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組込みイノベーションに適した多目的MCU
MCXマイクロコントローラのポートフォリオは、マイクロコントローラのトップリーダーであるNXPの既存MCUの優れた特長と、次世代のインテリジェントなエッジ・デバイスに適した新しい革新的な機能とを組み合わせることを念頭に開発されました。MCX AシリーズはこのMCXポートフォリオにおいて重要な役割を担う、多種多様なシステム向けのソリューションです。本ホワイト・ペーパーでは、MCX Mシリーズの概要と、開発を容易にするツール群をご紹介します。
このカタログについて
ドキュメント名 | NXP MCX Aマイコン・シリーズ |
---|---|
ドキュメント種別 | 製品カタログ |
ファイルサイズ | 4.4Mb |
登録カテゴリ | |
取り扱い企業 | NXPジャパン株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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MCX Aシリーズ、MCX Aのコア・プラットフォーム
ホワイト・ペーパー
MCX Aシリーズ
MCX Aシリーズ:
組込みイノベーションに適した
多目的MCU
Eli Hughes
MCXマイクロコントローラのポートフォリオは、一般的なNXPデバイスの優れた特長と、次世代の
インテリジェントなエッジ・デバイスに適した新しい革新的な機能とを組み合わせることを念頭に開
発されました。MCX Aシリーズはこのポートフォリオにおいて重要な役割を担う、多目的デバイス向
けのソリューションです。
MCX Aは、強力なI/O機能、業界トップクラスの低消費電力、 MCX Aのコア・プラットフォーム
多様な接続オプション、シンプルな電源回路による小型のデ MCX Aシリーズのエントリ・レベルに位置付けられる
バイス・パッケージが要求されるアプリケーションに対応で のは、共通のアーキテクチャとペリフェラルを備え、
きます。簡単に言えば、MCX Aを使用することで、シンプ 48 MHzと96 MHzで動作するA133/143/153ファミ
リです。
ルなPCB設計と低いシステムBOMコストを維持しながら、
ほとんどの機能を設計に組み込むことができます。 A133/143/153製品は、コスト効率に優れた32ビット・
アーキテクチャが要求されるアプリケーションを対象とし
以下のような幅広いアプリケーションを対象としています。 ながら、DMA、命令/データ・キャッシュによる実行速度
• 産業用通信 の高速化、ECCによるメモリの保護など、より高性能の機
• スマート・メータ 能も保持しています。
• モータ制御/パワー・エレクトロニクス
• 自動化および制御システム
• センサ
• 低消費電力/バッテリー駆動デバイス
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MCX A133/143/153のブロック図、MCX A146/156のブロック図
MCX A133/143/153のブロック図
Analog Core Connectivity
1x 16bit ADC Arm® Cortex®-M33 3x LPUART 1x LPI2C
48/96MHz
2x ACMP
2x LPSPI 1x I3C
Temp sensor Memories
Up to 128KB Flash w/ 4KB cache Full-speed USB w/ PHY
Advanced Motor Control
1x FlexPWM Up to 32KB SRAM (8KB w/ ECC)
1x eQDC 1x AOI
(Quadrature decoder) (AND/OR invert) 16KB ROM w/ boot loader
Security System Timers
Power management 5x 32-bit timers
Security monitoring POR/LVD/HVD, LDO
(intrusion detection) Wake timer
Clock generation
Internal reference clock Frequency measurement timer
(16KHz, 12MHz, 192MHz)
lifecycle management External XTAL (8-50MHz) Windowed Low-power
DMA WDT timer
Access control
(memory and debug) Peripheral input multiplexing Micro-tick OS event
(INPUTMUX) timer timer
A133/143/153デバイスには、Arm® Cortex®-M33ベース MCX A133/143/153の電源アーキテクチャの主な特徴は、
ライン・プロファイルが使用されており、10 x 10 mm その優れたエネルギー効率です。
