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【導入事例】FAソリューション e-F@ctory

製品カタログ

三菱FAソリューションの様々な導入事例をご紹介しています。

e-F@ctoryは「生産性」「品質」「環境性」「安全性」「セキュリティ」の向上を実現し企業のTCO削減と企業価値の向上を支援します。三菱電機FAサイトに掲載された、選りすぐりの事例をご覧ください。

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このカタログについて

ドキュメント名 【導入事例】FAソリューション e-F@ctory
ドキュメント種別 製品カタログ
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取り扱い企業 三菱電機株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

このカタログ(【導入事例】FAソリューション e-F@ctory)の内容


Page 1:FACTORY AUTOMATION三菱FAソリューション導入事例三菱電機FAサイトに掲載された選りすぐりの事例をご覧ください。

Page 2:1Global Player三菱電機グループは「グローバル環境先進企業」を目指します。三菱電機グループは、「常により良いものを目指し、変革していく」という“Changes forthe Better”の理念のもと、活力とゆとりのある社会の実現に取り組んできました。そしていま、時代に応える“eco changes”の精神で、家庭から宇宙まで、あらゆる事業を通じ、環境に配慮した持続可能な社会の実現に向けてチャレンジしています。そのために、社員一人ひとりがお客さまと一体となって、グローバルな視点で、暮らしを、ビジネスを、社会を、より安心・快適に変えてゆきます。三菱電機グループは、最先端の環境技術と優れた製品力を世界に展開し、豊かな社会の構築に貢献する「グローバル環境先進企業」を目指します。三菱電機グループは、以下の多岐にわたる分野で事業を展開しています。重電システムタービン発電機、水車発電機、原子力機器、電動機、変圧器、パワーエレクトロニクス機器、遮断器、ガス絶縁開閉装置、開閉制御装置、監視制御、保護システム、大型映像表示装置、車両用電機品、エレベーター、エスカレーター、ビルセキュリティーシステム、ビル管理システム、粒子線治療装置、その他産業メカトロニクスプログラマブルコントローラー、インバーター、ACサーボ、表示器、電動機、ホイスト、電磁開閉器、ノーヒューズ遮断器、漏電遮断器、配電用変圧器、電力量計、無停電電源装置、産業用送風機、数値制御装置、放電加工機、レーザー加工機、産業用ロボット、クラッチ、自動車用電装品、カーエレクトロニクス、カーメカトロニクス機器、カーマルチメディア機器、その他情報通信システム無線通信機器、有線通信機器、監視カメラシステム、衛星通信装置、人工衛星、レーダー装置、アンテナ、放送機器、データ伝送装置、ネットワークセキュリティーシステム、情報システム関連機器及びシステムインテグレーション、その他電子デバイスパワーモジュール、高周波素子、光素子、液晶表示装置、その他家庭電器液晶テレビ、ルームエアコン、パッケージエアコン、ヒートポンプ式給湯暖房システム、冷蔵庫、扇風機、換気扇、太陽光発電システム、電気温水器、LED ランプ、蛍光ランプ、照明器具、圧縮機、冷凍機、除湿機、空気清浄機、ショーケース、クリーナー、ジャー炊飯器、電子レンジ、IH クッキングヒーター、その他

Page 3:2ContentsOVERVIEW23456789101112131415135791113151719212325293133e-F@ctory旭硝子株式会社セーラー万年筆株式会社東北大学本田技研工業株式会社オムニヨシダ株式会社三菱電機名古屋製作所三菱電機名古屋製作所三菱電機名古屋製作所三菱電機名古屋製作所三菱電機福山製作所情熱ボイス(開発ストーリー) シーケンサ【MELSEC iQ-R篇】三菱電機FAサイト海外サービス拠点国内アフターサポートFA環境への移行で信頼性向上、柔軟なプログラム開発との両立も制振制御機能でロボットの残留振動を抑えて、タクトタイム短縮デマンド管理と集中検針による省エネ推進、15%の節電要請に応える生産と安全の見える化による運用管理効率化センサ管理による予防保全と安全性確保耐久性の向上で運用保守コストを6分の1に低減空調/照明制御強化によるエネルギー使用量削減生産実績の見える化と設備稼働率向上作業の明確化による生産性・品質の向上生産現場における生産管理端末の信頼性向上…………………………………………………………………………………………………………………………………………

Page 4:3品質向上生産性向上C言語センサ製品群サプラエンジニアチェーンITシステムエッジコンピューティング生産現場データ1次処理 ・e-F@ctory「生産性」「品質」「環境性」「安全性」「セキュリティ」の向上を実現し企業のTCO※削減と企業価値の向上を支援FA技術とIT技術を活用することで開発・生産・保守の全般にわたるトータルコストを削減し、お客様の改善活動を継続して支援するとともに、一歩先のものづくりを指向するソリューション提案※TCO: Total Cost of Ownership生産現場の「みえる化3(キューブ):見える、観える、診える」と「使える化」により企業価値向上を支援します見える化:可視化生産現場のデータをリアルタイムに収集観える化:分析FAで収集したデータを一次処理し(エッジコンピューティング)ITシステムへシームレスに連携診える化:改善ITシステムによる分析・解析結果を生産現場にフィードバック

Page 5:4安全性向上 セキュリティ省エネMESインタフェースコントローラコントローラ製品群省エネ製品群駆動製品群メカトロニクス製品群情報連携since2003FA-IT販売・物流サービス運用・保守製品設計 工程設計調達生産製造イチェーンリングMESSCADASCMシミュレータERPCAD/CAM情報連携処理・分析e-F@ctorye-F@ctory1

Page 6:5旭硝子株式会社 (シーケンサ+C言語 活用事例)FA環境への移行で信頼性向上、柔軟なプログラム開発との両立もガラスメーカー世界最大手の旭硝子は、自動車用ガラスの製造工程で三菱電機のコントローラユニット「C言語コントローラ」を2010年から導入し、グローバルの生産拠点に展開中だ。現場の機器制御にパソコン上で動くプログラムを長年使用していたが、C言語コントローラを使ったFAの環境へ移行。故障やセットアップなど管理にかかる負担を軽減すると同時に、技術者のアイデアを生かしたものづくりも推進している。旭硝子は世界最大手のガラスメーカーとしてグローバルで知られている。建材や液晶ディスプレイ、ハードディスク基板などさまざまな用途向けのガラスを製造しているが、中でも主要な生産品となっているのが自動車用のガラスだ。同社のガラス事業のうち自動車用ガラスは2割強を占めており、同社のビジネスを象徴する製品となっている。ガラスの製造工程は、ベースとなる素板を作る工程と、その素板を用途に応じて加工する工程に分けられる。素板を加工する工程では、大きなガラスの素板を必要なサイズにカットしたり、曲げたり表面を加工したりする作業が行われる。自動車用ガラスの場合、フロントガラスやリアガラスなど使用する部位に応じて必要な加工方法はすべて異なり、それが自動車の種類の数だけ存在するため、加工の工程はかなり複雑だ。【事例のポイント】1. PCの環境から堅固なFAの環境に移行することで耐久性を向上し、管理負担を軽減2. C言語コントローラ活用により、C/C 言語による開発ノウハウをFAの環境でも適用3. 機器をC/C 言語でプログラミングできるため、技術者がアイデアをいち早く試せるCase studyこの加工の工程のMES(製造実行システム)として、同社はパソコンベースのプログラムを活用してきた。生産計画をもとに現場の設備を稼働させるシステムをC/C 言語で開発し、汎用のパソコン上で動かしていたが、その運用に以前から課題があったという。大きな課題の一つは、システムとパソコンの相性が合わなくなることがある点だ。ガラスの加工のために画像処理など高度な機能を利用しているものの、パソコンのOSやドライバなどのバージョンアップ後にシステムとの調整が微妙に狂ってしまうことがあるという。パソコンは固定的なシステムではなく、バージョンアップで進化しながら機能強化できるのが利点だが、「生産現場ではそれは逆効果になることがあります」と同社生産技術センターの有富晃彦氏は話す。加えて事務作業向けに作られた汎用のパソコンは、工場のように振動や塵などが多い環境ではどうしても故障などのトラブルが避けられない。生産効率を極限まで高めていても、設備を制御するパソコンがひとたび停止してしまうと、稼働率は大きく低下するのだ。ドライバやネットワークの設定作業にもそれなりの手間がかかる。そこで同社は、システムをFA機器の環境へ移行させることを検討した。工場での利用向けに作られたFA機器ならば、高い耐久性が期待できるはず。具体的に検討したのは三菱電機のシーケンサだ。「コントローラ同士がバスレベルで高速につながるし、モーションコントローラやI/Oユニットなど周辺ツールも多く、いろんな可能性が広がりそうと考えました」(有富氏)。しかし実際にシーケンサに置き換えるとなると、C/C 言語で開発した既存のプログラムを、すべてラダーで書き直さなくてはならないし機能面からもそれは不可能。そこで同社がシーケンサと合わせて導入することにしたのが「C言語コントローラ」だ。PCの進化は生産現場には逆効果旭硝子の事業の象徴的存在である自動車用ガラスパソコンをベースとしたシステムでは管理が煩雑になりがちガラスの加工工程は複雑で、ロボットなど自動化機器があらゆるところで使われている

