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ロボット新時代の幕開け「産業用ロボットナビ」Vol.1【完全版】

ホワイトペーパー

進化を続ける製造現場の必須ツールへ

ものづくりを応援する業界紙・オートメーション新聞の別冊「産業用ロボットナビ」【完全版】は、産業用ロボットの基礎知識から最新動向までを徹底解説。
世界のロボット業界をリードする注目企業のインタビューなど、盛りだくさんの内容でお届けします。

<掲載内容>(一部抜粋)
○中小企業でのロボット導入・活用へ 〜腕型スカラロボットの開発〜(川崎重工業)
○世界で注目の協働ロボットSawyer 日本市場での展開(住友重機械工業)
○YuMi:今、ここにある未来(ABB)
○究極の基本性能を追求 〜制御中心の設計で“本物の高速性”を実現〜(デンソーウェーブ)
など


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【協賛企業】KUKAロボティクスジャパン株式会社/川崎重工業株式会社/ABB株式会社/株式会社ジャパンユニックス/B&R Industrial Automation株式会社/因幡電機産業株式会社/株式会社デンソーウェーブ/株式会社安川電機/オムロン株式会社

このカタログについて

ドキュメント名 ロボット新時代の幕開け「産業用ロボットナビ」Vol.1【完全版】
ドキュメント種別 ホワイトペーパー
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このカタログの内容

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別冊 Vol.1 Industrial Robots , Collaborative Robots , Industry4.0 , Smart Factory 第4次産業革命、インダストリー4.0 ロボット新時代の幕開け ー進化を続ける製造現場の必須ツールへー インタビュー 川崎重工業、デンソーウェーブ、 セイコーエプソン、オムロン、 住友重機械工業、ライフロボティクスなど ABB YuMi:今、ここにある未来 7軸と触覚を持つKUKA新世代軽量ロボット FAプロダクツ、変化するロボットへの投資ルール 因幡電機産業、ロボットで顧客の課題解決 ~技術商社としての取り組み~ 株式会社アペルザ オートメーション新聞社
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ABB_AD_20160825_FIN_OL_2.pdf 1 2016/08/26 20:31 C M Y CM MY CY CMY K
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INDEX 産業用ロボットナビ Vol.1 I N D E X 産業用ロボットとは?その定義と種類、形状 …………………………………………………………………………………… 1 過去最高の更新を続ける世界のロボット販売 2018年には40万台に ………………………………………………………… 2 世界一のロボット需要国・中国の最新事情 ……………………………………………………………………………………… 3 日本ロボット産業のこれまでを振り返る 普及元年からロボット新戦略まで ………………………………………………… 4 ロボット普及の鍵はシステムインテグレーターにあり ……………………………………………………………………… 5 新たな市場創出へ 人と一緒に働く協働ロボットに期待大 ……………………………………………………………… 6〜 7 中小企業でのロボット導入・活用へ~腕型スカラロボットduAroの開発~   橋本康彦 川崎重工業株式会社 常務執行役員ロボットセンター長 ………………………………………………… 8〜 9 世界で注目の協働ロボットSawyer 日本市場での展開   冨田良幸 住友重機械工業株式会社 取締役執行役員 技術本部長  ……………………………………………………… 10 トヨタや吉野家、オムロンなどが採用 人とロボットの協働のために開発した「CORO」   尹 祐根(ゆん うぐん) ライフロボティクス株式会社 代表取締役社長 CEO&CTO  …………………………………… 11 ロボットで顧客の課題解決 〜技術商社としての取り組み〜   北野明彦 因幡電機産業株式会社 取締役産機本部長 …………………………………………………………………… 12 変化するロボットへの投資ルール   天野眞也 株式会社FAプロダクツ 代表取締役会長 ……………………………………………………………………… 13 人との協調作業を実現するKUKA LBR iiwa   星野泰宏 KUKAロボティクスジャパン株式会社 代表取締役社長 ……………………………………………… 14〜 15 YuMi:今、ここにある未来   菅井康介 ABB株式会社 オートメーション・モーション事業本部         ロボティクス事業部 ロボット&アプリケーション部 ……………………………………………………… 16 次世代型協働ロボットの使命→「相棒」 (Change the World)   ラース・アンダーソン 有限会社グリーネプランニング 代表 …………………………………………………………… 17 究極の基本性能を追求 ~制御中心の設計で“本物の高速性”を実現~   澤田洋祐 株式会社デンソーウェーブ 制御システム事業部 技術企画部 製品企画室 室長 …………………………… 18 省・小・精の技術を究め極め、ロボット事業に展開   平崎道也 セイコーエプソン株式会社 ロボティクスソリューションズ事業部 RS営業部長 ……………………………… 19 人と機械が理想的に調和する現場実現へ   池野栄司 オムロン株式会社 インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー         ロボット推進プロジェクト 副本部長… ………………………………………………………………………… 20 世界最高レベルの軌跡精度を実現した 高精度ロボット   株式会社ダイヘン …………………………………………………………………………………………………………… 21 転換期を迎えた“世界の工場”中国 ロボットを使ったはんだ付け自動化が拡大中   株式会社ジャパンユニックス ………………………………………………………………………………………… 22〜 23 ラインの全自動化に必要不可欠な 3次元ロボットピッキングシステム   徐 剛 株式会社三次元メディア 取締役代表執行役社長 ………………………………………………………………… 24   日本のFA機器メーカーとロボット事業 ………………………………………………………………………………………… 25 産業用ロボットナビ Vol.1  発行所:株式会社アペルザ オートメーション新聞社 発行日:2016年9月12日 価 格:1000円+税 〒231-0023 神奈川県横浜市中区山下町23番地 日土地山下町ビル13F 電 話:045-228 -8873 FAX:045-345 -4790       メール:info@automation-news.jp オートメーション新聞WEB版 http://www.automation-news.jp/
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産業用ロボットナビ Vol.1 潮 流 産業用ロボットとは? その定義と種類、形状  産業用ロボットというとアーム型の多関節ロボットをイメージしがちだが、実際は現場を自走する自動搬送ロボッ トや射出成形機の取出ロボット、ゲンコツロボットのようなものものまで軸数も形状もさまざまなものがロボットと して流通している。では、産業用ロボットの定義とは一体どうなっているのか? JIS、ISO と異なる市場における産業用ロボットの定義 軸)、XYZ 方向に動く門型(ガントリー型)等の 3 軸ロボッ ト、日本で生まれ、「スカラロボット」と呼ばれる水平多関節  産業用ロボットは、JIS(日本工業規格)によると「自動 ロボット(4軸)、ABB が開発し、日本ではゲンコツロボッ 制御によるマニプレーション機能又は移動機能を持ち、各種 トとして知られるパラレルリンクロボット(4〜6軸)など。 の作業をプログラムによって実行でき、産業に使用される機 そして、自由度が高く、いま最も急速に広がっている垂直多 械」と定義されている。また、その基となった ISO8373 では、 関節ロボット(4〜7軸)がある。高速性、複雑作業への対 3 つまたはそれ以上の軸を持つものと記されている。 応力など、それぞれに特徴があり、用途によって使い分けら  一方で、経済産業省のロボット政策研究会では「センサ、 れる。 駆動系、知能・制御系の 3 つの技術要素(ロボットテクノロ ジー)を有する機械システム」と報告書のなかで明記。JIS  基本構成は、マニピュレータと言われるロボット本体、サー や ISO よりも広義としている。 ボアンプや基板が収納されている制御ボックス(コントロー  JIS、ISO ともに 3 軸以上のものを産業用ロボットとして ラ)、ロボット本体の動作設定やプログラムを行うペンダン いるが、実際の市場では単軸・直交型ロボットが流通し、ユー トとなっている。これに、ハ ザーにも定着している。もともと定義が曖昧であったため、 ンドリングや塗装、溶接など いまでは経産省のロボット政策研究会の報告書を元にした 用途に合わせて先端に取り付 「ロボットの技術要素を持ち、人の作業を代替または補助する けられるハンド、位置決めや 機械」という認識がもっとも現実に即したものとなっている。 状況把握などを行うためのマ シンビジョンなどが、アプリ 軸数と産業用ロボットの種類、形状 ケーションに応じて取り付け  産業用ロボットは、軸数とその構造によっていくつかの種 られる。 類があり、形状が異なる。  シリンダや直動スライダのような単軸ロボット(1軸)か ら、単軸ロボットを組み合わせた直交ロボット(2軸〜4 パラレルリンクロボット (ABB IRB360) 単軸ロボット (IAI RCP6 シリーズ) スカラロボット (エプソン LS20) 3 軸ロボット 垂直多関節ロボット (蛇の目ミシン工業 JR3303) (安川電機 MOTOMAN-MPX3500) — 1 —
