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サーモグラフィーの量産化を考えるならサーモパイルアレイセンサー
サーモパイルアレおセンサーとは、サーモパイル(熱電堆)で作られたアレイ(配列)センサです。
一般的なサーモパイルセンサがセンサ内部に1つの素子しか無いのに対して、
サーモパイルアレイセンサは複数の素子がセンサ内部に整列して入っています。
温度管理、サーモグラフィーと用途の幅が広い温度センサーです。
このカタログについて
ドキュメント名 | サーモパイルアレイセンサーについて |
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ドキュメント種別 | 事例紹介 |
ファイルサイズ | 1.3Mb |
登録カテゴリ | |
取り扱い企業 | エスエスシー株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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【内容】サーモパイル型アレイセンサ解説BOOK
サーモパイル型赤外線アレイセンサ
-赤外線アレイセンサとは-
エスエスシー㈱
河口雄亮
1. はじめに
2. 経緯・背景
3. 技術的特徴
4. 最新のセンサーラインアップ
5. アプリケーション用途
6. サーモパイルアレイセンサの今後
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64 素子を内蔵したものであるが、最も重要な特徴としてサ
1. はじめに ーモパイルの動作回路を含んだモノリシックチップ構造
赤外線センサの分野において、新しいセンシングデバイ となっている。開発当時のアレイセンサは 8×8=64 素子、
スとして赤外線アレイセンサの開発が非常に活発に進ん キャンの直径約 14mm、ピン数は 16 本、アナログ出力の
でいる。これまでは軍事用途や宇宙用途向けに開発が進め 構成となっていた。
られ、高性能なサーモグラフィなどが空港や公共施設など ハイマンセンサ社における開発の大きなモチベーション
で簡易検査に使用されていたが、近年家電製品に組み込ま として、世界初の技術もしくは製品を毎年必ず一つ以上達
れたり、スマートフォンに外付けで使用できるデバイスが 成する事としている。特にこの 10 年間においてはアレイ
発売されたり、安価に使用できるサーモグラフィが増えて センサの開発に力を入れており、他社に先んじて新しい製
きている。 品や技術を生み出してきている。また、内部構造や素子パ
軍事用、宇宙用や研究用の市場から始まった赤外線サー ターン、周辺回路等の改良を重ね、センサーサイズの小型
モグラフィがいまや民生用製品として広がりをみせる中 化と素子数の増加を実現している。また、センサ内部にア
で、価格、扱い易さの点から熱型(非冷却型)の赤外線ア ナログ出力をデジタル変換する回路やメモリを搭載する
レイセンサが広く使われている。熱型赤外線アレイセンサ ことによって、メーカーで校正した補正値をセンサ内部に
には焦電素子型、熱電型、ボロメータ型があるが、熱電堆 保存し、容易に温度データとして使用でき、またピン数を
(サーモパイル)型赤外線センサの主要なメーカーである 減らす事に成功した。現在では多彩なラインアップの製品
ハイマンセンサ社のサーモパイル型赤外線アレイセンサ 群をそろえ、素子数は最大 80×64=5,120 素子、キャンは
について紹介する。 最小直径約 5mm、ピン数は 4~6 本、出力は I2C もしくは
SPI の構成となっている。
1素子の 素子間
2. 経緯・背景 受光部サイズ ピッチ間隔
ハイマンセンサ社は 2002 年に前身の企業から独立した [µm] [µm]
会社であるが、開発に携わる技術者達は赤外線センサの分 [旧型] 220 x 220 300
アナログ 150 x 150 220
野において 30 年を超える経験と知識を持っている。彼ら
60 x 60 110
は単素子や 2 素子、4 素子のサーモパイルセンサの開発、 ↓ ↓
生産から始め、独立する頃には初期のアレイセンサの開発 [現行] φ170 220
まで進んでいた。最初に開発されたアレイセンサは 8x8 の デジタル 44 x 44 90
表 1 素子の改良に伴う 1 素子の受光部サイズと素子間ピッチ間隔の変遷
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いる為、様々な光学系(レンズ)を持っており、コストを
8x8
ア
ナ ↓ → → → 16x16
ロ ↓ ↓ → 32x31
グ ↓ ↓ ↓ → 64x62
