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【技術資料集】CKD技報 Vol.6 (2020年)

その他

永年当社が蓄積してきた自動化を革新するための課題、問題解決への技術・研究開発の成果を技術情報としてご紹介いたします。

・PTP包装ラインのPart11対応
・助力装置 パワフルアームPAWシリーズの開発
・ウォータハンマ低減技術
・PTP包装機における充填シミュレーション技術
・食品包装機における新包装形態「Vパック」
・はんだ印刷検査機「VP9000」
・リチウムイオン電池巻回機の周長可変巻芯の紹介
・τ Flex Linear Servo Saburoku∞の開発
・非接触サーボバルブ
・キャリアブルエアサプライユニットの開発

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ドキュメント名 【技術資料集】CKD技報 Vol.6 (2020年)
ドキュメント種別 その他
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取り扱い企業 CKD株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

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CKD技報H14

C K D 技 報               V o l ・ 6 CKD技報 Vol.6 CKD Technical Journal 2 0 2 0 年 1 月
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CKD技報[1-3]

1 CKD 技報 2020 Vol.6
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目次 目次 ごあいさつ 1 巻内特集 テーマ「安心・安全」 PTP包装ラインのPart11対応 2 助力装置 パワフルアームPAWシリーズの開発 6 ウォータハンマ低減技術 12 PTP包装機における充填シミュレーション技術 15 食品包装機における新包装形態「Vパック」 19 はんだ印刷検査機「VP9000」 24 リチウムイオン電池巻回機の周長可変巻芯の紹介 29 τ Flex Linear Servo Saburoku∞の開発 32 非接触サーボバルブ 36 キャリアブルエアサプライユニットの開発 39 CKD 技報 2020 Vol.6 2
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Table of Contents Greetings 1 Special Report on“ Safety” and“ Assurance” PTP Packaging Line Compatible with Part11 2 Development of PAW Series Power Arm Human Assist Device 6 Water Hammer Reduction Technology 12 Feeding Simulation System for Blister Packaging Machine 15 “V PAK”, the New Style of Packaging in Food Packaging Machines 19 Solder Paste Inspection Machine“VP9000” 24 Introduction of Variable Perimeter Mandrel of Lithium Ion Battery Winding Machine 29 Development of τ Flex Linear Servo SABUROKU ∞ 32 Non-Contact Servo Valve 36 Development of the Portable Air Supply Unit 39 3 CKD 技報 2020 Vol.6
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ごあいさつ 社会の変化に応える技術へ To the technology that responds to social change 奥岡 克仁  Katsuhito Okuoka CKD株式会社 代表取締役専務執行役員 CKD Corporation Director and Senior Managing Executive Officer  グローバル化や多様化が加速する中、モノづくり As business is becoming more globalized and の現場では、IoTや自動化へのニーズが益々高まっ more diversified, the needs for IoT and automation in the manufacturing industry are ています。その一方で、職場環境においては、今まで increasing more than ever before. At the same 以上にダイバーシティへの対応が大きな課題となっ time, more needs to be done to improve diversity ています。そのどちらにも求められているのは「安 in the work environment.“ Safety” and “Assurance” are the keywords for achieving 心」や「安全」というキーワード。これが今回のCKD these two requirements. The feature article in 技報Vol.6の特集テーマとなります。 this CKD Technical Journal Vol. 6 is about safety and assurance.  当社の自動機械事業部門が有する医薬品や食品な Our automatic machinery division's PTP どのPTP包装技術では、「安心できる製造工程」の実 packaging technology for pharmaceutical and food 現にお応えする内容を掲載しています。そして、機 products and reliable manufacturing processes as well as our component product division's human- 器事業部門では、空気圧や流体制御技術を応用した assist technology are discussed in this edition. 