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CKD技報「カルマン渦式流量センサ技術」

ホワイトペーパー

当社が保有する液体用流量センサに関する、カルマン渦式のセンシング技術について紹介する。

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ドキュメント名 CKD技報「カルマン渦式流量センサ技術」
ドキュメント種別 ホワイトペーパー
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取り扱い企業 CKD株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

このカタログの内容

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カルマン渦式流量センサ技術 Karman Vortex Flow Sensor Technology 榊 勇貴 Yuki Sakaki 近年の物価高や人件費の高騰により、コスト削減の活動がこれまで以上に求められる中、人の代わりに判断を行 う、あるいは判断のための情報源となるセンサの需要は年々増加傾向にある。 当社ではエアシリンダの作動状態や位置を検出するための磁気センサ、工場エアの圧力を管理するための圧力セ ンサ、気体や液体の流れを検出する流量センサなど、測定物に応じて様々なセンサ機器を開発・販売してきた。その 中でも、液体用の流量センサは1984年に商品化され、市場の要求に対応すべく測定原理を変えながら進化を続け てきた。 本稿では、当社が保有する液体用流量センサに関する、カルマン渦式のセンシング技術について紹介する。 Due to the recent rise in prices and labor costs, actions that reduce costs are needed more than ever, and the demand for sensors that make decisions on behalf of people or serve as a source of information for decision making is increasing year by year. CKD has been developing and selling a variety of sensor devices depending on what is being measured, such as magnetic sensors for detecting the operating state and position of air cylinders, pressure sensors for controlling the pressure of air used in plants, and flow rate sensors for detecting the flow of fluids and gases. Among these, flow rate sensors for liquids were commercialized in 1984 and have continued to evolve while changing measurement principles to meet market demands. This paper introduces the Karman vortex sensing technology related to our flow rate sensors for liquids. 1 はじめに  液体用の流量センサは、半導体製造装置の冷却水管 理及び金型の温度管理、スポット溶接機のチップ抜け 異常検知など、様々な用途で用いられている。その中 で、設備のコスト削減やフットスペースの削減、タク トタイムの短縮や工場及び設備のIoT化への貢献が求 められる。また、水質の悪い環境で使用する場合は、可 Fig. 1  カルマン渦式の略図 動部の無い構造が望ましいとされている。  当社では上記の要求を鑑みて、複数ある測定原理の  (3)周 波数fと流速Uには、ストローハル数St及び 中でも相対的に低価格、小形、高精度、可動部が無いと 渦発生体の幅Dが一定であることを条件に比例 されるカルマン渦式流量センサを開発しており、その 関係が成り立つことから、周波数fを流速Uに センシング技術を紹介する。 換算する。 ※ス トローハル数Stとは、流れにある振動現象 2 カルマン渦式流量センサの動作原理 の周波数を表す無次元量である。  カルマン渦式流量計は以下の原理を利用した測定方 fD 法である。 St= U  (1)流 体の中に障害物(以下、渦発生体とする)を f=カルマン渦の周波数 置くことで、渦発生体の後方から渦(以下、カ D=渦発生体の幅 ルマン渦とする)が発生する。 St:ストローハル数  (2)渦 発生体の2次側に位置するセンサ部でカル U:流速 マン渦の周波数(f 以下、周波数fとする)を測 定する(Fig.1)。 28 CKD 技報 2024 Vol.10
