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世界的に高まる自動化ニーズ
ものづくりを応援する業界紙・オートメーション新聞の別冊「産業用ロボットナビ」Vol.2【完全版】は、産業用ロボットの最新動向をまとめたムック本です。
安川電機、ヤマハ発動機、デンソーウェーブなど、産業用ロボットメーカーのトップが語る2017年戦略や、世界一のロボット需要国・中国の国際工業博覧会ロボット展レポートなど注目記事が満載です。
<掲載内容>(一部抜粋)
○2017年、日本ロボット産業、7500億円市場へ
○レンタルを通じて新規のロボットユーザーを開拓(オリックス・レンテック)
○産業用ロボットメーカー トップが語る2017年戦略
○間違いだらけのロボット導入 〜構想設計の重要性〜(ロボコム)
など
※ダウンロードされたお客様の情報は弊社プライバシーポリシーに則り協賛企業へ共有させていただきます。あらかじめご了承下さい。
【協賛企業】THK株式会社/KUKAロボティクスジャパン株式会社/株式会社ジャパンユニックス/B&R Industrial Automation株式会社/アンフェノールジャパン株式会社/川崎重工業株式会社/株式会社デンソーウェーブ/ヤマハ発動機株式会社/ABB株式会社/オムロン株式会社/オリエンタルモーター株式会社
このカタログについて
ドキュメント名 | ロボット普及、本格化へ「産業用ロボットナビ」Vol.2【完全版】 |
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ドキュメント種別 | ホワイトペーパー |
ファイルサイズ | 8.5Mb |
登録カテゴリ | |
取り扱い企業 | アペルザ (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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別冊
Vol.2
Industrial Robots , Collaborative Robots , Industry4.0 , Smart Factory
ー世界的に高まる自動化ニーズー
ロボット普及、本格化へ
ロボット各社2017年戦略
安川電機、ABB、KUKA
セイコーエプソン、ヤマハ発動機
デンソーウェーブ
ロボット SI の重要性とビジネスチャンス
協働ロボットレンタルサービス続々登場
間違いだらけのロボット導入
「つまむ・にぎる・つかむ」を1台で THKロボットハンド
中国・上海 中国国際工業博覧会ロボット展レポート
株式会社アペルザ オートメーション新聞社
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力※
最大握
30N
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産業用ロボットナビNo.2_267x180_KUKA_Outlined_Right_2017.3.15.indd 1 2017/03/15 9:36:43
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INDEX
産業用ロボットナビ Vol.2
I N D E X
世界に広がる産業用ロボット需要の波 …………………………………………………………………………………………… 1
2017年、日本ロボット産業、7500億円市場へ …………………………………………………………………………………… 2
経産省、ロボットSI事業に最大5000万円の補助金交付へ …………………………………………………………………… 3
ロボット SI の重要性と広がるビジネスチャンス ………………………………………………………………………………… 4
協働ロボットレンタルサービス続々登場 ………………………………………………………………………………………… 5
レンタルを通じて新規のロボットユーザーを開拓
戸川英明 オリックス・レンテック株式会社 事業開発本部 副担当 兼 新規事業開発部長 ……………………… 6
産業用ロボットメーカー トップが語る 2017年戦略
小川昌寛 株式会社安川電機 執行役員 ロボット事業部長
中島秀一郎 ABB 株式会社 ロボティクス&モーション 事業本部 ロボティクス事業部長 ………………………… 7
星野泰宏 KUKAロボティクスジャパン株式会社 代表取締役社長
福島米春 セイコーエプソン株式会社 取締役 常務執行役員
ロボティクスソリューションズ事業部長 第一技術開発本部長 ……………………………………………… 8
太田裕之 ヤマハ発動機株式会社 IM 事業部長
中川弘靖 株式会社デンソーウェーブ 代表取締役社長 …………………………………………………………………… 9
間違いだらけのロボット導入 ~構想設計の重要性~
天野眞也 ロボコム株式会社 代表取締役 …………………………………………………………………………… 10
「つまむ・にぎる・つかむ」を1台で実現
小澤浩司 THK株式会社 産業機器統括本部 技術本部 事業開発統括部 …………………………………… 11〜 12
永塚ビジネスユニット 課長
産業用ロボットをデータプラットフォームに
吹野豪 リンクウィズ株式会社 代表取締役 ………………………………………………………………………… 13〜 14
IoTやインダストリー4.0対応した次世代卓上型 はんだ付けロボット
株式会社ジャパンユニックス ………………………………………………………………………………………………… 15
SIパートナー15社とチーム結成 システム提案で販売力を強化
ラース・アンダーソン 有限会社グリーネプランニング 代表 ………………………………………………………… 16
ヤマハ発動機IM事業部、製造・販売・技術一体化した新拠点 …………………………………………………………………… 17
ロボットSIの役割と、現場導入までの流れ
山下夏樹 富士ロボット株式会社 代表取締役社長 ……………………………………………………………………… 18
中国・上海 中国国際工業博覧会ロボット展レポート …………………………………………………………………… 19〜 20
表紙画像 Anna Vaczi /Shutterstock
産業用ロボットナビ Vol.2 発行所:株式会社アペルザ オートメーション新聞社 発行日:2017年3月31日 価 格:1000円+税
〒231-0023 神奈川県横浜市中区山下町23番地 日土地山下町ビル13F 電 話:045-228 -8873 FAX:045-345 -4790
メール:info@automation-news.jp オートメーション新聞WEB版 http://www.automation-news.jp/
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産業用ロボットナビ Vol.2
潮 流
世界に広がる産業用ロボット需要の波
2019年には、15年の1.5倍の年間出荷台数40万台へ
IFR(国際ロボット連盟)によると、2016年から 2019年の 4年間で、世界で新たに販売されて工場で稼働する
産業用ロボットの数は約140万台となり、2019年段階で稼働している台数は260万台と予測している。
2016年から2019年は平均で年率13%の成長を続け、2016年の年間出荷台数29万台から、2017年に32万台、
18年に36万3000台と増加し、19年には41万4000台となる見込み。ロボットへの関心の高さは日本だけでなく、
世界に広がっている。
■世界市場ではアジアが牽引役。成長著しい中国 ンドも 26%増加している。
アジアにおける産業用ロボットの導入台数は、2010 年か また、すでにヨーロッパでは自動化が進んでおり、ロボッ
ら 2015 年の5年間で 70%増の 88 万7400台に達し、 ト密度は非常に高い。世界のロボット密度平均の 69 台を上
15 年単体の年間売上高も前年比 19%増の 16 万 600 台と 回っている22カ国のうち、14 カ国が EU 内に位置している。
なった。 最も進んでいるのがドイツで、日本に次ぐ世界 4 位の 301
国別では、全売上高の 43%を中国が占め、24%が韓国、 台となっている。
日本は3番目となる 22%。世界的にも中国が成長をけん引 トランプ大統領の誕生で注目が集まるアメリカ。世界では
し、19 年までには世界供給の 40%が中国になると見込まれ 4番目に大きな市場を持つ。アメリカとカナダ、メキシコの
ている。 北中米地域でもロボット需要は旺盛で、17%増の 3 万 6000
台が新規に導入された。
■需要拡大に備えるロボットメーカー各社
小型軽量の協働ロボットにも注目
2017 年から 19 年にかけて 13%の継続的な成長が予測さ
れており、ロボットメーカー各社は生産能力の向上に努めて
いる。
ファナックは、2016 年6月に茨城県筑西市に 55 億円超
で新たに土地を取得。生産能力倍増のための新工場の建設と
見られている。また9月にはアメリカ・デトロイトに新工場
2005 年〜 2019 年出荷台数推移 を稼働させている。安川電機も、中国のロボット需要拡大を
受け、埼玉県に 30 億円をかけてサーボモータの新工場を建