Page 7:6C言語コントローラは、シーケンサをC/C 言語で制御可能にするCPUユニット。シーケンサ本体と一緒にベースユニットに装着し、C/C 言語のプログラムでシーケンサを制御できる。シーケンサを使うためにラダーを習得したり、一から開発し直したりする必要がないのが特徴だ。同社がC言語コントローラ導入を決めた理由は、C/C 言語のプログラム資産を活用できる点に加えて、「C言語コントローラは余計な機能をそぎ落としている機器」(有富氏)であり、現場の機器制御に特化したソリューションだったことにある。汎用のパソコンと違いC言語コントローラが搭載するのは、基本的にFAの環境で実行するのに必要な機能だけ。故障が起きやすい駆動部などが少なく、もとから生産現場用に開発されているため、高い耐久性を実現している点が、生産効率の向上やメンテナンスコスト低減に効果的なわけだ。同社は2010年、まずC言語コントローラによるシステムを、自動車用ガラス製造拠点の一つである愛知工場(愛知県武豊町)に導入。本格展開に向けて実証を始めたところ、耐久性など当初から期待していた効果に加えて、リアルタイムのシステム管理という別の効果も得られたという。「パソコンベースのシステムの場合、たまに止まるうえに、端末の画面を見に行かない限りどこが止まったか気がつきません。C言語コントローラとシーケンサのシステムならば、現場のGOTやアラームなど、つなぐシステムを工夫することで機器の停止を具体的に知らせることができるので、ダウンタイムを短くすることができます」(有富氏)。もともとFAはリアルタイム性が要求される世界。パソコンベースでは困難なリアルタイム化が、C/C 言語というパソコンの開発環境でも実現できる点が評価されたのである。同社のC言語コントローラ導入はMESだけにとどまらない。以前からラダーでシーケンサを使ってきたモーション制御や温度制御、ワークの搬送制御などの用途でも、C言語コントローラの導入を始めている。その目的を有富氏は「自分たちでプログラムを作りやすいようにするため」と説明する。Case study「例えば小ロットに対応したものづくりなどを進めようとすると、大量のデータを扱う必要があるなど、既存の機器では十分対応できないことがあります。そのような課題に直面したとき、技術者は自分でプログラミングして解決したくなります。その時、C/C 言語でシステムを開発できるのはありがたいものです」(有富氏)。新しいものづくりに取り組もうとすればするほど、既存の機器に技術者が自らの経験に基づいた“味付け”をすることが求められる。機器に技術者のアイデアを反映させるためには、機器を制御するシステムが柔軟で、しかも技術者が開発しやすいものでなくてはならない。C/C 言語という多くの技術者が使いこなせる開発言語で機器に付加価値をもたらすことで、従来にないものづくりが実現するというわけだ。同社はC言語コントローラをMESとして利用するだけでなく、「簡易的なNC装置や画像処理システム」(有富氏)としても利用し、既存の機器をC/C 言語のプログラムで付加価値を高めることに取り組み始めているという。一方で有富氏は「C言語コントローラのOSであるVxWorksが、Windowsに比べて少し難しく感じたのは事実」と打ち明ける。しかし「ベンダからの手厚いサポートのおかげで、現在は抵抗なく使えています」(有富氏)。愛知工場で実証されたC言語コントローラによるシステムは、同社のモデルとして位置付けられ、その後国内だけでなく中国や台湾など海外の工場にも横展開が進んでいる。2015年には自動車メーカー進出が相次ぐメキシコで新工場が稼働を始める予定で、ここでは当初からC言語コントローラを前提とした生産設備が立ち上がることになっている。今後も新しい工場の建設のタイミングでC言語コントローラの導入を積極的に進めていくという。余計な機能をそぎ落としたC言語コントローラ技術者が自らプログラミングできる旭硝子は愛知工場をモデルに最初にC言語コントローラを導入旭硝子が機器の制御用に導入したシーケンサとC言語コントローラ旭硝子の生産技術センター共通基盤グループ電子制御ファンクションプロフェッショナルの有富晃彦氏GOTで機器の動作状況を現場で知ることができる導入した当社製品・ソリューションのご紹介MELSEC iQ-RシリーズC言語コントローラスタンダードモデル“R12CCPU-V”従来のマイコンボード、パソコンなどのC言語資産を流用でき、VxWorksを搭載したコントローラにより、リアルタイム性の高い装置を実現するCPU。シーケンサ MELSEC生産現場の声に応え進化を続けてきたMELSECシリーズ。高い信頼性と豊富な品揃えで、高度化する生産現場に新たな可能性をご提供します。⃝創立:1907年9月8日⃝事業内容:ガラス・ディスプレイ・化学・電子部材などの事業を展開⃝URL:http://www.agc.com/三菱電機FAサイト2015年12月掲載2旭硝子株式会社

Page 8:7セーラー万年筆株式会社制振制御機能でロボットの残留振動を抑えて、タクトタイム短縮セーラー万年筆のロボット機器事業部は、新たに開発した射出成形品の自動取出機に、三菱電機のサーボモータ「MELSERVO-J4」を採用した。タクトタイム改善に対する顧客の要望に応えるには、取り出し部の動作後の揺れをできるだけ抑える必要がある。さまざまな手法を試行錯誤した結果たどり着いたのが、制振制御のためにサーボのパラメータを自動チューニングする機能を備えたJ4を組み込むというソリューションだった。セーラー万年筆は国内 で最 初に万 年 筆を製造したメーカーとして名高い。万年筆 の ほか各 種 文 具などの 開 発 販 売 を手がけるセーラー万年筆は、ロボット事業でも知られている。1970年、筆記具のインクカートリッジ成形の自動化を目的に、自社で開発したロボットの外販から始まった同社のロボット事業は、現在はそのユーザのすそ野を大きく広げており、自動車や医療、食品などあらゆる分野の生産現場で同社のロボットが使われている。その同社のロボット事業の中でも定評があるのが、射出成形品の自動取出機だ。射出成形で金型に樹脂を注入し固まらせた後、その成形品を金型から取り出す役目を果たすロボットである。成形品の取り出しは金型が開いているわずかな時間に行わなくてはならず、手作業では高速に移動する金型に手をはさんでしまうようなことも起こりえる。そのため取り出し作業をロボットで自動化することは、作業効率だけでなく安全性の面からも効果が大きい。同社は顧客からの要望を受け、自動取出機の機能向上に継続的に取り組んでいる。特に「取り出し速度の向上」は、生産効率に直結する機能改善のため、同社にとって重要な開発テーマだが、さらなる改善を目指そうとすると大きな課題があった。ロボットの残留振動の問題だ。【事例のポイント】1. 制振制御機能でアームの動作後の揺れを抑え、タクトタイムを短縮2. パラメータを自動調整することで、段取り替えの負担を削減3. サーボは従来と同じ外形寸法を維持し、容易な移行を可能にCase studyロボットは機械が物理的に動く以上、動いた後に止まる際の振動は避けられない。しかし振動が大きいと、止まるのを待つのに時間がかかる。ロボットが揺れている状態のまま取り出しにかかると、成形品の適切なところをつかめず、品質に影響が出たり成形品を取り損ねたりすることもある。「特に小型の製品では精緻な位置決めが求められるため、安定させなければなりません」と、同社ロボット機器事業部技術部電気設計課の佐上敦則係長は言う。振動を抑えるには、アームの剛性を高めて揺れにくくする方法や、アームの動きを遅くする方法が考えられるが、いずれも現実的ではない。剛性を高めればロボットは大きく重くなり、機械そのもののコストだけでなく消費電力も増大してしまう。また動きを遅くすればタクトタイムに影響が出るからだ。生産性向上のためにユーザがタクトタイムをいかに短くするかに取り組んでいる中で、逆に長くするような手法はありえない。もちろん同社は従来からも、こうした方法に頼らずに振動を抑えるための取り組みは続けてきた。その一つが、作る成形品に合わせたパラメータの調整だ。サーボをチューニングすることで、動作後の揺れを最小限に抑えることは可能だが、成形品ごとにパラメータを変えるようなことはできない。速度や加減速度を変えることはユーザ側でも可能だが、振動を抑えるには動作を遅くするしか対応方法はないため、やはりタクトタイムが長くなってしまうのである。「多品種生産に対応するために、パラメータを自動調整することができないか、というのが新しい自動取出機開発の大きなテーマでした」(佐上氏)。そこで候補に挙がったのが、三菱電機のサーボモータ「MELSERVO-J4」の採用だった。複数の種類の成形品に対応させたいロボットのアームの先にある成形品取り出し部分。高速に動くため、止まるときの振動をどう抑えるかが課題だったセーラー万年筆ロボット機器事業部技術部電気設計課係長の佐上敦則氏セーラー万年筆ロボット機器事業部のロボット製造拠点、青梅工場

