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いま話題のIO-Linkとエッジコンピューティング
ものづくりを応援する業界紙・オートメーション新聞が展開する別冊「オートメーション&産業ネットワークナビ 2017」【完全版】は、IoT時代の産業ネットワーク情報をまとめたムック本です。
IO-Link、EtherCAT、FL-netなどの最新情報をはじめ、「スマート工場の実現」を遂げた事例や、工場内ネットワーク構築のポイント、インダストリー4.0への取り組みなど、注目企業の事例や最新動向が満載です。
<掲載内容>(一部抜粋)
○IO-Link最新動向(シーメンス)
○現場の人手不足解消のため遠隔計測制御化できる無線I/Oシステム(フエニックス・コンタクト)
○いま産業分野で広がるエッジ処理とその最新動向(日本ヒューレット・パッカード)
など
※ダウンロードされたお客様の情報は弊社プライバシーポリシーに則り協賛企業へ共有させていただきます。あらかじめご了承下さい。
【協賛企業】B&R Industrial Automation株式会社/フエニックス・コンタクト株式会社/ロックウェル オートメーション ジャパン株式会社/ベッコフオートメーション株式会社/アンフェノールジャパン株式会社/株式会社ピーアンドエフ/ワゴ ジャパン株式会社/日本マイクロソフト株式会社/ハーティング株式会社/ヒルシャー・ジャパン株式会社
このカタログについて
ドキュメント名 | 最新情報満載!「オートメーション&産業ネットワークナビ 2017」【完全版】 |
---|---|
ドキュメント種別 | ホワイトペーパー |
ファイルサイズ | 7.6Mb |
登録カテゴリ | |
取り扱い企業 | アペルザ (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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オートメーション& Automation & Industr ial Network
産業ネットワークナビ 2017
IoT時代の
産業ネットワークのゆくえ
ーいま話題のIO-Linkとエッジコンピューティングー
主要ネットワークの最新トレンド
IO-Link、OPC-UA、EtherCAT、FL-net、
ODVA、ORiN、CC-Link、
PROFIBUS、MECHATROLINK、FDTなど
シーメンス、ロックウェル、ベッコフの取り組み
フエニックス・コンタクトCEOインタビュー
パンドウイット、デジタル化時代の工場内ネットワーク構築
日本HPのエッジコンピューティング戦略
株式会社アペルザ オートメーション新聞社
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Perfection in Automation.
オートメーションの最先端へ
B&R Industrial Automation株式会社
〒220-0011 神奈川県横浜市西区高島1-1-2横浜三井ビル23F
TEL: 045-263-8460 / FAX: 045-263-8461
EMAIL: office.jp@br-automation.com
WEBSITE: https://www.br-automation.com/ja
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INDEX
オートメーション&産業ネットワークナビ Vol.1
I N D E X
IO-Link -現場センサ、アクチュエータのためのデジタル通信技術-
IO-Link コミュニティ ジャパン …………… 1 〜 2
超高速産業用イーサネット EtherCATについて
EtherCAT Technology Gro…up……………… 3 〜 4
マルチベンダ環境を実現する産業用オープンネットワークFL−net
一般社団法人 日本電機工業会 ネットワーク推進特別委員会 …………… 5 〜 6
センサ&アクチュエータネットレベルからIIoTまで、共通通信プロトコル「CIPネットワーク」
ODVA TAG Japan ………………7 〜 8
「つなげる」から「伝える」「安全に」「活用する」へ
OPC UA (Unified Architecture) ………… 9 〜 10
「産業オートメーション向けオープンミドルウェアORiN」
ORiN 協議会 ………… 11 〜 12
CC-Link IEの最新動向、CC-Link協会の 最新アクティビティ紹介
CC-Link 協会 ………… 13 〜 14
PROFIBUS・PROFINETの魅力
NPO法人 日本プロフィバス協会 ………… 15 〜 16
マシンの”鼓動” が聞こえる
MECHATROLINK協会 ………… 17 〜 18
機器設定の一元化と一括化が可能となるFDT技術
FDT グループ日本支部 ………………… 19
オートメーションネットワーク対応 netIOT Edgeエッジゲートウェイ
ヒルシャー・ジャパン株式会社 ………………… 20
ベッコフが提供するIoTソリューション
ベッコフオートメーション株式会社 ………… 21 〜 22
IO-Link最新動向
シーメンス株式会社 ………… 23 〜 24
デジタル化時代の工場内ネットワーク構築のポイント
パンドウイットコーポレーション日本支社 ………… 25 〜 26
世界50カ国に展開 右肩上がりを続けるフエニックス・コンタクトの強み
フエニックス・コンタクト ………… 27 〜 28
いま産業分野で広がるエッジ処理とその最新動向
アドバンテック株式会社 ………… 29 〜 30
現場の人手不足解消のため簡単に遠隔計測制御化 できる無線I/Oシステム「Radioline」
フエニックス・コンタクト株式会社 ………………… 31
ドイツセンサメーカーのインダストリー4.0への取り組み
株式会社ピーアンドエフ ………………… 32
生産工程にIO-Linkセンサを導入するタイミングについての考察
ロックウェル オートメーション ジャパン株式会社 ………………… 33
いま産業分野で広がるエッジ処理とその最新動向 エッジコンピューティングのインテリジェント化
日本ヒューレット・パッカード株式会社 ………………… 34
表紙画像 ssguy/Shutterstock
オートメーション&産業ネットワークナビ Vol.1
発行所:株式会社アペルザ オートメーション新聞社 発行日:2017年8月8日
〒231-0023 神奈川県横浜市中区山下町23番地 日土地山下町ビル13F 電 話 : 045 -228 -8873 FAX : 045 -345 -4790
メール : info@automation-news.jp オートメーション新聞WEB版 http://www.automation-news.jp/
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◆◆◆ ネットワーク団体 ◆◆◆
IO-Link
-現場センサ、アクチュエータのためのデジタル通信技術-
IO-Link コミュニティ ジャパン
はじめに
産業用オートメーションにデジタル通信技術が導入されて、す
でに 25 年以上となる。工場現場では各種フィールドバス、産
業用 Ethernet 等を使用して、多くのオートメーション機器間で、
自由にデータと情報のやり取りができるようになっている。
ただし、オートメーションをさらに進化させるためには、工場
のすべての機器がデジタル通信でつながって、情報を共有する
必要があるが、現実にはまだそうなってはいない。
特に工場現場に一番近いセンサ、アクチュエータは(一般
的に)非常に安いコストで供給されることが求められており、
Ethernet などを使ったデジタル通信機能を搭載すると価格が
高くなってしまう。そのため、工場で多く使用されているにもか
かわらず、センサ・アクチュエータまでにはデジタル通信が届い
ていないことが多い。 図 2 IO-Link システム構成
IO-Link はこの課題を解決するため、現場の(比較的価格の 図2 IO-Linkシステム構成
安い)機器もデジタルネットワークに接続し、測定値、操作値 トで販売されている IO-Link マスタでサポートされているフィー
だけでなく、パラメータデータ、診断データ、そしてイベントの ルドバ ス、 産 業 用 Ethernet は PROFIBUS、PROFINET、
通信可能にする技術である。IO-Link のコンセプトはすでにマー Interbus, EtherCAT、Powerlink, EtherNet/IP, Modbus
ケットで受け入れられ、2016 年末までに累計 530 万台の機器 TCP, SERCOS III, CC-Link, CC-Link/IE、DeviceNet,
が全世界で納入された。(図 1 参照)特に 2015 年と比べると、 AS-Interface, serial, USB など多彩なプロトコルが用意され
2016 年は納入機器数が 20% 以上増えていることに注目いた ている。この多様な接続性が IO-Link の魅力の 1つである。
だきたい。 また、デバイスの種類も エンコーダ、圧力センサ、レベル
センサ、温度センサ、近接センサ、超音波センサ、ビジョンセ
IO-Link ンサ、流量センサ、距離計、RFID システム、低電圧スイッチギ
ノード数 ア、真空機器、バルブ、回転機、信号灯など 3700 種類以上の
600万 機器がマーケットで販売されている(2017 年 3 月現在)。
530万台
(写真 1 参照)
400万
360万台
219万台
200万
図 1 IO-Link 累計出荷数
図1 IO-Link累計出荷数
1.IO-Link とは
IO-Link システムではマスタとデバイスを 3 本の導線(シール
ド不要)を使って 1 対 1に接続する。多くの場合、IO-Link マ
スタはリモート IO または制御機器(例 ;PLC)の入出力カード 写真 1 ヨーロッパの展示会での IO-Link パネル
となっている。マスタは複数のポートを持っており、複数の IO-
Link デバイスと接続する。(図 2 参照) 2. 技術概写要真1 ヨーロッパの展示会でのIO-Linkパネル
IO-Link マスタは IO-Link デバイスと上位の制御機器との間
に位置して、データのやり取りを仲介する。たとえば、IO-Link IO-Link の概要仕様は以下のとおりとなる。
マスタがリモート IO の場合、上位通信としてフィールドバス、 (1)Point-to-Point 接続 マスタの各ポートが 1 個の IO-
または産業用 Ethernet とつながることが多い。現在マーケッ Link デバイス(現場機器)とつながり、中間に機器は接続され
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オートメーション & 産業ネットワークナビ Vol.1
ない。つまり、マスタとデバイスの Point-to-Point 接続であり、
バス接続でない。
(2)信号線は 3 線式、電源供給も可能 (24V)
(3)ケーブル最大長 20m
