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「Industry4.0-IoTナビ Vol.8」【完全版】世界で熱気高まる第4次産業革命とIoT

ホワイトペーパー

日本、ヨーロッパ、中国、ASEANで高まる製造現場のデジタル化、最先端のスマートファクトリーをご紹介

ものづくりを応援する業界紙・オートメーション新聞の別冊「Industry4.0・IoTナビ」は、インダストリー4.0やIoT、スマートファクトリーに関する各種情報をまとめたムック本です。

第8弾となる今回は、中小企業における課題、世界の最先端工場、国内外の市場環境など多数掲載しています。

<掲載内容>(一部抜粋)
◆スマートファクトリーの世界のお手本16選
◆あらゆるデータを吸い上げるIoTカスタムサービス
◆プログラマブル表示器30周年 HMIのこれから
◆コグネックス、ディープラーニングで検査の自動化
◆ASEANに広がる第4次産業革命の波
◆自動化熱やまぬ中国市場 広州レポート
◆インダストリー4.0を実現するフエニックスの最先端工場

このカタログについて

ドキュメント名 「Industry4.0-IoTナビ Vol.8」【完全版】世界で熱気高まる第4次産業革命とIoT
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別冊 Industry4.0-IoTナビ Industry4.0, Industrial IoT, Industrial Internet,Smart Factory Vol.8 日本、ヨーロッパ、中国、ASEAN 世界で熱気高まる 第4次産業革命とIoT スマートファクトリー世界のお手本16選 あらゆるデータを吸い上げるIoTカスタムサービス プログラマブル表示器30周年 HMIのこれから コグネックス、ディプラーニングで検査の自動化 ASEANに広がる第4次産業革命の波 自動化熱やまぬ中国市場 広州レポート インダストリー4.0最前線 フエニックス・コンタクト本社工場 株式会社アペルザ オートメーション新聞社
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INDEX インダストリー 4.0 -IoT ナビ Vol.8 I N D E X 国内IoT用途別/産業別調査 製造業が牽引 …………………………………………………………………………………… 1 23年には11兆7915億円に拡大へ 中小企業が生きる道 IoT、AI活用、協創がカギに ……………………………………………………………………………… 2 2019年版 中小企業白書・小規模企業白書から デジタル化時代における工場最適化への将来展望 ……………………………………………………………………… 3〜 4 スマートファクトリー関連市場は25年に4兆8000億円へ 製造業のIoTは着実に進行中 中小企業の活性化に課題 ……………………………………………………………………… 5 JMAC、ものづくりIoT実態調査 スマートファクトリーの世界のお手本16選 …………………………………………………………………………………… 6 第4次産業革命をリードする最先端工場たち 工場・製造現場におけるIoTモニタリング急拡大 ……………………………………………………………………………… 7 ITとOTの融合加速へ 産業IoT普及に向けた新展開アプリストアがスタート ………………………………………………………………………… 8 IT企業にチャンス到来 インダストリー4.0を実現する最先端工場 ……………………………………………………………………………… 9〜 10  フエニックス・コンタクト社ドイツ本社工場 ハードからソフト、システムまでカスタム最適化 …………………………………………………………………… 11〜 12 IT・OT融合で、あらゆるデータを吸い上げる「Octo IoT」  パクテラ・テクノロジー・ジャパン株式会社 プログラマブル表示器「Pro-face」生誕30周年 HMIの今とこれから …………………………………………… 13〜 14  シュナイダーエレクトリック インフィニオン、日本企業との協業、共創拠点オープン ……………………………………………………………… 15〜 16 モーターの最適制御、新規ビジネス開発を強化  インフィニオンテクノロジーズジャパン株式会社 コグネックス、製造現場における画像検査の今と将来 ……………………………………………………………… 17〜 18 ディープラーニングベースの自動検査ソリューション &画像処理からメカトロ制御までワンストップ ローコストで高精度のアライメント自動化ソリューション Linux採用で加速する エッジコンピューティングの進化 …………………………………………………………………… 19  リネオソリューションズ株式会社 ASEANに広がる第4次産業革命の波 ITAP(シンガポール)10月開催 …………………………………………………… 20 自動化熱やまぬ中国市場 広州・自動化専門展SIAF2019訪問記 ……………………………………………………21〜 22 ベライゾン、国際法務・ポリシー担当最高責任者ラウンドテーブル ………………………………………………… 23〜 24 5Gの先駆者、インダストリアルネットワークにも注目 「農業x IoT」東京から一番遠いまちでIoT ……………………………………………………………………………… 25〜 27  株式会社ゴウツゲストハウジーズ 代表取締役CEO/  株式会社GPA 代表取締役CEO/合同会社EGAHOUSE&COMPANY 代表社員 江上 尚  Industrie4.0 -IoTナビ vol.8  発行所:株式会社アペルザ オートメーション新聞社            発行日 : 2019年5月31日 〒231-0023 神奈川県横浜市中区山下町23番地 日土地山下町ビル13F        電 話 : 045 -228 -8873 FAX : 045 -345 -4790   メール : info@automation-news.jp       オートメーション新聞WEB版 http://www.automation-news.jp/
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インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.8 潮 流 IDC、国内IoT用途別/産業別調査 製造業が牽引 23年には11兆7915億円に拡大へ  IDC Japanは、国内IoT市場における用 途別/産業分野別の予測を発表した。主要 産業分野のうち、製造業がもっとも支出 額が多く、中期的に見ても拡大傾向にある としている。また全体の支出額について、 2018年実績(見込値)は6兆33167億円 であり、その後は2023年まで年間平均成 長率13.3%で成長し、2023年には11兆 7915億円に達すると予測している。 国内IoT市場 支出額および前年比成長率予測、2018年~2023年 製造業のIT化によって設備投資が活発化 対的に高く、2023年には組立製造に次いで2番目に大きい 市場になると予測している。  主要産業分野(13業種)のうち、個人消費者を除く12業  国内外のB2Cビジネスに強みを持つ大手ベンダーが中心 種を比較すると,組立製造、プロセス製造、官公庁、公共/公 となり、ディープラーニングなどの高度なデータアナリティ 益、小売、運輸の支出額が目立ち、特に製造業の支出額が突 クス技術をIoTと組み合わせることで、スマート家電やス 出している。 マートホームオートメーションといった分野での新サービス  下図は、世界のIoT支出額を5つの産業セクターに分類し の創出に注力していることなどが関係しているという。 たうえで、それぞれのセクターにおける2017年と2022年  スマートホーム以外の成長性が高い用途としては、農業 の地域別の割合を示したもので、そこでは製造/資源セク フィールド監視、小売店舗内リコメンド、コネクテッドビ ター(製造業、建設業、資源業を合算したセグメント)にお ル(照明)、スマートグリッド/メーター(電気)、テレ ける日本の割合は他のセクターよりも際立っている。日本 マティクス保険など。2018年~2023年の年平均成長率で はGDPに占める製造業の割合が大きいことに加え、コネク 20%を超える成長が期待されるとした。 テッドインダストリーズなど、製造業のIT化を通じて国力を  同社コミュニケーションズ シニアマーケットアナリスト 高めていこうとする政策がその要因となっているとした。 の鳥巣悠太氏は、「IoTに対する支出額は世界的に高い成長 が見込まれるが、それらを産業分野/ユースケースの観点か コンシューマ向け市場、農業IoTなども成長期待 ら地域別に比較すると、さまざまな特徴の違いが見られる。  全産業分野の中で、個人消費者のIoT支出額の成長性は相 したがって、海外で今現在成功しているユースケースを国 内向けにカスタマイズして取り入 れることで、ベンダーの新しい収 益につなげることが重要になる」 としており、また「日本国内にお いて特徴的なユースケースを海外 へ水平展開すべく、国内と類似し たニーズがある地域を模索するこ とも肝心である。ユースケースの 「輸入と輸出」を積極的に進める ことが、ベンダーの収益拡大には 必須になる」と述べている。 世界IoT市場 支出額の産業セクター別/地域別の割合、2017年と2022年の比較 — 1 —