産業別では、アジアの成長は電気・電子業界が引っ張り、 設。また中国・瀋陽にある生産子会社にも新工場を建て、生
15年の導入台数は同41%増の5万6200台に拡大。同4% 産能力の拡充を図る。さらに、ヨーロッパの需要に対してス
増の5万4500台の自動車業界向けを上回った。 ロベニアのリブニツァ市に生産子会社を設けている。
工場内のロボット密度に関してトップは韓国。1万人あた また技術については、これまでロボットが使われて来なかっ
り 531 台が稼働している。2位はシンガポールで 398 台。 た分野に対し、人と機械が協調し、設置やティーチング、操
日本は 305 台で世界3位と世界のロボット密度平均の 69 台 作などが簡素化され、可搬重量も本体も小型で軽い協働ロ
を大きく上回っている。一方、中国は 36 台と低迷しており、 ボットが中心になると見込まれている。さらに、双腕ロボッ
これに対し中国政府は5年間で 150 台まで増やし、世界トッ ト、移動可能なロボットなどラインナップが増え、さらに導
プ 10 入りすることを目標に掲げている。これを実現するた 入のハードルとなる価格に関しても低価格化したモジュラー
めには中国全土に 60 万台〜 60 万台が必要と言われ、中国 ロボットなどにも関心が寄せられている。
のロボット需要は引き続き旺盛なまま。
■ヨーロッパでは自動化の勢いが顕著な東ヨーロッパ
アメリカも堅調
ヨーロッパで需要が拡大しているのが東ヨーロッパ諸国。
2015 年の売上増加率は 25%と大きく伸び、2016 年も
29%を維持すると見込まれている。成長率も平均で 14%と
安定している。その牽引役となっているのがチェコとポーラ
ンド。チェコは新規ロボットの設置台数が 40%伸び、ポーラ
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産業用ロボットナビ Vol.2
潮 流
2017年、日本ロボット産業、7500億円市場へ
自動車、電子機械以外の3品(食品、医薬品、化粧品)も拡大
日本ロボット産業には追い風が吹いている。海外での需要活発化に加え、国内でもこれまでロボットを使ったこと
がない業界からの関心が高まっており、内需外需ともに未来は明るい。2017年、日本ロボット工業会は7500億円
市場を目指すとしている。
■ 2016 年の生産台数 15 万 2702 台 前年の 10%増 ■ 2017 年見通し 7500 億円 国内外に好材料
日本ロボット工業会がまとめた 2016 年 1 月から 12 月ま ロボット工業会はこうした 2016 年について「昨年は円高
での生産・出荷統計によると、生産台数は 15 万 2702 台で、 基調で進んだこともあり、需要の約7割を占める輸出の環境
前年の 10.3%増となった。国内・輸出共に好調で、それぞれ としては厳しい状況だった。好調な国内出荷の伸びにも支え
3 万 5815 台(10.3%増)、11 万 6755 台(9.2%増)。 られ、2016 年は対前年比3%増の7000億円超えを見込
用途別に見ると、溶接ロボットは国内では3割増の 8494 んでいる」とし、2017 年の見通しは「引き続き国内での需
台と大きく伸びたが、輸出が 9.1%減の 3 万 1810 台と伸び 要増に加え、米国での更なる景気拡大と製造業回帰による堅
悩み、全体でも 2.7%減の 4 万 304 台だった。組立ロボッ 調な伸び、中国での高い自動化投資意欲、さらに欧州でのイ
トは輸出向けが 20.7%増の 1 万 8782 台と大きく拡大。全 ンダストリー 4.0 を通じた産業用ロボットへの関心の高まり
体でも 12. 8%増となっている。マテハンロボットは、全体 などから海外需要の拡大も期待されている。このようなこと
で 36.7%増の 3 万 4362 台と順調。国内・輸出向けともに から今年のロボット生産額については、対前年比7%増の7,
前年を上回った。 500億円を目標としたい」としている。
■自動車、電子機械が中心だが、3品産業が急増
国内の業界別の導入状況は、自動車向けが前年の 1.5 倍と
なる 5661 台の出荷。自動車部品も 12%増の 7836 台となっ
た。自動車業界における生産性向上の活動のなかで、ロボッ
トを使った自動化の進展を示している。電気機械は前年から
4.8%減の 9823 台。
日本では、これら自動車と電子機械業界が合計で 64%を
占め、圧倒的な需要を創出しているが、その他の業界でも関
心が高まっている。特に、労働集約型の工程で、柵のいらな
い協働ロボットと親和性が高いといわれる3品(食品、医薬品、
化粧品)、その他の業界では顕著な伸びを示している。
食品業界向けは前年の 32.4%増の 683 台、医薬品や化粧
品など化学工業向けも 48.5%増の 404 台が出荷された。ま
た非製造業分野へも 40%増の 210 台が出荷され、これまで
ロボットが使われていなかった業界でも着実に普及している。
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産業用ロボットナビ Vol.2
潮 流
経産省、ロボットSI事業に最大5000万円の補助金交付へ
全国から応募多数でボトルネック解消に前進
少子高齢化対策、生産性向上に向けて、中小企業等で急速に関心が高まっている産業用ロボットだが、その一方
で、現場へのロボット導入を担う「ロボットSI(システムインテグレータ)」の不足が深刻化している。経済産業
省と日本ロボット工業会は2月24日、「ロボット導入促進のためのロボットシステムインテグレータ事業」について、
最大5000万円の補助金交付を決定。全国の公募説明会が満席で追加日程が出るなど、関心の高さがうかがえる。
■ロボット SI 不足解消へ初の支援 「ロボットセンター開設型」は、展示や実演など導入提案や、
産業用ロボットは、それ自体は機能を持たず、用途や現場 操作・安全教育や普及・啓発などの場を設ける計画に対して
に合わせてハンドやビジョンといった周辺機器を取り付け、 最大5000万円を支援する。汎用ロボットを3台以上取得
動き方のティーチング、安全対策を施さなければならない。 し、かつ2社以上のロボットメーカーを選定する計画を条件
そこには専門的な知識と技術が必要で、最適なロボットシス とする。
テムの構想から設計、導入までを担うロボットSIと呼ばれ 「ロボットシステムのモデル構築型」は、モデル構築をし
る企業の役割が重要となるが、実際にはその数は少なく、普 て他の現場にも展開するツールをつくる計画に対して最大
及拡大に向けたボトルネックとなっている。 3000万円を補助する。補助率は、中小企業は計画の3分
今回の補助金事業の助成対象は、ロボットSIを始める、 の2以内、大企業は2分の1以内とされている。
またはすでに行っている民間企業、民間企業等が協業してロ 申し込みは 3 月 31 日で締め切っており、5 月中に審査・
ボットSIを行おうとする連携体、ロボットSIと協業して 交付を決定。2018 年 10 月までに事業を完了し、結果報告・
導入提案を行う民間企業、地域でロボット導入提案を行う公 実績報告を行うスケジュールとなっている。
設試験研究機関や地方公共団体などとなる。これまでにも企 ■全国 9 カ所で行われた公募説明会。満席で追加日程も
業への導入やロボット技術開発の支援はあったが、ロボット
SI への支援は今回が初めてとなる。 2月 24 日の公募開始に合わせ、全国9カ所で説明会が開
催された。関東会場と中部会場はすぐに満員となる盛況ぶり。
■ロボット SI への事業参入・拡大、ロボット展示場、モデル 日本ロボット工業会によると「全国で 840 以上の参加申し込
構築の3パターン対象 みがあった」という。参加者は、すでにロボットを取り扱っ
形式は3パターン。「ロボットSI事業参入・拡大型」は、 ているロボット SI をはじめ、ハンドやビジョン、安全装置な
ロボットSIを新たに行う、または事業拡大を目指す計画に どロボットの周辺機器メーカーやその商社、エンジニアリン
対して最大1500万円を補助する。垂直多関節ロボットや グ会社など、工場や生産ラインに近い場所で仕事をしている
スカラロボット、双腕ロボット、直交型ロボット、パラレル 企業から、各地の工業試験所や自治体でロボット振興を行う
リンクロボットなど汎用ロボットと周辺装置等を購入、設計 部門、IT 系企業など、従来の枠に捉われない分野にも広がっ
又は開発する計画を対象とする。 ている。
経産省ロボット SI 補助金公募
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産業用ロボットナビ Vol.2
寄 稿
ロボット SI の重要性と広がるビジネスチャンス
ト SIer)と呼ばれる企業が、ロボットの活用法を考え、シス
テムを構築して納入するという最も大切な役割を担っていま
す。したがって、今後のロボット活用の裾野を広げていくには、
ロボット SIer の存在がますます重要になってくるのです。
小林寛
経済産業省 国内産業の担い手としての可能性を秘めるロボット SIer
製造産業局 産業機械課 ロボット政策室
技術一係長 ロボットシステムを構築する「システムインテグレーショ
ン」(ロボット SI)は、「モノ」単体を製造する行為ではなく、
人手が足りない状況が続き、 さまざまな機械設備を組み合わせ、最適な自動化システムを
労働力の確保に頭を抱える日本 提供する「ソリューションビジネス」です。ユーザーの現場
