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優れた効率、高いEMI性能をもたらすSilent Switcherレギュレータ

製品カタログ

Silent Switcher技術は、電源分野においてスイッチング・モード電源自体が開発されて以来最大の進化をもたらすものです。この技術に関連した技術記事など32ページにわたってご紹介するeBook。

Silent Switcherののノイズ・キャンセリング技術により、ノイズに敏感な多くのアプリケーションでEMI性能が向上し、また、効率、出力リップル、総ソリューション・サイズなどのシステム性能も改善しました。

Silent Switcherレギュレータは、サイズを犠牲にしたり過剰な外付け部品を必要としたりすることなく、高効率(最大96%)と低ノイズの性能を合わせ持った新たな性能レベルを実現します。Silent Switcherアーキテクチャは、独自の設計およびパッケージング手法を用いることで、非常に高い周波数での効率を最大化し超低EMI性能を実現しているため、極めてコンパクトで堅牢な設計を用いることでCISPR 25 Class 5のピークEMI制限を容易に満たすことができます。

最大65Vの高入力電圧、最大30Aの負荷電流、短い最小オン時間による高降圧比が可能であるため、産業、計測器および測定、ヘルスケア、航空宇宙、通信、オートモーティブ、エネルギー、データ・センターなど、ほとんどのアプリケーションに対して、最適なSilent Switcherソリューションがあります。

このカタログについて

ドキュメント名 優れた効率、高いEMI性能をもたらすSilent Switcherレギュレータ
ドキュメント種別 製品カタログ
取り扱い企業 アナログ・デバイセズ株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

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このカタログの内容

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優れた効率、高いEMI性能をもたらすSilent Switcherレギュレータ

優れた効率、 高いEMI性能をもたらす Silent Switcher レギュレータ VISIT ANALOG.COM/JP/POWER
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目次

目次 4 電源を体系的に理解する -- 優れた技術者は どのように設計を行っているのか 13 4スイッチ昇降圧コントローラの基板レイアウト、 シングル・ホット・ループでEMIを抑える 19 小さなフォーム・ファクタで高い電力密度を 28 静止電流2.5μA、超低EMI放射、42V、 2A/3Aピークの同期整流式降圧レギュレータ  11 要注目の記事 ► 電源設計用の半自動化ツール群、5つの作業ステップの効率を大きく高める ► 信号およびデータ処理回路用の超低ノイズ大電流小型DC/DCコンバータ・ソリューション ► シグナル・チェーン用の電源システムを最適化する 【Part 1】電源ノイズの許容レベルを把握する 26 要注目の製品 ► LTC3310S: 5V/10Aの同期整流式降圧Silent Switcher 2レギュレータ、         パッケージは 3mm×3mmのLQFN ► LT8652S: 静止電流が16μA、デュアルチャンネル、18V/8.5Aの同期整流式      降圧Silent Switcherレギュレータ ► LTM8060: 40V入力でクワッドチャンネルのSilent Switcher μModule®レギュレータ、 構成が可能な3Aの出力アレイを搭載 ► LT8645S: 静止電流が2.5μA、65V/8Aの同期整流式降圧Silent Switcher 2レギュレータ ► LT8609: 静止電流が2.5μA、42V/3Aの同期整流式降圧レギュレータ 32 設計ツールとビデオ ► デザイン・ノート: 65V入力/8A出力のモノリシック型降圧レギュレータ、   高速な過渡応答と極めて高いEMI性能を実現 ► ビデオ: モノリシック型のSilent Switcher 2降圧レギュレータ ► LTM8060のビデオ: 40V入力、クワッド3A出力のSilent Switcher μModuleレギュレータ ► LT8336のビデオ: 40V/2.5A、低静止電流の同期整流式昇圧Silent Switcherレギュレータ ► LTM8051のビデオ: Silent Switcher μModuleレギュレータ 2 優れた効率、高いEMI性能をもたらす SILENT SWITCHERレギュレータ 追 加 情 報 技 術 記 事
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LT8652S: Silent Switcher 2 レギュレータ

LT8652S: Silent Switcher 2 レギュレータ Silent Switcher® 2 どのような基板レイアウトでも 放射EMIを低減できる 降圧レギュレータ LT8652S、LT8653S ► 基板レイアウトに依存する影響を排除 ► 静止電流が極めて少ないBurst Mode®動作により、 出力リップル電圧を最小化 ► 各チャンネルから同時に最大8.5Aを出力可能 ご購入はこちら analog.com/jp/LT8652S
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電源を体系的に理解する――優れた技術者はどのように設計を行っているのか?、概要、はじめに、最もシンプルな電源回路はLDOレギュレータ

技術記事 電源を体系的に理解する―― 優れた技術者はどのように 設計を行っているのか? 著者: Frederik Dostal 概要 最もシンプルな電源回路はLDOレギュレータ 本稿では、電源の設計に関する基本的な事柄についてまとめ 最もシンプルな電圧コンバータ(電源回路)としては、LDO ます。その目的は、電源の設計技術の概要を理解し、再認識で (低ドロップアウト)レギュレータが挙げられます。LDOレギ きるようにすることです。まずは、一般的に使用されている絶縁 ュレータは、リニア・レギュレータの一種であり、スイッチン 型/非絶縁型の電源トポロジを取り上げ、それぞれの長所と短 グ・レギュレータとは対照的なものとして扱われています。リ 所を明らかにします。その上で、フィルタ処理など、EM(I 電磁干 ニア・レギュレータは、入力電圧と出力電圧の間に、値を調整 渉)を抑制するための技術について解説を加えます。 が可能な抵抗を挿入したものだと表現することができます (図1)。それにより、入力電圧の変化や、機器に流れる負荷電 はじめに 流の値にかかわらず、一定の電圧を出力します。 一般に、電子システムでは、エネルギー源から供給される電圧 と回路の動作に必要な電圧は異なる値になります。そのため、 入力電圧 出力電圧 VIN V リニア・ OUT 何らかの変換手段によって、回路の動作に必要な電圧を生成 レギュレータ しなければなりません。また、電子システムの中には、バッテ GND FB リを主電源として使用するものが数多く存在します。その場 合、バッテリを使用し続けていると、その出力電圧が低下して いきます。しかし、電圧の変換手段として適切なDC/DCコン 入力電圧 出力電圧 バータを適用していれば、バッテリに蓄積されたエネルギー 値の調整が 可能な抵抗 を使って、より長い時間にわたり多くの回路に電力を供給する ことができます。 図1. リニア・レギュレータの基本原理。 例えば、110VのAC電源から、マイクロコントローラなどのIC 入力電圧を基に、値の異なる出力電圧を生成します。 に直接電力を供給することはできません。そのような場合に 使用される電圧コンバータも電源と呼ばれています。あるい リニア・レギュレータは、AC電源に直接接続されることはあ は、電源回路と呼ばれることもあるでしょう。ほぼすべての電 りません。リニア・レギュレータとAC電源の間には、別の電 子システムは、そうした電圧コンバータを必要とします。その 圧コンバータが配置されます。その電圧コンバータとして ため、電圧コンバータは、長年にわたり各種の用途に適合する は、50Hz/60Hzの送電網に接続されたトランスを使って構成 ように最適化されてきました。最適化にあたっては、ソリュー されたものが長年にわたり使用されていました(図2)。この電 ションのサイズ、変換効率、EMIの発生量、コストなどが指標と 圧コンバータは、トランスの巻数比に応じ、システムに必要な電 して使われます。 圧よりも数V高く、レギュレートされていない出力電圧を生成し ます。その出力電圧をリニア・レギュレータに入力することによ り、電子システムに必要なレギュレートされた電圧が生成され ます。 4 電源を体系的に理解する――優れた技術者はどのように設計を行っているのか?
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スイッチング・レギュレータによる問題の解決、電源の絶縁、非絶縁型のトポロジ

