) 接触抵抗 接触抵抗は接触子が閉になったときの可動及び固定接触子間の生じる抵抗で、接触方式、接点片の材質及び状 態、接触圧力などで決まる。接触抵抗値は、一定の電流を流したときの接触子間の電圧降下より算出する。 (8) 温度上昇限度 カムスイッチ各部に取付けられている部品の温度上昇限度は端子部とアクセスできる部分に分けられ、それぞ れついて JIS C 8201-1でその限度が示されている。 5.4.2 使用負荷種別 カムスイッチの使用目的や用途を明確にするために用いられる表現で、開閉素子の使用負荷種別(投入及び遮 断電流容量による級別)として規定されている。 5.4.3 正常及び異常負荷特性 (1) 定格投入及び遮断容量と、正常条件下における開閉素子の挙動。 Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 7
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5.4.4 耐久性、5.4.5 保護構造、5.4.6 ノッチと開閉状態

いわゆる、定格における投入及び遮断容量の検証をすることで、カムスイッチは使用負荷種別 (製造業者が宣 言している級別) の条件のもとに、故障することなく、その動作回数を電流開閉できなければならない。 (2) 異常条件における投入及び遮断容量。 いわゆる過負荷に対する投入及び遮断容量の検証をすることで、従来の過負荷開閉試験と検証の方法は同じで ある。カムスイッチは使用負荷種別(製造業者が宣言している級別)の条件のもとに、故障することなく、その動 作回数を電流開閉できなければならない。 5.4.4 耐久性 一般的に耐久性とは、カムスイッチの部品の修理または交換が必要になるまでの無負荷(主接点に電流が流れ ない)での操作回数を示す機械的耐久性と有負荷での操作回数を示す電気的耐久性の両方を言う。 5.4.5 保護構造 1) JIS C 8201-1 では、箱入り装置及び一体形エンクロジャーをもつ装置の保護等級として IP コードを指定し ているが、カムスイッチ単体の場合は基本的には、そのどちらにも該当せず、JIS の上では IPコードの指定 はない。しかしながら、使用環境上の理由から、箱もしくは操作盤に取付けたとき、取付面の表面に出る部 分、つまり、表 5.1 及び図 5.1 に示した A 形の場合はリング取付部と、取っ手を取付ける軸部分、そして表 5.1及び図 5.2、図 5.3に示した B及び C形の場合は 2カ所または 4カ所の取付けねじ部と位置決め機構部よ り出ている取っ手を取付ける軸部分とに IPコードを指定することがある。この IP コードは JIS C 0920 [電 気機械器具の外郭による保護等級(IP コード)]によるが、JIS C 8201-1 の附属書 C に、箱入り装置の保護 等級、として明確に規定している。 2) NECA C 4520 では“油に対する保護性”及び“腐食に対する保護性”についても規定している。また、カム スイッチの接点部の場合、接触部の温度上昇は通常、自由大気中での開放熱電流を基準に定められている。 したがって、上記の保護構造の目的で密封度が高く、空間の少ない操作箱などにカムスイッチを取付けると、 温度上昇上、悪影響が生じる場合もあるので注意が必要である。 5.4.6 ノッチと開閉状態 (1) ノッチの角度 隣接するノッチの角度は NECA C 4522 では次のとおりとしている。 10、15、22.5、30、36、45、60、90(単位 度)。 (2) ノッチの表し方 ノッチの表し方は、ノッチ角度、ノッチ数及び第 1ノッチの位置の順とし、図 5.9による。 第 1 ノッチの位置は、アナログ式時計の文字盤の 9 時の位置を基点として、そこから偏っている平面角度の数 字で表す。この場合第 1 ノッチから時計回りに偏っているときは(+)、反時計回りに偏っているときは(-)の符号 を用いる。なお、基点と一致する場合は、表示を付けない。 (3) 開閉状態 接触子の開閉及び操作状態を分かりやすく表すために、展開図を用いる方法が広く行われている。 NECA C 4522 による、展開図による図示の方法を、以下に示す。 ① 回路を横の細線で書き、その両端に〇を付け、端子番号を記入する。 ② ノッチは回路を表す線に交差する縦の細線などで書き、取っ手の側に記号を付ける。 ③ ノッチごとに表 5.2 に定める記号を書く。ただし、手動復帰の場合は、記号 M を省略してもよい。なお、操 作が自動復帰及び一方回転のときは図記号を併記する。 ④ 開閉状態は、回路を示す横線上に図記号を付けて表す。 ⑤ 図記号は、表 5.4 による。 ⑥ 展開図の例は図 5.10及び図 5.11 による。 なお、JIS C 8201-5-1 では、ロータリスイッチの動作ダイヤグラムを描く方法の推奨例を記しているので、参 考として表 5.5 にその例を示しておく。このダイヤグラムでは取っ手の動作については表現していない。 Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 8