に相対して課題を分析し、ロボットシステムを構築した後も
日本では今後、働き手がますます高齢化していく一方で、彼 調整やメンテナンスが必要になります。これは、現場との幾
らが引退しても同じだけの若者が存在しなくなり、労働力の確 度もの「擦り合わせ」が重要な要素であり、現場に行かない
保がより一層難しくなると予想されています。 とできない作業です。ここに、ロボット SI ビジネスの可能性
現に企業の人手不足は深刻な状況にあり、中小企業の「従 が存在しています。
業員過不足DI」(今期の従業員数の水準について「過剰」と グローバル化に伴い、我が国の市場構造もかつてと比べて
答えた企業の割合(%)から「不足」と答えた企業の割合(%) 大きく変容してきています。特に新興国における安い人件費
を引いた数値)は、2011 年には全産業平均がマイナス、すな を武器にした価格競争力は、日本のものづくりにおいても一
わち不足に転じ、2016 年には -10 ポイントより低い値で推移 つの脅威になっています。しかし、我が国におけるロボット
するなど、一貫して人手不足感を強めている状況にあります。 SI ビジネスという点においては、必ずしもこのような一般論
つまり、人を雇おうと思っても採用することは容易ではなく、 が当てはまりません。なぜなら、ロボット SI はモノを輸出す
その状況はこの先更に深刻になっていくと言えるでしょう。 るというものではなく、現場ごとに調整が必要なソリューショ
人の働き方の将来とロボット活用の可能性 ンビジネスだからです。
人件費の安い国から技術者を現場に一度派遣すれば良いと
特に人手不足を訴える現場の中には、延々と続く単純作業や、 いう類のものではなく、前述のとおり幾度もの擦り合わせが
肉体的にも精神的にも過酷な労働環境を伴うものも少なくあり 必要になってきます。海外からの移動や滞在にかかるコスト
ません。こういった現場は企業の運営上は必要な場合が多いで は人件費の優位性を帳消しにするばかりか、それ以上に費用
すが、人にとっては過酷なため長続きせず辞めてしまう、しか 負担を発生させます。だから海外企業の参入障壁がとても高
し新しく人を雇うこともできず、そのため企業運営に支障をき く、国内企業に大きな競争優位が存在する、将来性のあるビ
たし…というスパイラルに陥ってしまうことが、我が国にとっ ジネス形態であり、その担い手となるロボット SIer には大き
て今もっとも憂慮すべき課題です。 な可能性が秘められていると言えるでしょう。
そこで、人手がより限られてくる今後においては、これまで
人手で行ってきた単調・過酷な作業には、集中力が切れず疲れ ロボット SIer の眼前に広がるビジネスチャンス
を知らないロボットに担ってもらい、貴重な人材には、人にし 経済産業省では「ロボット導入実証事業」という事業を通
かできない、より付加価値の高い仕事で活躍してもらう、そう して、これまでロボットの導入が進んでこなかった領域を開
いった考え方の転換が必要ではないでしょうか。 拓する取組を実施しています。例えば、伝統的工芸品産業は
すなわち、人の絶対数が減少していくこの国の将来は、一人 ロボット未活用領域の代表的な例でしたが、本事業では、岩
ひとりがどのような働き方をしていくかに懸かっており、そこ 手県「南部鉄器」の鉄急須内面の錆止め(琺瑯:ホーロー)
にロボットの活用という可能性が存在しているのです。 工程にロボットを導入したり、石川県「山中漆器」の塗装作
ロボットシステムの構築におけるロボット SIer の重要性 業をロボット化したりと、職人による作業と分業する形でロ
ボットを導入し、人と協調して生産性を向上させていく事例
では、ウチの工場にもロボットを入れてみようかと思っても、 を創出しています。これらはあくまで事例の一つであり、ロ
これまでロボットに触れて来なかった企業が独力で導入を行う ボット導入に向けたフロンティアはまだまだ広大ですが、そ
のは大変困難です。なぜなら、ロボットは本体を買っただけで れだけロボット SIer にとってビジネスチャンスが存在してい
は動かず、ハンドやカメラといった周辺機器、動き方のティー ると言えます。
チング、前後の工程との連携なども含め、全体の自動化システ この他にも経済産業省ではロボットの普及促進に向けた
ムとして構築する必要があり、ロボットや自動化に関する幅広 施策を各種実施しています。日本を「世界一のロボット利活
い技術や能力が要求されるからです。 用社会」にするという目標の実現に向けて、今後もロボット
そのため、ロボットを使用した機械システムの導入提案や設 SIer にとってビジネスがしやすい環境の整備に取り組んでま
計、構築などを行う「ロボットシステムインテグレータ」(ロボッ いります。
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産業用ロボットナビ Vol.2
潮 流
協働ロボットレンタルサービス続々登場
1カ月〜短期貸出、ティーチング付きなど、普及の追い風に
中堅・中小企業やこれまでロボット未導入の企業において、現場における人手不足と生産効率化に向けたロボット
導入への意欲が高まっている。しかし、どの作業でどう使うのが効果的なのか、投資に対する費用対効果、導入後の
運用やトラブル対応など課題は山積み。そんななか、製造業向けに計測器や情報通信機器のレンタル事業を行ってい
るリース会社やロボットSI(システムインテグレータ)がロボットのレンタルサービスを開始し、導入のハードル、
課題解決に一役買っている。
オリックスレンテックは、2016 年から「RoboRen(ロボ ングができる点を評価している。繁忙期の生産ピークに合わ
レン)」でロボットレンタルサービスを開始。ABB の双腕ロ せた「人材派遣に代わるロボット派遣」、短期間お試しからの
ボット「YuMi」を皮切りに取り扱いロボットを増やし、現在 買取などを売りとしている。
では安川電機、ファナック、ユニバーサルロボット、ライフ 一方、ロボットシステムインテグレーター、ロボットを取
ロボティクスなど各社の協働ロボットを中心に、11 機種まで り扱っているエンジニアリング会社も独自にレンタルサービ
拡大している。またユニバーサルロボットのUR3を6カ月 スを展開。IDECファクトリーソリューションは、1台1
66 万円(月額 11 万円〜、ハンド別)など、一部機種でティー カ月からレンタルできるサービスを行っている。将来を見越
チング付きの6カ月レンタルパックもスタートした。 したテスト導入や短納期生産などに対応。ハンドやカメラ、
可動台車を組み合わせたプランや、強みである技術力を生か
2017 年 2 月には、東京都町田市に取り扱いロボットを展 したサポートなどで差別化を図っている。
示した体験型のショールーム「Tokyo Robot Lab.」をオー
プン。連日、見学予約が殺到しているという。 2016 年9月には、愛知県一宮市に「協調安全ロボットテ
クニカルセンター」を開設。同テクニカルセンターでは、ロ
三井住友ファイナンス&リースグループのSMFLレンタ ボット導入を検討しているユーザーに活用方法や安全なシス
ルも、2016 年1月から協働ロボットのレンタルサービスを テム構築方策を提案し、ニーズに合った協調安全ロボットシ
開始。ファナック製ロボットの貸し出しを行っている。すで ステムを提供できる体制を構築している。ユニバーサルロボッ
に同社は、2015 年 10 月からアシストリンクのアシストスー ト(デンマーク)、ファナックの協働ロボット、三菱電機の産
ツ「AWN-03」のレンタルを開始しており、製造現場に向け 業用ロボットを使用した安全柵なしのシステムを設置し、順
た効率化や作業負荷の低減に対するサービス展開を行ってい 次用途に合わせてシステムデモを設置している、。
る。 ロボットシステムを見られる展示ルーム、各社の協働ロボッ
トの比較や、使い方、トレーニング、安全セミナーなどを開
伊藤忠商事やみずほ銀行を主要株主とする東京センチュ 催しているレクチャールーム、さらには材料を持参して協働
リーリースも川崎重工と共同で、16 年4月から双腕スカラロ ロボットが実際に使えるか試せるレンタルラボなども併設し
ボット「duAro(デュアロ)」のレンタルサービスを開始。 ている。
キャスター付きで設置や移動が簡単で、ダイレクトティーチ
ショールーム「Tokyo Robot Lab.」 双腕スカラロボット「duAro(デュアロ)」
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産業用ロボットナビ Vol.2
インタビュー
レンタルを通じて新規のロボットユーザーを開拓
5年間150億円の投資でレンタル可能ロボットを3000台へ
戸川英明
オリックス・レンテック株式会社
事業開発部長
計測機器レンタルで日本のものづくりを支えてきたオリックス・レンテック。2016年にロボッ
トのレンタルサービスを開始し、いまロボット業界で注目を集めている企業の一つ。ロボットを
試したい、検討したいという企業にとって、短期間・低コストのレンタルは大きな魅力。その狙
いと今後について、事業開発部長の戸川英明氏に話を聞きました。
■これだけ複数メーカーのロボットが並んでいると壮観です。 なんていう話も来ています。
ここまでできた理由は? ■ RoboRen を始めてからどのような引き合いが多いのですか?