Page 9:8J4は、負荷に応じて振動を自動的に抑える機能をさらに高めた「アドバンスト制振制御II」を搭載しているのが特徴だ。取り出す成形品の重さによってどのようにアームの先端が揺れるか、その周波数を測定し、抑える方向に自らサーボのパラメータを自動調整する。扱う成形品が変わってもそれに応じて最適化されるため、多品種生産の現場でも振動を抑えることと、それによるタクトタイム短縮が可能になったのである。実は同社は、サーボのパラメータ自動調整機能による振動問題解決を、三菱電機を含めた数社に相談していたという。しかし各社のサーボモータを比較検討した結果、求める速度や正確性を実現できるものとして最終的に選択したのはJ4だった。J4に決定した大きな理由はもう一つある。同社は従来の自動取出機で、三菱電機のサーボモータJ2を使っていた。新しい自動取出機開発にあたっては、大きさなど機械系の設計は可能な限り踏襲することが求められた。現行の自動取出機からユーザの移行を推し進めるためには、外形寸法などは変えられないからだ。外形寸法を維持しようとすれば、モータ本体の大きさにも互換性が求められる。J4はその点も満たしており、セーラー万年筆で設計に当たる担当者やエンドユーザの負担を、最小限に抑えることができたのである。Case studyJ4のアドバンスト制振制御機能の効果はてきめんだ。同社によると、標準的な取り出し動作で比較した場合、ロボットハンドが取り出しのために動作を開始し、取り出しを終えて戻ってくるまでの時間は、J4搭載により10%以上短縮したという。タクトタイム短縮は極限まで進んでおり、中には取り出しのために金型が開く時間がわずか数秒という製品もある。そのわずかな時間の間で位置決めや取り出しなど一連に動作を正確に行いながら、さらに短縮することが求められていることを考えると、改善効果は大きい。「サービスエンジニアが徹底的に追い込んでくれた結果です。ここまで大きな短縮効果が得られるとは思っていませんでした」(佐上氏)。J4を組み込んだセーラー万年筆の新しい自動取出機「RZ-ΣⅢシリーズ」は、2014年10月に発売された。J4の高い制振制御機能により、パラメータの自動調整が可能になったことへのユーザの評価は高く、発売後引き合いは順調に拡大しているという。佐上氏は「自動取出機で、J4の効果とそれをサポートする三菱電機の技術力を、再認識することができました。今後は搬送機器や検査加工装置など、他のロボットの機能向上にも生かしていきたいと考えています」と話す。RZ-ΣⅢはJ4の制振制御機能だけでなく、ロボット自体にもチューニング機能向上を施しており、それぞれのノウハウの組み合わせが業界からの高い評価のもとになっている。セーラー万年筆と三菱電機、両社がユーザの課題解決に向けて良好なコミュニケーションを進めてきたことが、画期的な自動取出機の実現を可能にしたと言えるだろう。10%以上の取り出し速度向上他のロボットにも活用へMELSERVO-J4を採用したセーラー万年筆の新しい自動取出機「RZ-ΣⅢ」RZ-ΣⅢに搭載されたMELSERVO-J4導入した当社製品・ソリューションのご紹介MELSERVO-J4シリーズ サーボアンプ安全、そしてエコ。目指すものは業界最速だけではない。脈々と受け継がれてきた技術と信頼の進化形。業界最高水準の機能、性能だけではなく、人、環境との豊かな交響をめざしたMELSERVOの最新作です。セーフティ規格対応やエコ時代に応える省エネ機能を搭載。三菱電機FAサイト2016年2月掲載⃝創立:1911年2月11日⃝事業内容:万年筆やボールペンなどの文具、ロボット機器などの開発・販売⃝URL:http://www.sailor.co.jp/3セーラー万年筆株式会社

Page 10:9東北大学デマンド管理と集中検針による省エネ推進、15%の節電要請に応える東北大学ではキャンパス内で使用する電力の増加を抑えるために、三菱電機の電力管理機器を使った電力のデマンド管理や、集中検針による消費電力の見える化を推進している。東日本大震災後の電力不安をきっかけに強化された節電への取り組みだが、デマンド監視などにより具体的な指標をもとにした節電が可能になり、エンドユーザの節電意識も高まるなど、節電の活動がキャンパス全体で加速しているという。2007年に創立100周年を迎えた東北大学では、次の100年に向けて飛躍と発展を遂げるためのプロジェクト「新青葉山キャンパスマスタープラン」を展開している。キャンパスの機能集約などを目指すこのプランのもと、2011年度には新キャンパスが開校。その後も新しい学習・研究環境の整備は続いている。そのプランを推進する中で、テーマに上がったのが「節電」だ。東北大学の契約電力は学生数の増加などを背景に、年々少しずつ増やさなければならない傾向にあった。理系の学部には旋盤や電気炉、クレーンなど、電力を多く消費する設備もあり、その稼働と空調需要が重なる時期などは、使用電力が上限である契約電力に迫る場合もあるという。契約電力を引き上げれば電気の基本料金も上がるため、契約電力の伸びは抑えなければならない。そのため東北大学では、空調や照明の効率的な運用などで節電に取り組んできたが、2011年夏には東日本大震災をきっかけに電力不安がクローズアップされる。大口の需要家に一律15%の前年比削減目標が設定され、それを達成できない場合は罰則が科されることになった。社会全体が節電を求められる中、節電への具体的な取り組みを企画して対外的に発信することは、大学という公的教育機関が社会的責任を果たすうえで欠かせない。従来の節電方法ではもはや十分ではないと考えた結果、東北大学が導入したのが電力のデマンド監視システムだったのである。デマンド監視は、施設全体の電力需要を見える化するもの。東北大学では従来から、キャンパス全体の消費電力が契約電力の90%達した場合、管理部門から現場の職員や教員などエンドユーザにメールなどで節電を要請し、空調の一部オフや、電力を多く消費する実験機器の稼働時間シフトなどの協力を呼びかけていた。メールでの要請はそれなりに効果【事例のポイント】1. デマンド監視で震災後の15%の節電要請に応える2. 個々の部屋の使用電力を集中検針で把握し、具体的なデータをもとにした対策立案が可能に3. 電力の見える化推進によりエンドユーザによる自発的な節電が進むCase studyがあるものの、メールが見られていない場合もあるため、必ずしも十分な節電効果が得られているとは言いにくい。また90%に到達してメールが配信されない限り、エンドユーザが日常の節電を意識することは少ないため、そのままでは電気料金の削減も進まなくなる。そこでデマンド監視による消費電力の見える化で、日頃からどのくらいの電力を使用しているか、関係者に周知することにしたのである。三菱電機のデマンド監視サーバ「E-Energy」やエネルギー計測ユニットなどを元にしたシステムで、キャンパスごとの消費電力を見える化。その情報は受電設備を見るようなことのない一般の大学関係者が誰でも、手元のパソコンからほぼリアルタイムで見ることができる。契約電力の90%到達時はシステムが自動的に警告メールを発するほか、月次や週次単位でのレポートや、前年との対比などを確認することも可能になった。15%の削減目標を実行するうえでも、リアルタイムで消費電力量の推移を見ながら早めに対応することができる。これにより、2011年夏の電力不安を乗り切ることができたという。デマンド監視で効果を上げた東北大学は、2014年からさらなる節電への取り組みを始めることにした。それが青葉山キャンパスの一部で導入した「集中検針」である。デマンド監視がキャンパス全体での消費電力の見える化に対し、集中検針は部屋ごとの消費電力を見手元のPCから消費電力が分かる同規模の部屋と使用電力を比較できる東北大学は電力のデマンド監視のために「E-Energy」を導入一層の節電を進めるため、青葉山キャンパスの一部では集中検針システムを導入100周年を迎えた東北大学は「新青葉山キャンパスマスタープラン」を展開中。写真は青葉山キャンパス理学研究科合同A〜C棟キャンパス全体の消費電力が、エンドユーザの手元のパソコンからほぼリアルタイムで分かる(写真はサンプル)