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図 5.9 ノッチの表し方(NECA C 4522による) 表 5.4 開閉及び操作状態を表す図記号(NECA C 4522による) 図 5.10 展開図の例(NECA C 4522による) 図 5.11 展開図の例(NECA C 4522による) Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 9
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5.4.7 標準使用条件、5.4.8 操作部の強度、5.4.9 端子部の強度

表 5.5 ロータリスイッチの動作ダイヤグラムを描く方法の推奨例(JIS C 8201-5-1による) 操作部の位置 例 接点素子の配列 1 2 3 4 5 1 操作部の位置 No. 1 だけ閉路する接点素子 × 2 操作部の位置 No. 2, 4, 5 で閉路する接点素子 × × × 3 端子で切換接点素子として用いる二つの接点素子 × 3 × 4 操作部の位置の No. 2, 3 の間で瞬時閉路する接点素 × 子 5 操作部の位置の No. 3, 4 の間で瞬時開路する接点素× × × × 子 6 操作部の位置の No. 4, 5 の間で接触を保持する接点 × × 素子 操作の位置No. 1, 2の間で開路前に閉路する二つの接 × 7 点素子 × 操作部の位置No. 1, 2の間で閉路前に開路する二つの × 接点素子 *8 × 接点素子 B が接点素子 A より早く閉じて早く開路す × × 9 A る動作 B × × 注* 閉路前に開路する接点素子は、他の回路に電流を投入する前に、一方の回路の電流を遮断するために用いる。 5.4.7 標準使用条件 スイッチの標準的な使用条件を示すもので、周囲温度、標高、湿度、汚損度などが規定されている。 5.4.8 操作部の強度 JIS C 8201-5-1 では制限運動,又は単方向運動の操作部を用いる場合には,実際の最大起動モーメントの 5 倍 に耐える手段を装着しなければならないとされており, NECA C 4522 では、表 5.6 に示すトルクまたは力を操作 部に 1分間負荷し各部に異常のないことと規定している。 表 5.6 操作部強度(NECA C 4522 による) 操作部強度 形名 A22・A25・A30 B60・C60 回転力(操作トルク)N・m 3 5 押し又は引き力(1)N 500 注(1) 押し操作には、押しの力を、引き操作には引きの力を 押し引き操作には両方の力をそれぞれ加える。 5.4.9 端子部の強度 ねじ端子の強度を検証するときのねじ部の締付けトルクに関して JIS C 8201-1の規定と NECA C 4520の規定を 表 5.7、表 5.8に示す。 ねじ端子に関する詳しい情報及び、ねじ端子以外の端子に関する情報は、JIS C 8201-1及び JIS C 8201-5-1 に 細かく記載されており、また接続する導体(主には電線)に関する情報も記載されている。 Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 10
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5.4.10 耐振動性及び耐衝撃性、5.5 正しい選び方