ロボットレンタルサービス 「RoboRen」 を立ち上げ、 サービス開始以来、200 件以上の引き合いがあり、想像以
「Tokyo Robot Lab.」 を開設できたのはロボットメーカー 上のニーズの多さに驚いています。医薬品 食品 化粧品のい
の協力と支援があったからこそだと思います。まずはそこに わゆる三品業界が多く、さらにエンタテイメント業界や流通
感謝しています。 業界などからも相談を受けています。人手で行っている作業
これから当社が広げていこうとする領域と、これまでロ の置き換えに加え、工程に新しくロボットを追加しようとい
ボットメーカーが主としていた領域が異なるところがポイン う話もあります。
トです。当社は計測機器のレンタル事業ですでに大手企業 例えば、外食サービスからの引き合いは多いです。外食産
の R&D 部門を中心に 3 万もの取引口座を持っています。そ 業の裏側では、調味料や食材を運ぶ作業など人手で行ってい
のなかにはまだロボットを使ったことのない企業が多く、ま る作業が数多くあります。また演出のためにロボットを入れ、
さにこれからロボットメーカーが売り込んでいきたい領域で 集客目的で調理させたいなんて話もあったりします。
す。だから商流がかぶらず、お互いにメリットがある協力体
制を築くことができました。 ■今後について教えてください
■ RoboRen の狙いとは? 5 年後までに 150 億円の投資を予定し、ロボットを
3000 台まで増やそうとしています。3月末には保有台数が
産業用ロボットとは異なる、いわゆる協働ロボットやサー 100 台に達する見込みで、これから事業を加速していきます。
ビスロボット、コミュニケーションロボットなどの次世代ロ 中小企業にもロボット活用を広げ、非ロボットユーザーに
ボットのレンタルを通じ、ロボットレンタルのトップラン 貢献したいと思っています。大手企業と中小企業は課題もス
ナーを目指しています。 キルも違うので、それを解決できるサポート体制が必要とな
ロボットの導入を検討したくても、購入するには多額の必 ります。そのためにも SI 業務の強化は欠かせず、そこに力
要でハードルが高い。それを当社はレンタルで安く提供して、 を注いでいきます。
お客様には「とにかく色々と試して使い倒してください」と これまでロボットの導入は、SI がロボットを入れる提案を
話しています。そこでロボットの利便性や可能性を感じ、技 してユーザーがそれを判断していました。しかし今は、エン
術を学んでもらえれば良いと思っています。 ドユーザーの関心が高く、ユーザー主導型にシフトしていま
■取り扱っているロボットとラボについて す。ユーザーがロボットを見て、触って、動かして判断し、
いま取り扱っているのは、9 メーカーの 11 機種です。こ それをSIが技術で支える。そんな構図に変わりつつあります。
れからも増やす予定です。 現在は、初期ティーチングと安全講習、6 か月のサポートを
協働ロボットは 3 〜 5kg 可搬が中心で、例えば、ユニバー 提供し、ロボットを最低限動かせるところまでのサポートをし
サルロボットの UR3、UR5 は人気で、いつも在庫がない状 ています。今後、案件の増加と高度な要求が増えてくることを
態です。ABB の双腕ロボット YuMi は、レンタルしたお客 見据え、SI の拡充をしていく予定です。技術者の採用や SI パー
様の 8 割が延長を希望します。ロボットの品質がいいから、 トナーの開拓、M&A などを選択肢として考えています。
お客様も気に入ってくれてレンタルから戻ってきません。
Tokyo Robot Lab. は開設以来とても人気で、見学予約が
殺到しています。複数のメーカーのロボットを見て、触れる
場所は国内でもここしかないのではないでしょうか。あるロ
ボットを見たいといって来たお客様が、隣にある別メーカー
のロボットを見て、触った結果、そちらが気に入ってしまっ
たなんてこともよくあります。ロボットメーカーからは、プ
ロトタイプを置いて、商品化前のユーザーの反応を知りたい
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産業用ロボットナビ Vol.2
インタビュー
産業用ロボットメーカー トップが語る 2017年戦略
安川電機 ABB 株式会社中島秀一郎
小川昌寛 ロボティクス&モーション事業本部
執行役員 ロボット事業部長 ロボティクス事業部長
「ユーザの近くでニーズ把握」 「IoTSP で新サービス」
2016年度のロボット事業は、市場が一進一退 2016年はロボットによる自動化への投資意欲
の中で、ロボット需要が様々な産業で増加しており、 は引き続き強く、国内も総じて好調な一年だった。
台数ベースで約 10%増加する見込みである。しかし、 特に協働型双腕ロボット、YuMiが好調で、従
為替のマイナス影響を大きく受けて、16 年3月期の 来のロボットユーザ以外からも需要が開拓できてい
ロボットセグメントの売上高は1395億円(前年 る。「YuMi Day」というトレーニングを行い、
比9. 5%減)、営業利益110億円(同 28. 5%減) さまざまな産業からのべ200人以上の方に参加い
の減収減益を予想している。 ただいた。ここで導入のイメージを掴み、成約に至っ
国内、及び欧州の自動車産業が旺盛な設備投資に たケースも多かった。また4月からは、オリックス・
より需要が好調で、中国についても自動車、一般向 レンテックによるYuMiのレンタルがスタート。
けが共に好調に推移している。欧州は市場全体が堅 実際に投資するかどうか、実ラインに導入可能かを
調で、米国も市況は悪くないものの、市場の成長性 試すことが可能になり、反響は大変良い。
の観点で物足りない印象があるが、大統領選挙後の 17 年も人材確保の難しさの観点から、引き続き市
設備投資再開の気配に注視している。中国は 15 年 場は堅調と見ている。ロボット需要の大きな部分を
後半から 16 年の第1Qまでは需要が低迷したが、 占める自動車関連に注力し、非自動車関連でも食品、
その後回復した。 飲料分野、特に人手不足による単純作業の置き換え
17 年も良い状況が続くと思う。自動車市場を中心 需要を背景とした投資が堅調に推移するだろう。
に引き続き堅調が見込まれ、スマホ関連も 17 年以 ABBでは、IoTで繋がった世界と、サービス、
降の次期新製品向けの設備投資需要の立ち上がりが 人のノウハウを一体として捉え、お客さまへのベネ
期待できる。特に、自動車産業と中国の3C(コン フィットを最大化するという「IoTSP」を定義
ピュータ、家電、通信機器)産業におけるさらなる している。ロボットもIoTSPによる新しいサー
自動化推進に期待している。 ビスの手法を提案し、16 年9月には、これまで培っ
さらに今後、人共存ロボットの果たす役割が大き たリモート診断の知見をフルに活用するサービス「C
くなるとみており、注力していく。 onnected Service」を上市した。
18 年9月から、スロベニアでのロボット生産開 コンディション監視・診断、バックアップデータ管理、
始を予定している。エンドユーザーにより近いとこ リモート・アクセス、フリート・アセスメント、ロボッ
ろで、ニーズを的確につかみ、その市場に最適なソ ト運用最適化を通じ、障害発生を最大 25%減少、障
リューションを提供していく。また、生産拠点だけ 害解決時間を最大 60%短縮できる。
でなく、国内・米国・欧州・中国の世界4極に開発 今年も営業、サービスによるお客様への訪問を通
拠点も整備していく方針である。 して地道に客先の生産活動の支援を行っていく。さ
ⅠoTやインダストリー4. 0といったキーワード らに、YuMi Day等を通じてロボットの活用
により、グローバルの製造業で革新が起ころうとし 方法をエンドユーザ、システムインテグレータに紹
