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半導体製品が製造中止(EOL)になってしまったときの、継続的な供給ルートを確保するには
ロチェスターエレクトロニクスでは、長期間保管していた半導体製品の性能を調べるため、最長のもので17年間保管されていた製品の中から、さまざまなパッケージタイプの製品を無作為に選んで検証を実施しました。選んだ半導体製品に対しテストと分析を行い、長期間保管の影響を調べました。基本的な試験に加え、光学、X線、SEMイメージング、デギャップ、断面テスト、および電気的試験に基づく広範な試験が行われました。
目次(一部抜粋)
・基板等最後の状態画像
・プリント基板実装部とはんだ接合部のX線およびSEM画像
・パッケージ開封後のダイおよびワイヤボンディング検査
・電気的試験結果
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このカタログについて
ドキュメント名 | 【ホワイトペーパー】半導体製品の長期保管が機械的特性および電気的特性に及ぼす影響 |
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ドキュメント種別 | ホワイトペーパー |
ファイルサイズ | 1.3Mb |
登録カテゴリ | |
取り扱い企業 | Rochester Electronics,Ltd. (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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A Rochester Electronics White Paper
半導体製品の長期保管が
機械的特性および
電気的特性に及ぼす影響
Rochester Electronics, Ltd. 日本営業本部
170-6011 東京都豊島区東池袋 3-1-1 サンシャイン 60 ビル 11 階
+81.3.6709.2630 / www.rocelec. jp
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概要
生産能力が限られている今日の半導体業界では、多くのオリジナル半導体メーカー(OCM)が製品ライフ
サイクルの短縮に動いています。しかし、多くの産業では、何十年にもわたり機器を稼働させ、維持す
ることが求められています。そのため、これらのアプリケーションで使用している製品のライフサイク
ルを維持するためには、継続的な製品供給が不可欠となります。
最終生産後に半導体製品を長期保管することは、広く行われている対策の 1つです。
1981 年以来、ロチェスターエレクトロニクスは、製品ライフサイクルが長いアプリケーションへの継続
供給を実現するため、半導体製品の長期保管を行ってきました。
長期保管されている半導体製品を使用する場合、エンドユーザーのお客様にとって、その半導体製品を
使用した製品が現場で信頼できるものであるという確信を持つことが重要です。
以前のホワイトペーパーで、ロチェスターの品質および信頼性チームは、半導体製品のはんだ付け性に
長期保管が及ぼす影響を調査しました[1]。IPC/JEDEC J-STD-002Eに準拠し、独立した第三者が実施した
はんだ付け性試験では、長期保管した後でも部品の経年劣化による悪影響がないことが確認されていま
す。これらの結果から、保管期間に関連する半導体製品のデートコードの違いは、半導体製品の寿命に
影響を与えないことが確認されています。
ここでは,長期保管が機械的完全性と電気的仕様に及ぼす影響について調査しています。
様々なパッケージタイプから無作為に抽出した半導体製品を最長 17年間保管し,経年劣化の影響を調べ
るために検査と分析を行いました。その結果、光学、X線、SEMイメージング、デキャップ、断面検査、
電気的試験に基づく広範な試験では、否定的な結果や故障は見られませんでした。
目次
1. はじめに
2. 検証用サンプル
3. 操作手順について
4. 基板等最後の状態画像
5. プリント基板実装部とはんだ接合部の X 線および SEM画像
6. パッケージ内部断面の X線および SEM画像
7. パッケージ開封後のダイおよびワイヤボンディング検査
8. 電気的試験結果
9. まとめ
© Rochester Electronic , Ltd.
