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信頼できる電源製品 バッテリ駆動に適した高効率のソリューションを実現する

製品カタログ

アナログ・デバイセズの電源製品に関連した技術記事や製品紹介など、30ページのeBookとしてまとめました。

掲載技術記事一例
・あらゆる種類のバッテリに対応できるシンプルなチャージャIC
・小型アセット・トラッカの寿命を延長
・バックアップ電源により、給電の途絶を回避する

注目の製品一例
・MAX16162:グリッチフリーの起動を実現するnanoPowerの電源監視IC
・LTM4668:クワッド出力のDC/DC μModuleレギュレータ、構成が可能な1.2A出力のアレイを搭載
・ADR3412:1.2V出力、高精度、マイクロパワーの電圧リファレンス

このカタログについて

ドキュメント名 信頼できる電源製品 バッテリ駆動に適した高効率のソリューションを実現する
ドキュメント種別 製品カタログ
取り扱い企業 アナログ・デバイセズ株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

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このカタログの内容

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信頼できる電源バッテリ駆動に適した高効率のソリューションを実現する

信頼できる電源 バッテリ駆動に適した 高効率のソリューションを実現する VISIT ANALOG.COM/JP/BATTERYPOWERED
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目次

目次 技術記事 5 あらゆる種類のバッテリに対応できる シンプルなチャージャIC 13 「 ねぇ、ぼくの電源コードはどこ?」 19 小型アセット・トラッカの寿命を延長 25 バックアップ電源により、給電の途絶を回避する 追加情報 11 要注目の記事 ► IoTアプリケーションに最適な最新のパワー・マネージメントIC ► より小型で便利なキャリブレータ、ソフトウェアによる構成が可能なアナログI/Oで実現 ► スーパーキャパシタを利用した無停電電源のシンプルな設計 23 要注目の製品 ► MAX16162: グリッチフリーの起動を実現するnanoPowerの電源監視IC ► LTM4668: クワッド出力のDC/DC µModuleレギュレータ、 構成が可能な1.2A出力のアレイを搭載 ► ADR3412: 1.2V出力、高精度、マイクロパワーの電圧リファレンス ► LT8640S: Silent Switcher 2を採用した42V入力/6A出力の 同期整流式降圧レギュレータ、自己消費電流は2.5µA ► MAX38888: バックアップ電源用の反転/昇降圧レギュレータ、 出力電圧は2.5V~5.0Vで出力電流は0.5A/2.5A ► MAX31875: I2Cに対応する低消費電力の温度センサー、パッケージはWLP ► LTC4162-L: マルチセルのリチウム・イオン・バッテリに対応する35V入力/3.2A 出力の降圧バッテリ・チャージャ、PowerPathとI2Cベースのテレメトリをサポート 30 設計ツール、製品情報、ビデオ ► パワー・マネージメント・ツール ► Automatic Data Captureにより、物流の持続可能性を高める ► 超薄型のµModule昇降圧レギュレータ、2.6V入力/2A出力に対応 ► LT8316: 光アイソレータが不要なマイクロパワーの絶縁型フライバック・コントローラ ► 100Vの入出力に対応する双方向の昇降圧コントローラ、保護機能を内蔵 2 信頼できる電源: バッテリ駆動に適した高効率のソリューションを実現する
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無駄を減らし、より多くの電力を生み出す

無駄を減らし、より多くの電力を生み出す 世界のエネルギー需要は、2050年までに60%以上増加すると予想されています。 アナログ・デバイセズは、パワー・マネージメントに関する高度な専門知識を活用することにより、 エナジー・ハーベスティングや小型ロボットなどの分野にブレークスルーをもたらしました。 これは、無駄を減らすことにより、進化を実現できるということを意味しています。 アナログ・デバイセズは「What i(f もしも)」を「What i(s 現実)」にする企業です。 「What if」の事例はこちら: analog.com/jp/WhatIf
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バッテリ駆動に向けた設計を成功に導く7種の製品群

