【カイゼン事例付き小冊子】ポンプと現場改善から始めるスマートファクトリー

ポンプ4.0 vol.2 ポンプと現場改善から始める スマート ファクトリー

目次 03 はじめに 04 スマートファクトリーとは？ 04 デジタル技術だけでは成立しない。アナログとデジタルの融合こそ重要 05 目指すべきは止まらない工場、ムダがない工場 06 リアルな現場をポンプでもっと効率化。スマートファクトリーへの貢献 08 事例 09 まとめ　ポンプや流体制御技術で製造現場のお悩みを一緒に解決 2

はじめに スマートファクトリーというと、工場内のあらゆる機器がネットワークで つながり、情報をやりとりすることで稼働状態の見える化や予知保全、最適 な制御が行える工場とよく言われます。 でも、あくまでそれは IT やネットワーク、制御技術側から見た話。工場の 本来の目的である高い QCD、止まらない工場を実現するためには、リアル な製造現場や工程自身の高度化や自動化が必須条件です。サイバー空間の 整備だけでなく、リアルな製造現場の充実。これら両方が揃って初めてス マートファクトリーが成立します。 ポンプは機械・装置の心臓と言われます。産業に欠かすことのできない基幹 製品として、液体や気体、固体、粉体を移送する役割を担い、多くの機械や 機器に組み込まれたり、単体で設置されたりしています。現在あらゆる場面 でポンプが使われていますが、それでもまだごく一部に過ぎません。 当社はポンプを製造販売するポンプメーカーである半面、ポンプで培った 流体制御技術によってお客様の課題を解決する専門集団でもあります。以前 からお客様のお悩み相談をもとに開発したポンプ応用製品を展開してきま したが、2017 年からは、第 4 次産業革命やインダストリー 4.0 といった 新たな潮流に合わせて「ポンプ 4.0」と題して課題解決に向けた取り組みを 強化しています。 ポンプは流体移送のためだけの機械ではありません。リアルな製造現場に 溢れている課題や問題に対して答えを与え、お客様に新たな喜びを提供で きる可能性を秘めています。 本書では、デジタル技術では絶対に不可能な、リアルな製造現場における、 ポンプや流体技術を活用したスマートファクトリーへのアプローチをご紹介 します。 3

スマートファクトリーとは？ 製造業WEBメディアの IT メディアMONOist では 「スマートファクトリーとは、工場内のあらゆる機器 や設備、工場内で行う人の作業などのデータを、IoT （モノのインターネット）などを活用して取得・収集 し、このデータを分析・活用することで新たな付加 価値を生み出せるようにする工場のことだ。」（「ス マートファクトリー化がなぜ必要なのか、その理想 像と越えるべき 3つの壁」 https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/180 6/20/news005.html）としています。 スマートファクトリーは、スマート工場やデジタル ファクトリーとも言われ、製造業の工場の未来の姿、 またセンサーメーカー大手のキーエンスは「スマー 目指すべきカタチとも言われます。 トファクトリー（スマート工場）とは、製造現場の FA機器がつながった工場を意味する和製英語です。 では実際にスマートファクトリーとはどんな工場な あらゆる FA機器の稼働状況をネットワークを介し のでしょうか。主要メディアの記事を見てみると、 て把握・蓄積。各 FA機器を効率的に稼働させるこ Wikipedia ではスマートファクトリーについて、「セ とで、最大の利益を産み出す工場を実現します。（中 ンサーや設備を含めた工場内のあらゆる機器をイン 略）具体例としては、将来の「製造業のモノのイン ターネットに接続 (IoT：Internet of things) し、 ターネット（IIoT）」を実現するうえで欠かせない、 品質・状態などの様々な情報を「見える化」し、情報 各工程の機器やセンサー、測定器から得たデータを 間の「因果関係の明確化」を実現し、設備同士 有効活用し、生産や経営全体を最適化する工場の環 (M2M：Machine to Machine) ないし設備と人が 境を指します。」と表現しています。（キーエンス、 協調して動作する (Cyber-Physical System) こと 製造現場で役立つ IoT 用語辞典　スマートファクト により実現する」と表しています。 リー（スマート工場） デジタル技術だけでは成立しない。アナログとデジタルの融合こそ重要 しかしここで一つの疑問が浮かび上がります「。最適 な生産」で「最大の利益」を生み出すのがスマートファ クトリーであれば、デジタル化しただけで本当にそ れが実現できるのでしょうか？ 工場の設備をネットワークでつなぎ、デジタルツール を導入して情報の見える化や最適な制御を行うこと は、今ある設備の最大限の活用はできても、それ以上 にはなり得ません。あくまでデジタル技術の導入で 整備されたのはバーチャルな世界、情報活用の手段。 4