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産業用ロボットナビ Vol.1 潮 流 過去最高の更新を続ける世界のロボット販売 2014年は22万1000台、2018年には40万台に  国際ロボット連盟の調べによると、2015 年の世界のロボット販売台数は 24 万 8000 台となり、過去最多。14 年の 22 万 1000 台にから 12%増加し、これまでで最多となった。リーマンショック以降、世界的に自動化の大き な波が進んでおり、09 年と比べると販売台数は約4倍に拡大。18 年には販売台数は 40 万台に到達し、工場での稼 働台数も 230 万台になると見られ、急拡大を続けている。 インダストリー 4.0 で欧米も需要活発化 だろう。IoTや新たなネットワークサービスが製造業を変 えていくだろう」と分析している。  市場を見ると、すでに自動化が進んでいる先進国の工場が、 より高度化する手段としてロボット導入が進んでいる。 Worldwide annual supply of industrial robots 2000 - 2015  例えばヨーロッパ全体では、15 年のロボットの販売台数 300 は5万台。前年に比べて 10%の伸びとなった。国別ではド 248 250 イツが2万台、イタリアが6700台、スペインが3800 221 200 178 台となっている。 166 159 150  アメリカ地域は同 15%の伸びとなり、合計3万7000 120 111 114 113 12199 97 100 81 台を販売し、そのうちアメリカは同3%増の2万7000台 78 69 60 50 となった。注目はメキシコ。前年の2倍となる5500台で、 0 IFRではメキシコからアメリカ、南米へと輸出される自動 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015* Source: IFR Statistical Department 車産業で多く導入されたと見ている。 2000 年〜 2015 年の世界販売台数推移 成長著しいアジア市場 中韓日が世界を牽引 Annual supply of industrial robots  アジアは最も成長著しい市場となっている。1年で 15 largest markets 2011 - 2015 67 +17% 万6000台を販売し、同 16%増となった。このうち China 6万8000台が中国市場で販売された。中国市場で販売さ 37 +50%*Rep. of Korea* れるロボットのほとんどが日本メーカーを含む海外メーカー 35 +20% 2015 製だが、近年は中国メーカーの成長が著しい。15 年の海外 Japan 2014 27 +3% 2013 メーカーのシェアは 69%で、中国メーカーは 31%。13 年 United States 2012 2011 には 25%程度だったものが、2年間で6ポイントもシェア 20 0% Germany を上げてきている。中国に続くのが韓国で、3万7000台。 0 10 20 30 40 50 60 70 80 日本は3万5000台。世界で販売されているロボットのう '000 of units *increase 2015 partly due to additonal companies reporting only in 2015 Source: IFR Statistical Department ち、4分の3が中国と韓国、日本、アメリカ、ドイツの5つ の国で占められている。 2000 年〜 2015 年の世界販売台数推移 IoT でさらなる成長に期待  業界別で見ると、以前から変わ らず自動車業界がもっとも多くを 占める。24 万8000台のうち、 9万5000台が自動車産業と なった。ロボット導入が急激に進 んでいる分野としては、金属産業 (同 63%増)、樹脂・ゴム産業(同 40%増)、エレクトロニクス産業 (同 16%増)となっている。  15年のロボット市場について IFRのジェマ議長は「製造業に おけるデジタル革命の波により、 18 年までロボットブームは続く bibiphoto / Shutterstock.com — 2 — '000 of units
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産業用ロボットナビ Vol.1 潮 流 世界一のロボット需要国・中国の最新事情 国産メーカー奨励でシェア50%目指す  世界一のロボット需要国である中国は、ロボット利活用だけでなく、国内ロボットメーカーの育成に力を注ぎ、近 年さらにその勢いが増している。また美的集団が世界トップのロボットメーカーである KUKA の買収を仕掛けるな ど、世界に大きなインパクトを与えている。そんな中国ロボット業界のいまを紹介する。 販売台数は世界一。伸びる余地は十分 日本との違い 大量生産型工場への導入が活  2015 年の世界のロボット販売台数は 24 万 8000 台のう  一方で日本の 15 年の販売台数は3万6000台。政府が ち、中国は約4分の1となる約6万7000台を占めた。16 ロボット政策をサポートしているにも関わらず、中国に大き 年には約 20%増の8万台近くまで伸びる見込みで、その勢 く差をつけられている。この違いについて、あるロボットメー いはとどまることを知らない。また中国では、現在作業員 カーの経営幹部はこう分析する。 1万人あたりのロボット稼働台数は 36 台で世界 28 位に止  「日本は自動車や電子機器を中心に早い段階でロボット導 まっており、世界トップである韓国の 478 台、日本の 315 台、 入が進んでいて、いまは成熟市場だ。ロボットは単純な繰り ドイツの 282 台から大きく離されている。これに対し5年 返し動作の生産工程に導入したほうが、生産性が上がり、製 間で1万人あたり150台まで増やし、世界トップ 10 入り 品品質も安定すると言われている。中国にはこうしたロボッ することを目標に掲げている。 ト活用に適した大量生産型の工場が非常に多いことも導入が 増えている背景にある。特に自動車のように1つのラインを ■主な中国ロボット会社 使い、ある程度の時間をかけながらも同じ動作を繰り返し、 安定した数量で生産を行う作業には最適で、人件費の上昇や 人手確保などへの対策上からも導入が加速している」。 需要の中心は海外メーカー。国産メーカーの育成に課題  中国ではロボット導入で生産効率化が進む一方、悩みもあ る。「中国ロボットメーカーの育成」だ。販売台数こそ世界ナ ンバーワンだが、そこで売れているのは海外メーカーがほと んど。安川電機、ファナック、KUKA、ABB のいわゆる世 界4大メーカーをはじめとする海外メーカー製が大半を占め る。13 年は 69%が海外メーカー製だった。  これに対し中国政府は危機感を抱き、国産ロボットメー カーの育成に力を入れ始めている。中国版インダストリー4・ 0である「中国製造2025」でもロボットは重点項目になっ ており、メイド・イン・チャイナの強化と相まって支援強化 を進めている。さらに、国産メーカートップ 10 社が集まっ て協力体制を固めるなど、官民挙げた動きが目立っている。 中国政府は 20 年末までに中国ロボットメーカーのシェアを 50%まで引き上げることを目標として おり、日本をはじめ、海外ロボットメー カーにとって大きな脅威となっている。 ★は「中国ロボットメーカートップ 10 サミット」参加メーカー siasun effort — 3 —