ている。この流れの中で、日本が果たす役割は大きく、 介して、幅広く産業界の生産効率を改善していく活
当社にとっても追い風になっており、先行きは明る 動に貢献していきたい。
いだろう。
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産業用ロボットナビ Vol.2
インタビュー
産業用ロボットメーカー トップが語る 2017年戦略
KUKA セイコーエプソン福島米春
ロボティクスジャパン 取締役 常務執行役員
星野泰宏 ロボティクスソリューションズ事業部長
代表取締役社長 第一技術開発本部長
「I4. 0ソリューションを強化」 「ロボットのスマート化加速」
2015 年は協調型ロボット「LBR iiwa」が ロボット事業は 1983 年に精密組立用ロボット開
順調で、数字が大きく伸びた。16 年はその2倍、3 発からスタート、2011 年からはスカラロボット領域
倍の伸びを期待したが、他社からも同様のロボット で5年連続世界シェアNo1(富士経済調べ)となり、
が出てきたことにより、ほぼ横ばいとなった。ユー 高い評価を得ている。
ザーからの評価試験やテスト件数は増えたが、受注 16 年は、中国市場でのスマホ関連用途の落ち込み
までの期間が長くなってしまった。 があったものの、全体としては堅調に推移。中国や新
LBR iiwaは全軸にトルクセンサを搭載し、 興国での人件費高騰による省力化や、製造業の品質
繊細な動きに対応している。パートナーとして人と 向上への要求の高まりなど、市場ニーズは高い。特に、
意思疎通を図り、 16 年6月発売の折りたたみ式新型アーム構造搭載の
本当の意味での人との協調を実現するインテリジェ 産業用小型6軸ロボット「Nシリーズ」は、設置面
ントで先進的なロボットだ。例えば作業指示を出す 積で当社従来製品比 40%の削減を図り、人が作業す
時は、ロボットに軽くタッチするだけで良い。他社 るのと同等スペースに設置でき、スペース効率の点
製品のようにタッチパネルなど外部コントローラが で市場の評価が高い。また「力覚センサー」は、類
いらない。触れる場所、触れ方によって指示を変え 似製品と比べ、高精度、高分解能、高剛性が評判で、
ることができる。人と同じような直感的なコミュニ 両者ともに引き合いも多く、17 年の販売を牽引する
ケーションができ、応用の可能性は広がっている。 だろう。
日本企業には、2020年の完成を目指して次世代 昨年3月に、25 年に向けた新長期ビジョン「Ep
ものづくりに取り組む企業が多い。そうした意欲的 son 25」と 16 年度を初年度とした 「Epson
な企業に向けて、具体的なアプリケーション提案を 25 第1期中期経営計画」 を策定した。
増やしていきたい。 この中で、ロボティクス領域(ロボティクスイノ
17 年はインダストリー4. 0に則ったソリュー ベーション)は、『「省 ・ 小 ・ 精の技術」に加え、セン
ション提案を強化する。当社グループのKUKAシ シングとスマート化を融合させたコア技術を製造領
ステムズとKUKAインダストリーズ、物流搬送機 域で磨き上げる』と定めている。具体的には、保有
器のSwisslogと合わせて「One KUK する技術基盤(アクチュエーター、光制御、センサー
A」で高度な生産ラインやインフラの提案を行って 技術)に、要素技術を融合させ、垂直統合型ビジネ
いく。また他国の企業との技術提携により、独自の スモデルで高精度・高速・小型ロボットを実現する。
IoTプラットフォームを開発した。ロボットを使っ さらに運動制御や画像認識などに機械学習の適用を
た生産ラインをクラウドで集中管理し、将来的なイ 進め、ロボットのスマート化を加速していく。
ンダストリー4. 0の生産ラインのモデルとして提案 これに基づき、17 年は強みである小型・軽量・ス
していく。また新製品として自律移動台車とLBR リムで正確な動作が活かせる「電気・電子機器」「自
iiwaが一体になったKMR iiwaや、そのク 動車(電装部品)」「医療」を中心に、新たな領域に
リーンルーム対応仕様を出す予定だ。 新商品を投入し、販売・サービス網も強化する。さら
に、「見て」「感じて」「考えて、働く」をコンセプト
とした「自律型双腕ロボット」の商品化も進める。
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産業用ロボットナビ Vol.2
インタビュー
産業用ロボットメーカー トップが語る 2017年戦略
ヤマハ発動機 デンソーウェーブ
太田裕之 中川弘靖
IM 事業部長 代表取締役社長
「総合力で自動化を提案」 「顧客視点で考え行動」
2016年はロボット事業が堅調に成長した。特 2016年は国内外ともに業績は順調に推移した。
に「中国製造2025」を背景に中国での自動化ニー 自動認識分野ではPOSシステムなど向けに既存製
ズが高かった。製品別では全体が伸びている中で、 品が堅調だった。パスポートスキャナは訪日外国人
特にスカラー型ロボットが貢献した。リニアコンベア の増加に伴い、空港などでの入出国管理のみならず
モジュールの新提案も受け入れられたと感じている。 免税店などでの導入が進んでいる。特にOCR(文
12月には複数のロボット製品を統合制御できる 字認識)機能により、従来は手書きでパスポート番
自動化システム「Advanced Robotic 号を書き込んでいた作業を自動化できる点を評価い
s Automation Platform」を発表、 ただいた。工場分野でもQRコードを開発した当社
1台のコントローラで単軸ロボットから多関節ロボッ 技術を活用しながら、RFID技術と組み合わせ、
ト、リニアコンベアモジュールまで全て簡単に協調さ 在庫管理や工場間物流などで用途開発が進んでいる。
せることができる。また、個々の製品もリニューアル 先進技術は社内ユースからはじめ、順次顧客提案を
を行っている。精度 ・ 速度といった性能面はもちろん、 進めていきたい。
バリエーションの充実とともに現場でメリットが出る 産業用ロボットにおいては、今後の成長に向けて
工夫をしており、製造、流通、組立、メンテナンス、 の種まきができた。今年は基本性能を徹底追及した
各状況・各関連担当者にとってメリットがある。統合 高速スカラロボット「HSRシリーズ」を中心とし
制御のコンセプトは拡張性も高いためすでに高い評 た製造現場の生産性向上に関する提案と、卓上型の
価をいただき、今年は売上に貢献するものと期待し 協働ロボット「COBOTTA(コボッタ)」に象徴さ
ている。 れる人と協働し、寄り添う安全・安心なロボットの
17 年1月には浜松市内に産業用ロボット、表面実 提案を一層強化していく。これらを通じ、市場ニー
装機などを製造する新工場を竣工する。製造力向上 ズにしっかり応えていきたい。産業用ロボットはシ
と同時に拠点で分散していた事業部が一体となるこ ステムアップが不可欠なため、パートナーと共に現
とで、製販技が一体となり、機動性も向上する。見 場に入り込んで、自動車業界で培ったノウハウを基
せられる工場として、実装機を含め最新技術を投入 にこれら提案型ビジネスを強化し、収穫の年にして
していく。表面実装機事業に関しても、15 年に統合 いく。
した旧日立ハイテクグループの実装機事業と融合が また、将棋コンピュータソフトの指し手を成駒ま
進み、高速領域を含めたラインアップが充実してき で再現する「新電王手さん」、AI で東京大学合格を
た、継続して拡販を進めていく。 目指す「東ロボくん」で活用された「東ロボ手くん」
当社は単軸ロボットから多関節ロボットまで幅広 などでも当社の先進性を示し、安全柵に入っている
いラインアップをそろえている。その強みを活かし、 のではなく、人と一緒に行動することを通じ、ロボッ
装置全体を俯瞰して営業が提案できていると感じ トを身近に感じでいただけたと考えている。社員一