LQFP64、7 x 7 mm HVQFN48、5 x 5 mm HVQFN32の
各パッケージで提供されます。A133/143/153の上位製品 • アクティブ・モードで59 µA/MHz(3 V、@25℃)
には128 KBのフラッシュ・メモリが搭載され、A142/A152 (内蔵フラッシュからCoremarkを実行)
バージョンとして、よりコストを重視するアプリケーション • 20.28 µAのディープ・スリープ、7.4 µsでウェイクアップ
向けの64 KBオプションが用意されています。また、ペリ
フェラルも共通であるため、ソフトウェア開発の労力を軽減 • 6.7 µAのディープ・スリープ、SRAMを完全に
できます。 保持して17.1 µsでウェイクアップ
各製品は、パッケージ・タイプ間でI/Oとピンに互換性があ • 398 nAのディープ・パワーダウン、2.36 msで
り、移行やアップグレードが簡素化されるため、コスト、フ ウェイクアップ
ラッシュ空間、クロック速度のバランスを調整しながら設計 大型の命令メモリ、RAM、I/O数、CAN FDを必要とするア
できます。最大8本のピンが20 mAの大電流駆動に対応し、 プリケーション向けには、次の一歩としてMCX A146/156
そのうち2本は5 V耐圧です。 が最適です。A146/156ファミリは、多くのコア機能を
MCX Aは、1.71 Vから3.6 Vまでの範囲で動作可能なコンデ A133/143/153と共有していますが、大容量のフラッシュ、
ンサ不要のLDO電源アーキテクチャを採用しています。 内蔵RAM、CAN FDが追加されています。
MCX A146/156のブロック図
Analog Core Connectivity
Arm® Cortex®-M33
2x 16bit ADC 48/96MHz 4x LPI2C 5x LPUART
with FPU, SIMD
2x ACMP 2x LPSPI 1x I3C
Memories
1x 12bit DAC Temp sensor
Up to 1MB Flash w/ 4KB cache 1x CAN FD
Advanced Motor Control
Up to 128KB SRAM (8KB w/ ECC)
2x FlexPWM HMI
2x eQDC 2x AOI 16KB ROM w/ boot loader FlexIO
(Quadrature decoder) (AND/OR invert)
Security System Timers
Power management 5x 32-bit Timers
Security monitoring POR/LVD/HVD, LDO
(intrusion detection) Clock generation Wake timer
low-power internal clock
lifecycle management (16KHz, 12MHz, 192MHz) Frequency measurement timer
External XTAL (8-50MHz)
Windowed Low-power
DMA WDT timer
Access control
(memory and debug) Peripheral input multiplexing Micro-tick OS event
(INPUTMUX) timer timer
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産業用センシングおよび制御のための、耐久性に優れた高性能メモリ・サブシステム、高度な相互接続とDMAアクセラレーションを備えた標準ペリフェラル
A146/156のCortex-M33コアに対するその他の注目すべき このキャッシュ機構が不要な場合は、4 KBのLPCACメモリ
アップグレードは、全精度浮動小数点演算ユニット(FPU) と を命令メモリに転用できます。この領域にクリティカルな
SIMD/DSP命令が含まれます。SIMD/DSP命令の追加によ コードや割込みベクトルを配置することで、タイミングの制
り、リアルタイム制御とデジタル・フィルタリングを必要と 約が厳しいアルゴリズムや制御ループに対応できます。
するアプリケーションを大幅に強化することができます。た MCX Aのメモリ・アーキテクチャにおける2つ目の興味深い
とえば、DSP/SIMDを備えたCortex-M33は、パワフルな 機能は、SRAMの8 KBセクションに備わっている誤り訂正
SMLAL命令によって32ビット x 32ビット符号付き乗算と64 (SRAM ECC) 機能です。SRAM ECCに関連する2つのペリ
ビット累算を実行できます。この高効率な命令が、高精度 フェラルが、エラー報告モジュール (ERM) とエラー注入モ
フィルタや制御アルゴリズムの核となります。 ジュール (EIM) です。これらは、ランタイム・メモリ・エ
A146/156のメモリ・サブシステムは、最大1 MBのフラッ ラーをテストおよび診断するためのツールです。ERMは、