(4)インタフェース部は M12、M8 コネクタ、または端子接続
を使うのが一般的。
(5)通信速度 4.8kbps、38.4kbps、230.4kbps の 3 種類
(6)データ更新周期 38.4kbps の通信速度で約 2msec ごと
にデータ更新
(7)IO-Link では以下の 4 種類のタイプのデータを通信できる。
1) プロセスデータ
現場機器の測定値と操作値であり、周期的に通信される。最大
長は 32 バイト。
2) バリューステータス 写真 2 IO-Link のエンジニアリング画面例写真2 IO-Linkのエンジニアリング画面例
バリューステータスとはプロセスデータの有効 / 無効を示す値で ではハードの接続を統一できる。つまり、ケーブル接続の間違
あり、プロセスデータと共に通信される。 いがなくなる。また、設定と異なる IO-Link のデバイスをマスタ
3) デバイスデータ に接続するとエラーを出すこともできるので、間違った機器をつ
デバイスデータとはパラメータ、機器の識別データ、そして診断 なぐことがなくなる。
データとなる。これらのデータはマスタからのリクエストにより、 (4)センサ、アクチュエータをそれぞれ配線するより、IO-Link
非周期で通信される。 とフィールドバスまたは産業用 Ethernet を採用すると、配線工
4) イベント 数が削減できる。
アラーム等のイベントがデバイスで発生した場合、デバイスは
マスタにこのイベントを読むようリクエストすることができる。 5. 終わりに
IO-Linkの日本での普及をサポートするために、IO-Linkコミュ
3. エンジニアリングとコンフィギュレーション ニティ ジャパンが 2017 年 4 月に発足した。2017 年 7月現在、
IO-Link デバイスの仕様を記述するため、それぞれの IO- 24 社が参加しており、
Link デバイスは IODD(IO Device Description)を提供する。 (1)早稲田大学理工学研究所にて、IO-Link 体験コースを月1
IODD には以下の情報が含まれる。 回の割合で開催
・通信のプロパティ (2)東京、名古屋などで、IO-Link の概要説明とベンダデモを
・デバイスのパラメータ(レンジとデフォルト値を含めることもできる) 行う IO-Link 紹介セミナの開催
・機器の識別データ、プロセスデータ、診断データ (3)HP の開設
・デバイスデータ (4)カタログ、技術資料の公開
・テキスト記述 (機器の説明) (5)産業オープンネット展、システムコントロールフェア/ 計測
・機器の画像 展への参加
・ベンダーのロゴ など、積極的に活動を進めている。
IO-Link マスタに接続される IO-Link デバイスの設定には 繰り返すが、次世代工場では、デジタル技術を今よりもっと
IODD を(基本的に)使用する。IODD の構成はすべての IO- 活用するために、工場内のすべての機器がデジタル通信でつ
Link 機器で統一されている。したがって、IO-Link コンフィギュ ながることが求められる。IO-Link は現場に最も近いセンサ・
レーションツールからは異なったベンダーの機器も同じような感 アクチュエータのデータを取り込み、フィールドバス、産業用
じで見ることができる。(写真 2:IO-Link コンフィギュレーショ Ethernet と共にスマート工場を構築する技術として、ご注目い
ンツールの例) ただきたい。
* 記載されている会社名、協会名と製品名につきましては、各社、
4. IO-Link を採用するメリット 各協会の登録商標または商標です。
(1)IO-Link は使うと、今までアクセスできなかった、センサ・
アクチュエータ内のデバイスデータも監視・設定できるようにな
る。たとえば、機器管理パラメータを使って、実際に稼働してい
るセンサ・アクチュエータの機器情報(例 : ベンダー名、モデル
名、シリアル番号、バージョン等)を機器自身から読み取るこ 【お問い合わせ】
とができる。工場の中には数千台、数万台のセンサ・アクチュエー IO-Link コミュニティ ジャパン
タが存在する。正確な機器情報を持つことは、ラインの安定稼 〒 141-0022
働に欠かせない。また、診断用のパラメータを収集することで、 東京都品川区東五反田 3-1-6 ウエストワールドビル 4F
予知保全に役立てることもできる。 日本プロフィバス協会内
(2)今までセンサ、アクチュエータの接続は、2 線式、3 線式、 Tel/Fax:03-6450-3739 E-mail: info@io-link.jp HPl: http://www.io-link.jp
無電圧、有電圧など、機器によりさまざまであった。IO-Link
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◆◆◆ ネットワーク団体 ◆◆◆
超高速産業用イーサネット EtherCAT について
EtherCAT Technology Group
EtherCAT とは ドではなく、フレームを通過させつつ直接リード & ライトを
行うオンザフライ方式となっています。
EtherCAT は現在 4410 社からなる世界最大の産業用ネッ ■トポロジ
トワーク団体です(図 1)。世界地域ごとのメンバーのおお 標準的な EtherCAT スレーブは IN と OUT とで合計 2 個
よその比率は欧州 40%、北米 15%、アジア 35% と全世界 のポートがあり、EtherCAT マスターポートを起点として
にまんべんなく普及しています。この一年間で約 600 社が ディジーチェインで接続するライン型ネットワークが基本で
新しく ETG に参加しました。増加数の半分がアジアとなっ す。スレーブによっては OUT ポートが複数個あり、これを
ていて、日本、中国、韓国の普及に一段と弾みがついています。 使用して分岐やツリー / スター型のネットワークを構成でき
日本国内では、マスターメーカーや I/O やサーボシステムを ます。ESC 内部には IN ポートから OUT ポートを巡回する
開発する機器メーカーだけでなく、半導体製造装置や工作機 ように通信フレームをルーティングする機能があり、ネット
械などの装置メーカー、開発支援会社や自動車産業などのエ ワークケーブルでマスター・スレーブ間を接続すると自動的
ンドユーザーもメンバーとして活動しています。 にリング型の経路が一意に構成されます。EtherCAT ネット
ワーク内に通信フレームを送出できるのは EtherCAT マス
0.4 A50g0endメa ンバー数4410社 6002016→17: ターだけであり、EtherCAT スレーブはその通信フレームに
1. ETG Membership 600メンバー増加 4000
Development
2013:
対する入出力処理を行い、最後にマスターにフレームが戻る
2. Ad3o50p0tion Rate 毎日1メンバー増加
450 ことで通信が完了します。つまり、通信フレームは全てのス
3. ETG Events
Revi3e0w00 & Preview
4. New EtherCAT レーブを巡回した後にマスターに戻ってきます。なお、リン
Applications
2500
5. ETG New1s 2Sヶum月maのry グ状の経路を構成するために分岐にスイッチングハブは使用
300
メンバー増加数
6. ET20G00 Team News できません。
1500 2008:
1営業日につき1メンバー増加 150
1000
500
0 0
No Ma No Ma No Mv y v y v a
N
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M
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N
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M N M N M N M N M N M
-0 - - - - - - - - v
ay ov a- - y
ov ay ov ay o- - v
a
0 - y
ov ay
3 -4 04 -05 05 -06 06 -07 07 -08 08 -09 09 -10 10 -11 11 -12 12 -13 13 -14 14 -15 15 -16 16 -17
July 2017 © EtherCAT Technology Group
図 1 全世界のメンバー数の推移
EtherCAT の動作原理
■ネットワーク階層
フィールドバスは IEC 61158 で標準化されています。こ
の規格ではフィールドバスのネットワーク階層として物理
層、データリンク層およびアプリケーション層を定義して
います。EtherCAT の物理層およびフレーム形式は完全に 図 2 ネットワークトポロジ : ライン / ツリー / スター
IEEE 802.3 Fast Ethernet の規格に準拠しています。デー EtherCAT P の仕様
タリンク層は EtherCAT スレーブコントローラ( ESC) が処
理し、アプリケーション層は制御用マイコンのソフトウェア 「EtherCAT P」(図 3)は、ベッコフオートメーション社
で実装します。 が 2015 年 11 月公開した省配線化を実現する新技術です。
物理層には低コストな汎用の Ethernet 部品を使用できま 産業用のイーサネットは 100Mbps が主流であり、そのケー
す。データリンク層の ESC は複数のメーカーが IC、また ブルは 4 本(RX+、RX-、TX+、TX-)のワイヤからなるツ
は FPGA 用 IP コアとして供給しています。ESC は制御用 イステッドクアッドを使用しています。EtherCAT P はこ
マイコンと EtherCAT マスター間の通信バッファの制御機 の 4 本の信号線をシステム電源と I/O 電源の供給ラインとし
構として動作し、マスターからの通信フレームに対する入出 ても使用します。24VDC の規格ではそれぞれ最大 3A まで
力動作をハードウェアで処理します。つまり、制御用マイコ 使用できる M8 コネクタ付きケーブルを規定しています。通
ンは周期プロセスデータや非周期メッセージ通信データに対 信用のワイヤと独立した電源供給用のワイヤを 1 本のケー
し ESC 内の通信バッファをライトまたはリードすることで ブルにまとめ、大電圧・大電流容量に対応した規格と専用コ
EtherCAT マスターとの通信を行うことができ、通信フレー ネクタも提唱されています。EtherCAT P は PoE( Power
ムを直接操作するタイムクリティカルな処理は発生しませ over Ethernet) とは異なる技術です。通常の EtherCAT
ん。また、ESCによる通信フレームの処理はストア&フォワー ケーブルに電源を重畳させるフィードイン機能付き分岐ス
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オートメーション&産業ネットワークナビ Vol.1
レーブを使用し、EtherCAT P デバイスを接続します。逆に 日本メンバー数 500 社を突破 !!