Page 11:10える化するもの。それぞれの部屋の分電盤に電力量計を取り付け、そのデータをネットワークで事務室の監視盤内にあるデータ収集サーバ「EcoServer」に集約し、LAN経由でパソコンに表示する。従来、個別の部屋ごとの消費電力を確認するには、担当者が電気室まで出向いて一つひとつの電力量計を確認し、紙に転記するしかなかった。そのため随時情報を収集するのは非現実的であり、情報を蓄積して分析することも困難だった。しかし通信機能付きの電力量計とEcoServerにより、電力量計を取り付けた部屋ごとの5分単位の消費電力が、事務室のパソコンで集中的に確認できるようになった。デマンド監視同様に具体的なデータをもとに月次や週次単位で確認・分析し、節電を進めるための計画を立案することができる。電力量の推移を部屋単位で管理することで可能になったのは、節電が必要な部屋を見つけ出すだけではない。教員など部屋を利用する職員が、同規模で同じような実験を行う別の部屋の消費電力と比較するようになり、自らの節電意識を高めることができるようになったのも、集中検針の導入効果と言える。部屋の大きさや実験で使用する器具などはそれぞれ異なるため、消費電力の絶対量だけでは自分が電力を有効活用しているかをはかることはできない。しかし同じような使い方をする同じ規模の部屋ならば比較対象になり得る。工場で節電に取り組む際に、生産量などものづくりの活動レベルを反映させた消費電力で、節電状況を把握する原単位管理のようなものだ。それは大学のような一般の建物でも可能なのである。Case study産学連携の推進に取り組む東北大学では、民間企業から多くの経営者や技術者が研究室を構え、研究活動に取り組んでいる。その研究活動の費用に電力などのエネルギーコストも織り込むことで、個々の研究の収支を正確に把握可能にするというのも、東北大学が集中検針を導入した狙いの一つだ。いかに高い研究成果をあげたとしても、その過程で研究者が大量のエネルギーを浪費していたのでは、大学側としてはあまり歓迎できることではない。消費電力の管理が大学全体いっしょくたで行われている時代は不可能だったエネルギー含めた個々の研究活動のコスト管理が、集中検針により可能になり、研究活動による大学への貢献度を正しく測れるようになるというわけである。消費電力の見える化を推進するソリューションは、さまざまなベンダーが提供している。しかしその多くは入退室管理なども組み合わせた大がかりなビル管理システムであり、東北大学が導入するにはコスト的に見合わなかったという。一方、三菱電機の電力管理ソリューションは、デマンド監視サーバなどの導入で比較的簡単に実現できるシステムであり、大学が望む規模と機能にフィットしたものであったことが、東北大学が導入を決めた理由であったとしている。デマンド監視や集中検針で使用電力の見える化が実現したことで、使用電力に対する現場の職員や教員の意識が高まり、自発的に節電に取り組む動きが進む東北大学では、青葉山以外のキャンパスでも集中監視システムの導入を検討中という。見える化の推進が東北大学に広がることで、大学全体での消費電力低減にさらに弾みがつきそうだ。研究成果を正しく評価するために大がかりでなく必要レベルの規模と機能消費電力を確認する「EcoMeasure」の画面。月次や週次などの単位で分析して、節電活動推進に必要な指標にすることができる(写真はサンプル)個々の部屋に通信機能付き電力量計が取り付けられているLAN消費電力の分析ソフトをインストールしたパソコンEcoServer事務室電力量計 電力量計 電力量計電力量計 電力量計 電力量計電力量計 電力量計 電力量計集中検針システムの概略図。個々の部屋の消費電力をEcoServerで収集し、事務室のパソコンから確認することが可能だ導入した当社製品・ソリューションのご紹介省エネデータ収集サーバ EcoServerⅢ汎用パソコンでEcoServerによるイントラネットの活用により、幅広い「見える管理」システムを実現し、省エネルギー活動を支援します。省エネデマンド監視サーバ E-EnergyWebでの遠隔監視、制御、データ管理が可能です。デマンド管理の見える化を実現します。デマンド監視制御装置 DEMACONまたUSBでのパソコン通信機能とプリンタ印字機能や、SDメモリカードへのデータ出力機能を持ったタイプもあります。日月報・原単位分析ソフトウェア EcoMeasureⅢ三菱監視収集サーバにより収集、出力されるCSVファイルから、原単位分析グラフや日報などの帳票作成をサポートします。三菱電機FAサイト2015年10月掲載⃝創立:1907年6月⃝学部(文学部、教育学部、法学部、経済学部、理学部、医学部、歯学部、薬学部、工学部、農学部)、大学院(文学研究科、教育学研究科、法学研究科、経済学研究科、理学研究科、医学系研究科、歯学研究科、薬学研究科、工学研究科、農学研究科、国際文化研究科、情報科学研究科、生命科学研究科、環境科学研究科、医工学研究科、教育情報学教育部、教育情報学研究部、東北大学インターネットスクール)、専門職大学院(法科大学院 、公共政策大学院 、会計大学院)、附属研究所(金属材料研究所、加齢医学研究所、流体科学研究所、電気通信研究所、多元物質科学研究所、災害科学国際研究所)⃝URL:http://www.tohoku.ac.jp/4東北大学

Page 12:11本田技研工業株式会社生産と安全の見える化による運用管理効率化本田技研工業株式会社は、2013年7月に操業を開始した寄居工場(埼玉県寄居町)に、シーケンサを始めとしたFA機器の制御信号、生産管理情報、および安全信号などを単一のネットワークでやりとりできる、Ethernetベースの「CC-Link IE フィールドネットワーク」を導入し、生産や運用管理の効率化を実現した。寄居工場をマザー工場と捉える同社では、既にメキシコ新工場を始めとした海外工場への水平展開もスタートしており、グローバル規模でのさらなる競争力強化を目指す。2013年7月に操業を開始した本田技研工業(以下ホンダ)の寄居工場(埼玉県寄居町)は、同社が培ってきた高度な生産技術と高効率な生産体制を余すところなく導入した、業界最先端の完成車工場である。ここ数年、国内の新車販売台数は年間およそ500万台前後で横ばいの傾向にあり、かつてのような右肩上がりの成長は見込めなくなっている。そこで生産の徹底的な効率化と省エネルギー化によってコスト競争力を高めようとの狙いで同工場は建設された。緑地を含む敷地面積は95万平方メートルと広大で、フル稼働時には年産25万台の生産能力を予定する。2014年3月時点で「フィット(FIT)」および「ヴェゼル(VEZEL)」の生産が行われている。さらに寄居工場はいわゆる「マザー工場」としての役割も担う。同工場の生産技術やノウハウを国内および海外の生産拠点に順次展開し、グローバルな競争力を高めていこうという計画だ。【事例のポイント】1. マザー工場にふさわしいシンプルかつ堅牢なネットワークを構築2. FA制御機器の「見える化」を実現し、運用管理業務や保全業務を効率化3. 安全情報もネットワークでやりとりすることで、柔軟な増設や変更が可能にCase studyこうした使命を与えられた寄居工場を建設するにあたって、ライン制御機器の設計および選定が2011年後半から本格的に進められた。制御機器の選定に関わり、現在は車体組立ライン生産設備の保全責任者を務める横向拓氏は、「最新鋭の工場にふさわしい制御機器やネットワークはどうあるべきか、という観点で検討を進めていきました」と振り返る。車体組立ラインの制御ネットワークの構築でまず課題になったのは、ネットワークの全体アーキテクチャをどうするかだった。「寄居工場全体を単一のネットワークで接続するフラットな構成も候補にのぼりましたが、ひとつの障害で工場全体のネットワークが停止してしまう可能性を考慮し、目的に応じた複数のネットワークを採用すべきとの判断に至りました」(横向氏)。ただし、用途ごとに個別のネットワークを敷設したのではシステムが複雑になるばかりか導入コストや運用コストが上がってしまう。また、マザー工場である寄居工場のノウハウを他工場に展開することを考えると、堅牢性がありながらもシンプルな構成が望ましい。こうしたアーキテクチャの検討と同時に、ネットワークの要件として二つの機能を定めた。ひとつがFA制御機器の集中的な「見える化」の実現である。車体組立ラインだけを見ても数十台のシーケンサが設置されるため個別に管理したのでは効率が悪くなってしまう。FA制御機器の設定、監視、故障検出などをネットワークを介して集中的に行える環境の構築を目標に据えた。もうひとつが「安全信号」のやり取りだ。作業者が立入禁止エリアに入り込んだりロボットに接近した場合、安全確保のためにセンサーで検知して生産設備を停止(インターロック)しなければならないが、リレーを使って安全回路をハードウェア的に構成する旧来の方法ではラインの増設や変更に伴う組み替えに多大な工数がかかってしまうという課題があった。そこで安全信号についてもネットワーク化し、ラインの変更に応じてフレキシブルに組み換えられるような仕組みを目指した。こうした要件などを踏まえて横向氏らが着目したのが、三菱電機がソリューションとして提供している「CC-Link IE フィールドネットワーク」機器の見える化や安全機能の自由度向上を目指す「CC-Link IE フィールドネットワーク」を選定最先端の生産技術を導入し、「フィット」の生産では50秒を切るタクトタイムを実現したホンダの寄居工場