「人に優しい安全な職場環境」を提供するための Human-assist technology, to which pneumatic ヒューマンアシスト技術を紹介しています。このよ pressure and fluid control technology is applied, is used to provide a people-friendly, safe work うに技術で社会の変化にお応えすることが、私たち environment. At CKD, we believe it is our CKDの使命と考えています。本刊では、その他にも mission to technically respond to social change. お客様からのご指導も頂戴しながら培った技術や In this edition, we are also presenting some of our technologies that we have developed and 様々なご要求に応えるべく磨いてきた技術の一部を improved to take customer's advice into 紹介していますので、皆様の事業やモノづくりに貢 consideration and to meet their various requests. 献できる技術がございましたら、何なりと当社まで Please do not hesitate to contact us if you require any technology we have that may be useful in 申し付けください。皆様の課題解決の一助になれば assisting you with your business operations or 幸いでございます。 manufacturing processes. We would be very happy to provide solutions to your challenges.  最後になりますが、令和という新たな時代を迎え、 Japan has entered the new era of Reiwa. All of us CKDグループでは足元のコア技術を見つめ直し、そ at the CKD Group are absolutely committed to の技術の応用に加えて、他の技術とのマッチングに reviewing our core technology and using it for wider applications, and seek to further improve よりさらなる深化や領域の拡大を目指していく所存 and expand it by combining it with other です。 technologies. We thank you for your continued  引き続き、皆様からのご指導ご鞭撻をよろしくお support and welcome your guidance and suggestions. 願い申しあげます。 CKD 技報 2020 Vol.6 1
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CKD技報[4-7]

巻内特集 テーマ「安心・安全」 PTP包装ラインのPart11対応 PTP Packaging Line Compatible with Part11 伊藤 遼 Ryo Ito  近年、データインテグリティ対応が薬品業界で話題になっている。21 CFR Part11対応やデータインテグリティ 対応は、データ改ざんや消失防止、記録、アクセス制限などセキュアな対応をし、医薬品の開発・製造に関する設備・ システムの安心・安全を担保する。  Part11に準拠するためには、作業者の特定および電子記録の書き換え・消失を防止できるシステム、データの作 成・変更・削除の日時とユーザを記録するシステム、紙書類に代わって電子的に承認処理ができるシステムでなけれ ばならない。  また2019年にはGood Manufacturing Practiceが改訂され、データインテグリティの対応が追加されており、 医薬食品業界では対応が必須となる。本稿では当社のPTP包装ラインのPart11対応を紹介する。 Recently Data Integrity compliance has become a popular topic of conversation in pharmaceutical industry. 21 CFR Part 11 and Data Integrity requests secure compliance in data tampering/loss prevention, record, access restriction etc. to ensure safety and assurance of facility and system for development and manufacturing of pharmaceutical products. Part 11 compliance requests the systems 1) enabling to specify operators and prevent rewriting and loss of electronic record, 2) enabling to record date of data creation, change and deletion and user involved, and 3) enabling to approve electronically instead of paper documents. In 2019 Good Manufacturing Practice has been revised to add Data Integrity compliance, which pharmaceutical and food industries are required to follow. In this article we like to introduce Part 11 compliance of our blister packaging lines. 1 はじめに 求事項ではなく、従来の各要求事項の中でデータの完 全性・正確性に対するリスクを再認識し、適切なデー  「21 CFR Part11(以下、Part11と呼ぶ)」は米国食 タ管理システムの構築を求めるものである。そのため、 品医薬局:Food and Drug Administration(以下、 医薬食品業界ではPart11対応は必須となる。 FDAと呼ぶ)の連邦法第21章として1997年3月に発 布され、同年8月発効された。 