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ロボット導入・自動化お役立ち情報 医薬・食品・ラボ編

ハンドブック

医薬品や食品等の開発・製造を行う企業様に向けて、ロボットを使った工場等の自動化に関するお役立ち情報をまとめました。

⑴液体や粉体をロボットでハンドリングする際のポイントは?
 ①液体・粉体のハンドリングをロボット化する目的
 ②液体・粉体のハンドリングにロボットを導入できる工程は?
 ③液体や粉体のハンドリングをロボット化する際に気を付けること
 ④液体ハンドリング工程ロボット化の事例紹介
⑵無菌環境下での自動化の課題
 ①医薬品製造( 無菌環境) におけるロボットへの滅菌について
 ②無菌環境下で自動化が可能な作業・工程
 ③無菌環境に対応可能なロボット
⑶医薬品のバリデーションとは?
 ①バリデーションを行う際の手順について
 ②医薬品のバリデーションの課題
⑷生の食品をロボットでピック&プレイスする際のポイントは?
 ①生の食品をロボットでピック&プレイスする工程と課題
 ②生の食品をロボットでピック&プレイスする際に重要なこと
⑸パウチをロボットピッキングする際のポイントは?
 ①パウチのピック&プレイスをロボット化できる工程は?
 ②パウチをロボットでピック&プレイスする際の課題とは?
 ③パウチのロボットピッキングにおける課題の解決方法

このカタログについて

ドキュメント名 ロボット導入・自動化お役立ち情報 医薬・食品・ラボ編
ドキュメント種別 ハンドブック
ファイルサイズ 6.3Mb
取り扱い企業 株式会社JRC(ALFIS) (この企業の取り扱いカタログ一覧)

このカタログの内容

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ロボット導入 自動化 お役立ち情報 医薬・食品・ラボ編 06-6543-8180 〒 550-0011 大阪市西区阿波座2丁目1番1号 CAMCO西本町ビル9階
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株式会社 JRC ロボットSI 事業本部 ロボット導入・自動化お役立ち情報⑤ 液体や粉体をロボットで ハンドリングする際のポイントは? 医薬品や食品、その他さまざまな製品の製造や開発のために、粉体状あるいは液体状の材料が 使用されています。固体状のものと比較してロボットでの扱いが難しいため、粉体や液体をハ ンドリングする工程は専用機以外では自動化し難く、大手企業でも手作業で行っていることが しばしばあります。 本コラムでは、ロボットで粉体や液体をハンドリングする際のポイントについて説明します。 1 液体・粉体のハンドリングを ます。 ロボット化する目的  吸い込んだり皮膚に触れたりすると危険 な薬品を扱う場合、十分に気を付けて作業  液体や粉体をハンドリングする工程はロ を行っても 100%事故を防ぐことはできませ ボットによる自動化が難しいため、自動化を ん。 行う場合、開発に時間や費用が多くかかって  危険な工程をロボットで自動化すると、人 しまいます。それにもかかわらず自動化のた が薬品に接する時間が減少し、暴露の危険が めの研究開発が行われており、弊社にもご相 あるのは準備や清掃時のみとなります。労災 談をいただくことがありますが、主に以下の の防止と作業の効率化を同時に叶えることが ような目的で液体・粉体のハンドリング工程 可能です。 の自動化が望まれているようです。 コンタミの防止 煩雑な繰り返し作業は負担が大きい  粉体や液体を作業でハンドリングする場  試薬を大量の試験官に一定量ずつ分注する 合、服装や工程などで対策をしても人間の組 といった、煩雑な繰り返し作業を一日中行う 織が混ざりこむ可能性がありますが、ロボッ ような工程が、研究開発や検査等の現場では トが作業を行えば人間からのコンタミは発生 珍しくはありません。非常に神経を使う作業 しません。ロボットはプログラム通りに動く であるため、作業者は心身ともに疲れてしま ため、人がうっかり作業をミスすることで起 います。 こるコンタミも起こりません。  作業者の負担軽減のためにこういった作業 を自動化する事は、人手不足の解消にもつな 2 液体・粉体のハンドリングに がります。 ロボットを導入できる工程は? 暴露の危険から作業者を守る  液体や粉体を扱粉う工程は多岐にわたりま  粉体や液体はその性質上、ハンドリング時 す。その中で、ロボットによる自動化に向い にこぼれたり舞い上がったりすることがあり ている工程をご紹介します。 1
