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新たなデータが新たな可能性を生む
ものづくりを応援する業界紙・オートメーション新聞の別冊「Industry4.0・IoTナビ」は、インダストリー4.0やIoT、スマートファクトリーに関する各種情報をまとめたムック本です。
第6弾となる今回は、最新IoTツールの導入事例や、国内の市場環境、FAメーカー業界の技術動向など多数掲載しています。
<掲載内容>(一部抜粋)
○ものづくり白書2018年版から見る日本のデータ活用の課題
◯FAセンサ市場と技術動向。IoT対応で大きな追い風
○リンクス、エンベデッド・ビジョン事業領域に参入 工場外に広がるビジョン市場開拓へ
○MEMOテクノス、3万円で導入できる ランニングコストぜロの簡単シンプルIoT
○IoTを簡単スタート! パトライト三田工場に潜入
など
【協賛企業】株式会社パトライト/B&R Industrial Automation株式会社/IDEC株式会社
※ダウンロードされたお客様の情報は弊社プライバシーポリシーに則り協賛企業へ共有させていただきます。あらかじめご了承下さい。
このカタログについて
ドキュメント名 | 「Industry4.0・IoTナビ」Vol.6〜センサの進化で大きく変わるIoT〜 |
---|---|
ドキュメント種別 | ホワイトペーパー |
ファイルサイズ | 4Mb |
登録カテゴリ | |
取り扱い企業 | メーカー:アペルザ、 販売:日本機材株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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別冊
Industry4.0-IoTナビ
Industry4.0, Industrial IoT, Industrial Internet,Smart Factory Vol.6
センサの進化で
大きく変わるIoT
~新たなデータが新たな可能性を生む~
インタビュー
キヤノン、オプテックス・エフエー
日本のデータ活用の課題
FA・制御機器市場、18年度も好調続く
FAセンサ市場と技術動向
パトライト三田工場、IoT活用レポート
インダストリー4.0発祥の地・ドイツの工場をめぐる
過熱するマシンビジョン市場 リンクス、Baumer
IDEC Compact IoT
株式会社アペルザ オートメーション新聞社
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INDEX
インダストリー 4.0 -IoT ナビ Vol.6
I N D E X
ものづくり白書2018年版から見る日本のデータ活用の課題 ……………………………………………………………………… 1 〜 2
FA・制御機器市場、18年度も好調続く。生産性向上、自動化需要など好材料 ……………………………………………………… 3 〜 4
FAセンサ市場と技術動向。IoT対応で大きな追い風 ………………………………………………………………………………… 5 〜 6
国内のデータ産業の事業環境調査、DC老朽化対策、海外クラウド隆盛、エッジ活用など ……………………………………………… 7
プラントの産業保安に関するIoTセキュリティ対応マニュアル、安全稼働をいかに守るかの指針を明確化 ………………………… 8
[インタビュー] キヤノン、FA事業を強化 自社工場の自動化ノウハウを活かす ……………………………………………………… 9
[インタビュー] オプテックス・エフエー、ベンチャースピリット忘れずチャレンジ。 ……………………………………………… 10
20年度に売り上げ100億円突破へ
[インタビュー] MECHATROLINK協会、高効率で高度な制御を実現 MECHATROLINK-4 ………………………………… 11 〜 12
リンクス、エンベデッド・ビジョン事業領域に参入 工場外に広がるビジョン市場開拓へ ………………………………………… 13
品質、精度、耐環境性に優れた Baumer製産業用カメラ。過酷環境向けで拡大中 ……………………………………………………… 14
IDEC Compact IoTによる 遠隔監視ソリューション ……………………………………………………………………………………… 15
シーイーシー、製造現場が使えるIoT「Visual Factory」 設備、人、モノを統合的に可視化 …………………………………………… 16
ヤマシンフィルタ、油中の磨耗粉を常時監視 清浄度センサ「SWIFTROCK」が拓く新しい予兆保全 ……………………………… 17
MEMOテクノス、3万円で導入できる ランニングコストゼロの簡単シンプルIoT …………………………………………………… 18
IoTを簡単スタート! パトライト三田工場に潜入 ………………………………………………………………………………… 19 〜 20
インダストリー4.0発祥の地・ドイツの工場を巡る フエニックス・コンタクト工場潜入記 …………………………………… 21 〜 22
NTC、データ収集、通信整備からAIによる予兆保全まで 要望に応じた最適なIoTソリューション ………………………………… 23
DataRobot×パナソニックトークセッション。パナソニックが取り組むAI戦略 …………………………………………………… 24
Synopsys、ブロックチェーンはソフトウェアセキュリティのベストプラクティスをどう適応・採用できるのか? ……………… 25
ThreatMetrix、2018 年度第 1 四半期サイバー犯罪報告書。グローバルなサイバー犯罪の質的変化 ……………………………… 26
ams、47.5Mp 高解像度&高速グローバルシャッタ CMOSイメージセンサ「CMV50000」 …………………………………………… 27
エクストリーム・ネットワークス、FabricConnectで宮崎県全域をカバーする ネットワーク仮想化 ……………………………… 28
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インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.6
潮 流
ものづくり白書2018年版から見る
日本のデータ活用の課題
デジタル人材の育成・確保が急務
どこもかしこも IoT 活用が叫ばれる日本の製造業。インダストリー 4.0 の発生源であるドイツ、IT 技術で世界をリード
するアメリカ、中国製造 2025 を旗印に急成長を遂げる中国など、各国に比べて遅れている / 進んでいるといった議
論が盛んに行われているが、実際の日本企業の IoT、データ利活用の状況はどうなっているのか ? 日本の製造業の今を
「2018 年版ものづくり白書」から探る
デジタル化による現場力の維持・向上が必要 足感が強い。また情報処理推進機構(IPA)の調査によると、
IT 企業でも IT 人材の不足感が顕著であるとされ、日本全体で
2018 年版ものづくり白書では、日本の製造業が解決しな デジタル人材が枯渇している。
ければいけない課題として「現場力の維持・向上」と、「付加 データ活用は経営層がリードする段階へ
価値の創出」の 2 点を挙げている。
1 点目について、昔から日本の製造業は現場力が強いと言 「付加価値の創出」についてものづくり白書では、ハードウェ
われ、この変革の時代でもその強みを残しつつ、時代に合わ アの普遍化が進み、付加価値の源泉がデータ資源を活用する
せて変わっていかなければいけない。強い現場力とは何かを ソリューションへと変わり、大転換期を迎えていると指摘。
尋ねたところ、ニーズ対応力、品質管理、短納期生産、試作・ データの重要性に気づき、サービス化やソリューション化な
小ロットと回答した企業が多く、「顧客の要望に応じて高品質 どビジネスモデルの変革に利用できるかどうかが今後の企業
の製品を短納期で作ること」。これらが日本の強みだとしてい 戦略の鍵を握るとし、その実効性を上げるためにも経営層や
る。(図 114-16) 経営戦略部門によるトップダウンでスピーディーに強力に推
一方、弱みに関しては、ロボットや IT、IoT の導入・活用 進していく必要があるとしている。実際にその意識は変化し
力、先端技術の導入・活用力という回答が多く、日本の製造 ており、データ活用戦略を主導する部門について、昨年は現
業は長い間、優れた熟練技術者のカン・コツ・ドキョウによっ 場の製造部門が 45% と最も多かったのが、今年は経営層が
て支えられてきて、新技術の導入や変化に弱いということが 55% と最多を占めた。(図 115-10)
分かった。 この変化に対し、実際に何か変わったかというとまだその
つまり日本の製造業の未来のためには、熟練技術者が持つ 効果は見えてこない。データを収集しているかどうかの調査
高い現場の技術力と対応力を後進に教え込むことが重要とな では、イエスが昨年の 67% だったのに対し、今年は 68% と
るが、そもそも人手不足で継承させる人材がいない、技術継 ほぼ横ばい。見える化や生産プロセスの改善など具体的な活
承のハードルを下げるためにも必要なデジタル人材もそれ自 用についても昨年とほぼ変わっていない。
身が不足しているという問題に直面している。(図 114-17) (図 115-12)(図 115-13)
特にデジタル人材の不足は深刻で、経産省が 2017 年末に 目的を定め、現場と共有し、全社で動くことが大事
実施したアンケートによると、デジタル人材が必要であると
の回答が 6 割で、そうした人材が質量ともに不足していると IoT、データ活用を次のステップに進めるためには、経営層
回答したのが全体の 3/4 に達し、大企業・中小企業問わず不 の判断・決断が重要になる。白書では経営層がまずやるべき
—
1
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つまり日本の製造業の未来のためには、熟練技術者が持つ高い現場の技術力
と対応力を後進に教え込むことが重要となるが、そもそも人手不足で継承させ
る人材がいない、技術継承のハードルを下げるためにも必要なデジタル人材も
それ自身が不足しているという問題に直面している。
特にデジタル人材の不足は深刻で、経産省が2017年末に実施したアンケ
ートによると、デジタル人材が必要であるとの回答が6割で、そうした人材が
質量ともに不足していると回答したのが全体の3/4に達し、大企業・中小企
業問わず不足感が強い。また情報処理推進機構(IPA)の調査によると、I
T企業でもIT人材の不足感が顕著であるとされ、日本全体でデジタル人材が
枯渇している。
データ活用は経営層がリードする段階へ
「付加価値の創出」についてものづくり白書では、ハードウェアの普遍化が
進み、付加価値の源泉がデータ資源を活用するソリューションへと変わり、大
転換期を迎えていると指摘。データの重要性に気づき、サービス化やソリュー
ション化などビジネスモデルの変革に利用できるかどうかが今後の企業戦略の
鍵を握るとし、その実効性を上げるためにも経営層や経営戦略部門によるトッ
プダウンでスピーディーに強力に推進していく必要があるとしている。実際に
