1/1ページ
ダウンロード(2.7Mb)
オムロン、IPC標準規格 採用事例インタビュー
30年以上の実績を持つはんだ接合検査装置が採用するIPCの品質基準
このカタログについて
ドキュメント名 | 2018年6月6日発行 オートメーション新聞 |
---|---|
ドキュメント種別 | その他 |
ファイルサイズ | 2.7Mb |
登録カテゴリ | |
取り扱い企業 | アペルザ (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
この企業の関連カタログ
このカタログの内容
Page1
(9) 2018年(平成30年)6月6日
IPC標準規格 採用事例インタビュー
30年以上の実績を持つはんだ接合検査装置が採用するIPCの品質基準
オムロン株式会社 検査システム事業部 事業推進部 経営基幹職 杉山 俊幸氏 検査システム事業部 開発部 ロジック開発リーダ 藤井 心平氏
オムロン株式会社は、センシング&コントロール技術を核に、はん
だ接合検査装置分野で30年以上の技術の蓄積と実績を持ち、自動車や
電子機器をはじめ、日本国内および世界で高いシェアを有していま 8 表面実装組立品
す。国内検査装置メーカーでは先駆けて、装置の開発、要件定義のベ 8.3.5.3 フラットガルウィングリード-エンドの最小接続幅(C)
ースとしてエレクトロニクスにおける業界品質標準であるIPCを採用
し、もの作りにおける品質経営を支えてきました。最新の検査装置に
はIPCの品質基準を組み込んだプログラムが走り、世界の業界標準に 目標-クラス1,2,3・エンドの接続幅がリード幅以上である。
則した検査環境を提供しています。
はんだ接合検査装置へのIPC標準の採用と効果について、検査シス
テム事業部事業推進部経営基幹職の杉山俊幸氏と検査システム事業部 図8-88
開発部ロジック開発リーダの藤井心平氏に話を聞きました。
許容可能-クラス1,2
―御社のはんだ接合検査装置、SJIについて教えてください。 ・エンドの最小接続幅(C)がリード幅
SJIはSolder Joint―Inspectionの略で、はんだ接合検査のことを指 (W)の50%である。
し、当社は30年以上前から自動化に取り組んでいます。自動車の車載 杉山氏(右)と藤井氏
部品やデジタル家電、産業機器など高
品質系から高生産性のものまで幅広く わせ、インライン非破壊全数フル3D―SJIを実現できました。これ
採用され、多品種少量生産から少品種 は、自社で車載部品をはじめ、さまざまなエレクトロニクス製品を設
大量生産まで、日本はもちろん、欧米、 図8-89 計・製造し、生産ラインを持っているからこそできたと思います。
アジア各国など実装ラインがある世界
中の工場で稼働しています。 IPC―A―610Gより抜粋 ―IPCを導入した効果はどう感じていますか?
特に近年はその重要性が高まってお 品質基準にIPCを採用している企業、特に自動車向けで外資系顧客
り、例えば自動車は、ECUをはじ の仕事をしている企業には提案をしやすくなりました。またIPCを意
め、車載で使われる電子基板と電子部 格を導入されている顧客などか 識しているお客さまとはコミュニケーションがスムーズになりまし
品が増加しています。10年以上もの らもIPC準拠の要求があったこ た。いままで検査装置でやってきたSJIをIPCで客観的なデータとし
間、不具合なく動作するには、製品の とも大きいです。 て示せるようになり、品質改善のためのコミュニケーションが円滑化
基板外観検査装置(3D 品質保証が重要で、そのための基板と IPCとの出会いはSJIを発売 するなどのよい効果が表れています。
―SJI)VT―S730 はんだ接合部の品質保証がますます大 してから数年後の1990年代前 また従来は、SJIを正しく実施するためには、国や業界、各企業の
事になっています。それに対し、当社 半。海外の顧客とはんだ付の品 品質基準を参考にしながら、それを画像処理のパラメータ設定に置き
ははんだ接合状態のセンシングがしっかりとできるように、検査原理 質許容基準について議論した時 換えるという人の勘やコツ、経験に依存するところが多く、画像処理
とソフトウエアの改良と革新を重ねて作り込んできました。 に話が出たのがはじめてです。 に詳しい技術者やメーカー技術者の手助けが必要でした。それをIPC
業界標準として海外の多くの企 という国際標準をベースにすることで画像処理設定も標準化できまし
―SJIにIPCを取り入れているとうかがいました。どのように 業が品質基準として採用してい た。品質許容基準における不良項目の表現についても、自社独自の表
IPCを使っているのですか? ることを知ってからは、IPCを 現、検査装置メーカー方言だったものを、IPCの表現を採用しました。
プリント基板への電子部品の実装は、ランドと呼ばれる電気接続を 参考にしてSJIの開発を行うよ これまでは不良流出防止の技術者である検査専任者と、不良発生防