バッテリ駆動に向けた設計を成功に導く 7種の製品群 バッテリ駆動のシステムは、様々な分野で活用されるようになっています。協働ロボット、 状態基準保全、フィールド計測、産業用センサー、バックアップ電源、ヘルスケア機器など、 バッテリ駆動のアプリケーションは多様化しています。そうした用途に向けたシステムを 設計する際には、バッテリのケミストリ、寿命、サイズといった様々な制約を満たすように しなければなりません。つまり、最適なパワー・マネージメント・ソリューションを実現する ためのシステム・レベルの戦略が必要になります。アナログ・デバイセズは、バッテリ駆動の システムをターゲットとするパワー・マネージメント・ソリューションを提供しています。 その広範な製品群の対象領域は、以下に示す7種に大別することができます。 1. 入力保護(理想ダイオード・コントローラ) 2. 充電(昇降圧チャージャ、リニア/スイッチング・チャージャ、 スーパーキャパシタ用チャージャ) 3. シングルセル・バッテリ(昇圧/降圧コントローラ、DC/DCデバイス、 µModuleデバイス) 4. マルチセル・バッテリ(昇圧/降圧コントローラ、DC/DCデバイス、µModuleデバイス) 5. 24Vのバッテリによるシステム入力(48VIN~24VINのコントローラ、 降圧/昇圧コントローラ、DC/DCデバイス、µModuleデバイス) 6. 中間電圧(48VIN~24VINのコントローラ、DC/DCデバイス、µModuleデバイス、 マルチ出力の降圧レギュレータ、シーケンサ、スーパーバイザ) 7. 低ノイズ、制御(低電圧用のDC/DCデバイス、LDO、低ノイズのDC/DCデバイス、 スーパーバイザ) + + = 電力に関する 効率的な 最適化された バッテリ駆動向けの システム・レベルの戦略 バッテリの使用 電力レギュレーション 優れたソリューション 4 信頼できる電源: バッテリ駆動に適した高効率のソリューションを実現する
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あらゆる種類のバッテリに対応できるシンプルなチャージャIC、背景、スイッチング・チャージャとリニア・チャージャ

