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製造業のAI活用とPoC疲れの打破
【概要】
製造業はAI活用の必要性を感じており、PoC(概念実証)を実施してもそこから先に進めない「PoC疲れ」が発生している。
本記事では、AI導入のポイントについて解説し、製造業の文化改革とAIの協力について議論される。
【こんな方におすすめ】
・製造業に関わる経営者および導入担当者
・AIの導入に興味があるが、PoCの壁にぶつかっている人
・製造業でAIを導入し、生産プロセスを向上させたい人
【解説ポイント】
・製造業におけるAIの活用効果と必要性
・PoC疲れの主な理由
・AI導入に向けた具体的なアクションプラン
・AIの導入におけるカイゼンと文化改革
・現場とAIの共同成長を実現するポイント
◆詳細はホワイトペーパーをダウンロードしてご覧下さい。
このカタログについて
ドキュメント名 | 【ホワイトペーパー】製造業でのAI活用待ったなし PoC疲れを打破するポイントとは |
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ドキュメント種別 | ホワイトペーパー |
ファイルサイズ | 920.5Kb |
登録カテゴリ | |
取り扱い企業 | 株式会社ワイ・ディ・シー (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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Nikkei Business Publication
Spring
2019
製造業でのAI活用待ったなし
P oC疲れを打破するポイントとは
「第 4 次産業革命(Industry 4.0)」の潮流が世界中に広がり、先進国のみならず新興国の企業も、人工知能
(AI)を活用した競争力の高いものづくりを目指すようになった。日本企業も、うかうかしていられない状況だ。
近年、そんな危機感に背中を押されて、AIの活用を模索するところが増えてきた。ところが、システム導入に
向けて概念実証(PoC)を行ってはみたものの、そこから先になかなか進めない。繰り返されるPoC 自体に疲
れてしまったという企業も多い。どのようにPoCに取り組み、生産現場への導入、運用につなげればよいのか。 内藤 孝雄氏
製造業向け情報システムの構築で豊富な実績を持つワイ・ディ・シー(以下、YDC)に聞いた。 株式会社
ワイ・ディ・シー
開発本部
製品開発部
日本は自他ともに認める“ものづく 定を、AIで行うことができるようになっ 関心がないわけではない。「AI関連の展 部長
り大国 ”である。細部にわたる開 た。検査時間は劇的に短縮され、判定精 示会やセミナーはどこも大入り満員で
発のこだわりとたゆみない高品質の追 度は人間を超えるまでに高まっている。 す。AI 活用に向けてPoCを実施する企
求によって、高度な工業製品を生み出 不良品をライン上で早期に除外できれ 業も急激に増えています。実際の導入
してきた。日本のものづくりの強さは、 ば歩留まりは大きく向上する。 企業が少ないのは、PoCを実施しても 大江 隆徳氏
エンジニアや現場オペレータたちが蓄 また、設備や装置の振動や温度など 実用にまで至らなかったケースが多い 株式会社
ワイ・ディ・シー
積した経験とノウハウ、勘に長年支え のデータから故障を予知し、先回りし からです」とYDCの内藤孝雄氏はいう。 ビジネスディベロップ
メント事業本部
られてきたともいえる。ところが、少子 て対処できるようにもなった。予兆検知 その理由は大きく4つあるようだ。 MFGコンサルティング部
エキスパートグループ
高齢化で技能継承や人手不足が課題と (予知保全)と呼ばれる技術である。工 理由①:目的や費用対効果を明確に定 グループ長
なっている現在、経験豊富な彼らの能 場の操業で最も困るのが、突発的に起 めずにPoCを始める
力に頼り続けることは難しい状況だ。 きる故障だ。ライン停止で事業機会を 結果を評価する指標が曖昧なままPoC る。この点が現場と経営者の価値観に
また、世界中に広がったIndustry 4.0 逸するばかりか、工程から不良が流出 に踏み切ったため、得られた結果に対 合わず、導入に躊躇してしまうのだ。
の潮流によって、製造業を取り巻く環 すると仕掛品を全て廃棄せざるを得な する評価ができず、導入に向けた判断