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株式会社 JRC ロボットSI 事業本部 ロボット導入・自動化お役立ち情報⑤ 少量の液体や粉体をハンドリングする工程 り、直接触れなくても作業環境中にも漂って います。そのため、薬品が付着しても問題が  薬品を少量切り出す、分注するといった供 ない材質であったり耐薬品性の高い表面処理 給の工程や、容器を持ち上げて中身を攪拌す が施されていること、関節部分等から内部に るといった工程は、小型の協働ロボットや産 粉塵や帰化した薬品が侵入しない機密性、も 業用ロボット、直動ロボットなどを用いて自 し付着しても清掃が容易な材質や構造になっ 動化することが可能です。 ていることが重要です。 液体や粉体を入れる容器をハンドリングする ロボットの動作・プログラム 工程  ロボットが薬品の上空を通らないようなロ  薬品を入れるための容器は、空の状態でも ボットプログラムを組む必要があります。万 薬品と同様にコンタミ防止への配慮が必要と が一ロボット及びロボットがつかんでいる薬 なります。空の容器やその部品のライン投入、 品や容器から付着物が落ちて、コンタミが発 搬送、蓋の開け閉めなどといった工程も併せ 生することを防止するためです。 てロボット化するとより自動化の効果がよく ロボットシステムのメンテナンス性 なります。  点検や部品交換を通常より高頻度で行われ 少量の液体や粉体をハンドリングする工程 る可能性が高いため、メンテナンスが容易で  液体・粉体を検査機へ搬送、投入、取り出 あることが求められます。液体や粉体を扱う す作業や、良否判定後に振り分ける作業など 場合、メンテナンス不良により異物が混ざり はロボットで行うことが可能です。また、薬 こんだり作業精度が低下することを防ぐため 品の量や色をセンサで判別するなどロボット に、定期メンテナンスの実施が必須となるか 化に合わせて検査方法をよりロボット化に適 らです。 したものに変更すると、作業効率アップにつ ながります。 4 液体ハンドリング工程ロボッ ト化の事例紹介 3 液体や粉体のハンドリングをロ ボット化する際に気を付けること ALFIS で液体ハンドリングの自動化を行っ た事例をご紹介します。 人の手で行っている作業をロボットを用い 溶液の中和滴定自動化 て自動化する事で、手作業時は考慮する必要 のなかった新たな問題が発生することがあり ます。液体・粉体を扱う工程をロボット化す る際に注意すべき点をご説明します。 ロボット及び周辺機器の材質と構造 作業を行うロボットやハンドツールなどの 周辺機器に液体や粉体が付着する可能性があ 2
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株式会社 JRC ロボットSI 事業本部 ロボット導入・自動化お役立ち情報⑤  溶液の中和滴定作業を、3軸ロボットを用 いて全自動化しました。  空容器をラックから取り出し、レシピ通り に中和滴定を行い、中和滴定が完了し液体が 透明になったことをセンサで検知したら、蓋 を占めて完成品棚にしまう、という作業をす べてロボットが行います。 3
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株式会社 JRC ロボットSI 事業本部 ロボット導入・自動化お役立ち情報⑤ 無菌環境下での自動化の課題 無菌環境下で使えるロボットの種類 医薬品の製造・開発では、分注や攪拌といった作業が繰り返し発生し、それらは無菌環境下で 行われています。無菌状態を維持したまま作業をロボット化するためには、ロボットの材質や 表面塗装、構造が滅菌可能であることが必要です。 ロボットは、クリーン度 ISO クラス 5、保護等級 IP67 に対応できるものが推奨で、IP65 は必要 です。 また滅菌範囲が滅菌の行き届く構造であることも求められます。 