↓ ↓ ↓ ↓
デ ↓ → 16x4 ↓ ↓ ↓
ジ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
タ
8x8 16x4 16x16 32x32 80x64
ル 図 4 サーモパイル素子とシリコンレンズの MEMS ウェハー
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
現行品 ○ ○ ○ ○ ○
追及したモデルについてはシリコンレンズを採用してい
表 2 サーモパイル型アレイセンサの素子数変遷 るが、80x64 タイプではゲルマニウムレンズを 2 枚使用し
広画素解像度を実現している。ここまでに紹介している様
に素子数や光学系(視野角)が異なる多彩なラインアップ
を持っている事が一番大きな特徴といえる。
次にあげられる特徴として応答速度の速さがある。ア
レイセンサはカメラの様に視野内を分割して測定するこ
とが出来る為、測定データの温度分布から熱源の位置を判
別する事ができ、またその状態変化を知る事により様々な
用途で使用可能になる。ハイマンセンサ社のアレイセンサ
は最も画素数の多いタイプでも約 10Hz での動作が可能で
ある。さらに高速動作も可能ではあるが、応答速度(動作
図 3 各種サーモパイル型アレイセンサと熱画像解像イメージ 速度)は NETD とトレードオフになる為、温度分解能が重
要ではない用途においては 15Hz での動作も可能となる。
また、ハイマンセンサ社のアレイセンサはコストカット
を考慮しながら進めている為、部材の共通化と少量化を意
3. 技術的特徴 識している。大量に製造している単素子センサでは、ほと
16×4 タイプを除いた 8×8、16×16、32×32、80×64 んどがメタル TO キャンを使用している為、アレイセンサ
は全てハイマンセンサ社の完全オリジナル技術・製品であ においてもメタル TO キャンの製品ラインアップとなる。
る。素子を形成する MEMS の設計、レンズ設計、構造設計 また、コストダウンの為に PCB 等の追加部品無しで使え
から始まり、MEMS ウェハーの製造、ダイシング、アッセ る製品となっており、これはセンサの小型化にもつながっ
ンブリ、キャリブレーションまで全ての工程を自社と自社 ている。
の組立会社にて行っている。また、一部のセンサに使用さ ハイマンセンサ社のサーモパイルアレイセンサのライ
れる MEMS 加工レンズも自社で製造を行っている。アレ ンアップは現在全て画素数が 5,120 素子以下となっている。
イセンサは単素子センサに比べて受光素子が小さくなる これは海外での使用も考慮した時に輸出規制に該当しな
為 NETD(温度検出分解能)が悪くなり性能上の最大の課 い様配慮されているからである。また環境規制(RoHS 等)
題であるが、サーモパイルのパターン設計から見直して、 にも対応しており、様々な用途でご使用頂くにあたって制
出力を上げつつ、周辺回路や構造の開発を含めたノイズ成 限の無い製品となっている。
分の減少を進めている。また、社内で全ての設計を行って
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最大 512Hz での動作まで可能となっている。
4. 最新のセンサーラインアップ 4.3 16×16 タイプ
ここでは各素子数のアレイセンサごとに標準ラインア
ップを紹介する。
4.1 8×8 タイプ
図 7. 16×16 のサーモパイルセンサ
16×16 タイプは 8×8 タイプと 32×32 タイプの補間製
図 5. 1 ユーロセント硬貨と 8×8 のサーモパイルセンサ 品としてラインアップされている。素子数や視野角以外の
仕様は 32×32 タイプとほぼ同じになっている。サイズは
最も小型なサーモパイルアレイセンサのラインアップ TO5、TO39 となり、通信は I2C の 4 ピン出力で 3.4V 駆動
は 8×8 タイプである。サイズは TO18 や TO46 と呼ばれ である。視野角は 16°×16°から 45°×45°で 4 種類の
る TO パッケージになり、直径約 4.7mm である。通信は ラインアップが存在する。また、こちらも外部アパーチャ
I2C の 4 ピン出力で 3.4V 駆動となる。視野角は 23°×23° ーがついたタイプも存在する。16×16 以上のラインアッ
の製品のみ現在製造している。動作速度については素子数 プには感度を上げるためにゲルマニウムレンズを使用し
が少ない為早く、初期設定でも 30Hz 以上で動作する。8× た製品も用意される。動作速度は標準初期設定では約
8 については 16×16 と同じパッケージにいれた製品も提 18Hz となっている。