EtherCAT P ケーブルから電源を切り離すモジュールも用意
され、標準 EtherCAT 接続と混在できます。IP67 などのデ ETG の日本の活動は 2005 年から始まり 12 年を経て
バイスと組み合わせて、省配線化だけでなく制御盤レス化も 500 社目の日本メンバーを迎えることができました。2017
実現できます。 年 7 月 6 日に開催した ETG 日本メンバーミーティングでは
EtherCAT P のスレーブ開発はイーサネットのコネク この記念すべきマイルストーンを祝し、500 社目のメンバー
タ直後に電源とイーサネット信号とを分離・重畳する回路 である駿河精機株式会社 代表取締役社長 丸井武氏をお招き
を組み込むだけです。通信フレームの構造や内容は標準の し、記念の盾と 500 社記念会員証の授与を行いました。駿
EtherCAT と全く同じであり、ファームウェアなどこれ以外 河精機株式会社は精密位置決めと光計測技術のリーディング
の変更は必要ありません。開発済みの EtherCAT スレーブ カンパニーとして知られています。丸井 武氏は受賞スピー
を簡単に EtherCAT P 対応にできます。 チを行い、2 年前のドイツ・ハノーバーメッセで EtherCAT
EtherCAT P はイーサネットの物理層を拡張しているため、 に出会い、その技術に感銘を受けて導入を決心されたこと、
公式テストセンターによる物理層コンフォーマンステストが 現在では EtherCAT インターフェイスを備えた独自のデバ
必須になります。ユーザーはコンフォーマンステストによっ イスも開発にも着手していることを述べられました。
て仕様準拠を認証済みの製品を使用できます。 ETGの日本のコミュニティは半導体製造装置や自動車産業
に牽引され加速的に拡大しています。EtherCAT はオープン
な技術であり、ETG のメンバーであれば誰もが EtherCAT
対応製品を開発できます。ETG はユーザーとデバイス開発
の両面でサポートを継続していきます。
イベント情報
ETG では一般の方を対象にしたセミナーやメンバー向け
イベントを開催しています。
日付 場所 名称 対象
産業オープンネット展
8 月 24 日 東京
EtherCAT による制御 一般
8 月 29 日 大阪
システム構築のメリット
図 3:EtherCAT と新技術の EtherCAT P EtherCAT 開発サポー
9 月 28 日 横浜 メンバー
トセミナー
技術アップデート
10 月11日 横浜 メンバー
セーフティ技術セミナー
10 月12,13 日 横浜 Plug Fest メンバー
SCF 出展者セミナー
11月 30 日 東京 一般
EtherCATの最新動向
開発などの技術的なセミナーやイベントは ETG メンバー
が対象です。ETGメンバーは法人として誰でも入会できます。
入会金、年会費は必要ありません。入会を希望される企業の
方は ETG 日本オフィスまでお問い合わせください。
【お問い合わせ】
EtherCAT Technology Group 日本オフィス
〒 231-0062
神奈川県横浜市中区桜木町 1-1-8 日石横浜ビル 18F
Tel 045-650-1610 Fax 045-650-1613
お問い合わせ : info.jp@ethercat.org
技術サポート : support.jp@ethercat.org
ウェブサイト : www.ethercat.org/jp.htm
【500 社目の授与式記念写真】
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◆◆◆ ネットワーク団体 ◆◆◆
マルチベンダ環境を実現する
産業用オープンネットワークFL-net
一般社団法人 日本電機工業会 ネットワーク推進特別委員会
1.FL-net とは して、FL-netではネットワークに参加するノードが分担して、
管理機能を実行するマスタレス方式(「マルチマスタ」とも
FL-net は自動車工業会からの要求仕様に対して、制御機 呼ぶ方式)を採用しており、通常、マスタがネットワークの
器メーカ各社が共同で開発した日本発祥のオープンネット 全データを持つのに対して、FL-net は参加する各ノードが
ワークである。FL-net の名称は FA Link Network の頭文 全体のデータを持つ。
字を取っている。 (3)汎用のイーサネット利用
図1に示すように、FL-net にはコントローラ間の通信と FL-net は汎用のイーサネットを利用していながら、汎用の
ともに、FL-net Ver.3 の仕様で新たに制定したセンサ、接 通信では保障されていないリアルタイム性、すなわち、一定
点信号等とコントローラとの間の通信とがある。 時間内に通信のサイクルが終了する機能を持つ。このため、
FL-net をリアルタイム性が必要な制御に利用することが可
能となる。FL-net のサンプルソース(Windows パソコン用
ERP
レベル4
クラウド のソース)は公開されている。パソコンにおいても汎用のイー
経営データ サネットを使って、FL-net のリアルタイム性を持つ通信が
MES 動作する。
レベル3
工程管理 :FL-net利用通信
3.仕様
PLC・コントローラ FL-net利用
FL-net
レベル2
コントローラ間の通信 表 1 に FL-net Ver.3 の仕様を示す。Ver.3 は、従来の
FL-net Ver.2 で定めていたコントローラ間の通信機能にお
機器 FL-net利用 FL-net
センサ・接点信号等と いて互換性を持ち、Ver.2 と Ver.3 の機器が互いに通信する。
レベル1 コントローラとの通信
センサ 接点信号 モータ 空圧機器 表 1 の仕様において、ネットワークのトポロジでは、汎用
のイーサネットと同様に、バス型、スター型で接続し、最大
図1 産業用通信の中の FL-net の位置 接続局(ノード)数は、254 局である。
プロトコルは UDP/IP ベースの「FA リンクプロトコル」
2.特長 と呼ぶ通信方式により、制御のための通信を実行する。ネッ
(1)オープンなネットワークでメーカ同志がつながる トワーク設定では、ネットワーク設定パラメータを TCP/IP
FL-net は国内外の 32 社が製品を提供しているオープンな を使って、ノードとは異なるネットワークに設置したパソコ
ネットワークである。FL-net を利用することにより、マル ンからも設定することが可能である。
チベンダの製造ラインとして、個々のメーカが持つ特長を生 伝送性能は、ノードが 32 局で、2 k bit の ON/OFF 信号
かしたシステムを構築することが可能となる。 と 2 k WORD のデータ信号のデータ量を送受信する場合に
(2)マスタレス方式 は、50msec 以下でリフレッシュ可能としている。
通常のネットワークではマスタが管理機能を実行するのに対 表 1 FL-net の仕様(FL-net Ver.3)
仕様項目 仕様
◆オープンなネットワーク
伝送媒体 10BASE-2,5,T 100BASE-TX,FX
多くのメーカPLCが対応 ◆マスタレス方式
各ノードにマスタ機能 物理層規格 IEEE 802.3
A社PLC トポロジ バス型、スター型
管理PC 最大接続局(ノード)数 254局B社PLC
交信権制御方式 トークンパス方式
C社PLC 管理PC 通信局管理方式 マスタレス方式 (マルチマスタとも呼ぶ)
プロトコル(制御用通信) UDP/IPベースFAリンクプロトコル
D社PLC ネットワーク設定パラメータ用のネットワーク設定通信
専用サーバ機能を搭載(TCP/IP通信)
FL-net TCP/IP、UDP/IPなどFAリンクプロトコル汎用通信重畳
以外の通信の重畳が可能
サイクリック伝送サービス
FL-net 全局で8Kbit+8KWordのコモンメモリ
メッセージ伝送サービス
伝送サービス 1:1伝送/1:N伝送(ブロードキャスト通信)
最大1024Byte
負荷測定サービス
◆汎用のイーサネット利用
IO定義設定サービス、勧誘サービス
汎用のイーサネットで
32局、2Kbit+2KWordデータを
リアルタイム性を持つ 伝送性能 50ms以下でリフレッシュ可能
I/Oマスター(特定局)と通信
図 2 FL-net の特長 デバイスレベル通信 固定マップ/任意マップ 2方式
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オートメーション&産業ネットワークナビ Vol.1
4.適用分野 ORiN対応のアプリケーションExcel Amazon/Microsoft対応クラウドアプリ
FL-net の適用分野を表 2 に示す。 ORiN OPC
FL-net適用分野
表 2 FL-net の適用分野
プロセス産業 公共・社会システム
加工組立産業 FL-net利⽤ 製造設備
食品・薬品産業 その他 FL-net通信
自動車 製鉄・鉄鋼 ダム監視・管理 FL-net EtherCAT
対応ソフト EtherNet/IP
紙パルプ etc
電気機器・電線
上下水道 ORiN⽤PCと化学 FL-net利⽤製造設備が接続
機械 窯業
ゴミ処理
輸送機器 石油
ORiN⽤PC FL-net利⽤ 製造設備
食品 電力監視・制御
半導体 図 4.ORiN 用 PC と FL-net 利用設備の接続
薬品
表示デバイス 印刷 ビル管理 FL-net を利用したシステムが接続することが容易となった。
また、既設の FL-net 利用の製造設備に対して、ORiN 対応