表 5.7 機械的強度の検証を行うときのねじ式端子に加える締付トルク(JIS C 8201-1 による) ねじ部の直径 締付トルク mm N・m メートル表示の基準値 直径の範囲 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 1.6 1.6以下 0.05 0.1 0.1 2.0 1.6を超え 2.0以下 0.1 0.2 0.2 2.5 2.0を超え 2.8 以下 0.2 0.4 0.4 3.0 2.8を超え 3.0 以下 0.25 0.5 0.5 - 3.0を超え 3.2 以下 0.3 0.6 0.6 3.5 3.2を超え 3.6 以下 0.4 0.8 0.8 4 3.6を超え 4.1 以下 0.7 1.2 1.2 4.5 4.1を超え 4.7 以下 0.8 1.8 1.8 5 4.7を超え 5.3 以下 0.8 2.0 2.0 6 5.3を超え 6.0 以下 1.2 2.5 3.0 8 6.0を超え 8.0 以下 2.5 3.5 6.0 10 8.0を超え 10.0 以下 - 4.0 10.0 12 10 を超え 12 以下 - - 14.0 14 12 を超え 15 以下 - - 19.0 16 15 を超え 20 以下 - - 25.0 20 20 を超え 24 以下 - - 36.0 24 24 を超えるもの - - 50.0 Ⅰ例 締め付けるときの、ねじ穴からはみ出る部分がないような頭なしねじ、又は 先端の刃の部分がねじの基本部分の直径より大きい(マイナス)ねじ回しでは 締付けができないようなねじに適用する。 Ⅱ例 ねじ回しで締め付けるようにしたねじ及びナットに適用する。 Ⅲ例 ねじ回し以外の手段で、締め付けるようにしたねじ及びナットに適用する。 表 5.8 ねじ端子の強度(NECA C 4520による) 端子ねじの呼び径 mm 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 6.0 締付トルク N・m 0.4 0.5 0.8 1.2 1.5 2.0 2.5 5.4.10 耐振動性及び耐衝撃性 JIS C 8201-1 では耐振動性、耐衝撃性ともに規定はなく、原則的には、製造業者と使用者間で協議していくこ とになる。なお、NECA C 4520では以下の規定がある。 (1) 振動応答解析試験 供試品の共振点を検出する試験。 (2) 固定振動数耐久試験 いわゆる定振動耐久試験である。 (3) 衝撃試験 各部の有害な緩み、ひび割れなどの損傷の発生の有無を検証する衝撃耐久性試験と、1ms を超え て閉路接触子が開路することなく、また開路接触子が閉路しないことを検証する衝撃誤動作試験がある。 5.5 正しい選び方 カムスイッチの選択は、製品に関する品質情報を集め、それらを理解し、使用を検討しているスイッチの仕様 と比較することから始まるが、カムスイッチの用途は非常に範囲が広く、それぞれの用途においてすべてを満足 させることができるオールラウンドな製品がないために、カムスイッチの機種選定がスムーズにいかないことが ある。そこで、使用目的に合ったカムスイッチを選ぶために特に重要と思われる事項を以下に示す。 (1) 使用環境 周囲温度及び湿度、汚損度 (カムスイッチの場合、接点部分の保護構造の必要性など) 、振動及び衝撃条件。 (2) 機械的特性 取っ手 (操作ハンドル) 部の操作方法及び形状、取付方法、操作部の強度、操作頻度と期待する機械的寿命。取 Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 11
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5.6 上手な使い方、5.6.1 設計上の注意点

っ手(操作ハンドル)の形状、大きさ及びカムスイッチが取付けられている位置などによっては、予想を超える力 が取っ手(操作ハンドル)に負荷される場合がある。取っ手 (操作ハンドル) で体重を支えたり、物がよくぶつか るなど、当初は予想もしなかったことで操作部分が故障し事故の原因になることがあるので、このような状況が 予想される場合は、この危険性を回避するために操作部の強度に関する品質目標を別に定める必要性がある。 (3) 電気的特性 定格絶縁電圧 (Ui) 、定格使用電圧 (Ue) 、開放熱電流(Ith) 、定格使用電流 (Ie) 、使用する負荷の種類。 (4) 接続(配線)用品の整合性 接続電線、圧着端子などの適用サイズと、カムスイッチの端子部適合性。 (5) 使用条件に合わない項目 使用条件と合わない項目とそれに対する具体的な数値を製造業者に提示し、解決策があるかどうか調査してお く必要性がある。 (6) スイッチのシリーズ化 仕様変更に対する対応性、使用条件が変わり要求する各特性値が変わっても対応できるかどうかは重要な課題 である。