ホワイトペーパー
Evaluating Color Inspection:
Can Color Machine Vision
Improve Results?
色検査について:
カラーマシンビジョンで
検査結果は良くなるのか
原著 Robert Howison, Teledyne Dalsa
訳 株式会社エーディーエステック
Teledyne Dalsa Inc. ホワイトペーパー
いてもモノクロカメラより高いメリットを出せない場合もあります。
色検査について:
例えば、
光学文字認識(OCR)や文字照合(OCV)、バーコード読取、測定
カラ―マシンビジョンで検
ゲージなど、高解像度の空間情報に依存するアプリケーション
がこれにあたります。
査結果は良くなるか?
マシンビジョンは、高速かつ信頼できる品質検査の手段として認 マシンはどうやって色を「見る」のか?
知されるようになりました。多くの場合、マシンビジョンによる視 もちろん、マシンは実際には色が見えるわけではありません。
覚検査は人間に比べるとはるかに早くて正確で、しかも低コスト マシンは人間の色検知を模した数理モデルを使用しています。
です。しかし、マシンに色が「見える」のでしょうか?また、色を検 マシンは人間の色への平均的反応に対して較正することが可能
査アルゴリズムに加えて、品質検査の役に立つのでしょうか? です。よって、設定した内容で観察した色に対して一定の反応を
するという形で「見る」ことが出来ます。この「較正された色」は、
マシンビジョンではシステムが検体画像をカメラで取得し、コンピ 絵画、プラスティック、織物などの着色剤の測定や照合に有益で
ュータ処理をし、検体の特性を分析、計測し、判定をします。代 す。これは、人間のように色を「見ている」わけではありません。
表的な特性が、検体の色です。以前は、色は光学検査ではあま マシンビジョンシステムが行なう相対的測定と、分光計などの装
り使われていませんでした。コストの問題と処理の負荷が高かっ 置でないとできない絶対的測定の差を押さえておくことが大切で
たことが原因です。しかし、最近はコストが下がり、処理負荷も問 す。
題では無くなってきました。ソリューションプロバイダは、色をマシ
ンビジョン光学検査システムに導入し、検査品質を向上させよう 人間の色覚は、照明や視野が様々に変化する中で見える物体
としています。 の「材質」に関して、情報を相対的に抽出します。 例えば、
果物の色は、照明が様々に変化する中でも、熟しているか熟
本稿では、カラーマシンビジョンの仕組みと、なぜ色を用いるとマ してないか、あるいは腐っているかを、確実に判定しなけれ
シンビジョンのアプリケーションに有効かを論じます。 ばなりません。人間の色覚は、照明や視野の変化があっても
「必要な要素を取り出す」機構を持っています。我々はどう
色が有ったほうが、良いと思いますが、 やって変化に対応しているのかは分からず、カラービジョン
いかがですか? のマシンにそれを反映することはできません。人間の色覚は
一般的に、色は白黒(モノクローム)より「進んでいる」と考えら 相対的なものです。近くに別の色があると、色の認識に影響
れています。よって、色が有るのは良いはずです。しかし、この があります。色自体の解像度は高くありません。(テレビの
前提はマシンビジョン業界では常に正しいとは限りません。マシ 色を伝送する場合にごくわずかの帯域しか必要でないこと
ンビジョンのアプリケーションに多い「割れ」や「傷」の検出には、 からも分かると思います。) また、人間には個人差があり
色を使う必要はありません。なぜなら、検査の目的は、検体表面 ます。よって、人間は測定に向いているとは言えません。一
の明度の違いを識別することにあるからです。 方、マシンカラービジョンは、周辺の色の影響を受けません。
高い解像度を持つことができ、マシンによる個体差がほとん
実際モノクロカメラのほうが、カラーカメラより優れている場合も どありません。よって、測定に向いていると言えます。
あります。解像度やスピードを例に取ると、モノクロカメラの方が
高解像度、高スピードに対する選択肢があります。また、色を用 カラ―マシンビジョンシステムの種類
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カラ―マシンビジョンシステムは、多くの場合、ハードウェアとソフ しょうか?
トウェアを組み合わせて、様々な色を検出しています。点や斑点 • 検体の色により、御社製品の品質の良し悪しが相対的に分か
の色測定の場合、ハードウェア機器を使えば概ね解決します。 りますか? • 色を見ることで、検体の検知度が高まりますか?
高度なシステムの場合は、ソフトウェアの比重が高まり、設計者 もし、これらの質問で御社に該当するものがあれば、マシンビジ
やエンドユーザがいろいろな操作ができるようになっています。 ョンのカラー製品を真剣に検討されると宜しいかと思います。
マシンビジョンにおいて、カラーカメラは、大きく3CCD、トライリニ
ア、べイヤー配列に分かれます。3CCDは 優れた色の再現性を 各種アプリケーション
持っており、非常に多くのアプリケーションに使うことができます。 それでは、実際のアプリケーションを幾つか見てみましょう。 御
しかし、その設計が複雑であるため、コストが高くなります。トライ 社アプリケーションの色を検査項目に加えるかどうかを考えるう
リニアは高い性能を持ち、しかも低コストです。応用分野も、表面 えで、参考になればと思います。
検査など多くのアプリケーションがあります。一方で、検体が回 .