2 Part11 対応項目  Part11とは電子記録、電子署名および電子記録上 への手書き署名を紙の記録物および手書き署名と同等  Part11に準拠するためには以下の3点に対応した のものとして規制対象企業からFDAが受け入れること システムでなければならない。 を可能とする法律である。電子記録および電子署名が  ①セキュリティ 改ざんされないこと、変更の履歴が残ることなどを要  作業者の特定、電子記録の故意または過失によ 求している。また、米国FDAに対して規制対象企業が る書き換え、消失を防止できるシステム。(真正性 提出する記録または提出しないが保存が義務付けられ の確保) ている記録に関して紙の記録を電子記録へ、従来の署  ②監査証跡 名を電 子 署 名 へ 変えても良いが 変える場 合には  データの作成、変更、削除の日時とユーザを自 Part11に準拠することを要求している。 動的に記録するシステム。また変更前のデータの  規制対象企業は「医薬品、医薬品原材料、医療機器、 消失を防ぐシステム。 食品、化粧品等」の製品を米国へ出荷または米国で製  ③電子署名 造し て い る 企 業 で 、2 019 年 に は G M P( G o o d  紙書類の署名、捺印に代わって電子的に承認処 Manufacturing Practice:医薬品および医薬部外品 理を行うことができるシステム。 の製造管理・品質管理の基準)が改訂され、データイン テグリティ対応の要求事項が追加された。データイン 3 システム構成 テグリティとはデータ完全性とも呼ばれ、米国FDAで はデータが完全で一貫性があり正確であることと定義  当社ではPart11サポートシステムとして機械とは している。データインテグリティはPart11の新たな要 別置きのパソコンでセキュリティ・監査証跡・電子署名 2 CKD 技報 2020 Vol.6
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【巻内特集】 PTP包装ラインのPart11対応 を管理している。パソコンが設置されているラックに 4-3  権限認証 はPLCを搭載しており、機械側のPLCと光ファイバー  機械側からのユーザ認証要求に対して権限を与え ケーブルで接続することにより、機械の温度データや る。(Fig. 3) 出来高データなどを収集している。監査証跡や電子署 名もこのネットワークを使用して機械とやり取りを行 う。  また、当社の製品であるインライン検査システムの フラッシュパトリもPart11サポートシステムで管理 しており、こちらはEthernetで接続している。(Fig. 1) Fig. 3  権限認証システム図 4-4  監査証跡(記録)  ユーザログイン、設定値変更等の事象を記録する。 機械側で発生した事象の情報はネットワークを介して Part11サポートシステムに送られる。Part11サポー Fig. 1  システム構成図 トシステムで発生する事象もあわせて履歴管理マスタ で一括管理する。(Fig. 4) 4 Part11サポートシステムによる管理 4-1  記憶データ管理  ID・パスワード・権限等の個人データが含まれるユー ザ管理マスタ、設定値変更・電子署名等の監査証跡デー タが含まれる履歴管理マスタ、フラッシュパトリで変 更した設定値の監査証跡データをPart11サポートシ ステムにて記憶している。(Fig. 2) Fig. 4  監査証跡システム図 4-5  電子署名  機械側で設定値の変更を行うと、変更しようとして いる値が適切であるか、管理者の承認を得るために承 認依頼をPart11サポートシステムに送る。この時点で 設定データが未承認となり機械を運転不可状態にする ことで、不適切な設定での生産を防ぐ。(Fig. 5) Fig. 2  記憶データ管理図 4-2  ユーザ管理  管理者権限でログインすると以下の作業を行うこと ができる。   ・ユーザ新規登録   ・ユーザの権限レベル設定 Fig. 5  電子署名 (設定値変更)   ・ユーザのパスワード設定   ・ユ ーザの削除(一度削除したユーザのIDはシステ  Part11サポートシステムには「いつ」「誰が」「どの ムが永久的に記憶し再使用できない) 機械で」「どの品種の」「どの設定値を」「何から何に変 更したか」が記録されているので管理者は確認後、査 CKD 技報 2020 Vol.6 3
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閲承認作業を行う。尚、同一人物が承認まで行うのを し検索することにより、電子データの内容をディスプレ 防ぐために承認依頼者・査閲者・承認者はそれぞれ別 イ装置およびプリンタで即座に見読することができる。 の人物でないと承認できないようになっている。承認 まで完了すると、機械側の設定データが承認済みとな 6-2  バックアップ・リストア り機械を運転することができる。(Fig. 6)  Part11要求事項「電子媒体に劣化等が起こる前に交 換して保存できること」(保存性の確保)に対応するた め、USBメモリにバックアップを作成する機能を有し ている。万が一システムトラブルでPart11サポートシ ステム内の電子データが消失した場合、バックアップ データをUSBメモリからリストアすることができる。 6-3  汎用ファイルに変換  Part11要求事項「電子データは将来(10年、20年) に渡り読み出し可能とすること」(将来に渡り真正性・ Fig. 6  電子署名 (承認) 見読性・保存性の確保)に対応するため、CSVファイル 形式に変換する機能を有している。 5 機械側のユーザ認証 7 時刻合わせ 5-1  機械運転  機械運転を行う作業者個人を認識、記録するために  Part11サポートシステムパソコンと各機械PLCの ユーザ認証を行う。この認証は誰が機械を起動したか 時刻を合わせることができる。ラインで時刻を統一す 明確にする機能のため、起動ボタンを押すたびに必要 ることで各機械・装置のタイムスタンプの差異を無く となる。認証を行わないと誰が起動したか不明確にな すことができる。(Fig. 7) るため、機械を起動できないようにしている。  また認証後機械を起動する前にその場を離れたと き、認証を受けていない第三者が起動してしまうのを 防ぐために認証は30秒間のみ有効になり、30秒を超 えると再認証が必要となるシステムにしている。 5-2  品種切換  品種切換を行う作業者個人を認識、記録するために ユーザ認証を行う。Part11サポートシステムには「い つ」「誰が」「どの機械で」「品種Aから品種Bに切り換え た」という情報が記録される。 Fig. 7  時刻合わせ 5-3  設定値変更 8 おわりに  設定値変更を行う作業者個人を認識、記録するため にユーザ認証を行う。認証した権限は設定値変更を終  本稿では当社のPTP包装ラインのPart11対応につ 了するまで有効となる。一定時間の操作がないとき、 いて紹介した。 自動的に設定値変更を終了しタイトル画面に切り換え  GMPが改訂されデータインテグリティ対応の要求 る自動ログオフ機能を有している。 事項が追加されたことにより、今後医薬食品業界にお けるPart11対応の需要が更に高まることが想定され 6 外部出力 る。Part11サポートシステムは当社製の機械以外に 他社メーカ機にも接続が可能なため、PTP包装ライン 6-1  プリンタ(紙管理) を一括して設備・システムの安心・安全を担保すること  Part11要求事項「電子データの内容を必要に応じ肉 が可能である。 眼で見読できる状態に容易に変換できること」(見読性 の確保)に対応するため、ディスプレイ装置とラックに 搭載しているプリンタによる書面への印字を行う。日 付、作業者、データの意味(作成、承認)等の条件を指定 4 CKD 技報 2020 Vol.6