シュ・メモリと128 KBのRAMに拡張されています。また、 ECCとパリティに関連するエラー・イベントに、専用のレジ
追加のADC、12ビットDAC、内蔵オペアンプなどの拡張アナ スタおよび割込みを介してフラグを設定します。EIMは、プ
ログ機能も搭載されています。さらに、PWMユニット、直交 ログラムによってECC/パリティ・システムでエラーをトリ
デコーダ、AND/OR反転モジュールを追加し、モータ制御サ ガできるため、堅牢なテスト・プランを実現できます。
ブシステムも拡張されています。 高度な相互接続とDMAアクセラレーションを備えた
A146/156には、小型の物理的フットプリントを維持しなが 標準ペリフェラル
ら物理I/Oを増やすことができる、ピン数の多いパッケー
ジ・オプションが用意されています。 MCX Aシリーズには、組込みエンジニアが多目的デバイス
に求める標準ペリフェラルが、数多く搭載されています。
• LQFP100:14 x 14 x 1.4 mm、0.5 mmピッチ MCX Aのすべてのデバイスに、従来型I/Oのユース・ケース
の基盤として機能する標準UART、SPI、I2C、タイマ・サブ
• LFBGA64:5 x 5 x 1.2 mm、0.5 mmピッチ システムが搭載されています。
• VFBGA112:7 x 7 x 0.86 mm、0.5 mmピッチ MCX Aのペリフェラルについての重要な側面の1つが、入力
優れた低消費電力性能は、追加機能のあるA146/156でも維 多重化モジュール (INPUTMUX) を介して内部で相互接続す
持されています。 る方法です。INPUTMUXは、内部ペリフェラル間でトリガ
やフラグを相互接続する方法の自由度を、大幅に高めること
• 64 µA/MHzのアクティブ・モード(フラッシュから ができるメカニズムです。
while(1)を実行、3.3 V @25℃)
ほとんどのMCX Aペリフェラルは、フォーム・トリガと入
• 332.26 µAのディープ・スリープ、7.1 µsでウェイク 力フラグに対応しており、INPUTMUXから供給できます。
アップ(3.3 V @25℃) 同様に、INPUTMUXの入力には、外部ピンからの信号や、
• 8.2 µAのパワーダウン、16.6 µsでウェイクアップ ペリフェラルの出力/イベント・フラグ、その他のさまざま
(RAM X0/X1とRAM A0を保持、3.3 V @25℃) な内部信号を供給できます。このように柔軟な相互接続に
よって大きな創造性を発揮できるため、CPUの介入を最小限
• 412 nAのディープ・パワーダウン、1.44 msでウェ に抑えながら、ペリフェラルを自由に連結して動作を自動化
イクアップ(ウェイク・タイマ無効、リセット・ピン することができます。
有効、すべてのSRAMオフ、3.3 V @25℃)
INPUTMUXと緊密に連動するもう1つの「連結」ペリフェラ
産業用センシングおよび制御のための、耐久性に優れ ルが、AND/OR/INVERTモジュール (AOI) です。AOIモ
た高性能メモリ・サブシステム ジュールは、シンプルなマルチチャネル・プログラマブル・
MCX Aシリーズには、要求の厳しい産業用エッジのユー ロジックの一種です。AOIの各チャネルにはA、B、C、Dと
ス・ケース向けに設計されたメモリ・アーキテクチャが採用 いう4つの入力と、それに関連したイベント出力がありま
されています。これらのコスト重視のデバイスだけに追加さ す。イベント出力の動作は、ソフトウェアによって4つの入
れている、注目すべき機能が2つあります。 力に基づき設定できます。AOIチャネルの入力と出力は、内
部のMCX AペリフェラルとINPUTMUXに分配されます。こ
1つは低消費電力キャッシュ・コントローラ (LPCAC) です。 れら2つのペリフェラルにより、組み合わせロジックを使用
LPCACは、小型ながら効率的な4 KBキャッシュ・コントロー してペリフェラル間の高度な相互接続動作を合成できます。
ラで、Cortex-M33コード・バスに接続されています。
LPCACを使用することで、CPUはフラッシュ・メモリ内にあ
るデータと命令に低い実レイテンシでアクセスできます。プ
ロセッサのパフォーマンスをシステム・メモリのパフォーマ
ンスから切り離すことができるため、DMAなどの他のペリ
フェラルに対するバスの可用性が向上します。
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フルスピードUSBデバイス・コントローラ
すべてのMCX Aに、高性能な拡張ダイレクト・メモリ・アク フルスピードUSBデバイス・コントローラ
セス (eDMA) コントローラが搭載されています。eDMAは、
代表的なDMAのユース・ケースであるメモリ間、メモリから MCX Aには、オンボードPHYを備えたフルスピードUSB
ペリフェラルへ、ペリフェラルからメモリへの各トランザク デバイス (USBFS) コントローラが搭載されています。
ションをすべて処理します。 USBの追加によって、MCX Aは多目的デバイスとしてさ