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1.はじめに
以前作成したホワイトペーパー[1]で述べたように、オリジナル半導体メーカー(OCM)や従来の正規販
売代理店は、通常、部品を数年間保管してから在庫を棚卸しします。しかし 1981年以来、ロチェスター
エレクトロニクス は、ライフの長いアプリケーションのサプライチェーンの混乱に対応するため、部品
の長期保管に成功しています。さらに、当社ロチェスターエレクトロニクスのようにオリジナル半導体
メーカーより認定を受けている正規販売代理店は、SAE航空宇宙規格 AS6496 に準拠していることを表明
しています。
AS6496 規格では、トレーサビリティ要件として、軍用部品と商用/産業用部品の文書化の必要性を定めて
います。軍用部品には製造業者と販売業者の両方の適合証明書が必要であり、商用部品には販売業者の
適合証明書のみが必要です。また、正規販売代理店の適合証明書の内容を規定する条項もあります。
JEDEC 半導体技術協会では、半導体ウェハ、ダイ、デバイスの長期保管に関するベストプラクティスを文
書 JEP 160 として発行しています。しかし、この文書が最初に発行されたのは 2011年です。ロチェスタ
ーエレクトロニクスを含む多くの正規販売代理店は、部品をより長期保管しているため、特に古い部品
については、このガイドラインを完全に遵守することは必ずしも現実的ではありません。
テキサス・インスツルメンツ社が発行したいくつかのテクニカルホワイトペーパー [2], [3] では、
長期保管後の部品の信頼性を調査しています。最初のホワイトペーパーでは、管理された環境で適切に
保管された半導体製品は 15年を超える保存性を持つことが強調され、テキサス・インスツルメンツ社が
作成した次のホワイトペーパーでは、最長 21 年間保管された部品に、故障を示すようなメカニズムは見
つからなかったことが強調されています。注目すべきは、これらの研究結果は、管理された環境下で保
管された部品に基づいていることです。
ロチェスターの調査では、最大 17年間、様々な環境に保管されてきた部品からランダムに抽出したサン
プルを使用しています(サンプルすべてが保管期間 17年というわけではありません)。合計 5つのオリ
ジナル半導体メーカーの 3つのリード仕上げタイプからなる 8種類の製品が評価されました。
さらに、業界標準の基板実装とはんだペーストリフローの製造工程も分析に含めました。この作業は、
PCB 組立の経験が豊富な、外部の独立系第三者電子機器製造会社によって、組立工程を実施しました。
この組立委託会社は ISO-9001の完全認証を取得しており、17年以上の業界経験を有しています。
ロチェスターの品質・信頼性チームは、半導体製品が長期保管後も劣化しないことを検証するために、
パッケージ内部の健全性、部品と PCBのはんだ接合部の品質、電気試験の結果などの分析を行っていま
す。分析方法には、X線画像解析、レーザー、酸分解、断面観察、走査型電子顕微鏡(SEM)に加え、
機能試験とタイミング電気試験の両方が含まれています。
28リードのプラスチックリードチップキャリア(PLCC)、14リードの薄型シュリンク小外形パッケージ
(TSSOP)、8パッドの超薄型小外形ノンリードパッケージ(VSON)の 3 つのパッケージについて,
さまざまなデートコードをランダムに選択し,詳細な分析を実施しました。ここでは、外観、機械的特
性、電気的特性の評価結果について詳述します。電気的特性は、使用可能な試験装置の都合上、
3つのプラスチック製デュアルインラインパッケージ (PDIP) を使用して検証しました。
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2.検証用サンプル
試験に使用する半導体製品は、デートコードの異なる 3種類のパッケージを選択し、その上で、ランダ
ムにサンプルを選択しました。3種類のパッケージとは、以下の図 1に示すように、28リードのプラス
チックリードチップキャリア(PLCC)、14リードの薄型シュリンク小外形パッケージ(TSSOP)、8パッ
ドの極薄小外形ノンリードパッケージ(VSON)になります。
(a.) (b.) (c.)
(図 1. (a) 28 PLCC、(b) 14 TSSOP、(c) 8 VSON パッケージの外観写真。一部のデートコードでは、金
型は若干異なるが同一パッケージが使用されています)。
さらに、別のサンプルとして、自社設備で試験装置が利用可能な半導体製品からランダムにサンプルを
選択し、図 2の 3 種類のプラスチック製デュアルインラインパッケージ(PDIP)を電気試験に使用しま
した。
(図 2. 電気的試験の対象となった半導体製品の写真:(a)9513APC(40PDIP)、(b)27S21PC(16PDIP)、
(c)UC3835N(8PDIP)。9513APCと 27S21PCはデジタル製品で、UC3835Nはアナログ製品です)。