1 医薬品製造 (無菌環境 )におけ 煩雑な繰り返し作業は負担が大きい るロボットへの滅菌について  紫外線殺菌は、紫外線を照射することで菌  医薬品製造工程では、コンタミ防止のため の DNA を破壊する殺菌方法です。 に滅菌が行われます。  液体の殺菌も可能で管理や自動化が容易、  ロボットが導入されている工程においては 残留物がなく短時間で完了することがメリッ 以下の 2 種類の滅菌・殺菌が行われます。 トとして挙がります。紫外線殺菌のデメリッ 過酸化水素滅菌 トには、物体の表面など紫外線の照射できる 部分のみに効果があること、紫外線により材  過酸化水素を用いた滅菌には、高濃度の過 質が劣化することなどがあります。 酸化水素ガスを用いる方法や、プラズマ化し  紫外線殺菌を含む工程の自動化では、ロ た過酸化水素ガスを用いる方法などがありま ボットアーム及びロボットハンドには紫外線 す。 に弱い樹脂などが使用できません。また、ロ  過酸化水素滅菌は低温低圧で行うことがで ボットの姿勢によって紫外線が遮られ殺菌が き、生成物は無害で残留毒性もありません。 行き届かなくなってはいけないため、装置の 一方で、浸透性はなく液体や粉末に対し滅菌 構造だけでなくロボットの動作にも工夫が必 を行うことは不可能です。 要です。  ロボットに過酸化水素滅菌を施す場合、過 その他の滅菌・殺菌方法 酸化水素で劣化しない表面塗装やステンレス 等腐食に強い材質が採用された機種を選ぶ必  ロボット化された工程には使用し難いもの 要があります。 も含めれば、様々な滅菌・殺菌方法が存在し  また、過酸化水素ガスがロボット内部に入 ます。次の表でよく使われる滅菌・殺菌方法 り込むと排出に時間がかかってしまいます。 を紹介します。 配線を痛める可能性もあるため、関節部の密 閉性も重要です。 4
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株式会社 JRC ロボットSI 事業本部 ロボット導入・自動化お役立ち情報⑤ 2 無菌環境下で自動化が可能な  包装工程では、カートナー等包装機への投 作業・工程 入や箱詰め、出荷用の段ボール詰めなどにロ ボットが使用されます。菌の発生だけでなく、  医薬品製造・開発では無菌環境下で行う必 製品およびパッケージの破損や汚損にも注意 要がある工程・作業が多数あります。その中 が必要な工程です。 で、ロボット導入を行いやすい工程や作業を ご紹介します。 3 無菌環境に対応可能な 製造・加工工程の自動化 ロボット  製造・加工工程では、薬品の注入・混合・  無菌環境下で使用されるロボットには、一 攪拌などをロボットで代替可能です。また、 般環境下でのロボット化とは異なり材質や構 製品容器などをコンベア上に整列させる、コ 造など必要条件が厳しくなるため、ロボット ンベアを載せ替える作業などもロボットが得 メーカーは無菌環境対応の特別なグレードの 意とする動作です。 ロボットを製造しています。 検査工程の自動化  代表的な無菌環境対応ロボットを紹介しま す。  検査工程では、検査機器への搬送・投入・ ストーブリ (株 )  取り出しなどをロボットで代替可能です。検 査機器やセンサー等と組み合わせることで、 TX ステリクリーンシリーズ 工程次第で良否判定から仕分けまですべてロ  TX ステリクリーンシリーズは産業用ク ボット化できる可能性もあります。 リーンルームロボットをベースに開発され 包装工程の自動化 た、除染工程用のロボットで、過酸化水素滅 菌が可能です。 5
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株式会社 JRC ロボットSI 事業本部 ロボット導入・自動化お役立ち情報⑤  特殊な表面仕上げやアームの密閉性に加 保護等級は MC シリーズが手首部 IP67、基 え、ケーブル類の配線がすべて底面からと 本部 IP65、MS シリーズが IP69K となってい なっており、高い保護性を持っています。 ます。  GMP(Good ManufaccturingProcesses) グ レ ー ド A に 対 応 し て お り、 保 護 等 級 は IP65 です。 ( 株 ) 安川電機 バイオメディカル用途向けロボット  ㈱安川電機はバイオメディカル領域向けの 産業用ロボットとして、単腕タイプで 3 種、 双腕タイプで 2 種のロボットをラインナップ しています。  産総研初ベンチャーである RBI 社が開発し た、ライフサイエンス研究のベンチワーク自 動化ロボット「まほろ」にも採用されていま す。  過酸化水素滅菌紫外線殺菌に対応してお り、 保 護 等 級 は 手 首 部 で IP67、 基 本 部 は IP65 です。 ( 株 ) デンソーウェーブ VS-050S2   過 酸 化 水 素 滅 菌 や 紫 外 線 滅 菌 に 対 応 で GMP グレード A に対応しています。  オプションとして医薬・医療等ロボットハ ンドが用意されており、ハンド部も本体同様 の滅菌が可能になります。  クリーン度は ISO クラス 5、保護等級は手 首部で IP67、基本部は IP65 です。 川崎重工業 (株 )  MCシリーズ /MSシリーズ  医薬品メーカー向けに作られた ISO クラ ス 5 のクリーン度を持つロボットで、過酸化 水素滅菌にも対応しています。  対薬液性の高い表面仕上げの MC シリーズ と、オールステンレス構造アルカリ洗浄も可 能、7 軸の自由度を持つ MS シリーズがあり、 6
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株式会社 JRC ロボットSI 事業本部 ロボット導入・自動化お役立ち情報⑤ 医薬品のバリデーションとは? 実施する上での負担について解説 バリデーション(validation)とは、直訳すると「確認」や「批准」という意味ですが、医薬品 においては、目的とする品質に適合する製品を恒常的に製造することが出来るか証明する品質 管理の方法の事をいいます。検証の際は製品の一部を採取して検査するだけでなく、製造手順 を検証・文書化する必要があります。これにより医薬品の品質が恒常的に維持できていること が保証され、安全性や有効性を確保することが出来ます。 バリデーションを実施することで、製造過程での、プロセスコントロールを可能とするための 一つの方法となります。 1 バリデーションを行う際の手 的に評価する必要があります。このため、同 順について 時的バリデーションには時間とコストがかか るという課題があります。  バリデーションを実施する製品やタイミン ② 予測的バリデーション グによって様々なバリデーションの手法が存 在します。製品の特性や変更の内容に応じて、  実際に製造する前にバリデーションを行う 最適なバリデーション手法を選択することが 手法のことです。つまり、製品を作る前に、 重要です。また組み合わせて行う事で効率的 生産する予定の製品についてのバリデーショ かつ正確なバリデーションを行うことができ ンを行い、生産プロセス中に問題が発生する ます。 前に問題を解決することを目的としていま  ここでは代表的なバリデーションの手法を す。 3つご紹介します。  問題点としては、テスト環境が実際の製造 ① 同時的バリデーション 環境と異なるリスクが発生することです。そ のため、上記の同時的バリデーションと併用  あるプロセスが行われている際に、そのプ して行われることが多いです。 ロセス中で得られたデータをすぐに検証する ③ 再バリデーション 手法です。例えば、薬を製造する際に、原料 を混ぜるプロセスで、混ぜ具合を測定し、そ  バリデーション済みの製品がその後に修正 の結果をすぐに検証することで、混ぜ具合の や変更が行われた場合に、その変更が製品に 不備を早期に発見することができます。 どのような影響を与えるかを再度確認するこ  同時的バリデーションの実施には、製品の とです。 開発段階から各成分や製造工程ごとに個別に  実施するタイミングとしては主に「製品設 バリデーションを行い、製品全体の安全性や 計の変更があった場合」「製造工程の変更が 有効性を保証するための情報を収集し、総合 あった場合」「製品の貯蔵状態や使用期限が 7