カタログなどから選択したスイッチがシリーズ化されているかどうか調査しておく必要がある。 (7) カムスイッチの主な接触方式とその特長 カムスイッチでは主に表5.9に示すような接触方式があり、その一般的な特長は表5.10に示したとおりである。 表 5.9 カムスイッチの主な接触方式 表 5.10 接触方式の優劣比較 接触方式 利点 欠点 2点突合せ 2点切り(2個所で開閉をする)になるの 開閉個所が多いので接触不良の発生確立が高 で、大きさの割に重負荷の開閉性が良 くなる。 い。 1点突合せ 1点切り(1個所で開閉をする)のため2 重負荷の開閉性が 2点切りに比べ劣る。 点突合せに比べ接触不良率が低くな る。 2点しゅう動 突合せに比べ接触信頼性が向上する。 通電容量を大きくしにくい。 1点しゅう動 2 点しゅう動より接触信頼性が向上す 重負荷の開閉性が 2点しゅう動より劣る。 る。 ツインしゅう動 1 点しゅう動より接触信頼性が向上す 可動接触子の形状が複雑になり、接点数も増 る。 加するので、製造コストも割高になる。 5.6 上手な使い方 5.6.1 設計上の注意点 カムスイッチを用いた設計を実施する上での注意、確認事項は以下のとおりである。 (1) カムスイッチ本体に関して ① 速切りでないものは操作の際、取っ手の停止すべき正しい位置が手ごたえで確かめられること。 ② ねじ、リベットなどで締付けて電流を通す接続部分は、収縮することによって支障を生ずる合成樹脂成形品 などの絶縁物をはさんで同時に締付けないこと。 Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 12
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5.6.2 定期点検、保守、5.7 故障とその対策

③ 緩むおそれのある部分には適当な緩み止めを施すこと。 ④ 取付ねじなどの有効ねじ山数は、2 山以上であること。 ⑤ 外部の電線引入口は、電線の絶縁を損傷しない形状または構造としてあること。 ⑥ 狭いスペースに取付ける場合、取付けや結線作業が容易な構造のものを選ぶべきである。 ⑦ 接点構成の変更や追加などが将来考えられるような場合は、取付寸法、製品寸法などの変更箇所の互換性を あらかじめ考慮しておくこと。 ⑧ 接続電線や圧着端子などの適用サイズが、使用するカムスイッチの端子部と合っており十分な配線と作業ス ペースがあること。このとき、形式記号及び端子番号が、配線や他の機具で見えない配置にならないこと。 ⑨ カムスイッチを複数取付ける場合は、ハンドルどうしが互いに干渉しないように、また盤内の結線の際、隣 接するカムスイッチが互いに干渉して、ドライバなどの結線用工具が使用できなくならぬようにカムスイッチの 取付けピッチを考慮すること。 ⑩ 箱などに組込む場合、絶縁距離に注意すること。 ⑪ 引く、押す、一方回転などの操作条件があるものは、銘板にはっきりと分かるように表示し、誤操作を防止 すること。 ⑫ 奥行き寸法が長いものは振動だけではなく結線作業中に端子締付方向の荷重が加わって、カムスイッチが破 損することがあるので、支え金具などを考慮し、カムスイッチの質量、操作トルクに対し、安全なパネル厚を設 定すること。 (2) 使用負荷に関して ① 交流と直流ではカムスイッチの開閉能力が大きく異なるので、定格を確認すること。直流の場合は制御でき る容量が交流に比べ極端に低下するので注意が必要となる。 ② 負荷の種類によっては、定常電流と突入電流に大きな差がある場合があり、また誘導を含む場合は逆起電圧 が発生する。この影響で、電圧が高いほどカムスイッチの接点の消耗、移転が増大するので、定格の条件を確認 すること。 ③ 微小電圧、電流負荷の場合、銀系接点を用いた一般用のカムスイッチでは接触信頼性が低下する恐れがある ので、微小負荷用を使用する。 ④ 接点の寿命を延ばしたり、アークによる生成物(炭化物、その他)を少なくするためには接点保護回路を用 いるが、使用回路を間違えると逆効果となる。また接点保護回路を用いた場合、負荷の動作時間が遅くなる場 合があるので注意すること。なお、この保護回路はあまり離れていると効果が発揮できない場合があるので負 荷または接点の近くに取付けること。 5.6.2 定期点検、保守 定期点検は事故を防ぐ上で非常に大切なものであるが、点検作業の取扱いを誤れば逆に事故の原因となる。