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インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.8 潮 流 中小企業が生きる道 IoT、AI活用、協創がカギに 2019年版 中小企業白書・小規模企業白書から  国内の企業の99%以上が中小企業と言われ、中小企業の活性化が日本経済のカギを握るとされる。製造業でも 例外ではなく、中小製造業の底上げが一層重要となる。中小企業庁は毎年恒例の「中小企業白書」「小規模企業白 書」をまとめ、中小企業が取り組むべき課題として、IoTやAI活用、企業間連携や共同開発を挙げている。 中小企業、IoT・AIの導入意向なしが51% 協業したい相手として評価の高い中小企業  白書では、IoTやAI活用などデジタル化社会が進むなか、  第4次産業革命に端を発する新しい時代は、オープンで 中小企業でもそれらの活用が有益と位置づけ、データを活 企業同士による共創がポイントとされる。大企業を中心に 用し、業務効率化や売上増につなげていくチャレンジを促 M&Aをはじめ、業務提携や協業などのニュースが騒がせて 進していく必要があるとしている。 いるが、その対象は大企業だけではない。大企業は技術や  しかし現在の中小企業におけるIoT・AIの導入率は、 ノウハウを持った中小企業を研究開発や協業の連携相手と IoT・AIを両方または片方を導入しているという企業は して視野に入れており、今後は大企業と中小企業の連携は 24.9%、検討しているが15.1%、どちらも導入する意向が 増えていくことが予想されている。 ないが54.3%と半数以上を占めている。IoTにまつわる話  白書ではその事例として、ロボットシステム開発会社の 題が数多くニュースとなっているが、それらが自社の事業 HCI(大阪府大津市、従業員数48人、資本金2000万円) にとって有益である、使おうというところまで浸透しきれ と三菱電機が組んだ事例を紹介している。三菱電機は産業 ていないことが分かる(図1)。 用ロボットで、ケーブル・ワイヤーなどの柔らかいものの 図1:従業員規模別に見た、IoT・AIの導入状況(2017年) アプリケーションに課題を抱えていた。それに対し、かね てから同社のロボットSIであり、ケーブルやワイヤーの扱 いに長けているHCIが、ワイヤーハーネスを自動で作るロ ボットシステムを開発。共同開発を通じて新たなビジネス につなげたという。  大企業は研究開発や製品開発に強みを持つが、客先から 遠いケースも多い。一方、中小企業はお客との距離が近 く、客の困りごとや悩みごとの相談相手としてアプリケー ション開発を得意とする。得意分野が異なるので事業的に 重なることは少なく、お互いにとって組みやすいのは間違 いない。中小企業の底上げ、大企業の競争力強化には良い 材料となる(図3)。  実際に導入している企業でも、まだデータを活用しきれ ている企業は多くない。積極的に活用できているという企 図3:大企業が期待する研究開発の連携相手 業は14。6%、ある程度活用しているが46.5%。導入前 に、目的を決め、そのためにはどういったデータを集める 必要があるかをキチンと決めることで有効活用ができるよ うになる(図2)。 図2:IoTにより収集・蓄積したデータの活用状況(2017年) — 2 —
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インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.8 潮 流 デジタル化時代における工場最適化への将来展望 スマートファクトリー関連市場は25年に4兆8000億円へ  大量生産、多品種少量生産、マスカスタマイズなど、各企業と市場の状況に応じた最適な生産体制を備えるス マートファクトリー。工場の理想の姿として、各社がそれに向けた一歩を踏み出している。スマートファクトリー を構成する要素とその市場は2018年の2兆1050億円から25年には4兆8288億円に拡大し、当分このトレンドは 続いていく。 スマートファクトリー実現に不可欠なハードとソフト デジタル化へのはじめの一歩  スマートファクトリー実現にはハードウェアとソフト  工場は生産する品目や市場の状況によって日々変化する ウェア、それらを組み合わせたシステムの構築が不可欠 もので、最終ゴールはない。ここ数年、上記のような工場 だ。富士経済は「NEXT FACTORY関連市場の実態と将来 の次世代化のための製品のPoCが進んでおり、早いとこ 展望 2018」のなかで、スマートファクトリー実現に必要 ろでは実際の生産ラインに入りつつある。特に①インテリ な要素としてハードウェアとソフトウェア・システムの7 ジェント生産システムと④インテリジェントセンサー、⑤ 分野を挙げ、その市場を調査した。 見える化ツールは、既存の製造装置に外付けや追加で導入 ①インテリジェント生産システム(PDM/PLM、MES、製 でき、大きく手を入れる必要がない。いわゆるスマート 造業向けIoTプラットフォーム、製造業向けAIシステム、 ファクトリー、工場のIoT化、デジタル化の第一歩として 機械系3D CAD/CAM、SCADA、ラインシミュレータ、 先行して導入が進んでいる。 生産スケジューラ) ②インテリジェントコントローラ(PCベースのコントロー ラ、産業用PC、GPU非搭載のアクセラレーターボード) ③インテリジェント製造装置(協働ロボット、アーム付 AGV、3Dプリンター、パワーアシストスーツ、3Dロ ボットビジョンシステム) ④インテリジェントセンサー(画像センサー、圧力セン サー、温度センサー、振動センサー、電流センサー、工場 監視用4K監視カメラ、ライトカーテン、セーフティレー ザースキャナ) ⑤見える化ツール(製造業向けダッシュボード、アナログ メータ稼働監視、信号灯ソリューション、スマートグラス などAR/MR表示機器) ⑥ネットワーク(FA用無線LANシステム、FAネットワーク システム) 生産システム、製造装置、見える化の急拡大 ⑦FAセキュリティシステム(UTM、不正機器監視・強制排 除システム ファジングツール)  同調査でも拡大が期待されるものとして、インテリジェ ント生産システム、インテリジェント製造装置、見える化 ■スマート工場を実現するハード/ソフトウェア世界市場 ツールを挙げている。  インテリジェント生産システムは、機械系3D CAD/ CAMが市場をけん引しており、今後も顕著に拡大。AIシス テムの伸びも大きく、2025年には機械系3D CAD/CAM に比肩する市場規模になるとしている。インテリジェント 製造装置は、人手不足や変種変量生産などに対応するため の自動化ニーズの高まりにより伸びており、今後も期待で きる。見える化ツールも、製造業向けダッシュボードが市 場をけん引。また、作業支援ツールとしてARやMR活用の 認知度が高まっており、そのシステム市場も二ケタ成長し ていくと予測している。  特に製造業向けダッシュボードについては、18年は250 富士経済、NEXT FACTORY関連市場の実態と将来展望 2018より 億円だが、25年には760億円まで成長すると見込む。ダッ — 3 —
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インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.8 シュボードは顧客情報や売上、利益などの様々なデータを 分析して経営判断に役立てるビジネスインテリジェンス (BI)ツールの一機能。見える化ニーズの高まりにより、 低コストで始められ、効果も期待されることから急拡大し ているという。今後もPoC案件の増加とともに、本格導 入、他拠点への展開が進むとみられ、引き続き大幅に伸長 するとしている。 新しい開発・設計、製造支援の仕組み クラウドファンディング、WEB受託加工など活用で効率化へ  顧客の要求や市況、現場の状態に合わせて柔軟に対応できるように工場、製造工程を高度化することをスマート ファクトリーとするならば、その前段階である開発・設計も柔軟に対応できる仕組みが求められる。そこで再び注目 を集めているのがメイカーズムーブメントから生まれたクラウドファンディングやクラウドソーシング、WEB受託加 工・生産サービスなどの新たな仕組み。手軽さとスピード感を生み出し、メーカーの開発部門等で有効活用が進み、 これからの拡大も期待されている。 手軽さとスピード感 メーカーでも有効活用 業利益2億8600万円(24.4%増)、純利益2億2100万円 (39.1%増)と業績は好調。海外の廉価サービスとの競  同調査では、ものづくり関連のクラウドファンディン 争が激化するなか健闘しており、今期も売上高21億円で グやクラウドソーシング、WEB受託加工・生産サービス 増加を確保する見込み。利用者も大手メーカーから学校や などを、テストマーケティングや製品開発に向けたデータ 研究機関、個人まで2万社の実績があり、第3四半期末時 収集や小ロット生産など本格的な生産開始前の場として捉 点の会員登録者は5万1779人まで拡大している。 え、新たなものづくり手法として市場予測を実施。18年  また板金加工サービスのキャディは、独自開発の金属加 の世界におけるこれら3市場の合計は6200億円だが、25 工品自動見積システムを使って最短で2時間、1営業日で 年には4兆30億円まで急拡大すると予測している。 回答するスピード感と、薄板から厚板まで、1個から量産  プロジェクトの支援者や財源を集めるためのクラウド まで対応できる仕組みと協力工場ネットワークを背景に ファンディングは大幅な市場成長が続き、テストマーケ サービスを展開している。 ティングや先行予約販売の場として、スタートアップを中  国内における受託加工・生産サービスは、これまで各地 心に活用が進んでいる。業務委託を募るクラウドソーシン の有力企業や工場から依頼を受けてきた地場の中小企業 グは個人事業主が多い北米を中心に欧州や中国、インド が多く、商圏と規模が限られていた。しかし近年は自社の などの海外市場が堅調に拡大。WEB受託加工・生産は小 WEBでサービスを行うケースも増加している。また新し ロット生産ニーズの高まり、金属3Dプリンターによる製 いビジネスモデルとして、WEBサービス事業者が協力工 造の増加などにより伸長し、少量多品種生産が要求される 場を束ねて受託・加工サービスを提供する例も出てきてい 業種での小ロット生産需要は今後も高まっていくと予測し る。いずれにしても開発者にとっては選択肢が増加してい ている。 るのは間違いなく、状況に応じた使い分けが今後も増えて 急成長する支援サービス企業。さまざまな分野に広がる いくのは間違いない。  樹脂・金属部品の射出成形・切削加工サービスを展開 ■メイカーズ世界市場 している米・プロトラブズの18年のグローバル売上高は 前年比29.3%増の4億4560万ドル。WEBに3Dデータを アップロードするだけで見積りと注文ができ、短納期で製 品が届くという手軽さとスピード感が受け、サービス開 始から20年でここまで事業を拡大した。利用者数も増加 傾向で、同社のサービスを利用した製品開発者は18年だ けで4万6000人(22.5%増)に上った。日本でもすでに 2700社での実績があるという。  国内でも同様の例がある。プリント基板の設計から製 造、実装、量産までをWEB上でワンストップ提供するP 板.comの17年度売上高は19億9500万円(9%増)。営 富士経済、NEXT FACTORY関連市場の実態と将来展望 2018より — 4 —