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製品型番 保管年数 リード仕上げ パ ッケージタイプ
MC100E116 14 Matte Sn PLCC
MC100E111 10 Matte Sn PLCC
MC100E101 4 Matte Sn PLCC
LCX02MTCX 13 NiPdAu TSSOP
LCX32MTCX 9 NiPdAu TSSOP
LCX02MTCX 6 NiPdAu TSSOP
CSD16411 12 Matte Sn VSON
CSD16340 11 Matte Sn VSON
CSD25401 7 Matte Sn VSON
9513APC 11 Matte Sn PDIP
9513APC 3 Matte Sn PDIP
27S21PC 9 SnPb PDIP
27S21PC 6 SnPb PDIP
UC3835N 17 NiPdAu PDIP
UC3835N 9 NiPdAu PDIP
表 1. 検証用サンプルとその主な特性
3.操作手順について
検証サンプルのうちいくつかは、レーザーによる開封作業を行い、ダイを露出させ、問題がないかどう
かを調べました。その結果、腐食、クレーター状の陥没、ボンドパッドのクラックは見つかりませんで
した。ロチェスターエレクトロニクスは、プリント基板の設計、製造、使用に関連する業界の専門家と
提携し、パッケージタイプやデートコードの異なるさまざまな表面実装製品について、実装の検証を実
施しました。すべての検証サンプルは、提携しているプリント基板でのリフローを成功裏に終えまし
た。ロチェスターは、はんだ接合部の光学検査と X線検査、はんだ付けされたリード線の長さに沿った
断面検査、および断面はんだ接合部の SEM画像処理を行うことで、これらの結果を検証しました。
次章に、外観検査の光学画像、製品単体および実装検査の X線画像、断面検査およびパッケージ開封後
の SEM 画像を掲載します。
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4.基盤搭載後の状態画像
外形の違う 12種類のプラスチック製表面実装製品 57個を、それぞれのプリント基板の両面に実装して
みました。そのサンプルの中には、古いもので 2006年に製造された製品もありました。実装後、これら
すべてのパッケージの端子部分の状態を検査した結果、不具合は見つからず、正常にプリント基板に実
装されたことが確認されました。図 3、図 4 に、今回調査した製品のはんだ状態画像を示します。
(図 3. 2つの 28PLCC 製品(上)と 14TSSOP製品(右下)を搭載した状態の画像。
左下には、実装された 8VSON製品とその下のパッドパターンの画像が示されています。
パターンが露出しているのは、実装する製品がない状態でソルダーペーストを塗布したためです)。
(図 4. 実装された PLCCと TSSOP製品のはんだ付け状態を示す画像)。
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5.プリント基板実装部とはんだ接合部の X線および SEM画像
はんだ付けの状態をより深く理解するために、プリント基板を斜め方向から X線で撮影しました。
VSON パッケージの画像では、はんだの長さスケールと密度により、さらなる詳細な情報を得ることはで
きませんでした。そこで、PLCCと TSSOPパッケージの場合の画像を以下の図 5と図 6 に示します。
(図 5. プリント基板に実装された 28個の PLCC 製品の X線画像。
注:パッドが重複しているのは、両面プリント基板の裏面が未使用のためです)。
(図 6. プリント基板に実装された 14個の TSSOP 製品の X線画像、
ワイヤボンディングが見えています)。
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さらに、リード端子部分の切断面の SEM画像を撮影し、図 7および図 8 に示すように、はんだペースト
の正確な形状と内部構造を明らかにしました。はんだペーストの内部構造は、外部検査と一致し、
プリント基板組立の成功がより確かなものになりました。
(図 7. PLCC 製品のリードの中心で切断した際の SEM イメージ。
PCB パッド - はんだ - リード界面の状態を確認することが出来ます)。
(図 8. TSSOP製品のリードの中心で切断したパッケージの SEM画像)。
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6.パッケージ内部断面の X線および SEM画像
また、同じ画像処理技術を使って、半導体パッケージの内部の検証やパッケージ内部の欠陥の検査も行
いました。検査した結果、欠陥は観察されませんでした。各パッケージタイプについて、以下に代表的
な画像を示します。
(図 9. 28PLCCパッケージ全体の X線画像)。
(a.) (b.)
