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蛍光増白剤を含む用紙の管理およびカラーコミュニケーションに役立つ ISOに定義された規格「M」
■ Mファクターは変化するマーケットの動向に対応した測色機の照明条件の新たに設定された規格です。
■ 印刷標準の数値に対して印刷,または顧客に要求された数値で印刷する際は,元の値を正しく把握することが重要です。濃度値は照明条件にあまり影響されませんが,用紙やベタインキ以外の色を測定する際には差が発生することがあります。
■ ISOによる新しい規格「M」を利用することでその色の測定値とD50常用光源照明下での「見え」の相関が取れるため,カラーマネージメントによるコントロールが正しく機能することになります。
■ 詳細はホワイトペーパーをダウンロードしご覧いただくか、エックスライト(X-Rite)社にお気軽にお問い合わせ下さい。
■ 積分球分光測色計、多角度分光測色計、インラインでご使用いただける機種も含む非接触分光測色計、標準光源装置、色彩調色ソフトウェア(CCM:コンピュータ・カラー・マッチング)、色彩管理ソフトウェア等、色のコミュニケーション(カラーコミュニケーション)に課題をお持ちのお客様に、最適なソリューションを提案します。是非お問い合わせください。
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このカタログについて
ドキュメント名 | M ファクターの解説: 蛍光増白剤が使用された用紙のカラーマネージメント |
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ドキュメント種別 | ホワイトペーパー |
ファイルサイズ | 536.8Kb |
取り扱い企業 | エックスライト社 (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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M ファクターの解説
蛍光増白剤が使用された用紙のカラーマネージメント
多くの印刷およびプルーフ用紙には蛍光増白剤 [OBA:optical Brightening Agent] が使用されています.このよ
うな蛍光増白剤は用紙の輝度を高め,印刷物の「見え」を改善します.しかしながら,このような増白剤の使用は
多くのカラーマネージメントの問題を引き起こします.この問題に対応するため,蛍光増白剤を含む用紙の管理
およびコミュニケーションに役立つ新しいスタンダードがISOにより定義されました.
はじめに
OBAは蛍光の原理により作用します.波長が400ナノメートル(nm)以下の目に見えない紫外線(UV)放射を吸収
し,主に400から450 nmの青の可視域スペクトルで光を放出します.この青い光が用紙上の蛍光増白剤から放射
される際,用紙から観察される色は「白」よりもいっそう白っほく見えることになります.これは, OBAが使用された
用紙をUVを含む光で照明すると,反射光に加え,蛍光による放射光が加算されて見えるからです.
最近では環境問題の関係もあり,再生紙の使用などが増える傾向にあります.この場合,用紙の色を白く保つた
めにこの蛍光増白剤がよく使用されます.しかし,この蛍光増白剤が使用される量は用紙ごとに異なります.また,
印刷を観察する際の照明光に含まれるUVの量によっても色の見え方が変わってきます.次の例では左右の写真
で同じ用紙セット(各用紙の蛍光増白剤量が違う)を異なる2つのUV量の照明で観察した例です.UVの有無で見
えが大きく変わってくるのがわかります.
印刷インクは多くが透明な素材のため,このような紙の色の変化は印刷のカラーマネージメントに大きく影響する
ことになります.
UVなし UVあり
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ISOによる新しい規格「M」
蛍光増白剤が使用されていなかった従来の用紙では,色の測定値と観察ブースで見た色の「見え」は一致していまし
た.しかし,蛍光増白剤が使用された用紙ではこの測定値の値と観察された「見え」 の相関にズレが生じるのです.
これは測色計の光源に使用されている光のUV量と,観察照明に使用されている光のUV量が異なるために発生します.
用紙やインキに蛍光素材が使用されない場合,測色機器内の照明は全波長で十分なパワーがあれば,特にその分光
分布はそれほど大きな問題ではありませんでした.蛍光素材が使用される場合,その分光分布は観察照明のそれとマ
ッチしている必要があるのです.
照明条件の影響
このチャートは,3つの異なる照明条件が,蛍光増白剤を含んだ用紙と含まない用紙に対する測色への影響を表します.
左のグラフは用紙に蛍光増白剤が使用されていない場合の分光反射率の測定グラフです.この場合,M0でもM1,M2
でも同じ測定データが取得されます.右のグラフは蛍光増白剤が使用されている用紙を測定したものです.同じ用紙を
測定したのに,M0, M1, M2で異なる分光反射率を示しています.M0, M1ではUVで励起された蛍光素材のエネルギ
ーが可視域の光となって放出されています.このため,420nmを中心にグラフに高く盛り上がったコブができているのが
見られます.
このように照明の UV 量の違いによる測定結果の変化は,カラーマネージメントに大きく影響します.この問題を解決す
るために ISO では測色計の照明条件を改定し,標準的なイルミナントとマッチした測色計の標準照明条件を定義しまし
た.これが新しく定義された ISO12655-2009 の「M」です.
特に,M1では測色計にD50イルミナントにマッチした照明条件が求められ,蛍光増白剤を使用した用紙に印刷さ
れた場合でも,その色の測定値とD50常用光源照明下での「見え」の相関が取れるため,カラーマネージメントに
よるコントロールが正しく機能することになります.