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【巻内特集】 PTP包装ラインのPart11対応 執筆者プロフィール 伊藤 遼 Ryo Ito 自動機械事業本部 技術開発統括部 AC技術部 Advanced Control Engineering Department Automatic Machinery Business Division CKD 技報 2020 Vol.6 5
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CKD技報[8-13]

巻内特集 テーマ「安心・安全」 助力装置 パワフルアームPAWシリーズの開発 Development of PAW Series Power Arm Human Assist Device 若杉 諭 Satoshi Wakasugi 稲山 公憲 Kiminori Inayama 松本 成隆 Shigetaka Matsumoto  当社では、2014年に「働く人のために」をコンセプトに、職場での作業負担軽減と作業者の安全確保に貢献する ため、助力装置であるパワフルアームPFBシリーズの販売を開始した。  床面からのアクセスを可能にした新しい方式の助力装置で、用途や場所に合わせて最大3軸まで自由な組み合わ せが選べ、より高く、より遠くへの重量物搬送を可能とした。多軸仕様では折りたたみ格納が可能でコンパクトに収 納することができる。  この度、安全性の高いデザインとし欧州安全規格CEマーキングに適合(軸本体)したグローバルモデルで、許容 モーメントを従来比40%向上(φ100にて)させたパワフルアームPAWシリーズを開発した。本稿では、パワフル アームPAWシリーズについて紹介する。 In order to contribute to reducing workloads in the workplace and ensuring worker safety based on the concept of“ for those who work”, CKD started selling PFB Series Power Arm human assist device in 2014. Power Arm is a new type of human assist device that allows access from the floor surface. Up to 3 arms can be freely selected and combined according to the application and location, making it possible to transport heavy objects to higher and farther locations. The arms can be folded so that even the multiple-arm model is compact when stored. Recently, we have developed PAW Series Power Arm. It is a global model that has a high safety design and is in compliance with the CE marking requirements in the European safety standard (arm unit). Its allowable moment has been improved by 40% (at Ø100) compared with the conventional model. This paper introduces the PAW Series Power Arm. 1 はじめに  負傷に起因する業務上疾病のうち、腰痛(災害性腰 痛)は8割を超えている。※1  腰痛の原因となる重量物の搬送作業は、日常的に行 われている重作業である。少子高齢化が進む日本では、 女性やシニアの活躍が必要だが、重作業が残された職 場ではそれもままならない。職場環境の整備は急務で あると考える。  当社では自社のシリンダ技術と、日産自動車株式会 Fig. 1  空気圧を利用した助力装置の原理 社(以下日産自動車)と国立大学法人東京工業大学(以 下東京工業大学)が共同で構築された特許技術※2を活 用し、重量物を搬送する際の作業負担軽減と作業者の 安全確保を目的とした新しい方式の助力装置の開発に 取り組んだ。 2 パワフルアームの概要  空気圧を活用した助力装置は一般的である。空気圧 シリンダに精密レギュレータを介して空気圧を供給す Fig. 2  操作時の原理 ることで、ピストンロッド先端に取り付けた質量Wと、 空気圧シリンダにより発生する推力を等しくする事で  一般的な4節リンク機構に空気圧シリンダを組み合 位置保持も可能となる(Fig. 1)。重量物を搬送する場 せた助力装置は多数存在するが(Fig. 3)、パワフル 合は、空気圧シリンダの摺動抵抗と空気圧の吸排気時 アームでは空気圧シリンダを内部に配置することによ の圧力変化によるわずかな抵抗力で動かすことが可能 り小型化、軽量化を可能とした。内部構造および原理 である(Fig. 2)。 をFig. 4に示す。 6 CKD 技報 2020 Vol.6