110Vの 電源の絶縁 AC電源 中間電圧 出力電圧 VIN V リニア・ OUT 電源を設計する際、最初に考えるべきことは、ガルバニック絶 レギュレータ GND FB 縁が必要なのか否かということです。ガルバニック絶縁を使用 する理由はいくつか考えられます。例えば、回路の安全性を高 めるため、システムのフローティング動作を実現するため、ノイ 図2. 電源回路の構成。 ズの多いグラウンド電流が回路内の様々な電子デバイスに流 トランスの後段にリニア・レギュレータを配置します。 れることを防ぐため、といった具合です。一般的な絶縁型のト ポロジとしては、フライバック・コンバータとフォワード・コンバ 図2の構成が抱える問題点は、50Hz/60Hzに対応するトラン ータの2つが挙げられます。また、より大きな電力を得たい場 スの大きさと価格です。また、リニア・レギュレータは非常に多 合には、プッシュプル、ハーフ・ブリッジ、フル・ブリッジといった くの熱を生成するので、システム全体の効率が低下することも トポロジも使用されます。絶縁型のトポロジには必ずトランス 問題になります。実際、システムの電力が大きい場合には、リニ が必要になります。そのため、電源のサイズが大きくなり、コス ア・レギュレータで発生する熱を排除するのは困難です。 トが上昇します。要件を厳密に満たす市販品を入手するのが スイッチング・レギュレータによる問題の解決 難しく、カスタムの電源を設計しなければならないケースが少 なくありません。 上述した問題を解決するために考案されたのがスイッチン グ・レギュレータ(スイッチング電源)です。同レギュレータ 非絶縁型のトポロジ は、50Hz/60HzのAC電圧には依存しません。AC電圧を整流 ガルバニック絶縁が不要な場合には、非絶縁型のトポロジを選 し、はるかに周波数の高いAC電圧を生成することによって、は 択することになります。非絶縁型のスイッチング電源で最も一 るかに小型のトランスを使用できるようにします(DC電圧を直 般的に使われるトポロジは、降圧コンバータ(ステップダウン・ 接受け取ることもあります)。非絶縁型のシステムでは、入力電 コンバータ)です。降圧コンバータでは、正の入力電圧を基に 圧をLCフィルタで整流し、DC出力電圧を生成します。この方法 それよりも低い出力電圧を生成します。これは、スイッチング電 の長所は、ソリューションを小型化できることと、コストを比較 源の最も基本的な3つのトポロジのうちの1つです。その回路 的低く抑えられることです。出力するAC電圧の波形は、正弦波 では、主要なコンポーネントとして、2つのスイッチ、1つのイン である必要はありません。シンプルなPWM信号波形でも問題 ダクタ、2つのコンデンサを使用します(動作の制御を担うコン なく機能します。そのような信号は、PWM信号の発生器とスイ トローラICも使用します)。図3は、このトポロジの基本構造を ッチによって容易に生成することができます。 表したものです。ハイサイドのスイッチは、入力からの電流を 2000年ごろまで、上記のスイッチとしては、バイポーラ・トラン パルス化すると共に、入力電圧とグラウンド電圧に交互に切り ジスタが最も一般的に使用されていました。実用に耐えるもの 替わるスイッチング・ノードの電圧を生成します。インダクタと ではありましたが、スイッチング時の遷移速度が遅いという欠 コンデンサで構成されるLCフィルタは、スイッチング・ノードに 点を抱えていました。そのため、あまり高い電力効率は得られ 生じるパルス電圧を受け取り、DC電圧を出力します。ハイサイ ず、スイッチング周波数は50kHz、100kHzといった値に制限 ドのスイッチを制御するPWM信号のデューティ・サイクルに応 されていました。現在では、バイポーラ・トランジスタの代わり じ、様々なレベルのDC電圧を出力できます。この種の降圧コ に、スイッチング時の遷移がはるかに高速なMOSFETが使わ ンバータでは、非常に高い変換効率が得られます。また、わず れています。それによりスイッチング損失が少なくなり、スイッ かなコンポーネントしか使用しないので、比較的構築しやすい チング周波数としても最高で5MHzといった値を実現できるよ ものだと言えます。 うになりました。スイッチング周波数がそのような値であれば、 電力段では非常に小さなインダクタとコンデンサを使用する 入力電圧 出力電圧 ことができます。 スイッチング・レギュレータには多くの長所があります。まず、 電圧の変換において高い効率が得られます。また、昇圧と降圧 図3. 降圧コンバータの基本構造 のどちらにも対応できます。更に、比較的小型で低コストの設 計を実現することが可能です。もちろん、短所も存在します。1 降圧コンバータでは、入力側の電流をパルス化します。しかし、 つは、設計と最適化がそれほど簡単ではないということです。 出力側でインダクタから流れる電流は連続的です。つまり、入 また、スイッチング時の遷移とスイッチング周波数に依存して 力側は非常にノイズが多く、出力側はそれほどノイズがない状 EMIが発生することも欠点の1つです。アナログ・デバイセズの 態になります。低ノイズのシステムを設計したい場合には、この 場合、レギュレータICだけでなく、LTpowerCAD®やLTspice® ことを把握しておかなければなりません。 といった設計ツールも提供しています。それらを利用すれば、 複雑な設計プロセスを大幅に簡素化することが可能です。ま た、それらのツールをうまく活用すれば、スイッチング電源の設 計プロセスを半自動化することもできます。 VISIT ANALOG.COM/JP/POWER 5
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特殊なトポロジ

もう1つの基本的なトポロジは、昇圧コンバータ(ステップアッ 反転昇降圧コンバータの長所の1つは、どのような降圧コンバ プ・コンバータ)です。昇圧コンバータでは、降圧コンバータと ータICでも使用できることです。降圧レギュレータ回路の出力 同じ5つの基本的なコンポーネントを使用しつつ、異なる配置 を、単にシステムのグラウンドに接続するだけでよいからです。 で回路を構成します。具体的には、図4に示すようにインダクタ 同回路のグラウンドは、調整された負電圧になります。市販の を入力側に配置し、ハイサイドのスイッチを出力側に配置しま 降圧コンバータICを使用できるので、数多くの選択肢の中から す。昇圧コンバータは、入力電圧を基にそれより高い出力電圧 最適なものを選べばよいということになります。 を得たい場合に使用します。 特殊なトポロジ 入力電圧 出力電圧 上述した3つの非絶縁型トポロジの他にも、少し特殊なトポロ ジがいくつか存在します。但し、それらを使用する場合には、 いくつかのコンポーネントを追加しなければなりません。その ため、コストが上昇します。また、高い変換効率も得られませ 図4. 昇圧コンバータの基本構造 ん。一部の例外はあるものの、電力パスにコンポーネントを 追加すると損失が増加するからです。そうしたトポロジとして 昇圧コンバータ用のコントローラICを選択する際には、1つ注 は、SEPIC、Zeta、Ćuk、4スイッチ昇降圧などが挙げられます。 意すべきことがあります。それは、その種のICのデータシート これらは、3つの基本的なトポロジでは実現できない機能を備 では、最大出力電流ではなく、スイッチの最大定格電流が規定 えています。以下、各トポロジの最も重要な機能を紹介します。 されているということです。降圧コンバータの場合、最大スイ ッチ電流は、入力電圧と出力電圧の比とは関係なく、最大出力 X SEPIC 電流によって決まります。一方、昇圧コンバータでは、入出力電 SEPICコンバータでは、正の入力電圧を基に、それよりも高 圧の比が、取りうる最大出力電流に直接影響を及ぼします。そ い出力電圧またはそれよりも低い正の出力電圧を生成する の値が、スイッチの最大電流(固定値)を超えないように注意し ことができます。この構成は、昇圧レギュレータICを使用す なければなりません。このような観点からも、昇圧コンバータ ることによって実現できます。SEPICコンバータの欠点は、2 用のICを適切に選択するには、所望の出力電流だけでなく、設 つ目のインダクタ(あるいは1つの結合インダクタ)、 コンデ 計で使われる入力電圧と出力電圧を正しく把握しておかなけ ンサが追加で必要になることです。 ればなりません。 X Zeta 昇圧コンバータでは、入力側のノイズが非常に小さくなりま ZetaコンバータはSEPICに似ていますが、正の出力電圧 す。なぜなら、入力側のインダクタが電流の急激な変化を抑え だけでなく負の出力電圧も生成できます。また、右半面ゼロ るからです。但し、出力側ではノイズが非常に多くなります。出 (RHPZ: Right Half Plane Zero)がないため、レギュレー 力側のスイッチにはパルス電流が流れるので、降圧コンバータ ション用のループを簡素化することが可能です。このトポロ と比べてより大きな出力リップルが生じる可能性があります。 ジには、降圧コンバータICを使用することができます。 3つ目のトポロジは反転昇降圧コンバータです。これも、5つの X Ćuk 基本的なコンポーネントによって構成できます(図5)。反転昇 Ćukコンバータは、正の入力電圧を基に負の出力電圧を生 降圧コンバータという名称は、正の入力電圧を基に負の出力電 成します。入力側に1つ、出力側にも1つのインダクタを使 圧を生成することに由来しています。入力電圧は、反転出力電 用するので、入力側と出力側のノイズが非常に小さくなりま 圧の絶対値より高くても低くても構いません。特に回路構成を す。欠点は、このトポロジに対応しているスイッチング・レギ 変更することなく、5Vの入力電圧からでも24Vの入力電圧か ュレータIC製品があまり多くないことです。その理由は、レ らでも、-12Vの出力電圧を生成するといったことが行えます。 ギュレーション用のループに負電圧に対応するフィードバッ ク・ピンが必要になるからです。 入力電圧 出力電圧 X 4スイッチ昇降圧 4スイッチ昇降圧コンバータは、急速に普及しつつあります。 正の入力電圧を基に正の出力電圧を生成するものですが、 入力電圧は出力電圧より高くても低くても構いません。しか 図5. 反転昇降圧コンバータの基本構造 も、SEPICと比べて変換効率が高く、使用するインダクタも 1個です。そのため、SEPICからの移行が進んでいます。 反転昇降圧コンバータでは、スイッチング・ノードとグラウンド の間にインダクタを配置します。入力側にも出力側にも、パル ス化された電流が流れます。そのため、入力側、出力側共にノ イズが比較的多くなります。低ノイズであることが求められる アプリケーションでは、両側にフィルタを付加します。それによ り、この問題を解消します。 6 電源を体系的に理解する――優れた技術者はどのように設計を行っているのか?
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最も一般的な絶縁型トポロジ、高度な絶縁型トポロジ