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その意識は変化しており、データ活用戦略を主導する部門について、昨年は現
インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.6
場の製造部門が44%と最も多かったのが、今年は経営層が55%と最多を占
めた。
ことにつ いて「データの活用目的を明確に定める」とし、活 兎にも角にもデジタル人材の育成・確保が絶対条件
用目的が決まっていないとどのデータを集めるのかが決まら
ずに前に進まないとしている。 データを収集している企業でも、その利活用に至らない最
次にはその目的を現場と共有すること。共通認識を醸成さ 大の理由が「知見のある人材の不在」。付加価値創出において
せて、データ活用を推進していくことが大事としている。 もデータ活用やデジタル技術等の専門知識を持ったデジタル
次のステップが「データの質の高さを担保すること」。デー 人材が社内にいないことがネックとなっている。
タサイそエンのテ意ィ識スはトの変よ化うしな人て材おがり現場、かデらー上がタっ活て用くる戦略を 先主に導挙すげたる現部場門力のに維つ持・い向て上、に関昨し年てはも、現優れた技術を
データを見て取捨選択し、有効なデータにする工程が必要と デジタル化で継承し、標準作業化するためにもデジタル人材
なる。場こうのし製て造得た部デ門ータがを4デ4ータ%サとイ最エンもテ多ィかストっがた分析のが、は不今可年欠は。図経ら営ず層も異がな5る課5題%のと答え最は多同を一と占なり、デジタ
し、経め営層た、。現 場を巻き込んで目的実現のための方策を取る ル人材の育成・確保となった。
ことが大事となる。 デジタル人材の需要は製造業に限らず全産業に広がる。デ
ジタル人材を製造業に多く迎え、流出させない仕組みづくり
が急務となっている。
この変化に対し、実際に何か変わったかというとまだその効果は見えてこな
い。データを収集しているかどうかの調査では、イエスが昨年の66%だった
のに対し、今年は67%とほぼ横ばい。見える化や生産プロセスの改善など具
体的な活用についても昨年とほぼ変わっていない。
この変化に対し、実際に何か変わったかというとまだその効果は見えてこな
い。データを収集しているかどうかの調査では、イエスが昨年の66%だった
のに対し、今年は67%とほぼ横ばい。見える化や生産プロセスの改善など具
体的な活用についても昨年とほぼ変わっていない。
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目的を定め、現場と共有し、全社で動くことが大事
IoT、データ活用を次のステップに進めるためには、経営層の判断・決断
が重要になる。白書では経営層がまずやるべきことについて「データの活用目
的を明確に定める」とし、活用目的が決まっていないとどのデータを集めるの
かが決まらずに前に進まないとしている。
次にはその目的を現場と共有すること。共通認識を醸成させて、データ活用
を推進していくことが大事としている。
次のステップが「データの質の高さを担保すること」。データサイエンティ
ストのような人材が現場から上がってくるデータを見て取捨選択し、有効なデ
ータにする工程が必要となる。こうして得たデータをデータサイエンティスト
が分析し、経営層、現場を巻き込んで目的実現のための方策を取ることが大事
となる。
兎にも角にもデジタル人材の育成・確保が絶対条件
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インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.6
潮 流
FA・制御機器市場、18年度も好調続く。
生産性向上、労働力不足、IoT、自動化需要など好材料
2017 年度の FA・制御機器業界は好調のうちに幕を閉じた。18 年度は国内の労働力不足対策と IoT へのニーズの
高まり、海外、特に中国やアジア地域で高まる自動化需要など好条件に恵まれているが、一方で円高による為替リスク
も危惧されている。FA・制御機器業界の 17 年度振り返りと、18 年度を予測する。
FA・制御機器業界全体の 17 年度実績 前年比は 333 億円増(8.6% 増)となり、2 年連続プラス。
世界的に広がる景気拡大の中、企業業績の改善、設備投資の
日本電機工業会(JEMA)が発表した 17 年度の産業用汎 増加を背景とする順調な伸びとなった。
用電気機器の出荷実績によると、17 年度の出荷額合計は、前 輸出出荷額は3155億円で初めての3000億円超えとなり、
年比 12.3% の 9224 億円で 2 年連続の増加。中国を中心と 前年比418億円増(15.2%増)、4年連続で過去最高額を更新。
したアジアの設備投資が活況であり、輸出、国内出荷ともに 世界的な景気拡大、設備投資増加などにより好調に推移した。
好調な動き。特に半導体と FPD 製造装置向けが好調だった。 IoT を活用した製造現場の高度化をはじめ、生産性向上と
回転・駆動機器の出荷額合計は 21.8% 増の 3690 億円。 労働力不足解消に向けた自動化の拡大に対する需要が国内外
三相誘導電動機(75㌔㍗以下)では、2 年連続の増加。サー で盛り上がっており、その需要を確実に刈り取れていること
ボモータ(アンプを含む)は、1 年を通じて半導体・FPD 製 が分かる。
造装置向けが好調だった。
配電・制御機器の出荷額合計は 6.6% 増の 3943 億円で、 17 年度の主要各社の FA・制御機器事業概況
3 年ぶりの増加。標準変圧器(2000kVA 以下)では、電力 JEMA、NECA の実績で示すように、大手各社の FA・制
向け、電力以外の製造業・非製造業向けの減少が続き、3 年 御機器事業も非常に好調。国内堅調、海外でも特に中国市場
連続の減少。プログラマブルコントローラは、足元では一服 の拡販により、多くが売上高で前年同期比10%増を達成した。
感が見られるが、半導体と FPD 製造装置向けの好調が持続し、 三菱電機の産業メカトロニクス部門は、売上高 1 兆 4449
5 年連続で増加となった。 億円、営業利益 1908 億円の増収増益。韓国等での有機 EL、
日本電気制御機器工業会(NECA)の電気制御機器の 2017 中国のスマートフォンや電気自動車関連の設備投資増加等を
年度出荷統計によると、出荷総額は 7386 億円で初の 7000 追い風に好調だった。
億円超え。これまでの最高出荷額だった 14 年度を上回る結果 安川電機は売上高 4656 億円、営業利益 571 億円の増収
となった。前年比は 751 億円増(11.3% 増)で 2 年連続の 増益。AC サーボとインバータ、ロボットが好調で、中国生
プラス。輸出比率は 42.7% となり、3 年連続で 40% を超えた。 産と販売の拡大が大きく寄与した。
品目別では、自主統計の 5 大品目(制御用リレー、操作用 横河電機は売上高 4006 億円、営業利益 327 億円。制御
スイッチ、検出用スイッチ、制御用専用機器、PLC/FA)の 事業はエネルギー関連以外が堅調で、海外市場も円安と運用・
全てが前年比プラス。制御用専用機器を除く 4 大品目では過 保守が底堅く推移した。
去最高額となり、特に PLC/FA は初の 1000 億円超えとなっ オムロンの産業用制御機器(IAB)は売上高 3961 億円と
た。 前年に比べて約 20% の増収。営業利益は 740 億円となった。
国内出荷額は4231億円で3年ぶりに4000億円を超えた。 自動車とデジタル、食品・日用品、社会インフラのグローバ
産業用汎用電気機器の出荷実績
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インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.6
ル注力 4 業界の好調が大幅に押し上げた。 あわせてグローバル生産力を拡充し、日本で次世代工場を立
富士電機のパワエレシステム・インダストリーソリューショ ち上げるほか、中国とヨーロッパで工場の拡張・新設する。
ンは、売上高 3159 億円、営業利益 183 億円の増収増益。 オムロンの IAB は、売上高 4280 億円で 8.0% 増、営業利
国内と中国でインバータと FA コンポーネントが堅調に推移 益は 820 億円と予測。17 年度に引き続いてグローバル 4 業
した。 界に対して、センサからコントロール、ロボット、安全まで
パナソニック(オートモーティブ & インダストリアルシス 幅広い製品ラインナップを強みとしたトータルソリューショ
テムズ)は、売上高 2 兆 8035 億円、営業利益は 914 億円。 ン力の強化で達成を目指す。コードリーダと組み合わせたト
車載・産業向けが大きく伸張した。 レーサビリティ領域の強化やロボット活用の提案を進める。
日立製作所(インダストリアルプロダクツ BU)は、売上 またユーザーの経営・現場課題を解決するオートメーション
高 3693 億円で 7% の増加だった。 センターを世界で 18 拠点開設する予定。
アズビル(アドバンスオートメーション)は、売上高 972 横河電機は、売上高 4050 億円と 0.4% 減としながら、営
億円(1.8% 増)、営業利益は 99 億円。国内が堅調に推移し、 業利益は微増の 330 億円。円高で為替の影響を受けて減収予
海外も半導体製造装置向けのコントローラ、センサ関連が好 想だが、営業利益は増益となる見込み。
調だった。 富士電機のパワエレシステム・インダストリーソリューショ
IDEC は、売上高 598 億円(37.7% 増)、営業利益は 61 ンは、売上高 3220 億円、営業利益 192 億円で微増と予想。
億円(72.3% 増)と絶好調。過去最高の売上高と利益を更新 国内・中国の自動化ニーズに対する FA システム事業の拡大
した。主力の操作用スイッチ等のコンポーネント機器や安全 と、プロセスオートメーション分野で海外エンジニアリング
関連機器、PLC が堅調に推移。さらに買収した APEM の売 とプラントシステムの受注拡大を目指す。また海外鉄道事業
り上げ、新たにグループ化したウェルキャット等が業績に寄 の拡大に向けた新製品開発を加速するとしている。
与した。 日立製作所(インダストリアルプロダクツ BU)は、7%
増の売上高 3950 億円と予想。
18 年度各社予測 追い風受けて好調傾向 パナソニック(オートモーティブ & インダストリアルシス
17 年度の為替状況は、1 ドル 110 円から 111 円、1 ユー テムズ)は売上高 3 兆円で 7% 増、営業利益 1360 億円。車
ロ 133 円ほどだったが、各社は 18 年度について 1 ドル 載電池事業が牽引役となり大幅な増収増益を見込む。インダ
100 円から 105 円、1 ユーロ 125 円から 130 円と想定。 ストリアルでは EV リレーやモータなど車載・産業比率を高
昨年よりも円高が進み、輸出環境としては厳しくなる見込み め、増販を図る。
だが、自動化需要の追い風と売る力の強化により、増収増益 アズビルは、売上高 1000 億円(2.8% 増)、営業利益は
または増益を見込む。 110 億円と予測。新商品の投入と、国内外の半導体製造装置