転したり、不規則に動くと空間補正ができない場合があります。 食品は、誰もが有効と考える応用分野だろうと思います。誰しも
食品を買うときは、品質に異常がないか確認します。果物ならば、
3つ目のべイヤー配列カメラは、最も低コストです。もし、色の精 色で熟しているか、等級通りの品質になっているか確認できます。
度がアプリケーションで強く要求される場合は、お奨めしません。 (誰しも、 シミが付いたオレンジや、黄ばんだライムを買いたく
はないでしょう。) 穀物や野菜の場合は、製品が一定速度で流
色を使う場合 れている中でも、色により等級を判断したり、異物を見つけること
検査アプリケーションの中には、割れや傷の検出など、色を使う ができます。
必要が必ずしもない場合があります。物体表面の明度の差を識
別することが目的だからです。 食肉加工では、色を使って腐食を見つけたり、脂肪、骨、軟骨な
どの部位識別をし、それらを自動的に摘出したりします。カラー
物体の色を評価する必要があるアプリケーション以外でも、色を マシンビジョンが冷凍ピザの出来栄えを検査するのに使われて
見ることで物体の識別が早くなる場合があります。例えば、自動 いる理由は注目に値します。もし、モノクロ画像を使っていたとし
車のヒューズ箱にあるヒューズの数を検査する場合があります。 たらどうでしょうか?材料の密度が適正かは分かるだろうと思い
ます。(材料が充分載っているか? ピザ面にうまく広がっている
どのマシンビジョン・アプリケーションの色を使わないといけない か?など) しかし、包丁で切った材料の差を識別するのは容易
のでしょうか? そのようなことはありません。カラーカメラよりモ ではありません。例えば、オレンジ、赤、緑などのペッパーの色
ノクロカメラの方が優れている場合もあるからです。解像度やス の識別はモノクロでは大変ですが、カラーであれば簡単に識別
ピードを例に取ると、モノクロカメラのほうが高解像度やハイスピ できます。
ード製品があります。また、マシンビジョンの課題解決において、
モノクロ画像に比べて、カラー画像のメリットが無い場合も少なく 自動車検査でも、カラーマシンビジョンが使われています。多く
ありません。 の方が、車の塗料の検査にマシンビジョンが使われていると思う
ではないでしょうか。実際、ドライバーが使う操作インターフェー
もしカラーカメラを使うべきか迷いが生じた場合は、次のような点 スには非常に多くの工数をかけて詳細な外観検査が行われて
を考えてみて下さい: います。例えば、メーターパネルが同じように作られているかを
• 御社製品を検査する上で、色の精度と同一性が重要な要素で マシンビジョンで確認しています。これは大切な検査です。集合
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計器やダッシュボード全体の品質は、長い目で見ると、運転手が った吸収フィルターです。トライリニアカメラでは、3つの線状配
車の品質に対して持つ印象に影響を与えます。 列がそれぞれ少しずつ異なる視野角(FOV)を持っているため、
カラー画像を再構成するためには画像を補正する必要がありま
他にも、色を必要とするアプリケーションは沢山あります。例えば、 す。
印刷検査(品質と登録)、薬の検査(ラベルの照合)、部品の有無
と検出、PCBアセンブリ (部品の有無、検証、配置)。また、木材、 最後に、べイヤー配列カメラは混合品で、最も低コストです。この
繊維、セラミックタイル、などに対する品質や格付けなどを行なう カメラはローエンド製品向けであり、3CCDやトライリニアのカメラ
アプリケーションは沢山あります。 と比べると色の精度が低くなっています。しかし、べイヤー配列
は一般に広く知られています。色の再現性能を最適化するアル
カラーマシンビジョンにはどのような種 ゴリズムは世の中にたくさん存在します。
類があり、それぞれどう違うのか? DALSAは、Genie, Trillium ,Piranha カラ―カメラをマシンビジョン
マシンビジョンのアプリケーションで使われるカラーカメラの種類 向けに出しており、様々なカラー画像技術に基づいています。べ
は、3CCD、トライリニア、べイヤー配列のカメラに分かれます。そ イヤーカラーフィルタ配列、ビームスプリッタプリズムやトライリニ
れぞれエリアカメラの場合とラインカメラの場合があり、内蔵する アセンサなどがあります。
色の種類によって分かれます。
色検出は、ハードウェア(カメラ)から見て、
カメラの種類 エリアスキャン ラインスキャン どのように作用するか?
