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設備老朽化への赤外線カメラを用いた対策
電気設備、機械設備の保守に赤外線カメラを用いた予防保全を導入することで、定期保全から状態監視保全へ移行し、限りある予算の効率的な活用を実現した、川崎市上下水道局様の事例紹介になります。
このカタログについて
ドキュメント名 | 電気設備保全への赤外線カメラ活用事例 川崎市上下水道局 |
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ドキュメント種別 | 事例紹介 |
ファイルサイズ | 406.4Kb |
登録カテゴリ | |
取り扱い企業 | アンリツ株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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サーモグラフィーで設備老朽化に挑む
下水道事業のフロントランナー 川崎市上下水道局
川崎市の下水道事業は、昭和6年にJR川崎
駅を中心とした旧市街地の浸水対策事業と アプリケーションストーリー
して着手し、その後市街地の拡大と発展に
伴う生活環境の改善のため、昭和36年には サーモグラフィカメラの導入背景について しやすい要因となるのではないかと感じています。
下水処理が開始され、本格的な下水道整備 惣万氏:川崎市では施設の機能を維持し安定した
が推進されてきた歴史がある。 新しい技術を導入する際に考慮した点
下水道サービスを提供するため、設備の点検や健
都市基盤整備の最重要課題として下水道の 全度調査などにより状態把握を行っております。こ 田鹿氏:サーモグラフィカメラによる熱診断を導
普及促進を積極的に推進した結果、処理人 れらの設備は状態把握の困難な電気設備や機械 入すると現場の業務量は増えることになります。た
口普及率は令和3年3月時点で99.5%に達 設備が多く、そのほとんどはTBM(時間管理保全) だBM(事後保全)のように不意に故障が発生して
している一方で、下水道ストックも相当量に として維持管理を行っています。また今後老朽化設 現場職員がバタバタと対応するより、日常業務の
なっており、4箇所の下水処理施設、1箇所の 備の急増が見込まれますが、予算が限られる中で 負荷が多少増えるとしても、予防保全できるほう
汚泥処理施設、19か所のポンプ場施設で約 いかに効果的・効率的に改築・修繕を行っていくか が結果的に効率的であるという考えを導入検証す
14,000点の機械・電気設備を有するに至っ という課題があり新しい技術を模索していました。 る中で伝えてきました。また現場目線で見た場合、
ている。本アプリケーションストーリーで 熱診断の対象とした設備は現場職員が平常時のコ
は、普及促進の時代から膨大な下水道ス 数ある保守ツールから ンディションを把握できることから、異常が起きた
トックの維持管理の時代への移行という難 サーモグラフィカメラを選んだ理由 際の報告がスピーディに行えます。加えてその後の
局に挑む下水道部の皆さん(写真1)に話を 惣万氏:はじめは視覚的に情報が得られる点が興 改築・修繕への対応検討もスムーズに行える等の
伺った。 味のきっかけになったと思いますが、導入検討の 点が導入の動機づけとなりました。組織内では、業
過程で、実際にいくつかの設備の異常発熱を診断 務が増えることによる現場職員への負担を心配す
し、改善措置を行うことができたのが大きかったで る声も確かにありましたが、熱診断の導入に向け
す。ただ当然ながら診断技術の核となる部分につ た現場での試行運用を通して、業務負担量の検証
いては、ある程度経験を要するのではないかとも 結果や導入効果について丁寧に報告することで、
感じていました。 理解を得られました。
田鹿氏:アセットマネジメントの取り組みとして健全
期待する導入メリット
度調査を行う際、設備によっては運用停止ができな
かったり、大型であるため分解調査に費用負担を要 田鹿氏:現場では、点検・調査が困難な設備の健全
したりするなどの課題がありましたが、稼働状態の 度算出に頭を痛めています。例えば、受変電設備な
(写真1) まま調査ができるサーモグラフィカメラの利点が現 どの運用停止が困難な設備や大型機器など、直営
等々力水処理センター 中央監視室にて(左か 場にフィットしました。熱診断の他にも様々な診断手 では分解点検が困難な設備に対し、熱診断の結果
ら)等々力水処理センター操作係 山口氏・田鹿
氏/施設保全課 惣万氏 法があります。例えば、振動測定は機器を分解せず を健全度に反映することができれば、従来はTBM
に劣化診断を行えるメリットがあるけれども、変位 (時間計画保全)としていた設備や定期整備で分解
や加速度などのパラメータの考え方に熟練が必要 点検していた設備を、状態監視保全へシフトするこ
で、現場での使用にはなかなか馴染まないという印 とも考えられます。これによって設備の延命化や改
象がありました。対してサーモグラフィカメラは、視 築・修繕の優先度の明確化が進めば、限りある予
覚的に情報が得られる点が現場職員にとって使用 算の無駄のない効果的な執行が期待できます。
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導入前の支援業務委託で有効性を検証
惣万氏:我々は、熱診断という新しい技術を導入
する前に支援業務委託(写真2~3)を活用し、丸
一年かけてその技術の有効性について検証して
きました。専門家とともに設備のベースライン
データを取得していく中で、実際に異常発熱箇所
を発見して故障の未然防止につなげるなど、予
防保全としての実績を確認することができたた
め導入につなげることができました。(表1) (写真2)導入支援委託での評価 (写真3)
また、新たな調査業務の導入となることから、現場
への導入支援や、想定される導入効果及び業務量
の変化を把握するための試行運用を行ったことが
組織としての理解を得るのに効果的でした。
現場の声
山口氏:電気設備は停止させることが困難な設備
(写真4)周りの物を正確に測定すること (写真5)設備の撮影ポイントを理解する。 (写真6)最終的に不具合検出の技量を身に
が多く、状態の判断が難しいという点が特徴とし からはじめる。 (機械設備の例) 着ける。(電気設備の例)
て挙げられると思います。サーモグラフィカメラ
は、精度よく測定する上で留意すべき点がありま 技術を身に着けるのはそこまでハードルは高くな を置き、まずは現場での温度計測を正確に行え
すが、設備の停止を行わずにわかりやすく状況を いと考えています。私の場合、OJTを受けながら1 るようにしたいと考えています。現場の設備には
示せる器材だと思います。例えば、現場職員が上 年ほどで構造を元に撮影し、診断データを取得す 常に温度が高い箇所や赤外線の特性により温度
司や技術職でない担当に説明する際に、視覚的に ることができるようになりました。診断結果をど 計測が難しい箇所もあり、以前の状態と現在の状
状態が把握できるため、判断基準にそった尺度の のように活用するかにもよると思いますが、取り 態を比較して異常と判断するには温度計測を正
ある説明ができる点が優れていると思います。 組むほど習熟していき、特に電気設備はどこまで 確に行う技術が求められます。そのためにも現
できるようになったかという到達レベルが実感し 場ではどんどん経験を積んでもらい、また専門家
専門外の職員でもハードルは高くない
やすく、取り組む励みになると感じています。 の指導も仰ぎながら診断を行っていきたいと思
山口氏:我々現場の職員は機械担当と電気設備が います。またデータの蓄積や習熟の状況を踏ま
合同で点検を行っており、それぞれが担当外の設 まずは異常発熱箇所の検出など え、状態監視についても取組を進めていきたい
備点検を行うための知識と経験を積んでいます 状態把握を行うサーベイランスから と考えています。
ので、設備の異常状態の認識に必要な最低限の 田鹿氏:現状としてはサーベイランスにウェイト
(表1)引用:下水道協会誌V57 No698赤外線サーモグラフィを用いた機械・電気設備診断
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