測定事例(キニーネ）

キニーネ キニーネは、マラリアをはじめとするさまざまな疾患の治療に用いられる薬剤です。WHO（世界保健機関）の「必須医薬品」 の一つに指定されています。図1は，CDCl3中の250 mMのキニーネの1H NMRスペクトルで，10秒のシングルスキャンで測定し たものです。 1D プロトンスペクトル 図1: CDCl3中の250mMのキニーネの1H NMRスペクトルをSpinsolve 90MHzによりシングルスキャンで測定(10分)。 1D カーボンスペクトル 図2は，250 mMのキニーネをCDCl3中の13C NMRスペクトルで，1Hから13CへのNOEと1H decouplingを用いて取得したものであ る。NOEを用いた1次元カーボンの測定では，試料中のすべての13C核に感度があります。また、すべての共鳴を明確に捉える ことができます。 Figure 2: CDCl3 中の250 mMのキニーネの13CスペクトルをSpinsolve 90 MHz により測定（120分）。

2D COSYスペクトル 2次元COSY実験では、2次元データセットの対角線上にクロスピークが発生するため、結合した1H核を識別することができます。図3では には、多数のクロスピークがきれいに観察されます。例えば、13位の炭素にある水素は12位の水素とカップリング（紺色）、16位と18位の水素は20位 の水素とカップリングしている（オレンジ色）。 18はプロトン20と結合し（オレンジ）、プロトン18はプロトン19と結合し（ライトグリーン）、プロトン2はプロトン1と結合し（ピンク）、プロトン3 と結合している（ライトブルー）。さらに、3と9のプロトンとカップリング（濃い緑）、6と10のプロトンもカップリング（赤）も観察できます。 図3: CDCl3中の250mMキニーネの1H 2D COSY実験をSpinsolve 90MHzにて6.5分で取得しました 2D HSQC-ME HSQCは、1Hと単結合した13C原子核の相関をとるために広く用いられている強力なパルス配列です。SpinsolveにはHSQC-MEが搭載されてい ます。これにより，DEPT-135 が得られ，CH2 基の信号(青)とCHやCH3基の信号(赤)を区別するのに有効です。図4は，4分間で取得した CDCl3中の250mMキニーネのHSQC-MEスペクトルです。NUS(non uniform sampling)を用いて測定時間を最適化しています。 図 4: CDCl3中の250mMキニーネ試料のHSQC-MEスペクトルで、1H（横）と13C（縦）の信号の相関を示します。

2D HMBC 2つまたは3つの結合を介して1H-13C相関を得るには、HMBC（Heteronuclear Multiple Bond Correlation）測定を使用することができます。図5 は、250 mMのキニーネのHMBCスペクトルを、Spinsolve 90 MHzを用いて測定したものです（34分）。一例として、プロトン13と炭素12（濃 青）、14（薄緑）、11（赤）との長距離相関や、プロトン19と炭素15（水色）、17（ピンク）とのカップリング、プロトン12と炭素10（オレ ンジ）、プロトン20と炭素17（濃緑）とのカップリングを丸で示しています。この測定では、第4級炭素との相関も示されています。 図 5: 1Hと13C核の長距離結合を示すCDCl3中の250mMキニーネ試料のHMBCスペクトル