境は一変した。先進的 ITの力を活用す い場合もある。AIを使って故障を予見 ができない状態に陥ることが多いと AIプロジェクトを襲う「PoC疲れ」
ることで、生産性や製品品質の飛躍的 できれば、故障前に計画的に補修でき、 いう。 さらに、PoCを繰り返す中で、「PoC
向上、市場の要求に合った製品の迅速 リスクを未然に防げる。 理由②:AIに対する期待が大きすぎる 疲れ」を起こしてしまうという例も多い。
な提供が可能になりつつある。IoTで、 組み立て加工や物流分野では、AIで テレビ番組などでAIが圧倒的な威力を たとえば、画像を使った良品と不良品
製品一つひとつ、製造設備 1 台ごとの 製品や部品の種類を判別し、ロボット 示す例が紹介され、AIには人知を超え の判定精度を高めるためには、2000枚、
状態まで細かく把握できるようになり、 が自動的に仕分けながらピッキングで た万能の力があると考える人も多い。 3000枚といった大量の画像データを学
収集した膨大なデータをいかに分析・ きるようにもなった。雑多に置かれた製 “ゼロ・ディフェクト”を追求する日本 習させなければならない。1枚1枚の画
活用していくかが求められている(図 品や部品を仕分ける作業は、単純な作 の製造業固有の価値観と相まって、AI 像を対象に、映っているモノに意味付
1)。そして、これまで人の能力に依存し 業ではあるが、従来の機械や画像認識 に過度の期待が生まれてしまい、導入 けする作業(アノテーション)や、画像
ていた作業を、365日24 時間無休でAI 装置での自動化が困難だった。こうした のハードルを高めている。 を判断した際の正解を教える作業(ラ
システムが代替できる時代が迫ってい 単純作業を機械化できれば、より高度 理由③:製造品質が高く、不良データ ベリング)を行う必要がある。装置の温
る。こうした中、日本の製造業は競争力 な業務に人を配置できるようになる。 を入手しにくい 度や圧力、流量などや品質指標である
を維持・強化していくために、新たな強 PoCを終えて運用へと進む段階では「現 厚さや線幅といったデータを扱う場合
みの再構築を迫られているのだ。 危機感は感じるが、AI導入は進まず 場から吸い上げたデータを教材として には、過去の外れ値などを除外したり、
製造業の多くの企業がAI活用の必要 AIに学習させる必要があります。ところ ノイズを除去したりする前処理(デー
製造業でのAIの活用効果は絶大 性を感じているが、実際に導入してい が、高精度の判断を下せるまでの学習 タクレンジング)が欠かせない。
製造業におけるAIの活用効果はとて る企業はまだ少ない。日経コンピュータ に用いるデータを、質と量の両面で充 これらは極めて重要な作業であるが、
つもなく大きい。たとえば、半導体や液 の記事*によると、2018 年 9 月時点で 分に集めることは簡単ではないのです」 地道で単純な作業だ。膨大なデータを
晶パネルなどの生産ラインでは、目視 国内の製造業のうちAIを導入している とYDCの大江隆徳氏はいう。たとえば、 相手に作業者が疲弊してしまい、単純
による外観検査での良品と不良品の判 のは5.8%にすぎない。ただし、AI導入に 画像を基にAIに良品と不良品を判定さ な作業ミスを起こすこともある。本来
せる場合には、不良品のデータも学習 は教える立場の人間が間違った学習用
する必要がある。しかし、常に高品質な データを作成してしまい、AIに間違っ
日本の生産現場には、そもそも不良品 た学習をさせることも実際に起きてい
データが少ない場合があるという。 るという。そして、PoCの精度を高めよ
理由④:AIの判断の根拠が分からない うと正解率 100%を目指して、頑張っ
製造業の現場では、不良が発生した場 てPoCを繰り返すうちにAI担当のプロ
合、その原因を究明して“カイゼン”する ジェクトメンバーが徒労感を感じてし
文化が根付いている。合否判定を正確 まうのだという。
に下すだけではなく、原因究明に役立 果たして、製造業でAIを活用する際、
つ情報が欲しい。ところが、ニューラル PoCから先に進まない、「PoC 疲れ」を
ネットを用いた機械学習では、AIの判 打破するポイントは何だろうか。
図1⃝中間工程の検査結果から最終製品の特性値を予測し、後工程へフィードバックする仕組み 定過程はブラックボックス化されてい (裏面へ続く)
*出典:日経コンピュータ2018 年10 月25 日号「データは語る」より
編集・発行:日経 BP 社 〒 105-8308 東京都港区虎ノ門 4-3-12 日経ものづくり AD Special/日経ものづくりEXPRESS 2019年 Spring ⓒ日経BP社2019