らに強化され、PCやその他のスマート・デバイスへの低
コストでユニバーサルなコネクティビティを確保できま
す。
MCX AのUSBデバイス・コントローラの重要な特長の1つ
が、外部の水晶振動子なしで動作できるというものです。
USBFSサブシステムは、高速内部基準クロック (FIRC)
を使用して48 MHzクロックを生成するように設定できま
す。このクロックは、受信するUSBホストのSOF信号を使
用して、オンザフライで調整されます。
USBクロック・リカバリ機能は、BOMコストの削減に役立
つほか、スペース制約の厳しいアプリケーションにも有用
です。システム設計全体に役立つUSFSには、他にも以下
のような注目すべき特長があります。
• 最大16個の双方向エンドポイントによる、複雑な複合
デバイスのユース・ケースのサポート。
• DMA駆動の転送によるCPUオーバーヘッドの削減。
• USBCTRLレジスタのDPDM_LANE_REVERSEビット
を介したUSBレーン/信号の反転。これにより、PCB
設計でD+/D-接続を入れ替えることができるため、
eDMAシステム PCB配線の簡素化につながる。
• UARTピンを使用できないデバッグ時に、内部のLPUART
eDMAには8つのチャネルがあり、トリガ・ソースが内 Tx/Rx信号をUSB D+/D-ラインにルーティングできる。
部システム全体に分配されるため、ほぼすべての内部
ペリフェラル間で転送を自動化できます。
フルスピードUSBデバイス・コントローラ
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USBを使用した柔軟なブートROM
USBを使用した柔軟なブートROM ブートROMの操作は、基本的にはMCUXpresso Secure
Provisioning (SEC) ツールを介して行います。SECは、
MCX Aには、ブートROMでのインシステム・プログラミング ユーザーが直観的なグラフィカル・インターフェースを使
(ISP) 機能が搭載されています。ROMでのISP機能があるとい 用して、量産品プログラミングやフィールド・アップデー
うことは、フィールド・アップグレードのオプションが「標 トのための独自のワークフローを開発できるグラフィカ
準で」用意され、追加のカスタム・ファームウェア開発は必 ル・ツールです。
要ないということです。 ROMブートローダとISP機能を使用
する方法の1つが、MCX A USBインターフェースを介した方 SECツールを使用する大きな利点として、プログラム可能
法です。ブートROMを呼び出すと、ホストPCへのOSドライ なCMPA設定のすべてを、一元化されたグラフィカル・イン
バ要件がない汎用のHIDデバイスが列挙されます。USBイン ターフェースで簡単に把握できることが挙げられます。
ターフェースに加え、ブートROM/ISP機能にもUARTを介し
てアクセスできます。 SECによってプログラミングとプロビジョニングを量産シ
ナリオ向けに簡素化できます。
MCUXpresso Secure Provisioningツール
PFRの設定
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セキュア・プロビジョニングSDKのブロック図
Secure Provisioning SDKのブロック図
SPSDKツールは、追加の製品別のプロビジョニング操作を自 MCX A上のUSBを介したSPSDKとブートROMの操作
動化する必要がある場合など、より高度なシナリオ向けに使 をシンプルな例で解説するため、SPSDKに含まれてい
用できます。 る2つのツールの使用方法をお見せします。
1つ目は、コネクテッド・デバイスの照会に使用され
る「nxpdevscan」です。MCX Aが正常に識別される
と、「blhost」ツールを使用してバイナリ・イメージ
のプログラミングが迅速に行われます。
SPSDKはオープンソースのPythonツールとして提供
されているため、ユーザーがフィールド・アップデー
ト・プロセスや工場プロビジョニング・プロセスを自
動化する独自のカスタム・ワークフローを開発できま
す。ブートROMオープンソース工場プログラミング領
域 (CMPA) のプログラミング用に追加のコマンドを公
開し、デバッグ・アクセスを無効にしながら、コード
読み出し保護とライフサイクル状態を有効にします。
nxpdevscan
blhost
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MCX A USBのユース・ケースとソフトウェア・サンプル、オープンソースのUSBスタック代替手段、FlexIO、アナログ・モータ制御と産業用コネクティビティ
MCX A USBのユース・ケースとソフトウェア・サン FlexIOは、他の標準MCUペリフェラルでは実装できないよ
プル うな独自のI/Oプロトコルをエミュレート/合成するのに便
利です。また、SPI、I2C、UARTなどの標準MCUペリフェ
低コストで小型というMCX Aの物理的特性は、さまざま ラルの既存チャネルがすでに使用されている場合に、それ