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【巻内特集】 助力装置 パワフルアームPAWシリーズの開発 Fig. 7  操作イメージ Fig. 3  一般的な助力装置 Fig. 8  連結イメージ Fig. 9  収納イメージ Fig. 4  パワフルアームの内部構造および原理 3 パワフルアームの歴史  空気圧シリンダに加圧するとシリンダ推力F0はリ  PAWシリーズは、パワフルアームの第3世代機であ ンクアームにより上昇方向への力F1に変換され、ロー る。 ラを介し4節リンクを構成している本体自身を上昇さ  初めは日産自動車において、車両組立作業員の自動 せる。 車重量部品の持ち上げ作業、取り付け作業が困難と  これが一つの「軸=パワフルアームユニット」とな いった声を受け、東京工業大学と共に助力装置の開発 る。当該部品は1軸でも使用できるが、軸の端部どうし を開始し、その実用化に際し空気圧シリンダ技術に強 をベアリング内蔵の回転ユニットにて最大3軸まで連 みを持つ当社に装置の試作を依頼してきたことにあ 結して使用することも可能である。搬送する場合は る。 アームを伸ばすことでより大きな可動範囲(Fig. 5、  装置を完成させ、日産自動車の工場に試作機を導入 Fig. 6)を得ることができ、使用しない場合は折りたた して効果が確認できたため、他の工場にも導入を開始 むことでコンパクトに収納できる。操作イメージを した。 Fig. 7、連結イメージをFig. 8、収納イメージをFig. 9  そうした中で、日産自動車より外販希望があり、日 に示す。 産自動車と当社の間で技術ライセンス契約を締結して パワフルアームとして開発をスタートさせた。  2014年、第1世代機 PFBシリーズ(Fig. 10)を製品 化、次に量産モデルとして2015年に第 2世代機 PFB2シリーズ(Fig. 11)を製品化し製造・販売を開始 した。2016年にはPFB2シリーズに大口径モデル(φ 125)を追加、そして2019年、グローバルに拡販する ことを狙った第3世代機 PAWシリーズを製品化する に至っている。 Fig. 5  上下可動範囲図 Fig. 6  水平可動範囲図 CKD 技報 2020 Vol.6 7
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 ユニットの接続部には、締結に使用するボルトを隠 すための樹脂カバー(難燃ABS製)を取り付けるのだ が、そこに当社のコーポレートカラーを取り入れ、デ ザイン上のアクセントとしている。  4節リンクを構成する各部品は3DCADによる強度 解析を実施(Fig. 13)、デザインと強度を両立する設計 が可能となった。特に専用アルミニウム押出材を開発 したことで、胴体部はPFB2に対し約30%小断面化す Fig. 10 第1世代機 PFBシリーズ ることができた(Fig. 14)にもかかわらず、全体では 20%以上の剛性をアップしている。 Fig. 11 第2世代機 PFB2シリーズ Fig. 13  強度解析結果 4 パワフルアームPAWシリーズで採用した主な技術 4-1  柔らかく、スマートな洗練されたデザイン  PAWシリーズを開発するにあたり、重要視した部分 はデザイン、外観である。  第2世代機 PFB2シリーズは内部の空気圧シリンダ や4節リンク他の構造物を板金カバーで覆う構造で、 全体としてはスクエアなデザインであった。PAWシ リーズのデザインコンセプトは「柔らかく、スマート」 で、曲面を多用したラウンドフォルムを採用すること とした(Fig. 12)。 Fig. 14  胴体部断面比較 4-2  組み合わせ組立工程の簡略化、メンテナンス性の向上  PAWシリーズより、パワフルアームユニット、回転 ユニット、スカラアームユニット、回転ロックユニット の各ユニットをモジュール化した。  これにより、各ユニットを下から4本のボルトで締 結しながら積み上げていくことで、簡単に組み合わせ 製品を完成させることができる(Fig. 15)。 Fig. 12  PAWシリーズ外観  アームの表面をアルマイト処理、梨地とすることに より柔らかなイメージを表現した。 8 CKD 技報 2020 Vol.6
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【巻内特集】 助力装置 パワフルアームPAWシリーズの開発 Fig. 17  リニアガイドロック LMLシリーズ  LMLシリーズはリニアガイドのレールを保持するた めのロックユニットである。信頼性のある基本構造は そのままに、回転ユニットのロック用ディスクを挟み 込んで保持できるように変更して製作した。  第2世代機 PFB2シリーズで採用していた回転ロッ クは、エアを加圧した時にロックがかかる「ノーマル オープンタイプ」であった。動力(エア、電力)ダウン時 には内蔵ブロックバルブにより上下方向(落下方向)へ Fig. 15  各ユニットのモジュール化 のロックは働くのだが、回転方向へのロックが働かな くなるため周囲の人や設備への接触の恐れがあった。  分解時には、逆に上から順番に分解することができ  PAWシリーズでは、エアを排気した時にロックがか るので、ユーザ、セットメーカ、システムインテグレー かる「ノーマルクローズタイプ」のため、動力(エア、電 タでのメンテナンス性も向上した。 力)ダウン時に上下方向、回転方向共に位置保持が可 能となり、フェイルセーフを実現できた。 4-3  動力(エア、電力)ダウン時の位置保持  また大きさも1/6となり、外側への張り出しを大き  PFB2シリーズでも採用されていた内蔵ブロックバ く減少させることができた(Fig. 18)。 ルブによる落下防止機構はそのままに、新しくノーマ ルクローズタイプの回転ロックユニットを採用した (Fig. 16)。回転ロックユニットのベースとなったの は、当社で製造・販売しているリニアガイドロック 「LMLシリーズ」(Fig. 17)である。 Fig. 18  回転ロックユニットの大きさ比較 4-4  操作力の低減  人が操作する助力装置であれば、操作力は軽い方が 良い。連続的に操作していると疲労が蓄積してくるか らである。  操作力とは装置各部の抵抗を積み上げたものである が、その中でも内蔵している空気圧シリンダの摺動抵 抗に着目した。第1世代機、第2世代機では当社の独自 技術を使用し、低摺動の空気圧シリンダを製作して操 Fig. 16  回転ロックユニット 作力を低下させていた。  PAWシリーズでは、パッキン、グリスの摺動設計を 見直すことで、さらに摺動抵抗を減らすことに成功し CKD 技報 2020 Vol.6 9