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「 AI導入」を目的にせず課題を明確に も経営と現場へのこまめなフィードバッ
クがAI 活用の定着には欠かせない。AI
PoCの正解率にこだわりすぎない の導入は、経験と勘を基にしたものづ
くりから、データを基にして属人的技能
に依存せず継続的に進化し続けるもの
を監視することで検知できる可能性も 学習用データの加工や勘所を熟知した づくりへと変える「製造業文化の改革」
あります」(内藤氏)。AIを使ってみたい システムベンダーの手を借りて、運用し という側面がある。経営陣から現場ま
という気持ちは分からないではない。し やすいプロセスや自動化を考えた方が で、会社全体で変えていこうとする覚
尾見 研一氏 かし、AIありきでは学習過程に求めら よい。AI導入シナリオについて、システ 悟が求められるといえよう。
株式会社
ワイ・ディ・シー れる労力やコストには見合わない場合 ムベンダーの助言を得ることも有効だ。
ビジネスディベロップ
メント事業本部 もあり、冷静な見極めが必要だ。 特に重要なのは「PoCの正解率にこ 現場と共にAIを育てていく
MFGコンサルティング部
シニアコンサルタント だわりすぎない」こと。「PoC 疲れ」に AIに取り組む上で悩ましい学習用
小さく始めて、想定効果は大きく 陥る多くの企業では、高い正解率を追 データについては、解決の糸口が見え
「AIを活用できそうな業務を洗い出 解決すべき課題が明確になったら、 求するあまり、いつまで経っても導入の てきている。NGデータが集まらない、
せ」といった経営者の号令の下、AIの活 まずは特定の装置からAIの導入を試し 判断ができず、PoCを繰り返すことに 多品種少量生産ですぐに品種が切り替
用法を模索している企業は多いだろう。 てみて、うまくいったら工程、さらに工 なりがちだ。正解率にこだわらず、下記 わるためデータが少ない、逆にデータ
解決すべき課題とAIの導入対象となる 場全体へと対象を拡大していく。 で紹介している堺ディスプレイプロダ が多すぎて学習モデル作成までが大変
ターゲットを明確にしないまま「AI 活 「特定の装置だけにターゲットをしぼ クトのように、PoCで得られた結果から といった課題に対しては「教師なし学
用ありき」に走ると、出口が全く見えな ると、投資判断をする経営者に効果を 想定効果を金額換算し、AI導入につい 習」やOKデータのみで判定できる「One
い状態に陥りがちだ。 アピールすることが難しいかもしれませ て判断するべきだろう。 Class 分類技術」など「少ないデータで
課題によってはAIではなく、既存の ん。小さな足掛かりから大きな効果が期 学習モデルを作る技術の開発に取り組
技術を活用した方が費用対効果は高い 待できる最終ゴールへと至る、明確な AI導入はものづくり文化の改革 んでいます」(尾見氏)という。
場合もある。「たとえば『AIで装置故障 シナリオを描いておくことがポイントで PoCで得た成果は現場と共有し、理 ところで、製造業の現場に必要なAI
を検知したい』といったケースでは、AI す(」大江氏)。シナリオが定まれば、あと 解を深めておく必要がある。「生産現場 プラットフォームの条件は何だろうか。
を使わずに既存のSPC(統計的工程管 はデータを周到に準備しておくことが は実績を積んできた手法に自信を持っ それは「生産現場と情報システムをシー
理手法)を使い、3点連続上昇などで値 必要になる。手間がかかる部分でもあり、 ています。現場の人たちは、現状の手法 ムレスに連携するサイバー・フィジカル・
の中で判断を磨き、経験を積みながら システム(CPS)」と「カイゼンを回せる
フィジカル空間 サイバー空間 日々の生産計画の順守や目の前の課題 こと」だ(図 2)。システム構築時には、
(製造ライン)
Version7.0 解決に追われています。大きな効果が 生産現場から収集したさまざまなデー
AIモデル構築
数値 AI ●モデル構築 期待できる新たな手法であっても、ま タを基に、最適なAIモデルを構築して
●前処理 連携 ●学習
言語 ●見える化 I/F ずは現場の理解を得ることが大事です」 学習させていく。運用に移行した後は、
(音声) GPU搭載
AI 学習サーバ とYDCの尾見研一氏は語る。 AIが異常発生を予測して担当者にメー