工 具、点検の順序及びその方法などについて慎重に検討し、実施することが肝要である。また、取っ手などの操作 系の部分の取り替えを行う場合は、取扱い説明書、作業指導書などで理解した上で行わなければならない。取り 替えがむずかしいものは、製造業者に依頼することが望ましい。 接点部分の部品交換は基本的に使用現場では不可能であるため、部品交換が必要な場合は、製造業者に依頼す ることになる。 5.7 故障とその対策 カムスイッチは、定められた条件の下では簡単に故障するものではない。ここでは、製造業者の経験をもとに、 主な故障モードとその推定原因を表 5.11に示す。 過去の実績で最も多いのは、負荷に対して接点部の選択の誤りがほとんどで、使用条件の把握が不十分であっ たことに起因することが多い。また、操作部については誤って、手以外の物が当たってしまい操作部を破損して しまうことが多く報告されている。 カムスイッチの故障に対する処置は現品交換が原則である。故障品の分解、修理、再使用は品質の保証が損な Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 13
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5.8 検査と試験、5.8.1 形式試験、5.8.2 受渡試験、5.8.3 NECA規格における検査の種類

われるばかりではなく、新たな事故を招きかねない。その理由として、正しい対策を実施するために不可欠であ る正確な故障モードの把握及びその解析と、それに基づく当該品の調査による原因究明を阻害することになるか らである。 表 5.11 主な故障モードと推定原因 故障個所 故障モード 推定原因 操作部 取っ手の破損 規定値以上の操作トルクで操作。 位置決め機構部 取っ手停止部の破損 (操作端部) 接点部 接触不良 接点部にゴミ、ホコリが付着している。 接点表面に化学的皮膜が生成している。 負荷電流が接点の仕様に対して低すぎる。 接点溶着 負荷電流が接点の仕様に対して高すぎる。 電流異常、負荷電流の異常。 5.8 検査と試験 JIS C 8201-1 では試験の種類を形式試験、受渡試験、抜取試験の三つに分類しているが、カムスイッチが該当 するのは、以下の二つの試験である。 5.8.1 形式試験 形式試験は、カムスイッチの設計が JIS C 8201-5-1 を満足することを検証するために行う試験で以下の事項の 検証を含む。 (1) 温度上昇 (2) 耐電圧特性 (3) 正常条件におけるカムスイッチの投入及び遮断容量 (4) 異常条件におけるカムスイッチの投入及び遮断容量 (5) 構造上の要求 試験の項目と順序については、JIS C 8201-5-1の 8.3.1に規定している。 5.8.2 受渡試験 受渡試験は、製品の不具合発見と、製品が正しく機能するかどうかを確かめるために行うもので、個々の製品 に対して実施する。基本的に、カムスイッチの場合は、機械的な動作 (接点部の電気的な開閉動作も含む) を検 証する機械的試験と耐電圧試験に限定されている。 5.8.3 NECA規格における検査の種類 NECA C 4520 (制御用スイッチ通則) における検査の種類は以下のとおりで、その中で試験基準及び判定基準を 規定している。形式検査ではすべての項目を、また受渡検査では(1)構造、(5)絶縁抵抗、(6)耐電圧の項目を指定 している。 (1) 構造 (開閉状態の確認を含む) (2) 強度 (3) 操作力 (操作トルク) (4) 温度 (5) 絶縁抵抗 (6) 耐電圧 (7) 接触抵抗 Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 14
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(8) 閉路及び遮断電流容量 (9) 機械的及び電気的開閉耐久性 (10) 衝撃 (11) 振動 (12) 高温高湿 (13) 低温 (耐寒性) (14) 高温 (耐熱性) (15) はんだ付け性 (16) 固形物の侵入に対する保護性 (17) 塩水噴霧 無断複写・転載を禁じる。 Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 15
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スイッチ・表示灯編 リミットスイッチ