な興味深いUSB製品のユース・ケースに適しています。 らの追加チャネルの作成にも使用できます。FlexIOは、I2S
SPI、UART、I2Cなどの数々の標準ペリフェラル・オプ オーディオ・インターフェースなど、ファミリ内で提供さ
ションを備えたMCX Aは、USBプロトコル・ブリッジン れていない標準ペリフェラルをエミュレートできます。
グ向けの魅力的なソリューションです。たとえば、
MCXA142VFMは5 mm2 HVQFN32パッケージで提供さ その他のユース・ケースには、Motorola 68K/Intel 8080
れ、量産価格は1ドルを下回ります。このパッケージ・ BusのエミュレーションによるLCDインターフェース、パラ
バージョンは、LIN、RS485、または新しいI3Cプロトコ レルからシリアルへの変換、FPGA構成、QuadSPIインター
ル間のUSBブリッジに最適なソリューションです。 フェースなどがあります。INPUTMUXを介してFlexIOを
MCXA156に移行することで、USBからCAN-FDへの低コ AOIモジュールと相互接続することで、カスタム・インター
ストのプロトコル・ブリッジが可能になります。 フェース・ロジックの作成能力をさらに強化できます。
このようなUSBのユース・ケースをサポートするため、 アナログ・モータ制御と産業用コネクティビティ
MCX A向けのMCUXpresso SDKパッケージには、CDC、
HID、MSCなどの最も一般的なユース・ケースすべてに MCX Aの強みは、モータ制御アプリケーションとパワー・
対応したサンプルが含まれています。 マネジメント・アプリケーションを幅広くサポートしてい
ることです。MCX Aのモータ制御機能の基盤は、FlexPWM
MCUXpresso Config Toolsには、カスタムUSBデバイ ペリフェラルです。FlexPWMは、高度なパルス幅変調
ス・コードを生成するためのペリフェラル・ツールも含 (PWM) ユニットであり、最も一般的なモータ制御トポロジ
まれています。このツールを使用すると、開発者はすべ とパワー・エレクトロニクス・トポロジをサポートしてい
てのボイラープレート初期化コードと記述子を管理しな ます。FlexPWMには、永久磁石同期機 (PMSM)、ブラシレ
がら、USBデバイスを迅速に構築できます。 ス直流機 (BLDC)、ACインダクション・モータ、またはシ
ンプルなブラシ付きDCモータの制御を含め、ほぼすべての
オープンソースのUSBスタック代替手段 アプリケーションに対応できる構成オプションが用意され
無償のNXP USBスタックに加え、MCX Aは広く利用され ています。
ているオープンソースのTinyUSBスタックとも連携しま FlexPWMモジュールは、AOIモジュールおよびINPUTMUX
す。TinyUSBは、Adafruitによってサポートされている と相互接続されているため、高度なトリガと同期ロジック
小型で俊敏性に優れたUSBスタックであり、USB機能を を実現できます。このモータ制御ロジックに緊密に接続さ
MCX A(および他の多数のNXPデバイス)に実装するた れているのが、アナログ・サブシステムです。
めの代替的な手段となります。FRDM-MCXA153開発
ボード向けのTinyUSB GitHubリポジトリでは、すでに
MCX Aサンプルが提供されています。 Analog Analog
FlexIO 2x 16bit ADC 1x 16bit ADC
MCX A146/156ファミリには、NXPデバイスに固有の 1x OpAmp
w/PGA 2x ACMP 2x ACMP
Flexible I/Oコントローラ (FlexIO) というペリフェラル 1x 12bit DAC Temp sensor Temp sensor
が搭載されています。FlexIOは、タイマ、高速シフト・
レジスタ、プログラム可能なステート・マシン、相互接
Advanced Motor Control Advanced Motor Control
続ロジックを組み合わせたものです。
2x FlexPWM 1x FlexPWM
2x eQDC 2x AOI 1x eQDC 1x AOI
(Quadrature decoder) (AND/OR invert) (Quadrature decoder) (AND/OR invert)
A146/A156 A143/A153
MCX Aのアナログ・サブシステム
柔軟なI/Oコントローラ
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産業用IoTエッジへの対応 — CAN FD
アナログ・サブシステムの基本は、16ビットの逐次近似AD
コンバータ (ADC) です。ADCモジュールは、16ビット・
モード時に最大3.2 MSPS、12ビット・モード時に4 MSPS
で動作できます。ADCフロントエンド上のマルチプレクサ
は、使用されているデバイス・パッケージに応じて、最大
32個の入力チャネルを備えることができます。