FL-net は自動車を始めとする加工組立産業や、プロセス のパソコンを設置して、製造設備を Excel やクラウド接続な
産業、食品・薬品産業などで幅広く適用されている。また、 どの新たなソフトウェアを使って、モニタリングすることが
公共・社会システムではダム監視・管理や上下水道などに適 可能となった。
用されており、国交省発行の「ダム管理用制御処理設備 標 7.F 国際規格化推進
準設計仕様書(平成 28 年 8 月)」内には、FL-net が仕様と
して記載されている。 FL-net を 国 際 規 格 に す る た め、IEC(International
Electrotechnical Commission)に FL-net 規格を提案し、
5.出荷実績 2018 年 10 月を目標として IEC 規格化するための活動をし
図 3 に FL-net の出荷実績台数の調査結果を示す。2008 ている。産業用ネットワークを審議する IEC の東京会議、ミ
~ 2009 年度(リーマンショック時)には出荷台数が減少し ラノ会議(図 5)、フランクフルト会議など一連の IEC 会議
たが、その後出荷台数は拡大を続けている。 に参加して国際規格化を推進している。
年度別出荷台数(右軸)
台 累計出荷台数(左軸) 台 IEC規格化の経緯
350,000 50,000
提案段階(NP) 2014年11月
45,000
300,000 委員会段階(CD) 2015年 1月
40,000
照会段階(CDV) 2017年 3月
250,000 35,000
承認段階(FDIS) 2018年1月
30,000
200,000 発行段階(IS) 2018年10月
25,000 IEC/SC65C/JWG10(工図業5用.ケIEーCブ国リン際グ会)ミ議ラとノ会IE議C 規格化の経緯
150,000
20,000
15,000 8.推進体制・認証体制100,000
10,000 (一社)日本電機工業会 ネットワーク推進特別委員会が
50,000 FL-net の規格作成と改訂、国際標準化、普及拡大のための
5,000 活動を行っている。また、ネットワーク認証特別委員会と地
0 0 方独立行政法人 神奈川県立産業技術総合研究所が FL-net
製品の認証試験を実施している。以上のように FL-net は企
年度 業間の協調により、工業会を母体にして将来に亘って普及拡
図 3. FL-net の出荷実績調査結果 大を図って行く。
6.ORiN と FL-net の連携
ORiN(ロボット工業会が推進するパソコンと産業用装置
間の通信インタフェース)と FL-net は連携し、互いに通信
するようになった。
ORiN 用 PC にインストールする FL-net 対応ソフトが完
成し、ORiN 用 PC と FL-net 利用製造設備との接続が可能
となった。これにより、ORiN 対応のアプリケーションと 図 6.FL-net のロゴ
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◆◆◆ ネットワーク団体 ◆◆◆
センサ&アクチュエータネットレベルからIIoTまで、
共通通信プロトコル「 CIPネットワーク」
ODVA TAG Japan
1.ODVA の最新動向 トの知識から、システム構築上の注意点まで学べるセミナー
となります。特に、実機を使ったエンジニアリングデモでは、
(1)EtherNet/IP のシェアが 25% に ネットワーク診断や EDS ファイルの見方などが学べると好評
ODVA は、2016 年 11 月 22 日、SPS IPC Drives 展 です。
で、産業用イーサネットの市場で 2015 年の出荷ノードでの
EtherNet/IP が約 25% のシェアになったと発表しました。 開催予定日時 :2017 年 9 月15 日(金) 10:00~17:00
また、IHS マーケットのアナリストは、スマートマニュファクチャ 開催予定場所 : 東京
リングや IIoT の流れを受けて、今後もフィールドバスから産業 (3)ODVA カレッジ 2017
用イーサネットへの切り替えが大きなトレンドになっていくと 「ODVA カレッジ 2017」を今年は、大阪・名古屋で開催し
述べています。 ます。
(2)Common Industrial Cloud Interface の開発 例年、「ODVA カレッジ」は、セミナーと協賛各社からの製
ODVA は、デバイス機器・産業用制御システムとクラウド 品展示を併設しており、来場された皆様より、ODVA のネット
間の高性能、安全な通信の最適化と簡易化を目指し、新たな ワークに関して、知識が深まり、製品も見ることができ、現場
仕様を開発します。この対象範囲は、クラウドとのゲートウェ で使用できるイメージがわいた、と好評を博しています。
イとゲートウェイからクラウドへ及びクラウドから ICS やその
デバイスへのデータ伝送のための API となります。 ①開催予定日時 :2017 年 10 月17 日(火)10:00~17:00
(3)サイバーセキュリティへの取組 開催予定場所 : 大阪 AP 大阪駅前梅田 AP ホール 2
ODVA は、オートメーションネットワークのサイバーセキュ ②開催予定日時 :2017 年 10 月 20 日(金) 10:00~17:00
リティの取組みとして、多層防御セキュリティアーキテクチャ 開催予定場所 : 名古屋国際センター 第 1会議室
を推奨してきました。それにより、EtherNet/IP 及び他の 詳細案内は、ODVA 日本支部のホームページ、ブログやメー
CIPネットワークに接続された機器の防御能力の向上を目指し ル通信サービスをご覧ください。
ています。2015 年 11月には、新しい仕様として、Volume
8 CIP Security を新たに追加しました。EtherNet/IP は、 3.センサ & アクチュエータから情報通信まで
トランスポート層で IETF-standard TLS (RFC 5246) と CIPTM ネットワークの特長(図 1、図 2 参照)
DTLS (RFC 6347) を使用し、エンドポイントの認証、メッ (1)生産システムで使用される通信系には、センサ & アクチュ
セージの完全性と認証、データの機密性(暗号化)をもつセキュ エータレベル通信、デバイスレベル通信、制御レベル通信、
アなトラスポートを提供します。 そして情報レベル通信があり、異なる通信間でのシームレスな
2.ODVA TAG Japan の活動について データ交換が望まれています。
ODVA は、 セCIンPフサァ&ミリアのク紹チ介ュ
エ ー タ レ ベ ル 通 信 に
ODVA は、日本におけるプロモーションの一貫として、下記 CompoNODeVt、Aがデ提バ唱イすスるレオーベプルンのネッ通ト信ワにークDeviceNet、制御
のセミナー・イベント等を企画しています。詳細は、開催の 2ヶ
月前から ODVA TAG Japan のホームページでご案内する予
定です。是非ご参加をお願いします。
(1)EtherNet/IP 概要とアダプタ機器開発セミナ(参加受付中)
EtherNet/IP 機器の開発を考えているベンダー様、ユーザ
様を対象としたセミナーです。EtherNet/IP の簡単な概要か
ら、機器開発に必要なチップ、ソフト等まで広範囲に学べる
セミナーとなります。今年は、テュフラインランド様からコン
フォーマンス試験についての講演をして頂く予定です。
開催予定日時 :2017 年 9 月14 日(木) 10:00~17:00
開催予定場所 : 東京
(2)イーサネットネットワーク構築セミナ(参加受付中)
EtherNet/IP のシステム構築を行う、ユーザ様、システム 1
インテグレータ様を対象としたセミナーです。簡単なイーサネッ 図 1 CIP ファミリの紹介
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オートメーション & 産業ネットワークナビ Vol.1
5.ODVA について(図 3 参照)
ODVA(ODVA, Inc. )は、アメリカに本部をおき、ヨーロッ
パ(中東・アフリカ)、中国、韓国、そして日本の地域グループ
で皆様のビジネスを支えています。また、コンフォーマンステ
ストセンタは、アメリカ、ヨーロッパ、中国、そして日本にあり、
各国で同様のサービスが受けられます。
ODVA とその会員企業は一体となり、 Common Industrial
Protocol (CIP™)に基づくネットワーク技術をサポートしま
す。CIP ネットワークの仕様は会員による合議制で管理され、
現在も、CIP SafetyTM(安全ネットワーク)、CIP SyncTM(高
精度時刻同期)、CIP MotionTM(高精度多軸モーション制
御)、CIP EnergyTM(エネルギー使用の最適化)および CIP
SecurityTM(セキュリティネットワーク)などの新しい技術が、
会員企業により追加され、ユーザ資産を守りつつ仕様が拡張
されています。
図 2 OSI 参照モデルと CIP ネットワーク
図2 OSI参照モデルとCIPネットワーク CIP はあらゆる産業におけるネットワークへのニーズに応え、
レベル・情報レベル通信に産業用イーサネットの EtherNet/ ユーザの生産性向上に役立っています。この実績と CIP の優
IP、安全ネットワークに CIP Safety(DeviceNet Safety、 位性が、CIP ネットワークの成長を促進して、産業用ネットワー