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産業用ロボットナビ Vol.1 潮 流 日本ロボット産業のこれまでを振り返る 1980年の普及元年から2015年のロボット新戦略まで  日本には安川電機、ファナック、川崎重工業、不二越、三菱電機、パナソニック、デンソーウェーブ、ダイヘンなど、 世界に名だたるロボットメーカーが存在し、世界のロボット業界をリードしてきた。その躍進を支え、技術を育てて きたのが国内市場である。この 20 年で国内から海外へと生産拠点が移転し、世界の製造業界の地図が変わり、それ に伴ってロボットを取り巻く環境も変わってきた。日本のロボット業界の変遷と今をまとめた。 世界の7割を独占していた1980 年代 溶接、塗装など中心  日本のロボット産業は、1980 年が普及元年と言われる。 NEDO「ロボット白書 2014」によると、1973 年と 1979 年のオイルショックを契機に日本の製造業は拡大から合理化 に舵を切り、産業用ロボットが受け入れられる土壌ができた。 1980 年代の中心は溶接ロボットで、自動車業界を中心に成長。 樹脂成形の取出ロボットもこの時期から導入が始まった。  当時はまさに日本が世界のロボットを独占しており、1985 年の世界のロボット稼働台数 13 万 8000 台のうち、日本で 稼働していたのはなんと 9 万 3000 台。世界のロボットの 7 割近くが日本にあった計算になる。 トの一大消費地となり、日本のロボット産業が輸出産業に変 質したのがこの時期である。2003 年に初めて台数ベースで国 バブル崩壊で停滞期に。しかし用途開発で地力が強化 内出荷(4 万 559 台)と輸出(4 万 3258 台)が逆転し、最  1990 年代はバブル崩壊によって日本の製造業も停滞期に 新の 2015 年では国内 3 万 7703 台に対し、輸出は 11 万 入り、ロボット産業も大きな影響を受けた。企業の業績が厳し 7878 台と大きく開いている。 くなり、設備投資に対する効果に厳しい目が向けられるように なった。ロボットも例外でなく、導入台数は伸び悩んだが、そ 新たな用途で国内の新市場を創出&海外市場の獲得に課題 の一方で意欲的なユーザー企業が用途を選んで導入を進めた。  2010 年代の国内市場では、新たな用途で新市場の創出が  NEDO はこの時期について「ロボット産業にとっては伸び悩 進んでいる。特に、高齢化による労働者不足や、第 4 次産業 みの苦しい時期であったが、ロボットの産業価値を明確な時期 革命やインダストリー 4.0 のような製造業の高度化の取り組み でもあった。ロボットに適する用途、人で作業に適する用途、 により、ロボットの活用範囲が広がっている。 それぞれ冷静に評価するようになった」と分析。導入が進ん  これまでのロボット作業の中心は、工場内における 3K 作 だロボットとしては、PC や携帯電話、家電のデジタル化にと 業や大量生産の単純作業だったが、最近はセンサや画像処理、 もなって液晶や半導体、クリーンルームの搬送ロボットなどが ロボット技術の進化によって 3D ピッキングのような複雑作業 急成長した。 が可能になり、また安全機能を備えた協働ロボットの登場によ り、人手でしかできないと思われていた組み立て作業などにも ロボット産業が輸出産業に変質 ロボットが導入されるようになっている。自動車や電気業界を  2000 年代はロボット産業にとって大きな転換期となった。 中心に、ロボット活用の深掘りが進んでいる。 これまでの 20 年は国内向けがほとんどだったが、この時期の  また、これまでロボットを使っていなかった業界にも需要が 前後に自動車や電気メーカーの生産拠点が海外に移転し、ロ 波及。物流や倉庫作業など、幅広い業界でロボット導入がは ボットの輸出が激増した。特に中国は世界の工場としてロボッ じまった。特に三品と言われる食品、医薬品、化粧品業界に ついては、政府による「ロボット新戦略」のなかで普及促進す 日本のロボット出荷台数と世界ロボット販売台数の推移 べき業界とされている。人と並んで作業ができる協働ロボット 000 の存在が大きく、ロボット導入への門戸拡大に貢献しているほ 000 か、医療向けやサニタリー向け、物流向けなど、業界や目的に 応じたロボット開発も進み、この流れに拍車をかけている。 000  一方、輸出向けでは、台数は拡大基調にあるが、急速な世 000 界市場の広がりに対して需要が取りきれていないという傾向に 000 ある。価格やデリバリーに強みを持つ海外メーカーや新興メー カーの競争力の高まりとともに日本メーカーのシェアは厳しく 0 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 なってきており、開発・生産体制の強化と、海外での SI の獲 国内出荷(台) 輸出(台) 得や日本の SI の海外進出支援など販売チャネルの拡大などが 日本のロボット出荷台数と世界ロボット販売台数の推移 求められている。 — 4 —
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産業用ロボットナビ Vol.1 潮 流 普及の鍵はシステムインテグレーターにあり ロボット工業会、SIのデータベース化を推進  ロボットの導入にあたっては、システムインテグレータ(SI)のサポートが欠かせない。現在、日本では SI の数 が不足しており、今後ロボット普及台数を劇的に伸ばすためには、SI の育成が不可欠と言われている。 ロボットシステムインテグレータ(SI)とは? ら自身がユーザーへの提案を通じてロボット導入の流れを作っ ていけるかが、ロボット普及の大きなポイントである。2015  ロボット自体はとても汎用的で、実行できる作業のカバー 年、日本経済再生本部で「ロボット新戦略」が決定されたが、 範囲が広い。システム構成次第で溶接から塗装、検査、ピッ このなかでもロボット利用拡大のためには SI の普及が鍵を握 キング、組み立てなどさまざまな作業が可能になる。そのため、 るとされている。 ユーザーの用途に応じて本体とハンド、ビジョンなど最適な構 成を作り、かつその動き方をティーチング(教示)しなければ 日本ロボット工業会による SI データベース ならない。加えて作業に関する安全性の確保も必要で、導入  日本ロボット工業会では、全国にある SI をデータベース化 するためには、従来のパッケージ化された製造装置と異なり、 し、ロボット導入を検討しているユーザーとのマッチングを行っ 計画から設置、稼働までイチから製品構成を組み上げるとい ている。 う特殊な技能が必要となる。  2016 年 8 月11日現在、95 社の SI が登録され、各社に  その技能を持っているのが SI であり、彼らが社会全体で高 よって得意な分野や業務内容、実績などがテンプレート化され まっている需要、ニーズをいかに拾って実現できるか、また彼 ている。 インフラ/ 社名 所在地 もの 3品 サー 農林 介護 海外 全国 タマリ工業 愛知県西尾市 ○ ○ ○づくり 産業 ビス 水産 災害対応/建設 医療 実績 対応 筑波エンジニアリング 茨城県稲敷郡 ○ ○ ○ ○ アイ・シー・エンジニアリング 横浜市神奈川区 ○ ○ ○ ○ ティーエス 静岡県浜松市 ○ ○ ○ 旭興産 山口県岩国市 ○ ○ THKインテックス 東京都練馬区 ○ ○ ○ ○ ○ ○ アスカ 愛知県豊田市 ○ ○ ○ ○ ○ デザインネットワーク 東京都千代田区 ○ ○ ○ ○ アスラテック 東京都千代田区 ○ ○ ○ ○ 東芝機械エンジニアリング 静岡県沼津市 ○ ○ ○ アラキ製作所 愛知県豊田市 ○ ○ 東洋機器工業 大阪市西淀川区 ○ ○ ○ ○ アルファス 滋賀県大津市 ○ ○ ○ 東洋理機工業 大阪市西淀川区 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ アルマック 神奈川県相模原市 ○ ○ ○ 特電 静岡県沼津市 ○ ○ アルメックホンゴ 富山県砺波市 ○ ○ ○ ○ ○ トガシ技研 山形県鶴岡市 ○ ○ ○ ○ 泉谷機械工業 大阪府堺市 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 豊岡エンジニアリング 愛知県岡崎市 ○ ○ ○ ○ ○ ウエノテクニカ 群馬県桐生市 ○ ○ ○ ○ ○ ナレッジ 滋賀県長浜市 ○ ○ ○ ○ ○ 永進テクノ 神奈川県相模原市 ○ なんば電機エンジニアリング 岡山市北区 ○ ○ ○ エイチ・アイ・デー 北九州市八幡西区 ○ ○ ○ ○ ニチゾウテック 大阪市大正区 ○ ○ ○ エグロ 長野県岡谷市 ○ ○ ○ ニッコー 北海道釧路市 ○ ○ ○ ○ ○ HCI 大阪府泉大津市 ○ ○ ○ ○ ○ 日鉄住金テックスエンジ 東京都千代田区 ○ ○ ○ 江波工作所 広島市南区 ○ 日本省力機械 群馬県伊勢崎市 ○ ○ ○ エムシステム 大阪府枚方市 ○ 日本設計工業 静岡県浜松市 ○ ○ ○ ○ ○ ○ オージーエー 東京都大田区 ○ ○ ○ 日本ハイコム 群馬県前橋市 ○ ○ ○ ○ カドコーポレーション 兵庫県たつの市 ○ ○ バイナス 愛知県稲沢市 ○ ○ ○ ○ 享栄エンジニアリング 岡山県総社市 ○ ○ ○ ○ パナソニック プロダクションエンジニアリング 大阪府門真市 ○ ○ ○ ○ ○ 共栄制御機器 兵庫県尼崎市 ○ ハラシン 愛知県丹羽郡 ○ ○ ○ 金城機工 静岡市清水区 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 東山精機工業 大阪府松原市 ○ ケーイーシー 岐阜県各務原市 ○ ○ ○ 日立産機システム 東京都千代田区 ○ ○ ○ ○ 謙徳産業 大阪府吹田市 ○ ○ ○ ○ 日立システムズ 東京都品川区 ○ ○ ○ ○ ○ ○ コーネット 愛知県一宮市 ○ ○ ○ ○ 平田機工 熊本県熊本市 ○ ○ ○ ○ 五誠機械産業 佐賀県佐賀市 ○ ○ ○ ○ ヒロテック 広島市佐伯区 ○ ○ ○ コスモ技研 愛知県小牧市 ○ ○ ○ ブイ・アール・テクノセンター 岐阜県各務原市 ○ ○ ○ ○ ○ 近藤製作所 愛知県蒲郡市 ○ ○ ○ ○ Forex Robotics 千葉県船橋市 ○ ○ ○ ○ CYBERDYNE 茨城県つくば市 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 不二輸送機工業 山口県山陽小野田市 ○ ○ ○ ○ 三次元メディア 滋賀県草津市 ○ ○ ○ プラスエンジニアリング 静岡県磐田市 ○ ○ サンテック 兵庫県尼崎市 ○ ○ ○ ○ ○ プラスコーポレーション 広島県福山市 ○ ○ 三宝精機工業 横浜市戸塚区 ○ ○ ○ マクシス・シントー 名古屋市西区 ○ ○ 三明機工 静岡市清水区 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 松本鉄工 岡山県倉敷市 ○ ○ ○ サンメカニック 愛知県一宮市 ○ ○ ○ ○ マトロ 宮城県角田市 ○ ○ ジェービーエム 大阪府東大阪市 ○ ○ 丸栄運輸機工 富山県富山市 ○ ○ ○ 松栄テクノサービス 愛知県長久手市 ○ ○ 三菱電機システムサービス 東京都世田谷区 ○ ○ ○ ○ ゼロプラス 兵庫県伊丹市 ○ ○ ○ ○ MUJIN 東京都文京区 ○ ○ ○ ソフィックス 横浜市港北区 ○ ○ ○ メカトロ・アソシエーツ 石川県小松市 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ターゲット・エンジニアリング 京都市伏見区 ○ ○ ○ ○ 安川エンジニアリング 北九州市小倉北区 ○ ○ ○ 大晃機械製作所 大阪府高槻市 ○ ○ ○ ○ 豊電子工業 愛知県刈谷市 ○ ○ ○ ○ 大新技研 長崎県佐世保市 ○ ○ ○ ○ ○ ラインワークス 千葉市花見川区 ○ ○ ○ ○ ダイトーエムイー 愛知県春日井市 ○ ○ ○ レステックス 千葉県松戸市 ○ ダイドー 名古屋市中村区 ○ ○ ○ ○ ○ ROBOSYSTEM 愛知県豊田市 ○ ○ ○ ○ タイヘイテクノス 熊本県熊本市 ○ ○ ○ ○ ロボシステムエンジニアリング 大阪府東大阪市 ○ ○ 大和エンジニアリング 愛媛県伊予郡 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 技術士事務所“ロボティ” 愛知県知多郡 ○ ○ ○ ○ 髙丸工業 兵庫県西宮市 ○ ○ ○ ○ ○ ロボテック 富山県砺波市 ○ ○ タック 名古屋市昭和区 ○ ○ ○ ワイ・イー・データ 埼玉県入間市 ○ ○ ○ ○ ダブル技研 神奈川県座間市 ○ ○ ○ ○ — 5 —
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潮 流 産業用ロボットの新たな市場創出へ 人と一緒に働く協働ロボットに期待大 これまで産業用ロボットは、3K(キツイ・汚い・危険)作業の代替か、パラレルリンクロボットの高速性のような、 単純作業における人よりも優れた能力を発揮する作業工程向けに開発され、現場への導入が進んできた。しかし第 4 次産業革命時代が到来し、その動きが少し変わってきた。人のパートナーとして一緒に働くことができる「協働ロボッ ト」の登場だ。これまでロボット導入が難しかった工程や業界などでも使うことができ、いま日本や欧米を中心に広 がり始めている。 協働ロボットとは? も、新たな時代における最先端のコンセプトとして協働ロボッ トを全面に打ち出して新市場の開拓と獲得を進めている。  協働ロボットとは、作業者の労働安全に配慮した機能が盛  KUKA の「LBR iiwa」は、ドイツのインダストリー 4.0 り込まれ、人と一緒に作業しても安全だとリスクアセスメン の CPS(サイバーフィジカルシステム)を語る文脈では必ず トで評価された産業用ロボットのこと。人や周辺の構造物 といっていいほど出てくる協働ロボットの代表的な製品だ。 に触れたら停止する機能や、衝突時の衝撃を和らげる安全カ 7 軸全てにトルクセンサーを搭載し、繊細さと柔軟さを兼ね バーなどの安全機能を備えている。一般的には「安全柵がい 備えたインテリジェントなハイスペックモデルで、最大可搬 らない産業用ロボット」のことを指し、人と作業者が隣同士 量 は 7 キロと 14 キロ の 2 種類をラインナップ。自律移動 に並んで一連の作業を行うような協働作業が可能だ。 型のロボットと一体化した「KBR iiwa」など進化型も揃え  これまで産業用ロボットを導入する場合は、「労働安全衛 ている。 生規則 150 の 4」によって、一律で安全柵や囲いを設けなけ  KUKA ロボティックスジャパン 星野泰宏社長によると日 ればならないと規定されていた。唯一、定格出力 80W 以下 本国内でも「すでに自動車や電気電子、医療、サービス産業 の小型ロボットはその規定から除外されていたが、2013 年 から多くの引き合いが来ている。現在は各社が自社における 12 月に ISO に合わせる形で変更。「リスクアセスメントによ LBR iiwa の可能性を試している段階だ。海外では実用レベ り危険のおそれがなくなったと評価できるときは協働作業が ルまで来ており、家電メーカーの生産ラインでのねじ締めや 可能」となり、労 モーターの組み立て業務に使われている。もちろん KUKA 働安全が適切に確 のロボットの生産ラインでも使われている」という。 保できていれば定 格 出 力 80W 以 下 でなくても、人と ロボットの協働作 業ができるように なった。  この改正により、 現場内でロボット を実際に配置でき る 範 囲 が 広 が り、 そ れ に 合 わ せ て 様々なアプリケー ションでロボット を活用できるよう KUKA LBR iiwa になった。  ABB の「YuMi」は、コンパクトで人と同等なサイズと形 状で、動きも人に近く、一緒に働く人にストレスを与えず、 安全性と居心地の良さを感じさせる双腕型の協働ロボット。 先行する海外メーカー 導入・稼働実績も多数 片手で押さえて、もう片方の手で作業をするといったことが  これまでも協働ロボットやシステムは存在したが、最近は でき、単腕型とは異なるアプリケーションにも活用範囲が広 多関節の協働ロボットの動きが活発化。各社から次々と製品 がっている。筐体には静電気対策が施され、スマートフォン が投入されている。 やデジタル家電などの電子機器の組立工程を主要ターゲット  協働ロボットに積極的なのが欧米のロボットメーカー。従来 としている。日本ではオリックスレンテックと協力し、レン 型の大量生産向けの産業用ロボットに事業の軸足を置きながら タルサービスも提供している。 — 6 —
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産業用ロボットナビ Vol.1  「YuMi」は、IFR(国際ロボット連盟)と、IEEE/RAS(IEEE スで設置できるオールインワンタイプ。80W の低出力モー ロボティクス・オートメーション学会)が、その年に最も革 ターを採用し、規定変更以前から電子部品の組み立てライン 新的で優れたロボット発明を表彰する IERA(Invention and などで採用されている。 Entrepreneurship Award) の 2016 年に選ばれた。  不二越は、従来の多関節ロボット をさらに小型化した「MZ04」を開発。 80W 以下の全軸定格 80W 以下の低 出力モーターを使い、安全柵が不要 の協働ロボットとした。特徴は設置 面積が A5 サイズという省スペース。 ローディングや検査、ピッキングな どのアプリケーションで使われてい るという。 不二越 MZ04  川崎重工業の「duAro(デュアロ)」は、双腕スカラの協 ABB YuMi 働ロボット。2 本の腕とスカラロボットという組み合わせで、  デンマークに本社があるユニバーサルロボットは、協働ロ シンプルな使いやすさを重視している。現場作業者 1 人分の ボットを専門に展開する専業メーカー。小型軽量の6軸多関 スペースにそのまま収まり、さらにキャスター付きのロボッ 節タイプの「UR シリーズ」を展開し、フォルクスワーゲン ト本体は設置や移動も簡単。レンタルやリースなどの新しい や BMW といった世界的な自動車メーカーで採用されている。 ビジネスもスタートしている。 日本でも協働ロボットの期待の高まりとともに認知度は高ま り、取り扱う SI も増加している。 開発中のロボットも。協働ロボットに新規参入も  エンリコ・イバーセン CEO は現状について、「2015 年は、  安川電機は「MOTOMAN(モートマン)」の小型タイプの 前年比 19%の伸びでエクセレントな年だった。とても満足 「MOTOMINI」や、水色の柔軟な素材で覆われた人共存型の している。