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永年当社が蓄積してきた自動化を革新するための課題、問題解決への技術・研究開発の成果を技術情報としてご紹介いたします。
東北工場建設当時、当社の国内工場は愛知県に3工場、三重県に1工場と東海地方に集中していました。
コンポーネント製品の生産拡大、東海地域拠点の緊急災害時のBCP対応の強化、東日本大震災の復興支援としての地域雇用の創出を目的として、東北工場は建設されました。
東北工場のコンセプトとして、「人にやさしい工場」が掲げられています。そのコンセプトに則り、自動化・デジタル化を推進しています。
自動倉庫の導入による物流改善、AGV(自動搬送車)導入による自動搬送、自動加工・自動組立装置の導入による省人化、ペーパーレス化改善による紙使用量削減など多くの取り組みを実施しています。
本稿では、東北工場で実施されている自動化・デジタル化の内容についてご紹介します。
このカタログについて
ドキュメント名 | 【技術資料】CKD技報 Vol.11 「デジタル化・自動化 人にやさしい工場」 |
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ドキュメント種別 | 事例紹介 |
ファイルサイズ | 5.2Mb |
登録カテゴリ | |
取り扱い企業 | CKD株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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CKD
TECHNICAL
JOURNAL デジタル化・自動化
2025 Vol.11 人にやさしい工場
Digitalization & Automation: Human-Friendly Factories
北村 優祐
Yusuke Kitamura
機器事業本部
Components Business Division
東北工場建設当時、当社の国内工場は愛知県に3工場、三重県に1工場と
東海地方に集中していた。コンポーネント製品の生産拡大、東海地域拠点の緊
急災害時のBCP対応の強化、東日本大震災の復興支援としての地域雇用の創
出を目的として、東北工場は建設された。
東北工場のコンセプトとして、「人にやさしい工場」が掲げられている。その
コンセプトに則り、自動化・デジタル化を推進している。自動倉庫の導入による
物流改善、AGV(自動搬送車)導入による自動搬送、自動加工・自動組立装置
の導入による省人化、ペーパーレス化改善による紙使用量削減など多くの取
り組みを実施している。
本稿では、東北工場で実施されている自動化・デジタル化の内容について紹
介する。
At the time the Tohoku Factory was built, our domestic factories were concentrated
in the Tokai region, with three in Aichi Prefecture and one in Mie Prefecture. The
Tohoku Factory was built with the objectives of expanding production of component
products, strengthening BCP response in the event of an emergency disaster at
bases in the Tokai region, and creating local jobs as part of reconstruction
support for the Great East Japan Earthquake.
The concept of the Tohoku Factory is a "people-friendly factory." In line with this
concept, we are promoting automation and digitalization. Many initiatives are
being implemented, including improving logistics by introducing an automated
warehouse, automated transport by introducing AGVs (automated guided
vehicles), reducing manpower by introducing automated processing and assembly
equipment, and reducing paper usage by improving paperless operations.
This article introduces the details of the automation and digitalization being
implemented at the Tohoku Factory.
1 CKD TECHNICAL JOURNAL 2025 Vol.11
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1 はじめに
東北工場は34年ぶりの国内新工場として2019年1
月に竣工した。所在地は宮城県黒川郡であり、仙台駅か
ら車で1時間ほどの距離にある。東北工場の役割は、コ
ンポーネント製品の生産拡大、東海地域拠点の緊急災害
時のBCP対応力強化、東日本大震災の復興支援として
の地域雇用の創出の3点が挙げられる。生産品目は半導
体製造装置向け薬ガスバルブ及び、薬ガスバルブを搭 Fig. 2 自動倉庫
載したユニット製品である。
東北工場のコンセプトとして「人にやさしい工場」を掲
げており、竣工当時から多くの工夫が施されている。従 作業者はFig. 3のピッキングエリアで自動倉庫から搬
業員同士が不用意に接触しないよう廊下や各部屋は広 出された部材の確認とピッキングを行い、効率的な作業
く設計され、自動倉庫による物流の改善、AGV導入によ が実施できる。同じ製品群を生産している春日井工場で
る自動搬送、バルブボディの中間加工工程・組立工程の は、65人体制で物流業務を実施しているが、東北工場で
自動化による省人化などが稼働当初から実施されてい は自動倉庫を導入したことで半数以下の31人で物流業
る。また、最近では図面や検査記録等のペーパーレス化 務を行うことを可能とした。また、東北工場では部材の
を実施することにより、紙の使用量削減による環境負荷 70%が自動倉庫に格納され、ピッキング品目・数量の間
低減を実現した。 違いが発生しないため、在庫精度が大きく向上した。年