Page 13:12だった。「CC-Link IE フィールドネットワーク」を使えば、シーケンサやコントローラに与える制御情報のほか、FA制御機器の保全情報や安全情報も一本のEthernetケーブルでやりとりできる。「三菱電機から『CC-Link IE フィールドネットワーク』を紹介されたときに、保全情報や安全情報も扱えることや、さまざまな現場のニーズが反映されていることを知って、それであれば最先端の寄居工場にふさわしいシンプルかつ高信頼なネットワークが構築できると考えました」(横向氏)。また、FA制御機器との親和性もポイントになった。「車体組立ラインは予定の生産台数をこなすためにもラインの稼働率を100%近くに常に維持する必要があり、FA制御機器には信頼性や実績が要求されます。そこで、寄居工場の車体組立ライン向けFA制御機器の選定にあたっては、狭山工場で長年に亘って利用実績があり、私自身もかねてから高く評価している三菱電機製FA制御機器の導入を社内で提案しました。『CC-Link IE フィールドネットワーク』はこれら三菱電機製の制御機器と親和性が高いため、両者を組み合わせることで最適なシステムを構築できると考えたからです」(同氏)。CC-Link IE フィールドネットワークは、物 理 層 およびデータリンク層に通常のEthernetと同じIEEE802.3(1000BASE-T)を採用したフィールド向けのオープンなネットワークで、業界団体であるCC-Link協会(http://www.cc-link.org/jp/)によって標準化と普及が進められている。高速なI/O制御やコントローラ分散制御などをカバーするとともに、スター型やリング型などフレキシブルなネットワークトポロジーが組めるため、制御機器の配置や構成の自由度が高い。また、コントローラ機器の管理(設定およびモニター)や保全(監視および故障検出)にも対応しているほか、複数の安全シーケンサ間で安全情報を共有できる「安全通信機能」も装備するなどの特徴がある。ホンダ社内でのさまざまな検討を経て、最終的に三菱電機のFA制御機器と同じく三菱電機の「CC-Link IE フィールドネットワーク」ソリューションが車体組立ラインに採用され、2012年11月から据付けとテストが順次進められた。なお、詳しい説明は省略するが、実際にはプレス工程、樹脂成型工程、車体塗装等、他のラインにも三菱電機のソリューションが導入されている。Case studyホンダ寄居工場は2013年7月に操業を開始したのち、2013年9月からは2直体制の本格稼動に入っている。「設備やFA機器のトラブル発生時でも、CC-Link IE Fieldの診断機能により、不具合箇所特定までの時間が短縮される等、元々狙っていた‘見える化’の効果を実感しています。また、システムの構築やサポートを含めて、三菱電機の対応にはとても満足しています」と横向氏は評価する。今回の「CC-Link IE フィールドネットワーク」の導入によって、当初の目論見どおり、FA制御機器による集中的な「見える化」が実現された。「車体組立ラインには50台ほどの 三 菱 電 機 製シーケンサが導入されていますが、必要な信号が届いていないなどの状態やトラブルを集中的に把握できるようになり、運用管理の効率がきわめて高くなったほか、復旧に要する時間も短縮されました」(同氏)。また安全情報については、三菱電機製の安全シーケンサを追加する場合でも「CC-Link IE フィールドネットワーク」の空きポートにLANケーブルで接続するだけで増設作業が完了するため、インターロックをすぐに適用できるなど作業負担が軽減された。ホンダ社内ではこうしたメリットを高く評価し、2014年1月に稼働を開始したメキシコの新工場にも、同様のシステムを導入している。まさにマザー工場としての役目を果たしているといえるだろう。自動車産業を取り巻く市場の状況は大きく変化している。先進国では新車販売が伸び悩む一方で新興国市場では大きな成長が見込まれており、さまざまな自動車メーカーが覇権を競っている状況だ。生産の効率化による競争力向上は自動車メーカーにとって常に命題であり、ホンダも寄居工場をマザー工場としながらさらなる効率化を目指していく考えだ。将来の先進的な生産体制の構築に向けて、三菱電機のFA統合ソリューションに対する期待はいっそう高まっているといえるだろう。50台のシーケンサの一括管理と運用効率化を実現本田技研工業株式会社 埼玉製作所 寄居工場寄居管理ブロック 保全責任者 横向 拓 氏導入した当社製品・ソリューションのご紹介CC-Link IE フィールドネットワーク1つのネットワークで高速なI/O制御からコントローラ分散制御までをカバーし、機器のレイアウトに合わせた自由度の高い配線性をも実現するEthernetベースのオープンフィールドネットワークです。MELSEC-Qシリーズナノオーダの高速な基本命令処理により装置、機械のパフォーマンスを飛躍的に向上する新世代シーケンサ「MELSEC-Q」。日々高度化する生産設備や製造設備に対応して高速・高精度・大容量のデータ処理、マシン制御を実現します。三菱電機FAサイト2014年7月掲載車体組立ラインに採用されている三菱電機のシーケンサ「MELSEC-Qシリーズ」システム構成イメージ図※本図はイメージであり、実際の 寄居工場とは異なります。⃝設立:1948年9月24日 ⃝事業内容:四輪車や二輪車などの製造および販売●FITおよびVEZELは本田技研工業の登録商標です。本田技研工業株式会社5本田技研工業株式会社

Page 14:13オムニヨシダ株式会社センサ管理による予防保全と安全性確保搬送機器メーカーのオムニヨシダ株式会社は、垂直搬送機の安全性を高めるために、「安全シーケンサ」を組み込んだ搬送機を開発した。垂直搬送機にはもとから故障時のリスクを回避するシステムが組まれているものの、「ISO13849-1」「IEC 61508」の安全規格に適合した安全シーケンサの採用により、シーケンサそのものの故障によるリスク低減も図るという、より安全面に配慮した新しい搬送機となる。またセンサの管理を効率化するために、エニイワイヤのセンサ管理ソリューション「AnyWireASLINK」を組み合わせ、センサ自体の故障によるトラブルも未然に防ぐ仕組みがとられている。倉庫や工場などで使われる搬送機など、物流機械を開発・販売するオムニヨシダ。リフトやコンベヤ、シャトルローダーなどその取り扱い製品は多岐に渡るが、中でも同社の事業の大きな柱となっているのが、「オムニリフター」と呼ばれる垂直搬送機だ。上層のフロアと下層のフロアの間でパレットや台車を搬送する機器で、同社のオムニリフターは特に強度に優れているのが特徴。数トンレベルの荷物でも、高速に搬送できる性能を持っていることが高く評価され、大手運輸会社の物流拠点などに幅広く採用されている。モノを動かす搬送機器には、周りで作業するスタッフや荷物そのもののガードも含めた安全性の確保が欠かせない。特にオムニリフターのように重量のある荷物を上下に搬送する機器は、万が一荷物が落下したりすると大きな事故につながりかねないため、安全に搬送するための仕組みが何重にも亘ってとられている。オムニリフターには、光電スイッチを始めとした100組前後のセンサ類を備えている機種が少なくない。搬送するパレットに台車が確実に乗っているか、台車を押してきた作業者は装置の周囲から退出しているか、パレットは確実に昇降路内に収まっているか、などを光電スイッチからの情報で確認し、安全性に影響を及ぼすような状況が見つかれば、搬送機は運転を自動的に停止するというシステムだ。【事例のポイント】1. シーケンサ+CC-Link IE Field CC-Link Safetyで安全性確保の機能性、信頼性を向上2. 自己診断可能な安全シーケンサで故障をタイムロスなく検知3. 多数のセンサを集中管理し予防保全や断線箇所特定が可能にCase studyこうした制御に、従来同社は安全リレーを使ってきたが、「安全性は、追求して追求し過ぎることはないのです。」と同社生産部部長の松内幸次氏は言う。もう一段上の安全性確保を目指し、安全リレーだけでなく高精度で高速な制御が可能なシーケンサを使用、そのシーケンサの中でも同社が着目したものが安全シーケンサ「MELSEC-QS」シリーズだった。安全性を最優先する、と言っても肝心の安全ための制御を行っているシーケンサ自体が壊れ、危険になってしまうと、安全は果たせなくなる。そこで今回同社が安全性を高める為に選んだのは、安全規格に適合した安全シーケンサのMELSEC-QSだった。MELSEC-QSはMELSEC-Qをベースに作られた安全制御のためのシーケンサである。安全制御に使用できるように安全シーケンサ自体に故障が発生した場合には、自己診断により故障を検出し安全出力をOFFする。また、外部機器との配線の診断機能を持っており、配線に問題がある場合は異常を検出するので、故障時でも安全性を確保できるようになる、というわけである。三菱電機の安全シーケンサは、一般制御を行っているシーケンサと同様の操作性で安全制御を構築できる。(中・大規模の安全制御にCC-LinkIE Field、CC-Link Safetyによる分散制御とラダー&ファンクションブロックによるフレキシブルなプログラミングが可能。)安全に関する追加機能を理解する必要はあるが、基本的な操作・仕様は一般のシーケンサと同様で短時間でシステム構築ができ、システム構成の変更で安全入出力機器を増やした場合も、CC-Link Safetyのリモートに配線し、設定とプログラム変更が容易である。また、ネットワークの異常や配線の問題箇所も診断結果として確認できるので、短時間の対応が可能となる。「リレーで安全回路を組むことはできますが、回路が固定的なものになり融通が利きません。シーケンサとフィールドネットワークの組み合わせならば、搬送機の構成が変わっても容易にシステムの組み直しが可能。このフレキシブル性が魅力です。」(生産部設計課制御担当課長の中野勝利氏)。安全通信機能の優先を担保する、2個のCPUシステム構成の組み直しにも有効な、「CC-LinkSafety」、「CC-Link IE Field」の高い融通性「安全対策にはゴールはない」オムニヨシダ生産部部長の松内幸次氏オムニヨシダの垂直搬送機「オムニリフター」は強度に優れ、重い荷物の搬送にも対応できるのが特徴