ている。今後も製品力、提案力を活かし総合的なソ 人一人が常にお客様視点で考え行動することを心が
リューション提案を徹底し、顧客の要求に応えてい け、社会全体に貢献していく企業を目指していく。
きたい。
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産業用ロボットナビ Vol.2
寄 稿
間違いだらけのロボット導入 〜構想設計の重要性〜
天野眞也
ロボコム株式会社 代表取締役
ロボットをめぐる環境が劇的な変化を 日本の大手メーカーは優秀な製品を開発し、サービス体制も
見せています。ロボット導入に際して 素晴らしいものを持っています。しかし、視点を広げると、
の課題とリスクを最小限にするポイン 大手メーカーだけではなく、中小含めた多くのメーカーが
トについて解説します。 様々な特長を持った製品を日々世の中に送り出しています。
これら大小メーカーの製品を組み合わせで顧客の現状に即し
た最適なロボットや機器を、フラットかつ広い視点で選定し
導入できるエンジニアリング企業が求められています。
難しい投資判断 また、取り扱い機器の隔たりだけではなく、得意分野の隔
たりも存在します。日本にはビジネスコンサルティング企業
製造現場では生産品目の早期立ち上げと早期切り替え、製 (ロボット導入戦略立案に強い)、機器メーカー(自社の取り
品寿命の短縮、少量多品種化などが日増しに進展し、ロボッ 扱う機器に強い)、商社(工場側アカウントを多く持つ)、IT
トを含む設備資産(=アセット)を抱えるリスクが高まって 系 SIer( アプリケーションソフトの開発経験豊富)等、各領
います。投資判断を迫られる経営者は、この様な外部環境の 域に強みをもつ企業が製造業を支えています。そして、それ
変化に起因し、成長投資とリスク低減の両立が以前にも増し ぞれの分野でユーザーの設備投資案件に対して提案、受注、
て求められています。また、少子高齢化に伴い、現場を担う 立ち上げをすることで顧客ニーズに応えていますが、全体を
若年従事者も減少の一途を辿っています。熟練技術者が退職 コーディネートできる企業は多くはありません。
するばかりか、技術者及び現場作業者の絶対数が不足してお
り、製造業ではさらなる生産性向上が必須となっています。
また、グローバルボリュームゾーンに対する製品企画、工
程設計、販売拡大 ( 特に高級市場 ) の重要度も増しているため、
国内市場だけではなく海外市場もしっかり見据えた戦略が必
要になります。
外部環境だけではなく内部環境の変化もあります。先ほど
触れたアセットを抱えるリスクの高まりから、現場の生産性
向上を目的とした全体の工程設計、設備投資判断が非常に難
しくなっています。たとえ投資判断を下しても、「予算」「性
能」「スケジュール」を満たした設備を予定通りに導入できる
ことは極めて稀です。理由はシンプルで、ラインの流れ、業
務を踏まえた設備やロボットの全体像を適切に描く構想設計
が難しく、それらができる人材が不足しているためです。また、
全体の構想設計を工程や設備に落とし込み、要件分析できる
人材も不足しているため、当初の設備計画では性能を満たさ
ず、予算オーバーが発生しています。逆に予算が決まってい
るため、できあがった設備に不満を抱えたまま稼働が始まる SirChopin/Shutterstock
ということも相当数発生しています。
最高のエンジニアリングを目指す
最適な全体構想設計がなかなかできない
理想的なエンジニアリング企業を目指す当社は「エンジニ
全体構想設計の難しさとして、設備導入側の工場が工程あ アファーストによる 最新のものづくり 最高のエンジニア
るいは設備ごとに担当が分かれていて、担当以外の設備が分 リグ」を目指しており、構想設計ができる日本でも数少ない
からないということが挙げられます。 会社です。具体的にコアとなる領域は、生産戦略立案、顧客
また、エンジニアリング会社側の課題もあります。ロボッ 業務を理解したきめ細やかな業務設計から始まり、全体最適
トをはじめ「特定機器メーカーへの依存度」が高いエンジニ を考慮したロボットの構想・設計になります。 これらを実現
アリング会社が多いため、メーカーを跨った機器、ロボット するために、「エンジニアファースト」を掲げ、人材教育や
をマルチに取り扱え導入できる企業が少なく、同様にグロー 最適なプロジェクトアサインを徹底しています。全体として
バルに展開できる海外メーカーの取り扱いができる企業も少 は、製造業の新事業企画、営業、マーケティング、設計開発・
ないです。そのため設備提案も特定の機器、メーカーを中心 エンジニアリング、物流、保全まで、上流〜下流までワンス
とした内容になりがちで、本当に顧客が必要としている提案 トップで様々なサービス展開を実施することで、製造業のア
になっているかの検証ができないまま案件が進んでいるのが セットの最適化、スループットの向上を通じて競争力強化に
実情です。 寄与していきたいと考えております。
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インタビュー
「つまむ・にぎる・つかむ」を1台で実現
JAXA との共同開発から生まれたロボットハンド
小澤浩司
THK 株式会社
産業機器統括本部 技術本部 事業開発統括部
人の作業の代替として進化してきた産業用ロボット。これまではある一つの単純作業を行うものが主でしたが、これ
からは人と同じように複数の作業が行えるような汎用性と柔軟性が求められていきます。それを実現する鍵となるの
が、手先の作業を司る「ハンド」です。
世界で初めて直動を転がり化した「LMガイド」をはじめ、世界トップクラスの直動と回転の制御技術を持ち、ロ
ボット産業を含めた機械産業の全般に貢献している THK(東京都品川区、寺町彰博CEO)。2016年に3本指のハ
ンド「TRX」を開発し、各方面から高い評価を受けています。ロボット産業への取り組みとTRXについて、産業機
器統括本部 技術本部 事業開発統括部 永塚ビジネスユニット 小澤浩司課長に話を聞きました。
■ TRX とはどんなハンドですか? のものを持つことができます。把持した状態を維持するこ
とも可能です。
TRX は、「つまむ」「にぎる」「つかむ」という手の動
きを1台で実現した3本指のハンドです。本体はコンパク ■にぎる、つかむ、つまむという制御はどのように行って
トですが力は強く、さまざまなサイズのモノをしっかりと いるのですか?
把持することができるのが特徴です。 本体に自社開発のモーターコントローラ「SEED Driver」
これまでのハンドは、圧縮空気の力で把持するチャック を搭載し、ハンドの細かな制御は SEED Driver で行って
や、モノを挟む・放すグリッパーが主流で、用途はハンド います。
リング等に限られていました。人間の手のような多指形状 SEED Driver は、ロボットアーム本体のコントローラか
のハンドもありますが、人と同じ動きを再現できても力が ら指を動かすための ON 信号を受け取ると、モーターを起
なくて把持できないものや、パワーはあってもアームに取 動して指の握りこみをはじめ、負荷がかかったところでモー
り付けて動かすには重すぎるものなど、非実用的なものば ターを制御して把持状態にします。手を開いて放す場合は、
かりでした。 OFF の信号を受けてその逆の制御を行います。
人間の手のように器用に 使い方は、ハンドをロボットアームに取り付け、SEED
動き、しかも実際の現場で Driver と外部入出力モジュール、ロボットアームのコント
汎用的に使えるようなハン ローラ、電源をケーブルで接続するだけです。指を握りこ
ド、それを目指して開発し むスピードや力の制御の設定は、SEED Driver を PC とつ
たのが TRX です。 なぎ、スクリプト書き換えやパラメータいじるだけで変更
できます。
■発売開始からの感触は?