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操作力を低下させた。 みを帯びた形状を採用し、CEマーキングにも適合させ  第2世代機PFB2シリーズとの圧力に対する操作力 安全性も向上した。また、分解や調整が簡単にできる の比較グラフをFig. 19に示す。 ようにしてメンテナンス性も大幅に向上させた。  今後も、女性・シニアが活躍できる職場づくりや、単 独や複数人で行う重作業の負担低減や小人化に貢献が 可能なHA(ヒューマン・アシスト)商品を開発していく 所存である。 ※1 厚生労働省:業務上疾病発生状況等調査(平成30年) ※2 特開2010-76089関節駆動装置及び多関節アーム装置 Fig. 19 操作力の比較 特許権者:日産自動車(株)、国立大学法人東京工業大学 4-5  CEマーキング適合  CEマーキングは、EUで販売される製品がEUの基準 に適合していることを表示するマークである。その製 この製品は「2019年“超”モノづくり部品大賞の機械・ロ 品が分野別のEU指令や規則に定められる必須要求事 ボット部品賞」と「2019年度グッドデザイン賞」を受賞 項に適合したことを示すもので、「PAWシリーズ」で しました。 はCEマーキング 機械指令2006 / 42 /EC EN 14238:2004+A1:2009に適合させた。開発時より 安全性、環境性能に注視して設計を行ったのだが、そ の一部を紹介する。  第2世代機 PFB2シリーズは内部の空気圧シリンダ や4節リンク他の構造物全体を板金カバーで覆う構造 であったため隙間が少ない設計ではあったが、人体の 挟み込みが発生する可能性を残す構造であった。  PAWシリーズでは、上下動作(アーム角度変化)にお けるどの状態においても、すべての隙間を指先が入り 込まない5mm以下、もしくは指先が入っても挟まらな い12.5mm以上になるよう、安全が確保できる設計 (Fig. 20)を行った(一部の構造において特許出願中)。 Fig. 20  PAWシリーズの安全設計 5 おわりに  PAWシリーズは愛着を持って長年使用して欲しい という思いを込め、威圧感や圧迫感を感じさせない丸 10 CKD 技報 2020 Vol.6
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【巻内特集】 助力装置 パワフルアームPAWシリーズの開発 執筆者プロフィール 若杉 諭 Satoshi Wakasugi 稲山 公憲 Kiminori Inayama 松本 成隆 Shigetaka Matsumoto コンポーネント本部 コンポーネント本部 コンポーネント本部 FAシステムBU HA事業開発部 FAシステムBU HA事業開発部 FAシステムBU HA事業開発部 HA Business Development Department HA Business Development Department HA Business Development Department FA System Business Unit FA System Business Unit FA System Business Unit Components Business Division Components Business Division Components Business Division CKD 技報 2020 Vol.6 11
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CKD技報[14-16]

巻内特集 テーマ「安心・安全」 ウォータハンマ低減技術 Water Hammer Reduction Technology 大杉 滋 Shigeru Ohsugi  当社はこれまで半導体・液晶製造装置向けに薬液用のエアオペレイト式バルブを開発し、販売してきた。当社の薬 液用バルブは主に洗浄および現像液の塗布等の工程で用いる薬液を制御するために使用されている。  装置には薬液用バルブだけではなく純水用バルブも多数必要となる。当社においては薬液用バルブで培われた技 術を基に純水用バルブも開発している。  純水の使用量は非常に多く、大流量のバルブが必要となるがこれに伴いウォータハンマが発生しやすくなる。開 発着手時は市場でウォータハンマによる配管破損のトラブルが頻発している情報を得ていた。  本稿では純水用バルブの開発におけるウォータハンマ低減技術を紹介する。 For years, CKD has been developing and selling air-operated valves for chemical liquids for use in semiconductor and LCD manufacturing equipment. Our chemical liquid valves are mainly used to control chemical liquids in such processes as cleaning and developer coating. In addition to chemical liquid valves, the equipment also requires a large number of pure water valves. Utilizing the technology accumulated in the development of chemical liquid valves, CKD has also been developing pure water valves. Since the amount of pure water used is very large, valves for large flow rate are required; however, using these valves causes water hammer to occur easily. By the time we began the development of pure water valves, we had information from the market that there were frequent occurrences of piping damage due to water hammer. This paper describes the water hammer reduction technology adopted in the development of pure water valves. 1 はじめに  Tが0に近づく、すなわちバルブを瞬間的に閉じると 右辺は無限大に近づき過大なウォータハンマが発生す  ウォータハンマは液体の流れを止めるバルブにおい ることになる。また、管長Lが増すと運動している物の て避けられない現象であり設計時に考慮しなければな 質量が増しウォータハンマが増すことになる。 らない重要なポイントとなる。ウォータハンマによる  尚、(1)式はあくまで関係式であり数値を代入して ダイアフラム、ボディの破損だけではなく配管振動や もΔPの真値は求められない。これは運動量が全てΔ レギュレータのバイブレーションの要因となることも Pに変換されるという想定の式であり、現実には圧力 ある。 による管の変形、振動、流体と管壁との摩擦などにも  純水用バルブ(AMD□1L)の開発にあたっては純水 変換されているからである。 