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株式会社 JRC ロボットSI 事業本部 ロボット導入・自動化お役立ち情報⑤ 変更された場合」「不具合や副作用などの報  バリデーションに必要な試験や検査、デー 告があった場合」などに行われます。 タ収集や解析、文書作成など、多くの時間と  また上記タイミング以外にも製品の品質や 労力が必要であり、それに伴い人員や機器な 安全性をより確保するために実施されること どの費用もかかります。このコストが膨らむ もあります。 ことによって、製品の価格が高くなってしま います。 IQOQPQ について  また資金力の弱い企業にとっては、バリ  IQOQ とはバリデーションの手順の一部 デーションを実施することが困難な場合があ で、設備や装置が正しく設置されていること ります。 (IQ)と、正常に動作していること(OQ)を 確認する作業です。IQ と OQ に加えてシス テムが効果的かつ再現性よく機能している か確認する(PQ)を合わせて「適格性確認」 と呼ばれています。  これらの手順は医薬品の品質を確保するた めの重要なものとして位置づけられます。 2 医薬品のバリデーションの課題  バリデーションは、製品の品質や安全性を 確保することができるため、医療機器や医薬 品の開発・製造・使用において重要なプロセ スの一つとなっています。しかしその実施に は下記のような課題が発生します。 実施する人員への負担  バリデーションの手順として、試験プログ ラムを作成し、試験条件を設定した上で、デー タの取得・分析・評価を行う必要がありま す。そのため実施するには多くの時間と労力 がかかります。尚且つ専門的な知識や技術が 必要になるため実施する人員への負担は大き くなってしまいます。  また製品の改良や修正が行われた場合、再 度バリデーションを行う必要があるため、そ のたびに人員の負担が発生します。 コストがかかってしまう 8
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株式会社 JRC ロボットSI 事業本部 ロボット導入・自動化お役立ち情報⑤ 生の食品をロボットでピック&プレイス する際のポイントは? 産業用ロボット技術の進歩とともに工場における各工程のロボット化が急速に進んでおり、そ れは食品業界においても例外ではありません。食品加工を行う工場では省人化や生産性の向上、 品質の安定などを目的として、様々な工程ロボットが導入されていますが、その中でも導入難 易度が高いのは包装前の生の食品を扱う工程です。 農林水産省では、人手不足が深刻化する食品製造業においてロボット導入等スマート化を推進 するために、ロボット等の先端技術を HACCP に沿って導入するためのガイドライン作成事業 なども行われています。 食品を次工程に搬送する単純なピック&プレイス作業であっても、ワークが生の食品である場 合には特有の課題がいくつもあります。本記事では、生の食品をロボットでピック&プレイス する際のポイントについて解説します。 1 生の食品をロボットでピック で重なった状態で流れてくると、ロボットは &プレイスする工程と課題 1つの大きな塊と認識し、製品を正常に判定 できない場合があります。又、製品供給量に  生の食品をロボットでハンドリングする工 むらがあるような場合もロボットが効率的に 程は、大きく分けて 2 つあります。材料を加 動くことができずに製品を取りこぼしてしま 工機へ投入する工程と、加工後の製品を包装 う場合もあります。 機へ投入する工程です。どちらの工程も、清 加工前工程での食品のピック&プレイス 潔さや食品に傷がつかない丁寧な搬送が求め られるだけでなく、形が不揃いな食品を 1 つ  加工機への投入工程において、ロボットで の装置でハンドリングする難しさなどもあり ピック&プレイスをしたい工程としてよく挙 ます。 げられるワークは、肉や野菜などの生鮮食品  また、食品製造業においては季節によって です。形が不揃いでピックしづらいだけでな 製品ラインナップが変化したり、多品種少量 く、製品が均一になるように大きさや重さを 生産を行っている現場も多く、工程が変われ 選んで投入するような工程では、人であれば ばピックするワークも変化します。段取り替 素早く判断して効率よく投入できても、ロ えに対応でき、さらに段取り替えの時間がか ボットでは重量センサやビジョンセンサを かりすぎないことが必要となってきます。 使った判断が必要となり、タクトタイムが落 ちてしまうといった課題もあります。  手作業の工程をロボット化するにあたり、  さらに、材料に異物混入や痛んでいる箇所 食品のロボットへの供給方法が課題になるこ がないかなどの品質チェックも必要です。人 ともあります。例えば製品同士がコンベヤ上 であれば適切なサイズを選びながら、品質を 9