三菱電機の産業メカトロニクス部門は、売上高 1 兆 4500 やその他の市場で拡販を進める。生産拠点の強化を進め、湘
億円と横ばい、営業利益は 1840 億円で 2% 減を見込む。し 南工場をマザー工場として周辺 2 工場を 19 年に集約。藤沢
かし 1 ドル 100 円と為替影響を厳しく見ていることから、 テクノセンターを 21 年までに整備し、最先端の要素技術と
前年度の為替条件では売り上げで 3%、営業利益で 6% の増 生産技術の挑戦を進める。
加としている。 IDEC は売上高 625 億円(4.5% 増)、営業利益は 72 億円
安川電機は、過去最高となる売上高 5100 億円(9・8% 増)、 (17.8% 増)を見込む。HMI ソリューションの 6.3% 増、盤
営業利益は655億円で14.7%増と大幅増を見込む。ロボティ 内機器ソリューションで 1.6% 増、オートメーションソリュー
クス領域の攻略、成長市場の売上拡大、人協働ロボットの拡 ションで 7.5% 増、安全・防爆ソリューションで 6.9% 増と
販など、グローバルの自動化・省力化需要の取り込みを図る。 各製品領域で 17 年度を上回る見通し。
NECA 出荷統計推移
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インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.6
潮 流
FAセンサ市場と技術動向。
人手不足、人件費高騰、高精度生産で堅調続く
IoT対応で大きな追い風
FA センサの市場が堅調な拡大を続けている。半導体製造、工作機械、ロボットなどをはじめとした製造業のあらゆ
る分野が牽引役になっているほか、非製造業でも需要が増えている。IoT に代表される新たな流れのなかで FA センサ
は「つなぐ」ための中核製品としての役割をますます高くしている。少子高齢化、人手不足、人件費高騰が顕著に進む
中で、FA センサはこれらの課題解決につながる大きな切り札的な存在としての地位を強めている。
ロボット、半導体製造装置、工作機械等で需要旺盛 光電センサとその技術動向
FA センサを取り巻く市場は、ロボットをはじめ、半導体製 FA センサの中でも市場の大きい光電センサは、LED や半導
造関連、工作機械、自動車関連、インフラ関連で旺盛な需要 体レーザを光源にした非接触センサとして、主にワーク(製品・
となっている。 部品)の有無確認のために用いられている。検出方式は透過型、
FA センサの大きな市場である半導体・FPD 製造装置は、 回帰反射型、拡散反射型などがあり、年々性能が向上している。
17 年度は前年度比 121.9% の 2 兆 4996 億円になる見通し 長距離検出には透過型が最適である。回帰反射型は、透過型
で、18 年度も 108.3% の 2 兆 7072 億円が見込まれている。 で必要だった投光部と受光部の配線が不要で、その代わりに
半導体・FPD 製造装置は、FA センサでファイバセンサなど、 センサの対向側に反射板を配置し、配線工数や設置工数を半
比較的付加価値が高いセンサが多く使用される。また、ウエ 減できる。特に反射型の性能向上、コストダウンが最近顕著で、
ハ用マッピングセンサ、真空対応センサなど特殊なセンサも 従来苦手であったワークの色変化や傾きに強いタイプや、水
数多く採用されるため、センサメーカーにおいては重要な市 や油などの環境に強いタイプなども存在感を増してきている。
場である。IoT に絡んだ情報化投資や自動車の自動運転など そのほか、超小型ヘッドで取り付けスペースが小さいアン
をはじめとして半導体の需要は急増している。スマホの有機 プ分離型、非 FA 分野で多く使われる、AC 電源で使用でき取
EL 画面や、高画質テレビなどの伸長で液晶などの FPD の需 り扱いが容易な電源内蔵型、取り付け場所を選ばず微小物体
要も旺盛な需要が継続している。 も検出できる光ファイバー式などがある。特に光ファイバー
工作機械の出荷も好調を維持し、17 年の出荷額が前年比 式は、先端のファイバー部のラインアップが多彩で、取り付
131・6% の 1 兆 6455 億円と過去最高になっており、18 けや用途に合わせて選定がしやすくニーズが高く、数百種も
年も 1 兆 7000 億円と 2 年連続の過去最高更新を見込んでい ラインアップをそろえているところもあり、あらゆる用途に
る。ボールねじやスライドといった部品の納期が長期化の様 用いられる。
相を呈してきていることから、受注に比例した出荷ができる 光電センサは、オートチューニング機能など使いやすさを
かが懸念されている。 追求した機能が一般化している。また、多点制御や差動検出
ロボットも、人手不足や人件費の上昇、製品の高精度化な など入光量をアナログ的に制御できるアナログ出力の光ファ
どから需要が急拡大している。日本ロボット工業会の見通し イバー式光電スイッチもある。最近では通信機能も備え、
では、17 年の生産額は前年比 128% の 9000 億円台乗せと PLC と通信して、設定値を集中管理できるタイプも普及して
なっており、18 年は更に上乗せされて 1 兆円を突破し、1 きている。自動感度補正機能も各社搭載しており、ファイバー
兆 1000 億円も見込めるという大きな期待感が出ている。協 先端に汚れによる光量低減が生じても自動的に感度を補正す
働ロボットの開発が普及を後押しする一因として挙げられる るだけでなく、先端部の清掃を行った後も自動で元の感度に
が、結果的に FA センサの使用個数が増えることにつながっ 復帰するもので、再ティーチングの必要がない。また、光源
ている。ロボットはある意味で FA センサの塊ともいえ、セ に用いられている LED の経年劣化による光量低下にも追従す
ンサの使用個数が増えることはあっても減ることがないこと るタイプもある。
から、今後の普及にともない、更にセンサ市場拡大を牽引す
るものと見られる。 2次元形状計測センサ
また FA センサの安定した市場となっているのが、食品・ 2 次元形状計測センサは、帯状に広げたレーザ光を対象物
医薬品・化粧品の 3 品業界である。製造ラインにおける各種 に照射し、その反射光を CCD で撮像し、断面形状を計測す
認識・識別、不良品検知などの用途で、重要性を増しており、「安 る非接触型センサで、撮像情報から形状のプロファイルを生
全」「安心」といったキーワードに即している。製品トレーサ 成し、対象物の断面形状(2 次元形状)から、高さ・段差・
ビリティ用途に加え、このところは人手不足などに対応して、 幅・位置・交点・傾きなどの寸法形状を瞬時に計測。従来は
ロボットを活用に向けた投資も積極的に行われていることか 数百万円していたが、数十万円で導入できるようになってき
ら、今後も更に期待市場として注目されそうだ。 ており、複数センサを使用していた用途を 1 台のセンサでカ
バーするなど導入によるコストダウンも見込まれる。
— 5 —
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インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.6
近接センサ フローセンサ、加速度センサ、非接触温度センサ
近接センサは、耐環境性に優れて、高温・多湿、水中など MEMS 技術を応用したセンサは、フローセンサ、加速度セ
で使用できるという、他のセンサにはない大きな特徴がある。 ンサ、非接触温度センサなどが挙げられる。フローセンサは、
直径が 3㍉の超小型タイプや、オールメタルタイプなどライ 外乱による影響が少なくなり、高速応答を実現している。高
ンアップも増え、金属体、非金属体の混流ラインでも使用で 感度の MEMS 非接触温度センサは、広い空間でも人のセン
きる。検出距離は、数㍉ ~ 数十㍉が一般的だが、最近は長距 シングが可能で照明環境に強く、静止している人もセンシン
離タイプも発売されている。 グする。店舗や駅構内など、人の混雑状況をリアルタイムに
センシングすることで空調制御などのほか、防犯対策用とし
安全対策用センサ ても需要が伸びている。加速度センサは、ロボット制御など
安全対策用センサも各種ある。マットスイッチ、ライトカー でも活用されており、小型化、高精度化が年々進んでいる。
テンなど、接触式、非接触式など多様で用途に応じ使い分け MEMS センサでは、モーターなどの音や振動エネルギーの異
されている。中でもセーフティレーザスキャナは、ソフトウェ 常振動を察知し、予知保全に応用できる MEMS センサシステ
アで危険領域を限定でき、ロボットが使用されている工程や、 ムもある。
無人搬送車などにも搭載されている。セーフティライトカー センサデータ活用領域を広げる IO-Link
テンも、設計や取り付け・調整などの手間を省く改良がされ
使いやすさが増している。光を用いた同期をすることで、省 センサの周辺を支える機器も充実してきている。コネクタ、
配線を実現、複数のセンサを使用しても干渉しない工夫がさ 配線システムなどは接続性やインテリジェント化が進んでお
れているタイプもある。従来は誤作動による原因追求に工数 り、センサの機能をさらに引き出す役割を果たしている。そ
がかかっていたが、LED 表示や通信により、状況を知らせる のひとつとして注目されているのが、センサデータの活用領
機能も各社強化しており、導入後の工数も削減できる。 域を広げる IO-Link だ。IO-Link は拡張性に優れた通信で、
いままで利用できなかったセンサ内部の情報にユーザーがア
レベルセンサ クセスでき、しかもリアルタイムでクラウドベースでも利用
レベルセンサは、液面や粉体面が設定レベルになった時に できることで、最適制御、予知保全などへ大きく利用領域が
信号を出力するセンサ。一般的なタンクや容器内の内容物の 広がる。センサをさらにインテリジェント化したものとして
レベルを検出する用途が多いが、河川や湖沼の水位・水量測 の活用につながることから今後利用が大きく増えそうだ。セ
定、下水や排水の液面測定などにも利用されている。最近で ンサの ON-OFF 情報だけでなく、状態管理、緊急判断といっ
は、災害防止の観点から設備を強化する取り組みが行われて た場面での AI と連携した活用も進むことが予想され、センサ
おり、無線通信機能を持たせて遠隔地のデータを伝送できる がものづくりを大きく左右するキーパーツとして重要性を増
タイプや、光ファイバーを用いた通信を採用し、強いノイズ しそうだ。IoT の新しい流れの中で、センシング情報の果た
環境でも使用できる製品も現れている。さらに、自動車や二 す役割は大きいだけに、市場は今後も着実に伸びるものと思
輪車などのエンジン周りや、外食産業の厨房にも採用されて われる。
おり、新規市場への浸透が進んでいる。レベルセンサに温度
センサを内蔵し一体化することで、スペースの削減とトータ
ルコストの低減も図られている。
超音波センサ
超音波センサは、比較的長距離・広範囲の検出ができるの
が特徴であるが、近距離での特性も向上している。また、超
音波センサの複数同時使用時の音波のクロストーク対策とし
て、自動同期機能を内蔵した製品も発売され、信頼性も高まっ
ている。
ロボットの用途開拓が進むなかで、測域(レンジ)センサ
のアプリケーションも拡大している。測域センサは、周囲の