供でき、視野角 47°製品も生産開始されている。
4.4 32×32 タイプ
4.2 16×4 タイプ
図 6. 16×4 のサーモパイルセンサ 図 8. 32×32 のサーモパイルセンサ
現在のデジタル出力製品の開発は 16×4 タイプから始 ハイマンセンサ社において最も多種類のラインアップ
まっている。また、この製品はリニアアレイに寄せたライ を用意しているのが 32×32 タイプになる。1,000 画素以
ンアップとして幅広いお客様のニーズに応えられる様に 上になると人の顔や人の輪郭等が分かるようになる為、人
存在している。この製品は TO5 や TO39 と呼ばれるパッ 検知の用途ではこの画素数以上を用いられる事が多い。サ
ケージになり、直径約 8.1mm である。通信は SMBus の 4 イズは TO5、TO39 パッケージとなり、通信は I2C の 4 ピ
ピン出力で 2.6V 駆動となる。視野角は 28°×7°から 90° ン出力で 3.4V 駆動である。視野角は 23°×23°から
×23°で 5 種類ラインアップがあり、距離特性を良くする 105°×105°まで 7 種類に対応しており、外部アパーチ
為にメタルパッケージに外部アパーチャーがついたタイ ャー付きタイプも用意されている。動作速度は初期設定で
プもある。動作速度は初期設定では 1Hz となっているが、 は約 9Hz となっている。高感度向けのゲルマニウムレンズ
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を使用した製品とコスト重視のシリコンレンズタイプの 2
種類からなっており、それぞれセンサ外形の高さが異なる。 次に介護・医療の分野において高齢者の転倒検知などプ
視野角が広角なタイプになる程、センサ外形の高さが低く ライバシーを保護しながら人の異常状態を検知する事が
なり、開口径が狭くなる傾向になる。 出来る。
4.5 80×64 タイプ
図 12. オフィスにおける空調コントロール
図 9. 80×64 のサーモパイルセンサ
すでに民生品の空調機器でも使用されているが、人の温
80×64 はゲルマニウムレンズを 2 枚使用し、2 重管構造 度や人数から最適な空調管理を行う事が出来る。
とすることで高解像度、高性能なタイプを実現している。
サイズは TO8 パッケージとなり、直径約 14mm となる。
80×64 では全てこの TO8 の上にレンズキャップが付く為、
センサの外形は直径 20mm 以上となっている。通信は SPI
の 6 ピン出力で 3.4V 駆動である。視野角は 12°×9°か 図 13. 建物における不法侵入警報
ら 115°×90°まで 6 種類存在し、すべてゲルマニウムの
2 重レンズとなる。動作速度は初期設定で約 9Hz となって セキュリティ分野においても、暗闇でも温度を検知して
いる。また、80×64 タイプについてはセンサをさらに高感 人検知を出来る事が赤外線センサの強みである。
度にしたタイプの生産も開始されている。センサ内部の構 上記の用途以外にも装置における温度状態の検知や異
造は異なるが、外形や通信の仕様は同一である。 常発熱箇所の検知などの産業機器用途でも使用する事が
出来ます。
5. アプリケーション用途
代表的なアプリケーション用途を紹介する。 6. サーモパイルアレイセンサの今後
ハイマンセンサ社では今後も新しい開発を継続して進
めている。現行の製品については、生産の安定化、コスト
ダウンをすすめ、より良い性能改善の開発も行っている。
今後の新製品ラインアップへの開発案件としては、これま
図 10. キッチンにおけるコンロ監視 でになかった SMD(表面実装)パッケージ製品や 5,120 画
素を超える高解像度タイプの開発が進められており、世界
ホームアプライアンスでは、キッチンにおける温度監視 初の製品として市場に出る日も近いといってよい。
などの熱製品での防火用途が考えられる。
■IR thermopile array sensor of HEIMANN Sensor GmbH
products
■Yusuke Kawaguchi
図 11. 個室における高齢者の転倒モニタリング
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■Sales Dept. Chief
カワグチ ユウスケ
所属:エスエスシー㈱ 営業部 課⾧補佐
<お問い合わせ>
〒511-0911 三重県桑名市大字額田 293 番地
TEL:0594-33-3080(代) FAX:0594-33-3081
e-mail:info@ssc-inc.jp
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