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電源起動時の注意点とソフトスタート設定時間の目安についての説明
降圧型のDC/DCコンバーターの起動不具合の一つに、ソフトスタート設定が原因であるものがあります。このアプリケーションノートでは、電源起動時の注意点とソフトスタート設定時間の目安について説明します。
このカタログについて
ドキュメント名 | 電源起動時の問題と起動時間の重要性について |
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ドキュメント種別 | その他 |
ファイルサイズ | 318.7Kb |
登録カテゴリ | |
取り扱い企業 | 株式会社マクニカ (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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電源起動時の問題と起動時間の
重要性について
ver.1
© 2021 Macnica, Inc. www.macnica.co.jp
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電源起動時の問題と起動時間の重要性について
目次
1. はじめに ......................................................................................................................................................................... 3
2. 問題の症状 .................................................................................................................................................................... 3
3. 問題の原因とメカニズム ............................................................................................................................................... 4
4. まとめ .............................................................................................................................................................................. 4
改版履歴 ................................................................................................................................................................................. 5
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電源起動時の問題と起動時間の重要性について
1. はじめに
降圧型のDC/DCコンバーターの起動不具合の一つに、ソフトスタート設定が原因であるものがあります。このア
プリケーションノートでは、電源起動時の注意点とソフトスタート設定時間の目安について説明します。
2. 問題の症状
ある電源 IC メーカーの DC/DC コンバーターの回路図です(図1)。デジタル回路の電源シーケンスが 10msec
以内に複数電源を立ち上げる為、150usec で立ち上がる様にソフトスタート(SS)ピンに接続するコンデンサーの容
量を調整しました。その結果、図 2の赤丸点線部のような出力電圧が単調増加しない結果となりました。
図1 : 降圧DC/DCコンバータ回路図
入力電圧
SW波形(緑)
出力電圧(青)
インダクター電流(水色)
図2 : 起動時の波形
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電源起動時の問題と起動時間の重要性について
3. 問題の原因とメカニズム
波形を見ると、インダクター電流が大きく流れた(赤矢印)後に、出力電圧が低下していることが分かります。 これ
は、電源の起動時にラッシュ電流が流れている状態です。この時のラッシュ電流が大きいため、電源 IC の電流制限に
到達し、電源 IC がスイッチングを止めたために出力が下がっています。電流制限が解除されると再度、正常動作をす
るため出力電圧が上昇し始めますが、再度電流制限に掛り電圧が下がります。この動作を繰り返して、出力電圧が設
定電圧に到達すると、ラッシュ電流が電流制限に掛らないレベルで安定し、最終的にはラッシュ電流も流れない状態に
なり電源としては安定動作に移行しています。
ラッシュ電流は、出力コンデンサーや出力に繋がっている IC に流れ込む電流になります。電源立ち上がり時に必ず
発生します。ラッシュ電流の大きは、出力コンデンサーや出力に繋がっている ICにも依存しますが、電源設計で注意す
べき点は、電源の立ち上がりスピードによってラッシュ電流の大きさが変わる点です。したがって、ソフトスタート回路の
設定が重要になります。
図3 : DC/DCコンバーターは起動時にラッシュ電流が流れる
今回の事例で考えてみると、出力電圧設定が 6V で出力コンデンサーが 470uF でした。Q=CV の計算式で考えると、
Q = CV = 470μF×6V = 2820 (μC) となります。 今回、150μsecで立ち上げようとしましたので、I(t)=dQ/dtの式から、
I=2820μC÷150μsec=18.8(A) となり、18A以上の電流が出力コンデンサーの充電に必要となります。 これにデジタ
ル ICなどの負荷にも電流が流れるため、実際には 20A程度必要になっていると推測できます。
今回の電源 ICの電流制限が 6Aでしたので、仮に 5Aの定電流で出力コンデンサーを充電すると考えると、T=dQ/di
の式から、T=dQ/di=2820μC÷5A=564μsec が出力コンデンサの充電時間として必要になります。従って、電源の立
ち上げ時間としては、デジタル回路に流れる電流などを考慮すると 1~2msec くらいを立ち上げ時間としてソフトスタート
用コンデンサーを選定して電源を立ち上げる必要があったと言えます。
4. まとめ
今回の現象は、電源 ICやModuleに共通する問題です。FPGAやDSPが複雑な電源シーケンスを要求する為、デ
ジタル回路のタイミング・マージンを持たせるのと同様の考えで、電源を急峻に立ち上げタイミング・マージンを稼ごう
と考えてしまいました。 しかし、電源を急峻に立ち上げるとラッシュ電流が大きくなる為、ラッシュ電流が流れること
により電源の出力電圧は単調増加ではない結果となりました。この現象が更に悪化すると、最悪は電源が起動しな
い様な問題を抱えることになります。要求される電源シーケンスを守りながら、電源 ICのソフトスタート機能について
各電源 ICのアプリケーションノートを見ながら適正な立ち上げ時間を設定するようにしてください。
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電源起動時の問題と起動時間の重要性について
改版履歴
Revision 年月 概要
1 2016年 7月 初版
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