アナログ・サブシステムには、ディープ・パワーダウン・
モードで機能するアナログ・コンパレータ (ACMP) が含ま
れています。このコンパレータには最大8ピンのI/Oピンを
配線できるほか、比較しきい値を設定するための8ビット・
リファレンスDACが搭載されています。ADCとACMPのど
ちらのモジュールも、FlexPWM/モータ制御サブシステムと
相互接続できるように設計されています。
ADCのサンプリングは、PWMの切り替え方式と正確に同期 アプリケーション・コード・ハブAN14099:MCX A153
できます。ACMPを使用することで、過電流検出/保護など を使用したPMSMセンサレスFOC
のパワー・エレクトロニクスのセーフティ・メカニズムに
対して、FlexPWM内のフォルト・ロジックをトリガできま
す。MCX A内にある他の多くのペリフェラルと同様に、 産業用IoTエッジへの対応 — CAN FD
ADCとACMPのトリガ/イベント信号も、 INPUTMUXに MCX Aは、CAN Flex Data (CAN FD) インターフェースを含め
ルーティングされています。 ることで、産業用IoTの領域にも拡張できます。CANは車載分野
ADCの制御信号を、FlexPWMモジュールとAOIユニットか に根差した技術ですが、フォルト・トレラント通信が要求される
らのイベントやトリガと組み合わせれば、さまざまなパ アプリケーションにも普及しています。多くの産業用およびロボ
ワー・エレクトロニクス・アプリケーション向けに、CPU ティクス・アプリケーションに、広く普及している車載用CAN
介入/オーバーヘッドを最小限に抑えた、高度な制御および データ・バスが活用されています。
保護方式を作り出すことができます。 CAN FDは、高速転送と大きなメッセージ・サイズを可能にする
A146/156は、設定可能なオペアンプ、12ビット1MSPS CANプロトコルの拡張機能です。従来のCANフレームのデータ・
DAC、追加のADCおよびACMPを加えることで、広範なア フェーズ中にビット・レートを高い値に切り替えるという、斬新
ナログ機能が備わっています。DACは、専用のバッファと な手法が使用されています。データ・フェーズ中に最大8倍まで
プログラム可能なゲイン設定を備えたR2Rラダー・トポロ ビット・レートを高めることができ、メッセージ・サイズを8バ
ジです。DACには、グリッチレスの波形合成をサポートす イトから64バイト、信号速度を1 MB/sから8 MB/sに拡張できま
る16ワードFIFOが搭載されています。DACのトリガ信号 す。
は、INPUTMUXを介してルーティングされるため、その出 モータ制御サブシステム、アナログ・サブシステム、CAN FDを
力をeDMAで使用するだけでなく、さまざまなタイマやペリ 組み合わせることにより、MCX Aをモーション制御、ロボッ
フェラル・イベントと同期できます。 ト・アーム、ロボット式エンド・エフェクタなどのアプリケー
MCX Aのハードウェア機能は、MCUXpresso開発者エクス ションに対応させることができます。
ペリエンスで提供される一連のモータ制御サンプルとツー MCX A上の他のシリアル・インターフェースも、産業用アプリ
ルで補完できます。たとえば、アプリケーション・コー ケーションの領域に価値をもたらします。MCX Aは、以下のよ
ド・ハブには、PMSMモータに対するフィールド指向制御 うな多様なコマンド・インターフェースを備えたアプリケーショ
(FOC) のサンプルが含まれており、これにはFreeMASTER ンで利用できます。
デバッグ・ツールとモータ制御アプリケーション・チュー
ニング (MCAT) ツールが組み込まれています。 • ボタンによる手動ユーザー制御/HMI
• I3C/I2Cを介したモータ制御/I/Oブリッジ・コプロセッサ
• Profibus、Modbus、BACNETなどの標準化されたプロトコル
を使用する、産業用グレードの分散型RS485ネットワーク上
のノード
• RS-232などのシンプルなUART接続を介したポイント・ツー・
ポイント接続
最後に、アナログ・サブシステムの用途はモータ制御だけではあ
りません。MCXは、従来の産業用センサや4~20 mAの制御ルー
プとのインターフェースにも適しています。
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MCX AとMIPI I3C®:新しいI2C、MCUXpresso開発者エクスペリエンスによって得られるソフトウェア開発ツールと使いやすさ
MCX W
MCX A
i.MX RT500 / 600
LPC865 MCX N S32K3 i.MX 91 / 93 / 95
i.MX RT1180
LPC55(s)3x
Value MCU Main-stream and Automotive MCU Crossover MCU Applications processor
(to 60MHz) all-purpose MCU (to 240 MHz) (to 1GHz) (>1GHz)
I3C実装を採用したNXPデバイス