非常に順調です。自動車や電子機器メーカーで、新しい
タイプの産業用ロボットとして「協働ロボット」の導入検
証が進んでいますが、それに使うハンドとして多くの引き
■具体的にはどのような構造になっているのですか? 合いをいただいています。
本体にボールねじとステッピングモーターを使った直動 今の協働ロボットは 10kg 可搬以下のタイプが主流で、
アクチュエータが組み込んであり、その1軸の動きによっ 従来の産業用ロボットに比べるとあまりパワーがありませ
て3本の指が曲がり、伸びる構造です。指に巻き込みリン ん。ハンドが重いとその分、持てる重さが減るため、協働
ク機構を採用していて、手より小さなものに触れた場合は ロボットではハンドの重さが選定の際の重要な要素となっ
指先を巻き込んで「にぎる」動作になり、逆に大きなもの ています。その点、TRX の自重は小型の TRX-S で 320g、
の場合は手のひらと指先で「つかむ」という動きになります。 TRX − L で 1.2kg しかなく、アームの可搬重量を邪魔せ
薄いものなどを持つ時には「つまむ」という形で対応する ずに使うことができ、しかもパワーがあって、動作も柔軟
ことができます。 ということで、現場でも高く評価していただいています。
内蔵の直動アクチュエータは小型・高推力なものを使い、 具体的なアプリケーションでは、人手で運んでいる 1 〜
小型タイプの TRX-S は最大握力 30N(ニュートン)で最 2kg 程度の様々な形状のものを運ぶハンドリング用途が多
大可質量は 3kg、大型の TRX − L は同 100N で、10kg く、このほか加工機からの樹脂成形品の取り出しや、自動
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産業用ロボットナビ Vol.2
車のバンパーのような軽量だが大型のものを双腕で把持す ションの実験棟「きぼう」に持ち込まれ、2012 年 8 月と
るような使い方なども出てきています 11 月に動作実験が行われました。実験は見事に成功し、開
さらに、ある製造工程ではハーネスなどの柔軟物を一度 発したロボットハンドは「宇宙暴露環境下で動作した世界
に何本も束ねて把持するなど、従来のチャックやグリッパー 初のロボットハンド」になりました。
ではできなかった作業にも使えるといった声もいただいて そして、この JAXA とのハンドの共同開発を元に、実際
います。 の現場で使えるように設計し直したものが TRX となりま
また、3種類の把持動作ができる特徴を活かし、人が複数 す。宇宙空間という極限環境で故障せず、失敗が許されな
の作業を行うように、ロボットも TRX を活用していくつも いなかの超精密作業が求められるなかで開発したもの、そ
の作業を担当させたいというようなニーズも多いようです。 のエッセンスが詰まっています。
■直動や回転を制御する機械部品の印象が強い御社が、ハ ■ TRX は JAXA との共同開発の賜物ですね。
ンドに取り組んだきっかけは? そうですね。しかし JAXA の共同研究の一方で、同じ時
2006 年に宇宙オープンラボに参加し、そこで JAXA か 期に産総研、川田工業と共同で NEDO の「戦略的先端ロボッ
ら、宇宙服を着た宇宙飛行士の手と同じくらいの大きさで、 ト要素技術開発プロジェクト」において「コンパクトハン
力や器用さも同程度のハンドを作りたいと相談を受け、共同 ドリングシステムを備えた安全な上体ヒューマノイド」の
研究をはじめたのがはじまりです。当時、ハンドの実績はあ 開発をスタートさせていて、ハンドの研究開発に取り組ん
りませんでしたが、当社が極小で超精密、しかも頑丈な直動 でいました。そこで得た技術も TRX に盛り込まれています。
アクチュエータを工作機械や半導体製造装置などに納入して 例えば、SEED Driver を含む制御技術もその一つです。
いた実績があり、そこに着目していただいたようです。 双腕ロボット本体と2つのハンドを省配線でつなぎ、コ
2007 年から宇宙空間での作業用ハンドの開発をスター ントロールボックスも最小化するために開発され、その技
トし、はじめにボールねじとブラシレス DC モーターで作っ 術は JAXA と共同開発していたハンドにおける指モジュー
た直動アクチュエータで指を動かす指モジュールを開発し ルの協調動作にも生かされました。
ました。単2電池ほどの大きさで、270N の力を出すこと 同じタイミングで、小さなアクチュエータとそれらをつ
ができ、2007 年にはこれを3つ並べた3本指のハンド第 なげる制御技術が求められ、開発を進められたのは良いタ
1号を完成させました。 イミングでした。
しかし第1号は、力強く器用に動く反面、制御系では太 ■今後について教えて下さい
いケーブルと大きなコントロールボックスが必要という弱
点があり、2008 年の第2号以降は制御系にも改良を重ね TRX は、力強く、さまざまなサイズのワークを、複数の
ていきました。そして 2011 年には、指ごとに制御機能を つかみ方で把持することができ、制御部分もハンド自身に
持ち、それぞれが協調して動くことができる4本指のハン 含まれているので配線が非常に楽になるというメリットが
ドが完成しました。 あります。
4本指のハンドは人間の指と同じ3つの関節を持ち、そ まず標準的なハンド製品を出してスタートを切りまし
れぞれの指の表面に圧力センサを搭載するという超高感度、 た。はじめは工場内の協働ロボットの分野に浸透させ、い
高性能なもので、地上での評価を行いました。 ずれはサービスロボットのハンドとしても広げていきたい
と思っています。そうした広がりを作るためにも、現在、
■4本指のハンドは実際に宇宙で使われたのですか? 教育機関に使ってもらえるようアカデミックパッケージを
残念ながら、この4本指のハンドは地上実験のみでした。 通じて特別価格で提供するような取り組みを行っています。
しかし、それまでの開発結果を盛り込んで作った「REX − TRX を一人でも多くの人に使ってもらい、幅広い分野での
J」向け宇宙専用ハンドがロケットに乗って国際宇宙ステー 未来に向けて貢献していきたいと思っています。
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インタビュー
産業用ロボットをデータプラットフォームに
吹野豪
リンクウィズ株式会社 代表取締役
浜松市を拠点に対象ロボットを選ばないインテリジェントロボットソフトウェアを開発・
提供するリンクウィズ。3DCAD開発で培った技術をベースに、自動ロボットコント
ロールツール「L-Robot」や自動検査ツール「L-Qualify」を開発、産
業革新機構からの出資も決定している。産業用ロボットとソフトウェア技術で製造現場
の多くの課題を解決する同社の技術や今後の展望について、吹野豪代表取締役に話を聞
いた。
■リンクウィズ創業の背景を教えてください るワークのばらつきに自動追従する点が大きな違いです。
精密につくられている自動車部品でも、多少のばらつきは
私自身、前職で3D ビジョンセンサー、3D CAD(主に 避けられません。また、異なる部品の場合でもルールだけ
三次元形状処理)関連の新規事業開発をしていたのですが、 事前に決めておくことで段取り替えなどを行わずに、従来
2015年3月に志を同じくする仲間2人と一緒に創業し とは違う次元での混流生産が可能になります。実際にある
ました。2005年に初めてのロボットシステムの担当を ユーザーでは従来製品にあわせて12本作った製造ライン
した時、「ついにこんな時代が来た」と確信したのですが、 を、L−Robotを採用することで混流生産がさらに推
今でも決まった動きしかできないロボットの不得手を人が 進され、2ラインに集約できたという事例もあります。ロ
補うといった状況が散見され、あまり進歩していない様に ボットの動作に起因する製造ラインの制約から解放される
感じます。しかし、立ち上げに時間がかかる、ワークの変 ことで、モノづくりの仕方自体が変わった事例です。常に
化に追従できないなどロボット導入に関連する課題はある 動きを補正する考えるロボットとも言えます。
程度見えています。さらに、ロボットが持つ座標データを
活用することで、ものづくりの仕方そのものを変える可能 ■具体的なしくみを教えてください
性を秘めています。当社はロボットをいかに活用するかと
いうソフトウェア技術を磨いています。 当社が提供するのはソフトウェアとそれを搭載するコン
また、政府もロボット導入を推進していますが、肝心の トローラ、レーザセンサの3点です。レーザセンサは現在
ティーチング人材の不足がボトルネックになり競争力強化 キーエンス製LJ−Vシリーズを使う事が多いですが、メー
の妨げになろうとしています。私が2005年当時トライ カーは問いません。しくみとしては、ロボットアーム先端
した「常に動きを補正する考えるロボット」を実現したい に搭載したレーザセンサの測距データとロボットの座標を
という想いから事業を進めています。 基に、三次元点群データを自動取得します。そのデータか
らロボットティーチングデータを生成し、ロボットに指示
■常にロボットの動きを補正するツールがあると聞きました を出します。ロボット側は受信した座標、速度で動くだけ
ですので、難しいセッティングは不要です。ロボットメー
ロボットティーチング自動生成ツール「L−Robot」 カーによる座標系の違いなどはソフト側で吸収しますので、
を開発しました。3DCADデータ無しで、物体にあわせ ロボットメーカーも問いません。三次元点群データの生成
たティーチングを自動生成したり、既存のティーチングを と、それをロボットが理解できる数値に変換する数学的処
もとに物体にあわせて軌道補正したりすることができるシ 理がポイントになります。
ステムです。通常、産業用ロボットは決まった通りにしか
動けません。そのため、ワークをしっかり位置決めし、ワー
クのばらつきも加味したティーチングや補正のしくみを立
ち上げ時に組み込む必要があります。L−Robotを採
用することで、ティーチング作業時間を大幅に削減し、治
具の共通化が実現できます。部品のばらつきでロボット導
入ができなかった工程でも自動化が進められ、少量多品種・
省人化など多様化するモノづくりの自動化に対応できます。
■オフラインティーチングとは違うのですか?