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株式会社 JRC ロボットSI 事業本部 ロボット導入・自動化お役立ち情報⑤ チェックし不合格な材料をはじくといった作  また、食品加工機械と同様に高頻度で洗浄 業を同時に行えるため、生産スピード維持の や殺菌を行う必要があるため、高い清掃性が ために人手で行い続けている工場も少なくな 求められます。複雑な形状の部品や、継ぎ目・ いでしょう。 隙間の多い構造は清掃に時間がかかってしま 加工後工程での食品のピック&プレイス うため、シンプルで部品の少ない形状の方が 良いでしょう。  加工後の食品をピック&プレイスする際に  清掃の頻度や清掃すべき工程が増え、メン は、食品を傷つけないことが非常に重要で テナンス時間が伸びると、工程全体での生産 す。完成して品質に問題がない製品でも、欠 性低下につながりますので、汚れづらく、清 けや割れ等が発生するとない容量が不足した 掃しやすく、さらに汚れを見落とさないよう り、美観上の問題などで不合格品となってし に汚れている箇所が分かりやすい装置が適し まい、ロスが発生します。完成した製品を損 ています。 失させずに梱包工程へ送るために、ピック方 ② 食品を傷つけずに運べること 法を工夫することが求められます。  また、高速な搬送も求められます。食品の  加工前の食品材料に傷や割れ、欠けなどが 梱包においてはまず 1 つ 1 つ個包装し、複 発生すると、本来混入しないはずの皮が入っ 数個まとめて箱・カートン詰めたのちに出荷 てしまうなどの加工不良につながります。材 用の段ボール詰めるといったように、工程が 料の不具合を見落とすと最悪の場合同一ロッ 進むごとに大きくまとめられていきます。 トの製品すべて廃棄になったり、非常に大き  そのため、梱包前の状態では非常に速いコ な影響が出る可能性があります。 ンベヤで運ばれていることが多く、それに合  一方で、材料が生鮮食品である場合形状が わせてロボットを高速稼働させる必要があり 均一ではないため、変形させずに持ち上げる ます。 のは至難の業です。この課題をクリアするた め、たくさんのメーカーがロボットハンドの 2 生の食品をロボットでピック& 開発に取り組んでいます。 プレイスする際に重要なこと  加工後の食品の破損については、上述の通  生の食品をロボットでピック&プレイスす り製品ロスに直結します。ワークの特長に る際に重要なポイントとなるのは以下の 5 点 よって発生しやすい破損はさまざまです。 です。 <発生しやすい加工食品の破損例> ① 清潔さ・清掃性 ・冷凍食品等の固い製品…割れや欠けの発生  生の食品を扱う場合必ず求められるのが清 ・マドレーヌ等の柔らかい製品…変形や凹み 潔さです。 ・文字やキャラクターなどがプリントされた食品  …プリントが刷れて消える、にじむ  異物や最近等の混入を防ぎ衛生管理を徹底 ・トッピングの載っている食品 するために、汚れの付着や食品カスの発生な  …トッピングが落ちる どがしにくい材質・構造であることが望まし いです。  このように、食品によってどのように破損 10
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株式会社 JRC ロボットSI 事業本部 ロボット導入・自動化お役立ち情報⑤ するかが異なるため、ピック&プレイスする できるように設計することがロボットの導入 際に食品に直接触れるハンドツールを工夫す 効果を高めるカギとなります。 ることが必要です。JRC【ALFIS】ではロボッ トに搭載する食品用ハンドツールを、市販品 を使用せずオリジナルで開発することが多 く、長く食品搬送ロボットを取り扱ってきた ノウハウに基づいて設計しています。 ④ 不均一な形状への対応  食品加工機械で一気に生産された食品を 1 つ 1 つ個包装するような工程は、食品製造ラ インの中でも特に高速に稼働する工程です。 