Technical Article あらゆる種類のバッテリに対応できる シンプルなチャージャIC 著者: Steve Knoth 背景 通常は、フォーク・リフトやゴルフ・カートのように、長時間一定の電力 バッテリ駆動型のデバイスは、充電ソース、バッテリ・ケミストリ(バッ を要する用途で使用されます。但し、Liイオン・バッテリと同様に、LA テリの種類)、電圧/電流といった面でそれぞれに異なる仕様で設計 バッテリも過充電に弱いため、充電サイクルにおいては慎重に取り扱 されます。そのため、バッテリ・チャージャICにも、産業用、ハイエンド うことが非常に重要です。 用、多機能の民生用、医療用、車載用といった具合に様々な種類があ ります。また、最近では、各ケミストリに対応するバッテリ・パックの大 現在のICベースのソリューションは、入力電圧、充電電圧、充電電流 規模化も進んでいます。このことから、より高い電圧と多くの電流が について考えられる数多くの組み合わせのうち、一部にしか対応して 求められるようになりました。加えて、再充電が可能なSLAバッテリ( いません。そのため、それ以外の対応が難しい組み合わせやトポロジ 密閉型鉛蓄電池)やリチウム・ベースのバッテリを含む様々な革新的 については、扱いづらいICとディスクリート部品を組み合わせること なシステムに対して、電力レベルが広範にわたる太陽光発電パネル で対処しなければなりませんでした。しかし、この状況は2011年に変 から電力供給が行われるケースも増えてきました。横断歩道のマー 化しました。アナログ・デバイセズが、バッテリ・チャージャ用のコント カー・ライト、可搬型のスピーカ・システム、ゴミ圧縮機、海で使われ ローラIC「LTC4000」、ならびに同ICと組み合わせて使用可能な外 るブイ用のライトなどがその例です。また、太陽光発電を利用する 部補償付きDC/DCコンバータICの2つで構成される充電ソリューシ 一部のアプリケーションでは、深放電に加えて長期間繰り返される ョンを発表したからです。このソリューションにより、より簡素な構成 充電サイクルにも耐えられるディープ・サイクル・バッテリが使われ で、上述したアプリケーション分野に対応できるようになりました。 ています。この種のLAバッテリ(鉛蓄電池)の実用例が深海域で使 われるブイです。この種のブイは10年にもわたって設置されたま スイッチング・チャージャとリニア・チャージャ まになるので、それに耐えられることが求められます。その他の例 従来のリニア・トポロジのバッテリ・チャージャICは、小型かつ簡 としては、オフ・グリッド(電力会社から切り離された)の太陽光発電 素で低価格であることから高い評価を受けてきました。しかし、 や風力発電などの再生可能エネルギー・システムが挙げられます。 リニア・チャージャには、いくつかの欠点もありました。入力電圧 この種のシステムの場合、頻繁にアクセスすることが困難なケース 範囲とバッテリの電圧範囲に制限がある、相対的に消費電流が が少なくありません。そのため、システムを継続的に稼働させられ 多い、過度に電力が消費される、充電を終了するためのアルゴ ることが非常に重要な要素となります。 リズムに制限がある、相対効率([VOUT/VIN]×100%)が低 いといった具合です。一方、スイッチング方式のバッテリ・チャ 太陽光発電以外のアプリケーションにおいても、最近では、大容量の ージャIC(以下、スイッチング・チャージャ)も、本来、有力な選 SLAバッテリ・セルが再び注目されるようになっています。コスト/電 択肢となり得るはずです。トポロジの柔軟性が高い、複数のバ 力出力の観点から見ると、SLAセルは安価かつ瞬時に多くのパルス ッテリ・ケミストリに対応できる、充電効率が高い(発熱を最小 電流を供給できるという長所を備えています。このことから、自動車 限に抑えつつ高速に充電できる)、動作電圧範囲が広いといっ などで使われるスタータ用のバッテリとして優れた選択肢になってい た特徴を備えるからです。但し、スイッチング・チャージャにも ます。車載用の組み込みアプリケーションでは、入力電圧が30V以上 欠点があります。比較的コストが高い、インダクタをベースと にも達することがあります。例として、盗難防止用に活用されるGPS する複雑な設計が必要になる、本質的にノイズが多い、より大 ベースの位置情報システムについて考えてみます。このアプリケーシ きな実装面積を必要とするといったことです。 ョンには、直列に接続した2個のリチウム(Li)イオン・バッテリ(標準値 は7.4V)に対応するために、標準的な12Vの入力電圧を降圧するこ 最新のLAバッテリや、ワイヤレス給電、エナジー・ハーベスティ とが可能で、高い電圧に対する保護が可能なリニア・チャージャが適 ング、太陽光発電を利用した充電、リモート・センシング、車載用 しています。またディープ・サイクル・バッテリ(LAバッテリが使われま の組み込みアプリケーションでは、上述した理由から、高電圧に す)も、産業用アプリケーションでよく使われています。この種のバッ 対応するリニア・チャージャが使われています。しかし、それらの テリは、車載用バッテリよりもプレートが厚く、全容量の20%まで放 欠点を克服した最新のスイッチング・チャージャであれば、リニ 電できるように設計されています。 ア・チャージャを置き換えられるはずです。 VISIT ANALOG.COM/JP/BATTERYPOWERED 5
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シンプルな降圧バッテリ・チャージャ、多機能かつ小型の新たなチャージャIC、LTC4162の概要

