マルチマテリアル
3Dプリンティング
を活用して
デザインプロセス
を効率化する方法
E-book
はじめに
デザインを製品化する際は、デザインのインスピレーション
から、手始めのスケッチ、大まかなプロトタイプ、詳細な
デザインレンダリング、忠実度の高いモデルに至るまで、
デザインプロセスの各フェーズを経て、最高のモデルを
実現するデザインを確定します。デザイナーの方であれば、
これまでのデザインの中には、成功したものもあれば、
うまくいかなかったものもあるかもしれません。また、
デザイン上の欠点が発覚してプロセスが 1か月前の時点
まで戻ったり、外注の際にトラブルが発生したり、チーム
メンバーやクライアントとの間でコミュニケーションが
うまくいかなかったり、なかなか承認を得ることが
できなかったり、さまざまな問題に直面したことでしょう。
デザインプロセスは本質的に「未知への 信頼性が高く使いやすいツールをそばに
冒険」であり、つねにいくつかの難題や、 置いて利用できるとしたら、どう思い
アイデアの廃棄、承認のハードルが伴い ますか。
ます。では、このような問題が非常に さあ、今こそデザインプロセスを
些末なものになり、数日や数週間に アップグレードするときです。初期
わたるような作業の中断がなくなると プロトタイプからデザイン審査に至る
したらどうでしょう。ほんの数時間で まで、すべてのステップを効率化する
フルカラーモデルを手に入れることが 方法と、その実例をご覧ください。
できるとしたら、どうですか。
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E-book はじめに
インスピレーション
を得る
どのようなデザインも、まず
アイデアから始まります。しかし、
その最初のアイデアの後に
「無理だな」とか「時間がかかり
すぎるな」といった思考が続くと
したら、デザイナーにとって
これほど不幸なことはありません。
まだプロトタイプの作成さえ始まっていない段階
で、制約が課されてはなりません。デザイナーに
必要なのは、好奇心やインスピレーションを刺激
するツールです。ほぼ無制限の色とテクスチャを
簡単に利用でき、そして数十種のプロトタイプを
わずか数日で作成できるとしたら、どのようなもの
がデザインできるでしょうか。外注に依存する
必要がなく、すべてのモデルを社内で造形できる
としたら。外注した場合、それが戻ってくるまでに
数週間待つ必要があり、その分だけアイデアを
確定するのが遅れることになります。
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E-book 第 1章
インスピレーション
ストラタシスのアプリケーションエンジニア兼シニアインダストリアル
デザイナーであるLiorの例をご覧ください。
Liorは、家庭環境に適したスマートスピーカーを 形状が好きなので、立方体や球体、さらには
デザインする任務を任されました。Liorはすぐに、 三角形まで試しました」とLiorは話します。
このデザインの全般的ガイドラインを策定しま 最終的に、Liorは、スマートスピーカーの人気の
した。スマートスピーカーは小さくなければ トレンドであるファブリック調のカバーを使用した
ならず、また、キッチンでも寝室でも、どの部屋 デザインにしようと考えます。このプロジェクトでは
でも見栄えが良いものにする必要があります。 マルチマテリアル3Dプリンティングを利用して
また、低音域のビートをオフセットできるよう いたため、ファブリック調のカバーを簡単に
に、土台に重みを持たせる必要もあります。 デザインに組み込めることをLiorは知っていた
「手描きのスケッチを何十種も描くことから のです。
始めました。わたしはすっきりとした幾何学的な 4
E-book 第 1章
KeyShot®を使用したデジタルレンダリング
フェイルファストによるスマートなプロセス
熟練したデザイナーは、 多くのデザイナーは、製品の初期形状を確定 ただし、このようなデザインプロセスの初期段階で
させるうえで、おもにフラットレンダリングに依存 総時間の半分を費やすような余裕はありません。
確固たる基盤がなければ しており、実際に使用できるプロトタイプは1つか 他方、デザイン上の大きな欠点をプロセスの後半で
デザインプロセスがすぐに 2つに限られています。しかし、2D画像や 3D 修正することになれば、膨大な時間とコストがかかり
レンダリングでは、製品が実際の使用環境で ます。3Dプリンティングを活用すれば、多数の