を流す塩ビ配管においてウォータハンマによる配管破  本項の理論式を用いて過去のウォータハンマのテス 損が市場で頻発していることに着目して「ウォータハ トデータを解析した結果を4項に示す。 ンマ低減バルブ」と銘打ち市場に投入した。  ここにウォータハンマを低減するための設計技術を 3 ウォータハンマ低減設計の解説 紹介する。  (1)の理論式より流速の減速度すなわちバルブの閉 2 ウォータハンマの理論式 動作スピードを抑えることによりウォータハンマを低 減できることがわかる。「ウォータハンマ低減バルブ」  例えばいま管の断面積A、管長Lの管内を速度V1の AMD□1Lにおいては、この点において下記の工夫を 水が流れておりこれが時間Tだけかかって速度V2に している。 なり圧力上昇ΔPが生じたと考える。このV1からV2  (1)操 作ポートに微小オリフィスを設け排気を絞 に変わる運動量(質量×加速度)が全てΔPに変換され ることにより閉動作スピードを抑える。 たとすると次の関係式で表される。(ρ:流体の密度)  (2)ダ イアフラムの受圧面積を小さくすることに  ΔP・A=(ρ・A・L[)(V1−V2)/T] (1) より(1)の動きを安定させている。  右辺第1項は管長Lにおける流体質量、第2項は加速  (3)口 径の大きいAMD61L~81Lにおいてはダイ 度(減速度)である。 アフラムの弁シート部分に凸部を設け弁が閉 12 CKD 技報 2020 Vol.6
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【巻内特集】 ウォータハンマ低減技術 じる直前に減速度を抑えている。  ウォータハンマ低減バルブをFig. 3に示す。ダイア  次に(1)~(3)の各々について解説する。 フラム膜の内径をバルブオリフィスより内側に設ける ことにより受圧面積は小さくなっている。従って抵抗 3-1  操作ポートオリフィスについて 力自体が小さくなるため弁閉直前の急激な低下が無く  単純にオリフィスを小さくすればするほど操作エア なり安定したスピードで閉動作できる。 の排気が絞られ閉動作スピードは遅くなる。しかしな がらオリフィスを小さくしすぎると操作エア中の異物 がオリフィスに詰まる危険があるため当製品ではフィ ルタを施し異物から保護している。  オリフィスの絞り具合いで閉動作スピードがどの程 度遅くなるかは有効断面積Sとタンク容量V、放出時 間tとの関係式を用いて推察できる。 Fig. 3  ウォータハンマ低減バルブ  S=12.1・V/t・log1[0(Ps+0.100)(/ P+0.100)]・√(293+T) (2)  S:有効断面積(m㎡) V:空気タンク容量(d㎥) t:放出時間(sec) 3-3  ダイアフラムの弁シート凸部について  Ps:放出前タンク内圧力(MPa) P:放出後タンク内圧力(MPa) T:絶対温度(K)  口径の大きいタイプにおいてはFig. 4に示すように  (2)式から導き出した操作エアの排出時間はFig. 1 ダイアフラムの弁シート部分に凸部を設けている。こ のようになり、バルブの閉動作として動き出す圧力 れにより弁が閉じる直前の流路面積の減少が緩やかに P(1 NCスプリング動作荷重/ピストン受圧面積)と閉 なり減速度を抑えることができる。しかし凸部を設け 動作が終了する圧力P(2 セット荷重/ピストン受圧面 るにあたっては弁開状態においてバルブの流量性能が 積)をFig. 1上にプロットすることにより実際に動い 満足できるかを考慮する必要がある。 ている時間(動作時間)を求めることができる。  従ってこの設計はストロークの大きい大口径のバル ブに有効である。 Fig. 1  操作エア排気時間 Fig. 4  大口径ウォータハンマ低減バルブ 3-2  ダイアフラムの受圧面積について 4 ウォータハンマデータの解析  従来のダイアフラムバルブをFig. 2に示す。ダイア フラム膜はバルブ2次側の圧力を受けることになり、  (1)の理論式を用いて過去のウォータハンマのテス この力は閉動作に対する抵抗力となる。バルブの開状 トデータを解析する。 態では2次側の圧力は高くダイアフラム受圧面積が大  (1)式はウォータハンマの運動量が全て圧力に変換 きければ抵抗力も大きい。しかしバルブが閉じる直前 されるという前提になっているが、現実に即して考え では流量が絞られ圧力が急激に低下するため抵抗力が ると流体と管壁との摩擦や配管の振動、ふくらみにも 急激に減り弁閉スピードが急激に増してしまう。 変換されている。よって圧力に変換されている割合を 考慮して実効率の係数kが必要であると考えると次式 のようになる。  ΔP・A=k・(ρ・A・L[)(V1−V2)/T] (3)  (3)式の(ρ・A・L)[(V1−V2)/T]の部分をウォー タハンマ指数とし過去のウォータハンマ測定時の ウォータハンマ指数を算出する。これに対するウォー タハンマ値との関係をみる。この時の試験サンプル、 配管長さ、材質の条件をTable 1に示す。また測定回 Fig. 2  従来のダイアフラムバルブ 路をFig. 5に示す。 CKD 技報 2020 Vol.6 13
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Table 1 測定条件 試験サンプル 配管長さ2次側 配管材 製品A 長さ1 鋼管 製品B 長さ2 PFA 製品C 長さ3 塩ビ 製品D 長さ4 製品E 製品F 製品G Fig. 7  ウォータハンマ値 (全体)  Fig. 7よりPFA、塩ビなどの樹脂配管はウォータハ ンマ値が高くなると比例せずに飽和してくる。これは 運動量がかなりの割合で配管の振動、ふくらみに変換 されていると考える。 5 おわりに  製造装置において機器の破損要因だけでなくパー ティクルレスの観点からもウォータハンマ低減のニー ズは更に高まってくると思われる。この市場の要求に Fig. 5  測定回路 対し本設計技術は非常に有意である。本技術を他のエ アオペレイトバルブにも展開、進歩させ更にお客様に  配管材を鋼管とした時のウォータハンマ指数に対す 満足いただける商品を開発していく。 るウォータハンマ値の関係を表したグラフをFig. 6に 示す。またこれにPFAと塩ビを加えた全体のグラフを Fig. 7に示す。 Fig. 6  ウォータハンマ値 (鋼管) 執筆者プロフィール  Fig. 6より理論通りウォータハンマ値は質量(配管 径・長さ)と減速度に比例している。  また直線の傾きが実効率kとなるが、凸形状品のkが 小さくウォータハンマを下げることに寄与しているこ とがわかる。 大杉 滋 Shigeru Ohsugi コンポーネント本部 ファインシステムBU 第1技術部 Engineering Department No. 1 Ultra High Purity Products Business Unit Components Business Division 14 CKD 技報 2020 Vol.6