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インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.8 潮 流 製造業のIoTは着実に進行中 中小企業の活性化に課題 JMAC、ものづくりIoT実態調査  日本の製造業におけるIoT活用は着実に進んでいる。取り組みのレベル感はさまざまだが、中小企業から大企業 までIoT技術の活用はこれからの経営に必須であり、時代の流れであることは共通認識として定着していること が、日本能率協会コンサルティングの調査で分かった。あとは実行レベルにどれだけ早く移行できるか。特に、資 金的にも人材的にも余力の少ない中小企業がどれだけ前向きに取り組めるか。また行政やサービス提供者側が、そ れに対してどこまで支援できるかがポイントとなりそうだ。 製造業のIoT実態調査 246社が回答 の原因について同社は、中小企業は検討人材が不足してお り、推進組織もなく、検討手段が分からず、加えて開発投資  日本能率協会コンサルティング(東京都港区、JMAC) 余力もないことを挙げている。 は、4回目となる「ものづくりIoT実態調査」の報告書をま  中小企業もIoTが今後のトレンドで不可欠なものを理解し とめた。製造業メーカー1万2025件に対し、製造業におけ つつも、自社には取り組むだけの余裕がない。その中で彼 るIoTの具体的な取り組み実態に関するWebアンケートを行 らに普及させるためには、定量化した費用対効果を出す、第 い、246社から回答を得た。 一歩を踏み出せるような低コストで簡単なサービスを提供す  回答した企業のうちBtoBが82%で、製造形態は加工組 る、または使いこなせるまでの導入運用サービスを手厚くす 立中心が54%、プロセス中心が36%。業種は製造業全般だ るなどの工夫が必要だ。 が、多かったのは電気機器(19%)と機械(17%)、輸 送用機器(11.8%)、化学(11%)など。年間売上規模は データ取得は製造設備から AIへの関心が急拡大 1兆円以上の超大企業が19%、1000億円以上の大企業が  課題解決のためのIoTに取り組んでいる企業に対し、ど 26%、100億円以上の中堅企業が40%、100億円未満の中 こから情報を取得しようとしているか聞いたところ、「製 小企業が13%となっている。 造設備」からのデータ取得が80%と圧倒的。何を解決しよ 現場の課題解決を中心にIoTは着実に進行中 うとしているかについては、「設備や人の稼働率改善」が 73%、「作業の効率改善」が69%、「品質改善」と「不良  調査ではIoTの活用度合いを、現場改善や業務改善のレベ トラブルの原因追究」が53%となり、稼働率と効率、品質 ルを「①課題解決」、工場全体の最適化やサプライチェー 面を重視している。 ン改革まで行っているレベルを「②最適化」、事業創造や事  製造装置や工場設備にセンサを取り付け、稼働率や生産性 業戦略など新しいビジネスにつなげているものを「③価値創 を見える化し、そこから改善につなげていこうという姿が見 造」と区分けしている。IoTを導入する際に効果が及ぶ範囲 られる。 によって①から②、③へと進んでいくイメージだ。  またIoT活用で導入している、検討している技術に関して  これに基づいてIoTの取り組み状況を聞いたところ、現場 は「各種センシング技術」61%、「ロボット活用」53%、 レベルの「①課題解決」に対して取り組んでいる(実行中) 「3Dプリンター」40%が高い。最近話題のAIに関しては または取り組もうとしている(計画中)の合計が64%に達 17年の33%から18年は62%と急増し、関心の高さがうか し、「②最適化」の41%、「③価値創造」の22%に比べて がえる。 突出して高かった。日本企業の多くは現場レベルでIoTを始  色々なデータを取りたい、ロボットや3Dプリンタを使っ めている段階にある。 てみたいという声は以前からよく聞く。展示会場でもこれ  3年間の推移で見ても、②最適化と③価値創造の数値は らのデバイスは好評で、すでに導入している企業も多い。 ほぼ横ばい。一方、①の課題解決だけは16年43%、17年 一方でAIについては、実際の製造現場で運用しているとい 55%、18年64%と10%近い伸びで増加している。3年前よ うケースは少なく、ある一部の機械や工程で使えることが分 りもIoTに取り組もうとしている企業が増え、底上げされて かったという声や、テスト的な運用にとどまっているという いることが分かる。来年以降は②と③の数値が上がっていく 例がほとんど。実際の生産ラインでフル稼動するのはもう少 ことが期待される。 し先のようだ。 大手企業ほどIoTに積極的。中小企業に足踏み感も  企業規模別では、1000億円以上の大企業では実行中・ 計画中が80%に到達。100億円以上の中堅企業でも16年の 27%から倍増の55%となった。一方で100億円以下の中小 企業は16年の33%からほぼ横ばいの34%にとどまった。こ — 5 —
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インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.8 潮 流 スマートファクトリーの世界のお手本16選 第4次産業革命をリードする最先端工場たち  ダボス会議で知られる世界経済フォーラム(WEF)は、世界中の1000以上の製造現場を調査した中から、製 造工程のデジタル化を進め、第4次産業革命をリードする「Lighthouses(灯台)」の16工場を発表した。いわ ゆる製造現場のデジタル化、スマートファクトリーの先鞭を付けた世界のお手本となる工場だ。 世界的な大手が出揃った第一弾 中小企業やプラントも選ばれた第二弾  第一弾は2018年9月に発表され、内訳はヨーロッパ5カ  第二弾は2019年1月に発表された。ヨーロッパ4,中国 所、中国3カ所、アメリカ1カ所が選ばれた。 2、中東1の合計7工場となり、今回はじめて社員数200人 程度の中小企業Rold社(イタリア)が選出された。 バイエル ガルバニャーテ工場(イタリア)  大量生産時にもデジタルツインでスケジューリングを最適 BMWグループ レーゲンスブルク工場(ドイツ) 化して品質をコントロールしている。  この工場では2018年に32万台の自動車を製造した。独 ジョンソン・エンド・ジョンソン 自のIoTプラットフォームを構築し活用したことで、時間と デビューシンセス事業部 コーク工場(アイルランド) コストこそかかったが、新しいアプリケーションの展開時間   IoTを活用して機械のダウンタイムと運用コストを削減し が80%短縮された。さらに物流コストの大幅削減と品質問 ている。 題の5%削減された。 P&G ラコナ工場(チェコ) Danfoss 天津工場(中国)  WEBベースの分析モデルを使ってサプライチェーン全体  天津工場では、冷蔵庫やエアコン等のコンプレッサーを製 をシミュレーションと俊敏性、応答性が向上し、在庫効率や 造している。フルデジタルのトレーサビリティシステムとス 顧客満足度が16%向上した。 マートセンサー、目視検査、自動監視システムなどのを駆 使して品質管理を改善している。2年で労働生産性30%改善 ボッシュ・オートモーティブ 無錫工場(中国) し、顧客のクレームを57%削減した。  高度なデータ分析でプロセス設定を解析して最適化し、機 械停止が発生する前に予測して歩留まりを向上している。 Foxconn 深セン工場(中国)  スマートフォンや電子部品を製造している。機械学習およ ハイアール 青島工場(中国) びAIを使った装置の自動最適化、スマートな自己管理、実  カスタマイズのためのプラットフォームとAIを活用した 際の自動化製造プロセス、リアルタイムステータスモニタリ クラウドプラットフォームでオーダーメイドのマスカスタマ ングなどで30%の効率向上と、在庫サイクルが15%短縮さ イズを実現している。 れた。 フエニックス・コンタクト Rold Cerro Maggiore工場(イタリア) バッドピルモント工場・ブロンベルグ工場(ドイツ)  同社は240人の従業員で洗濯機や食器洗い機用のロック  顧客仕様ごとのデジタルコピーを作成し、生産時間を 機構を作っている。スマートウォッチやラピッドプロトタイ 30%削減している。 ピング、デジタルダッシュボードなどを活用し、売上高が シュナイダーエレクトリック 7~8%向上した。 ル・ヴォードライユ工場(フランス) サンドビック・コロマント Gimo工場(スウェーデン)  拡張現実などのデジタルツールでオペレーターが拠点全体  切削工具とソリューションのプロデューサーは、生産プロセ にわたる操作、保守、エネルギー使用の可視性を得られるよ スを通じて一連のデジタルデータのつながりを作成して労働生 うにし、保守コストを30%削減。全体的な機器効率も7%向 産性を大幅に向上。例えば「タッチレスチェンジ」は無人稼動 上。 中でもデザインパターンを自動的に変更できるシステムだ。 シーメンス 成都工場(中国) サウジアラムコ ウスマニヤガスプラント(サウジアラビア)  顧客の注文を受けてすぐにスケジューリングして製造。  高度な分析とAI活用したガス処理プラント。ドローンを使っ 100%の品質とトレーサビリティを実現している。 てパイプラインや機械を検査し、検査時間を90%短縮。また FAST RADIUSとUPS シカゴ工場(アメリカ) デジタルヘルメットなどウェアラブル技術も活用している。  工業用3Dプリンタと独自のオペレーティング・システム タタ・スチール アイマウデン工場(オランダ) で、リアルタイムでの設計・生産とグローバルのフルフィル  廃棄物の削減と生産プロセスの品質と信頼性を向上さ メントサービスを提供している。 せるためのソリューションを生み出すため、Advanced Analytics Academyを設立し、業績が大幅に改善された。 — 6 —