シンプルな降圧バッテリ・チャージャ アナログ・デバイセズは、数年前に、バッテリ・チャージャ用の安 充電ソリューションについて検討する際、設計者はいくつかの 価なコントローラICとしてLTC4000を開発しました。これを外 難易度の高い課題に直面することになります。それは、入力ソ 部補償付きのDC/DCコンバータICと組み合わせることで、強 ースとバッテリの組み合わせが多種多様である、大容量のバ 力かつ柔軟性の高い2チップ構成のバッテリ・チャージャ・ソリュ ッテリを充電の対象としなければならない、入力電圧が高い ーションを構成できます。LTC4000により、複雑で扱いにくか といったことです。 ったソリューションが大幅に簡素化されました。PowerPathTM による制御、昇降圧機能への対応、入力電流の制限を可能にす 入力ソースにはいくつもの選択肢があります。特に、バッテリ・ るために、ソリューションとしては、スイッチング方式の昇降圧 チャージャ・システム向けには、より複雑な入力ソースが使わ DC/DCレギュレータ(またはフロント・エンドの昇圧コントロー れる傾向があります。例えば、電圧が5V~19V(あるいはそ ラとスイッチング方式の充電用降圧コントローラのペア)、マイ れ以上)で、より多くの電力を供給するACアダプタや、24Vの クロプロセッサ、および複数のICとディスクリート部品で構成さ 整流ACシステム、ハイ・インピーダンスの太陽光発電パネル、 れていました。このソリューションには、いくつかの欠点がありま 自動車/大型トラック/ハンヴィー(高機動多目的装輪車)用バ した。動作電圧範囲に制限がある、太陽光発電パネルに対応す ッテリなどです。そのため、システムで組み合わせられるバッテ る入力機能がない、すべてのバッテリ・ケミストリには対応する リ・ケミストリ(Liイオン、Liポリマー、LiFePO4、LAバッテリ)が ことができない、充電終了機能を内蔵していないといったこと 更に増え、設計がより一層難しくなります。 です。これらの問題を解決するために、現在、アナログ・デバイ セズは、大幅な小型化を達成したシンプルなモノリシック型ソ ICの設計が複雑になることから、既存のバッテリ・チャージャIC リューションを提供しています。それが、降圧バッテリ・チャージ に使われるのは、降圧トポロジ、あるいはそれよりも更に複雑 ャIC「LTC4162」と「LTC4015」です。いずれも、多様な充電電 なSEPIC(Single Ended Primary Inductor Converter)ト 流のレベルに対応すると共に、あらゆる機能を備えたシングル ポロジにほぼ限定されています。このような状況のなか、太陽 チップの降圧チャージャ・ソリューションです。 光発電に対応する充電機能を対象として加えることになると、 更に多くの複雑さがもたらされることなります。既存のソリュ LTC4162の概要 ーションの中には、複数のバッテリ・ケミストリを充電の対象と するものや、充電終了機能を内蔵しているものも存在します。 LTC4162は、同期整流式方式のモノリシック型降圧バッテリ・ しかし、1つのチャージャICにより、あらゆる問題を解決可能 チャージャ/PowerPath対応マネージャです。高電圧、マル な性能/機能を実現しているソリューションは存在しません。 チケミストリに対応する点を大きな特徴とします。また集積度 が高く、テレメトリ機能を備えると共に、最大電力点追従機能 多機能かつ小型の新たなチャージャIC (MPPT: Maximum Power Point Tracking)もオプショ ンで提供します。ACアダプタ、バックプレーン、太陽光発電パ 上述した問題を解決するためには、降圧チャージャICが以下に ネルなどの様々な入力ソースから電力を受け取り、Liイオン、Li 挙げる項目の大半に対応している必要があります。 ポリマー、LiFePO4、LAの各バッテリ・スタックを効率的に充電 しつつ、システムの負荷に対して最高35Vの電源電圧を供給す X 広い入力電圧範囲 ることができます。また、同ICは、高度なシステム監視機能と X 複数のバッテリ・スタックに対応するための PowerPath対応の管理機能のほか、バッテリのヘルス・モニタ 広い出力電圧範囲 リング機能も備えています。同ICの最先端の機能にアクセスす X 複数のバッテリ・ケミストリに対応できるだけの柔軟性 るためには、ホストとなるマイクロコントローラが必要になりま すが、オプションでI2Cポートも使用できます。