最も一般的な絶縁型トポロジ アプリケーションによっては、ガルバニック絶縁が適用された 電力コンバータが必要になることがあります。その理由につい ては、上でも触れました。すなわち、安全上の懸念がある、様々 な回路が相互接続される大規模なシステムにおいてフローテ ィング・グラウンドを設ける必要がある、ノイズの影響を受けや すいアプリケーションでグラウンド電流のループを回避する必 要があるといったことです。最も一般的な絶縁型のトポロジと しては、フライバック・コンバータとフォワード・コンバータが挙 げられます。図6(上)がフライバック・コンバータ、同(下)がフォ ワード・コンバータです。 フライバック・コンバータは、通常は電力レベルが60Wまでの 用途で使用します。この回路では、スイッチがオンのとき、トラ ンスにエネルギーが蓄積されます。スイッチがオフになると、 そのエネルギーが2次側へ放出され、電力が出力されます。 このコンバータでは、適切な動作に必要なすべてのエネルギ ーがトランスに蓄積されます。そのため、容易に構成できるも のの、比較的大型のトランスが必要になるという欠点があり 図7. LTspice上で作成したフォワード・コンバータの回路図。 ADP1074を使用して、アクティブ・クランプ機能に対応する ます。このことが、電力レベルが低いアプリケーションで使用 絶縁型の回路を構成しています。 される理由です。 入力電圧 出力電圧 高度な絶縁型トポロジ フライバック、フォワードの他にも、トランスを使用するガルバ ニック絶縁型コンバータには、非常に多くのトポロジが存在し ます。以下、いくつかのトポロジについてごく簡単に説明してお きます。 入力電圧 X プッシュプル 出力 電圧 プッシュプル・コンバータは、フォワード・コンバータに似てい ます。但し、1個のローサイドのスイッチではなく、2つのアク ティブなローサイドのスイッチを使用します。また、トランス としてはセンター・タップ付きの1次巻線を備えるものが必 要です。プッシュプル・コンバータの長所は、フォワード・コン 図6. フライバック・コンバータ(上)と フォワード・コンバータ(下) バータと比べて低ノイズの動作が可能なことです。また、小 型のトランスを使用できることも長所の1つです。トランス フォワード・コンバータもよく使われている絶縁型トポロジで のBH曲線において、ヒステリシスは第1象限だけでなく第2 す。フォワード・コンバータは、フライバック・コンバータとは異 象限にもまたがります。 なる方法でトランスを使用します。スイッチがオンになってい X ハーフ・ブリッジ/フル・ブリッジ る際には、1次側の巻線にも2次側の巻線にも電流が流れます。 ハーフ・ブリッジ、フル・ブリッジの2つのトポロジは、通常、数 トランスのコアにはエネルギーは蓄積されません。スイッチン 百Wから数kWのレベルの大電力を必要とする場合に使用 グ・サイクルが終わるたびに、コアの磁気エネルギーを確実に されます。ローサイドのスイッチに加えてハイサイドのスイ 放出してゼロに戻します。そうすることで、スイッチング・サイク ッチも必要ですが、比較的小型のトランスを使って非常に多 ルを何回も経てもトランスが飽和しないようにします。コアか くの電力を伝送することが可能です。 らのエネルギーの放出は、様々な方法で実現できます。1つは、 小さなスイッチとコンデンサを追加したアクティブ・クランプ回 X ZVS 路を使用することです。 ZVS(Zero Voltage Switching)という用語は、大電力の 絶縁型コンバータについて説明する文脈でよく使用されま 図7は、LTspice上でシミュレーション用に作成したフォワード・ す。この種の回路は、LLC(インダクタ‐インダクタ‐コンデン コンバータの回路図です。コントローラICとして「ADP1074」 サ)コンバータとも呼ばれます。そのアーキテクチャは、非常 を使用し、アクティブ・クランプ機能を実現しています。図6に に高い効率を得ることを目的としたものになっています。共 示したフライバック・コンバータと比較すると、出力パスにイン 振回路を形成し、スイッチに印加される電圧/電流がゼロに ダクタが追加されていることがわかります。この追加のコンポ 近くなったところで、スイッチの切り替えを実施します。それ ーネントにより、実装スペースとコストに影響が及びます。し により、スイッチング損失を最小限に抑えます。ただ、設計の かし、フライバック・コンバータと比べてノイズの少ない出力 難易度が高いというのが短所の1つです。また、スイッチン 電圧を生成することができます。また、フライバック・コンバー グ周波数が固定値ではないので、EMIの問題が顕在化する タと同じレベルの電力を供給する場合、フォワード・コンバー 可能性があります。 タに必要なトランスのサイズは、はるかに小さく抑えられる可 能性があります。 VISIT ANALOG.COM/JP/POWER 7
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スイッチド・キャパシタ・コンバータ、デジタル電源、EMIに関する考察