うまくいかなくなることを どのように見えるのか、ユーザーが手に取った デザインバリエーションを素早く簡単に造形できる
知っています。 ときにどのように感じられるのかを正確に把握 ため、デザインプロセスの早い段階で、さまざまな
することはできません。 可能性を探り、製品の全体的な形状を確定させる
ことができます。
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E-book 第 2章
形状
Liorは、紙の上で構想を練った後、デジタル 3D
レンダリングと物理モデル作成のステップに移り
ました。そして、初期形状に関して、数十パターンの
デジタルレンダリングを行い、6~ 7個の 3D
プリンティングバリエーションを造形しました。
KeyShot®を使用したデジタルレンダリング
このスマートスピーカープロジェクトで、Liorは
PolyJet Technology ™を利用しています。最初の
モデルは、DraftGrey ™で 3Dプリントしました。
これは、ラピッドプロトタイピングに最適な
低コストの単一材料高速造形オプションです。
3Dプリンティングにより、1日に 2~ 3個のプロト
タイプを造形できました。その際、プリンタは夜間に
稼働させておくことができます。また、最も大きな
メリットとして、Liorは各バリエーションから学習して、
つぎのアイデアに進み、デザインの欠点を修正
していくことで、形状の確定を迅速に行うことが
できました。
「数え切れないほど大量のバリエーションを造形
したため、きちんと整理しておくのに苦労した
くらいです。数週間後、円形ではなく正方形に
することに決めました。市場に出回っている他の
スマートスピーカーと差別化するためです」と
Liorは話します。
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Stratasys J55を使用した 3Dプリンティング
E-book 第 2章
レンダリングから
現実へ
KeyShot®を使用したデジタルレンダリング
外部委託や従来型のモデリングの場合、時間や
コストの面で制約があるため、多くのデザイナーは、
プロセスの最後の段階になるまで、詳細なデザインに
基づくフルカラーモデルを造形することができません。
そのため、CMFモデルで重大な問題が発生した場合
(たとえば、カラーモデルによって、それまで発見
できなかった形状面の問題が明らかになった
場合)、プロジェクトが危険にさらされることになり
ます。また、従来の方法では、CMFの選択に関して
チームメンバーに伝える際、デジタルレンダリングに
依存することになりますが、画面上では実際の
色のとおりに表示されるとは限りません。
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Stratasys J55を使用した 3Dプリンティング
E-book 第 3章
Stratasys J55を使用した 3Dプリンティング
CMF Liorは、形状を確定してからわずか 1週間後に、 デザインに適用し、実際のモデルを造形することが
3Dプリントデザインに色を組み込むことが できました。数種類のバリエーションを試した結果、
できました。形状はとてもシンプルで、丸みを 最終的にファブリック調テクスチャを採用すること
帯びた立方体であったため、すぐにはスピーカー にしました。
として理解してもらえませんでした。Liorは表面 シンプルなファブリック調テクスチャで造形された
仕上げに関して、木目調など、いくつかのパターン モデルを見て、評価者たちは「スピーカーで
を試そうと考えました。この種のプロジェクトで あることがすぐに伝わる」と評しました。Liorは、
木目調バージョンを外注した場合、通常は数週間 モデルを塗装したり、ファブリック調バージョン
かかります。しかし、そのような期間的余裕はありま が外注先から戻るのを待ったりすることなく、
せん。マルチマテリアル 3Dプリンティングを利用 さまざまな色のモデルを造形して、すぐにフィード
することで、わずか数時間で、木目調テクスチャを バックを得ることができました。
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E-book 第 3章
評価者から
承認を得る
デザインプロセスの中の大きな
難関として、審査があります。
特に、コミュニケーション面で