する部分に電子部品を載せ、はんだで接合して固定・通電させる形で うになりました。 止の専門家である実装技術者が品質問題を共有しにくい状態が続いて
行われます。オムロンのSJIの要件定義には、IPCの品質基準を採用 2000年代後半にはIPCに準拠 いましたが、そこも解決することができました。
しており、検査装置を通じてユーザーにIPCにのっとった検査環境を した3次元のSJIが完成し、最 高速CT型X線自動検査装置 人と設備、設備と設備、人と人で理解しあえる共通の物差しはとて
提供しています。 新機種にも引き継がれていま VT―X750 も重要で、品質改善の自律的・継続的活動や、組織の意思決定スピー
はんだの接合状態をセンシングする時に重要なのは、①ランドの位 す。 ドを加速させます。これにより品質経営の課題である、不良発生にと
置、②部品電極の姿勢、③はんだ形状の3つです(図1)。 もなう品質コスト、無駄と投資の最小化が可能になります。IPCを共
IPCをはじめ、IECやJISなどの各基準、各企業が定めている社内基 ―IPCを実装する上で苦労した点を教えてください。 通の物差しとしたのは良かったと思います。
準やはんだ付品質の許容基準も、部品電極の姿勢はランドの位置に対 1987年に最初に製品化したSJIは、カラーハイライト技術を使って
して定義され、ぬれ高さなどはんだの接合性はランドと部品電極に対 はんだの角度情報を色で識別し、形状を推定して画像化する形で検査
してのはんだ形状を考慮して記されています。この考え方は世界のど を行っていました。当時、そこにIPCを取り入れるには、多くの技術
こでも基本的に同じです。 的な課題を解決しなければなりませんでした。
実際の検査工程では、目視検査員がこの3点を見て検査・判断して 例えばIPCに記されている表現、基準に準拠した検査を実施するに
います。それは自動検査装置も一緒です。人の目で見るか、光学系を は、はんだ形状を3次元化して判定できなければなりません。しかし
使って見るかの違いだけで、検査基準は基本的に変わりません。 当時のカラーハイライト技術では、①はんだの向き、法線の特定がで
きない、②角度情報を高さに換算して積分する際に誤差が累積し、最
終的な角度に誤差が出てしまうという2つの課題があり、鏡面で自由
曲面のはんだの形状を定量的に捉えることはできませんでした。
そのため、はんだの向き(法線)の特定に関しては、はんだ形状の
シミュレータを作成し、さまざまな形状に対してカラーハイライト画
像ではどう映るかをひたすらに解析しました。これを逆にたどり、カ
ラーハイライト画像の映り方とはんだ形状の知見を集めてプログラム
化することで、はんだの形状を3Dで復元する技術を開発しました。
また、誤差の累積による最終的に角度の誤差が発生する問題は、位
相シフトを使うことで解決しました。位相シフトで高さが計測できる
箇所は、部分的にオフセットすることで最終的な誤差を最小化できる
図1.Solder―Joint―Inspectionを構成する要素 ようになりました。
ただ、位相単体での3D化は、鏡面性が高い場合や電極の近くでノ
イズが多い場合は難しく、信頼できる高さがどこかを位相情報から抽
―なぜ数ある規格のなかからIPCを採用したのでしょうか? 出・特定するのにはとても苦労しました。
IPCは実際にエレクトロニクスの製造や実装に携わる世界のユーザ これらの技術を融合させた外観3D検査技術「Hybrid―3D検査
ーが集まった業界団体であり、IECやJISの実装に関する標準は、も 技術」の開発にめどがたち、2000年代後半にIPC採用のはんだ接合検 オムロン社憲の前で杉山氏(左)と藤井氏
とをたどればIPCが規格・提案したものが多い印象です。IPCは実装 査装置として販売を開始することができました。
現場の実態に適した標準規格であり、世界で使われているものと理解 お問い合わせ
しています。IPCの表現や条件を使うことで、IECやJISなど他の規格 ―ほかに苦労した点は? (株)ジャパンユニックス
書の条件とも近くなるため、IPCを要件定義のベースとしています。 電子部品の小型化と高密度実装によって、BGAをはじめとする 03―3588―0551 HP:www.japanunix.com
具体的には、電子組立品の品質判定基準である、IPC―A―610は BTC(下面電極部品)が多くなり、外観検査では見えない箇所がで IPCに関する情報、無料版 www.japanunix.com/ipc/
適用範囲が広く、企業独自の品質基準とも比較しやすいという利点が きてきました。そこには「3D―CT」の高速検査技術を開発し、CT IPCのトレーニングおよび認証 https://training.ipcstore.jp/
ありました。海外の車載メーカーや国内でも自動車の品質セクター規 検査ができる開発も進みました。いまではこれらの検査設備を組み合 IPCの公式オンラインストア www.ipcstore.jp