障害物などの状況を把握する。レーザ光線で対象物までの距
離を測定し、270 度の視野に対して自分を中心に平面地図の
ような測域情報を得ることができる。長距離で高感度の検出
が可能なため、最近では立体駐車場や、トンネル前での車両
の高さ検出など、屋外や交通分野、さらに安全分野を中心に
用途が拡大している。この領域では、画像データと組み合わ
せて精度を向上させる取り組みもなされており、活用の場が
広がっている。
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インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.6
潮 流
国内のデータ産業の事業環境調査
DC老朽化対策、海外クラウド隆盛、エッジ活用など
データの利活用がこれからの製造業のビジネス拡大の成否を握るなか、それを支えるデータ関連の業界はどうなってい
るのか ? 経済産業省は、データセンター、クラウドインフラを中心とした市場動向を調査し、あわせてデータ流通や保
護に関するルール、国内外の最新動向を調査しまとめた。
データセンター産業は高速化・省エネ化対策が必要 それらの研究開発に充てる費用も国内勢が売上高の 5% 未満
なのに対し、海外勢は 10% 以上を充てている。そのためサー
データ社会を支える最重要インフラとなるデータセンター。 ビス・機能面での競争力の差は広がるばかりとしている。
その産業の国内市場の現状について、IoT などのデータ活用 今後については、高機能かつ安全性の高いクラウドサービ
の需要が活況なため、データセンターの重要性は高まってい スの利活用を進めるための施策が必要とし、それを使いこな
る。国内企業の競争も高く、2016 年度の国内のデータセン す高度な人材の育成と、セキュリティに注意し、基準等を明
ター市場における国内企業のシェアは 98% となっている。 確化することが大事としている。
しかしながら一方で、AI に関わるデータ処理など大量・高
速処理の需要が拡大するなか、電力コストの低い海外の方が 自由なデータ流通が付加価値を生む。一方で機密情報の管理厳格化も
データセンターの立地に関して優位性が高いとの見方もある。
さらに、国内のデータセンターは老朽化が進んでいて、建設 データ流通や保護に関しては、大前提として、自由なデー
後 20 年を経過したものの割合が 40% 強もある。高速化、 タ流通が新たな付加価値を作るとの認識を明らかにし、その
低消費電力化が求められるなかで、こうした状況は看過でき 上で機密性や可溶性が求められるデータの管理体制について
ず、設備投資が必要と指摘している。 検討することが大切であるとした。
クラウドとエッジの使い分けへの対応が必須
現在のデータ利活用基盤はクラウド中心の構造となってい
るが、今後 IoT が進んでデータ対象がリアル空間に拡大する
と、自動走行や自律制御等でデータ処理のリアルタイム性が
不可欠になってくる。製造業ではエッジ重視の傾向はすでに
始まっており、クラウドとエッジの使い分けの議論が盛んに
なっている。
こうした変化に対応するため、データセンターやクラウド
インフラに係る取組を短期的な対応策として確実に進めつつ、
アーキテクチャの変化を踏まえた取組の方向性、エッジに対
応したプラットフォームの構築などを考える必要性があると
図 : 国内のデータセンターの老朽下状況 している。
具体的には、エッジでの分散処理とクラウドでの集中管理・
海外のクラウドサービスの勢いが増す。 処理を協調して活用できる自律分散協調型の仕組みや、異な
使いこなす人材育成を るエッジ やクラウドの仕組みとも協調・連携できるよう標準
化の推進、エッジの高速処理や省エネ要求に対するハードウェ
パブリッククラウド市場については、2016 年のシェアは アの開発なども必要であるとしている。
49% が海外製品・サービスが占め、2030 年には 62% まで
高まると推計。海外勢の機能・サービス面での競争力が高く、
図 : パブリッククラウドの市場シェアの推移
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インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.6
潮 流
プラントの産業保安に関するIoTセキュリティ対応マニュアル
安全稼働をいかに守るかの指針を明確化
プラントは稼働の安全性が第一とされ、サイバー攻撃を受ける可能性を考慮して基本的にはインターネットとはつなげ
ていなかった。しかしこれが IoT によって変わりつつある。設備老朽化や現場作業員の高齢化、人材不足が深刻化し、
保守保全の効率化に IoT が有効だとの観点から導入が進みつつある。経済産業省と NEDO は、プラントを安全稼働
するために、プラントの産業保安に特化した IoT セキュリティ対応マニュアルを発行した。
産業保安のセキュリティ現状 時の経営責任が問われることからもトップが主導することが
必要としている。さらに運用では PDCA サイクルを回し、常
プラントはインターネットが登場する前に建設されたもの に最新の状況に更新し、新たな脅威に備えること。アセット
も多く、外部との接続を想定していないケースも多い。一方で、 管理を厳重にし、廃棄する IoT 機器のデータは確実に消去す
今後は産業保安を効率化するためにデータや IoT 活用が進み、 ること、リスク分析とセキュリティ対策の記録管理すること
インターネットとの接続や外部との接点発生が増える可能性 などを説明している。
があり、そのリスク管理を行わなければならない。 2 つ目が「プラント内ネットワーク管理の徹底」。はじめは
IoT 機器を物理的に保護すること。設置してある部屋への入
退室管理、IoT 機器に関してもネットワーク回線の隠蔽、ハ
ブの空きポートを埋めるなどの対策を紹介。続いて IoT 機器
脆弱性管理。産業保安に使っている IoT 機器の脆弱性情報、
パッチ情報を収集し、常に最新を保つこと。さらにシステム
内部の状態管理。IoT 機器の異常検知や通知、IoT 機器の ID・
パスワード管理、管理者・利用者権限管理などを挙げている。
また制御系ネットワークの防護も重要とし、他のネットワー
そのセキュリティに対する考え方も、単にサイバーセキュ クとの接続管理をしっかりやること。無線通信管理も大切で、
リティだけでは不十分で、機能安全とセットにして考えなけ プラント内の情報通信でも無線傍受の可能性も考慮する必要
ればならないと指摘している。逆もまた然り。機能安全プロ があるとしている。
セスをベースに、ハザード・リスク分析にセキュリティの脅
威を考慮するなどの対策が必要であるとしている。
プラントのネットワーク構造と外部接続のパターン
プラントのネットワークは、フィールドレベルで機器を制
御するための「制御系ネットワーク」、それらをまとめて運転
を管理する「制御情報系ネットワーク」、最上位で工場の全体
データを取り扱う「情報系ネットワーク」の大きく 3 つに分
類される。
外部接続の方法は、(A)物理的な外部記憶媒体による電子
データでの入出力と、通信回線による入出力とに区分され、 3 つ目が「外部接続管理の徹底」。可搬記録メディアの利活
後者は更に(B)情報系からの外部接続と(C)制御情報系か 用を管理し、使う場合はマルウェア対策を必ず行うこと。情
らの外部接続、(D)プラント内部の無線通信の 4 つあり、そ 報系ネットワークから外部との接続管理に関しても、外部と
れぞれにおける脆弱性管理にも配慮を行う必要があるとして の接続点を最小限にし、境界にファイヤウォールを設置する、
いる。 通信保護を行うなどの対策を挙げている。また制御情報系ネッ
トワークからの外部接続管理も必要とし、リモートアクセス
4 つの大きなポイントと具体的対策 時のセキュリティ確保を促している。さらに産業保安に関わ
る関連会社の接続先のセキュリティレベルの確認も怠っては
マニュアルでは産業プラントのセキュリティ対策のポイン いけないとしている。
トについて、4 つの大カテゴリにそれぞれの対策として合計 4 つ目は「障害発生時の対応」。インシデント対応の体制と
14 項目を挙げている。特徴的な脆弱性と対策の要点を整理し 手順をあらかじめ定めておくことが重要であるとしている。
てまとめ、技術的なところから運用マネジメントにおける対
策も紹介している。 マニュアルは経済産業省のホームページから誰でもダウン
1 つ目は「セキュリティマネジメントシステムの構築と運 ロードできる。
用」について述べている。はじめは「経営者の責任」につい http://www.meti.go.jp/policy/safety_security/
て述べ、経営者がセキュリティ対策に責任を持つことが大事 industrial_safety/sangyo/hipregas/files/security_
としている。組織が効率的に動くため、社会に損害を与えた manual.pdf
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インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.6
インタビュー
キヤノン株式会社
キヤノン、FA事業を強化
自社工場の自動化ノウハウを活かす
キヤノンは、言わずと知れたイメージング分野のトップメーカー。業務用では放送機器やプロ用カメラ、レンズ等を展
開しているが、このほど FA 市場でも事業の強化に乗り出した。イメージコミュニケーション事業本部 副事業本部長
枝窪弘雄氏に話を聞いた。
—今回発表した FA の取り組みについて を集中管理でき、配線の手間が少
データ活用の重要性が叫ばれているが、行われているのは なく、初期設定や変更も簡単になっ
数値データを使ったものがほとんど。画像データは容量が大 ている。
きく、ネットワークを阻害する可能性があると嫌われ、活用
がまだ十分に進んでいない。しかしエッジに近い部分で画像 —具体的なソリューションについて
処理をし、その結果だけを基幹システムにフィードバックす 「Monitoring Edition」は異常
る仕組みができれば、画像をもっと活用できると考えた。 監視・録画ソフトウェアで、事前
これを FA の専門家であるシーメンスに相談したところ賛 に設定した複数箇所をスケジュー
同いただき、協業して画像を活用した FA 用システムソリュー ル通りにネットワークカメラが自 キヤノンイメージコミュニケーション
ションを作っていこうということになった。協業の第一弾と 動録画し、トラブル検知時にはド 事業本部
して、シーメンスの産業用 PC に当社のソフトウェアを組み ライブレコーダのように前後だけ 枝窪弘雄 副事業本部長
込んで 3 月より順次販売を開始している。 切り出せる。人の巡回を代替でき、トラブルの未然防止にも
つながる。またトラブル前後のデータをすぐに取り出すこと
—御社の強み、特徴は ができるため、復旧までのダウンタイムを大幅に短縮する。
今回発表した FA 事業を所管するイメージコミュニケー 「Vision Edition」は、ネットワークカメラでモノの有無や
ション事業本部は、レンズ交換式カメラなど BtoC 製品と、 色判別、バーコード読み取りができるようにし、目視作業を自
