AI を使った検査と使わない検査の違いを解説
株式会社 FA プロダクツ 植地 祐奈
AI を使った検査と使わない検査の違いを解説
外観検査の従来の手法では、作業者の目視に頼る場合が多く、コストや熟練作業者の確保と
いう観点で課題が多いです。画像認識技術を用いた検査装置も、従来の技術では限界があり
ます。AI を使った外観検査技術を活用することで、課題を解決できる可能性があります。
目次
1.作業者の目視による従来の外観検査手法の問題点
(1) 作業者による目視確認の問題点
① 高コスト
② 検査工数・検査品質のばらつき
③ 検査スキルの教育・技能継承の困難さ
2.従来技術に基づく画像認識による外観検査の自動化による課題解決
(1) 仕組み
① 検査対象の画像の取得
② 検査対象にあわせた適切な画像処理
③ 異常箇所、異常項目の特定
(2) メリット
① シンプルな検査を省人化できることによるコストダウン
② 自動化による作業工数と検査品質の安定化
(3) 問題点
① 複雑な良否判定は技術的に困難
② 検査対象に応じた適切なノウハウが必要
③ ソリューションの維持が困難
3.AI を使った画像認識による外観検査の自動化による課題解決
(1) 仕組み
① ディープラーニング
② 学習用データに基づき半自動的にモデルを作成可能
(2) メリット
① モデル化が困難な事例にも対応可能
② 汎用性の高い手法のため同一手法を幅広く横展開可能
③ 要件の変更にも柔軟な対応が可能
(3) 注意が必要な点
① 学習用データの量と質が必要
② ベンダーの技術への理解が必要
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1. 作業者の目視による従来の外観検査手法の問題点
(1) 作業者による目視確認の問題点
① 高コスト
作業者による目視確認を行う場合、当然ながら、該当工程に作業者を配置する必要がある
ため、人的コストが発生してしまいます。それだけでなく、多くの検査では検査結果の集
計・監視・分析等を行うため、検査結果の手動での入力や記録が必要となります。
② 検査工数・検査品質のばらつき
作業者による目視確認の場合、自動機での作業と異なり、確認作業にかかる工数のばらつ
きがどうしても大きくなってしまいます。また、どれだけ基準となる限度見本等が整備さ
れていたとしても、最終的には作業者自身で「どの項目に該当するか?」「基準に照らし
合わせて良品・不良品どちらか?」を判定する必要があり、どうしてもばらつきのある判
定結果になってしまいがちです。
③ 検査スキルの教育・技能継承の困難さ
作業者が判定作業を行うためには、当然ながら、初期教育や、後進への技能継承等を適切
に行う必要があります。しかし、多くの場合、経験的な判定基準は容易に伝えられるもの
ではなく、不十分な教育や技能継承となってしまいがちです。その結果、不良品の後工程
への流出や、必要以上に検査基準が厳格化された運用による高コスト化が発生してしまい
がちです。
2. 従来技術に基づく画像認識による外観検査の自動化による課題解決
(1) 仕組み
① 検査対象の画像の取得
最初に検査対象の画像を取得します。検査対象が静止状態であれば写真データを使いま
す。検査対象が動いている場合は、高速度カメラによるリアルタイムな撮像データを使う
こともあります。いずれの場合も、取得できる画像の精度は、自動検査の精度に大きな影
響を与えるため、検査対象に適した精度の高い画像を取得できるような工夫が必要な場合
が多いです。
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② 検査対象にあわせた適切な画像処理
取得した画像を元に、目的に合わせて適切な情報を抽出しやすいよう、画像データをフィ
ルター処理します。ノイズ除去、エッジ強調、明るさ調整、コントラスト調整、画像変形
(カメラ角度の補正)などといった様々な処理方法があります。
③ 異常箇所、異常項目の特定
取得した画像を元に、検査対象の「どこに」「どのような異常項目」が存在するかを自動
的に特定します。従来技術に基づく外観検査の自動化ソリューションの場合、「色」「周
囲との色差」「形」「大きさ」などのモデルデータを元に、検査対象物や検査対象項目に
応じて適切な判定ロジックを用いて特定を行います。
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(2) メリット
① シンプルな検査を省人化できることによるコストダウン
外観検査の自動化が達成できると、検査員を配置する必要がなくなり、人的コストを削減
することが可能です。
② 自動化による作業工数と検査品質の安定化
外観検査の自動化によって、作業員の熟練度やスキルに依存していた作業工数や検査品質
を安定化させることができます。
(3) 問題点
① 複雑な良否判定は技術的に困難
画像から特徴を抽出しやすい単純な欠点項目の場合、従来技術ベースの外観検査の自動化