EtherNet/IP Safety)、高精度時刻同期制御に CIP Sync、 クの適用分野を広げています。ODVA のメンバー会社はグロー
高精度多軸モーション制御に CIP Motion を提案しています。 バルで約 300 社に達しています。
これらを総称して CIP ネットワークと呼びます。 世界で発売されている CIP 関連製品は、製品毎にコンフォー
(2)CIP ネットワークはアプリケーション層に共通のプロトコ マンステスト(適合試験)を行っていますので、ユーザの皆様は、
ル CIP(Common Industrial Protocol)を採用しているこ 安心して CIP 製品をお使い頂けます。
とにより、異なるネットワーク間でもシームレスに通信できる
という大きな特長を持っています。
(3)CIP ネットワークは拡張性に優れているので、安全ネット
ワーク、センサ & アクチュエータ用ネットワーク、産業用イー
サネット通信の追加など、システムのレベルアップの場合、既
存のネットワークと共存して使用できます。ユーザは従来の資
産を活かすことができ、追加投資は最小限で済みます。
4.CIP の新機能 “CIP Energy”と “CIP Security”
(1)CIP Energy 図3 3 グローバOルDOVDAVA
「最適なエネルギー使用」を実現するために実装されるサー
ビスで、工場全体にわたるエネルギー使用を最適化すること
でエネルギー消費を減らします。
(2)CIP Security
EtherNet/IP では、トランスポート層で IETF-standard
TLS(RFC 5246)を使用することで、各機器が悪意のある
CIP 通信に対して「完全な自己防衛」機能を有することが可
能です。
このように、EtherNet/IP は、全ての制御(汎用制御・安 【お問い合わせ】
全制御・モーション制御)を1 本のイーサネットで実現する事 ODVA TAG Japan
ができるようになりますので、フラットで一元管理しやすいネッ 〒 108-0075
トワークを構築できます。制御ネットワークの構築で悩む必要 東京都港区港南 2-3-13 品川フロントビル 7F
はありません。EtherNet/IP が全て解決致します。すでに世 TEL:080-6118-6094 FAX:03-6718-3586E-mail: ODVA-TAG.Japan@odva.org
界中で多くの実績があり日本の機械装置メーカー様において 本部ホームページ :http://www.odva.org
も数多く採用されている実績のある技術です。 日本支部ホームページ :http://odvatagjapan.iinaa.net/
日本支部ブログページ :http://odvatagjapan.blog69.fc2.com/
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◆◆◆ ネットワーク団体 ◆◆◆
「つなげる」から「伝える」「安全に」「活用する」へ
OPC UA(Unified Architecture)
OPC とは産業オートメーションと企業における、安全で信頼性あるデータ交換を目的とした相互運用を行うための標
準規格です。OPC の仕様を開発・維持する団体として、OPC Foundation があり、その日本での活動グループとして、
1996 年に日本 OPC 協議会が発足しました。
筆者は現在、日本 OPC 協議会技術部会の部会長を兼務しております。以下の論考のうち1, 2, 3, は協議会の活動を
通じて得られた筆者の知見に基づくものですが、4, 5, 6, の各章はあくまで筆者の個人的見解であり、現時点における協
議会の総意ではないことをご承知おきください。
ダッソー ・ システムズ株式会社 DELMIA 事業部エバンジェリスト
米田 尚登
1.OPC Classic から OPC UA への拡張展開 2.OPC UA が普及した背景とそのメカニズム
初期の OPC 仕様は、1990 年代半ばにソフトウェアと業 OPC UA は「伝える」という機能を提供する一方、「何を」
産業オートメーションのハードウェア デバイス間でデータ交換 「どのように」伝えるかを決めるのは利用者です。従って普及
を標準化するため、オートメーション産業のベンダーグループ には、利用者側の業界標準化団体と OPC Foundation と
によって開発されました。その相互接続性と相互運用性によ のコラボレーションが大きく貢献しています。図 2 は OPC
り、制御ネットワークでの表示装置と制御機器との通信ドライ Foundation がこれまでコラボレーションを行った団体です。
バ開発の効率化と品質向上を実現し、主にプロセスオートメー
ション市場で広く認知されました。
その後 OPC Foundation は、制御ネットワークより広い領
域で、産業オートメーションの分野を超えた汎用的な情報連
携基盤となる新たな標準規格「OPC Unified Architecture
(OPC UA)」を、2008 年に発表しました。OPC UA の特徴
図2 OPC Foundation がこれまでコラボレーションを行った団体
は次の 3 点です。
①オブジェクトモデルを採用 : 多様な情報の表現 ・ 伝達が可能 団体を分類すると、ERP、PLM、MES 関連団体、ネットワー
②プラットフォーム非依存 : どのような環境の相手ともつなが ク・コントローラー・デバイス関連団体、そして近年活動が活
る 発な、生産活動に関連する団体があります。生産活動に関連
③実績のあるセキュリティ技術の導入 : 安全なコミュニケー する団体の一つである OMAC(Organization for Machine
ションを実現 Automation and Control)を例にすると、飲料をボトル詰
上記の特徴を備えた OPC UA は、現場レベルのセンサー めする工場管理において、OMAC と OPC Foundation が共
および制御機器の領域から、事業所レベルの製造実行管理 同で仕様を策定します。設備会社は策定された仕様に従って、
(MES)やその上位の経営層レベルでの生産計画または経営 工場用の設備製品に OPC UA Server を実装します。これに
資源管理(ERP・PLM)といった垂直方向と、インターネッ よって、工場側(= 利用者)は、工場設備の製造元や機種に
ト経由で国境をまたぐ地理的な水平方向とに拡張し、OPC 依存せず、自社工場内の設備全般を共通の情報で管理出来る
Classic と比較して遙かに広い領域での使用が可能となりま ようになります。
した。「つなげる」機能から「伝える」「安全に」「活用する」 図 3 は OPC UA が提唱するコンセプトです。サーバー
という機能へと、そのステージが進化しました。(図 1) に は OPC UA Meta Model を 配 置 し、 そ の 上 に OPC
Classic の Built-in Information Models と Companion
Information Models を配置して、高度なインフォーメーショ
ンモデルを配置します。ここまでがコラボレーションによって
図 1 OPC が作り出す世界 図3 OPC UA が営巣するコンセプト
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オートメーション&産業ネットワークナビ Vol.1
共通仕様が策定され配置される領域で、最上位の Vendor 確に関連付けるための仕組みを提供しています。MES が普及
Specific Extensions が提供するベンダー独自の拡張モデル していないと言うことは、情報と生産と製品の正確な関連付
となり、すなわちベンダーにとっての競争領域にあたります。 けがなされていないということです。何をどうやって作ろうと
したのか、その結果がどうなったのか、採取されたデータには
3.OPC UA のさらなる普及の背景 意味付けがなされていません。
このコンセプトにより、OPC UA はインダストリアル ・ イ もう一つは、重要な製造プロセス情報とリソース情報が現
ンターネット (IIoT) やインダストリー 4.0 に関心を持つ層か 場の作業者個人に属しており、情報化・ 共有化がなされてい
らも広く注目されています。独 VDMA(ドイツ機械工業連 ない実情です。多くの場合、製造指図を「プロセス情報」と
盟)の公開資料では、RAMI4.0( インダストリー 4.0 のリ 呼ぶには現実と実態とに乖離があります。作業者へ手渡され
ファレンスモデル)における OPC UA の活用範囲が定義され る紙の指示書には、現場で実際に使われるノウハウはほとん
ています(図 4)。OPC UA は情報(Information)、通信層 どありません。実は作り方は現場にあるのです。現場のノウハ
(Communication)、Products Life Cycle の生産と保守 ウは日本のものづくりの強みではありますが、強みが属人的で
の各プロセスにおける製品製造から ERP までの広い領域で あって情報化できていない実情は、サイバー ・フィジカル ・シ
活躍します。またセキュリティの面から考えると、制御システ ステム導入の障害になります。
ムを狙うウイルスの登場やランサムウェアの急増を背景に、安
全性に対する関心は高まっています。独 BS(I 内務省連邦情 5. 日本における課題解消方法 (個人的見解)
報技術安全局)が OPC UA のセキュリティ仕様を評価し、充 IoT またはサイバーフィジカルシステムの導入にあたり、利