MCX AとMIPI I3C®:新しいI2C ピン数の少ないMCX Aデバイスに搭載されたI3Cペリフェラ
ルは、I3Cプロトコル・ブリッジングや、高速2線式インター
NXPは、MIPI I3Cバスのパイオニアです。I3Cとは、従来の
I2 フェース搭載のインテリジェントなペリフェラルなど、さま
C 2線式バスの上位互換となるバスです。I3Cは、より高速 ざまな新しいアプリケーションの可能性を開きます。CAN
な2線式アプリケーション向けにI2Cをアップグレードする目 FDおよびUSBペリフェラルをI3Cとともに追加することで、
的で、MIPIアライアンスによって開発されました。I3Cは、 MCX Aは極めて実用的な低コストI3Cブリッジ・ソリュー
PCB上のデバイス間の単純な2線式インターフェースとして引 ションになります。
き続き機能しながら、I2CおよびSPIの代替として位置付けら
れています。 MCUXpresso開発者エクスペリエンスによって得ら
NXPは、従来の汎用MCUから、i.MX RTクロスオーバーMCU れるソフトウェア開発ツールと使いやすさ
や、高性能i.MXアプリケーション・プロセッサに至るまで、 私たちは、開発者がソフトウェアをどのように開発するか
I3Cの実装をリードしてきました。 に関して選択の自由を提供できるよう取り組んでいます。
I3Cの主な特長: MCX Aの中心にあるのが、MCUXpresso開発者エクスペリ
エンスです。MCUXpressoスイートのソフトウェアとツー
• I2Cとの下位互換性(7ビット・アドレッシングをサポー ルには、コアとなるソフトウェア開発キット (SDK) に加
ト、クロック・ストレッチングなし)。 え、統合開発環境 (IDE) および設定ツールが含まれていま
• 最大12.5MHzのクロック・レート。より高いデータ・ す。
レート用には、SDAをオープン・ドレインからプッシュ MCX AのSDKには、製品化対応のペリフェラル・ドライバ
プルに切り替え。SCLは常時プッシュプル。 と、USBデバイス・スタックなどの幅広いミドルウェアが
• インバンド割込み。追加のピンを必要とせずに、ペリ 含まれています。SDKは柔軟性が高く、複雑な設定なし
フェラルがバス上でコントローラに割込み可能。割込み で、以下のような各種IDEとともに使用できます。
信号にコンテキスト・バイトを追加可能。 • MCUXpresso for Visual Studio Code (VS Code) - 迅速
• アドレッシング/アービトレーションによる優先順位メカ で柔軟な開発を実現するVS Code拡張機能
ニズム。 • MCUXpresso IDE - 使いやすさを最適化したEclipseベー
• 同じバス上に複数のコントローラ。 スのカスタムIDE
• ダブル・データ・レート・モードではクロッキング・シ • IAR Embedded Workbench - 安全性が保証され、高度
ンボルごとに複数のビットを送信。 な最適化が可能なC/C++向けコンパイラおよび開発環境
• ホット・ジョインと動的アドレッシング。ターゲット・ • Arm Keil MDK - 広範なミドルウェアを備えた高性能Arm
ノードはバスにいつでも接続可能。新しいデバイスがバ コンパイラ
スに接続すると、各ノードは通知を受信。 MCX Aはベアメタル・アプリケーションに適していますが、
• 一般的なコマンド・コードで動作を標準化。 RTOSにも対応しています。FreeRTOSサンプルは、MCX
A向けSDKで提供されています。
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FRDM開発ボードによる迅速なプロトタイプ作成
MCUXpresso SDKのFreeRTOSサンプル
MCX Aデバイス向けのZephyr RTOSのサポートは現在開発 FRDM開発ボードによる迅速なプロトタイプ作成
中であり、2024年の第3四半期からリリースが開始される
予定です。 FRDM開発プラットフォームでは、Arduino®互換のピン・
ヘッダを介してI/Oに簡単にアクセスできます。MCX Aの
SDKは、オンラインのMCUXpresso SDKビルダを使用して ペリフェラルに完全にアクセスできるように、追加のピン
カスタマイズおよびダウンロードすることも、MCUXpresso 列が用意されています。また、mikroBUS™およびPmod™
IDEまたはMCUXpresso for VS Code内から直接アクセス 用のソケットも搭載されています。拡張ボード・ハブ
することもできます。これらの特定のデバイス用のスタン (EBH) には、互換性のある拡張ボードと「シールド」が用
ドアロンSDKを使用するだけでなく、開発者はNXPの 意されているほか、ACHのサンプルへの直接リンクもあり
GitHubリポジトリから各リリースに直接アクセスできま ます。
す。
SDKとともに使用できるもう1つの開発リソースが、アプリ
ケーション・コード・ハブ (ACH) です。ACHは、アプリ
ケーション・コードを豊富に取り揃えたGitHubベースのリ