放送・映像制作向けのプロ用機材など BtoB 製品を展開して 動化できるソフトウェア。例えばアナログメーターの針が閾値
いる。レンズからセンサー、画像プロセッサー、ソフトウェ を超えたり、機械トラブルで積層信号灯が赤信号になったり、
ア技術にいたるまで一貫した画像処理の技術を持ち、これを 資材が所定の位置になかったりすると、それを検知して管理者
FA に投入する。見逃されがちだが、画像処理においてレンズ に通知する機能を持つ。またバーコード読み取りでは、人によ
は非常に重要で、当社はそこの技術も持っている。 る読み取り作業をネットワークカメラで自動化できる。
さらに、これらの製品の製造は大分キヤノンなど自社工場 また近年関心が集まる協働ロボットの活用についても、デ
で行っている。自社工場内では自動化が進められており、こ ンソーウェーブの小型協働ロボット「COBOTTA」と、AF/
うした知見とノウハウを活かせるのも強みだ。実際に今回の AE(自動露出)機能を持った当社の産業用カメラ「N10 −
製品も社内で使って有効だった仕組みを、ノウハウを含めて W02」を組み合わせることで、ロボットに目の機能を追加し、
外販できるように再構築したものになっている。 ピック & プレイス作業を簡単に自動化できるソリューション
当社が重視しているのは、他社との差別化と導入・使用時 も提供している。ティーチングやハンドの設定もフローチャー
における簡単さだ。後発組なので、他社にはない価値を提供 トを組み合わせるだけで済み、難しいプログラムを組まなく
していかなければならない。 ても使い始めることができる。
例えば、当社はネットワークカメラの技術を FA に持ち込
み、従来とは異なるソリューションを提供していく。 —今後に向けて
通常、工場内の産業用カメラは単焦点で、1 箇所に対して 3 月に「Vision Edition」の販売を開始し、「Monitoring
1 台を設置するのが一般的だが、当社はそこにパン・チルト・ Edition」は 4 月下旬から発売した。まずはセミナー等で理
ズーム(PTZ)機能を持ち、広範囲をカバーできるネットワー 解を深めながら、テスト導入などでじっくり広めていきたい。
クカメラを採用した。通常であれば複数台のカメラが必要な FA 分野では画像によってもっと便利になる部分はたくさん
ところを 1 台のネットワークカメラで広い視野をカバーし、 ある。これまで培ってきたイメージング技術を活かし、FA に
さらに特定エリアの撮影も 15 箇所まで登録可能だ。 貢献していきたい。
これにより機器の導入コストはもちろん、設
置や設定、運用の手間も低減できる。従来の産
業用カメラは設置場所を厳密に決める必要があ
り、被写体ごとにカメラや照明のセッティング
が必要だが、ネットワークカメラなら天井や壁
面に取り付け、PTZ、AF/AE(自動露出)機能
でカメラを固定したまま被写体に合わせたピン
トと明るさで撮影ができる。また複数のカメラ
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インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.6
インタビュー
オプテックス・エフエー株式会社
オプテックス・エフエー、
ベンチャースピリット忘れずチャレンジ。
20年度に売り上げ100億円突破へ
オプテックス・エフエーの新社長に中島達也氏が就任した。FA 業界で 30 年のキャリアを有する中島氏が小國勇前
社長の築いた同社を、売り上げ 100 億円達成に向けて経営にあたる。次の飛躍に向けた一手を中島社長に聞いた。
—社長就任の抱負を聞かせてください。 —オプテックスグループの中期計画の中で、オプテックス・エ
2002 年のオプテックス・エフエー創設時から 16 年社長 フエーの売り上げ目標はどうなっていますか。
を務めた小國からバトンを受けたということで、相応のプレッ グループとして 19 年度の売り上げ目標 500 億円を掲げて
シャーと責任を感じている。一方で、私も FA 業界で 30 年 いるが、当社としては 19 年度 90 億円、20 年度には 100
間やってきて、自分の手腕を発揮できるということではワク 億円を目指していく。
ワク感というか、そちらの方も強い。小國と共有した時間は
2 年で、残りの 14 年の話を聞いてみると、オプテックスか —今後どんな会社にしていきたいですか。
ら分社してからいろいろなことがあり、小國がジャングルの グループの企業理念が「ベンチャースピリット溢れる企業
中をかき分けながら歩んできた結果、オプテックス・エフエー 集団を目指す !」で、個人的にもベンチャースピリットはかな
が今ここにあるという印象だ。険しいジャングルを懸命に開 り重視している。売り上げは上がってもベンチャースピリッ
拓し、商品的にも営業網的にも、もっ トは忘れない、つまり何事にもチャレンジしていく社風に重
といえば「売れる仕組みづくり」と きを置いてやっていく。例えば、やるかやらないかで迷うく
いうところでも綺麗に道を敷いてく らいだったら、絶対にやる方を選ぶ。そういうところは大切
れた。私は過去の経験と知識を活か だと思っている。また、楽しく仕事ができるというところも
して、まだちょっと道の真ん中に穴 重視する。いくら業績が伸びて給料が良くなっても、働いて
が空いていたり、まっすぐと思って いて楽しくない、やたら管理されるという会社にはしたくな
いたら実は微妙に曲がっていたりみ い。グループの使命は「ニッチマーケットでナンバーワンを
たいなところがあるので、修正をか 取ること」。そのためにはチャレンジ精神が全てだ。今後も、
けていきながら、アクセル全開で進 伸びるエリア、伸びる商品、伸びる事業に集中してやっていオプテックス・エフエー
んでいく。 中島 達也社長 きたい。
—具体的には ? —ロボットビジョン、変位センサ、画像検査用 LED 照明な
今まで海外の経験が長く、アメリカ、中国、ヨーロッパに どが、当面注力・強化していく商品ですか。
合わせて 12 年ほど駐在した。幸い、その 3 つの主要マーケッ 変位センサは商品的にも市場的にもブームで、今一番力を
トの動向、人脈も含めてかなりのトレンド情報が入ってくる。 入れるべき商品と認識している。3 月にラインナップを拡充
変化に対応しながら、グローバルなビジネスをこれまで以上 した変位センサ「FASTUS CDX シリーズ」は、既存の他社
に強化し売り上げを伸ばしていきたい。 製品に比べ、WEB サーバ機能の搭載などで差別化が図れてお
今年 4 月からアメリカ・シカゴに現地法人の販売会社を設 り、精度でも凌駕している。基本スペッ
立し、拠点を設けた。アメリカは今までは専売代理店に任せ クおよび使い勝手両面で勝てる商品と
てきたが、これからは販売会社を通じて現地で販売ノウハウ 自負して非常に期待している。また、
を提供していく。新たに 6 社の代理店を設け、州や地域ごと 協業では独・ジック社とは約 30 年の歴
に 1 番浸透している代理店を、東地区、西地区、中地区それ 史があり、さらに加速して開発だけで
ぞれに作って、我々が直接出向き、営業同行するなりして拡 なく営業でも密にしている。また、シー
販をしていく。今後も我々の理念を理解し、攻めようとして シーエスもグループの 100% 子会社と
いる電機・電子や、当社の強みである食品業界、アメリカで なる。より一層、連携を強化していく。
大きな自動車業界にいいお客様を持っている代理店があれば —FA 業界の現状をどう捉えていますか ?
随時契約していく。 いままでセンサだけでなく、いろいろな商材の販売を経験
—アメリカ市場の現状と今後の目標は。 してきたが、いまは過去 30 年にはなかった追い風が FA 業
今はまだ少ないが、市場規模を考えると最終的には全 界に吹いていると感じる。インダストリ 4.0、AI、電気自動
社売り上げの 10% を目指す。特に自社のセンサブランド 車など、その辺のテクノロジーは最終的には FA に繋がる。
「FASTUS」品の売り上げを、アメリカをはじめ中国、日本 人手不足、人件費高騰などで取り巻く環境面でもセンサを使
でも上げていきたい。 わざるを得ない状況である。この追い風に絶対に乗っていか
ないといけない。当然、他のメーカーも売り上げを伸ばすだ
ろうが、「我々はもっと伸ばす」ということを念頭に置いて事
業を拡大していきたい。
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インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.6
インタビュー
MECHATROLINK 協会
MECHATROLINK協会、
高効率で高度な制御を実現 MECHATROLINK-4
産業用モーションネットワーク「MECHATROLINK」の新バージョン「MECHATRO
LINK-4」(M-4)が発表された。従来の MECHATROLINK- Ⅲの機能・性能、使いやす
さを継承しつつ、伝送効率の向上やマルチタスク機能などを追加し、より効率的で高度な
制御の実現をめざしている。同時にサーボアンプとサーボモータのエンコーダ間通信で使
用されている「∑ -LINK」でも、他のセンサや I/O 機器等を接続して同期制御できる「∑
-LINK Ⅱ」が開発された。この 2 つのネットワークは、IoT や AI を活用した新しいもの
づくり時代に対応するものとして期待されている。
MECHATROLINK の運用・普及に取り組んでいる MECHATROLINK 協会(MMA) MECHATROLINK 協会(MMA)
事務局
事務局の下畑宏伸代表に今後の取り組みについて聞いた。 下畑宏伸代表
ターゲットはあくまで「装置内」 シングもいろんなパラメータが必要になる。切削面で言えば
光の光沢具合や熟練工の触感、光を当てた感覚とか。多分、
—ものづくりでの IT と FA の連携した取り組みが進んでい その目的に応じて、今までと違う測定やセンサを織り込まな
ます。MMA の立ち位置は ? いと、本当の意味での習得できないだろう。
新しいものづくりに対するコンセプトやコンソーシアムな データが多ければ時間同期が取れていなくても、ある程度
どが発表されているが、工場の基幹系システム(PLC)を中 アルゴリズムの生成・調整といった学習はできるが、変なデー
核に、IT 系と FA 系をつなぐ「インターフェースの共通化を タを使用するとデータのクリーニング、判別をしていかない
図る」ことを狙っているように感じる。 と、効率よく学習がさせられない。同期性・定刻性のあるデー
MMA のターゲットはあくまでも「装置内」。ラインをつく タを集めた方がより解析し易くなると考えている。M ‐ 4 や
る一要素、一工程のデータをいかに集めるか、そのデータを Σ -LINK Ⅱは、うまく同期できる仕組みでデータを集めら
いかに活用するか、その工程でものをいかに加工するか…… れると思っている。
それを最適化すること、データをいかに上位層に渡せるかと
いうことに重きを置いている。 ビジョンとフィールドネットワークを結ぶメリット
—装置とラインは分けて考えるべきだということですか ? —MMA と日本インダストリアルイメージング協会(JIIA)
装置はラインを構築する一要素であり、スマートファクト との連携は ?