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インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.8 潮 流 工場・製造現場におけるIoTモニタリング急拡大 ITとOTの融合加速へ  「IoTを活用した見える化システムの国内普及率は21%超。2022年度末には42%に達する見込み」(矢野経済 研究所調べ)。見える化システムはIoTやスマートファクトリーの第一歩とされ、早くから導入が進んだ。ITとOTが融 合した工場の未来に向けた基盤技術として拡大が期待される 2017年度末の普及率21%から ている。 2022年度末42%へ  採用を主導するのは2020年頃までは3000億円以上の 大企業中心だが、それ以降は中堅メーカー以上の普及期に入  矢野経済研究所は、従来の遠隔監視の進化系となるIoT り、2030年以降には中小メーカーを含めた全領域で導入が を活用した「次世代モニタリング」を調査し、現状と将来見通 進むとしている。 しについてまとめた。次世代モニタリングシステムの国内工 場・製造現場への普及率は、2017年度末で21.1%(従業員 機器や装置のモニタリング・制御を担うHMIも変化へ 規模1000人以上企業487工場のうち103工場)に達し、  遠隔監視は、かつてはエネルギーやプロセス産業のような 2022年度末には42.1工場(205工場)まで増加すると見込 大規模な分散制御・中央監視だったものが、制御盤や装置に んでいる。 取り付けられたHMIと、その上位にある監視用PCへと変化。  次世代モニタリングシステムは、IoT技術を使い、センサ さらに今では工場内から工場外に広がり、スマートフォンやタ ネットワークやM2Mなどで収集した膨大なデータをクラウド ブレットのようなモバイル機器でも工場内で見るのと同じ情 等に蓄積して分析・判断、評価を行う遠隔監視のこと。2000 報が見られ、外部から制御までできるようになってきている。 年代以降、データセンターやクラウド、ネットワーク環境の整 それにともなって見える化システムの構造も変化してきてい 備を背景に、データ収集から活用へと変化してきている。 る。  従来の遠隔監視でもできた稼働監視やデータ収集の見え  製造現場における装置の見える化と制御を担うHMIは制御 る化に加え、予知保全のような保全業務の高度化、開発から 機器に属し、これまでは各メーカー独自の仕様で固まり、閉じ 製造、保全までの統合管理による業務効率化、製品開発や顧 られたネットワークでの利用がほとんどだった。これが最近、 客サービスへの反映も可能になった。先進的な企業では、工 次世代モニタリングに合わせてWEBサーバーとHTML5と 場の情報をそのままバーチャル世界でリアルタイムに再現す いったWEB技術を採用。オープン化に舵を切り、工場内と屋 るデジタルツインやサイバーフィジカルシステムの検証が進 外、モバイルをシームレスにつながるようになっている。 んでいる。  フエニックス・コンタクトは先駆けてHTML5対応のシンク ライアント表示器とWEBサーバ搭載コントローラを発売。こ れまで工場内の見える化・制御システムと、モバイルなどIT側 の見える化システムは別々の技術が使われていたものをIT側 のWEB技術を採用してベースを統一。これにより工場内と屋 外やモバイルで同じ情報が見られるようになり、システムの開 発工数や保守メンテナンス工数も削減した。  またHMIの世界トップメーカーのシュナイダー・エレクトリッ クも新製品でHTML5対応機種を検討中。ITと製造現場の OT技術の融合は、見える化システム基盤、ハードウェア技術 でも進んでいる。 2030年には ほぼすべての製造機器・設備で標準採用に  将来的には、ユーティリティ設備に加えて、短期的には大型 や高額、高速な生産設備・機器での採用が進み、製造業向け のサービスタイプのビジネスモデルなど活発化する見込み。 フエニックス・コンタクト、HTM5対応ウェブパネル 2030年以降にはほぼ全ての製造機器・設備でのサービスビ ジネスモデルの採用(ITモニタリングの活用)が実現するとし — 7 —
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インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.8 潮 流 産業IoT普及に向けた新展開 アプリストアがスタート アプリ開発に長けたIT企業にチャンス到来  産業IoTの普及に向けて、課題を解決する、便利さ を提供するようなアプリケーションの充実が欠かせな  開発主体は い。いま一部の企業では、産業IoTプラットフォーム上 IT企業に期待 で開発したアプリケーションを販売できる、いわゆる 「アプリストア」の提供をスタートしている。産業IoT 市場でビジネスを大きくしたい企業にとってアプリス トアは大きなチャンスだ。 飽和するIoTプラットフォームとIoTソリューション SIEMENS Mindsphre Store  産業IoTが注目を集め始めた当初、各社が注力したのはセ ンサからデータを集め蓄積し、見える化するIoTプラットフォー ムだった。GEのPredixをはじめ、シーメンスのMindsphre、 日立製作所のLumada、ファナックのFIELDシステムなど自 社で産業機器もやっている各社をはじめ、ITや通信系企業も センサとネットワーク、クラウド、見える化といった環境を揃え てIoTプラットフォームとして提供してきた。多くのIoTプラット フォームが生まれ、今も増え続けているが、年々差別化が難し フエニックス・コンタクト アドバンテック WISE-PaaS Marketplace PLCnext Store くなっている。 フィールド機器各社が強いIoTサービス  特に工場や製造現場向けのIoTは、PLCやHMIなど制御機 器、工作機械や加工機械、ロボット、さらには直動部品やベアリ ングなど機械要素部品といったフィールドコンポーネンツ、い わゆるハードウェアメーカーが自社でIoTプラットフォームを提 供し、顧客に提案しているケースが増えてきた。自社の営業拠 点や商社による販売網を活かして急拡大が目立つ。  例えば三菱電機の加工機械の遠隔監視や稼働監視サービ スのiQ-Remote4U。同社のe-F@ctoryの仕組みを加工機 FANUC FIELD System Store に組み込んでサービスとして提供しているもので、対象機種に LANケーブルを挿すだけでサービスを受けることができ、約2 Play Storeと同じで、開発会社が作ったアプリをアプリスト 年で1000台以上の採用されたという。 アに掲載し、ユーザーがそれをダウンロードして使う。シーメン  メーカーと顧客のつながりは深く、顧客はメーカーの姿勢や スのMindsphreStoreのほか、産業用PCのアドバンテックの 製品を熟知しているだけでなく、人的交流や口座も持ってい WISE-PaaS Store、配線接続機器のフエニックス・コンタクト る。IoTをはじめたい顧客にとって、自社を理解しているメー のPLCnextStoreなどがある。日本でもファナックのFIELD カーやそれに連なる商社は初めに相談を持ちかける存在であ System Storeがある。 り、彼らからIoTがはじまることが多い。IT企業にとってメーカー と同じ土俵、IoTプラットフォームやソリューションの提案で戦う IT企業のアプリ開発力に期待大 のは不利であり、そのため別の有効な切り口が求められる。  アプリストアでは、ユーザーがそのまま現場に導入して使える 完成品のアプリケーション以外にも、例えばデータ収集や接続 産業IoTプラットフォーマーによるアプリストアの開始 だけの機能ツールなどサービス開発者向けのアプリも掲載して  IoTは課題を解決する、ある業務を効率化するためのツール 販売できる。現状は、アプリストア提供企業が自社で作ったもの でしかなく、ここに来て、それぞれのシーンに応じた最適な機 を掲載しているが、将来的にはIT企業をはじめとした第3者が多 能を持ったアプリケーションが求められるようになっている。 くの産業IoT向けアプリを開発し、それがアプリストアで販売さ  IoTサービス企業が顧客の要望に応じて作り込むパターンも れて産業IoTが普及していくことが望まれている。 あるが、ここ1年で環境が整備され、今後の急拡大が見込まれ  特に企画力や開発力に優れ、産業IoT領域でビジネスを拡大 ているのが「アプリストア」だ。 したいIT企業にとっては自社の得意とする領域で勝負でき、こう  アプリストアは、スマートフォンでいうAppStoreやGoogle したアプリストアはチャンスとなる。 — 8 —