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カルマン渦式流量センサ技術    ス トローハル数Stは、レイノルズ数Reが約 い測定範囲を1機種で対応できることから、使い 103~2×105の範囲において0.2程度で安定 勝手の良い流量センサとされている。 するとされており、この範囲を外れるとカルマ  幅広い測定範囲を実現するためには、「カルマ ン渦が正しく生成されない(Fig.2)。 ン渦式流量センサの動作原理」で説明した、代表 なお、レイノルズ数Reは以下の条件によって決 長さD(渦発生体の幅)の適切な設定だけではな まる。 く、流量の情報となる周波数fを安定して計測す UD ることが必要である。 Re= =103~ 2×105    v  従来機種の流路形状は、口金が丸形に対し、セ ンシング部は四角形となっており、接続部で形状    U:代 表速さ(流路内の流速) を変形させていた。流体の流れ方向が変化し合流 =流量 ÷ 流路の断面積 する箇所は部分的に流速が異なるため、測定範囲    D:代表長さ(渦発生体の幅)  を制限する要因になっていた(Fig.4、Fig.5、    v:流体の動粘度 Fig.6)。 Fig. 2  レイノルズ数に対するカルマン渦のイメージ図 Fig. 4  従来機種外観図  この現象を利用し、測定範囲においてレイノルズ数 Reが103~2×105となるようセンサ内部の設計がさ れている(Fig.2)。  ※レ イノルズ数Reとは慣性力と粘性力の比を表す 無次元量である。 Fig. 5  平面図 Fig. 6  形状変形部の詳細図 3 新規開発機種の液体用流量センサ(WFK2)     新規開発機種の流路形状は、センシング部も丸 形にすることで流体の流れが中心に対し均一とな  新規開発機種のWFK2は、従来機種との互換性を残 るよう設計されており、流れ方向の変化は緩やか しつつも、測定範囲の拡大と多様な設定機能を搭載し、 でかつ安定する(Fig.7、Fig.8、Fig.9)。 使い勝手を大幅に向上させたセンサである(Fig.3)。  本稿では、その中で3つの性能・機能の向上技術につ いて紹介する。 Fig. 7  新規開発機種の外観図 Fig. 3  新規開発機種 (WFK2)の外観図  (1)測 定範囲の拡大 Fig. 8  平面図 Fig. 9  形状変形部の詳細図  測定可能な最小流量と最大流量の比を、ダイ ナミックレンジと呼び、この比が大きいほど幅広 CKD 技報 2024 Vol.10 29
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     これにより、従来機種ではダイナミックレン を乱すことがないため、流量の測定機能に対 ジが最大1:9までであったが、1:12.5まで測定範 して影響を与えない(Fig.12)。 囲を拡大でき、一般的な液体用流量センサに比 べても幅広く使用できるようになった。  (2)ア ナログ出力スケーリング機能の追加  従来機種や他製品からの置き換えの際には 測定範囲の違いから、制御機器側の設定を変更 する必要があった。WFK2では出力のスケーリ ングができるアナログ出力モードを搭載した ため、流量に対するアナログ出力の値を任意に 設定できるようになり、制御機器側の設定変更 することなく置き換えが可能となった。 ※ア ナログ出力モードとは、測定可能な最大 Fig. 12  新規開発機種 測温部の構造図 流量を最大値として、流量に応じた電圧・電 流を出力する機能である(Fig.10)。 4 おわりに  当社のカルマン渦式のセンシング技術、及び新規開 発機種(WFK2)の技術を紹介した。  流量センサの用途は幅広く、今後も産業の様々な分 野で利用されていくと推測される。  当社としても製品に更なる改良・開発を重ね、お客 様の要望にお応えしていきたいと考えている。 Fig. 10  アナログ出力モード  (3)外 気温の影響を受けない測温方式  従来機種には測温機能が無く、流量の測定に 限定されていた。またオプションの追加により 測温機能に対応させたものの、口金の温度を測 定する方式であったため、周囲温度の影響を受 けてしまう課題があった(Fig.11)。 執筆者プロフィール Fig.11  従来機種 測温部の構造図  新規開発機種ではボディに測温センサを組 み込む構造としたことで、測温機能を有しつ 榊 勇貴 Yuki Sakaki 機器事業本部 つ、周囲からの熱伝達の影響を受けない構造 Components Business Division を実現した。また、測温センサは流路側面の表 面に位置するよう設計しており、流体の流れ 30 CKD 技報 2024 Vol.10