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電源に求められる機能と選び方
工場の自動化を進めるために工作機械・ロボットの高機能化・多機能化などの性能向上と合わせて、安全性向上・低消費電力化・小型/省スペース化などのニーズが出てきています。
それに合わせて電源への要求も変化しており、汎用電源からカスタム電源の変更検討が増えております。
本事例紹介では、アプリケーションに新たに求められる機能と、それに伴う電源への追加要求を纏めました。
このカタログについて
ドキュメント名 | 産業機械の高機能化に伴う電源要件の変革 |
---|---|
ドキュメント種別 | 事例紹介 |
ファイルサイズ | 1.2Mb |
取り扱い企業 | 株式会社リョーサン (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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産業機械の高機能化に伴う
電源要件の変革
電源に求められる機能と選び方
INDEX
1.産業オートメーションにより追加される機能
2.産業市場で求められる電源要求
3.カスタム内容による電源の種類
4.カスタム電源の開発プロセスと課題
5.円滑なカスタム電源開発の手法
6.リョーサンの取り組み
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1. 産業オートメーションにより追加される機能
現在、産業オートメーション市場は成長中であり、2023 年から 2031 年の年間複合成長率(CAGR)は 8.7%
で成長し、2031年には 3,161億米ドルに達する見込みです。(Panorama Data Insights Ltd.より引用)
産業オートメーションは生産性向上や運用コスト削減などの目的で工場を自動化することを指しており、工場の
自動化を進めるために工作機械・ロボットの高機能化・多機能化などの性能向上と合わせて、安全性向上・低消
費電力化・小型/省スペース化などのニーズが出てきています。それに合わせて電源への要求も変化しており、汎
用電源からカスタム電源の変更検討が増えています。下表にアプリケーションに新たに求められる機能と、それに
伴う電源への追加要求を纏めました。
表 1 産業オートメーションにより追加される機能と電源要求仕様の変化
アプリケーションの新機能 電源への追加要求 追加要求の背景
アプリケーションが安全に停止するまで
機能安全対応 瞬時停電時の出力保持能力
の時間確保のため
電源内のコンデンサ寿命、ファン寿命予
故障予知/検知機能 温度モニタ機能
測を行うため
複数出力電源での外部制御による 待機モード実装による低消費電力化実
低消費電力化
出力停止機能 現のため
効率的な電源排熱を考慮した内部空間
低背化
設計を行うため
小型/省スペース化
他部材と外装の隙間に電源を入れこむ
内部構造に合わせた特殊形状
ため
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2. 産業市場で求められる電源要求
産業市場ではアプリケーションの仕様に合わせて様々な要求が発生します。主な違いは、電源容量と特殊要求
の内容です。電源容量はアプリケーション分野である程度決まっており、一定容量以下のものは汎用電源が使用
される傾向があります。ただし、アプリケーションにより特殊要求が発生するものもあり、汎用電源の仕様/容量で
対応出来ないものはカスタム電源を使用することになります。
(ア) アプリケーション分野で見る電源容量の違い
下図にアプリケーション分野ごとの電源容量を纏めました。FA 機器・ロボットは汎用電源の提供範囲に収まっ
ていますが、先述の要求仕様の変化によりカスタム電源に移行してきています。その他の汎用電源の利用状況は
以下の通りです。数 kW以上の容量を求める機器は基本的にカスタム電源が使用されています。
➢ 家電・コンシューマ機器 :自社開発、もしくはカスタム電源
➢ 小~中型工作機械 :汎用電源
➢ 医療機器 :医療機器用汎用電源
➢ 通信機器・データセンタ :サーバ用汎用電源(10kW以上はカスタム電源)
➢ FA機器・ロボット :汎用電源からカスタム電源に移行中
図 1 市場ごとの電源容量と使用電源
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(イ) 代表的な FA機器・工作機械の特殊要求
高度な技術装置である FA 機器・工作機械は多様なアプリケーションで使用されるため、電源容量以外にも特