Page 15:14中野氏は「開発環境は一般のシーケンサと同じなため、プログラミング開発も容易でした」と話す。一般的に安全シーケンサは、普通のシーケンサと違う特別な開発環境を必要とすることが多いが、MELSEC-QSは同じ開発環境が使える。そのため安全シーケンサへの移行が容易というわけである。さらに今回開発した垂直搬送機では、安全性確保のカギを握るセンサの管理についても工夫を施している。センサを集中管理するエニイワイヤのセンサ管理ソリューション「AnyWireASLINK」の採用だ。センサは経年変化により、汚れによる光量の低下や断線による機能停止が避けられない。またちょっとした衝撃などで位置ずれが起きると、やはり十分な機能を提供できなくなる。そのため停止する前のメンテナンスが重要だが、搭載するセンサの数が100組にものぼると、メンテナンスが必要なものを見分けるのが難しい。また停止した際も、100組のセンサのうち具体的にどれに不具合が発生しているのか、見つけるのにも手間がかかる。「センサが壊れる前に適切なメンテナンスを行えるようにするには、見える化が必要と考えました」(生産部設計課制御担当の木下太一氏)。そこで採用したのがAnyWireASLINKだった。多数のセンサを集中管理することを可能にするソリューションで、光量のレベルを常に監視することで、検知が不能になる前に交換や清掃などを施すことができる。また断線時にその場所をすぐに特定することができ、短時間で原因究明が可能になるという効果ももたらす。AnyWireASLINKを垂直搬送機のセンサ管理機能として組み込むことで、「センサのライフサイクルの中で、いつどのセンサを交換すればよいかが分かるようになりました」と木下氏は評価する。またAnyWireASLINKは、ターミナルを介して多数のセンサのケーブルを集約することができるため、省配線を実現できる点も大きなメリットだ。「特に搬送機が数多く並ぶ現場ほど、大きな効果が得られるでしょう」(中野氏)。今回の垂直搬送機では、従来に比べて約30%Case studyのケーブル削減が実現できたという。その分、断線によるトラブルのリスクは低減できることになる。今回開発した垂直搬送機は特定顧客のオーダーに基づいて開発したもので、現時点では具体的な型番を持つ製品とはなっていない。しかし「オーダーがあればいつでも提供できるようにし、高い安全性を求めるユーザのニーズに応えていきたい(松内氏)」。その強い思いは搬送機器市場のリーディングカンパニーとしてのオムニヨシダ株式会社ならではのミッションでもある。センサが故障する前にメンテナンス開発のしやすさも、安全シーケンサを使うことを決めた理由の一つオムニヨシダ生産部設計課制御担当課長の中野勝利氏オムニヨシダ生産部設計課制御担当の木下太一氏導入した当社製品・ソリューションのご紹介AnyWireASLINKたMELSERVOの最新作です。セーフティ規格対応やエコ時代に応える省エネ機能を搭載。FAネットワーク生産現場を危険から守る、安全フィールドネットワーク「CC-Link Safety」、自由度の高い配線性を実現できるEthernetベースのオープンフィールドネットワーク「CC-Link IE フィールド」をご採用いただきました。MELSEC-QS 安全シーケンサ国際安全規格の適合認証を取得した安全制御のためのシーケンサ。安全I/O点数の多い大規模なラインの安全制御システム構築に最適です。安全ソリューション安全システムの構築に必要な、安全制御機器、安全駆動機器、安全コンポーネントを取りそろえ、その3つを連携させた安全トータルソリューションをご提案しています。三菱電機FAサイト2014年11月掲載AnyWireSETLJ51AW12BYRUN LINK SET ALM24V0VDPDNLG2121212121LINK01LINK01ASLINKER(ケーブルタイプ)ASLINKER(M12コネクタタイプ)AnyWireASLINKマスタユニット2線式(非絶縁)2線式(非絶縁)シーケンサDC24V専用フラットケーブル(2線)2 12 1ASLINKAMPASLINKSENSORアドレスライタ2 12 1212121ターミネータ(伝送ライン用)2Pリンクコネクタ光電センサ(透過式)21近接センサアンプ1台で使用(親機のみ)アンプ複数台で使用(親機+子機)汎用ヘッド(光電、ファイバ)汎用ヘッド(光電、ファイバ)2 12線式(非絶縁)2線式(非絶縁)フォトインタラプタAnyWireASLINKの構成。設備にある多数のセンサを一括管理する⃝創立:1929年4月⃝事業内容:物流機械器具及び省力機器全般の設計・製造・販売事業など⃝URL:http://www.omni-yoshida.co.jp/6オムニヨシダ株式会社

Page 16:15三菱電機名古屋製作所C言語コントローラは三菱電機の名古屋製作所で作られています。その名古屋製作所の至るところで、C言語コントローラが実際に稼働中です。製品の出荷前試験装置を制御するパソコンの代わりにC言語コントローラを配置することで、耐久性や保守性の向上などにより運用保守コストを6分の1にまで削減しています。三菱電機名古屋製作所は、FA関連製品の中心的な製造拠点です。C言語コントローラをはじめ三菱電機のシーケンサやGOT、インバータなどの多くはここで組み立てられ、出荷されています。いずれの製品にも共通する製造工程の一つが、組み立て後の出荷試験です。部品を実装した基板などを組み立てた後、一つひとつの機能が正しく動作するかなどを全数チェックします。シーケンサのCPUユニットの場合、そのチェック項目は30種類以上に及び、しかも製品ごとにチェック内容が異なるため、出荷試験の自動化が欠かせません。出荷試験自動化のために、名古屋製作所や協力工場では自社で開発した試験装置を使用しています。試験装置はWindowsベースのパソコンとVisual Basicで開発したアプリケーションからなり、その基本的な構成は20年以上変わらなかったものの、製品数の増加などで試験装置が増えてくるにつれて、システムの管理・保守の工数が増加傾向にありました。【事例のポイント】1. 故障対応にかかる負担を軽減し、運用保守コストを大幅に削減2. 生産現場に適したFA機器採用で長期信頼性、対環境性などを高めシステムの安定性を確保3. 省配線化が実現しシステムがコンパクトにCase study管理・保守の工数が増える大きな要因は試験装置に搭載したパソコンの故障です。一般の事務用途と違い生産現場のパソコンは高負荷で長時間動き続けているうえに、振動やほこりなども多いため、パソコンを使用し続けるには厳しい環境です。特にハードディスクに故障が起きやすく、生産現場では故障に備えて予備のハードディスクも用意しているものの、故障時には試験装置を止めて交換や立ち上げ調整をしなくてはなりません。パソコンの製品サイクルも、試験装置を運用するうえでは悩みの種でした。本体の販売中止やOSのサポート切れなどで、「現在使っているものと同じものが、手に入らないことがある」(名古屋製作所FA工作部設備開発課長の喜多博文)ためです。出荷試験という特定の目的を満たせるならば、パソコンは最新のものである必要はありません。むしろ新しくなると改めて動作確認などが必要なため、導入には負担が伴います。しかしパソコンの製品サイクルは速く、半ば必然的に新しいものを導入せざるをえませんでした。特に「OSの更新の際には、新しいシステムを作るぐらいの手間がかかっていました」(喜多)。作る製品の種類が増えれば増えるほど試験装置も増えるため、試験装置にパソコンを使うことによる問題は将来的にも広がる恐れがあります。そこでC言語コントローラを、パソコンの代わりに使用することにしたのです。同じパソコンが手に入らない名古屋製作所 FA工作部設備開発課長 喜多博文名古屋製作所 FA工作部設備開発課専任 加藤 浩従来のパソコンベースの試験装置のシステム構成耐久性の向上で運用保守コストを6分の1に低減