間での在庫差異率は0.1%を下回り、棚卸し作業といっ
た、付帯工数の削減にも大きく貢献している。
2 自動化
2-1 自動倉庫による物流改善
従来の倉庫の問題点として、人が倉庫内を歩き、部品
を探し、運び出す必要があることが挙げられる(Fig. 1)。
東北工場で導入された自動倉庫では、指図のバーコー
ドを読み込むことでシステムが必要部品を自動的に探
し出し、作業者の前まで搬出する機能を備えている
(Fig. 2)。
Fig. 3 ピッキングエリア
Fig. 1 従来の倉庫
デジタル化・自動化 人にやさしい工場 2 CKD TECHNICAL JOURNAL 2025 Vol.11
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2-2 AGVによる自動搬送 2-3 自動加工・自動組立機による省人化
当工場では、製品出荷の際に3Fの組立エリアから1F Fig. 6の自動加工機は1Fの機工エリアにて導入されて
の出荷エリアに製品を移動させる必要がある。従来の工 おり、バルブボディ(Fig. 7)の中間加工工程を自動化した
場では移動を人力で行った場合、2名の作業者が1往復 設備である。
あたり12分かけて運搬することになる。1時間あたり平均
で2往復するため、運搬工数は48分となり、日毎の工数に
換算すると336分を運搬に費やしている。運搬工数を削
減するため、当工場ではFig. 4のAGVを2台導入した。
1台目のAGVは、3Fの梱包室もしくはパスルームに置
かれた専用台車まで磁気テープを伝って自動で移動し、
Fig. 5のように専用台車をエレベータ前まで移動する。
エレベータ前で2台目のAGVに台車を受け渡し、2台
目のAGVがエレベータを稼働させ1Fの出荷室まで製品
台車を移動させている。AGVを導入したことにより、1日
あたり336分の運搬工数を削減し運搬作業の省人化に Fig. 6 連結加工装置
成功した。
Fig. 4 AGV
Fig. 7 連結加工装置で加工しているボディ部
この装置は、ボディへのレーザー印字・精密洗浄・弁
シートのカシメ・電解研磨工程をワンフロアに連結した装
置として構成されている。従来の工場では、これらの工程
は加工エリアと組立エリアに分かれていた。そのため、加
工エリアでのレーザー印字⇒組立エリアでの精密洗浄、
カシメ⇒加工エリアでの電解研磨とエリアを行き来して
製作されていた。リードタイムは3日かかっており、運搬
工数のムダや各工程に中間在庫を保有するムダが発生
することが課題となっていた。連結加工装置を導入する
Fig. 5 AGV稼働時の写真 ことで、複数工程をワンフロアで完結させることによる
リードタイムの短縮、運搬工数と中間在庫のムダ削減に
成功した。また、レーザー印字状態、弁座部のカシメ径、
電解研磨有無を自動で画像検査する機能を搭載するこ
とで品質担保と検査工数の削減を両立している。連結加
工装置の導入により、該当製品の生産能力は従来工場
の1.6倍となった。
デジタル化・自動化 人にやさしい工場 3 CKD TECHNICAL JOURNAL 2025 Vol.11
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Fig. 8の自動組立機は3Fのアクチュエータ組立エリア 3 デジタル化
に導入されている。従来の工場では、バルブアクチュエー
タ(Fig. 9)を手作業で組み立てた後、作業者が漏れ検 東北工場竣工後の2022年から導入を展開している、
査、キズの検査を実施していた。また、手作業であるため 組立検兼システムを活用したペーパーレス推進の取り組
部品の入れ忘れなども発生しており、後段の検査でわか みについて紹介する。
るとはいえ、分解と再組み立ての工数が発生することも
あった。自動組立機を導入することで、作業者は部品の
投入作業と異常時の対応以外の間は、別の製品の生産
に取り組むことができるようになった。自動組立によっ
て、部品の入れ忘れなどの組立ミスは無くなり、また画像
検査によって部品のキズ、形状異常、組立不良などを全
数検査することが可能になった。本装置の導入によって、
作業人員を増やすことなく、生産能力が従来の2倍と Fig. 10 従来作業の様子
なった。
元々当工場ではFig. 10のように図面、検査記録は全
て紙を使用して処理していた。
各現場で使用していた紙は、月当たり約32,000枚を
使用しており、紙そのものの費用はもとより、印刷された
図面の仕分け作業といった間接作業が発生していた。ま
た、作業者が図面と検査記録に書き込んだ検査履歴を
残す必要があるため、都度図面をPDF形式で取り込み
保存する付帯作業工数も発生していた。これらの紙使用
への対策として、当工場では組立検兼システムを導入し
Fig. 8 アクチュエータ自動組立機 た。本システムは、当社のデジタル推進部と協力して製
作されたシステムである。現場では、製品指図のQRコー
ドを読み取るだけで製品組立に必要な図面と検査記録
を端末上で呼び出すことができる。
Fig. 11 組立検兼システムを用いた作業の様子
組立検兼システムで使用するモニタはタッチパネルを
採用しており、Fig. 11のように従来の作業と同じ情報を
図面と検査記録に書き込み、そのまま保存可能となって
Fig. 9 自動組立機で組み立てているアクチュエータ
いる。書き込んだ内容を別途保存する必要もないため、
付帯作業工数が不要になった。製品型番に対応した図
面と検査記録は社内の出図システムと連携されているた
め、間接部門で複雑な手順を踏まずとも新規型番用の
デジタル化・自動化 人にやさしい工場 4 CKD TECHNICAL JOURNAL 2025 Vol.11
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データや設計変更に対応した最新の図面を画面表示で
きるようになっている。本システムの導入により、月当た
り32,000枚の紙の削減、43.5kgのCO2削減の環境負
荷低減に成功した。
4 おわりに
今回、東北工場で導入されている自動化、環境負荷削
減の取り組みについて紹介した。本稿で紹介した自動化
改善の考え方は最新の北陸新工場にも引き継がれてい
る。紙削減のための電子化は他工場でも活用可能と考え
られるため、より広く展開されていくと考えられる。省人
化、環境負荷低減等の改善は全社的に推進していく必
要があるため、改善の一助となれば幸いである。
東北工場としても、新たな自動化設備導入などに挑戦
し、この先の業績拡大に貢献していきたい。
TECHNICAL
JOURNAL
2025 CKD Corporation 無断転載禁止
デジタル化・自動化 人にやさしい工場 5 CKD TECHNICAL JOURNAL 2025 Vol.11