リーを構成する最小単位だ。スマートファクトリーでデータ JIIA とは今後ビジョンが重要になってくることから、ビ
を収集しようとすると、色々なところをデジタル化し付加価 ジョンをフィールドネットワークに接続することによるメ
値を取っていくためにネットワーク化が必要になる。 リットや差別化だけでなく、その標準化として協業している。
今まで装置内というのはコストの観点から生産に重要な 今ロボットで、3D カメラの画像情報を基準にバラ積みのも
パーツしかネットワークされていなかったが、今後ネット のを取るような仕組みができてきている。また、スマートファ
ワーク化が重要になり、接続するセンサやノード数が増えて クトリーで色々なものづくり、工程の平準化をしようとした
いくことを考えて、今回、M‐4 やΣ‐LINK Ⅱを新しいキー 時、ロボットが違う場所で仕事をするとなった瞬間に、その
テクノロジー技術として投入することとなった。 動作座標が全部変わってしまう。そのため、今までのような
MECHATROLINK は装置内のデータをいかに効率よく収 決まったプログラミングではなく、ビジョンによる画像情報
集と活用するかの観点で、下から積み上げていっているが、 を基準にして動作するビジュアルフィードバックをどんどん
ラインから見れば上位側から装置内のデータの収集と活用と やっていかなければならない。
いった上からも下がってきており、相互の視点として捉える 今までビジョンは MECATROLINK のフィールドネット
必要がある。 ワークより上のレイヤーに繋がっていて、ビジョンのメー
カーは、高画質化とか、4K、8K ビジョンを使ってという方
—ディープラーニングなどで熟練技術者の技術伝承のような 向に注力しており、データ量の増加や画像処理の複雑化が進
ことは可能ですか ? んでいる。しかしビジュアルフィードバックを使うモーショ
人間の感性でしかわからないものもある。例えば物を削っ ン制御ではそこまでの高画質は必要ない。
た時の切削面。熟練工が削ったものと機械が削ったものを顕 基本的には、ビジョンセンサから出して欲しいのは位置情
微鏡で比べた時、何ナノくらいの誤差しかなく、従来の加工 報。基準値からどれだけずれているか、どういう座標系にあ
用のセンサで見たら差が出ないというのがある。だからセン るかなどの座標情報を出して欲しい。
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インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.6
また MMA としては、安くて位置データを速く払い出して —FA と IT の両方わかっているエンジニアが不在なのが大き
くれれば、ビジュアルフィードバックとして使いやすいので い ?
はないかと思っている。そういうところを一緒に知恵を出し 最近のディープラーニングや AI がすごいのは、ものづく
合って何かおもしろい提案を市場に対してできないか、とい りやデータの意味が分かっていなくてもデータの因果関係や
う取り組みをさせてもらっている。 解析モデル、アルゴリズムなどそれなりのアウトプットを出
してくるところ。さらに人が思いつかないような結果を出し
データを確実に収集・活用して貢献する たりする。それで将棋で負けたりもしている。
—これからの MMA の訴求ポイントは ? —将棋は勝つか負けるかで終わるが、ものづくりではそれで
MMA はあくまでも装置内、モーションに連携しているデー は済まない。
タを確実に収集・活用し、ものづくりに貢献していくことに ぐるぐる回してどんどん判断させていけばいいのだが、怖
ポイントを置く。上位系に対して必要なデータを出せる仕組 いのは、何もわからない状態でブラックボックスのアルゴリ
みをきっちり持つことで、各通信レイヤーに最適な QCD を ズムで判定していると、不具合が出た時に対策の打ちようが
実現していきます、そういう思想の方がいいですよ、という なくなる。人間がスキル的にどんどん管理ができなくなって
ことを訴求したい。 いく。その不具合データを使ってもう一度学習させれば不具
今は話が上位層から来ていて、「統一化」「統一プラット 合は消せるとは思うが、それが正しい方向性なのか。不具合
フォームで」と言っている。エンドユーザーからすると、統 はどんどん回していけばどんどんなくなりはする。AI が発展
一プラットフォームを使って、システム維持コストや、デー すると単純作業がなくなると言われているが、人間の高度な
タ活用に関するプラットフォーム共通化によるメンテナンス 仕事がなくなるという話もある。ただ、今の日本のメーカー
コストを抑えたいというのがあるが、装置メーカーからする では、人がわからないことを OK とは言わない。解析結果を
と、装置のパフォーマンスなり付加価値をどうするかという 見て「これはこういう因果関係だからこうなるよね」という、
話になってくるので、そこに対しては最適な QCD がないと、 人が判断した結果と相関がないと使いきれないだろう。
装置メーカーがそれを実現できなくなってしまう。 本来、ディープラーニングや AI を使うことで人が気づか
MMA としては、そこに付加価値を出せるような仕組みを なかった関係性を引っ張り出してくれるというのがある。も
提供し、装置メーカーが戦えるよう、また、その装置を使う のづくりを把握している現場がデータをどれだけ集め、有効
工場やエンドユーザーの選択肢を広げたい。 に活用するため、複雑な相関関係や解析モデルやアルゴリズ
ただある程度は標準プラットフォームに乗っていかない ムを効率よく作成するための手段としてディープラーニング
と、トータルの維持・開発コストなどは装置メーカーやエン や AI などを使用する必要がある。
ドユーザーでも必要となるので、上位インターフェースがそ ―MMA としての今後を教えてください。
ちらに決まったのであれば、今後、そこに対してどういうデー
タをどう出すのが楽なのかというのを一緒に考えていくこと ある程度プラットフォームは共通化しておくべきだが、差
はできるのではないか。他と違うこと、それを認識していた 別化がないと難しい。その差別化の重要なところは、やはり
だくことを確実に訴求していきたい。 工場、ものづくりなので、そこは全て同じプラットフォーム
ではなく、独自のノウハウなり差別化ポイントが必要。とは
—「ものをつくる」ということは普遍です。 いうものの、ディープラーニングや AI 等の技術を活用する
どう作らせるのか、どう部品を集めるのか、どう効率よく、 ためのデータの収集・活用する技術は重要。そこまではまだ
どう歩留まり率を上げるかということだけで、「つくる」と 統一化されないと考えている。
いうことは変わらないはず。今はどちらかというと上位から MMA としては、上位に対して確実にデータを出せる仕組
の流れが強くて、作る現場からの、そうは言ってもものをつ みを提供し、ものづくりに対して貢献していく。
くるためのリアルなプロセスというのはある。そこで混乱が
生じているのと、上位からの圧力が強いので、現場が不安がっ
ている雰囲気がある。今のものづくりをさらによくするため
に新しいネットワークの技術を使う。でもやることは一緒で、
上からの作業指示をより効率的に出してもらう……そういう
話で捉えた方が、本当はわかりやすいのかな、と思う。
現場からすると、経営者がどのようなレベルをどのように
実現させたいのかがわからないので、今のものづくりでいい
のかの判断がつかない。何をしたいのか、何を変えろといっ
ているのかがわかっておらず、AI で何ができるのかもわから
ない。そこを繋げる両方わかるエンジニアがいないというの
も、今の混乱を生んでいる。
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インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.6
話 題
株式会社リンクス
リンクス、エンベデッド・ビジョン事業領域に参入
工場外にも広がるビジョン市場の開拓を狙う
リンクス(横浜市青葉区)が、エンベデッド・ビジョン(組込み用ビジョン)事業を本格的に開始する。マシンビジョ
ンが装置や工場内で広く使われ、さらに工場外での利用ニーズが高まってきたことから、プリント基板設計・製造会社
のアイティエスエンジニアリング(東京都青梅市)を買収し、リンクスがこれまで培ってきた画像処理の要素技術との
掛け合わせで新たなマシンビジョン市場の開拓に挑戦する。
リンクスとは ?