高速稼働できるロボットを採用したり、複数 個一気にピック&プレイスできるハンドツー ルを使うことで、ラインの速度に合わせて搬 送します。  高速搬送ができるロボットを導入すること で、人手で行っていた際に発生していたボト ルネックを解消し、生産性を向上させること も可能です。 ⑤ 多品種への対応  多くの中小規模の工場で多品種少量生産が 行われており、1 つの装置で対応できない工 程は人の手で行われています。工程の変化に 対応できる装置の開発が難しかったり、段取 り替えに時間がかかるのであれば人手で行っ た方が速く簡単に済む場合も多いためです。 こういった工場では、1 つのロボットで複数 のワークに対応できる状態でないと、生産計 画次第ではロボットの休眠期間が長くなるこ とで投資効果が低くなってしまいます。また プログラム変更で別のワークに対応できると しても、段取り替えに時間がかかれば生産効 率が落ちてしまいます。  品種の変更に合わせてロボットプログラム やハンドツールを取り換えながら運用するこ とになりますので、変更・交換作業が簡単に 11
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株式会社 JRC ロボットSI 事業本部 ロボット導入・自動化お役立ち情報⑤ パウチをロボットピッキングする際の ポイントは? パウチ容器は、密閉性の高さや省スペースで運搬・保管等の効率が良いため食品、化粧品、医 薬品など様々な製品の包装に使用されており、形状や材質など使用されているパウチの種類は 非常に多品種です。 本記事では、パウチを使用する生産ラインの中で、ピック&プレイス作業のロボット化を行う 場合の課題や解決方法についてご説明します。 1 パウチのピック&プレイスを がばら積み状態で入荷するため手作業で行っ ロボット化できる工程は? ている工場もありますが、3D ビジョンシス テムを活用することでロボットによる自動化  幅広い製品の包装にパウチが使われている が可能です。 ということは、パウチを扱う工程も多岐にわ パウチ済み製品の箱詰め たります。  その中には、自動機を使わず手作業で行わ  シャンプーやレトルト食品などパウチの状 れている工程も含まれており、ロボット導入 態で出荷・陳列される製品には、パウチを出 による自動化が可能な場合があります。 荷用の段ボールに詰める工程があります。  ロボット化が可能な工程の例を 4例ご紹介  コンベアから段ボールに移動させる単純作 します。 業の繰り返しはロボットが得意とするところ 成形、印刷後の空のパウチを箱詰め ではありますが、向きを交互に反転させ段 ボール内で内容物が偏るのを防いだり、合紙  パウチとパウチで包装される内容物は別の を挟んだりとただ箱に入れるだけではない場 工場で生産されるため、輸送時に段ボール箱 合も多く、手作業で行うと非常に簡単な箱詰 に詰める必要があります。決まった数ずつ素 め作業もロボット化には一工夫する必要があ 早く段ボールに詰める作業は、高速に動作で ります。 きるパラレルリンクロボットや産業用ロボッ  それでも単調な作業を長時間行うことによ トに向いています。 る精神的な負担や、重たい製品の場合は肉体 パウチにつけるスパウトの供給 的な負担もあるため、ロボット化したいとい うご相談の多い工程です。  詰換え用の洗剤など、スパウトがついたパ ウチの場合、パウチを溶着して閉じる際に成 小分けの調味料パウチをお弁当に入れる 形されたスパウトを挟み込みます。スパウト  お弁当や総菜等を作る工場での盛り付け工 を取り付けるための正しい位置・方向にスパ 程は、自動化が困難で今も手作業で行われて ウトを供給する作業は、成形されたスパウト いる場合が多くなっています。パック内に同 12