殊な要求事項が多々あります。機器ごとの特殊要求例は以下の通りです。
✓ ロボットアーム
➢ 低ノイズ : 精密な動作を行うセンサ、アクチュエータを駆動するため
➢ 多チャンネル : モータ、センサ、アクチュエータなど機器内に多数の機能を有するため
➢ 小型・特殊形状 : 省スペース要求に応えるため
➢ 各種規格準拠 : ISO 62368, 過電圧カテゴリⅢなど※1
✓ CNC工作機械
➢ 大容量 : 大型モータ、スピンドル駆動時のピーク電流に対応するため
➢ 負荷過渡応答性能 : 大型モータの動作/停止が繰り返されるため
➢ ブレーキ回生 : 大型モータの停止時に発生するエネルギーを再利用するため
✓ レーザーカッター
➢ 大容量 : 高出力レーザー駆動のため
➢ 出力微調整機能 : レーザーの微細な出力調整のため
➢ 高速応答性能 : レーザーの出力調整を瞬時に行うため
✓ 精密測定装置
➢ 低ノイズ : 各種センサで微細な変動も検出する必要があるため
(電源のノイズが検出に影響する)
✓ ワイヤーカット放電加工機
➢ 定電流制御 : 当加工機ではワイヤーに流れる電流で加工対象を切断するため
✓ PLC(Programmable Logic Controller)
➢ 電源シーケンス対応 : ロジック系電源とパワー系電源の出力時間を調整する必要があるため
✓ その他の要求例(主にアプリケーションベンダの内部規格により発生する)
➢ ディレーティング対応 : アプリケーションベンダの設計ルールに対応するため
➢ 沿面距離確保 : アプリケーションベンダの設計ルールに対応するため
➢ 防火板金追加 : アプリケーションベンダの設計ルールに対応するため
➢ 使用部材の変更 : アプリケーションベンダの要求によるため
➢ 4M変更管理 : 汎用電源では除外される仕様に影響しない部品の変更もトレースするため
これらの特殊要求に対応したカスタム電源を使用することにより、安定動作・高効率・安全性などを実現してい
ます。
※1 電源に求められる代表的な規格
➢ IEC 62368 : オーディオ・ビデオ(AV)機器や情報通信技術(IT)機器に適用される安全規格
➢ IEC 60601 : 医用電気機器の安全性を確保するための一連の技術規格
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➢ IEC 61010 : 電気計測器に適用される安全規格
➢ 各国の電気安全基準・規制(欧州の RoHSや CEマーキング、米国の UL規格など)
各国の電気安全基準・規制の準拠はアプリケーションに関わらず、必要となります。
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3. カスタム内容による電源の種類
先述の通りアプリケーションの電源要件により、最適な電源は変わります。入手性/価格で選択するのであれば
標準仕様の汎用電源を選択することになりますが、アプリケーションの仕様に合わせた追加要求を行う場合は、カ
スタム電源を検討する必要があります。
一言にカスタム電源と言っても、カスタムの度合いに応じてフルカスタム電源とセミカスタム電源に分けられます。
フルカスタム電源はその名の通り、要件に応じて新規に開発・製造する電源で部品単位の要求事項を盛り込めま
す。アプリケーションの要求仕様に合致した製品となるため、電源容量・出力数などの基本的な仕様のみならず、
効率・寿命・安全性などの面でも高いパフォーマンスを発揮でき、サイズや形状の制約、熱の問題、規制対応など、
多様なニーズに柔軟に応えることが可能です。
セミカスタム電源は汎用電源をベースに出力電圧・出力数などの小規模な変更に対応するもので、汎用電源と
フルカスタム電源の中間に位置する製品となります。フルカスタム電源と違い認証取得済みの汎用電源を用いた
カスタムとなるため、開発期間の短縮が可能です。
表 2 各電源の特徴一覧
フルカスタム電源 セミカスタム電源 汎用電源
メーカ在庫があれば即納可能
入手性 受注生産につき市場在庫無し 受注生産につき市場在庫無し
市場在庫などの入手も可能
アプリケーションに最適化され アプリケーションに最適化され 電源仕様に合わせた使いこな
最適化
た電源開発が可能 た電源開発が可能 しが必要
MOQ*1あり MOQ*1あり
数量 1台より購入可能
※最低数量は仕様次第 ※最低数量は仕様次第
安価*2 安価*2 定価設定あり
単価
案件ごとに取り決め 案件ごとに取り決め 案件により特化対応も可能
必要
初期費用 必要 不要
フルカスタム電源より安価
部品単位で顧客選定基準 開発リードタイムの大幅削減