スイッチド・キャパシタ・コンバータ もう1つのビルディング・ブロックは、レギュレーション用のアナ ログ・ループを置き換えるデジタル・ループです。この考え方 電力コンバータには、リニア・レギュレータとスイッチング・レギ 自体には合理性があり、実際、うまく機能します。ただ、その実 ュレータの他にもう1つのカテゴリがあります。それは、スイッ 装としては、ほとんどのアプリケーションにおいて、一部のパラ チド・キャパシタ・コンバータです。同コンバータはチャージ・ポ メータに対して何らかのデジタル的な変更を加えられる標準 ンプとも呼ばれます。スイッチとコンデンサを組み合わせて、 的なアナログ帰還ループが使われます。例えば、エラー・アン 電圧を増幅したり反転したりする機能を実現します。その最大 プのゲインをオンザフライで調整したり、ループ補償用のパラ の長所は、インダクタが不要であることです。スイッチド・キャ メータを動的に設定し、安定かつ高速なループを実現したり パシタ・コンバータは、供給が必要な電力が5W未満といった するといった具合です。純粋なデジタル制御ループを備えた 条件に合致する用途で使用されてきました。ただ、技術が大き 製品の例としては、アナログ・デバイセズの「ADP1046A」が く進化したことによって、最近ではそれよりもはるかに多くの 挙げられます。デジタル機能によって最適化できるアナログ制 電力を供給可能な製品が提供されています。図8は、コントロ 御ループを備えると共に、デジタル・インターフェースによる ーラICである「LTC7820」を使用して構成したスイッチド・キャ 制御が可能な降圧レギュレータとしては「LTC3883」がありま パシタ・コンバータの回路図です。この回路では、48Vの入力 す。 電圧を基に24Vの出力電圧を生成します。120Wの電力を供 給可能であり、変換効率は98.5%に達します。 EMIに関する考察 スイッチング電源を設計する際には、常にEMIに注意を払わな ければなりません。スイッチング電源では、非常に短い時間で スイッチをオン/オフし、大きな電流の流れを切り替えること になるからです。スイッチング速度を高めれば、システム全体 の効率が向上します。また、スイッチング時の遷移が高速にな れば、スイッチがオンになりかけている時間が短くなります。ほ とんどのスイッチング損失は、その期間中に発生します。図9 は、スイッチング・ノードにおける電圧波形を表しています。降 圧コンバータの場合、ハイサイドのスイッチに電流が流れるこ とによって高い電圧に達し、ハイサイドのスイッチに電流が流 れなくなることによって低い電圧に達します。 スイッチング・ ノードの電圧 図8. LTC7820を使用して構成したスイッチド・キャパシタ・コンバータ。 LTC7820は、固定比率の変換に対応するコントローラICです。 スイッチング スイッチ 時間 これを使えば、大電力を供給可能な回路を実現できます。 周波数に基づく ング時の サイクル 遷移時間 デジタル電源 図9. スイッチングのサイクルと 遷移時間 本稿で紹介したトポロジは、すべてアナログ電源としても、デ ジタル電源としても実装できます。ところで、デジタル電源と 図9を見ると、スイッチング電源において、ノイズは、制御され は実際にはどのようなものなのでしょうか。デジタル電源も、 たスイッチング周波数によって発生するだけでなく、周波数が スイッチ、インダクタ、トランス、コンデンサなどから成るアナ はるかに高いスイッチング時の遷移によっても発生することが ログ電力段を必ず備えています。デジタルの要素は、2つのビ わかります。通常、スイッチング動作は500kHz~3MHzの周 ルディング・ブロックに集約されます。1つは、デジタル・インタ 波数で行われます。 ーフェースです。そのインターフェースは、電子システムと電 しかし、遷移時間はわずか数ナノ秒しかない可能性がありま 源の間で会話を実現できるようにする役割を果たします。それ す。仮に遷移時間が1ナノ秒であるとしましょう。その場合、周 により、様々なパラメータをオンザフライで設定し、様々な動 波数軸で見ると、1GHzの位置に大きなスペクトルが現れるこ 作条件に応じて電源全体を最適化します。また、メインのプロ とになります。この1GHzの周波数とスイッチング周波数は、 セッサとの通信が行えることから、電源から警告フラグや故障 放射性エミッションと伝導性エミッションの形でシステムの内 フラグの情報を提供することが可能です。例えば、負荷電流が 外に影響を及ぼします。なお、レギュレーション用のループの プリセットされた閾値を超えたり、電源の温度が対応可能な範 発振や電源とフィルタの相互作用によって、その他の周波数 囲から逸脱したりしないかどうかをシステムで簡単に監視でき 成分が生じることもあります。 ます。 8 電源を体系的に理解する――優れた技術者はどのように設計を行っているのか?
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フィルタの適用

EMIを低減しなければならない理由は2つあります。1つは、電 LCフィルタの目的は、DC電力を通過させ、高周波の外乱を大 源から電力の供給を受ける電子システムの機能を保護する必 幅に減衰させることです。つまり、ローパス・フィルタとして機 要があるということです。例えば、システムの信号パスに分解 能させます。LCフィルタには極が2つあるので、高い周波数領 能が16ビットのA/Dコンバータ(ADC)が使用されているとし 域において40dB/decの減衰が得られます。フィルタのドロッ ましょう。そのADCが、電源からのスイッチング・ノイズの影響 プオフは比較的急峻ですが、その設計は特に難しくはありませ を受けるのは避けなければなりません。もう1つの理由は、周 ん。但し、プリント基板のパターンのインダクタンスなど、回路 囲に存在する様々な電子システムの機能も保護する必要があ の寄生要素から影響を受けることには注意が必要です。例え るということです。そのような保護を実現するために、世界中 ば、フィルタのモデリングを行う場合にも、主な寄生要素を盛り の国/地域では、様々なEMI規格が定められています。それら 込んでおく必要があります。その結果、フィルタのシミュレーシ の国/地域でシステムを運用するためには、それぞれのEMI規 ョンに非常に長い時間がかかることがあります。フィルタの設 格を満たさなければなりません。 計経験を持つ設計者の多くは、どのフィルタがどのように役立 EMIには、放射性のEMIと伝導性のEMIがあります。放射性の ったのか把握しています。そのため、新たなシステムの設計に EMIを低減する最も効果的な方法は、プリント基板のレイアウ 向けて、特定のフィルタを繰り返し最適化して使用するという トを最適化することです。あるいは、アナログ・デバイセズの ことも行われます。 Silent Switcher®のような技術を活用してもよいでしょう。例 フィルタを設計する際には、ボーデ線図によって伝達関数を確 えば、シールドを施した金属の箱の中に回路を入れれば、EMI 認する場合のように、小信号に対する挙動について考慮する必 は抑制できます。しかし、この方法はおそらく現実的/実用的 要があります。ただ、それだけでなく、大信号の影響にも注意を ではないでしょう。しかも、ほとんどの場合、非常に大きなコス 払わなければなりません。どのようなLCフィルタを使用する場 トがかかることになります。 合でも、電力はインダクタを通過します。急激な負荷トランジェ 一方、伝導性のEMIは、通常はフィルタを追加することによって ントが発生し、その電力を出力する必要がなくなった場合には 減衰させます。そこで、次節ではフィルタについて説明するこ どうなるでしょうか。インダクタに蓄積されたエネルギーは、ど とにしましょう。 こかに放出しなければならないはずです。そこで、まずはその エネルギーによってフィルタのコンデンサが充電されることに フィルタの適用 なります。フィルタが最も厳しい条件に対応できるように設計 RCフィルタは、最も基本的なローパス・フィルタだと言えます。 されていない場合には、蓄積された電力によって電圧のオーバ しかし、スイッチング電源の場合、基本設計のレベルでは必ず ーシュートが発生する可能性があります。その結果、回路が損 LCフィルタが使用されます。多くの場合、入力部、出力部に何 傷してしまうかもしれません。 らかのインダクタンスを直列に追加するだけで十分です。そう フィルタには、特定のインピーダンスが存在します。そのイン すれば、入力コンデンサ/出力コンデンサとの組み合わせによ ピーダンスは、フィルタの接続先となる電力コンバータのイ って、LCフィルタ(あるいはCLCフィルタ)が形成されるからで ンピーダンスと相互に作用します。それによって、動作が不安 す。フィルタとしてコンデンサだけを使用するケースもありま 定になったり発振が生じたりする可能性があります。こうした すが、電源のケーブルやプリント基板のパターンに存在する寄 問題に対処するためには、アナログ・デバイセズのLTspiceや 生インダクタンスを考慮すると、実際にはLCフィルタが形成さ LTpowerCADといったシミュレーション・ツールを利用すると れていることになります。インダクタとしては、コアを備えるイ よいでしょう。これらのツールは、問題が生じないようにフィル ンダクタを使用しても構いませんし、フェライト・ビーズを使用 タを設計する上で大いに役に立ちます。 しても構いません。 VISIT ANALOG.COM/JP/POWER 9
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Silent Switcher、パワー・マネージメントは必要不可欠、著者について