同ICの充電機能 X 充電終了用のアルゴリズムを内蔵し、シンプルで自律 については、ピン・ストラップによって設定するか、プログラミン 的な動作が可能(マイクロプロセッサを必要としない) グ用の抵抗を使って調整することが可能です。充電電流は最大 X 高速充電や、大規模/大容量のセルの充電に 3.2Aまでで、±5%の精度が得られます。2.4V~35Vの入力電 対応できるだけの大電流を供給可能 圧範囲で動作し、充電電圧の精度は±0.75%です。可搬型の医 X 太陽光発電に対応する充電機能 療用機器や、USBを使って電源を得るデバイス(USB-C対応デ バイス)、防衛用機器、産業用のハンドヘルド端末、耐久性の高 X 熱性能と実装効率が高い高度なパッケージング いノート型パソコン/タブレット端末などを主な用途とします。 6 あらゆる種類のバッテリに対応できるシンプルなチャージャIC
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VIN VOUT 同ICが内蔵する充電プロファイルは、Liイオン、Liポリマ ー、LiFePO4、LAを含む様々なバッテリ・ケミストリ向けに最適 VIN INFET CLP CLN VOUT 化されています。充電電圧と充電電流は、いずれもJEITA(電子 BATFET 情報技術産業協会)のガイドラインに準拠するように、バッテリ I2C の温度に基づいて自動的に調整されます。これについては、カ SW スタムで調整できるようにもなっています。LAバッテリについ CSP ては、連続温度曲線に基づき、周囲温度に応じて自動的にバッ LTC4162-L テリ電圧が調整されます。加えて、すべてのバッテリ・ケミスト CSN リに対し、ダイの接合温度を調整するシステムもオプションで CELL BATSENS+ COUNT 用意されています。そのため、スペースに制約があったり熱の NTCBIAS NTC 問題を抱えていたりするアプリケーションにおいて、過度に温 度が上昇することを回避できます。Liイオン・バッテリの充電 GND T 効率性能については、図2をご覧ください。 L T C 4 1 6 2 は 、露 出 金 属 パッド付きで 熱 性 能に優 れる 図1.「 LTC4162-L」の 4mm×5mmの28ピンQFNパッケージを採用しています。E 標準的なアプリケーション回路 グレード、Iグレードの製品は、-40℃~125℃での動作が保証 されています。 図1に、LTC4162の標準的なアプリケーション回路を示しま した。同ICは、コマンドによって多くのシステム・パラメータを 100 継続的にモニタするために、分解能が16ビットのA/Dコンバ ータ(ADC)を内蔵しています。モニタの対象となる主なパラ メータとしては、入力電圧、入力電流、バッテリ電圧、バッテリ 95 電流、出力電圧、バッテリの温度、ダイの温度、バッテリの直列 抵抗(BSR:Battery Series Resistance)が挙げられます。す 90 べてのシステム・パラメータは、2線式のI2Cインターフェース 1セル を介してモニタすることができます。また、プログラムが可能 2セル 85 3セル でマスクも可能なアラートにより、特定の情報が得られた場 4セル 合のみ割り込みが発生するように設定できます。同ICのアク 5セル 6セル ティブなMPPTアルゴリズムは、入力が低電圧になった場合の 80 7セル 8セル 制御を担うループにおいて掃引を行い、太陽光発電パネルや ICHARGE = 2.5A 抵抗性の電源からの電力が最大になる動作点を選定します。 75 加えて、同ICのPowerPathトポロジでは、出力電圧がバッテ 5 10 15 20 25 30 35 リから切り離されているため、バッテリ電圧が非常に低い状態 入力電圧〔V〕 でも、充電ソースが加えられたら直ちに可搬型の機器を起動 図2. Liイオン・バッテリに対する充電効率。 することができます。 セル数が異なる条件下における 入力電圧との関係を示しています。 VISIT ANALOG.COM/JP/BATTERYPOWERED 7 効率〔%〕
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より多くの電流が必要な場合に向けて