(図 10. (a)14ピン TSSOPと(b)8ピン VSON製品の全体の X線画像)。
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(図 11. PLCCパッケージ切断面の SEM画像。上から順に、プラスチック封止材、ボールボンド、
ボンドワイヤ、ダイ、ダイアタッチ接着剤(フィレットに注意)、ダイアタッチパドル、封止材が表示さ
れています)。
(図 12. TSSOPパッケージの切断面の SEM画像。TSSOPパッケージは PLCCよりもはるかに小型で、パッケ
ージ全体の高さが低いため、半導体製品全体を確認することが出来ます。ここでは、ボールボンドが断
面平面の外に出ており、以前は視野の外だったパッケージのリードとはんだペーストが追加されている
以外は、同じ特徴が示されています)。
(図 13. VSON製品の切断面の SEM画像。ボンディングワイヤは一本(図 10b参照)で、切断面によってプ
ローブされた中央領域を超えて、外側のパッドに接続されています。ボイドが起こりかけているのが分
かります。この断面を高倍率で観察したところ、はんだ接合部の上部(ICチップのパッド部)と下部(PCB
のパッド部)の両方の界面に沿って、薄くても途切れることのないはんだ層があることがわかりました。
両面でのこの完全なはんだ被覆は、デウェッティングが発生しておらず、この大きなはんだパッドの固
有の熱特性により、ボイドがはんだペーストのリフローに依存していることを示しています)。
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7.パッケージ開封後のダイおよびワイヤボンディング検査
すべての検証サンプルはレーザーデキャップされ、短時間の酸エッチング処理を実施し、開封しまし
た。開封した製品の状態を確認すると、長期保管後の環境ストレスや劣化のメカニズムに合致するよう
な損傷は観察されませんでした。また、すべての検証サンプルにクラック、層間剥離、ボンドワイヤの
欠陥がないことが確認されました。図 14から図 22に、いくつかの画像を示します。
(図 14. レーザーおよび酸による開封後のダイ表面の画像。表面の斑点は、エッチングプロセス中の酸の
接触によるものです。この画像は、領域全体をキャプチャするためにデジタルステッチされています)。
(図 15. パッケージ開封後の PLCCパッケージ内部のダイ上面とダイパッド上のワイヤボンディングの
SEM 像)。
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(図 16. パッケージ開封後の PLCCパッケージ内部のウェッジボンディング、ボンディングワイヤ、ボー
ル ボンディングの SEM画像)。
(a) (b)
(図 17. 場所ごとの比較画像(a)PLCCパッケージ開封後のボールボンディングとボンドパッドおよびボン
ディングされていないパッドの SEM画像、(b)ボールボンディングとボンドワイヤを通る断面の SEM画
像)。
(図 18. PLCCパッケージ開封後のリードフレーム上にウェッジボンドされている状態の SEM画像)。
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(図 19. TSSOPパッケージ開封後のダイ上面、ウェッジボンド、ボンディングワイヤ、ボールボンディン
グの SEM画像)。
(図 20. (a)TSSOP パッケージ開封後のボールボンドと下地パッドの SEM 画像、
(b)ボールボンドとボンドワイヤーを通る断面の SEM画像)。
(図 21. TSSOPパッケージ開封後のリードフレーム上のウェッジボンディングの詳細 SEM画像)。
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(図 22. デキャップ後の VSONパッケージ内のボンディングの SEM イメージ。
ダイはヒートシンクに隠れて見えない)。
8.電気的試験結果
2つの異なるデートコードを持つ半導体製品の在庫からの 3つの製品をランダムにピックアップし、
それぞれのデータシートの要求事項に従って試験を行いました。試験した半導体製品の保管期間は平均
すると約 15年にわたり、その結果は表 2に示すとおりです。各デートコードごとに、型番:9513APCを
20個、27S21PCを 25個、UC3835Nを 50個、試験を実施しました。その結果、すべての半導体製品はそれ
ぞれのデータシート仕様を満たし、結果のデータ分布にデートコード依存する変化は見られませんでし
た。
製品型番 保管年数 リード仕上げ 電気的試験結果
9513APC 11 Matte Sn 100%
9513APC 3 Matte Sn 100%
27S21PC 9 SnPb 100%
27S21PC 6 SnPb 100%
UC3835N 17 NiPdAu 100%
UC3835N 9 NiPdAu 100%
表 2. 検証サンプルの電気的試験結果。
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9.まとめ
本論文で紹介したデータから、製品は 10年以上保存しても、プリント基板へのはんだ付け強度を含め、
内部および外部の状態に変化がないことが示されました。さらに、検証を実施した半導体製品には、腐
食、亀裂、剥離の兆候は見られませんでした。また、試験した半導体製品は、適用されるすべての機能
試験とタイミング試験に合格しました。
このことから、半導体製品の長期保管は、自動車、医療、産業、航空宇宙、防衛などのライフサイクル
の長いアプリケーションにおいても、半導体部品の継続的な供給を維持するためのソリューションの一
つとなることが明らかになりました。
参考情報:
[1]半導体製品のはんだ付け性に及ぼす長期保管の影響について
Rochester Electronics, Semiconductor Packaging News, Dec 6th, 2021
[2]Component Reliability After Long Term Storage, Texas Instruments, May 2008
[3]Long Term Storage Evaluation of Semiconductor Devices,Texas Instruments, September 2021
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