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インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.8 話 題 インダストリー4.0を実現する最先端工場 フエニックス・コンタクト社ドイツ本社工場  WEFが発表した第4次産業革命をリードする最先端工場「Lighthouses」に、産業用電子機器大手のフエニック ス・コンタクト社のドイツ本社工場も選ばれた。インダストリー4.0、スマートファクトリーのお手本となる工場と はどのようなものなのか。今年4月に訪問した際の様子をレポートする。 造、ねじ切りまでの全工程に必要な装置が揃っている。 M2~M6のねじを1日700万個まで作れる能力があり、こ の規模はヨーロッパでも有数のねじメーカーに匹敵すると いう。  ここ2年で最新の機械を導入。焼入れ装置と、3mmまで の特殊ネジを製造する機械、イタリア製の8mmまでのねじ 製造装置を導入し、新製品につなげている。  また、大量のねじ製造には大量の切り屑が付きもの。 切り屑はボックスに集められてリサイクルに回される。1 ボックスあたりでだいたい3000~4000ユーロ(39~52 万円)くらいになるという。 生産技術と現場オペレータの協力で早期立ち上げ実現 今回訪問した本社工場  続いて見学したのは、機工部門が入っている4番工場。 いわゆる生産技術部門で、新しい製造ラインの開発や試作 ねじ1本、パーツ1個、製造装置も内製にこだわる の場と、その技術の養成所を兼ねている。  フエニックス・コンタクト社は、1923年創業のドイツ  見学時には新しい装置はなかったが、それでも同社なら 産業用電子機器メーカー。コネクタや端子台など接続機器 ではの工夫があった。日本では納入設置後に操作研修が行 の世界トップメーカーで、近年はPLCやネットワーク機器 われることが多いが、同社では装置の完成が近くなったら などにも事業を広げ、総製品点数は6万点を超えている。 オペレータを招き、事前に操作研修を実施するとのこと。 2018年の売上高は23億8000万ユーロ(約3000億円) こうすることで早期立ち上げに役立つという。 で、毎年成長を続けている有力企業だ。グローバルで1万 7200人の従業員がおり、日本法人は1987年から活動し ている。  同社の製造部門の特長は、ほぼすべての部品と製造設備 を自社で作る自前主義。ねじ1本、樹脂パーツ1個から社内 で設計・製造し、その製造装置も自社の機工部門が作る。 その理由について、顧客の声やアイデアを自社製品にいち 早く反映できる上、サプライチェーンがシンプルになり、 状況に応じて柔軟な対応が可能になるとしている。 37の建屋に4500人が働く本社工場  本社工場は37の建屋からなり、約4500人が働いてい る。樹脂や金属材料の加工・成形工程にはじまり、組み立 ハノーバーメッセ2019に出品していた自動組立装置 て、パッケージング、出荷まで、すべてこの工場で行われ ている。 インダストリー4.0を実現したケーブル自動製造ライン  7番工場は100×120mの大きな建屋。ここではインダ 特殊ねじ製造用に最新機械を導入 ストリー4.0の機械を使ってケーブルを製造していた。  はじめに見学したのが、本社工場で最も古い建物となる  ケーブル自動製造ラインは、前回の見学時には4番工場 1番工場。1957年に建てられ、2年前に改修されて今も現 で開発していたものが実運用に入った様子。リール巻きさ 役。レール端子台の自動組立ラインがあり、1分で84個も れたケーブルから自動で末端加工を施してハーネス化する のレール端子台を組み立てている。現場オペレータは24時 ラインとなっている。 間3交代制で勤務している。  ケーブルは、柔軟性と長さによってぐにゃぐにゃと曲が  続いてねじ製造を行う2番工場。線材からネジ頭の製 り、加工の自動化がしにくいものの代名詞となっている。 — 9 —
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インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.8 それに対し同社では、線材の切断から皮むき、末端加工、 一部、ピッキング工程で人による作業があるが、それ以外 束ね加工までの流れの自動化に成功した。 はほぼ全自動化されている。高さ何十m、奥行きも大きな その流れは、 巨大な棚に20万個もの収納スペースがあるとのこと。その ①リール巻きされたケーブルを装置に引き込む 中をレールにのった取出機が高速に動きいてピッキングし ②治具に巻きつけ、一定の長さでカット。テープで束ねる ていく。最近、1秒間に6m移動できる取り出し機に入れ替 ③情報をマーキング  えて能力を上げたという。 ④片方の末端の皮を剥き、それぞれの線にばらけさせる 各種省エネ設備で45%もエネルギーコスト削減 ⑤それぞれの線ごとに末端の皮を剥く ⑥末端にフェルール端子を被せる  37のうち32の建屋の屋根には太陽光発電パネルを設 ⑦被膜とフェルールの境目を保護するための追加工をする 置。廃熱回収のコージェネ装置、地下65mの配管を通じ ⑧治具が外れ、完成品箱に移動 た冷却装置など省エネ装置も完備。これらによってエネル の8工程が一連のラインで行われていた。 ギーコストを45%節約しているそうだ。  さらに各工程の後には、1製品ずつカメラ撮影と信号線 をチェックする自動検査が行われ、そのデータは社内サー バーに蓄積されていく。これにより製品と情報が一緒に製 造工程を流れるCPS、デジタルツインを実現している。 サージ保護機器開発のための認定ラボ。 大電流テストも可能  続く37番工場はサージ保護機器のテストラボ。従来は 8~14時間つきっきりだったものが自動化によって効率化 されたという。テスト機関として他社にも開放しており、 異なるパルスのサージ電流とサージ電圧を発生できて太陽 光発電用部品などで利用は拡大中。最大100kAの大電流試 験も可能だ。 構内には新たに建設中の建屋も 実製造ラインで稼動している協働ロボット 最新機械の導入とCPS実現で第4次産業革命をリード  続いては2万㎡もあるという巨大な34番工場。ここでは  ねじの製造装置や最新型の射出成形機、実運用に入った 180台のプラスチック射出成型機で、プリント基板用コネ インダストリー4.0の製造ライン、人とロボットの協働作 クタのプラスチック部品を作っている。地下には250種 業、拡張中の自動倉庫など、昨年の見学の際にはなかった 類ものプラスチックペレットが保管されていて、各機械へ ものが数多くあった。特に製造装置、物流倉庫の増強は目 パイプラインによって随時材料が供給され、その使用量は をみはるものがあり、業績好調がうかがえた。 1ヶ月あたり150トン。月1億個以上の端子台部品を作って  また見学時にはあまりアピールしていなかったが、すべ いるとのこと。 ての工程で流れていく部品や製品に対してコードのマーキ  射出成形機では280℃まで加熱して大圧力で射出し、 ング、カメラ撮影による画像データが付与され、工場のシ 70℃まで一気に冷却して部品が作られる。品質安定のため ステムとつながって管理されているという。いわゆるイン には温度制御が重要で、すべての機械はフエニックス・コ ダストリー4.0で言われるサイバーフィジカルシステムや ンタクト社の製品とソフトで構成した温度制御システムが デジタルツインと言われるものを実現している。 備わっている。このように自社で実証実験しながらアプリ  さらに、企業の基幹システムと工場システムが連携し、 ケーションを作っているのだという。 顧客仕様に応じた作り分けも可能。その際の段取り替えも  34番工場の2階部分はスプリング端子台の組立工程。自 数分で行えるようになっており、多品種少量生産やマスカ 社製造の装置で自動化されていて、1分間で161個製造で スタマイズにも対応。これらの先進的な取り組みを目の当 きる。ここには昨年はなかった協働ロボットが設置され、 たりにすると、Lighthousesと言われるのも納得だ。 人とロボットの協働を実現していた。作業は、完成した製 品の箱詰め工程で、人が小箱を用意し、その中へコンベア から流れてくる製品を協働ロボットがパッパと入れてい く。小箱に必要数入ったら人が箱に入れる。この流れを人 と協働ロボットで作業分担しながらやっていた。 20万個の収納スペースがある自動倉庫。さらに拡張中  最後は物流センターの18番へ。毎日6000以上がパッ ケージ化され、130~150トンの製品が出荷されていくと いう。業績拡大にともなって倉庫が不足しており、現在拡 張中。  センター内は厳しいセキュリティゲートを通って入場。 ハノーバーメッセ2019の同社ブース — 10 —