リンクスは 1990 年設立の技術商社で、世界から他にな
い最先端技術とサービスを発掘し、それを日本国内に提供し
ている。画像処理装置と 3 次元センサー、制御システムを取
り扱っており、ドイツ MVTecSoftware の画像ライブラリ
「Halcon(ハルコン)」、産業用カメラの世界トップメーカー
のドイツ・Basler、ハイパースペクトルカメラのフィンラン
ド Specim、リアルタイム画像処理開発環境・画像処理入力
ボードのドイツ SiliconSoftware など、特に画像処理分野で
は際立った強みを持つ。
画像処理技術の進化によって工場内の製造の自動化と検 左からリンクス澤﨑氏、Baumer 社テーメ氏、リンクス村上氏
査工程の高精度化が進むのに合わせ、同社の事業も急拡大。
2012 年の 5 カ年計画で売上 3 倍・社員数 3 倍を掲げて達成。 や民生品よりも数が少ない、「業務用エンベデッド・ビジョン」
2017 年の次の 5 カ年計画では、産業用 IoT で工場内から工 の領域。具体的には医療・メディカル、監視・セキュリティ、
場外への事業領域の拡大、グローバル化を主要戦略として進 スマートホーム、ロボット、ドローンなどの分野で組込み用
めている。 ビジョンシステムの受託開発を行う。
マシンビジョン大手 Basler もエンベデッドを強化 受託設計・製造×画像処理。リンクスとのコラボで強みを発揮
リンクスが日本総販売代理店となっているドイツ・Basler この事業を中心となって支えるのが、今回買収したアイティ
は、産業用カメラで 30 年以上の歴史がある世界のトップメー エスエンジニアリング。これまで長くカスタム基板の設計と
カーで、2017 年売上高は 1 億 5000 万ユーロ(日本円で約 製造をやってきた実績があり、そこにリンクスの画像処理の
193 億円)。ラインスキャンカメラ、エリアスキャンカメラ、 技術と知見を重ねてエンベデッド・ビジョンに取り組む。今
3 次元カメラ、周辺機器など一連の製品ラインナップを揃え、 回に合わせ社名をリンクスアーツ(LINX ARTS)に変更し、
特にファクトリーオートメーション、ITS(高度道路交通シス 新たなスタートを切る。
テム)、医療・ライフサイエンス分野を得意としている。 事業としては、これまでユーザー企業が画像処理用の半導
工場内領域に強く、このほどエンベデッド・ビジョン領域 体からボード設計、ソフトウェア開発といった要素技術を自
に力を入れ、工場外領域へのチャレンジを開始。「物流やセキュ 前で開発していたものを、その部分をリンクスアーツが担当。
リティ、スマートシティ、サービスロボットの分野を開拓し ユーザーはアプリケーション領域に注力できるようになる。
ていく。日本でもリンクスと歩調を合わせて事業を広げてい ユーザーの開発工数とリソースの節約、製品化・サービス化
く」(Basler 社モジュールビジネス事業部長アレクサンダー・ までの期間短縮、アプリケーションに注力できることによる
テーメ氏) 付加価値創出のチャンスを提供する。当初はカスタム対応が
エンベデッド・ビジョン事業の可能性 主だが、標準化やモジュール化を進め、ビジネス拡大に備え
エンベデッド・ビジョン事業について、従来のマシンビジョ る構え。
ンは既製品のカメラモジュールをPCにつないで使うPCベー 産業用 IoT 事業にも良い効果が
スのシステムが主流だが、近年、マシンビジョンの用途が工 またエンベデッド・ビジョンの開始により、既存のマシン
場外にも広がり、あらゆるところで活躍の場が増えてくると、 ビジョン領域へも波及効果も期待は大きい。工場内でも画像
より小さくて省電力、カスタム化されたビジョンシステムが を使った IoT アプリケーションが拡大し、ニーズは多い。同
求められている。スマートフォン用の半導体チップとボード、 社は画像ソフトウェア「HALCON」、制御システムでソフト
カメラモジュールで構成される SOM や SoC ベースのカメラ ウェア PLC「CODESYS(コーデシス)」、COPA-DATA の
システムも高性能化し、産業用としても十分な性能と信頼性 SCADA・HMI ソフトの「ZENON(ゼノン)」を取り扱い、ハー
を持つことから、リンクス・Basler のコラボレーションでこ ドウェアのビジョンからソフトウェア、システムまで画像処
うしたエンベデッド・ビジョン事業へのチャレンジを決めた。 理を使った高度な産業 IoT を構築に必要な製品群を揃えてい
ターゲットとする分野は 1 製品あたりの出荷数が数千から る。村上慶社長は「当然そこも視野に入れている」と話して
数万個の中量で、FA や交通インフラよりも数が出て、自動車 いる。
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インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.6
話 題
キヤノン IT ソリューションズ株式会社
ドイツ・Baumer製産業用カメラ
品質、精度、耐環境性に優れ、過酷環境向けで拡大中
検査や監視用として生産ラインで多く使われている産業用カメラ(マシンビジョン)。IoT の進化にともない、画像
データの活用ニーズが高まり、再び需要が盛り上がっている。ドイツ・Baumer Optronic GmbH(バウマー)の産
業用カメラは、基本となるイメージング技術はもちろん、制限が多く、厳しい環境下での長期運用という産業アプリ
ケーションに適した製品として定評がある。日本で同社製品を取り扱うキヤノン IT ソリューションズで話を聞いた。
バウマーグループは、1952 年創業のスイスの産業機器 クリーニングによるダウンタ
メーカー。モーション機器やセンサー、計測器などを製造・ イムを大きく減少。また熱設
販売し、バウマーグループとしてグローバルで年間約 500 計で放熱効率を上げ、プラス
億円の売上高がある中堅メーカーだ。 65 度の高温環境下でも高い
画像事業は、1997 年に Baumer Optronic としてドイ 検査精度を実現している。
ツでスタートし、昨年 20 周年を迎えた。はじめは大手企業 より耐環境性を高めた「CX
の OEM を引き受けていたが、10 年前から自社ブランドで IP シリーズ」は、マイナス
展開をはじめ、事業を拡大。すでに世界トップ 10 に食い込 40 度からプラス 70 度まで温
むほどの急成長を遂げている。 度範囲を拡張し、IP67 防水 キヤノン IT ソリューションズプロダクトソリューション事業部
同社が多くのユーザーを獲得してきた理由が、高解像度や 防塵性にも準拠。軽量・堅牢 東日本営業本部 企画部 企画課
高速対応といった業界最高水準の画像技術と、精度の高い な筐体設計で振動や衝撃にも 福西 秀次担当課長
ハードウェアの両立。特に後者は、ドイツ企業らしい高い設 強く、自動車やロボット、鉄道、社会インフラのほか、食品
計・製造技術のこだわりによって製品の基本性能と利便性を 飲料向けのアプリケーションに適している。
高め、他者との差別化要因となっているという。「産業用カ 同社は、VGA から 48 メガピクセルまでの幅広いライン
メラもデジタル化で製品に明確な差が出にくくなるなか、バ ナップに加え、スマートビジョンも展開。用途に合わせたあ
ウマーは筐体や部品の設計と製造による作り込みで付加価値 らゆる産業用カメラを取り揃えている。今後について福西担
を上げ、そこがユーザーに評価されている」(キヤノン IT ソ 当課長は「バウマーの製品は個体差が少なく、導入や交換の
リューションズ プロダクトソリューション事業部 東日本 際に設定や調整の手間が少ないと高評価をいただいている。
営業本部 企画部 企画課 福西秀次担当課長) こうした高品質と高信頼性、耐環境性能の高さというバウ
マーらしい強みを紹介し、日本でも広めていきたい」と話し
例えば新製品の CMOS カメラセンサー「CX シリーズ」は、 ている。
Sony 製「Pregius」、オンセミコンダクター製「PYTHON」
のセンサー搭載に加え、ハードウェア設計の工夫で基本性能
を向上。筐体は左右上下 4 方向すべてに固定できる特別設
計で、取り付けの柔軟性を確保。内部にはセンサー保護のた
めの密閉構造を設けて粉塵の汚れを防ぎ、検査精度の低下や
Baumer-CX-IP シリーズ Baumer-QX シリーズ
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インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.6
寄 稿
IDEC 株式会社
IDEC Compact IoTによる
遠隔監視ソリューション
近年、働き方改革や労働人口の減少に対応するため、業務の効率化が求められています。また、装置・設備の販売の
みならず、付加価値サービス提供によるビジネスモデルも注目されています。本稿では MICROSmart シリーズ FC6A
形プログラマブルコントローラー(以下、FC6A 形)が持つ IoT 化機能を活用した設備・装置の遠隔監視ソリューショ
ンについてご紹介いたします.
IDはEじめCに Compact IoTによる す。また、この際、異常の原因や異常が発生した際の機器の
遠隔監視ソリューション 状態をメール本⽂に含める事ができますので、迅速に状況の FC6A 形は装置・設備の IoT 化を実現する様々な機能を備 把握を行う事が可能となり、効率的に対応する事ができます。
IDえECて株お式り会ま社す。IDEC はこれらの機能を活用することで、お 2. 確認→ Web サーバー機能
客様の業務の効率化や新たなビジネスの創造に寄与するもの FC6A 形の Web サーバー機能を使用すれば、装置・設備
として IDEC Compact IoT による遠隔監視ソリューション の状態を遠隔地から汎用のウェブブラウザを使ってグラフィ
をご提案します。 カルに確認する事ができますので、設置場所まで行くことな
IDEC Compact IoT く、設備の状況を把握する事ができます。 また、これまでは現場での作業が不要な場合であっても、
は じ装め置に・設備のメンテナンス要員不足やメンテナンスコスト 設備の状態を把握するために現場まで赴かなくてはならず、
の増大といった課題を解決するために IoT を活用したいと メンテナンスコストが増大するという課題がありましたが、
いったご相談が多くあります。しかしながら、クラウドサー Web サーバー機能を使用すれば、現場での作業が必要かどう
バーやアプリケーションソフトなどを含めた遠隔監視システ かを手元で確認する事ができますので、移動コストを低減さ
ムの構築を実現するには技術的難易度が高く、また、導入費 せることが可能となります。
用においても相応の工数とコストが必要となり実証実験でさ 3. 解決→動作ログによる原因分析
えもなかなか容易に進まないという課題があ遠り隔ま監す視。のための提案 装置・設備の異常が発生した後で故障原因を調査しても原
IDEこCの C課om題pにac対t IしoT、当社の Compact IoT では少ない初期投 因を掴むことが困難な場合があります。装置・設備の稼働情
資で装置・設備の遠隔監視を実現することで業務の効率化・遠隔報を制F御C6シA ス形にテ挿ム入しのた例SD カードに保存しておくことで異
メンテナンス費用の削減を提案するものです1.。 e-mail通知機能 常時の発生要因や経緯を履歴データとして活用することがで
Compact IoT スターターキット き、効率的な分析を行う事が可能となります。 この履歴データは CSV ファイルとして FC6A 形にセット
Compact IoT スターターキットは FC6A 形の他、LTE モ された SD カードに保存されます。故障原因の調査を行う際
バイルルーターと SIM カードがパッケージ化されており、6 にはこのデータを現場で直接取り出していただくか、FTP 機
か月間の LTE 回線使用料が無料となってお2り. Wまeすbサのーでバー、機こ能の 能によって遠隔地から取得する事も可能です。
スターターキットだけで装置・設備における遠隔監視の実証 遠隔地から FTP 機能によって取得できれば、故障原因の解
実験を行う機材が揃います。 析を行うために現場に赴く必要が無く、履歴データの取得も
Coまmたpa、ctL IToTEス回タ線ータをー使キ用ッしトますので、お客様の社内 LAN に 迅速に行う事ができます。また、故障原因が明確になった状
接続して頂く必要がありません。このため、既設の装置・設 態で修理を行うため、修理する段階で、部品が不足し、再訪
備や社内のネットワークに影響を与えず、遠隔監視を実現す 問するといった問題を回避する事が可能となり、メンテナン
る事ができます。 スコストの削減とサービスの向上が見込めます。
なお、グローバル IP アドレスが割り振られておりますので、
外部から直接 FC6A 形にアクセスする事が可能です。
システム構成例 ルーター スマートデバイス 3. 動作ログによる原因
インターネット 分析機能
FC6A形がさらに進化 FC6A形 Plus新登場サーバー PC
ModbusもしくはI/Oで FC6A形 LTE回線で
既存の設備に接続 既存の設備に接続
e-mail
遠隔監視のための提案
遠隔監視ソリューションでは以下のような課題解決を提供 1. 通知 : 水質に異常があればメール通知
します。 2. 確認 : 水質の状態を遠隔地から確認
1. 通知→ E-mail 機能による警報通知、定時報告 3. 解決 : 水質が異常になるまでの経緯を確認して、原因究明
装置・設備の稼働データに異常が発生したり、警告灯が点 注意 :Compact IoT スターターキットは実証実験を行うために使用いただく
灯した場合に E-mail が送信されるように設定する事が可能で ことが可能ですが、セキュリティには十分配慮ください。
FC6A形 Plusの特長 — 15 —
■
■ * ユーザープログラム
■
■
■
■
■
IoTコントローラー 連絡だけで、回線手続き不要!