ソリューションでも十分実用に耐える検査精度を実現できることが多いです。しかし、作
業員の経験と知識が必要とされてきた外観検査の場合、欠点項目のモデル化が困難な場合
が多く、結果的に完全な省人化を達成できるレベルを実現することが難しい場合が多いで
す。その結果、部分的な少人化にとどまり、省人化まで至らず、想定していた効果を出せ
ないケースがあります。
② 検査対象に応じた適切なノウハウが必要
従来技術ベースの外観検査の自動化ソリューションでは、各検査項目のモデル化が必要で
す。様々な形を取り得る欠点項目を特定する必要がある場合、モデル化には高い技術力と
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センスが必要で、各検査対象や各検査項目への最適化が必要となる場合が多いです。その
ため、多品種・多数の検査項目への対応は、非常に困難となりがちです。
③ ソリューションの維持が困難
外観検査で判定すべき項目や、判定基準は、日々の生産の実情や市場からのフィードバッ
クに柔軟に対応していく必要がある場合がほとんどです。しかし、従来技術による画像認
識では、そのような機能追加や調整の技術的難易度が非常に高く、導入初期は問題無かっ
たものの、時間の経過とともに問題が顕在化し、適切な自動検査が不可能になってしまう
という形でソリューションを維持できなくなるケースがあります。
3. AI を使った画像認識による外観検査の自動化による課題解決
従来技術の問題点を解決するための手法として、AI を使った画像認識技術の活用には大
きな可能性があります。それらの仕組み、メリット、注意点、活用事例を説明します。
(1) 仕組み
① ディープラーニング
AI を使った画像認識の代表的な手法として、機械学習の 1 種であるディープラーニング
(深層学習)があります。ディープラーニングでは、多くの隠れ層(=中間層)を持つディープ
ニューラルネットワークという汎用的な形で、多様な入力と出力の関係を柔軟に再現する
ことが可能です。
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具体的には、入力に対して最適な結果が出力されるよう、ディープニューラルネットワー
クの隠れ層(=中間層)の重みづけのパラメータを、シミュレーションを繰り返しながら最
適化していく自動的な手法です。
② 学習用データに基づき半自動的にモデルを作成可能
このように、ディープラーニングでは、学習用データを元に隠れ層の内部のパラメータを
半自動的に最適化する手法が確立されており、検査対象の画像から欠点箇所の特定を行う
モデル化をエンジニア自身が細かい設定やアルゴリズムを考えることなく実現できる強み
があります。
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(2) メリット
① モデル化が困難な事例にも対応可能
作業者の経験と知識が必要だった良否判定が難しい事例でも、学習用のデータを大量に準
備することで良否判定の精度を高めることが可能です。エンジニア自身が判定ロジックの
モデル化を如何に定義するかを考える必要はなく、適切な学習用データの準備に注力すれ
ばよいシンプルさが魅力です。
② 汎用性の高い手法のため同一手法を幅広く横展開可能
多品種・多項目の外観検査の場合、従来手法では、一つ一つの検査対象や検査項目につい
て、それぞれ、エンジニア自身が判定ロジックのモデル化を如何に定義するかを検討する
必要があり、大きな時間とコストが発生する場合が多いです。それに対して、ディープラ
ーニングを活用することで、汎用的な半自動的な手法を活用でき、少ないリソースで多品
種・他項目への外観検査の自動化対応が可能となります。
③ 要件の変更にも柔軟な対応が可能
判定すべき項目や、判定基準が、日々の生産の実情や市場からのフィードバックで変化せ
ざるを得ない場合でも、追加の学習用データさえ準備できれば、汎用的に同様の手法を展
開することで、柔軟な対応が可能な強みがあります。
(3) 注意が必要な点
① 学習用データの量と質が必要
ディープラーニングでは、適切な学習用のデータさえ準備できていれば、後は半自動的な
プロセスで仕組みを構築することが可能です。しかし、学習用データは別途準備が必要で
す。検査レベルに応じた適切な精度の画像を準備する必要があることと、検査レベルを高
めるためには大量の学習用のラベル付けされた画像データが必要であることに注意が必要
です。
② ベンダーの技術への理解が必要
ディープラーニングの半自動的な学習プロセスは汎用化が進んでいますが、それでも不適
切なデータの扱いや手法の選択によって、精度の低い判定結果しか出せない仕組みが構築
されてしまう可能性は否定できません。そのため、技術への理解が深く、適切なプロセス
を構築できるベンダーと共に課題に取り組むことが重要です。
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