図10. LTpowerCADのフィルタ設計ツール。 降圧レギュレータ用の入力フィルタを設計している様子を示しました。 図10に、LTpowerCADが備えるフィルタ設計ツールの操作 つはずです。もちろん、経験の浅い方にとっても、両ツールは 画面を示しました。このツールを使えば、フィルタの設計が非 非常に心強い存在になります。実際、両ツールを活用すれば、 常に容易になります。 非常に短い時間で電力コンバータを設計し、最適化を図るこ とができます。本稿が、電源の設計を楽しむためのきっかけに Silent Switcher なれば幸いです。 放射性エミッションを低減するのは容易ではありません。多く の場合、何らかの金属材料を使用した特別なシールドが必要 になるでしょう。そうすると、大きなコストが発生してしまうか もしれません。スイッチング電源から発生する放射性エミッシ ョンを低減する方法は、長い間模索されてきました。アナログ・ デバイセズがこの問題の解決に向けて開発したのがSilent Switcher技術です。同技術は、電源の設計に大きなブレーク スルーをもたらしました。Silent Switcherでは、スイッチング 電源のホット・ループにおける寄生インダクタンスを低減しつ つ、ホット・ループを2つに分割して対称に配置することで、放射 性エミッションを相殺します。現在では、同技術を採用した数多 くの製品が提供されています。それらの製品では、従来の製品 と比べて放射性エミッションがはるかに小さく抑えられていま 図11. LTC3310Sを使用して構成したスイッチング・レギュレータ。 す。放射性エミッションを低減すれば、EMIをそれほど増加させ 同ICはSilent Switcherを採用しているので、 放射性エミッションを最小限に抑えることができます。 ることなく、スイッチング時の遷移速度を高めることが可能で す。そうすればスイッチング損失が減少するので、スイッチング 周波数をはるかに高く設定することができます。このようなイ ノベーションを果たした製品の一例としては「、LTC3310S」が 著者について 挙げられます。この製品は、5MHzのスイッチング周波数で動 作します。そのため、非常に低コストの外付け部品を使って、極 Frederik Dostalは、アナログ・デバイセズのパワー・ めてコンパクトな設計を実現することができます(図11)。 マネージメント・グループ(ミュンヘン)に所属する フィールド・アプリケーション・エンジニアです。2009 パワー・マネージメントは必要不可欠 年に入社しました。ドイツのエアランゲン・ニュルンベル 本稿では、電源回路に適用される様々なトポロジを紹介し、そ ク大学でマイクロエレクトロニクスについて学び、2001 れぞれの長所と短所を明らかにしました。併せて、様々な側 年からパワー・マネージメント分野の業務に携わってい 面から電源の設計について解説を加えました。電源の設計経 ます。アリゾナ州フェニックスで4年間にわたってスイッ 験を持つ技術者にとって、本稿で示した事柄は非常に基本的 チング電源を担当。それ以外にも、多様なアプリケー な情報であったかもしれません。しかし、そうした方にとって ション分野の業務に従事してきました。 も、LTpowerCADやLTspiceといったツールは非常に役に立 10 電源を体系的に理解する――優れた技術者はどのように設計を行っているのか?
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要注目の記事、電源設計用の半自動化ツール群、5つの作業ステップの効率を大きく高める、信号およびデータ処理回路用の超低ノイズ大電流小型DC/DCコンバータ・ソリューション、シグナル・チェーン用の電源システムを最適化する【Part 1】電源ノイズの許容レベルを把握する

要注目の記事 電源設計用の半自動化ツール群、5つの作業ステップの 効率を大きく高める 「標準的なアプリケーション」というものは存在しません。どのようなアプリケーシ ョンでも電源の設計は必須であり、その作業は常に複雑なものになります。そのた め、電源の設計の全自動化はいまだ実現されていません。しかし、包括的な半自動 設計ツールであれば既に利用できます。本稿では、電源の設計プロセスを5つの ステップとして示します。その上で、各ステップではどのような半自動設計ツールを 利用できるのか詳しく説明します。そうしたツールは、電源設計の初心者にも熟練者 にも大きな価値をもたらします。 今すぐダウンロード 信号およびデータ処理回路用の超低ノイズ大電流 小型DC/DCコンバータ・ソリューション フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、システム・オン・チップ(SoC)、 マイクロプロセッサといったデータ処理ICは、電気通信、ネットワーク、工業、オート モーティブ、アビオニクス、防衛などのシステム分野において、絶え間なくその適 用範囲を広げています。これらのシステムに共通する側面の1つが、増大し続ける 処理電力で、それに応じて電源の条件も厳しくなっていきます。設計者は、高出力 プロセッサに関わる熱管理の問題には十分な注意を払いますが、電源の熱管理に 関する問題の考慮が不十分になりがちです。トランジスタが詰め込まれたプロセッ サ自体とは異なり、低コア電圧で大電流が必要とされる場合は、最も厳しい条件に おける熱の問題を避けることはできません。これは、すべてのデータ処理システム 向け電源に共通する傾向です。 今すぐダウンロード シグナル・チェーン用の電源システムを最適化する 【Part 1】電源ノイズの許容レベルを把握する 通信分野から産業分野まで、あらゆるアプリケーションでは、収集、伝送、保存され るデータの量が激増しています。第5世代の移動通信システム(5G)は、その最た る例だと言えるでしょう。このような背景から、アナログ信号の処理を担うデバイ スにも、より高い性能が求められるようになっています。なかには、データ・レートに 換算してGSPSのレベルの速度が要求されるケースもあります。実際、イノベーショ ンは決して減速することはありません。次世代のエレクトロニクス・ソリューションに は、更なる小型化と電力効率の向上が求められるはずです。加えて、ノイズについ ても、より高い性能が要求されることになるでしょう。 今すぐダウンロード VISIT ANALOG.COM/JP/POWER 11
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LTM4700: μMODULEレギュレータ

LTM4700: µMODULEレギュレータ 効率が90%、 出力が100A~400Aの µModuleレギュレータ 上面、4側面、底面から冷却 LTM4700 VOUT1 X 100Aのシングル出力/50Aのデュアル出力に 0.5V~1 .8V 対応するµModule®レギュレータ 50A X 出力は最大400Aまで拡張可能 VIN LTM4700 シングル ( 評価用ボードは「DC2784A-C」) 100A X 12VINを1VOUTに変換 PMBus®/I²C VOUT2 0.5V~1 .8V ■ 出力が100Aの場合の効率は90% µModule® Regulator 50A ■ 温度上昇は47℃ (200LFMのエアフロー、25℃の周囲温度) 15mm × 22mm × 7.87mmのBGA ご購入はこちら analog.com/jp/LTM4700
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4スイッチ昇降圧コントローラの基板レイアウト、シングル・ホット・ループでEMIを抑える

技術記事 4スイッチ昇降圧コントローラの 基板レイアウト、シングル・ホット・ ループでEMIを抑える 著者: Yonghwan Cho、 Keith Szolusha 車載向けシステムで使用される電源回路は、厳しいEM(I 電磁 DHLのレイアウトでは、EMIを抑制するために、ホット・ループ 干渉)規格を満たす必要があります。放送用の周波数帯やモ のセラミック・コンデンサをパワーMOSFETの周囲に対称的に バイル・サービス用の周波数帯との干渉を避けなければなら 配置します。当社が考案した位置(インダクタの横とホット・ル ないからです。Silent Switcher®/Silent Switcher 2を適用 ープの外側)に検出抵抗を配置すれば、ホット・ループの面積を したDC/DCコンバータICを採用すれば、そうした規格を満た 非常に小さく抑えられます。そうすれば、ホット・ループがアン すのが容易になります。但し、どのような製品を選択した場合 テナとして機能してノイズが放散されるのを防ぐことができま でも、プリント基板のレイアウトは慎重に行わなければなりま す。このような対称性を実現しつつ、スイッチング・ノードを近 せん。本稿では、4つのスイッチを使用する昇降圧コントローラ くのインダクタに接続するにはビアが必要です。しかし、それ (以下、4スイッチのコントローラ)のレイアウト手法を紹介し によってホット・ループの面積が大きくなってしまう可能性があ ます。2つの具体的な実装例を示し、EMIチャンバを使ってそれ ります。筆者らのチームは、CISPR 25に準拠するEMIチャンバ らを評価した結果を示します。 を使用し、スイッチング・ノードの露出と面積の大きいホット・ 4スイッチのコントローラは、昇圧機能と降圧機能を1つのICに ループが、望ましくない伝導性エミッション(CE: Conducted 統合したものです。入力電圧が出力電圧よりも高い場合には、 Emissions)の発生につながることを確認しました。この傾向 降圧コンバータとして機能します。入力電圧が出力電圧よりも は、エミッションを減衰させるのが最も難しい30MHzよりも上 低ければ、昇圧コンバータとして動作します。入力電圧と出力 の帯域(FMの周波数帯)で特に顕著でした。 電圧が同等である場合には、4つのスイッチが同時にスイッチ もう1つのレイアウトでは、パワーMOSFETとホット・ループの ングする可能性があります。 コンデンサを再配置します。それにより、ホット・ループの面積 アナログ・デバイセズは、カリフォルニア州サンタクララにEMI を更に小さく抑えます。DHLとの対比で、このレイアウトをSHL チャンバを保有しています。パワー製品を担当する筆者らの と呼んでいます。SHLでは、スイッチング損失を低減できます。 チームは、レイアウトの異なるプリント基板を2つ用意し、その また、ホット・ループの面積とスイッチング・ノードの露出の最 EMIチャンバを使って評価を実施しました。2つのレイアウトの 小化によって、30MHzよりも上の帯域のCEを減衰させること うち1つは、当社独自のデュアル・ホット・ループ(以下、DHL)の が可能です。筆者らは、同じコントローラICとパワー部品を使 レイアウトです。その有効性を確認することが本稿の目的の 用し、DHL、SHLの各レイアウト手法を適用したボードのエミッ 1つです。もう一方は、新たに考案したシングル・ホット・ループ ションを比較しました。このような手法により、それぞれのレイ (以下、SHL)のレイアウトです。この手法を適用すれば、更に アウトの有効性を検証するということです。4スイッチのコント EMIを低減することができるはずです。これについて確認する ローラとしては「LT8392」を採用しました。同ICの評価用ボー ことも、目的の1つです。 ド「DC2626A」には、複数のバージョンがあります。ここでは2 つのバージョン(rev.2とrev.3)を使用して、EMIチャンバ内で 評価を実施しました。 VISIT ANALOG.COM/JP/POWER 13
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レイアウトの比較