まず3DCADデータが不要で、ロボットの目の前にあ システム概要
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産業用ロボットナビ Vol.2
■ティーチングが楽になるだけではないということでしょうか やコントローラから集めた全工程の生産品データを、クラ
ロボットが個々のワークにあわせて動くだけではなく、 ウドで集約します。そのデータを活用し、必要に応じてA
データを外部機器にフィードバックできるので、さらに応 Iなど外部システムとも連携しながらユーザーが工場の状
用例は拡がります。例えば溶接工程での実例では、現物の 態をリアルタイムに把握し、経営の意思決定ができるしく
ギャップ距離を出力できることを応用しました。そのデー みになります。異常検知、異常予測、異常回避がリアルタ
タを基に溶接条件(電流、電圧、速度)をリアルタイムに イムにでき、生産管理レポートの精度向上や工数削減がで
変更して常に最適な条件で溶接を行うことで、品質や歩留 きます。経営者は正確な数字を遅延なく把握することで正
まりの向上につなげられています。あたかも、ロボットが しい意思決定を行うことができます。ロボットがデータプ
ベテランエンジニアの様に溶接作業を行います。インテリ ラットフォームになるイメージです。
ジェントな自動ロボットコントロールを核にしたマスカス この仕組みが広まると次の展望が開けます。データが集
タマイゼーションの一例です。 まることであらゆる生産工程のナレッジが蓄積され、最適
な製造条件が算出可能になります。その条件をL−Rob
■検査工程での実績を教えてください otなどで再度活用することで、ロボット加工の設定を自
L−Qualifyとして、L−Robotと同様の構 動的に提案したり、高度なロボットエンジニアを必要とす
成で自動検査ツールを構築しています。ロボットの高い繰 ることなくロボットを活用した加工が簡単にできたりする
り返し精度と、生成された三次元点群データから様々な形 様になります。町工場で簡単に使えるロボティクスです。
状を認識し、ロボットによる自動スキャンと自動検査を実 ロボットシステムインテグレータにとっても立上げ工数
現できるため、人が介在しない定量検査を想定したツール の削減や、ワークのバラツキや変更対応にかける時間やリ
として、幅広いワークに対応できるマルチ検査ラインを実 スクがなくなります。日本は、自動車や部品を作り、輸出
現します。例えば溶接ビードの検査(幅、高さ、長さ、位置、 する事が得意な国です。私達の使命は取引先メーカー様、
アーク切れ)では、従来ノギスやゲージなどで検査してい 企業様と強いパートナーシップを組み、日本が誇る「モノ
た所をL―Qualifyで検査することで、人による測 づくりシステム」を国内のみならず海外へ伝える事だと考
定値のバラツキをなくし、多点での全数検査を実現してい えています。
ます。溶接位置とフレーム全体との位置関係なども全てデ ロボットは高付加価値な仕事をするひとつのツールだと
ジタルデータ化できます。導入事例では、不良検知率が2 思っています。単純作業をロボットに置き換えることがで
倍に、時間は90%短縮、トータルコストで35%程の削 きれば、人はより創造的な仕事をするチャンスを得る事が
減を実現したケースもあります。 できます。今この様に自分の想いを事業として進められて
いるのも、地元浜松をはじめ多くの出会いや支えがあって
■今後の展望を教えてください と感謝しています、当社の理念でもある「徳をもって事業
リアルタイムに改善できる工場を目指し、「L−Fact の基となす」を常に意識しながら、産業用ロボットを核にし、
ory Cloud」を開発中です。これは、L−Rob 本当の意味で関係する全ての人々に役立つ技術をこれから
otやL−Qualifyを始め、生産現場の各種センサ も開発、普及させていきます。
実機で説明する吹野社長
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産業用ロボットナビ Vol.2
寄 稿
IoTやインダストリー4.0対応した次世代卓上型
はんだ付けロボット
通信機能の強化とタクトタイム短縮へ 株式会社ジャパンユニックス
1月の「インターネプコン 2017」で初公開した次世代卓上型はんだ付ロボット「DFシリーズ」は、ネットワーク機能
を強化し、「つながるはんだ付ロボット」として IoTやスマートファクトリーに対応しました。さらに、生産性向上のため
の新機能を数多く搭載し、非常に好評でした。
ネットワーク機能を強化し IoT に対応 化により下降温度も 20°C 抑えています。5 つ目は「新型
はんだ送り装置」。切れ込みを入れるクリーンカットフィー
DF シリーズの特徴は大きく 2 つあり、IoT 時代に対応す ダーと、そのままのロールフィーダーの交換が簡単で、はん
るための通信機能の強化と生産性向上のための新機能です。 だボールなどの不良を防ぐことができます。6 つ目は「スイッ
ひとつ目の通信機能の強化は、第4次産業革命やインダス チボックス へのセレクタスイッチの設置」で、管理者とオ
トリー 4.0、IoT、中国では「中国製造 2025」と言われる ペレータの機能管理を容易にしました。7 つ目は「ティーチ
ような新しい製造の仕組みに対応するため、ネットワーク機 ングペンダントの 9 カ国語対応」。マザー工場を海外 展開す
能を強化しました。顧客からの要望が強い分野で、機器の状 る際も、オペレータ の訓練に必要な時間を短縮 できるよう
態をリアルタイムで外部に送信し、かつ外部からの制御も受 になっています。
け付けることができ、はんだ付工程をどこでも状況把握がで
きるようになっています。 はんだ・自動化のプロ。IPC 国際標準のトレーニングも開始
ヒータ温度やはんだ送り量、こて先位置補正値、その他の
挙動、同軸カメラで撮影したはんだ付の瞬間などをデータ化 当社は、“ はんだ・自動化のプロフェッショナル ” として
し、専用のモニタリングソフトを使って時系列でグラフと連 世界で活動する専門メーカーです。早くから海外進出し、現
動して可視化できます。またエラー値を設定し、異常があれ 在は、世界 22 か国にグローバル なネットワークを構築し
ばすぐにアラートを出し、同時に登録したメールアドレスに ています。中国、台湾、韓国、マレー シアとメキシコには
もエラー通知を送付します。トラブルがすぐ分かるようになっ 現地拠点があり、現地サポートを行います。
ていて、ダウンタイム短縮を実現しています。 近代はんだ付は、基板や部品進化に伴い、年々、複雑難
解化しています。高度なはんだ付を自動化するには基礎技術
生産性向上を実現した7つの新機能 の理解と習得が不可欠です。当社では、「ソルダリングスクー
ル」をはじめとする専門教育機関、はんだ付の実装技術・高
生産性向上のために7つの新機能を追加しました。 度スキルを持ったインストラクターが多数在籍しています。
1 つ目の「3D ソルダリング機能」は、従来の 4 軸可動 はんだ専門の R&D センターである「ソルダリングラボ」は、
に 2 軸を加えた全 6 軸で、立体的な動きによる 3D はんだ 国内 4 箇所に拡がり、 最新鋭の高度分析機や最新型自動機
付けを可能にしました。これまではんだ付け装置が 2 台必 などを駆使し、ミクロレ ベルでの品質管理やはんだ先端技
要だったものが 1 台でできるようになっています。2 つ目の 術の応用研究等を行っています。
「加工速度の改善」では、XY 軸の最高速度は従来品に対して また、2015 年1月から、基板実装の国際標準である IPC
12% スピードアップしました。また、今回はじめてオフラ の総合代理店として、IPC 標準規格の認知度向上や販売活
インティーチングに対応。はんだ付けの作業内容を教え込む 動に取り組んでいます。3 月 1 日には、IPC の認証試験に関
ティーチングに関して、データを取り込んで PC 上で教示作 する内容、IPC トレーニングのコース内容など紹介する IPC
業ができる「ポイントグラフィック編集機能」を搭載し、ティー トレーニングポータルサイトを開設。世界初の試みとして、
チング 作業を効率化しました。 IPC と共同で IPC 認証オンライントレーニングをスタートし
4 つ目は「温度特性の改善」はんだ付けに最適な温度まで ました。(https://training.ipcstore.jp/)トレーニングをオ
上昇する時間を従来よりも 20 秒短縮し、温度回復特性の良 ンラインで受けるだけで
なく、IPC 標準の日本語
訳と標準理解のための
トレーニングを随時準備
し、当サイトで公開して
いく予定です。
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