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インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.8 話 題 ハードからソフト、システムまでカスタム最適化 IT・OT融合で、あらゆるデータを吸い上げる「OctoIoT」 パクテラ・テクノロジー・ジャパン株式会社  工場は百社百様。その形は各社によって異なり、自社の工場や製品にIoT、デジタルの仕組みを 導入する際、最も頭を悩ませるのがそうした独自性、特殊性とされる。そこで現在は、ITとOTを 理解し、低コストで自社に合ったものを提供してくれる「ちょうどいいIoT」に対応できる企業の存 在が求められている。パクテラ・テクノロジー・ジャパン(東京都江東区。以下、パクテラ)は、この 「ちょうどいいIoT」を提供できる1社で、企業のITシステムの構築から、デジタル機器やOA機器、 産業機器の開発・設計のアウトソーシングで培った技術と経験を元に、工場や製品のデジタル化 に必要とされるセンサやIoTプラットフォーム、MES(製造実行システム)の導入までを自社開発で 提供している。これらの技術をベースに、各社に最適化したIoTシステムのカスタムサービスを、可能な限り低コストで 提供している。当ビジネスをリードする、張 聰 (英語名:Wander) 常務執行役員 IIoT事業本部 本部長に話を聞いた。 日本製品の設計開発を20年以上も陰で支えてきた いるなかで、決まったプラットフォームに当てはめるのは最適 技術の黒子 化にはならない。IoTこそ個別のニーズに応じたカスタムが必 要だ」とし、各社に合わせたIoTの仕組みづくりの重要性を挙  パクテラは、企業のITシステムや開発設計を海外で請け負 げる。 う、いわゆるオフショア開発サービスとして1995年に中国で  2つ目は費用対効果とコスト。「工場にIoTシステムを導入 設立。当初は日本やアメリカ企業向けが中心であったが、現 すれば生産コストを下げることはできる。しかし直接的に売上 在では世界中に拠点を設けてグローバルに展開。技術者を中 を上げることにはつながらないので企業は積極的になりづら 心に3万名を超える従業員が従事し、製造業をはじめ、金融、 い。だからこそIoTはできるだけ安く低コストで導入されなけ IT、通信、流通サービス業などにわたって、世界的な大手企業 ればならず、ニッチで細かなところまで入り込む必要がある」 を顧客としてサービスを提供している。日本には2001年にオ という。 フィスを開設し、日本でのビジネスも20年近くの歴史がある。  3つ目はITとOTの連携。「よく言われることだが、ITとOT  特に日本の製造業メーカーに対しては、ITシステムの構築 の違いは大きい。自社の人材だけではIT技術を含めたIoTの のほか、家電製品やIT機器、産業機器、医療機器などの組み 仕組みの構築は難しい。一方、システムインテグレータのよう 込みソフトやソリューションソフトの設計と評価、中国をはじめ なIT企業が製造現場と協力して構築する例もあるが、IT側が 世界市場向けのローカライズ業務を長く担当。日本企業が作 製品や現場の技術と文化を理解できず、そのコミュニケーショ る製品の中身、ハードウェアとソフトウェアを知り尽くし、さら ンの構築だけで大きな手間と時間がかかり、コストも大きくな に製造現場も含めて日本の製造業のやり方を理解している。 る」とし、ITとOTには大きな壁があるとする。  Wander氏によると「組み込みソフトウェアの開発受託から  これまで同社が日本を含め世界の製造業を相手に事業をす スタートし、日本の家電やデジタル製品、複合機、SMT等の開 るなかで顧客から多く寄せられた声を元に開発したのがIoT 発・評価に加え、多言語化、モバイルアプリやWEBサービス サービス「OctoIoT」だ。 の構築まで行ってきた。また企業のITシステムも得意で、上流 から下流まですべてをカバーできる」とし、これらの技術と実 最適化で強力なデータ収集力を実現する 績が日本の製造業に対してIoTサービスを展開する上で強み 「OctoIoT」 となっている。  OctoIoTは、一言で言うと「IoTシステムのカスタムソ リューション」。データ収集から蓄積、分析、可視化ができる 日本のIoT導入に横たわる課題 IoTプラットフォーム「OctoIoT」を中心に、クラウド、アプリ  日本は工場のデジタル化やIoTへの関心が非常に高いが、 ケーションソフトウェア、センサやエッジコンピュータ、通信モ 一方で導入に二の足を踏んでいる企業が多い。特に中堅中小 ジュール、ワークステーションといったIoTシステムを構成す 製造業でその傾向が強く、製品生産のグローバル化・ボーダー るハードウェアにいたるまで、すべての領域でカスタム対応 レス化が進む中、IoTの普及スピードを上げていくことが課題 し、最適なシステムを構築して提供するソリューションだ。 となっている。  ソフトウェアはもちろん、ハードウェアもユーザーの利用環  Wander氏は製造業のIoTを巡る市場とその問題点を指摘 境に合わせて作り込み、あらゆる機器とシームレスにつながる する。 オープン性が最大の特長。前述のような、組み込みソフトウェ  1つ目は多様性とその対応。「大手をはじめ、多くの企業か アから企業の基幹システムまで取り組んできた実績を背景 らIoTプラットフォームやサービスが市場に出ているが、工場 に、製品の内部やさまざまな通信プロトコルを理解しているか とそこでやりたいことは1社ずつ異なる。ニーズが多様化して らこそできるサービスとなっている。 — 11 —
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インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.8  大企業の大規模システムや、IT企業が提供するIoTサービ ポート部隊を展開している。「日本工場で成功したIoTシステ スよりも、よりきめ細やかな対応が可能。同社では基本となる ムを海外工場でも導入したい」「日本から海外工場の様子を 技術が標準化されており、しかも同社オフショア拠点の開発 遠隔監視したい」「海外工場の状況に適したIoTを構築した チームを活用し一般的なIoTサービスよりも低コスト。費用対 い」といったニーズに対し、日本国内と同等かそれ以上の手 効果が高く、自社に最適な形にカスタム化されたサービスを 厚いサービスを現地で受けられる。国内サービスを中心とす 受けられるのがメリットだ。 る日本企業には出来ないサービスだ。  「OctoIoTは、お客様からの声を受ける形で、当社のオリ  「パクテラ日本法人は同社のAPACグループに属してお ジナル製品として開発した。Octoはタコ、オクトパスから取り、 り、日本とAPAC全域のマーケットをカバーし、多くの人員を 『大量のデータを吸い上げる』という意味を表している。多く 有している。世の中の工場の多くはこの地域に集中しており、 の企業が、できるだけ多くのデータを取りたいという意欲が強 日本企業も多く進出している。こうした現地工場に対しての く、それに対応したものとなっている」(Wander氏)。 サービス体制は私たちの強みだ」(Wander氏)。 最適なシステムを構築する、 真のIoTシステムインテグレータを目指す   今 後 に つ い て 、 Wander氏は「IoT は 新しい 概 念 では なく、1 0 数 年 以 上 も前 から技 術 的に は存在した。それが 今、情報処理技術や コスパの良さで産業用IoTのはじめの一歩に クラウド、ネットワー  OctoIoTの事業展開について、はじめは産業領域、特に製 クの進化によってこ 造業向けの「OctoIoT for Manufacturing」を中心に展開 れまで 以 上に実 現 する。異常監視や故障予測、稼動履歴の管理など工場と製造 できることが多くなり、注目を集めているという認識だ。当社 工程の見える化アプリケーションを提供し、企業のIoT導入の はハードウェアとソフトウェア、ITシステム、ネットワークなど 第一歩を支援する。 様々な技術要素への深い理解を土台にしながら、それを活か  Wander氏は「IoTなどソフトウェアやシステムの投資は、 せる分野としてIoT、特に産業領域に力を入れていく。 生産設備のような投資対効果の分かりやすさがなく、大きな  工場は多種多様で、課題も異なる。それに合わせてIoTも 投資は敬遠されがち。特定の一工程など、現場レベルの小さ 各社に合わせた形で導入する必要がある。その意味では、当 な投資から始めるのが正解。当社であれば数万円や数十万円 社はIoTのプラットフォーマーではなく、最適なシステムを提 程度で提供が可能だ」という。 供し、お客様に貢献できる『IoTシステムインテグレータ』を目 指していく」と話している。 世界の工場・中国・ASEAN地域で万全のサポート体制  OctoIoTのメリットは、コストパフォーマンスの良さにとど 【問い合わせ先】 まらない。中堅中小企業でも多くの企業が中国やASEANに パクテラ・テクノロジー・ジャパン 工場を持っているが、同社はそれらの地域にも多くの開発・サ info@pactera.com — 12 —
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インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.8 インタビュー プログラマブル表示器「Pro-face」生誕30周年 HMIの今とこれから シュナイダーエレクトリック  今でこそ、どの製造装置にも当たり前のように取り付けられて いるプログラマブル表示器だが30年前には影も形もなかった。プ ログラマブル表示器は平成生まれのデバイスで、実は日本で生ま れ、世界に広がっていったことはあまり知られていない。1989年 にデジタル(現:シュナイダーエレクトリック)が世界で初めてプ ログラマブル表示器(HMI)を発売して、今年でちょうど30年。  プログラマブル表示器の過去と未来について、シュナイダーエ レクトリック Industry HMI LoB バイスプレジデント 石井 友亜 氏に話を聞いた。 1988年に世界で初めてのHMI「GPI」シリーズ開発 な形で進み、HMIが主流になり、スイッチは使用頻度の高 いものと安全スイッチが配置されるようになっていったの ―プログラマブル表示器生誕30周年おめでとうござい です。 ます。  それから95年には世界で初めて高速RISC CPUを採  ありがとうございます。デジタルが世界で初めてHMI 用した高速・高機能HMIを開発し、使いやすさを高めまし 「GPシリーズ」を開発したのが1988年で、翌89年から た。2000年には業界で初めてEthernetを標準搭載し、 正式出荷を開始しました。2019年はHMIという新しい製 PLCやフィールド機器をつなげた中心、いわゆるハブと 品が生まれてちょうど30年目になります。 しての機能を持たせてIoTのようなことを実現していまし  初年度の89年の344台にはじまり、7年後の96年に10 た。14年にはエッジ機能を備えた機種もラインナップして 万台を突破。