分な有効性があることをレポートに記載しました。 用者がまずすべきは、目的を明確にすることです。なぜなら
IoT の付加価値は、フィジカル(作業者を含む工場全体の実物)
をサイバー(生産に関わる企画・設計・製造・保守等の全ての
情報)に置き換えて、サイバー空間で上記並列作業を行うこ
とで生まれるからです。サイバーとは制御工学で言い換えれば
モデリングという作業になり、目的に合わせてモデリングを行
わなければなりません。Physical が持つ情報量は無限大な
ので、そこから目的に適合したサイバー(モデリング)で切り
出さなければなりません。海外の先行例においてこの課題解
決に最も貢献したのは、生産活動に関連する団体とのコラボ
レーションだと思います。明確な目的が開示され、OPC は適
合したサイバー(モデリング)を実装する協力を行いました。
しかし、日本にはこのようなユーザー主体の団体が OPC とコ
ラボレーションを行うには至っていません。解決策は単純です。
工場すなわちアセットオーナーが参加する工業団体が、IoT に
図4 独 VDMA の公開資料に基づく、OPC UA の活用範囲 おけるあるべき姿、目的を明確にし、開示することです。
(日本語訳は筆者による)
6. おわりに
4. 日本における普及の課題 新たな標準規格である OPC UA が、IIoT やインダストリー
IoT のキーワードにマスカスタマイゼーションがありますが、 4.0 を背景に IT〔情報技術〕の領域の技術仕様を取り込んで
明確な方法を議論するには至っていません。しかし先行する きていることをご理解いただけたでしょうか。
欧米の考えは、ユーザーの多様化するニーズを把握して短期 技術革新が目まぐるしく進む中で、OPC UA が、まだ 1.04
間にローコストで仕掛かり在庫を最小にして製品を供給し、そ としてマイナーバージョンアップの仕様でありながら、現状に
の鍵は PLM をいかに導入しかつ発展させるかです。日本企業 対応できていることは特筆に値すると感じます。今後の状況
は各工程のデジタル化(設計における CAD/CAM/CAE、生 変化にも柔軟に対応し、利用者が長い製品ライフサイクルを
産システム、保守システム)を進めていますが、各システムの 実現できる方法を探りたいと思います。
間はつながっておらず、そのことが PLM 導入の阻害要因です。
「つながらない」ことの根本的な原因は二つ考えられます。
一つは MES の普及の遅れです。IoT をサイバーフィジカルシ 【お問い合わせ】
ステム(CPS)の文脈で捉えなおすと、製造(フィジカルシス 日本 OPC 協議会 事務局
テム)と情報(サイバーシステム)をつなぐのが MES(製造実 〒 108-0075
行管理)です。MES の標準化団体に MESA(Manufacturing 東京都港区港南 2-16-3 品川グランドセントラルタワー
Enterprise Solutions Association )があり、この団体が (日本マイクロソフト 株式会社 品川本社 内)
opcjapan@opcfoundation.org
設計から保守に至るライフサイクルの情報を生産と製品に正
— 10 —
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◆◆◆ ネットワーク団体 ◆◆◆
「産業オートメーション向けオープンミドルウェアORiN」
ORiN 協議会 広報委員会 米山宗俊
はじめに
近年、ものづくりの世界に大きな変化が生まれようとして
いる。
今まで設備をネットワーク化させることに抵抗がある企業
は多く、「見える化」すらもままならない状況であったが、
現在、IT 技術やビッグデータ処理技術、クラウド技術などの
進展や「Industrie 4.0」「IoT」といった思想が浸透しつつ
あり、本格的にスマート工場の実現に着手する企業が増え始
めた。
背景
スマート工場の実現には、設備を構成する多様な機器と接
続し、分析に必要な情報を取得する技術が重要となる。そこ
で、生産設備の稼働率、品質の向上、多種・多世代・量変動
などに対応するために、生産ラインの機器内に収められた情
報(動作状況データ)を収集・分析し、迅速な改善やリアル
タイムに適切な処置を実施する環境が必要になる。
しかし、工場において「つながる」環境を構築することは
容易ではない。生産ラインにはロボットや PLC を始め、さま
ざまなメーカによる多様な機器が混在しており、それぞれの
通信仕様が存在する。そして、情報を取得したい機器に対し
「一品物」の通信インターフェースから開発を始めなければな
らないため、開発工数やメンテナンス費用の増大、そしてシ ORiN イメージ
ステム構成が複雑になるなどの問題に悩まされる。
これらの問題を解決する手段として、多様なデバイスの情
報を効率よく収集し FA 機器に対して統一的な接続を可能とす
る「ORiN」が誕生した。
ORiN の概要 ORiN の歴史
ORiN(Open Resource interface for the Network)とは、 ORiN のプロジェクトは、1999 年度から NEDO の 3 ヵ年プロ
ORiN 協議会により制定された工場情報システムのための標 ジェクトとして、日本ロボット工業会が主体となり開発が進めら
準ミドルウェア仕様である。 れた。国内主要ロボットメーカも参加し、1999 年、2001 年の
現在、「ORiN2 SDK」として実用化され、パソコンのアプ 国際ロボット展における実証試験を経て実用性を高めてきた。
リケーションソフトウェアから、異なるメーカのロボット、 2001 年度に、ORiN Ver1.0 仕様を制定すると共に、Ver1.0
PLC、NC 工作機械など、メーカ固有の制御装置へのアクセス 仕様に準拠した ORiN ソフトウェアの開発を完了し、2002 年度、
方法に合わせることなく、統一的なアクセスが可能になる。 ORiN の普及やニーズに対応した改良を目的に ORiN 協議会を設
ま た、 パ ソ コ ン の 汎 用 言 語(C#,C++,Visual 立した。
Basic,LabVIEW,JAVA など)で開発できることから、産業 2005 年度には ORiN Ver2.0 仕様が完成し、2006 年度に
用 PC から各種 FA 機器のコントローラを制御したり情報収集 「ORiN2 SDK」としてデンソーが商品化、2011 年度には ORiN
することが可能となり、ソフトウェア開発の工数削減やソフト Ver2.0 仕様の一部が ISO20242-4 として IS 発行され、国際標
ウェアの再利用性、さらに保守性の向上が期待できる。 準規格と認められた。
(ORiN イメージ参照) そして 2016 年度、NEDO の支援を受け「Industrie 4.0」「IoT」
を考慮した新しい規格として「ORiN3 プロジェクト」が始動
した。
— 11 —
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オートメーション & 産業ネットワークナビ Vol.1
ORiN の技術 る手法の一つとして「、産業用 PC を活用した設備制御」がある。
ユーザが自由に選択できる環境を提供するという観点から「産
ORiN は、ロボットを含む FA 機器にアクセスするためのイ 業用 PC 統括制御」を実現する ORiN の技術は、きわめて有効
ンターフェースで、アプリケーション向けとデバイス向けの二 的な手段となる。
つのインターフェース(アプリケーション : エンジン、デバイス : そしてもう一つは「監視」的活用である。工場情報システム
プロバイダ)を提供している。 との連携や、業務効率化、さらに製造ラインで活用される FA
機器の故障の予知 / 予防など、様々な状況に対応できるアプリ
ケーションを開発するためには、対象となる FA 機器との接続
が必要になる。その接続を実現する手段に ORiN の技術を活用
すれば、上位システムの構築に大きな手助けとなる。
ORiN の今後
ORiN の開発コンセプトに、現実世界(フィジカル)と仮
想世界(サイバー)を共存させる考えがある。
ORiN を活用すれば、工場設備を構成するさまざまな機器
から設備データを収集・蓄積し、それを定量的に分析した結
果をフィードバックすることでインテリジェントな生産シス
テムを構築できる。また、設備開発の事前準備や動作検証プ
ロセスにおいて、実機とシミュレーションの接続を可能とし、
設計段階から実装・運用・保守まで一貫したシステムを構築
できる。
それはまさに、「Industrie 4.0」のベースとなっている「サ
システム構成 イバーフィジカルシステム(CPS)」の思想に一致する。ゆ
・エンジンは、標準プログラムインターフェイスと共通の えに「Industrie 4.0」で提唱されている、固定的な生産ライ
機能を持ち、各デバイスの違いを意識することのないアプ ンの概念をなくし、動的・有機的に再構成できるセル生産方
リケーション開発環境を提供。 式を目指した「スマート工場の実現」には、ORiN の設計思
・プロバイダは、各種 FA 機器とパソコンを接続する通信 想が最適と言える。
インターフェースを持ち、機器毎に異なる通信仕様の差異
を吸収することで、上位アプリケーションに統一的なアク
セス手段を提供。
これにより、アプリケーションベンダは、各種 FA 機器に依
存しないでクライアントアプリケーションを開発することがで
き、FA 機器メーカはクライアントアプリケーションに依存せ
ずにデバイスが持つ機能を公開することができる。
