株式会社 FA プロダクツ 植地 祐奈
外観検査の基準を作るには?基準書の作成方法と検査方法につい
て解説
外観検査の基準を作るには?基準書の作成方法と検査方法について解説
製造業は、良品のみを出荷して、不良品を市場に流出させないことが第一の使命です。そ
のために、生産ラインでは外観を検査して不良の流出を防止します。外観検査には自動化
しやすい項目と、自動化が難しい項目があります。自動化しやすい項目は、良品と不良品
の違いがはっきりしており、その違いを定量化することが容易な項目です。製品の外形な
どがそれにあたります。
一方で、自動化が難しい項目は、色むらのように定量化がしにくい項目や、表面に付着し
た異物やキズなど、良品と不良品を見分けにくい項目です。このような場合、通常は検査
員による目視検査を行います。検査を人にゆだねる場合でも、人による判断のばらつきを
できるだけ小さくするために、検査項目ごとの良否判定基準を設定することが重要です。
目次
1.自動化が難しい外観検査項目とは
(1)色味
(2)キズ
(3)異物
2.外観検査基準書の作成
(1)項目
①検査項目の定義
②検査方法
③検査担当者
④管理方法
⑤不良時の処置
⑥その他の項目
(2)検査基準書の例
3.外観検査工程の構築
(1)拡大鏡
(2)外観検査支援システム
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1. 自動化が難しい外観検査項目とは
画像処理による外観検査を導入する際、ハードルとなるのは定量化の難しい検査項目で
す。具体的にどのような項目が該当するのか紹介していきましょう。
(1) 色味
製品表面の色味の違いは定量化が難しく、自動化が難しい項目です。特に切削油を除去す
るための洗浄工程後の水シミや、銅基板の酸化などが代表例です。これらは画像処理によ
る定量化が難しいため、人による検査を行うことが多い項目となります。
(2) キズ
製品表面に入るキズも、ケースによって定量化が難しくなります。たとえば、部品を切削
して製造する場合の切削痕(ツールマーク)は良品と判定し、切削痕と異なるキズは不良
としたいといった場合、画像処理装置による自動判別のハードルは上がります。このよう
な場合、人による検査で不良となるキズを判別せざるを得なくなりがちです。
(3) 異物
発生する異物の大きさや、異物が付着する場所を予測できない場合、定量化は困難となり
ます。さらに、異物の材質も特定できず、色味が定義できないことも多いでしょう。異物
のこのような特性から、画像処理装置による異物の判別も定量化しづらい項目と言えま
す。とくに半導体素子のように表面に様々なパターンがある場合、異物の種類と付着箇所
によっては異物がパターンに埋もれてしまい、検出が困難です。このような場合にも、人
による検査に頼ることが多くなります。
これまで紹介してきた定量化の難しい項目も、画像処理技術の向上により徐々に対応可能
となってきています。特に良品・不良品の画像から AI 自らが判定基準を学習する「ディ
ープラーニング」という技術の発展により、従来は検査基準の定量化が難しかった領域に
おいても、自動化が可能となりつつあります。とはいえ、導入コストなどの問題から、人
による検査に頼るケースはまだまだ多いと言えるでしょう。
2. 外観検査基準書の作成
人による外観検査を行う場合、人による検査結果のばらつきを防ぐため、外観検査基準書
を用意する必要があります。検査基準書は良否の判断のガイドラインとなるモノですの
で、検査の際に見える位置に掲示して日常的に利用します。ここでは外観検査基準書の構
成について説明します。
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(1) 項目
① 検査項目の定義
まずは検査項目を定義します。検査項目を決める観点は、
• 製品の機能
• 顧客要求
• 法規制
• 工程能力
などが挙げられます。これらの観点から、製品のどの部位が、どのような状態になってい
ると不良とするのかを決めていきます。外観検査で定量的に示せない項目は、良品写真の
他に、不良モードごとに良品限度・不良品の写真を検査基準書に添付します。
② 検査方法
次に、各検査項目をどのように検査するのか、検査方法を決めます。検査基準書には検査
の頻度、検査サンプリング数、測定器を記載します。
③ 検査担当者
検査において技能が必要と考えられる場合は、検査員も認定制にします。検査基準書には
検査員の役職や必要な資格を記載します。
④ 管理方法