や環境基準に順守した設計 が可能 最終製品リリースまで短時間
特徴 が可能 汎用電源では物足りない場 企画台数が少なくても使用
サイズや性能に対する特別 合、小規模な仕様変更で顧 可能
要求が可能 客要求を満たすことが可能
*1 : Minimum Order Quantity – 最低発注数量
*2 : 数量条件により変動、規模が大きければ汎用電源より安価、規模が小さければ高価となる場合あり
出展:電源システム設計のキホン(認証篇) https://techlabo.ryosan.co.jp/article/23050900_846.html
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4. カスタム電源の開発プロセスと課題
カスタム電源の開発プロセスと、外部委託する際の課題を説明します。
開発プロセスは、要件確認、パートナー選定、仕様策定、設計、試作、評価/試験、量産準備、量産の 8工程に分
けられます。
カスタム電源を開発する場合、カスタム電源の設計・製造が可能な電源メーカに委託することが一般的ですが、
“要件確認”、“パートナー選定” までは自社で行い、“仕様策定” はパートナーと共同で行う必要があるため、
一定の知見・工数は必要となります。
「産業機器では開発サイクルが長くなるため、自社内で電源に関する知見を持ったエンジニアがいない。」、「か
つては担当者がいたが技術継承ができておらず、担当できるエンジニアがいなくなってしまった。」などの課題も
散見されます。
年々変化する海外の法規制/安全規格への追従、自社の要求に応えられる新規パートナーの模索も課題となっ
ております。産業機器向けのカスタム電源では、前述したように機器ごとに特殊な要求が発生するため、パートナ
ーとの仕様すり合わせ、コミュニケーションも重要な要素となりますが、パートナーが海外メーカの場合はコミュニ
ケーションが課題となります。
図 2 カスタム電源の開発プロセスと課題
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5. 円滑なカスタム電源開発の手法
課題の多いカスタム電源開発ですが、以下のような取り組みで課題の解消を図ることが可能です。事前準備を
して、カスタム電源開発を円滑に進めましょう。
1. 出荷対象となる国/地域を纏めておく
✓ 各国の法規制/安全規格を調査するにあたり、自社製品の出荷先を纏めておくことが重要です。
出荷先と自社製品の仕様(機器種別・通信規格など)が分かっていれば、認証機関などへの相談も容
易になります。
2. 自社製品仕様の明確化
✓ 電源の供給先となるセンサ、アクチュエータなどの仕様を明確にしておくことで、電源に対する要件を整
理する際に役立ちます。
3. 複数の電源メーカと取引/交流のある商社/コンサルタントの活用
✓ 要件確認の段階で技術力のある商社/コンサルタントと協力することで、要件整理を円滑に進めるととも
に要件にあった電源メーカを紹介いただくことができます。
✓ 紹介された電源メーカに委託することで、中間でのフォロー役として開発開始後のイベント/日程管理に
関しても協力が期待できます。
✓ 安全規格に対する解釈など電源メーカと意思疎通・認識整合が必要になる場面が多々ありますが、その
際のフォローに関しても知見を持った商社/コンサルタントであれば大きな力になるでしょう。
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6. リョーサンの取り組み
産業機器における電源要求の変化から、カスタム電源の開発プロセス/課題、開発手法までを解説しましたが
如何でしたでしょうか。
リョーサンではコーセルを中心とした各社の電源製品を扱っており、カスタム電源もフルカスタムからセミカスタ
ムまで要件に応じた提案が可能です。電源専属営業と設計サポートを行う FAEが要件整理から製品出荷までサ
ポート提供させていただきます。
第三者認証機関と連携した認証取得サポートも提供しておりますので、カスタム電源開発の際はお気軽にお声
がけください。
図 3 リョーサンの提供する電源ソリューションと技術サポート
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エンジニアによりそうマガジンサイトはこちらから。
https://techlabo.ryosan.co.jp/
お問い合わせはこちらからお願いします。
https://techlabo.ryosan.co.jp/contact/
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