Page 17:16C言語コントローラは、シーケンサのベースユニットに装着することで、シーケンサをC言語で制御可能にするCPUユニットです。名古屋製作所では2010年から、試験装置内のパソコンを順次C言語コントローラへ移行することにしました。従来のシステムでは、パソコンにシーケンサのほか、パソコンを操作するためのキーボードやディスプレイ、プリンタやLANがつながっていました。LANの先には生産管理データベースがあり、シーケンサによる試験結果の情報が蓄積される仕組みです。C言語コントローラはこのパソコンの部分をそのまま置き換えるものです。C言語コントローラはUSBやLAN、VGAのインタフェースも持っており、パソコンで使っていた周辺機器がそのままつながるため、システム構成はほとんど変わらないことになります。C言語コントローラがパソコン利用にまつわる問題の解決に有効な理由の一つは、FA専用に作られている点です。生産現場での使用を前提で開発されているため、パソコンに起こりがちな故障要因となるハードディスクなどの駆動部がなく、故障のリスクが大幅に低減しています。また長期に渡り製品供給が不可欠なFA機器では、パソコンのような速い製品サイクルはなく、販売中止による影響を受けることが少ないことも、C言語コントローラがパソコンの代替として効果を持つ理由です。名古屋製作所ではシーケンサの試験装置を皮切りにC言語コントローラへの置き換えを開始。当初はC言語コントローラとパソコンを併用する形での移行でしたが、C言語コントローラのラインナップ拡充に伴い機能強化が進み、C言語コントローラ単独でもほとんどの機能をカバーできるようになり、置き換えが加速しています。Case studyC言語コントローラへの置き換えは、パソコンの耐久性や供給面以外の効果ももたらしています。「省配線化でシステムがコンパクトになった」(名古屋製作所FA工作部設備開発課専任の加藤浩)ことです。C言語コントローラはベースユニットと一体化しているため、複雑な配線が必要なくなり、さらにパソコンを設置するスペースも不要になったからです。喜多のチームでは、パソコンからC言語コントローラへの切り替えによる導入効果を試算しました。それによると、従来のパソコンをベースとした試験装置の場合、パソコンの製品寿命から約4年でパソコン交換の必要があり、新しいパソコンへのシステム変更やその動作検証など煩雑な交換調整が発生していました。これに対しC言語コントローラは、FA向けに作られているため耐久性に優れ、少なくとも約10年間は期待できます。また更新時の試験ソフトウェア修正も小幅で済むことから運用保守コストはパソコン使用時に比べて「1年当たりで比較すると、パソコンベースのシステムに比べて6分の1に低減できる計算になりました」(喜多)。2015年夏現在、FA関連製品の製造工程で動いている出荷試験の装置は、名古屋製作所や協力工場、海外の工場を合わせて約700台にのぼり、しかもその数は製品ラインナップの増加などにより毎年約20台ずつのペースで増えています。そのままでは管理の負担は増す一方になりますが、運用保守コスト低減に効果的なC言語コントローラへの置き換えでその不安も払拭されつつあります。名古屋製作所では置き換えを今後も展開していく予定で、運用保守コスト削減とそれによる装置全体のTCO削減はさらに進むと期待されています。周辺機器がそのまま使える 複雑な配線が不要に10年間の継続使用が期待できる導入した当社製品・ソリューションのご紹介MELSEC iQ-RシリーズC言語コントローラスタンダードモデル“R12CCPU-V”従来のマイコンボード、パソコンなどのC言語資産を流用でき、VxWorksを搭載したコントローラにより、リアルタイム性の高い装置を実現するCPU。三菱電機FAサイト2015年10月掲載C言語コントローラ導入後の試験装置のシステム構成C言語コントローラを使用したシステムの一つ、ベースユニットの試験装置。ベースユニットの入出力が正しく行われているかのテストをC言語コントローラで制御し、生産管理データベースに集約する7三菱電機名古屋製作所

Page 18:17三菱電機名古屋製作所空調/照明制御強化によるエネルギー使用量削減e-F@ctoryの最新技術を集めた三菱電機名古屋製作所の生産棟「E4棟」。e-F@ctoryの技術により実現したのは高い生産性や品質だけではありません。ものづくりにおいて重要な「省エネ」も、E4棟ではe-F@ctoryの導入により従来よりワンランク上のレベルを達成しています。省エネ推進に必要なエネルギーの見える化を、シーケンサとオープンネットワークによって可能にすると同時に、システムに柔軟性を持たせることで、一層の省エネを実現しやすい環境を整えています。シーケンサや表示器などを生産する名古屋製作所E4棟は、e-F@ctoryの技術を集積したモデル工場の役割も担っています。e-F@ctoryの思想を具現化するモデル工場として、生産性や品質の向上と同様に追求しているのが省エネです。具体的には、製造業に限らず一般企業のオフィスでも課題である「空調」や「照明」の省エネ化です。「E4棟では空調や照明の省エネ化を、e-F@ctoryの技術を活用して取り組むことにしました」(名古屋製作所生産システム推進部生産企画課長の岸利信)。省エネを推進するには、エネルギー使用量を見える化するとともに、空調や照明を細かく制御しなければなりません。こうした目的のために一般的なオフィスビルや工場などでは、ビル管理システムや空調機器などのベンダーが提供する専用コントローラを使用します。しかしE4棟は専用コントローラの代わりにe-F@ctoryの技術、具体的には生産ラインの制御に使うシーケンサを使うことにしました。まず空調ですが、従来の外調機は専用の制御機器を使用し外から取り込む空気の加温や冷却を行っていましたが、E4棟ではシーケンサを導入して制御することにしました。E4棟では室内の温度や湿度をセンサで監視し、シーケンサに情報を集約しています。生産設備の稼働が上がることによって室内温度が上昇したり排気量が増えた場合には、シーケンサが外調機をコントロールし、給気風量を調整して室内への給気温度や湿度を適切な状態に維持するなど、風量と温湿度の両面から最適な空調制御が可能となりました。外調機とシーケンサはE4棟の1階から6階までフロアごとに設置され、さらに各フロアのシーケンサはオープンフィールドネットワーク「CC-Link IE」によって結ばれ、中央監視用のシーケンサにより統括管理されています。【事例のポイント】1. 空調や照明をシーケンサで制御し、エネルギーの見える化を推進2. 汎用のシーケンサを用い、メンテナンスや改善を容易に実現3. 高効率の機器と組み合わせることでトータル30%の省エネ実現中央監視用のシーケンサは、SCADAソフト「MC Works」から操作できるようになっており、各フロアのシーケンサとその先につながる外調機や外気取り込み口のダンパーなどを制御すると同時に、各フロアの消費電力の推移を管理しています。生産現場でのe-F@ctory活用では、現場の機器や設備のデータをシーケンサで集約し、ICT側のシステムで分析し見える化することで、現場の改善を推し進めることができます。それと同じ仕組みを空調制御に適用したのがE4棟であり、e-F@ctoryで省エネ活動を推進することができるわけです。こうした空調の集中制御システムを専用コントローラではなく、シーケンサで構成した理由の一つは、システムの保守性を高めるためです。「汎用のシーケンサとオープンネットワークのCC-Link IEで構成されているため、保守作業を専用コントローラの技術者に依存することなく、現場の生産技術者が自分たちで行えるようになります」(名古屋製作所生産システム推進部環境推進課専任の小島淳)。空調制御の専用コントローラによるシステムの保守の場合には、当然ながら専用コントローラのノウハウが必要です。そのためレイアウト変更のたびにベンダーの技術者を派遣してもらわなくてはなりません。しか汎用品だから柔軟性高く安価に構築名古屋製作所生産システム推進部生産企画課長 岸 利信名古屋製作所生産システム推進部環境推進課専任 小島 淳空調制御用にE4棟の随所に設置された温湿度センサE4棟の空調管理の仕組み。シーケンサで外調機を制御し、表示器やMCWorksから操作できるCase study