SW1 SW2 SW2 SW1 (a) DHLの最上層 (b) SHLの最上層 (c) DHLの最下層 (d) SHLの最下層 (e) DHLのボード上面 (f) SHLのボード上面 図1. DHL、SHLのレイアウトとボード レイアウトの比較 近くに配置しています。それにより、ホット・ループの面積が最 図1に、DHLとSHLの基板レイアウトと組み立て後のボードを示 小化されていることに注目してください。 しました。各基板は、最上層(レイヤ1)、レイヤ2、レイヤ3、最下 層(レイヤ4)の4層で構成されています。図1には、最上層と最 DHLのボードでは、0402サイズのコンデンサのパッドの近く 下層のみを示しました。図1(a)に示すように、DHLのレイアウ にハンダ・マスクが設けられています。一方、SHLのボードで トでは、ホット・ループのコンデンサを中央のMOSFETの左右 は、1210サイズのコンデンサの接続性を高めるためにハンダ・ に配置しています。つまり、左右に全く同じホット・ループが形 マスクが剥がされています。インダクタのパッドの近くに設けら 成されます。スイッチング・ノードSW1、SW2のビアは、最下層 れたハンダ・マスクも、同じインダクタをSHLのボードで使用す (図1(c))とレイヤ3を介して、各ノードをメインのパワー・イン るために除去されています。ホット・ループが小さいほど、ルー ダクタに接続するために使用されます。SW1、SW2の銅のノ プのトータルのインダクタンスは小さくなります。そのため、LC ード(最上層)は、インダクタとMOSFETの熱を放散するために によるスイッチング・ノードのリンギングとスイッチング電流が 面積の大きい領域としてレイアウトされています。但し、広い範 抑えられ、スイッチング損失も減少します。また、ループを小さ 囲に露出したSW1、SW2の銅のノードは、エミッションの放射 く抑えれば、CEに影響を及ぼすREが低減し、30MHzより上の 源にもなります。このボードをシャーシ・グラウンドの近くに取 帯域におけるCEも低下します。 り付けると、シャーシとスイッチング・ノードの銅の間に寄生容 アナログ・デバイセズが提供する4スイッチのコントローラは、 量が形成されます。それにより、周波数の高いノイズがスイッ 制御機構としてピーク降圧/ピーク昇圧の電流モードを備えて チング・ノードからシャーシ・グラウンドに伝わり、システム内の います。この独自技術により、ホット・ループの最小化が可能に 他の回路に影響を及ぼします。CISPR 25に準拠するEMIチャ なっています。電流検出抵抗は、メインのインダクタに直列に接 ンバで言えば、高周波のノイズがEMIの測定装置とLISN(Line 続します。一方、競合他社のコントローラ製品は、制御機構とし Impedance Stabilization Network)のグラウンド・テーブ てバレー降圧/ピーク昇圧の電流モードを採用しています。そ ルに伝わることになります。露出したスイッチング・ノードは、ア の場合、電流検出抵抗は下側のMOSFETのソースとグラウンド ンテナとして機能するので、放射性エミッション(RE: Radiated の間に配置する必要があります。図2に示したのは、競合他社品 Emission)も生じます。 で推奨されているレイアウトです。 一方、SHLの最下層には(図1(d))、スイッチング・ノードの銅の 露出はありません。図1(b)に示すように、最上層ではホット・ル ープのコンデンサがMOSFETの片側だけに配置されます。ま SW1 L1 SW2 た、ビアを使用することなく、スイッチング・ノードをインダクタ VIN VOUT に接続することができます。 QL1 QL2 SHLのレイアウトでは、上下のMOSFETが整列していません。 QH1 QH2 RISNS ホット・ループの面積を最小限に抑えるために、一方を90°回転 CIN CIN RSENSE COUT COUT させて配置しています。図1(e)、同(f)の黄色の枠で囲まれた 部分が、それぞれDHLとSHLのレイアウトにおけるホット・ルー プです。SHLのホット・ループのサイズは、DHLのホット・ループ の半分程度になっていることがわかります。 GND LM5176 GND 図1(a)を見ると、DHLでは0402サイズのコンデンサがホット・ ループで2個使われています。それに対し、SHLではホット・ルー 図2. 競合他社品(「LM5176」)で プのコンデンサとして1210サイズのものをMOSFETのすぐ 推奨されているレイアウト 14 4スイッチ昇降圧コントローラの基板レイアウト、シングル・ホット・ループでEMIを抑える
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EMI性能の比較

黄色の枠で示したホット・ループの面積は、DHLやSHLのホット・ EMI性能の比較 ループよりも大きくなっています。また、電流検出抵抗の寄生イ 図3に、DHLとSHLのEMI性能を評価した結果を示しました。こ ンダクタンスにより、ホット・ループのトータルのインダクタンス の評価は、CISPR 25に準拠するEMIチャンバを使用して実施し が増加することになります。 ました。 80 60 SHL SHL 70 DHL DHL 50 60 40 50 40 30 30 20 20 10 10 0 0 –10 –10 –20 –20 0.1 1 10 100 0.1 1 10 100 周波数〔MHz〕 (a) 周波数〔MHz〕 60 40 SHL SHL 50 DHL 30 DHL 40 20 30 10 20 0 10 –10 0 –20 –10 –30 –20 –40 –30 –50 –40 –60 0.1 1 10 100 0.1 1 10 100 周波数〔MHz〕 (b) 周波数〔MHz〕 60 40 SHL SHL 50 DHL 30 DHL 40 20 30 10 20 0 10 –10 0 –20 –10 –30 –20 –40 –30 –50 –40 –60 0.1 1 10 100 0.1 1 10 100 周波数〔MHz〕 (c) 周波数〔MHz〕 60 50 SHL SHL DHL DHL 50 40 40 30 30 20 20 10 10 0 0 –10 –10 –20 0.1 1 10 100 1k 0.1 1 10 100 1k 周波数〔MHz〕 (d) 周波数〔MHz〕 図3. DHLとSHLにおけるEMIの評価結果(エミッションのピーク値と平均値)。 (a)は電圧法によるCEの測定結果(、b)は電流プローブ法によるCEの測定結果(距離は50mm)、 (c)も電流プローブ法によるCEの測定結果(距離は750mm)(、d)は垂直偏波のREの測定結果です。 VISIT ANALOG.COM/JP/POWER 15 RE(ピーク)〔dBµV/m〕 CE(ピーク)〔dBµA〕 CE(ピーク)〔dBµA〕 CE(ピーク)〔dBµV〕 垂直偏波 750mm 50mm 最大 RE(平均〕〔dBµV/m〕 CE(平均)〔dBµA〕 CE(平均)〔dBµA〕 CE(平均)〔dBµV〕 垂直偏波 750mm 50mm 最大
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熱の比較