モバイルルータ LTE回線使用までの流れ
16 I/O DC24Vタイプ 62 ※ STEP.1
• リレー出力 O %FF IDECへ連絡FC6A-D16R1CEE
• トランジスタシンク出力
FC6A形 FC6A-D16K1CEE LTEモバイルルータ STEP.2(SIMロックフリー) IDECにて回線手続き
ソフトウェア/付属品 パワーサプライ30W 形式 : Aterm MR05LN
PS5R-VC24 <NEC Corporation製>
SIM STEP.3
LTE回線料
6 SIMカードお届けインストラクションマニュアル USBケーブル ヵ月間 無料!
Automation FC6A形 HG9Z-XCM42 3GBまで高速通信(下り最大 STEP.4
Organizer 基本編 / ラダー編 / 通信編 150Mbps/上り最大50Mbps)
SW1A-W1C NTTドコモネットワーク網を利用した 簡単導入
・ SDメモリカード 4GB グローバル固定IP付き。
・ Ethernetケーブル
・ ドライバー この機会をお見逃しなく! 価格はプロダクツページをチェック!
※いずれも非売品
※ IoTコントローラー+ソフトウェア付属品からの値引き率です。
注)Compact IoTスターターキットキャンペーンは協賛代理店のご協力で運営されています。予定数量が完売した場合、本キャンペーンは終了いたします。
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インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.6
話 題
株式会社シーイーシー
シーイーシー、製造現場が使えるIoT「Visual Factory」
設備、人、モノを統合的に可視化してQCD向上と
迅速な意思決定を支援
日本の製造業における大きな課題の一つ、人手不足。ベテランの再雇用や海外への拠点進出で乗り切ってきたが、そ
ろそろ限界がきている。この人手不足を補うために IT や IoT の活用が有効的だが、付加価値の源泉となる IoT によるデー
タの利活用がまだまだ進んでいないのが現状だ。シーイーシー(東京都渋谷区、田原 富士夫社長)は、データ収集と利
活用をテーマとし、“ 製造現場が使える IoT” の提供を開始。設備、人、モノの IoT データを統合的に可視化し、生産現
場の QCD(品質・コスト・納期)向上を支援する「Visual Factory(ビジュアルファクトリー)」(https://vrr.cec-ltd.
co.jp/product/vf/)を 6 月にリリースした。
製造現場に潜む課題の数々 提供することが可能だ。
同社は、自動車、ロボット、工作機械の名だたるメーカー
にサービスを提供するシステムインテグレーター。2008 年 カスタマイズが可能、効果を見ながら段階的に
にものづくりソリューション「VR+R」を誕生させ、以来、 「Visual Factory」は、組立加工製造業をモデルにした
設備の稼働監視・実績管理システムの「Facteye(ファクティ 可視化メニューが用意されているが、生産現場に合わせたメ
エ)」など、FA 領域にフォーカスしたソフトウェアなどを提 ニューの選択やカスタマイズが可能となっており、状況や用
供している。そのため、製造現場が何を課題とし、何を求め 途に応じて同社の製品やソフトを組み合わせることができる。
ているかを熟知している。 各社 CNC やロボットコントローラと直接つないでデータ
従来の生産現場は、設備、作業(人)、製品を進捗や保全といっ が取れる設備向けの「Facteye」、作業者の動態分析向けの
た業務の目的ごとに管理していたため、工場の実態を統合的 「Smart Logger」、現場の位置や動きをリアルタイムに 3D
に把握するには多くの時間やコストがかかっていた。同社で 化する「RaFLOW」、ディープラーニングを活用する画像検査
は、生産現場の状態を把握する際の課題を次のようにあげて ソフトウェア「WiseImaging」など、同社の IoT・AI 製品か
いる。 ら収集できるデータを意味付け・紐付けし、進捗・効率・状
①生産管理板・設備点検表・品質管理簿など工場には様々な 態などのデータとして可視化ができる。また、他社 IoT プラッ
情報が点在しているが、それら情報がデジタル化されてい トフォーム製品ともデータ連携の対応を予定している。
ない、または統合的に可視化する手段がない センシングの範囲を段階的に増やしていったり、最初から
② SCADA で設備停止状態を把握できるが、復旧のためにと 全ての情報がなくても、まずは設備からなど、効果をみなが
るべき行動を決められない ら情報を追加し、段階的に進めていけるのも同サービスの強
③組立・物流作業は自動化されていないことが多く、設備 IoT みとなっている。
だけで生産現場を把握するのは困難 今後はさらにサービス内容を増やし、設備の異常や不具合品発生に用いるアラーム通知時に、人の位置情報と組み合わ
課題を解決しワンストップで提供 せ、現場から一番近くにいる人を招集するなど、迅速に対応
「Visual Factory」は、日本版デジタルツインを目指し、 できるメニューなどを加えていく予定だ。
設備の IoT に加えて、人の状態・動作、材料や製品の状態を
統合的に可視化し、どこで何が起きているのか、何が原因で
発生したのかを解析し、計画外の事象に対する迅速な判断の
手助けや、品質、生産性、納期の向上を支援するシステム構
築サービスとなっている。
品質と加工条件の相関分析や、部品ごとのトレーサビリティ
による再発防止や要因把握。設備や人の稼働状況と不良品の
発生状況を統合し、ボトルネックの原因追求や改善提案をサ
ポートする。また、ライン単位の出来高や設備稼働状況・人 工場可視化ダッシュボード
の位置・モノの滞留状況を可視化し、遅延要因の把握を支援
するという。
工場可視化ダッシュボード(あんどん)では、国内多拠点
や全世界の生産拠点の稼働状況を確認したり、出来高や工程
進捗、停止した際の要因一覧、設備総合効率、マン - マシン
チャートなどを表示でき、ベテランのみがわかる勘や経験に
頼らない判断ができるようになる。
従来のデータ収集には、機械のメーカーや年代によって取
得できるデータが異なったり、設備側にオプションが必要、
データ収集ソフトがメーカーごとに違う、IT 知識が必要、活
用用途によってデータ収集サイクルが変わるなどの課題が挙
げられるが、同社はこれらの課題を解決し、ワンストップで 「Visual Factory」可視化メニュー
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インダストリー 4.0 —IoT ナビ Vol.6
寄 稿
ヤマシンフィルタ株式会社
ヤマシンフィルタ、油中の磨耗粉を常時監視
清浄度センサ「SWIFTROCK」が拓く新しい予兆保全
建設業界で進む IoT による生産性向上
i-Construction の導入が急速に進む建設業界、その背景に
は切実なものがあります。建設就業者数は 1997 年の 685
万人をピークに減少が続き 2015 年には 27% 減少し 500 万
人にまで落ち込んでいます。また年齢構成も技能労働者全体
の 340 万人の約 5 割弱が 50 歳以上であり、60 歳以上が約
24% を占めています。国土交通省によるともう 5 年もする
と 100 万人近くの就労者が離職する可能性もあるとしていま
す。作業環境が厳しく、高齢化と離職者が急速に進む建設業
界の発展を維持する為に作業環境や生産性効率の向上は必須
課題で、i-Construction はそれを実現するツールとして大き 図 -1
く期待されています。
少し前の話に遡りますが、1998 年当時コンビニエンスス
トアなどに設置された ATM が盗難された重機によって根こ
そぎ強奪されるという事件をご記憶の方も多いのではないで
しょうか。重機に GPS を取付け、盗難に遭うと遠隔でロッ
クを掛けるシステムが導入され、この結果重機の盗難自体が
激減しました。
GPS は今 i-Construction を支える大切なツールになって
います。例えば、オーストラリアの広大な鉄鉱石採掘場を巨
大なブルドーザが無人で黙々と採掘作業を行っています。ド
ローンによって 3 次元測量されたデータが AI によって解析
され最も効率の高い掘削計画が GPS を経由し、現場に送信
図 -2
され、これを受けたブルドーザは無人運転で正確な作業を可
能にしています。稼働時間も集中管理され、所定の時間にな 油中の磨耗粉を測る清浄度センサ
るとメンテナンスを受ける事になります。メンテナンス時間 当社は、泡の影響を受けずに固形粒子だけを測定する技
が近くなるとスタンバイ機が用意され、掘削工事は途切れる 術を開発する事に成功しました。IoT、i-Construction、
事なく遂行されます。 Industrie4.0 という言葉が日常化しつつありますが、実現す
るためには様々な要素が必要です。信頼性の高い安定操業を
油圧装置の最大の敵・磨耗粉 実現する為には熟練工が判断する同じレベルで装置の状態が
しかし、i-Construction の導入の加速化に伴い、突発事故 判断できるセンサが必要です。当社の SWIFTROCKTM は異
は最適化された計画を阻害し、発生する損失も増大します。 常摩耗粉の起点を検知できますので装置の内部に深刻な損傷
ブルドーザに限らず油圧装置の最大の敵は固形粒子、つまり、 が発生する前に適切な対応を取る事ができ、結果として信頼
摩耗粉です。これは、長年に渡り摩耗について研究されてい 性の高い操業に貢献できます。当社の経営理念は「仕濾過事」
たマサチューセッツ工科大学Earnet Rabinowitz博士によっ (ろかじにつかふる)で「フィルタビジネスを通じて社会に貢
ても究明されています(図 -1)。巨額の損失コストが発生す 献する」という意味です。当
る装置には振動、異音、電流値等のセンサによって状態が監 社は建設機械用の油圧フィル
視されています。しかし、これらのセンサによって異常が検 タの分野で世界トップシェア
知された時は既に装置の内部で何らかの異常が発生してい を持ち、流体清浄化に関する
る事を意味します。異常摩耗粉発生の起点を読み取る事(図 経験と技術を活かし、IoT 化や
-2)によって重要な装置に致命的な損傷が発生する前に適切 貢献できる分野を更に拡大し
な対応策を取る事が可能になり、その結果性の高い操業を実 続けています。
現する事が可能になります。これまで、潤滑油中の固形粒子 SR_01
(摩耗粉)を測定する場合、泡の影響を受けてしまい、正確な 問い合わせは、ヤマシンフィルタ 産業フィルタ営業部まで
清浄度を測定する事はできませんでした。 ( 担当 : 江澤、電話 :045-680-1673)
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