AI予測結果 たとえば「現場は頑固な職人気質の ルで知らせる、表示灯を回すなどして
画像 人が多い。果たしてAIを受け入れてく 現場に迅速にフィードバックし、異常
●前処理 ●傾向監視 れるのだろうか」と心配する人もいるだ 発生前に手を打つ。AIによる解析で現
●運用 ●アラーム発報
ろう。しかし、「現場の人たちは常に課 場がカイゼンされ、その状況をAIがさら
メール・表示灯 フィードバック 題解決の方策を求めています。AIが目 に学習する。CPSの中で、現場とAIが
図2⃝生産現場と情報システムをシームレスに連携するCPSの例 を見張る成果を出せば、その効果を驚 共にカイゼンを回すことが重要となる。
YDCでは、現場から収集したさまざまな情報の分析・活用を可能にするソリューション「YDC SONAR」を提
供。 AIによる製造工程改善プラットフォーム「YDC SONAR ML Option」や工程監視パッケージ「 くほど素直に受け入れてくれます」(大 AIは「入れたら終わり」ではない。ス
YDC
SONAR SPC Option」と連携し、カイゼンのサイクルを回せる。 江氏)。そして、運用段階に入ってから タート時のAIモデルは、いわば新人が配
属されたようなもの。AIを運用しなが
らいかに成長させていくかが鍵だ。従来
製造業AI導入ユーザーの声 AIで外観検査の正解率97%を達成、不良品ゼロへ挑む は、現場の人たちを中心にカイゼン活
動が行われてきた。これからは、人とAI
堺ディスプレイプロダクトでは、超大型テレ を導入。正解率は75%から97%へ、検査時間
ビ用液晶パネルを生産する第10世代工場の外 も1画像8秒から0.008秒へと劇的な効果を上 が共にブラッシュアップし合っていく
観検査での合否判定にAIを導入している。 げた。 カイゼン活動を行う時代になるだろう。
同工場が操業を開始した2009 年当時、生産 導入に携わった堺ディスプレイプロダクトの だからこそ、いかに優れたAIシステ
の中心はハイビジョンパネルだったが、現在は 飛鷹 亮氏は、「AI導入は、解決手段の一つにす ムも、現場の人たちの価値観や気持ち
2K、4Kといった高精細パネルが中心だ。画素パ ぎません。歩留まりや装置稼働率の向上とコス に沿わない押しつけでは、導入も運用
ターンの微細化で既存の検査装置では対応で ト削減を実現するため、さまざまな選択肢を精 もままならない。現場が抱えている課題
飛鷹 亮氏 きず、エンジニアが目視検査を行っていた。正 査して手段を選びました。PoCで得られた想定
堺ディスプレイプロダクト株式会社 解率が低く、検査人員を増やして何とか対応し 効果を金額換算して経営層に説明することで、 を理解し、現場に寄り添うシステムベ
生産本部 液晶生産センター ていた。2018 年の8Kの生産開始を契機にAI 投資に理解が得られました」という。 ンダーをパートナーとして選ぶことが、
プロセス技術部 課長
ポイントであるといえよう。
※2018年11月開催「第15回 SONAR研究会」パネルディスカッションより抜粋して構成
製造業の現場に寄り添い課題解決に共に取り組むYDC リースした「Version 7.0」では、AI 連携や
IoTセンサーのデータ活用、ビッグデータ対
ものづくりのプロセスで、AIやIoTを活用 ティング・設計・開発サービスを長年にわ の理解も深い。 応など機能強化を実現。製造業がAIシステ
するシステムを構築する際には、パートナー たって提供し続けてきており、数多くの生 同社は1995年に品質・情報解析ソリュー ムを効果的かつ効率的に導入・運用できる
となるシステムベンダーが、いかに生産現 産管理や品質管理のシステム開発実績があ ション「YDC SONAR」の提供を開始。時代 用意が整った。AI活用のPoCや実導入プロ
場を理解しているかが成否の鍵となる。 る。製造業のデータを扱う勘所を熟知して の要請に応える新機能を追加しながらバー ジェクトを数多く手がけている経験も大き
YDCは、製造業向けシステムのコンサル おり、現場に寄り添う際に大切にすべき点 ジョンアップを重ねている。2017 年にリ な強みだ。
[お問い合わせ先]
株式会社ワイ・ディ・シー 〒141-0032
東京都品川区大崎1-2-2 アートヴィレッジ大崎セントラルタワー https://www.ydc.co.jp/
TEL : 03-5740-5762 E-Mail : advocacy-sales@ydc.co.jp
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