図3には、CISPR 25のクラス5で定められた上限値も示してあ 図3(d)は、REの評価結果です。ご覧のように、DHLでもSHLで ります。容易に比較できるように、DHLの結果は青色、SHLの結 もほぼ同じような結果になります。ただ、DHLでは90MHzの辺 果は赤色でプロットしています。灰色のプロットは、評価環境の りにスパイクが生じています。その部分だけ、SHLと比べてRE ノイズ・フロアを測定した結果です。 が5dBµV/mほど大きくなっています。 ここでは、小さなホット・ループの有効性を示すために、DHL の最下層に露出したスイッチング・ノードを銅テープによって シールドしました(図4)。このシールドを施さなければ、DHL のエミッションは図3に示した結果よりもはるかに大きくなり ます。なお、評価の対象となる電源回路は、入力を13V、出 力を12V/8Aに設定し、4スイッチのスイッチング・モードで シールド シールド された された 動作させました。 SW2 SW1 図3(a)は、電圧法によってCEのピーク値と平均値を測定した 結果です。DHLと比較すると、SHLでは30MHz以上の帯域で CEが5dBµVほど低く抑えられています。また、ピーク値と平均 値のいずれも、CISPR 25のクラス5で定められた規格を満たし ています。一方、DHLの平均値については、黄色の枠で示した ように、FM帯とVHF帯(68MHz~約108MHz)において規格 値を上回っています。 図4. DHLの最下層のスイッチング・ノード。 こうした周波数範囲でエミッションを5dBµV低減するという SW1とSW2にシールドを施しています。 のは、非常に難しいことです。SHLは、30MHzという減衰が 最も困難な周波数領域で有効に機能します。それだけでな 熱の比較 く、AM周波数帯(0.53MHz~約1.8MHz)を含む低い周波数帯 (2MHz未満)でもエミッションを低く抑えられます。エミッショ 図5に示したのは、DHLとSHLの熱画像です。入力電圧は ンは小さいに越したことはありません。特にCEは、電気的に接 9.4V、SSFM(Spread Spectrum Frequency Modulation) 続されたシステム全体に影響を及ぼします。したがって、CEは 機能はオンという条件で取得しました。9.4Vというのは、4スイ 小さければ小さいほどよいと言えます。 ッチで動作する最小電圧です。2スイッチの純粋な昇圧モード に切り替わり、出力電圧が12Vになる直前の電圧に相当しま CISPR 25のクラス5では、もう1つの測定方法として電流プロ す。これは、最も厳しい評価条件であると言えます。 ーブ法を定めています。電圧法では、コモンモードと差動モー ドの両方が混合したCEを測定します。それに対し、電流プロ DHLで最も高温になるコンポーネントは、昇圧側の下側の ーブ法では、被測定デバイスから50mmまたは750mm離れ MOSFETです。SHLでも温度はほぼ同等でした。SHLの場合、 た位置でコモンモードのCEを測定します。図3(b)、同(c)は、 最下層に、熱を放散できるスイッチング・ノードのビアや銅は存 電流プローブ法によってDHLとSHLのCEを測定した結果で 在しません。しかし、ホット・ループが小さいので、スイッチング す。黄色い枠で示したように、30MHzよりも高い帯域、特に 損失はDHLよりも少なく抑えられます。また、スイッチング・ノ FM周波数帯において、SHLの方がCEを抑えられることがわ ードでビアを使用しないことから、MOSFETのドレインのパッド かります。電圧法でCEを測定した場合とは異なり、AM周波数 とスイッチング・ノードの銅の接触領域がDHLよりも大きくなり 帯付近の低周波領域では、DHLに対するSHLの優位性はほと ます。そのため、最上層における熱の放散性能は高くなります。 んどありません。 90.0 90.0 84 84 80 80 76 76 72 72 68 68 64 64 60 60 56 56 52 52 48 48 44 44 40 40 36 36 32 32 28 28 24 24 20.0 20.0 °C °C (a) (b) 図5. 各ボードの熱画像。 (a)がDHLのボード(、b)がSHLのボードです。 16 4スイッチ昇降圧コントローラの基板レイアウト、シングル・ホット・ループでEMIを抑える
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まとめ、著者について

まとめ 本稿で示した評価結果から、4スイッチのコントローラにはSHL 著者について のレイアウト手法が最適であることがわかりました。このレイ アウト手法は、大出力に対応する新たな昇降圧コントローラ Yonghwan Choは、アナログ・デバイセズ(米カリフォ 向けのものとして推奨されます。スイッチング・ノードの露出 ルニア州サンタクララ)のシニア・アプリケーション・エン とホット・ループの面積が最小化されているので、熱の問題を ジニアです。車載用途に適した4スイッチの昇降圧レギュ 引き起こすことなく、CEとREの両方を大幅に低減することが レータやLEDドライバなど、DC/DCスイッチング・レギュ できます。特に、減衰させるのが最も困難な30MHzより上の レータ製品を担当しています。2017年にノースカロライ 帯域でもCEを抑制することが可能です。アナログ・デバイセ ナ州立大学で電気工学の博士号を取得しています。 ズは、4スイッチのコントローラとして「、LT8390/LT8390A」、 Keith Szolushaは、アナログ・デバイセズ(米カリフォル 「LT8391/LT8391A」「、LT8392」「、LT8393」「、LT8253」 ニア州サンタクララ)のアプリケーション・ディレクタで などの製品を提供しています。これらの製品は、制御機能とし す。2000年からBBIパワー製品グループに所属し、主に てピーク降圧/ピーク昇圧の電流モードという独自技術を採 昇圧型、昇降圧型のDC/DCコンバータ製品やLEDドラ 用しています。この機能により、競合他社の製品と比べてホッ イバ製品を担当。また、電源製品向けEMIチャンバの管理 ト・ループの面積をはるかに小さく抑えられます。すなわち、 も担っています。マサチューセッツ工科大学で1997年に この制御機能は効率の向上とEMIの低減に貢献します。その 電気工学の学士号、1998年に同修士号を取得。テクニカ ため、アナログ・デバイセズの4スイッチの昇降圧コントローラ ル・ライティングの集中コースも修了しています。 は、車載アプリケーションをはじめとするEMIに敏感なアプリ ケーションに最適です。 VISIT ANALOG.COM/JP/POWER 17
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ADM2867E: 電源絶縁型トランシーバー

ADM2867E: 電源絶縁型トランシーバー 電源絶縁型の RS-485トランシーバー 設計時間の短縮 ADM2867E X EMCの要件に適合可能な放射エミッション X 簡素な基板レイアウト、フォーム・ファクタが小さい SOIC X 内蔵スマート機能により、最終システムの導入と デバッグにかかる時間を短縮 詳細はこちら analog.com/jp/ADM2867E
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小さなフォーム・ファクタで高い電力密度を、背景

技術記事 小さなフォーム・ファクタで 高い電力密度を 著者: Steve Knoth 背景 ムに浸透しています。特にFPGAは、上に挙げた分野における GPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)やFPGA(フィ 最先端のアプリケーションに使用される傾向があります。例え ールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)など、電力密度が高く ば、自動車の分野では、人的ミスによる大惨事を防止するため 先進的なICがより広く使われるようになっています。より低い のADAS(先進運転支援システム)や衝突回避システムで使わ 電源電圧で動作するものの、高速かつ高度な処理を行うため、 れています。同様に、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)、 大量の電流を消費するデジタルICに対する需要が高まってい 横滑り防止システム、電子制御型のインディペンデント・サスペ るのです。具体的には、多くの機能が求められる以下のような ンション・システムなど、行政機関が搭載を義務付ける安全機 分野で使用されるケースが増えています。 能もFPGAを使って実現されています。 民生用エレクトロニクスの分野では、IoT(Internet of Things) X 自動車 、洗練されたグラフィックス・エンジン、M2M(Machine-to- X 医療 Machine)などに対応する機能の必要性が高まっています。そ X テレコム れらを実現するためにも高度なデジタルICが使用されます。ま X データコム た、大規模なデータ・ストレージ、クラウド・コンピューティング・ センター、光ネットワーク・モジュールから成る広大なネットワ X 産業 ークなども、FPGAなどに対するニーズを喚起しています。 X 通信 X ゲーム 上述したようなデジタルICは、システムを構築する上で強力な 武器になります。その一方で、ある意味、予測が不可能な側面 X 民生用オーディオ/ビデオ を持つので注意が必要です。その代表的な例が電力に関する 要件です。従来、FPGAやASICの給電には、大電力に対応する これだけ多様な市場に普及しているわけですから、低電圧/大 MOSFETを駆動できる高効率のスイッチング・コントローラ 電流のデジタルICに対する需要が世界中で爆発的に増加して IC(スイッチング・レギュレータを構成するDC/DCコントロー いることも意外ではないでしょう。実際、この種のICの市場規 ラ)が使われていました。しかし、そうしたコントローラをベース 模は、現時点で18億米ドル(約1960億円)以上と見積もられ とする電源には、ノイズの問題が潜んでいます。また、過渡応 ています。また、2018年から2025年の間には、年間10.87% 答が比較的遅く、プリント回路基板のレイアウトに制約がある のペースで成長を遂げ、37億米ドル(約4035億円)の規模に といった問題もあります。そこで、デジタルICの給電には、小型 達すると予想されています。この市場で大きなシェアを占める かつ低ノイズで、発熱を最小限に抑えられるLDO(低ドロップ 製品の1つがFPGAです。その市場規模は、2025年末までに アウト)レギュレータが使用されるようになりました。ただ、LDO 15億3000万米ドル(約1670億円)に達すると見込まれてい レギュレータにも固有の制約があります。このような背景から、 ます。FPGA以外に、デジタルIC市場の製品としては、GPU、マ 電力変換のイノベーションとして新たなソリューションが採用 イクロコントローラ、マイクロプロセッサ、PLD(プログラマブ されるようになりました。それが大電力に対応可能なモノリシ ル・ロジック・デバイス)、DSP(デジタル・シグナル・プロセッサ) ック型のスイッチング・レギュレータICです。そうした製品であ 、ASIC(特定用途向けIC)が挙げられます。 れば、低ノイズ、高効率であることに加え、最小限の実装面積で 電力密度の高いデジタルICは、ほぼすべての組み込みシステ デジタルICに対して効率的に給電を実施することができます。 VISIT ANALOG.COM/JP/POWER 19
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スイッチング・レギュレータ vs.チャージ・ポンプ vs. LDOレギュレータ、モノリシック型降圧コンバータが抱えていた課題、Silent Switcherを適用した新たな降圧コンバータ・ファミリ