そこからHMIの急成長がはじまり、2004年 います。 に100万台、2009年に200万台、そして今年になって累  各時代における生産現場のニーズを汲み取り、それを解 計出荷台数500万台を突破します。 決できるデバイスとしてHMIは便利で、それが現場の技術 者、設計者から高く評価されてきたのだと思います。 押しボタンスイッチの置き換えから始まったHMI ―HMIはどのようにして始まったのでしょうか?また、 ここまで受け入れられた理由は何だったのでしょうか? メーカー問わず、どんなフィールド機器ともつながるHMI  もともとプログラマブル表示器は、押しボタンスイッチ の置き換えから始まりました。1980年代に工作機械や各 ―御社をはじめ、HMI市場では各社がしのぎを削ってい 種製造装置がコンピュータ制御になって高度化すると操作 ます。御社の強み、他社との違いはどのあたりでしょうか? パネル上には所狭しとスイッチが並ぶようになりました。  Pro-faceは、元はデジタルのHMIブランドで、タッチパ しかしスイッチの数が増えることによって操作性が悪くな ネル表示器、産業用コンピュータ、表示器付きコントロー り、メーカー側でも設計が難しくなっていたのです。 そこで開発されたのが、スイッチランプを表示器に集約し たHMIです。画面をソフトウェアでデザインしてボタン機 能を配置し、さらにON/OFFを表示して装置の状態を見え る化しました。  設計の自由度が増して、装置もコンパクト化できるよう になり、設計者から好評でした。ユーザーからもデザイン 性や、タッチパネルによる操作性、自社用にカスタムされ た操作パネルとして好意的に受け止められました。 車のカーナビもはじめは多くの操作ボタンがありました が、進化するに従ってボタンが減りタッチパネルになって 便利さが増していきました。機械の操作パネルも似たよう — 13 —
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インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.8 ラ、データ収集機器を開発・製造してきました。02年に シャリストとして時代の変化に対応して生き続けることに シュナイダーエレクトリックと資本提携、17年に合併した 変わりはありません。  後も引き続きHMIのトップブランドとして活動しています。 ―最近はIT業界から産業向けのPCやパネルコンピュー  ライバル企業の多くはPLCを中心とした総合電機メー タが出てきています。 カーで、数あるソリューションのひとつにHMIがあるという  競合としては、IT業界から入ってくるHMIの方が脅威で スタンスです。当社は「HMI Centric」でHMIを中心に、 す。価格も安く、マーケティングも上手なので。 HMIを活かす戦略を展開しているのが大きな違いです。  しかし彼らの作るHMIと、当社を含めた産業向けのHMI  例えばHMIにPLCの機能を載せて制御ができるようにし ではスペックがまったく異なります。工場環境は彼らが たり、メーカーの種類問わずに800種類以上のプロトコル 思っている以上に過酷で劣悪な動作環境であり、屋外機器 をサポートして各社のフィールド機器と接続できるようにす に関してもそうです。産業用に使うのであれば、それに対 るなど、他社とは正反対のオープン戦略を取っています。誰 応しておかなければいけません。 とも、どんな製品ともつなぐことができ、そこでコントロー  また高いレベルでのソフトウェアの動作信頼性や安定 ルし、データを吸い上げられるのが最大の強みです。 性、スムーズな処理が求められるのも産業向けの特徴で  日本の機械・装置メーカーには、さまざまなメーカーの す。ソフトウェアがうまく動かないということは、産業向 ベストな機器を組み合わせ、自社にとって最高のものを作 けでは許されません。当社はそれをセーフブートやBIOS りたいという人が多くいます。Pro-faceはそんな希望を叶 を調整することで安定稼働を実現しています。 えることができます。 ―2019年の新製品は?  ラインナップ強化で、マイナス30℃から+70℃までの 温度範囲に対応する耐環境性の高いモデルを準備していま す。温湿度やガスに強く、屋外用途やプラント、水処理な どに適し、駐車場や洗車機の制御端末、特殊車両や建機、 農機などへの組込利用を想定しています。  普及価格帯では、新たなモデルを追加。HTML5対応の シンクライアントタイプも発売する予定です。最近はWEB サーバー内蔵の産業機器が増えており、表示だけに特化し た機種が欲しいという声に答えます。  パネルコンピュータでは、過去数年にわたり、世代交代 を進めてきました。12インチモデルとお手ごろ価格のIPC ボックスを発売します。生産ラインを見える化するレベル のライトSCADAにちょうど良い製品です。  HMIの活躍の場は生産現場に留まらず、広い範囲に広  いずれもグローバルで発売するもので、国内への展開時 がっています。当社は世界で初めてHMIを世に送り出した 期は決定したいお知らせします。 HMIスペシャリストとして、HMI Centricで生産現場の 発展に貢献していきたいと考えています。 HMIの未来像 IoT時代に不可欠なデバイス ―今後のHMIはどうなっていくのでしょうか?  HMIは、押しボタンスイッチなどと同じフィールドのコ ネクテッドデバイスであり、ITとOTをつなぐエッジコン トロール機器でもあります。またデータ収集や表示、分析 まで行うアプリ・アナリティクス層でも使われる機器であ り、フィールド、エッジ、ITまですべての領域に関わる唯 一の機器です。さまざまな側面を持ち、IoT時代に不可欠 なデバイスとして存在感を増していくでしょう。  しかし、製品の形は今とは変わっていくかもしれませ ん。例えば産業用コンピュータでサーバーレベルの処理能 力を持つものが出てくれば、HMIもビジュアルに特化した 機能だけでよくなります。スマートウォッチやスマートグ ラスのようなウェアラブル端末が新しいHMIになるかもし れません。  しかしどんなに変わってもPro-faceブランドはHMIスペ — 14 —
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インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.8 インタビュー インフィニオン、日本企業との協業、共創拠点オープン モーターの最適制御、新規ビジネス開発を強化 インフィニオンテクノロジーズジャパン株式会社  インフィニオン テクノロジーズは、車載向けで世界2位、パワー半導体で世界1位、セキュリティIC分野で世界 トップシェアを持つドイツの半導体大手メーカー。2018年度の売上高は75億9900万ユーロ(約9544億円)とな り、電気自動車やエネルギー、セキュリティといった近年のデジタル化に関わる分野に強く、右肩上がりの成長を 続けている。  日本では1980年から活動し、年々10% 以上の成長率で事業を拡大。現在、市場 に即した技術サポートに力を入れ、18年 10月に「東京テクノロジーセンター」を 開設。さらに19年4月にモーター制御に 特化した「システムセンター」をオープン した。その狙いについて、インフィニオン テクノロジーズ IPC事業本部 グループ長 フランク・グローベ氏と、インフィニオン テクノロジーズ ジャパン IPC事業本部 事 業本部長 針田靖久氏に話を聞いた。 IPC事業本部グローべ氏(左)と針田氏 日本は重要市場。 ポートと開発、ユーザー向けのカスタマイズを行う。具体 イノベーションに対する要望の解決策 的には、日本のユーザー向けの相談窓口となり、プリント 基板の設計からソフトウェア開発と検証、レファレンスデ  IPC(インダストリアルパワーコントロール)事業本部 ザインの開発、製品のカスタマイズまで幅広く対応する。 は、発電から送電、電力使用まで、エネルギーに関する また日本市場の要望やニーズを拾い上げ、グローバルでの 広い範囲をカバーし、18年の事業部売上は13億2300万 製品開発にフィードバックする役目も担う。 ユーロ(約1661億円)。前年比19%超の成長率となっ  システムセンターの名前の通り、半導体単体だけでな た。 く、モーターを使ったアプリケーション、システムに関す  日本では555(ゴーゴーゴー)戦略として、5つの製 る課題を受け付けて、その解決を進めていく。同社には半 品、5つの業種グループ、5つのアプリケーションにフォー 導体技術者に加え、家電や電子機器、産業機器メーカー等 カスを絞り、19年度は20%成長を目指している。その実 で長年モーターを扱ってきた専門家が多数在籍し、多面的 現のための技術開発拠点となるのがシステムセンターだ。 にアドバイスやサポートをしてくれるのが特長だ。  システムセンターの開設についてグローべ氏は「日本は  「モーターの開発者やソフトウェアの専門家、ユーザー 当社にとって重要な市場で、製品のイノベーションに対す として使っていた技術者、20年以上の経験を持つベテラ るニーズや要求がとても高い。これまではその相談に乗れ ンなど、多様な人が組織にいることで手厚い支援を可能に る専門家が世界各地の拠点に散らばっていて対応できない している。モーター制御でイノベーションを起こすために ことがあった。それを解消するためにも日本にはシステム は、ハードウェアであるモーターそのものと、半導体、ソ センターをオープンしたかった。今回それが実現できて嬉 フトウェアなど、モーターシステムすべてを行って初めて しい。実際にお客様の成長を支援するには『お客様のシス 実現できる。全体最適が大事であり、そのための人員が テムとアプリケーションへの理解』『技術開発機能の集 揃っている」(グローべ氏) 積』『製品開発と市場投入へのスピードアップ』が必要 だ。システムセンターではこの3つでお客様を支援し、時 モーター制御の最適化プラットフォーム iMOTION には一緒になって開発を進めていきたい」としている。  モーターとシステムの開発者、モーターを使うユーザー 半導体、モーターの専門家達が多面的にサポート に対し、モーターシステムの付加価値向上と開発の生産 性向上に役立つものとして同社が提案しているのが、  システムセンターでは主にモーター制御に関する技術サ 制御モーターの設計最適化・効率化プラットフォーム — 15 —