問題があると、承認を得ることは
いっそう困難になります。
承認に関して、多くの企業は、デザインプロセス
全体を通じてデジタルレンダリングに依存して
います。しかし、2D画像だけの場合、評価者に
とってフィードバック方法がわかりにくくなること
があります。また、実際のプロトタイプ作成には
制約があり、評価者からフィードバックがあっても、
反映するのが困難になる可能性があります。
3Dプリンティングであれば、忠実度の高いプロト
タイプを 1日または 1晩で造形して、頻繁かつ
定期的に評価者に渡すことができます。これに
より評価者は、デザイナーがフィードバックを
聞き流さず、きちんと考慮に入れてデザインを
更新しているか確認することができます。「自分
の意見が聞き入れられ、尊重されている」と
関係者全員が感じることで、プロジェクトは迅速に
進行し、承認も迅速に行われます。
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Stratasys J55を使用した 3Dプリンティング
E-book 第 4章
Stratasys J55を使用した 3Dプリンティング造形
現実化する デザインは、CMFモデルで終わるわけではありません。優れた最終完成品を
実現するよう、さまざまな機能を組み込んで高い忠実度の最終モデルを
造形する必要があります。しかし、手動でモデルを作成したり、外注した
プロトタイプを待っていると、最終デザインフェーズが急ぎ足になり、後で
本生産時に問題が複雑化したり、PMF(プロダクトマーケットフィット)リスク
が増大したりするおそれがあります。
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E-book 第 5章
デザインの
確定
スピーカーが本生産に入った後でデザインを変更
することがないように、Liorは、USB-Cポートや
デジタル画面、内部の仕組みを見るための透明
カバーの要素を組み込んだモデルを造形しま
した。
デジタルレンダリングではデザインに問題はない
ように見えましたが、3Dプリンティングで造形
することで、いくつかの欠点がはじめて判明しま
した。たとえば、デジタルレンダリングでは
デジタル画面は適切なサイズを思われましたが、
実際に造形してみると明らかに大きすぎました。
Stratasys J55を使用した 3Dプリンティング
この実際のモデルは3Dプリントされたものである
ため、サイズや配置に関する問題を修正した後、
その日のうちに新しいモデルを造形することが
できました。これにより、Liorは、可能な限り
徹底的にデザインを考え抜くことができました。
「偶然に頼っているだけでは、デザインプロジェクト
を進めることはできません。どんな小さな部分
でも、決定を行う際は、目的に基づいて、何度も
何度も調整を行う必要があります」とLiorは話し
ます。
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E-book 第 5章
このスマートスピーカープロジェクトでは、J55 3D
プリンタが使用されています。このプリンタは、マルチ
カラー /マルチマテリアル機能を備えており、デザイン
プロセスのスムーズ化、所要時間の短縮化を実現します。
「文字どおり自分の隣にプリンタを置けるので、本当に
便利でした。モデルを手に入れるのに、別の建物に行った
り、オフィスを横切ったりする必要はありません。すぐに
造形物を手にすることができ、しかもビルドトレイから
取り出した瞬間から優れた品質を備えていました」と
Liorは話します。
J55は、卓越したPolyJetテクノロジーの品質と、
オフィスに適したコンパクトなデザイン性を兼ね備えて
おり、さまざまなデザイン空間にシームレスにフィット
します。J55で造形した場合、後処理がほとんど必要
ないため、通常であればモデルの研磨や手塗りにかかる
時間を節約することができます。Pantone社認定の色
を含め、50万色を超える色の組み合わせと、木目調や
ファブリック調など、幅広いテクスチャおよび表面仕上げ
のオプションを利用できます。問題が発生したらその
ときに修正し、評価者に実際の評価用プロトタイプを
提供し、承認を得ることができます。さあ、アイデアを
現実にしましょう。
詳細: www.stratasys.co.jp/3d-printers/j55
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