ヨーロッパと北米が好調で、アジアパシフィック 協働ロボット「HC10」、デンソーウェーブは、机の片隅に 地域も良い成長をしている。日本も著しく伸びている国のひ おける超小型のアーム型協働ロ とつだ。他のメーカーも協働ロボットに参入し、同じ方向に ボット「COBOTTA(コボッタ)」、 目が向いている。ユーザーもオートメーション化を考えたら セイコーエプソンなど有力メー 協働ロボットを使うようになるだろう」と見ている。 カーも、2015 年の国際ロボッ  アメリカの Rethink Robotics の「Sawyer」は、お掃除 ト展等で協働ロボットを出展し、 ロボット「ルンバ」を生み出した MIT 元所長のロドニー・ブ 内外にアピールした。 ルックス博士が開発したロボット。日本では住友重機械工業 が取り扱っている。 安川電機 MOTOMAN-HC10  各軸に力覚センサを搭載し、ビジョンと力のセンシングに  また協働ロボットが開く新市場に対し、新規参入するメー より高精度な作業ができるほかダイレクトティーチングで教 カーも登場。ライフロボティクスは、ピッキング用の協働ロ 示作業が容易で、「世界で最も簡単なロボット」(住友重機械 ボット「CORO」で産業用ロボット市場に参入。すでにトヨ 工業 冨田良幸取締役専務執行役員技術本部長)だという。 タ自動車や吉野家、ロイヤルなどで導入されることが発表さ れている。 国内メーカーも続々と参入 35kg 高可搬タイプも  同製品は、狭小空間で人との協働作業を安全に行うことを  ファナックは ” 緑のロボット ”「CR- 目的として開発されたピッキングに適した協働ロボット。肘 35iA」を発表している。同製品は 35kg 回転関節をなくし、独自特許技術「トランスパンダー」テク の高可搬タイプで、全体が緑色のソフト ノロジーによる伸縮する機構により、人と同程度の専有面積 カバーで覆われているのが特徴。このカ で動作できるという。肘回転関節がないアームのシンプル動 バーによって衝撃を和らげ、挟み込みを 作は人の危険予測を安易にし、人と協働する安全性を実現。 防ぐ効果があるという。重量物の搬送や さらにソフトウエアと本質安全を 部品の組み付けなどの用途で作業効率に 高めるハードウエアによる動作範 有効だとしている。 囲の制限も可能となっている。 ファナック CR-35iA  カワダロボティクス「NEXTAGE」は双腕タイプの協働ロ ボット。画像認識システムを標準搭載し、人ひとり分のスペー ライフロボティクス CORO — 7 —
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インタビュー 中小企業でのロボット導入・活用へ 橋本康彦 ~腕型スカラロボットduAroの開発~ 川崎重工業株式会社 常務執行役員ロボットセンター長 川崎重工業(以下、川崎重工)はスカラロボットを同軸上に配置した双腕ロボット「duAro(デュアロ)」 を開発し発売している。duAro は、「Easy to use」「人とロボットとの共存と協調」などをキーワー ドに、あらゆるユーザーにとっての使いやすさを追求して誕生した。開発コンセプトやそれを実現す る技術などを常務執行役員橋本康彦ロボットセンター長に聞いた。 ―duAro について教えてください あった。現在では産業用ロボットメーカーのパイオニアとして  これまでの産業用ロボットは、自動車業界など製品のライ スポット溶接、アーク溶接、組立・ハンドリング、塗装、パレ フサイクルが長い量産分野を中心に導入が進み、発展してき タイズ用などの多数の「カワサキロボット」を供給している。 た。その一方で、電気・電子業界など製品のライフサイクル  当社は重厚長大産業の代表企業の一つと見られているが、 が短く、数カ月単位でのモデルチェンジを繰り返す分野では、 提供する製品群は IT の発達に伴う各種のセンサーや制御技 準備期間や費用対効果で自動化が難しいと考えられてきた。 術を取り込み、「ただ大きく重いだけではない製品」へと変身 duAro は、こうした分野における産業ロボットの導入を実現 を遂げている。また、重厚長大産業は、航空機分野など人命 すると同時に、機能の高さと低価格の同時実現により、中小 に関わる製品を製造するため、厳しい安全基準や品質管理が 企業のものづくり現場への産業用ロボットの導入・活用にも道 要求されてきた分野でもある。ロボット事業が今後医療・医 を拓くと期待している。 薬分野に進出していく際には、このような企業としての知見・  duAro は、人と共存して働くのに必要な機能が備わってい 経験も生かしていくことができると考えている。 る。ロボット本体は、胴体から水平に伸びた2本のアームが ― duAro 開発の背景について教えてください 対になって動き、人が両腕で行っている作業を、人1人分のス  双腕スカラロボット「duAro」の開発アイデアは、電子業 ペースに置き換えられる。衝突検知機能や作業者の近くでは 界などの要望からもたらされた。電子業界の製品は、概して 低速で動作するなどの安全機能を装備しており、作業者のす ライフサイクルが短い。一方、従来の産業用ロボットは、生産 ぐ横に設置しても安心して作業をさせられる。また、ダイレク ラインのレイアウト変更への対応が難しく、毎回、多大なエン トティーチング機能やタブレット端末による操作・ティーチン ジニアリング時間や費用がかかってしまう。製品のライフサイ グなど、簡単にシステムを立ち上げられる実用性の高いロボッ クルにロボット導入が追いつかないのである。このため電子業 トにしているほか、ロボット本体とコントローラーを台車一体 界でのロボット導入は遅々として進んでいなかった。そして実 のパッケージ構造とし、設置や移設を極めて容易にしている。 は、電子業界のニーズは、中小企業のニーズであることも分かっ ― 川崎重工の産業用ロボットについて教えてください てきた。  当社は「産業用ロボットの父」と呼ばれたエンゲルバーガー  日本のものづくりの現場は、社数では中小企業が9割を超 博士が創始した米ユニメーション社と提携し、1968 年に国 えている。少子高齢化などで作業員の確保が難しくなる中で、 産初の産業ロボット「ユニメート 2000 型」の開発に成功、 労働力不足への解決策が求められている。そのためにロボッ 翌 69 年から製造・販売を開始した歴史がある。また、自社 トの活用を検討する中小企業主は多いが、工場が狭いために 工場でさまざまな用途へのロボットの活用を試み、その知見 ロボットを設置するスペースが確保できない、また高価格な を他の産業分野での活用へとつなげている。例えば明石工場 ので設備投資負担が大きくなるなどの悩みの中、ロボットの普 (兵庫県)での工作機械の自動化システム(1971 年)は、機 及が進まない分野が数多くある。私たちは、これまでとはまっ 械加工の自動化に産業用ロボットを適用した国内初の試みで たく異なる発想でのロボット開発の必要性を感じた。  ―「duAro」のコンセプトと人とロボットの「共存・協調つい て教えてください  国際規格 ISO10218 は、2006 年の改訂で特定条件の下 での人とロボットの共存、協調作業を認め「安全柵や囲いを 設けるかどうかはリスクアセスメント判断による」とした。こ れはロボットの安全技術の進歩に伴い、実情に沿うように改 訂されたものである。  しかし国内法では人との共存、協調作業は認められておら ず、そのために国内ではロボットの導入が進まなかった。当社 も、産業用ロボットメーカーの一員として経済産業省と共に厚 双腕スカラロボット duAro の動作範囲 生労働省に積極的に働きかけ、2013 年 12 月、国際標準化 duAro( デュアロ) — 8 —
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産業用ロボットナビ Vol.1 人1人分のスペースに設置して共存作業を実現 さまざまな作業に導入できる 人と共存領域での低速動作などを実現 機構の定める産業用ロボットの規格に準じた措置を講じるこ の duAro の操作盤として使えるようにもした。 とで「安全柵の中のロボット」は解き放たれ、「人と共存、協  duAro が双腕であるのも、簡単なシステムの立ち上げに 調するロボット」への門が開かれた。 つながっている。双碗だと、挟み込む動作が可能になるため、  duAro の開発にあたっては「人と共存作業が可能」「システ ハンドの付け替え無しで様々な大きさ、形状のものの作業に ムの立ち上げが簡単」「低トータルコスト」の3つ開発コンセ 対応可能である。また、一つのアームでワークを固定し、もう プトに沿っている。 一つのアームで作業することが出来るため。アームの先に付け  ちなみに duAro という名前は、英語の「Dual Arm」と る治具を簡素化できる。つまり、双腕ロボットは多様な大きさ・ 「Robot」を組合わせた造語で、2本のアームを持つ安心・安 形状のものを扱う作業を簡単に行なえ、それだけシステムの 全なロボットというイメージで、親しみやすい愛称にした。ま 立ち上げを早く簡単にできるのである。 た親しみやすさと安心感を形にするために、丸みを帯びた本 ― コストについても教えてください 体の曲線やアームへの柔らかな材質の採用、さりげなく配され  販売価格を 280 万円に設定したこともあり、価格に驚きを た青のスポットカラーなどに具現されている。 