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CKD技報[17-20]

PTP包装機における充填シミュレーション技術 PTP包装機における充填シミュレーション技術 Feeding Simulation System for Blister Packaging Machine 外山 智也 Tomoya Toyama  錠剤やカプセルに代表される経口固形製剤を包装するPTP包装の中でも「充填技術」はコア技術の1つであり、「充 填技術」の向上がPTP包装の完成度を上げるといっても過言ではない。しかし、従来の2次元図面による検討では、 充填時における錠剤の挙動を経験や理屈を元に行っているが、実際の挙動とは一致せず、充填がうまくいかない場 合が少なからずある。その都度、試行錯誤をしながら充填部品の再製作をし、解決してきた。  そこで、独自に3次元モデルを駆使した検討が可能となる充填シミュレーションシステムの構築に取り組んだ。本 稿では、当社が採用している充填方式を紹介するとともに、充填シミュレーションの実例を紹介する。 For blister packaging machines to pack oral solid dosage forms such as tablets and capsules, “feeding technology” is one of the core technologies. It is not too much to say that improvement of“ feeding technology” can increase degree of completion of blister packaging machines, however, technical evaluations for feeding have been done based on conventional two dimensional drawings to presume how tablet would behave during feeding according to our experience and logic. There have not been a few cases in which actual tablet behavior does not match our presumption, and consequently actual feeding is not done well. Every time they happen, we have solved such issues by trial & error and reproduction of feeding parts. Considering the above situation, we have tackled building simulation system for tablet feeding, which enables us to evaluate by making full use of 3D model. In this article we like to introduce our simulation system for tablet feeding and actual simulation examples. 1 はじめに  PTP包装の包装工程において、錠剤やカプセルを充 填する技術はコア技術の1つである。  高能力化が求められてきた近年において、様々な形 状や特性が存在する錠剤を安定して毎分MAX6000 錠(当社FBP-600E機10錠シート時)という速度で充 填するためには、「どのような方式」で「どのような条 件」とするかを十分検討する必要がある。以下に3次元 モデルによる充填シミュレーションシステム(以下、本 Fig. 1  PTP 包装例 システムと呼ぶ)の実例について説明する。 2 PTPと錠剤形状について  PTP(Press Through Package)とは押し出して 取り出す包装形態のことであり、樹脂フィルムをポ ケット形状に変形させ、被包装物を充填し蓋側となる フィルムでシールしたブリスタ包装の1つである(Fig. 1)。PTP包装で充填される錠剤形状の種類はFig. 2に 示す物に大きく分けられる。(分類名は様々あるが、当 Fig. 2  錠剤形状の種類 社ではFig. 2の名称で呼んでいる。) 3 充填工程について  錠剤がポケットへ充填されるまでの供給工程をFig. 3に示す。①ホッパに溜められた錠剤は②-1直進フィー CKD 技報 2020 Vol.6 15
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ダシュートから④スプリングシュートまでの各工程を 搬送され、⑤充填シュート部を通って、ポケットに1錠 ずつ挿入し充填される。  本システムでは、ポケットに1錠ずつ挿入する際の 錠剤挙動に適用している(Fig. 4)。 Fig. 5  縦積み方式の錠剤姿勢 Fig. 3  充填工程の概略図 Fig. 6  横積み方式の錠剤姿勢 Fig. 4  ポケットへの充填例 5-1  縦積み方式と2次元での検討について  縦積み方式は、平錠やレンズ錠といった、シュート 4 充填シミュレーションシステムの構築と導入について 内で縦積みが可能な錠剤に最も多く採用している。錠 剤の通る溝形状はポケットへの挿入時、錠剤がポケッ  先にも述べたとおり、従来は2次元図面に錠剤挙動 ト内に倒れやすくなるようにカーブ形状としている を作図し決定してきた。しかし、2次元の作図では実際 (Fig. 7)。 の錠剤挙動を捉えきることは困難であり、またポケッ  ポケットへの挿入工程における錠剤挙動を2次元で トが搬送される「時間」や挙動時に発生する摩擦抵抗と 検討したものがFig. 8である。 いった「力」の要素を盛り込むことも難しく、そのため 経験を元に決定してきた。  本システムでは、3次元モデルを活用して、時間や力 といった要素を盛り込んで検討ができるようなシステ ムを構築した。 5 充填方式と充填シミュレーションの実例  充填条件によって様々な充填方式を有しており、本 稿では、シュート内の錠剤の整列姿勢の違いによる「縦 積み」シュート充填方式(以下、縦積み方式と呼ぶ) (Fig. 5)と「横積み」シュート充填方式(以下、横積み方 Fig. 7  縦積み方式 式と呼ぶ)(Fig. 6)について充填シミュレーションの 実例とともに述べる。 Fig. 8  縦積み方式の2次元検討図 16 CKD 技報 2020 Vol.6