定量化できない項目は、計数値を管理するタイプの管理図で品質を管理します。
この管理図には、
• c 管理図
• u 管理図
• np 管理図
• p 管理図
の 4 種類があります。検査基準書には使用する管理図の種類を記載しましょう。
用いる管理図の種類は、下記で決定されます。
a)管理したいのは不適合数か不適合品数か
b)サンプルの大きさ(ロットの大きさ)を一定にできるか否か
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まず、a)管理したいのは不適合数か不適合品数か、について説明します。不適合数とは、1
つの製品に対し、あるモードの不良となる箇所がいくつあるかをカウントした値をいいま
す。また不適合品数は、不良となる箇所を含む製品の数をいいます。したがって、1 つの
製品を検査したときに、5 か所に異物付着の不良がある場合、不適合数は 5、不適合品数
は 1 となります。
次に、b)サンプルの大きさ(ロットの大きさ)を一定にできるか否かを考えます。生産数
量が安定している生産ラインでは、ロットサイズを一定にすることができます。一方、市
場要求に対してフレキシブルに生産品目と数量を変動させるラインではロットサイズを一
定に保つことが困難です。このように、ビジネスモデルによりロットサイズを一定にでき
るか否かが決まります。
上記 a)、b)の 2 軸を元に、使用する管理図は以下のように使い分けられます。
管理対象 サンプルの大きさ 管理図でプロットするもの
c 管理図 不適合数 一定 不適合数
u 管理図 不適合数 一定でない 不適合率
(=不適合数/サンプル数)
np 管理図 不適合品数 一定 不適合数
p 管理図 不適合品数 一定でない 不適合率
(=不適合数/サンプル数)
⑤ 不良時の処置
不良品が発生した場合の処置についても記載します。手直しの可否や、不良品の分析の要
否、保管の要否などを記載します。
⑥ その他の項目
①~⑤の情報の他、検査工程の基本情報(ライン名、工程名、工程番号、品名、品番)
や、帳票の承認印、改訂履歴などを必要に応じて記載します。
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(2) 検査基準書の例
以上の項目をまとめて帳票にしたものを示します。
これはあくまで、必要最低限の情報である点に注意してください。各社の事情に応じて必
要な情報を記載しましょう。先にも述べた通り、検査基準書は日常的に確認しながら検査
を行います。したがって、良品限度や不良品の写真が鮮明に見えることが第一優先です。
さらに使いやすさを考慮して、1 枚にまとめることが望ましいでしょう。
3. 外観検査工程の構築
(1) 拡大鏡
手で製品を持っていろいろな角度から確認したい場合には拡大鏡を用います。拡大鏡と
は、大きな虫眼鏡のようなものです。ただし手で持つのではなく、作業台に取り付けるタ
イプを採用しましょう。両手が空くので作業性が向上します。作業ブースの構築も含め
て、数万円で導入が可能です。
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(2) 外観検査支援システム
製品の搬送と製品外観の撮像までを自動で行い、撮像した結果を検査員がモニタを確認し
ながら良否を判定します。この場合、検査員はラインとは離れた場所で作業することも可
能です。人による検査ならではの、製品を傾けたり、反転させたりする動作も、ロボット
を遠隔操作して実行できるシステムもあります。撮像機器の性能や、ロボットの有無など
で大きく左右されますが、簡素なシステムでは数十万円から構築することが可能です。
さらにこのシステムを応用すると、外観検査を自動外観検査と作業員による外観検査の組
み合わせで、検査の信頼性を保ちながら検査コストの削減を実現することができます。本
稿での検査対象は、定量化がしにくく、自動外観検査が困難な項目の検査です。検査の信
頼性を確保するために作業員による検査を行うのですが、全数を人が検査すると、多くの
検査工数がかかります。そこで、まずは自動外観検査を行って、自動外観検査が不良判定
した場合のみ、外観検査員が再検査する形をとるのです。
検査ラインが 1 号ライン・2 号ラインと複数ある場合でも、ここで紹介したような外観
検査支援システムを用いれば、検査員は同じ位置にいながら、各ラインから送られてくる
不良判定の画像を再検査することができます。
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