ポジトリへの、パワフルで使いやすいインターフェースを
備えています。これらのコードは、アプリケーションのフ
ル実装から、デモやアプリケーション・ノートのソフト
ウェア、便利なコード・スニペットまで多岐にわたり、い
ずれもSDKまたはZephyrとの互換性があります。コードは
ACH Webインターフェースを使用してクリック数回で
GitHubからクローンできるほか、MCUXpresso IDEおよび
MCUXpresso for VS Codeのユーザーなら、それらのツー
ル内からACHに直接アクセスでき、簡単な手順でインポー
トできます。
ますます多くの組込みプロジェクトが、継続的な統合と継
続的な展開ワークフローに依存しています。マイクロコン
トローラ開発ではIDEベースのプロジェクトが一般的です FRDM-MCXA153開発ボード
が、MCX AのツールはCI/CDパイプラインですぐに使える
コマンド・ライン・ビルドもサポートしています。SDKに ニーズに合った拡張ボードが見つからない場合は、独自の
はCMakeスクリプトが含まれ、Makeなどの好みのビルド・ ボードの構築をお手伝いします。NXPのMCXコミュニティ
ツールや高速なNinjaビルド・システムで使用できます。 で、MCX A FRDMシールド・テンプレートが提供されてい
ます。エンジニアはこのテンプレートで独自のシールドを
すばやく構築し、カスタム・ユース・ケースのプロトタイ
プを製作することができます。
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小型パッケージのメリット
5 x 5 mm LFBGA64 0.5 mmピッチ・パッケージのMCX A156
ボール・パターンは、ファンアウトを容易にするために、
ボールのない領域にビアを配置できるような設計になってい
ます。VDD信号とVSS信号が都合よくグループ化されている
ため、ビアインパッド・テクノロジを用いなくても、複数の
FRDM-MCXA153カスタム・シールド・テンプレート 方法でチップをファンアウトできます。
このシールド・テンプレートには、必要なMCX A153のI/Oを
すばやく特定できるように、簡単な回路図、ピン・ヘッダ、
ネットラベルが付属します。PCBには、読みやすいI/Oラベル
の付いた、FRDM-MCXA153に接続するためのフットプリン
トがあります。基本的なものは用意されているので、自分な
りの「隠し味」を加えて、設計のプロトタイプをすばやく製
作できます。設計ファイルは、一般的なオープンソースの
KiCad形式とAltium Designer形式を使用できます。
MCUXpresso Config Toolsでは、カスタム拡張ボードと任意
のFRDM開発ボードを組み合わせるときのピン構成が容易に
なるように、接続を定義できます。
小型パッケージのメリット
LFBGA64パッケージのMCX Aは、低コストの2層PCBテクノ
MCX Aに固有の価値提案としては、他にも、シンプルな低コ ロジで簡単に使用できます。
ストPCBプロセスで使用できるという特性を維持しつつ、よ
り小型でピン数の少ないパッケージや、より高密度のBGA製
品が用意されているという点が挙げられます。その一方の例
が、非常に低コストでピン数の少ないアプリケーションに適
した、5 x 5 mmのHVQFN32であり、もう一方の例が、0.5
mmピッチ、5 x 5 mmのLFBGA64パッケージで提供される
MCX A156です。
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まとめ、Eli Hughes
まとめ
MCX Aは、USB、MIPI I3C、FlexIO
などの独自のペリフェラルと高度な
モータ制御サブシステムを活用して
モータ制御、センシング、および関連
する産業用アプリケーションに対応す
る、MCXポートフォリオの重要な製品
です。MCX Aシリーズは、2024年を
通して引き続き拡張され、パッケージ
のピン互換性を保持しながら、より多
くのフラッシュやRAMを搭載した新し
いファミリやバリエーションが加わる
予定です。 Eli Hughes
NXPのプロ・サポート・エンジニア
Eli Hughesは、NXPのプロ・サポート・エンジニアとして、NXPのマイクロコン
トローラおよびアプリケーション・プロセッサ・ファミリ全体を通じてハード
ウェア設計とファームウェアの両面からお客様をサポートしています。サポート
業務に加え、実用的な実世界のシナリオでのNXP製品の活用について紹介する技
術コンテンツも制作しています。NXPに加わる前には、ペンシルバニア州立大学
応用研究所で、組込みシステム、センサ、ロボット、水中車両、宇宙科学に関す
る研究開発に携わっていました。また、ペンシルバニア州立大学の電気工学科で
マイクロコントローラ、FPGA、回路理論の講義も担当していました。プライ
ベートではギターや木工を趣味としています。
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