スイッチング・レギュレータ vs. 加えて、レギュレータに許される実装面積は、絶えず縮小して チャージ・ポンプ vs. LDOレギュレータ います。多くのシステム設計者は、電源に使用する部品のサイ 低電圧/高電流の降圧レギュレーションは、様々な方法で実現 ズとソリューション全体のサイズを縮小するために、高いスイ できます。ただ、それぞれに性能と設計の面でトレードオフが ッチング周波数で動作するモノリシック型のスイッチング・レ 存在します。スイッチング・レギュレータ用のコントローラICを ギュレータを採用するようになりました。但し、その種のレギ 使えば、広い電圧範囲にわたり多くの負荷電流に対して高い ュレータは、周波数が高くなるとスイッチング損失によって効 効率を得ることができます。但し、インダクタ、コンデンサ、FET 率が低下するという問題を抱えています。新世代のモノリシッ といった複数の外付け部品が必要になります。また、高い周波 ク型スイッチング・レギュレータでは、この問題が解消されて 数のノイズ源、あるいは低い周波数のノイズ源になる可能性 います。そうした製品では、ハイサイドとローサイドの内蔵ス もあります。インダクタを必要としないチャージ・ポンプ(スイ イッチが同期動作を行うので、スイッチのゲート電圧を厳密に ッチド・キャパシタ方式の電圧コンバータ)も、低電圧の生成に 制御することが可能です。それにより、デッドタイムを大きく 使用できます。但し、出力電流の面で制約があることに加え、過 削減し、高いスイッチング周波数でも高い効率が得られるよう 渡応答性能が低く、複数の外付け部品が必要になります。その になっています。 ため、チャージ・ポンプはデジタルICの給電にはあまり使用さ 大電流に対応するモノリシック型のスイッチング・レギュレータ れません。リニア・レギュレータ(特にLDOレギュレータ)は、2 は、いくつかの課題を抱えています。その1つは、ICの電力損 個の外部コンデンサを付加するだけで動作するという点でシ 失に伴う熱をどうやって発散するかということです。この課題 ンプルです。しかし、入出力間の電位差、負荷に流すべき電流 は、次のような方法で解決できます。すなわち、複数の電源ピ 量、パッケージの熱抵抗によって電力が制限されることがあり ンとグラウンド・ピンに加えて、ICから基板に熱を容易に伝導で ます。その結果、デジタルICへの給電能力にも制約が生じる きる銅ピラーを備え、熱特性が強化されたラミネート・パッケ ことになります。 ージを採用することです。それらの電源ピンに基板上の大き な銅プレーンを接続することにより、更に均等に熱を拡散する モノリシック型降圧コンバータが抱えていた課題 ことができます。 ムーアの法則の先見性と正当性は、1965年に提唱されて以 来、実証され続けています。ICの製造プロセスは、より微細な Silent Switcherを適用した ゲート長や配線幅を実現する方向で進化を続けており、デジタ 新たな降圧コンバータ・ファミリ ルICの動作電圧も継続的に低下しています。プロセスの微細 高性能のデジタルICへの給電に使用する降圧コンバータは、 化が進むと、ICにはより多くの機能をより高い密度で集積でき 以下のような特徴を備えている必要があります。 るようになります。その一方で、電力は大量に消費されるように なります。例えば、最新のコンピュータ・サーバや光通信ルーテ X 外付け部品のサイズを最小限に抑えるための ィング・システムでは、より多くのデータとトラフィックを処理す 高いスイッチング周波数 るために、より広い帯域幅が必要になります。そうしたシステム X 高い周波数における効率を最大化するための は大量の熱を発生するので、非常に効率の良いレギュレータが ゼロ・デッドタイム設計 必要になります。また、自動車には、エンターテインメント、ナビ X ゲーション、自動運転、エンジンの制御などを目的として、より ソリューションのサイズを縮小するためのモノリシック型 多くのエレクトロニクスが搭載されるようになりました。その結 パワー・デバイス(COB[Chip on Board]デバイス) 果、システムに必要な総電力とそれに伴う消費電流が増加しま X 多くの出力電流を供給しつつ、リップルを低減するための す。したがって、レギュレータには、かつてないほどの電力を供 並列動作を可能にするマルチフェーズ機能 給しつつ熱を効率良く発散するために、最先端のパッケージと X システムにおけるノイズの要件を満たすための 内部回路の革新的な設計が求められます。 高いEM(I 電磁干渉)性能 レギュレータに求められる重要な要素としては、電源電圧変動 X 効率を高め、電力損失を最小限に抑えるための同期動作 除去比(PSRR)と出力電圧ノイズが挙げられます。PSRRが高い X 設計、品質評価、テストを容易化するための簡素な設計 レギュレータであれば、入力部でノイズを除去し、クリーンで安 X 出力リップルが非常に小さい 定した出力を生成することができます。また、広い帯域幅にわ たり、出力電圧ノイズ(または出力リップル)が小さく抑えられ X 高速な過渡応答 ていることも重要です。一般的なデジタル・システムでは、複数 X 広い入出力電圧範囲 種の電源電圧が使用され、ノイズに対する感度が設計時の主 X 大電流を供給できる 要な検討項目になります。例えば、ハイエンドのFPGAに対す X 優れた熱性能 る速度の要求が高まるなか、ビット・エラーを最小限に抑えるた めには、電源ノイズをより小さく抑えなければなりません。高速 X 実装面積が小さい なPLDにおいてノイズに起因する障害が発生すると、データの 実質的なスループットが著しく低下します。多くの電流を流し 上記の特徴を兼ね備えるモノリシック型降圧レギュレータ ている際の入力電源ノイズは、電源に課せられる非常に厳しい としては、アナログ・デバイセズのPower by LinearTM製品 仕様の1つです。 「LTC33xxファミリ」が挙げられます。同ファミリには、出力電 流の異なる多くの製品が用意されています。最も多くの出力電 FPGAなどでは、トランシーバーの速度が高いほど、回路のス 流に対応できるのは「LTC3310S」です。5Vの入力、10Aの出 イッチングに伴う消費電力(電流)が多くなります。その種の高 力に対応する同期整流方式の製品であり、高い電力密度と優れ 速ICの場合、数十ナノ秒から数百ナノ秒の間に負荷電流がほ たEMI性能を特徴とします。Silent Switcher(® サイレント・スイ ぼゼロから数Aまで増加することがあります。したがって、過渡 ッチャ) 2 技術が適用されており、9mm2のパッケージを採用し 応答が非常に高速なレギュレータが必要になります。 ています(電力密度は1.11A/mm2)。 20 小さなフォーム・ファクタで高い電力密度を