感じられるお客様が多く、2015 年 6 月の発売直後から多く  duAro ははライン変更を行わずに人1人分のスペースにロ のお客様から問い合わせをいただいた。川崎重工内に蓄積さ ボットを設置することができる。水平多関節のアームを同軸上 れ、練られ、コスト削減効果の大きな既存技術も積極的に取 に配置した双腕構造とし、ロボットとコントローラーを1台に り入れ、低コスト化が実現できた。 集約してパッケージ化し、人1人分のスペースに設置できるよ  また、産業用ロボットの導入では、ロボット本体の費用の他 うにしている。また、同軸双腕構造にしたことでアームの緩衝 に、位置決め治具などの周辺機器に費用がかさみ、総費用が が起きにくくなり、従来のスカラロボットでは困難であった協 本体価格の2〜3倍になる事例も珍しくないがロボット本体と 調動作も容易になった。 周辺設備のパッケージ化に力を注ぎ、2 本のアームを使うので  腕の長さは、人と一緒に作業するので人間を基準に考え、 治具レス対応もでき周辺費用は従来と比べて抑えることが出 かつ人は片手で仕事をすることは少ないので双腕というアイデ 来る。 アが生まれた。さらに台車ごと移動させて簡単に設置できる。   これまでライン変更に時間を要していたシステム立ち上げやロ ―duAro のこれからについて教えてください ボットが停止した緊急時も素早く対応できる。  従来、産業用ロボットは大手メーカーの独占物のように思わ  人と共存作業を可能にするためには、周辺の作業者に危 れてきた。しかし duAro によりまったく新しいロボットとの 害を及ばさないことが最大の課題になる。duAro は、出力 共存・協調の時代が始まる。 80W 以下の低出力モータを採用し、安全柵を必要としない。  また簡単に使えるようになるため、ご利用になるお客さまは 縦型の腕部には柔らかい材質の安全カバーを装着。その上で、 改善要望を見つけやすくもなり、要望は duAro をさらに進化 衝突検知機能を備える一方、左右の作業者との共同作業領域 させるであろうし、お客さまとメーカーが問題解決のために協 では低速で動作し、中心部では高速で動作するなどを任意で 調し、協創するサイクルを生み出せる。それが duAro を世に 設定できようになっている。 送り出した最大の意義ともなろう。特に、中小企業のものづ  従来の産業用ロボットのシステム立ち上げで最大の課題と くりの現場にロボットの力をお届けできるようになり、duAro なっていた作業内容の教示「ティーチング」でも duAro は画 は、加速度的に具体的な成果を見せ始めるに違いない。 期的な技術を取り入れた。「ダイレクトティーチング機能」と「携  人には人の、ロボットにはロボットの長所があり、人とロボッ 帯情報端末(タブレット)による操作・ティーチング」の併用 トがシームレスに連携すれば、ものづくりの競争力を強める余 である。 地は十分にある。例えば、日中は人とロボット、夜間はロボッ  ダイレクトティーチング機能は子どもへの手取り足取りをイ トのみの生産体制を構築したり、ロボットで体の不自由な方の メージしていただきたい。アームを握り、右のねじ穴から左の 活躍をサポートして労働に参加する取り組みもできるようにな ねじ穴へといった動きをなぞりながら動作を指示するだけで作 るだろう。 業を覚える。  ベストパートナーとして人に寄り添い、人を支える。それが  タブレット端末による操作や動作設計もできるようにした。 ロボットであり、川崎重工はどのような生産体制、働き方が可 duAroでは操作盤の機能はすべてタブレット端末に移してユー 能であるかまで含めたトータルなソリューションを提供しなが ザービリティの高い簡単な方法にしてあり、端末の操作は、1 ら duAro を普及させていきたいと考えている。 日で覚えられるほど簡単だ。またタブレット端末は、複数台 — 9 —
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産業用ロボットナビ Vol.1 インタビュー 世界で注目の協働ロボット Rethink robotics Sawyer 日本市場での展開 冨田良幸 住友重機械工業株式会社 取締役執行役員 技術本部長 Rethink robotics(リシンクロボティクス)の Sawyer(ソーヤー)は、MIT 元所長で、お掃除ロボッ ト「ルンバ」を世に送り出したロドニー・ブルックス博士が作り出した協働ロボットとして世界的にも 知られている。国内では住友重機械工業が取り扱いを開始し、昨年の国際ロボット展で初披露して 注目を集めた。協働ロボットに参入した狙いと Sawyer について、冨田良幸取締役専務執行役員技 術本部長に聞いた。 —協働ロボット市場への参入の狙いを教えてください —どういった業界、業種を狙っていますか?  これから製造業やサービス業で人の作業を補助するのは、人  年間 600 万円程度の人件費がかかっているような作業の 型のヒューマノイドや特殊環境で使うようなロボットではな 置き換えをターゲットとしています。まずは自動車部品や電 く、高い安全性を備えたものです。そのためには「柔らかい」 子部品の製造現場での導入を提案しています。人による作業 「安全」「ティーチングが簡単」「価格が安い」「軽い」といった が多く残っていて、さらにロボットや製造、生産に対する技 要素が大切で、今後こうした協働ロボットが伸びていきます。 術や知見のある技術者がいる領域です。現場に生産技術に通  人の単純作業の代わりにロボットが使えそうだが、従来の じた人が少ないサービス業などの領域に対し、イチから入る 産業用ロボットでは価格が高くて採算が合わないという領域 のは難しいと思っています。 に対し、この Sawyer は丁度良いと思い、日本国内の独占販 売権を取得しました。 —具体的にはどのようなアプリケーションがありますか?  実際に取り扱うことを決めてからは社内の現場で色々と試  例えば、電子部品などの検査工程では、箱に入った電子部 して実践しました。例えば製品の搬送や箱詰め作業、実装基 品を取り出し、検査用の治具に乗せて良品/ NG 判定をさせ、 盤の検査、工作機械の段取りなどでは非常に効果的でした。 その結果をもとに分類し、別の箱に収めるといった活用方法 現場にすぐに持っていき、簡単にティーチングをして早く動 が考えられます。 かすことができて現場でも好評でした。  また樹脂成形品の箱詰め作業では、射出成形機から取り出 されて運ばれてきた樹脂製品を箱に収め、その上に衝撃吸収 —Sawyer の強み、他のロボットとの違いは何ですか? 材を入れた後、上から軽く押して嵩を減らし、その上に次の  国内、海外のロボットメーカーから同様のアーム型ロボッ 樹脂製品を重ねるといったことが可能です。 トはたくさん出ています。しかしその多くは、力覚センサが  Sawyer の柔らかい 手首だけにしかついていません。Sawyer は、手首はもちろ 構造を利用したコンピ ん、各軸に高感度の力覚センサを搭載し、人間と同じような ライアンス制御による 感覚で作業を再現し、高い衝突安全性を実現しています。 ピン入れやネジの仮止  人間は指先から手首、腕、関節すべてで力を感じることが めなどの作業も得意な できます。そのため、例えばネジ締めの際、人間は手だけに アプリケーションです。 力を入れるのではなく、手首、腕、肩も力を感じて全体で制 御しています。Sawyer も同じことができ、精密な作業が可 能です。また衝突安全性に関しても、力覚センサで瞬間的に ぶつかったことを検知し、動きをすぐに制御できます。 —今後について教えてください  ティーチングも簡単で、Sawyer 本体を手で掴んで動かし  これからロボットを導入したいという企業が、製造業以外 て作業を教え込むことができます。専門的なプログラミング にも増えていきます。協働ロボットは、どんなに導入・操作 知識がなくても、ロボットにさせたい作業を設定できます。 が簡単だと言われていても、結局は SI が入っています。中  Sawyer は、ほかの産業用ロ 小企業では現場に生産技術担当がいなかったり、外部の設備 ボットとは設計思想が異なりま 業者にすべてを任せている企業が多くあります。またサービ す。多くのロボットメーカーの ス業や他の業種では機械やロボットのことが分からないとこ ロボットは、製造現場や従来の ろがほとんどです。 産業用ロボットの延長線上です。  Sawyer が目指すのは「世界で最も簡単なロボット」であ Sawyer は「ロボットをより身 り、SI もいらないようなロボットです。Sawyer は、これ 近に、より使い易く、より実用 からの日本の製造業を中心にロボットを普及させるには最適 的に」というミッションを掲げ、 な製品だと考えています。 そこから設計が始まっています。 — 10 —