3CCDプリズムカメラ 共通 共通 3CCD カラ―カメラでは、,色はプリズムベースのフィルターを使
トライリニア 適用不可 共通 って選択されます。入射光は、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色に分
べイヤー配列カメラ 共通 適用不可 光されます。3原色はそれぞれのCCDによって検出され、3つの
CCDからの出力を組み合わせ、最終画像として再構成されます。
3CCDは、すぐれた色の再現性を持っており、非常に多くのアプ 3つのカラー画像は、同じ場所を同じ時刻でキャプチャします。ト
リケーションに適用することができます。 しかし、設計上の理由 ライリニアカラーカメラでは、3本の線状配列は1つのダイ上に実
で高コストです。3CCDのカラーカメラでは、カラーは、プリズムを 装され、RGBのカラーフィルターでコーティングされています。フィ
使用したインターフェースフィルタを使って選びます。これにより、 ルタは染料や色素を使った吸収フィルターです。トライリニアカメ
入射光を、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色に分けます。この3つの ラでは、3本の線状配列は、個々異なる視野角(FOV)を持ってお
色は、それぞれのCCDで検出され、3枚のCCDからの出力を組 り、カラー画像を再構成するためには、空間補正が必要です。
み合わせ再構成します。3つのカラー画像は、検体の同一地点
を同一時刻にキャプチャされます。 色検出では、ソフトウェアはどのような
役割を果たしているか?
トライリニアは、高性能でありながら、低コストであるという点が カラ―マシンビジョンシステムは、ハードウェア(カメラ、色空間変
利点です。 100%印刷検査など多くの検査に使われます。しかし、 換、など)と、ソフトウェアを組み合わせて、色を検出しています。
回転や不規則運動をするアプリケーションでは、空間補正ができ 点またはスポットの色を測定する場合は、ハードウェアだけでう
ずうまく使うことができません。トライリニアのカラーカメラでは、3 まくいきます。高度な検出システムにはソフトウェアが使われ、設
本の線上配列が、1つのダイのうえに実装されて、RGBのカラー 計者は自由に操作することができます。ハードウェアとソフトウェ
フィルターでコーティングされています。これらは染料や色素を使 アで一番違うのは、色を検出する「色分類」の仕組みにあります。
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色分類は、色を持った画素の集合を、「合格」または「不良」とい ソン氏は、エコール・ド・テクノロジ・スペリウーレ校の、エンジニ
ったクラスに割り当てます。良い色分類は、輝度の変化に対して アリングの学士および修士です。マシンビジョンアプリケーション
一定の耐性(堅牢性)があり、すばやく学習し・実行し、画素を正 に関しては12年を超える経験を持っています。
しいクラスに割り当てます。「色分類」は継続的に開発を進めて
いる分野であり、ベンダー間で競争になっています。 ダルサ社(www.dalsa.com)は、先進的な画像の取得、処理、分析
用ハードウェアおよびソフトウェアを、顧客に提供しています。製
カラーマシンビジョンの将来 品は、製造工程を通して、品質管理、生産性向上と競争優位の
米国AIA(Automated Imaging Association)の市場調査によると、 ために設計されています。
2005年から2006年にかけて販売されたカメラの4分の1がカラー
カメラであり、4分の3がモノクロです。一般的な傾向として、 カラ (注)
―カメラは増えており、色を使うことでマシンビジョンの利用が広 ・本文書の原題は、”Evaluating Color Inspection: Can Color
がると考えているエンジニアが多いようです。カラーは、モノクロ Machine Vision Improve Results?”です。
のグレースケールよりも視覚的情報を詳細まで伝えると考えて 原文をご覧になりたい方は、下記Teledyne Dalsa Inc.のウェブ
いるようです。実際の分析データに新しく軸を加える形になりま サイトにございます。
す。 http://www.teledynedalsa.com/en/learn/white-papers/
例えば、色による検査は、紙幣検査のアプリケーションでスキャ ・2013年10月に執筆されました。内容および著者の情報(所属、
ンおよび画像処理用に急速に使われています。アジアの国の中 役職等)に関しては、当時の内容となっていることをご了承くださ
には、政府が色検査を必要としているケースがあります。これは い。
人々が小切手を発行する際に署名より印鑑を使用することが多
いからです。印鑑は通常は朱のインクが使われ、モノクロ画像シ ・当社(エーディーエステック)が、2018年4月に、日本語に訳しま
ステムでは充分なコントラストが出ません。銀行が認証のために した。内容に関してのご質問は、下記までお願い致します。
カラーレポートを必要とするのが一般的です。
(株)エーディーエステック イメージング部
プリント回路基板(PCB)検査も、カラーカメラが使用されるアプリ TEL: 047-495-9070
ケーションの例です。モノクロ画像システムでは区別が難しい酸 E-mail : sales@ads-tec.co.jp
化銅の線の識別に使用されます。新技術として、ダルサは3CCD
とトライリニアを両方用いて製品開発をしており、高性能のカラー
カメラを供給して成功しています。色の再現性に低コストと使い
易さが、市場を活性化させる要因です。現在開発中の技術が近
い将来、これらのニーズを具現化し、製品として市場の需要に応
えることを期待します。
著者について
ロバート・ホウィソン氏は、DALSA社(ケベック州モントリオール)
のプロジェクトリーダー(OEMカスタムプロジェクト)です。 ホウィ
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