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株式会社 JRC ロボットSI 事業本部 ロボット導入・自動化お役立ち情報⑤ 梱されている醤油等の調味料を容器に入れる パウチを扱う工程の問題 工程は、料理をピック&プレイスとは異なり ワーク自体は破損しにくいため、ロボットを  ロボットでハンドリングしやすいパウチで 使用して自動化できる可能性があります。 も、工程によってパウチの状態は変わるため、 ロボット導入が難しいケースが存在します。 2 パウチをロボットでピック&  食品工場ではパウチ後にオートクレーブを プレイスする際の課題とは? 行うことがありますが、オートクレーブを 行ったパウチは表面が濡れているため、持ち  ピック&プレイスは単調な作業であり、長 上げた製品が滑って落ちる可能性がありま 時間繰り返すことを考えると軽そうに見える す。 ワークでも中々の重労働になります。従業員  ばら積み状態からのピッキングは、ビジョ の作業負担軽減や労災の防止のために、自動 ンシステムで 1 つ 1 つ認識してピックする 化を望む企業が多いにも関わらず手作業で行 ため、タクトタイムが伸びてしまい、手作業 われているのは、自動化を阻む課題が残って と比べて効率が悪化しがちです。 いるためです。  前述の透明パウチが複数個重なっていると  パウチのピック&プレイスをロボットで自 きは特に認識が難しく、一体化して大きな 1 動化する際の課題点についてご説明します。 個と認識されてしまったり、下にある物を先 パウチの特長による課題 に持ち上げようとしてしまいます。  パウチの形状や材質など、パウチ自体の特 3 パウチのロボットピッキング 長が原因でロボットでのピック&プレイスが 難しいケースです。 における課題の解決方法  内容物が固体の場合、凹凸がありさらに形  前項であげたように、ロボットでのピック 状にばらつきのある物などはピックしづらい &プレイス自動化には様々な課題がありま 傾向があります。総菜のパウチのような食品 す。 は、吸着ノズルでピックする際に強く押し付  ロボット SIer がロボット導入への課題に けると製品が変形してしまう可能性もありま 対しどのような方法で解決するのかをご紹介 す。 します。  内容物が液体や紛体の場合、持ち上げて移 ハンドツールを工夫する 動している途中で中身が偏りパウチが変形し ます。中身が偏ったことで重心の位置が変わ  ロボットのハンドツールには様々な種類が ると途中で落としてしまう、正確に箱に詰め ありますが、パウチのピック&プレイスでは られないなどの問題が発生しうるため、ロ 吸着ハンドがよく使用されます。吸着ハンド ボットの搬送速度を落とす必要があり、作業 は、パッドの選定が重要となります。 効率が低下します。  ロボットの速度ではタクトタイムが間に合  透明のパウチはピックの際、カメラで輪郭 わない場合、製品を複数個同時にピック&プ が認識できずピックに失敗することがありま レイスできるハンドツール作るといったよう す。 に、オリジナルのハンドツールを開発するこ 13
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株式会社 JRC ロボットSI 事業本部 ロボット導入・自動化お役立ち情報⑤ とで課題を解決します。  認識が難しい製品のロボットピッキングを  ALFIS では持ち上げにくいワークの時や、 検討する際には、ロボットシステム全体の設 ハンドツールに清掃性が求められる場合など 計の前に認識できるかどうかのワークテスト はハンドツールを自社開発します。 を行い、問題なくピック出来ることを確かめ てから全体の設計に移ります。 3個取り 1個取り 4つ爪 可変ピッチハンド 回転ハンド チャックハンド ラインを工夫する  ロボットでのピック&プレイスを可能にす るために、ロボット側ではなく製造ライン側 に対策を施す場合もあります。  製品を事前に整列する、表裏のある物は反 転機構を使用してそろえる、製品を供給する コンベア上で位置決めをするなど、手作業時 のラインからワーク供給の方法を変更しロ ボットでピックしやすい工程にすることで、 ピック&プレイスが安定します。  そのほかにもカメラではなく在席センサと 機構で認識しピックする、レイアウトを変更 しロボットでの搬送距離を減らすなどの方法 は、タクトタイムを短縮するためにも効果的 です。 ビジョンシステムを調整する  ビジョンシステムを使用したピック&プレ イスでは、反射があるワークや透けている ワークは正しい位置を認識できずピックに失 敗してしまいます。  こういった場合はカメラで認識するための 照明やビジョンシステムの閾値設定などのノ ウハウによって解決できる可能性がありま す。 14