また、分散オブジェクト技術にマイクロソフト社の DCOM
(Distributed Component Object Model)を実装しており、
各種 FA 機器をネットワーク上の自由な場所への配置が可能と ORiN 活用
なる。さらに、OLEに対応した様々な汎用言語(C#,C++,Visual
Basic,LabVIEW,JAVA など)の開発ツールから呼び出すこと しかし、スマート工場を実現するためには、「一つの標準規格」
が可能で、ユーザが開発言語・開発環境を自由に選択できる。 がすべてをカバーできるほど単純ではない。
日本発の国際標準規格「ORiN」は、ORiN 自身の標準化(ISO
ORiN の活用 20242)だけでなく、実際の工場で必要な ISO/IEC/ 業界団体
ORiN の活用には、二つの方向性がある。 等の「他の標準規格」と連携して、すべてをつなぐ架け橋となり、
一つは「制御」的活用である。これまで日本の自動車業界 世界の工場の IoT 化に貢献する。
では、製造工程の設備を制御する手法として、ロボットを含
む FA 機器は各メーカが提供する専用言語を使用し、ライン
の統括制御を PLC(ラダー言語)で行うのが一般的であった。
この手法は現在でも広く使われており、実績を考慮しても信頼
性は高い。一方、さらに多くのユーザに設備の自動化を推奨す
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◆◆◆ ネットワーク団体 ◆◆◆
昨年「CC-Link IEフィールドネットワークBasic(」通信速度100Mbps)を追加。
CC-Link IEの最新動向、CC-Link協会の最新アクティビティを紹介。
CC-Link 協会
1. CC-Link IE とは パートナーから提供されており、立上げ時間やダウンタイム時間の
削減が実現できる。
「CC-Link IE」は業界唯一の 1Gbps イー ■ CC-Link IE 詳細ページ
サネットをベースとした統合 FA ネットワーク <https://www.cc-link.org/ja/cclink/cclinkie/index.html>
である。CC-Link IE は、「CC-Link IE コン
トローラネットワーク」、「CC-Link IE フィー 2. CC-Link 協会の最新アクティビティ (PI 連携、OPC
ルドネットワーク」、CC-Link IEフィールドネッ 連携、セキュリティ、標準化)
トワーク上のモーション制御機能、更に CC- IIoT(Industrial Internet of Things) 、Industry 4.0、 中 国
Link IE 安全通信機能から構成され、制御 製造 2025 や e-F@ctory などのメガトレンドにより、IT 技術を活
有馬 亮司
CC-Link 協会 用途に応じた最適な仕様を提供している。 用した高度な生産システムの実現が求められる中、製造現場のあら
テクニカル部会 部会長 CC-Link IE の特長は、とりわけ高速・大容 ゆる装置から生産や品質に関わる全ての情報を収集し、生産管理
量であり、将来的な新アプリケーションの追加に対しても、十分な や品質管理、さらには受発注システムなどの IT システムと連携させ
帯域を備えている。 ることが必要不可欠となってきている。しかしながら、 実際の製造
CC-Link IE は、FPD(Flat Panel Display)・自動車分野にお 現場には様々な装置が存在し、装置と IT システムの連携を実現す
いて広く採用されているが、その採用理由の一つが、高速かつ大容 るには多大なエンジニアリングコストがかかっている。また、製造
量にも対応可能なリアルタイム性能である。CC-Link IE では、リ 現場のネットワークに関しても、統一した規格がなく、異なるネット
アルタイム性能をリンクキャンタイムと呼ばれる指標で表現してい ワークに対応した装置を採用する場合や、異なるネットワークに対
る。図は、32 台の局を CC-Link IE コントローラネットワーク上に 応したデバイスを統合するのに、多大なコストがかかっている。
配置し、各局のメモリ割り付け量を均等に設定した場合のリンクス このような背景のもと、CC-Link 協会では、異なるネットワー
キャンタイムである。従来コントローラネットワークと比較しても、 クに対応した装置やデバイスとの接続性を向上し統合を容易化す
圧倒的に高速であり、かつ、ネットワーク上でやり取りするデータ量 る PROFIBUS & PROFINET International( PI)との連携(水
(リンク総点数)が増えても、性能は劣化しないことが判る。 平統合容易化)、IT システムと装置の統合を容易化する OPC
Foundation との連携(垂直統合容易化)、さらには、全体システ
ムの統合において不可欠なるセキュリティの検討に着手している。
以下では、これらの取り組みについて簡単に紹介する。併せて、各
国での標準取得活動についても紹介する。
(1) PROFIBUS & PROFINET International との連携
IIoT や Industry 4.0 では、シームレスなデータの流れが前提と
なっており、異なる規格のネットワークの間での情報のやり取りが
従来以上に重要になる。現在、それぞれ異なったネットワークが多
く利用されており、CC-Link IE や PROFINET などさまざまなネッ
CC-Link IE コントローラネットワークの場合 トワークを容易に統合できるソリューションは、IIoT や Industry
CC-Link IE では、制御用途に適した、リアルタイム性を提供す 4.0 に有効であると考えられる。そこで、CC-Link 協会と PI は
るサイクリック通信に加え、生産・稼動実績、品質、エネルギー CC-Link IE と PROFINET の統合容易化に向け、共同のテクニカ
使用量など生産現場のあらゆる情報を収集するトランジェント通信 ルワーキングを設立し、「カプラーソリューション」という標準的な
を提供している。1Gbps という広帯域の特長を生かして、サイク ゲートウェイ仕様の策定を完了させた。カプラーソリューションは、
リック通信用と、トランジェント通信用の帯域を分けている。その 装置間またはシステム間の通信を処理する。一つのネットワークを
ため、生産現場の情報データ量が増えたとしても、FA(Factory 利用する装置は、従来のネットワーク部品のようにカプラーを通じ
Automation)で重要な制御側には影響を及ぼさないことを実現し て別のネットワークへ、準ブラックボックスとして接続する。2017
ている。近年では、トランジェント通信で取得した品質データに対 年 4 月にはカプラーソリューションの仕様が公開された。
して、アナリティクスツールを適用する品質分析ソリューションも広 (2) OPC Foundation との連携
がりを見せている。 CC-Link 協会では、CC-Link プロトコルファミリーに接続さ
他のオープンネットワークが高速性のみをアピールする中、CC- れるさまざまなデバイスに関して、立上・運用・保守のために
Link IE では信頼性やトラブルシューティングにも力を入れている。 必要となるパラメータ等の情報を記述する CSP+(Control &
この点も、FPD・自動車分野において広く採用されている理由の一 Communication System Profi le)と呼ばれるプロファイル 仕
つとなっている。CC-Link IE フィールドネットワークの標準モード 様を検討してきた。OPC 連携では、本 CSP+ を拡張し、様々な
においては、データ到達の信頼性を向上する技術を採用しており、 装置の様々な情報を統一的に扱う仕組みを構築する。また、OPC
ノイズ等による制御指令のパケットロスをリカバリーする仕組みを Foundation との協力のもと Industry 4.0 の標準となりつつある
備えている。また、ネットワーク上のどこにトラブルがあるのかを瞬 OPC UA モデルへのマッピングを行う。これにより、製造現場の装
時に発見するため、ネットワークイベント履歴管理ツールやネット 置と IT システム間のインタフェースを統一し、高度な生産を目指す
ワーク診断ツールなど、トラブルを容易に発見するためのツールが スマート工場を実現するためのエンジニアリングコストを削減する。
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オートメーション&産業ネットワークナビ Vol.1
ジアで高いシェアを誇る CC-Link IE が正式に中国の国家標準とし
て認定されたことで、中国製造 2025 プロジェクトが進行中の中国
でのさらなる普及が期待できる。
■プレスリリース
<https://www.cc-link.org/ja/news/161122.html>
<https://www.cc-link.org/ja/material/documents/
OPCFoundation_CLPA_20160509_j.pdf>
<https://www.cc-link.org/ja/material/documents/news_
SecurityWG_jp_20170605.pdf>
<https://www.cc-link.org/ja/material/documents/news_
OPC 関連のイメージ図 GBTNR_jp_20170524.pdf>