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インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.8 「iMOTION」だ。 パートナーシップ強化で日本ユーザーの成長に寄与  モーターコントローラからゲートドライバ、インバータ までの機能を1つの半導体パッケージに収め、半導体チップ  日本にはモーターメーカーをはじめ、家電や業務用機 単体から制御ソフトウェア、評価キット、基板を含めたモ 器、産業機器などモーターを使う企業が集積している。す ジュールまで提供している。半導体チップだけ購入してソ でに家電製品ではiMOTIONが広く採用されており、これ フトウェアと基板は内製する、すべて揃ったモジュールを からは他の分野の新しいユーザーとの関係構築をしたいと 使い、そこで浮いた開発工数を製品開発に注ぎたいなど、 いう。特に期待しているのがロボティクス分野。ロボット ユーザーはそれぞれの用途に応じて選ぶことができる。 の駆動源はモーターであり、日本は産業用ロボットでは世  iMOTIONは、高性能インバーターと同等のモーター制 界ナンバーワン。サービスロボットにも多くの企業が取り 御を半導体とソフトウェアによって実現している。ユー 組み、ロボティクス関連企業も裾野が広い。その小型化や ザーは高精度なモーター制御をすぐに実行できる。また 開発効率化に対してサポートをしていきたいという。 ハードウェアとしてのインバーターが不要なので、機器の  グローべ氏は「システムセンターは日本市場とお客様に 小型化や省配線化に効果的だ。さらに、基板設計やソフト 対するコミットメント。お客様の成長に寄与するパート ウェア開発、部品調達、製造工数などあらゆる工程に好影 ナーシップへの大きな第一歩になる。日本でもモーターシ 響が期待できる。 ステムの専門家、開発部門とのコミュニケーション窓口が  グローべ氏は「iMOTIONはこれまでも多くのお客様に 一つ加わったと考えて欲しい」とし、針田氏も「システム 愛されている。お客様はすぐに高精度のモーター制御を使 センターはお客様とのオープンな接点。お客様に来ていた い始められ、機器の小型化やコスト、開発期間の短縮を可 だいて相談してもらうことも、案件に対して解決に向けて 能にする。例えばコストに関しては、平均で30%下げるこ 共同で進めていくという選択肢もできる。半導体だけでな とができる」と強調する。 く、モーターシステムに対して深い理解のある専門家もい る。ぜひお気軽に声をかけて欲しい」と話している。 インフィニオン、18年度業績振り返りと日本市場への期待  インフィニオンテクノロジーズジャパンは、日本市場  また事業としてIPC事業の伸びが目覚ましいという。 での戦略とパワー半導体について、日本はグローバル売 IPC事業領域は、電力に関して発電から送電、消費まで 上高における7%を占める重要市場で、18年は他の地域 一連の領域をカバー。それを支えるパワー半導体につい よりも高い成長率15%を達成して世界を牽引している て、同社はIGBTとドライバーICsで世界トップシェア。 とした。 300mm薄型ウエハの生産と、新しい材料となるSiCと GaNの展開等で引き続き市場を牽引する。  18年度のグループ業績は、売上高は7599億ユーロで  また、世界で3つめのシステムセンターとして東京テ 8%増。純利益は1075億ユーロ(36%増)となった。 クニカルセンターを開設。自動車産業や産業機械向など 19年度は最大で9%増(8282億ユーロ)と予測してい 大きな顧客がいる日本市場に対し、iMOTIONとソフト る。長期成長のための設備投資も積極的。パワー半導体 ウェアのカスタム開発機能を持たせ、積極的に展開して 工場として16億ユーロを投じてフィラッハに300mm いく。 ウエハーを用いた新工場を建設中。21年にクリーン ルームが完成して稼動を開始する予定。また2018年に SiC専門企業のSiltectraを買収している。  日本市場はグローバルの7%を占める500億円超の売 上がある注力地域として、「ビジネスの成長」「日本事 業からの学び」「エコシステム」の3つの柱で拡大を目 指す。特に日本のエコシステムは、自動車やロボティク ス、モータ、バッテリなど豊富にマーケットがあり、半 導体分野でもウエハ、材料から製造装置まで揃い、イノ ベーティブなアプリケーションとしてもヘルスケアや フィンテック、AI、IoTなど有力なスタートアップが生 まれているとし、同社もこのエコシステムのなかで一緒 に成長したいとしている。 — 16 —
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インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.8 話 題 コグネックス、製造現場における画像検査の今と将来 ディープラーニングベースの自動検査ソリューション  ロボットをはじめ、いま工場内のあらゆる工程で自動化が進んでいる。このうち検査工程は比較的早くから自動化が 進んだが、どうしても人による目視検査でなければならないケースも多く、長い間、課題として残ってきた。しかしここに 来てAI技術の進化により、目視検査から自動検査への道が再び開きつつある。マシンビジョンの世界トップメーカー・コ グネックスに、画像検査の現状と将来について聞いた。 世界トップのマシンビジョン専業メーカー リズムを作れるようになり、これまで難しかった目視検査も自 動化することができるようになった。最近、AIを使った画像検  コグネックスは、マシンビジョンで世界トップシェアの画像処 査がブームとなっており、画像検査の自動化の第2ステージは 理の専業メーカー。なかでも超高精度・高速性が求められる半 始まっている。 導体市場では50%超の圧倒的なシェアを誇る。 GIGIと言 われる画像処理の用途、Guide(位置決め)、Inspection(検 ディープラーニング自動検査「VisionPro ViDi」 査)、Gage(測定)、ID(自動認識)に対応したポートフォリオ  コグネックスもこれまで培った画像検査技術と、自社開発の を取り揃え、ハイエンドから汎用レベルのローエンドまで、幅広 ディープラーニングを組み合わせた専用の自動検査ソリュー く製品・サービスを提供している。 ション「VisionPro ViDi」を開発。マシンビジョンのトップメー  2018年度の売上高は8億600万ドル(約887億円)。過去 カーが開発した、工業製品に特化した専用ソリューションとし 10年間で年平均15%以上の成長率で事業を拡大。世界的な て評価が高い。 自動化需要の高まりを受け、さらに勢いを増している。  通常、ディープラーニングでアルゴリズムを作る際、事前に 想像以上に複雑で難しい画像検査の開発 数万数十万もの画像を用意して学習させなければならない。しかもその処理にはサーバークラスのパワーが必要だ。しかし同  画像検査は良品画像と実物の画像を見比べて、傷や異物の 製品の場合、現場で使うことを想定して作られており、ノート 有無などを判断して良否判定を行うが、それを自動化システム PCクラスの能力のコンピュータに、100から1000枚程度を に落とし込むのはそんなに単純で簡単ではない。 学習させるだけで良いという。  例えばワークの傷の検査装置の制作。傷には大小、形ともに また、精度を高めるには、機械が見逃した不良画像と不良箇所 さまざまで、すべて異なる。画像処理技術者はすべての傷のパ を人がコンピュータに教え込むことで可能になる。人が「ディー ターンを洗い出し、それぞれに照明やレンズを調整して検査に プラーニングの教育係」となり、人の判断とそのノウハウを入 適した画像を作り、それを元に自動検査のアルゴリズムを作っ れることでより賢くなっていく。 ていく。傷のパターンは星の数ほどあり、気の遠くなるような 「すでに自動化がうまく言っている検査工程はそのままで、こ 作業を繰り返してようやくアルゴリズムが完成する。簡単なも れまで人の目視でないとできなかった工程にこそディープラー のでも数ヶ月以上、アルゴリズムの制作に1年以上かかるのも ニングを試すべき。ViDiは画像処理の専門家がいらず、普段 ざらだという。 から検査工程で目視検査をしている人でも使える簡単なツー  そのため、いま自動化できているアプリケーションは単純な ル。これを使ってもっと便利にし、生産性向上に貢献したい」と ものが多く、複雑で難しいものは後回しになっている。アルゴリ している。 ズムを作るには手間とコストがかかりすぎ、人による目視検査 の方がコストを抑えられ、正確で早く、柔軟に対応できるのだ という。  「検査はすべてオーダーメイドが基本。何を検査するかに よって方法は異なる。検査条件が変わればすべてイチから作 り直し。作るのも更新するのも大変で、専門知識が必要とされ る。現在、自動化できていないものは、自動化するよりも人を 雇って目視検査した方が効率的だというものばかり」(同社)。  しかし近年、人手不足によって検査工程の人員を確保する のが難しくなっており、その代替手段として関心が高まってい るのがディープラーニング技術を使った検査工程の自動化だ。 AIで目視検査の自動化の第2ステージへ  それまで画像処理の専門家がアルゴリズムを作っていたの に対し、ディープラーニングの場合は、良品と不良品のサンプ ル画像をAIに読み込ませるだけでAIがアルゴリズムを自動的 に作ってくれる。これによって専門家でなくても正確なアルゴ — 17 —