これまで製造現場の頭脳や知能の部分を担っていた 動きのムダはデータからは見えてきません。現場の ベテラン技術者の感覚の部分を誰でも使えるように 現物の現状を見て初めて分かることはたくさんあり なったものです。 ます。 リアルな製造現場には多くの人と機器、設備が実際 その意味では、デジタル環境の整備だけではスマート に動き、作業しています。頭脳や知能、そこからの指 ファクトリーは成立しません。リアルな製品や現場 令が的確になったとしても、実際に動く機器や設備 の技術があってこそ。スマートファクトリーの実現 の能力が低く、カイゼンする余地があるようでは最適 には、デジタルとリアルの両方を進めていくことが な生産とは言えません。またリアルな機器や設備の 重要です。 目指す姿は「ムダがない工場」「止まらない工場」 ムダのない製品づくりは、Q（Quality、品質）、 C（Cost、コスト）、D（Delivery、納期）への対応力 がカギ。そのため工場の普段の活動は、生産をこなす ことをベースとしながら、一方ではカイゼン等を通 じてQCDを高める取り組みが行われています。 スマートファクトリーになってもこの部分はまった く変わりません。QCD を極めた理想の工場の姿は 「ムダがない工場」もしくは「止まらない工場」。トヨ タ生産方式では、製造現場において7つのムダを最大 スマートファクトリーの目的は最適な生産による最 の悪とし、それを減らし、なくしていくために日々カ 大の利益の創出。では具体的に何を目指すのが良い イゼンが必要だと説いています。ムダや工場が止ま のでしょうか？それを考える際にはいったん製造業 る原因を排除する。スマートファクトリーへの取り のビジネスにおける工場の立ち位置、役割に立ち戻 組みもその延長線上にあります。 ると分かりやすいと思います。 最適な生産体制の構築には、いまよりQCDを高める 製造業のビジネスは「製品を作って販売して利益を ことを目標として数値化し、それを実現するためには 生み出す」ことで回っています。そのなかで工場の 工場や製造現場、工程、機器・設備、作業方法等でどの 役割は「生産」。時間と材料、生産設備という限られ ように工夫していくべきかを考えて実行していくの たリソースをフル活用し、ムダなく製品を作ることが が得策です。 求められます。 5

リアルな現場をポンプでもっと効率化。スマートファクトリーへの貢献 当社は1946年の創業以来、ポンプと流体制御技術を 応用製品を数多く開発し、多くの企業に採用されて 展開してきました。主力製品の渦流タービンポンプを きました。 はじめ、うず巻ポンプ、ダイヤフラムポンプ、液封式 前述の通り、スマートファクトリーはデジタル技術だけ 真空ポンプなど多彩な製品ポートフォリオを揃え、 でなく、リアルな機器や設備、それを使った技術の 半導体製造装置をはじめ、多くの産業機械に搭載され 両方が融合して初めて成り立ちます。当社が得意と てきました。その一方で、ポンプで培った技術を応用 するのは後者であり、ポンプ・流体制御技術を使った し、製造現場のムダや不具合発生を防止するポンプ 製造現場のQCDカイゼン事例を一部ご紹介します。 ■ 機械部品メーカーの金属加工機のチョコ停防止 1 つ目は、ある機械部品メーカーのサイクロンセパ 後工程に VDF 装置を配置。切粉除去を 2段構えと レータ「VDF」をベースとするクーラント濾過装置を し、大きめの切粉は濾過装置で一次処理。小さな切 使った工作機械など金属加工機のチョコ停防止です。 粉はVDFで回収して廃棄することにしました。 金属加工ではクーラント液（切削油）を刃先に注ぎ これにより濾過装置のフィルタは目詰まりしにくく ながら加工し、潤滑や冷却、切粉排出を行います。切粉 なり、チョコ停の発生原因を解消。さらに、VDF は まみれのクーラント液はフィルタで濾過し、循環させ サイクロン掃除機のような構造なので溜まった切粉 て繰り返し使用します。しかし何回もおこなっている の廃棄はワンタッチで簡単、切粉廃棄のメンテナン と切粉によってフィルタが目詰まりし、濾過能力が ス性も良くなりました。2段構えにしたことでクー 低下。すると濾過装置のダーティタンク内にクーラン ラント液がキレイになって加工品質を高く保つこと ト液がどんどん溜まっていき、ある一定液位に達する にも成功したのです。 と液面センサが反応して加工機が停止。チョコ停 金属加工の現場はもちろん、一部の加工機メーカーか が発生し、最悪の場合クーラント液が溢れて床が油 らは標準品として採用したいという高い評価もいた まみれという事態が引き起こされます。 だきました。 こうしたお客様の悩み相談に対し、提案したのが 今は製品改良を進め、VDF 内に切粉が溜まったのを VDFクーラント濾過装置を使ったシステム。濾過 自動検知してスマートフォンや PC に知らせる IoT 装置のフィルタを目の粗いものに変更し、濾過装置の の仕組みを組み込んだ新製品を開発しています。 機械部品メーカーの金属加工機のチョコ停防止の図 Before After スラッジ量が多く 改善2チョコ停 チョコ停もすぐに目がつまって 改善1 VDFを設置 解消！ ドラムフィルタの 粗い目に変更 切粉除去を２段構えにしたことで、 ドラムフィルタ ドラムフィルタ クリーンタンク クーラント液がよりクリーンタンク きれいに！ VDF（二次処理） ④小さな切粉は VDFで回収し て廃棄ゴミに ダーティタンク 金属加工機 ダーティタンク 金属加工機 ③ドラムフィルタの ①クーラント液 （ 一次処理） ①クーラント液 みで切粉を回収 ②金属加工で発生した を刃先に注 　切粉を排出 ぎながら金属 ③ろ過装置のフィルタ ②金属加工で発生した を刃先に注 ぎながら金属 加工 で大きめの切粉を 　切粉を排出一次処理 加工 6