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産業用ロボットナビ Vol.1 インタビュー トヨタや吉野家、オムロンなど国内トップ企業が採用 人とロボットの協働のために開発したコ・ロボット「CORO」 尹 祐根(ゆん うぐん) ライフロボティクス株式会社 代表取締役社長 CEO&CTO 「トヨタ自動車や吉野家、オムロンなどの大手企業が採用」「第三者割当増資による5億円調達完了」 など、大きなニュースで注目を集めているロボットメーカーがある。それが 2007 年創業、肘がない 独自の機構を持つ協働ロボット「CORO(コロ)」を展開するライフロボティクスだ。その取り組みに ついて尹社長に話を聞いた。 —日本を取り巻く環境と創業について教えて下さい 業者にとって肘は危険なものなのです。そのため CORO は、  日本は少子高齢化で労働人口が減って経済規模が縮小し、 肘の代わりに「トランスパンダー」という伸縮機構を採用し、 それを解決するために様々な方法が議論されています。また 狭いところに導入でき、動きもシンプルなものとなっていま 生産コストを抑えるために、人件費の安い中国や東南アジア す。このトランスパンダーは特許のかたまりで、CORO には に製造拠点を移してきましたが、近いうちに人件費が高騰し 100 件以上の知財が詰まっています。 て、このモデルも崩れていくと思います。まさに今、日本は 転換期にあり、少ない労働力でも高い生産性を維持し、人件 —ティーチング(教示作業)や操作も簡単だそうですね。 費の高い先進国でも十分な利益が出る新しい生産モデルを構  UFO キャッチャーのように簡単に扱えるのが最終目的で 築する必要に迫られています。 す。ゲームのコントローラのようなリモコンで操作でき、よ  新しい生産モデルを世界に先駆けて実現できれば日本経済 り精度が必要な場合は数値入力も可能です。 は再び上昇することができます。そこに必要なピースが「協  また CORO は「進化するロボット」でもあります。はじ 働ロボット」なのです。労働力の不足と生産性向上をロボッ めに提供するティーチングソフトウェアも随時アップデート トで補い、単純作業を協働ロボット(コ・ロボット)に任せ、 して、使いやすさの向上や新しい機能の追加などを行ってい 人は付加価値の高い作業に集中する。私がこれまで培ってき く予定です。ユーザーからロボットのデータをいただいたり、 たロボット技術があれば実現できるかもしれない、これから ご意見やご要望を反映していこうと考えています。 の日本の未来に貢献できると思い、2007 年に創業しました。 —導入実績とこれからについて教えて下さい —CORO とはどのようなロボットですか?  トヨタ自動車や吉野家、ロイヤル、オムロンといった国内  いま製造現場にあるロボットは、安全柵に囲まれた大きな トップ企業に CORO を購入いただきました。このほか大手 スペースの中で動き、人の作業スペースと隔離されています。 化粧品メーカー、物流大手企業などでも採用されています。 すでに自動車メーカーや電子機器メーカーなど自動化が進ん 関心を持っていただいた企業の多くは、パートや外国人労働 でいる業界では、こうしたロボットが数多く導入されていま 者でも人手不足が追いつかなくなってきて、そのために入れ す。 たいというニーズや、生産性向上のため狭小空間で使いたい  しかし逆を言えば、これらの業界でしか使えていないとい ニーズが目立ちます。CORO が必要とされる余地は予想以上 うことです。自動化が進んでいないようなところでは、従来 に多いと感じています。 のような広い空間で速く動き、危険がともなうロボットは適  将来的には、人手不足という言葉を日本からなくしていき していなかったのです。では、まだロボットを使っていない たいと考えています。CORO はそのスタートであり、足りな ようなところに最適なロボットは何かと言うと、CORO のよ いパーツや技術は、ソフトウェアも含めてこれから調達し、 うな協働ロボットなのです。 この世にないものは開発 していきます。今はいち —CORO の特徴や他の協働ロボットとの違いを教えてくだ さい ロボットメーカーです  従来の産業用ロボットは、広いスペースで、安全柵に囲ま が、IoT や人工知能など れた状態で使うことを前提に設計されています。ほかの協働 の導入を実現して「第 4 ロボットもその流れを汲んで開発されたものです。 次産業革命」を牽引する  一方、CORO は、初めから協働ロボットとして開発しまし ことで、日本を支える企 た。例えば CORO には肘がありません。肘は人にぶつかっ 業を目指しています。 た場合に怪我につながりやすく、狭い場所で使った時には安 全を脅かす要因になります。また、手先とは違った複雑な動 きをするので、動きが予測できません。ロボットと周りの作 コ・ロボット「CORO」 — 11 —
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産業用ロボットナビ Vol.1 インタビュー ロボットで顧客の課題解決  ~技術商社としての取り組み~ 北野明彦因幡電機産業株式会社 取締役産機本部長 因幡電機産業は、メーカー機能と開発機能を併せ持つ技術商社として存在感を高めている。そして 産業用ロボット分野でも、オムロン、ヤマハ、エプソン、東芝に加え、FA業界唯一の正規代理店と してユニバーサルロボット社の協働ロボットを使ったアプリケーションの展開を行っている。同社の 取り組みを、北野明彦取締役本部長に聞いた。 -FA分野に関する取り組みを教えてください ハンドといった周辺機器を含めた当社のエンジニアリング力  電子機器、制御装置、自動機、メカトロニクスの各分野に と組み合わせ、システムとして顧客に提案することで市場を おいて、開発設計段階からお役に立てる高い技術力を活かし、 開拓できると考えている。 システム提案から開発、設計、カスタマイズ、サポートま で顧客の要望を伺い、現場での細かいニーズを形にするトー ―今後の展開について教えてください タルソリューションとして提供している。顧客ニーズに適し  社内にトレーニングを行える人員及びフィールドでサポー た機器の提案、提供はもちろん、各分野のSEメンバーと機 トできる人員を配置することでサポート面を充実させた。今 械設計、制御設計・回路設計者が連携し、システム構築・提 後は認定SI契約を結んだパートナ会社とともに全国展開し 案する体制を確立している。特に現在注力しているスマート ていく。また、オムロン、ヤマハ、エプソン、東芝といった ファクトリーやロボットシステムでは顧客の課題を解決でき 多くの産業用ロボットを含めエンドユーザに積極的に提案を る製品とシステムをワンストップで届けることができる。 行い、ロボット単品だけではなくシステムを取りまとめてソ リューションとして提案を進めていく。 ―技術商社の視点で見た協働ロボットについて教えてください  元々強みとしている電気・制御系のシステムに加え、メカ・  日本の製造業を取り巻く環境は、産業用ロボットを使った 機械系のシステム提案にも注力し、サーボモーターやロボッ 自動化の流れが今後も加速するが、それ以上に協働ロボット トなどの出力系の強化により、画像検査や搬送ライン一式な のニーズが高まってくると見ている。 ど、制御系、機械系を駆使してのワンストップ FA システム  これまで産業用ロボットを使った製造ラインは、人とロ を構築・提案できる体制も確立できた。また、これらの機能 ボットの存在する空間が安全面の観点からきっちりと分けら に加えてスピード対応力、コスト対応力、在庫対応力、グロー れていた。そのため、ロボットのまわりには安全柵、セーフ バル対応力による販売体制の強化に努め、「顧客第一主義」 ティスイッチ、セーフティコントローラや、それらをプログ の理念に基づき、社会に貢献する所存だ。制御系商社から一 ラムするソフトも製作する必要があり、どうしても大規模な 歩脱却する新たな挑戦に期待してもらいたい。 ものになってしまっていた。また、ロボットのティーチング は専任の技術者でなければ難しく、ちょっとした動作変更も 装置メーカーに頼らざるを得ない課題が あった。しかし協働ロボットはそれらを 解決し、製造業の技術承継や人材不足と いった課題解決に寄与するとみている。  他国と比べ日本で協働ロボットが普及 していないのは「高額」「可搬重量が小 さい」「動きが鈍い」「海外メーカーが多 く、サポートに不安」といった背景があっ たと考えている。 ―2016年6月にユニバーサルロボッ トの正規代理店となりました  ユニバーサルロボット社の協働ロボッ ト「URシリーズ」は前述の課題を解決 してくれる。とはいえ、ロボットである 以上、購入・設置するだけでは製造現場 で戦力にならない。単なる輸入業者とし てではなく、カメラ、アクチュエータ、 ユニバーサルロボット導入事例 — 12 —