(3) セキュリティへの対応 3. CC-Link IE フィールドネットワーク Basic
IT 技術の活用などの生産システムの発展に伴い、検討が不可欠
なのがセキュリティである。製造現場のネットワークは、生産管理 ―100Mbps の汎用 Ethernet を活用した CC-Link IE 通信が
層のネットワークと結合され、更に生産管理層のネットワークは経 可能にサイクリック通信をソフトウェアの実装のみで実現、IoT に
営層のネットワークへと結合される。また、近年は、予知保全を目 よる生産設備の見える化を促進―
的とした遠隔監視に対するニーズにより、装置が直接的にクCCLinkラ IE F Baウsic_4cド
システムへと接続するケースも出てきている。CC-Link 協会では、 ユーザの IoT 活用を支援する CC-Link IE の新しいラインナッ
2017 年 1月に産業用 Ethernet のセキュリティに関するワーキン
CCLink IE F Basic_1c プとして、CC-Link 協会は通信に 100Mbps の汎用 Ethernet を
グを設立した。製造システムに関わるセキュリティ要件を整理し、 使うフィールドネットワーク「CC-Link IE フィールドネットワーク
セキュアなネットワークシステムの設計・運用ガイドラインおCCLinよk IE F Bびasic_1.将5c Basic」を追加することを発表した。Ethernet 機器にソフトウェ
来的に必要とされる技術についてまとめていく予定である。 アを実装するだけで CC-Link IE による機器制御や見える化が可
CCLink IE F Basic_BL1c 能になる。
IoT による生産現場の見える化を進めるためには、できる限り
CCLink IE F Basic_BL1.5c 多くの機器や装置をネットワークにつなぐことが求められる。CC-
Link IE フィールドネットワーク Basic は、低コストで CC-Link IE
対応を可能にする新しい選択肢として提供されるものだ。その大
CCLink IE F Basic 2_4c きな特長は、CC-Link IE への対応をソフトウェアの実装という簡
単な手法で可能にすること。汎用 Ethernet インタフェースを持つ
機器にはすぐに適用可能であり、上位の IT システムとの連携など
CCLink IE F Basic 2_1c CC-Link IE の機能はもちろん継承される。既にネットワーク化済
みの機器や装置を含めて生産現場全体を CC-Link IE で統合し、
CCLink IE F Basic 2_1.5c IoT 活用を進めやすい環境を整えることができる。
機器を使うユーザだけでなく、機器を開発するベンダにもその効
CCLink IE F Basic 2_BL1c 果は大きい。自社の機器を CC-Link IE に対応させるため、ソフト
ウェア実装するだけで CC-Link IE が可能になり、低コスト化も期
CCLink IE F Basic 2_BL1.5c 待できる。CC-Link IE フィールドネットワーク Basic の通信速度
は 100Mbps。1Gbps の CC-Link IE ほどの高速性はないが、稼
セキュリティーのイメージ図 働情報の収集など見える化に必要な機能に限定すれば十分な帯域
(4) 標準化対応 と言える。
CC-Link IE は国際規格 IEC61158、IEC61784 を取得済みだ 既に CC-Link 協会では、対応機器を開発する会員向けにサンプ
が、このたび中国の推奨国家標準「GB/T335.7.1~.3-2017」を取 ルコードの無償提供を行っており、開発を検討するパートナー企業
得完了し、2017 年 4 月に機械工業儀器儀表総合技術研究所(ITEI: も増えているため、対応製品が今後増加することが期待される。
Instrumentation Technology & Economy Institute)との共
同発表会を北京市釣魚台国賓館で開催した。中国をはじめとしてア
■ CC-Link IE Field Basic 詳細ページ
中国国家標準 GB/T 規格取得発表会 <https://www.cc-link.org/ja/cclink/cclinkie/cclinkie_f_b.html>
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◆◆◆ ネットワーク団体 ◆◆◆
PROFIBUS・PROFINETの魅力
NPO 法人 日本プロフィバス協会 元吉伸一
1. なぜ産業用ネットワークを使うのか ている。(図 1)
工 場 内 の 制 御 ア プ リ ケ ー シ ョン は さ ま ざ ま で あり、
最近の機器・機械は内部に CPU を持ち、自身のなかで診断、 PROFINET は TCP/IP 通信と共存しても、求められるリアルタ
測定または制御の演算を実行している。このような機器・機械間 イム通信の通信周期を提供できる。具体的には Non-Realtime,
をフィールドネットワークで接続し、デジタル通信で自由にデー Realtime(周期通信 :10msec 程度) , Isochronous Realtime
タ、アラームなどの情報をやり取りすることで、より効率的な生 ( 周期通信 :31.25 μ sec 以上) の 3 つのパフォーマンスレベル
産を達成できる。制御演算に使用する測定値、操作値がデジタ を持つ。
ルとなると、より高精度な制御が行えることは従来から証明され PROFINET のベースは Ethernet であるので、銅線、光ファ
てきた。このメリットに加えて、オートメーションシステム全体を イバーだけでなく、無線の媒体も使用できる。また、すべての
デジタル的に取り扱うことで、工場内に点在する重要機器の内 PROFINET 機器で IP アドレスを持つので、汎用のソフトを使っ
部パラメータ、診断データ、または予知診断データを中央で一括 て、保守できることも魅力となっている。
して監視・管理して、保守、設計の効率化も図ることが期待され
ている。 2.PROFINET の次のステップ
(1) FA・PA を統合サポートする PROFIBUS 2016 年 末 ま で に PROFIBUS 機 器 は 累 計 5610 万 台、
PROFIBUS(プロフィバス)は世界で最も普及しているオープ PROFINET 機 器は 累 計 1640 万台が出 荷され、全 世界で
ンなフィールドバスである。 稼 働してい る( 図 2、 図 3)。2016 年の単 独の 1 年 間で見
PROFIBUS DP は工場の現場で使うインバータ、サーボ、リ ると、PROFIBUS 機器は 240 万台が出荷されたのに対し、
モート IO、エンコーダ、遮断機、ロボット、NC 機械、重量 PROFINET 機器は 360 万台の機器が出荷された。すでに世界
計、温調計、分析計、ポンプ、油圧機器などさまざまな機器・機 のマーケットでは産業用 Ethernet である PROFINETの通信が
械が接続できる。PROFIBUS DP ラインには最大 126 台の フィールドバスである PROFIBUS より多く使用されている。
PROFIBUS 機器を接続でき、最高スピード 12Mbpsで通信で また、Ethernet は産業用だけでなく、オフィス用、家庭用、
きる。12Mbpsで通信をした場合、30 台程度の機器をつなぐと さらには車載用を含めて、広く使用され、その機能をますます
大体 2 から 5msec 程度で 1周期の通信が終了する。 進化させていることに注目いただきたい。最新の Ethernet の
また、PROFIBUS PA はプロセス産業の要求する 2 線式伝 機能進化の 1 つが汎用 Ethernet に実時間性(Deterministic
送と本質安全防爆(オプション)に対応できる。 性)を付加するための TSN(Time Sensitive Networking)
(2) 工場通信の幹線ラインとなる PROFINET 技術であり、IEEE でこの標準化が進んでいる。PROFINET
PROFINET(プロフィネット) は産業用 Ethernet である。 の TSN 対応については、2017 年 4 月にドイツ・ハノーバで開
Ethernet の広い帯図域1 をP利R用OしFてIN、EPTR+OFPIRNOETFIはBU制S御+でIO使-Lうinデkシーステム催されたハノーバメッセにて、P(I PROFIBUS & PROFINET
タとか診断の通信だけでなく、TCP/IP 通信を含む工場内のす International: プロフィバス協会本部)は次1のように説明をして
べての通信要求に 1 本のバスで汎用的に対応するよう設計され いる。
OPC
リアルタイムIO コントローラ間接続 垂直統合
Controller Controller Controller Controller Office Network
モーション制御
Wireless Firewall
I/O セキュリティSwitch
XX55
I/O CE
Proxy
DeviceNet Proxy Drives OPC HMI
Allen-Bradley
フィールドバス統合 安全
WSANゲートウェイ PROFIBUS DP
AS-interface
PROFIBUS PA
無線センサー
1
図 1 PROFINET+PROFIBUS+IO-Link システム
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