Page 19:18導入した当社製品・ソリューションのご紹介三菱FA統合ソリューションe-F@ctorye-F@ctoryは、「生産情報の見える化」「エネルギーの見える化」「安全の見える化」の実現による企業のTCO削減、企業価値向上を支援します。CC-Link IE フィールドネットワーク1つのネットワークで高速なI/O制御からコントローラ分散制御までをカバーし、機器のレイアウトに合わせた自由度の高い配線性をも実現するEthernetベースのオープンフィールドネットワークです。MELSEC iQ-Rシリーズ三菱電機が提案する次世代トータルソリューションの中核。激しい市場競争に打ち勝つために、生産性が高く、製造品質の安定したオートメーションシステムを構築したい。このようなお客様の課題を、MELSEC iQ-Rシリーズは「TCO削減」「信頼性」「継承」の3つの視点から解決します。三菱電機FAサイト2015年9月掲載しシステムがシーケンサで組まれていれば、生産設備の運用保守において、シーケンサを使い慣れている現場の生産技術者によって保守することができます。システムの改善などを自分たちで随時行うことができ、柔軟性が高まるというわけです。また汎用の製品と技術のため、専用コントローラよりも安価にシステムを構成できるという利点もあります。半面、シーケンサはもともと生産設備の制御用として作られているため、空調制御の専用コントローラと同等の機能を実現するのは容易ではありません。そこでE4棟のe-F@ctory導入を進めるワーキンググループは、三菱電機の冷熱システム製作所と共同で、シーケンサを空調制御に使うためのファンクションブロック※を開発し、E4棟で使用するシーケンサに搭載することにより、専用コントローラと同等の機能を実現することができました。冷熱システム製作所は業務用空調機などを開発する拠点であり、空調の制御に関して高い技術力を持っています。そのノウハウをシーケンサのプログラムに反映させるために、名古屋製作所と共同でファンクションブロックを開発し、シーケンサに搭載することで、汎用のシーケンサでも高度の空調制御を可能にしました。ファンクションブロックはE4棟のシステムに限らず再利用することが可能なため、今後シーケンサを空調制御に活用するケースの拡大につながることが期待されています。もう一つの省エネ化の軸である「照明」についても、シーケンサがきめ細かい制御を行っています。シーケンサと照明器具の間に照明を制御するゲートウェイを置き、それを介してシーケンサから照明の明るさや点灯/消灯を制御する仕組みです。空調同様に照明制御用のファンクションブロックを開発し、シーケンサに搭載。エリアごとに設置した調光センサが周辺の明るさを検知し、必要な光を提供します。シーケンサなどを生産するE4棟では、作業の内容によって現場に必要な明るさはそれぞれ異なります。外光も考慮しながら照明ゲートウェイがどの程度明るさが足りないかを計算し、必要な分だけの光を供給するため、電力消費も最小限に抑えることができます。「照明の制御をシーケンサから行っているため、エリアごとの照明の情報収集や点灯/消灯の操作は、シーケンサに接続された表示器から行うことができます。またその情報は中央監視のシーケンサに集約され、改善のための指標として生かすことができます」(システム設計を担当した三菱電機ビルテクノサービス中部支社ファシリティ部営業技術課の日比正人主任)。照明においても、e-F@ctoryによる見える化と、それによる改善の推進が可能となったわけです。E4棟では現在、e-F@ctoryによりどの程度の省エネ効果を得られたか、データを収集し分析中ですが、シーケンサによる細かい制御が可能になったことで、以前に比べて約10%の消費電力削減を実現できたと見ています。シーケンサ活用と同時に、外調機内のモータをエネルギー効率の高いプレミアム高効率IPMモータに置き換えるほか、受変電設備にも高効率のトップランナー変圧器などを使用することで、機器そのものの省エネ化を推進。それらの効果も合わせると約30%の省エネが実現できたと試算しています。E4棟では改善活動を通し、いろいろな方法を試しながら、さらに効果的な省エネの方法を追求していく方針です。そのために必要なのは、どの方法が効果的だったかを適切に検証すると同時に、効果的と判断した方法を実際のシステムに反映していくことです。シーケンサという生産技術者が使い慣れた機器を使うことで、システムの改修を自分たちで随時行えるようになったことは、省エネ推進活動を継続的なものにするうえで大きなメリットをもたらしています。空調機部門とモジュールを共同開発さらに効果的な省エネを追求必要な明るさだけ供給シーケンサ用の空調制御ファンクションブロックを共同で開発した三菱電機冷熱システム製作所照明の制御盤。中央が照明を制御するゲートウェイ三菱電機ビルテクノサービス中部支社ファシリティ部営業技術課主任 日比正人氏E4棟は太陽光もエネルギー源に積極的に取り入れているエ ネ ル ギ ー 計 測 ユ ニット「EcoMonitor Pro」で省エネ効果を検証外調機内にはプレミアム高効率IPMモータ(左)、インバータにはCC-Link IE対応「FREQROL-F800」(右)など、機器自体も省エネ効果の高いものを活用Case study※ファンクションブロック=シーケンスプログラム内で繰り返し使用する回路ブロックを部品化して、シーケンスプログラムの中で流用できるようにしたもの8三菱電機名古屋製作所

Page 20:19三菱電機名古屋製作所生産実績の見える化と設備稼働率向上三菱電機名古屋製作所では、シーケンサや表示器を生産するE4棟にe-F@ctoryの技術を結集。最新のものづくりを展開しています。その6階では機械による自動化を追求しています。自動化を進めるうえで必要なのは、設備の稼働状況を極限まで高めることです。設備の稼働率を低下させるような事象をe-F@ctoryでいち早く察知し、大きく低下する前に保守を行うことで、高い稼働率を維持しています。シーケンサや表示器を生産する名古屋製作所E4棟。その6階の生産フロアでは、電子部品の面実装作業が行われています。基板の裏表に1000個以上の電子部品を搭載する作業です。ほとんどの部品については搭載する作業が自動化されており、基板へのクリームはんだの印刷、搭載する部品の取り出しと基板への実装、電気炉による加熱など一連の実装工程が、一つの生産ラインを構成しています。自動化した生産ラインの稼働率を高めるためには、設備の異常や停止を可能な限り抑え、設備稼働中は常に正常な作業を行い続けるように管理しなくてはなりません。高度な管理を目指す面実装工程の中で特に対応が必要とされるのが、部品を吸着して基板に実装する工程です。基板に実装する部品は、リール状のテープに1個ずつ収められた形でサプライヤから供給されています。実装する装置はその部品を吸着によりテープから取り出し、基板の上に搭載していきます。この工程で吸着ミスなどが起こりやすく、稼働率を高める上で課題となっていました。部品を実装する際のミスの種類は主に2つ。部品を吸着し損ねた場合と、部品を吸着した時の角度が異常になってしまった場合です。部品を吸着し損ねる現象は、吸着するノズル先端に汚れや欠けがあったり、部【事例のポイント】1. 生産量の計画と実績をリアルタイムで見える化し、問題の存在をいち早く提示2. 稼働率低下時には関連データを調べて、原因の分析と対策を可能に3. 現場の具体的なデータをもとに、設計部門との協力を推進品を送り出すリールの送りが正しく行われなかったりすることなどが原因で起きます。また部品吸着時の角度異常は、ノズルが意図しないポイントを吸着した場合などに起こりえます。装置は吸着した部品をカメラで認識し、基板に実装する際に自動的に角度を補正しますが、補正には限度があり、部品の側面を吸着したような場合などはそもそも角度の補正ができないこともあります。その場合、吸着した部品は基板に搭載されることなく排出されるため、その分生産のペースが鈍って稼働率が下がることになります。稼働率を高めるには、こうした現象をいち早く察知し、影響が広がる前に対応することが有効です。そこでe-F@ctoryにより、設備のさまざまなデータを取得し見える化することで、吸着ミスなどのエラー情報を早期に検出することに務めています。部品の吸着ミスなどによる稼働率の低下は、まず生産量の変化に表れます。そこで生産量の実績データを装置から吸い上げ、その時点までに生産しておくべき計画値と対比させることでズレを明らかにしています。実績データは、リアルタイムで収集され、複数ラインの状況を一つの画面で把握可能です。リアルタイムで画面上のデータは更新されるため、計画と実績に乖離が出始めればすぐに分かるようになっています。もし乖離が徐々に大きくなるようであれば、装置に何らかの異常が起きていると推測できるた生産の変化をもとに問題発見と原因分析三菱電機名古屋製作所E4棟:面実装ライン生産計画と実績を対比させながら、稼働状況をリアルタイムで集中管理自動化を追求したE4棟6階の面実装ライン実装する部品はリール状で用意され、装置がテープから吸着して取り出し基板に搭載Case study大小さまざまな電子部品が実装されている基板