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産業用ロボットナビ Vol.1 インタビュー 変化するロボットへの投資ルール 天野眞也 株式会社 FA プロダクツ 代表取締役会長 「優れた営業力とエンジニアリング力で、日本の製造業の発展に貢献する」を使命としているFAプ ロダクツ。産業用ロボット導入においても、協働ロボットのシステム導入から、3次元ビジョンセン サを活用したバラ積みピッキングまで幅広い実績をもち、優れた SIerとしても評価されている。現 場から見た産業用ロボット導入について天野眞也代表取締役会長に話を聞いた。 ―産業用ロボットの市場についてどの様に見ていますか? まっています。将来的には介護や受付などの分野でも活躍の  製造業の国内回帰や、要求品質の向上、現場の人材不足な 場が広がってくるでしょう。 どから産業用ロボットに対するニーズは日々増していると感 じています。ロボット本体の性能向上はもちろんですが、目 ―製造業でのロボット導入の課題は何でしょうか? となるビジョンセンサや、脳となるコントローラの技術革新  ロボットを現場に導入するシステムインテグレータ(SIer) も相まって、ロボットの適用分野は増え、当社へのご相談も やエンジニアの不足です。ロボット技術はロボット本体の制 非常に多くいただいております。さらに、今後はロボットを 御技術だけではなく、目となる画像処理技術や、脳となる 導入するかどうかの判断基準に変化が出てきて、ロボットが データ処理技術、触覚となる力覚センサなどの複合技術です。 活躍する場が劇的に増えると見ています。 ティーチングなども簡単になって来ていますが、実際に機器 を組み合わせて、現場のニーズに適した機器構成を見出し、 ―ロボット導入の基準が変わる? ロボットが目的の作業ができる様にするには、ロボット周辺  製造装置もそうですが、ロボットを導入するかどうかの判 機器を含めた知見と、高度なエンジニアリング力が必要です 断基準は今まで「投資対効果」が全てでした。人が作業した が、エンジニアが足りません。また、ロボット各社でプログ 方が安ければ人で、海外で生産した方が安ければ海外で生産 ラミング方式や外部との通信方式が異なり、メーカー専属の が行われ、ロボットを導入した方が良ければ投資がなされて SIer でないとティーチングできないというケースも多くあ いました。従来の自動車産業においては、溶接や塗装も昔は ります。「エンジニア不足」「標準化」この2つがロボットを 人が作業していましたが、6軸多関節ロボットを導入する方 取り巻く大きな課題と考えています。 が安全で効率的ということで導入が進みました。電機・デバ イス・精密機器組立の分野でロボット化が進んでいるのも、 ―今後の抱負を教えてください 人が作業するよりもスカラロボットを導入した方が正確で速  当社はロボットを含めたシステム全体を統合し、最適化で く、高い品質の製品が作れるためです。食品・薬品業界でも きる知見を持っていると自負しています。実際に、協働ロボッ パラレルリンクロボットを使って移載する方が、人が作業す トのライフロボティクス、ユニバーサルロボットをはじめ、 るよりも効率的です。いずれも「投資対効果」を基準に判断 安川電機、ファナック、三菱電機、デンソーウェーブ、エプ がなされていた結果と言えます。 ソン、KUKAなど多くのメーカーのロボットシステムを周  しかし、これからは製造業を含めたあらゆる産業で人材不 辺機器と組み合わせ、ソリューションとして現場に導入して 足が起こります。募集をかけても、必要な人数が集まりませ きました。全国 80 社以上の提携先を持ち、FA/PA 製造装置・ ん。たとえ集まっても、人材の流動性は高まるばかりで、身 システムからソフトウエアまで企画・開発・製作してきた実 に着けた技術を持って他社に転職してしまいます。そのよう 績を活用し、日本の製造業発展のために貢献したいと考えて な時代には、ロボットと人との作業仕分けのルールに変化が おります。 起こります。「費用対効果」だけではなく、「ロボットででき る部分はロボットを導入する」「ロボットでできない部分を人 が行う」という新しいロボット導入の判断基準ができ、実際 にその兆候が見え始めています。 ―そうするとロボットの適用分野にも変化があるのでしょう か?  ロボットメーカー各社が開発を進めている「協働ロボット」 がその典型です。従来の完全自動工程で使われる 6 軸多関節 ロボットや、スカラロボットだけではなく、人が作業してい る場所で、人の代わりに働くロボットのニーズが飛躍的に高 FA プロダクツが提供するソリューション — 13 —
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インタビュー 人との協調作業を実現するKUKA LBR iiwa 星野泰宏 7軸と触覚を持つ新世代の軽量ロボット KUKA ロボッティクスジャパン株式会社 代表取締役社長 近年産業用ロボットの利用は増加傾向にあり、ロボットメーカーには追い風となっている。しか し、自動化する対象は複雑化し、かつ多品種少量生産のための柔軟性も求められており、従来の 技術では対応しきれなくなってきている。また、さらなるロボットの活用のため、人とロボット がスペースを共有し、協調して作業することも注目されており、世界中でロボット産業の変革の 時期に突入している。 このような流れに合わせ、日本においても最大出力が 80W を超える産業用ロボットの導入時 の安全対策に関する規制条文の解釈が変更され、人とロボットの協調作業を後押しする環境が整ってきている。こ うした時代のニーズに応えるためには、即応性、複雑な動作を可能にする機構制御、さらに安全機能を備えた新し いソリューションが必要であり、KUKA では早くからこのような新しいコンセプトのロボット開発を進めてきた。 KUKA LBR iiwa はこれらの特徴を備えた新世代のロボットである。 KUKA LBR iiwa の概要 による自動化の要望が増えてきている。KUKA LBR iiwa は (1)7 つの軸と、(2) 全ての軸に搭載されたトルクセンサーに  LBR は ド イ ツ 語 で Leichtbauroboter の 3 文 字 を 取 っ より、従来困難であった作業を可能にしている。 たもので、軽量ロボットを意味する。iiwa は intelligent (1) 7 軸多関節ロボット industrial work assistant の頭文字であり、知的な産業用  現在主流となっている多くの多関節ロボットは 6 軸以下の 作業アシスタントを意味する。LBR iiwa は 7 軸の垂直多関 ものである。基本的に、3 次元空間におけるロボット先端の 節ロボットに分類される。外観は流線型であり、一般の産業 位置と姿勢を任意に動かす場合、6 つの軸があれば可能であ 用ロボットと比べ大きく異なる。人間工学に基づいたデザイ る。しかし、LBR iiwa は 7 つの軸を持つことで、さらに自 ンで、人とロボットが協調作業する際の安全性が考慮されて 由度が高く、人間の腕に近い動作が可能となる。この自由度 いる。ロボットの先端部には電源や I/O 制御などのためのコ の高さから、限定されたスペースでの運用を可能とする。 ネクター、エアーを通す接続口あり、 (2) 高感度トルクセンサーによる繊細・柔軟な動作 ロボット先端に取り付けるツールへ  人間が物体のはめ込みなどの作業を行う場合、視覚情報の の電源やエアーの供給、I/O 制御な みを使っているわけではない。例えば、視覚情報から大体の どに用いることができる。これらの 穴の位置に物体を移動させ、後は手の感覚、つまり「触覚」 ケーブルは、ロボットの内部を通 で物体を押しつけながらはめ込む方が楽な場合がある。一方、 り、ロボットの下部まで通じている ロボットの基本的な動作は、指示された位置に精確に移動す ため、周囲で作業する人や周辺機器 ることである。隙間の狭いはめこみ作業では、ロボットには に引っかけるという危険を防止する 高い位置決め精度が必要となる上、目標との位置の差分を精 ことができる。可搬重量は 7kg と 確に補正するための高精度の視覚センサーも必要となる。別 14kg の 2 種類が存在する。 LBR iiwa の外観 の方法として、外力を用いる場合には、力センサーやソフト ウェアの追加が必要になる。 LBR iiwa 7 R800 LBR iiwa 14 R820  一方、LBR iiwa は全ての軸にトルクセンサーを搭載し、 可搬荷重 7 kg 14 kg 人間の「触覚」を獲得している。これにより、以下のような 軸数 7 7 動作が可能である。 先端取り付けフランジ DIN ISO 9409-1-A50 DIN ISO 9409-1-A50 ① 力、トルクの計測および制御 設置場所 床,天井,壁 床,天井,壁 ② 衝突検知 保護等級 IP 54 IP 54 ③ コンプライアンス制御 繰返し精度(ISO 9283) ±0.1mm ±0.15mm ④ 重力補償 ロボット重量 23.9 kg 29.9 kg ⑤ ハンドガイド  「コンプライアンス制御」とは、位置、速度および力を同 繊細で複雑な動作 時に制御する方式である。「コンプライアンス」という単語  現在、工場では多くの作業が自動化されつつあるが、はめ は様々な使い方が存在するが、ここでは「しなやかさ」を意 込み作業やコネクターの接続など、ロボットで置き換えるこ 味する。LBR iiwa のコンプライアンス制御では、ロボット とが困難な作業工程が存在する。こうした作業の多くは、人 の「かたさ」を任意に設定することができる。このとき外力 間の手の繊細な感覚や複雑な動きを必要としている場合が多 が加わると、ロボットは事前に設定された「かたさ」に応じ い。しかし、最近このように複雑な工程に対してもロボット て「ばね」のように変位する。この「触覚」の獲得により、 — 14 —