■ 食品メーカーの作業効率化・安全衛生向上 もう一つの事例が、柔らかな固形物も壊さずに液体 タンク脇にポンプを設置し、タンク投入口まで配管 と一緒に送ることができる「インナーボルテックス で接続。ポンプ側の投入口は人の腰の高さ程度のと ポンプ」を使った食品メーカーの事例です。 ころに設け、容器を少し持ち上げてポンプに投入す ればタンクまで自動的に移送されるというシステム ゼリーや果肉、ナタデココのような崩れやすい固形 を構築しました。これによって作業員の負荷が減っ 物を含んだ食品の製造工程で、これらのタンクへの た上に作業効率も上がったととても喜ばれました。 移送は人手で行っていました。作業員は、固形物の また段差を上る必要もないので転倒や転落の危険性 入った容器を持ってタンク脇のはしごを上り、投入 も少なくなり、安全性が上がって労災や稼働停止の 口があるところで容器を持ち上げて傾けて移し替 リスクを減らすことができました。 えていました。この作業は、容器が重い上に、段差 を上って危ないということもあり、現場の作業員に このシステムもより高度化を目指していて、ポンプ はとても不評でした。それを何とかしたいという相談 からタンクまでの移送品質、本当に壊れずに運べて を受けて提供したのが “固形物を壊さず優しく移 いるのかをセンサで検知するような仕組みを検討し 送出来る”インナーボルテックスポンプを使ったソ ています。 リューションです。 インナーボルテックスポンプを使った移送の図 Before After ①腰の高さ程度に設けた 　投入口に中身を投入 改善 インナーボルテックスポンプ ②タンクまで自動的に移送される バケツでくみとり ①作業員の負荷が減り、作業　効率もアップ！ ハシゴに登って タンクに移していた・・・。 ②安全性が上がって労災や　稼働停止のリスク減にも！ 7