ISO12655ではM1の他にも従来の照明条件であるタングステン光のA光源による照明やUVをカットした照明なども
併せて厳密に定義しました.以下に,これらM0-M4を詳しく説明します.
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測定照明条件
M0:CIEイルミナントAの照明条件
グラフィックアートに使用される既存の測色計の多くは,2856 K,± 100 Kの色温度に近い分光分布を持つ白熱
光ランプが使用されています.これは,この光が可視光域で連続的で十分なパワーを安定的に供給することがで
きるためです.例えばエックスライト社および旧グレタグマクベス装置の多くのグラフィック用測色計や濃度計はこ
の照明条件で提供されてきました.
しかしながら,測定照明条件M0ではUV要素が定義されていません.このため,ISO 13655では,用紙やインキな
どの色材に蛍光成分が見られる場合には,M0の使用を推奨していません.国際的な印刷標準規格などでは,
M1を満たす装置がなく,プロセス管理またはその他のデータ交換用アプリケーションの相対データが十分であれ
ば,同じようなメーカーやモデルのM0装置を使用することができるようになっています.このため,現状では,多く
の印刷標準規格がM0の測色計による対応がとられています.
M1:CIEイルミナントD50にマッチする照明条件
印刷やプルーフの用紙や色材に含まれる蛍光素材によって発生する「測定値」と「見え」の不一致を削減するた
めに定義された規格です.M1には2つのパートが定義されています.
M1:パート1は,照明の分光分布が紫外域および可視光域の両方でCIEイルミナントD50に一致することを要求し
ています.この規格では,蛍光増白剤だけでなく蛍光インキなどの可視域で励起する蛍光素材に対しても有効な
ソリューションとなります.
M1:パート2では,D50のUV量にマッチさせるための管理調整されたUVおよびその補正方法が共に使用されるこ
とを唯一の条件とします.可視域での分光分布は問題とされません.この方法では蛍光増白剤への対応は可能
ですが,可視域での蛍光素材には対応できません.また,ISO 3664:2009に準拠する観察条件が必要なため,使
用の際には十分に注意し,また器差の検証が推奨されています.
M2:UV除去(UVカット,UVなし,UVフィルター)の照明条件
M2ではUV量の照明からの除去度合いが波長で定義されています.このため,蛍光増白剤の含まれる用紙を使
用した場合にも,この規格に沿った機器同士ではバラつきの少ない測定値を得ることができるため,より優れた精
度と一貫性でカラーデータのコミュニケーションが可能になります.しかしながら,蛍光増白剤の含まれる用紙の
場合,「見え」との相関に不一致が発生する可能性があり,カラーマネージメントに悪影響を及ぼすことがありま
す.
M3:偏光フィルタの照明条件
基本的に偏光フィルタは紫外(UV)成分をカットします.このため,M2と同様の規格が適用されています.偏光フ
ィルタは表面反射を除去または抑えるために濃度測定装置によく使用されます.
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M0,M1,M2,M3のアプリケーションと使用
それぞれの測定照明条件は,その使用用途が明確です.
M0: 用紙や色材が蛍光発光しない場合に使用します.
M1パート1: 用紙,色材,またはその両方が蛍光発光する場合に使用します.
M1パート2: 用紙が蛍光発光し,色材が蛍光発光しない場合に使用します.
M2: 用紙が蛍光発光し,データからその影響を除去したい場合に使用します.
M3: 表面反射を最小限に抑えるために偏光フィルタが使用される場合.
M0 M11 M1 M2 M3
蛍光増白剤用紙使用時の測定 ○ ○
蛍光インキの測定 ○
非蛍光増白剤用紙使用時の測定 ○ ○ ○ ○
蛍光増白剤の影響を除去 ○ ○
表面反射の成分を除去 ○
測定前のデータ交換で使用する 測色データをやりとりする際,データ測定に使用するMスタンダー
Mスタンダードの合意 ドを事前に合意しておくことが大切です.
今日,業界の標準印刷条件はすべてM0装置で規定されています.蛍光増白剤およびイメージング着色剤の使
用に伴い,ISOはこの課題を調査する活動を行っていますが,現在はM0がグラフィックアートの標準測定照明条
件となっています.
最後に
印刷標準の数値に対して印刷,または顧客に要求された数値で印刷する際は,元の値を正しく把握することが重
要です.濃度値は照明条件にあまり影響されませんが,用紙やベタインキ以外の色を測定する際には差が発生
することがあります.異なるステータス(T,E)レスポンス,および偏光(M3)が異なる場合はさらに大きな変化が発生し
ます.データを交換する際,濃度ステータス同様に,測定照明条件(M0,M1,M2,M3)および色彩計算用のパラ
メータ(例:D50/2, D65/10)を記録するよう心がけてください.
以上のように,M ファクターは変化するマーケットの動向に対応した測色機の照明条件の新たに設定された規格
です.その意味と目的を正しく理解し,より正確で安定したカラーマネージメントのためにご利用ください.
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