最近取り組んだポンプによる現場・作業効率化の事例 課題・要望 ニクニからの提案 結果 コスト削減 超硬刃物の研磨工程で 超硬スラッジを回収して 産廃が有価物に廃液費用が高額になって困る 有価物として売れる なって売れた 金属加工機 メーカー チョコ停 フィルタ目詰まりによる VDFを使用して、 フィルタが目詰まり 防止 チョコ停発生する 切粉を除去 しなくなった 小型化 取り付けスペースが小さく、 横から吸う 余計な配管や設計が難しい 渦流ポンプの構造 取り回しが不要 産業機械 メーカー ドカ停防止 製品がすぐに廃盤になって ライフサイクルが 長い期間交換品の調達が難航する 長い製品 心配せず使える 品質保持 原材料を蒸す工程で、酸性蒸気 酸性蒸気を液封式 豆が酸化せずにによって材料が酸化してしまう 真空ポンプで吸引 蒸せるようになる 食品 メーカー 人手不足 原材料を釜で煮る際、はしご 固形物移送が可能な 人手を介さずに材料投入 （生産性向上） を登るので危険＆作業が大変 ポンプで解決 できるようになった 省エネ化 廃液の分離が甘く、廃液処理 MBGで液中の油、不純物を 環境に良い状態でコストと環境負荷が高い 浮上させカキ取る 排水できる 機械部品 メーカー 小さなスラッジが VDFで濃縮させた液を 液の濃縮 フィルタを通過し、 フィルタに供給し 効率よくスラッジが 加工工程に流れてしまう 効率を上げる 取れるようになった タイヤ 省エネ化 タイヤの加硫工程のエネルギー 効率が良い省エネ設計の 効率が良く、動力をメーカー 使用量を減らしたい 真空ポンプ ワンランク下げられた 外食 異物混入 接触式ポンプからの 非接触式のインナー 機械内の異物混入は チェーン 対策 異物混入が多い ボルテックスポンプ なくなった 自動車部品 熱対策 工場内のスペース不足で VSCは非常に小型の為、 省スペースで メーカー チラー導入ができない 限られたスペースでも設置できる 設置が出来た 燃料電池 気体混入 発生した気体の吸い込みに 小型の渦流ポンプ 気体が混入してもメーカー よってNG品になる （気液混入OK) 壊れない 水産加工業 品質維持 魚の鮮度を高く保ちたい 氷に窒素を入れた窒素氷を 高い鮮度で魚を提供魚に使うことで品質維持 できるようになった 8

まとめ　ポンプや流体制御技術で製造現場のお悩みを一緒に解決 繰り返しになりますが、スマートファクトリーに いった移送＋αをはじめ、VDF の事例のような「不 よって最適な生産、最大の利益を実現するためには、 純物を取りのぞく」ことも可能です。 デジタル技術とリアルな技術を融合することが不可 欠です。 ポンプは歴史があり、古くから使われてきた技術で すが、その活用範囲は流体移送だけに留まりません。 製造現場におけるデジタル技術の役割は「頭脳」。 色々な発展性を秘めています。製造現場で抱えている データを集め、最適解を導き出し、リアルな製造現場 お悩みや課題に対し、ポンプで解決できる可能性は の人や機器に指示として伝えることです。リアルな 十分あります。ぜひご相談ください！ 技術、人や機械、設備の役割は「手足」となり、現実 の現場で作業を進めていきます。両方がお互いの得 意領域で向上し、融合して昇華する、上昇スパイラル がスマートファクトリーへの王道です。 ポンプメーカー、流体制御の専門家として当社が提 供できるのは、リアルな製造現場における流体制御 技術を使った工夫。固体や液体、気体の移送に加え、 「壊さず／壊して整えて運ぶ」「混ぜながら運ぶ」と 9

ニクニ 取扱いポンプのご紹介 ポンプの基本的なことから、活用方法までお気軽にご相談ください。 食品用インナーボルテックスポンプ 固形物、高粘性液、気泡混入液の移送に最適！ 微細スラッジ専用 ドラムポッド付VDF シンプルイズベスト！超小型でも高機能満載！ 渦流ターボミキサー KTM ミキサー 1台で吸引・混同・攪拌・溶解・圧送を可能に！ 渦流タービンポンプ （小型汎用ポンプ 総合カタログ） 充実のラインナップでニーズに応えるニクニの装置組込 ポンプシリーズ！ 液封式真空ジェネレーター UNIVAS 真空ポンプ・タンク・サイレンサーを省スペースユニット化！ オプションの追加でお好みのスペックにパワーアップ！ 10

ニクニ 取扱いポンプのご紹介 微細気泡発生機 マイクロバブルジェネレータ 高密度で安定したファインバブルを発生。 加圧浮上やホワイトイオンバスに活用。 湿式破砕機 サンカッタ 破砕・微細化・圧送を1台でおこなえる多機能ポンプ。 グリッドの選択で、破砕サイズも調整可能。 液中掃除機 ＬＡX &ＬＡＴｉ 手軽に移動して、液中の固形物を回収！ 気体を吸引しても壊れないので、脱水が可能。 小型機械向け 循環水冷却装置　ＶＳＣ 非常に小型で、今まで設置が不可能だったスペースでも 導入可能。 超小型電磁ルーパーポンプ 薬液特性に優れた手のひら小型ポンプ。 特殊素材も小ロットから対応可能。 11

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