R V SNSI IN SYS 12V INFET CLP CLN SYS SYSM5 VIN OUTFET UVCLFB INTVCC SMBALERT DRVCC DV BOOST マイクロコントローラ CC SCL TG SDA CELLS0 LTC4015 SW INTVCC CELLS1 CELLS2 BG CHEM0 CHEM1 CSPM5 RT CSP V R C SNSB CSN CCREFP BATSENS NTCBIAS 鉛蓄電池に CCREFM R 2セルのLiイオン・ NTCBIAS 対する EQ (PADDLE) バッテリ・パック 均等充電 SGND GND MPPT 2P5V NTC CC T RNTC 図3. 8A出力の降圧バッテリ・チャージャ回路。 入力電圧は12Vで、2セルのLiイオン・バッテリに対応します。 より多くの電流が必要な場合に向けて LTC4015は、分解能が14ビットのADCに加え、高精度のクー LTC4015も同期整流方式の降圧バッテリ・チャージャです。高 ロン・カウンタを備えています。ADCは、入力電圧、入力電流、バ 電圧、マルチケミストリに対応し、テレメトリ機能を搭載していま ッテリ電圧、バッテリ電流など多くのシステム・パラメータを継 す。同ICの場合、より多くの充電電流に対応できるように(最大 続的にモニタするために使用します。また、コマンドによって、バ 20A以上)、外付けのパワーMOSFETを使用可能なアーキテ ッテリの温度とBSRを報告することが可能です。同ICによって クチャを採用しています。ACアダプタ、太陽光発電パネルな これらのパラメータをモニタすることにより、充電の状態を監 どの入力ソースを基に、Liイオン、Liポリマー、LiFePO4、LAバ 視するだけでなく、バッテリのヘルス・モニタリングも実施でき ッテリに電力を供給します。同ICは、バッテリ用のクーロン・カ ます。すべてのシステム・パラメータは、2線式のI2Cインターフ ウンタ機能やヘルス・モニタリング機能を含む高度なシステ ェースを介してモニタすることができます。加えて、プログラム ム監視/管理機能を備えています。同ICの最先端の機能にア が可能でマスクも可能なアラートにより、特定の情報が得られ クセスするためにはホストとなるマイクロコントローラが必要 た場合のみ割り込みが発生するように設定できます。同ICが内 ですが、オプションでI2Cポートを使用することも可能です。同 蔵する充電プロファイルは、Liイオン、Liポリマー、LiFePO4、LA 製品の充電機能は、ピン・ストラップによって設定したり、プロ を含む様々なバッテリ・ケミストリ向けに最適化されています。 グラミング用の抵抗を使って調整したりすることができます。 ユーザは、構成用のピンを使用することで、各バッテリ・ケミスト リ向けに事前に定義された複数の充電アルゴリズムの中から、 LTC4015は、最大20Aまでの充電電流を±2%の精度で供 適切なものを選択することができます。更に、I2Cを介して複数 給できます。入力電圧は4.5V~35Vで、充電電圧の精度は のアルゴリズムのパラメータを調整することも可能です。充電 ±1.25%です。可搬型の医療用機器や、防衛用機器、バッテリ 電圧と充電電流は、いずれもJEITAのガイドラインに準拠する のバックアップ、産業用のハンドヘルド端末、産業用の照明、耐 ように、バッテリの温度に基づいて自動的に調整されます。これ 久性の高いノート型パソコン/タブレット端末、リモート電力転 については、カスタムで調整できるようにもなっています。LAバ 送、テレメトリ・システムなどを主な用途とします。 ッテリの充電効率については、図4をご覧ください。LTC4015 は、露出金属パッド付きで熱性能に優れる5mm×7mmのQFN パッケージで供給されます。 8 あらゆる種類のバッテリに対応できるシンプルなチャージャIC
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省スペース、高い柔軟性、より高い電力レベル、太陽光発電による充電、まとめ、著者について

100 この最大出力電圧は、パネルの電流が20倍以上のダイナミ ック・レンジで変化すると、12Vから18Vへと大幅に変化する 95 ことがあります。MPPT回路のアルゴリズムは、バッテリに最 ICHARGE 大の充電電流を供給できるパネルの電圧値を探して追従しま 90 す。MPPTの機能は、連続的に最大電力点に追従するというだ けのものではありません。複数のピークが電力曲線上に発生し 85 ている場合には、電力曲線上の適切な最大点を選択し、部分的 に日陰になっているパネルからより多くの電力を取り出すこと 80 ができます。MPPT機能の動作に十分な光がない期間には、チ ャージャは低電力モードによってわずかな充電電流を供給する 75 VIN:24V V :12.2Vで保持 ように動作します。 BAT セル数:6個 70 0 1 2 3 4 5 6 7 8 まとめ 充電電流〔A〕 LTC4162とLTC4015は、あらゆる機能を備えた強力なバッ 図4. LTC4015を使用した場合の テリ・チャージャ/PowerPathマネージャICです。これらを使 鉛蓄電池の充電効率 用すれば、高電圧/大電流に対応する非常に複雑な充電シス テムを簡素化することができます。これらのICは、ACアダプ 省スペース、高い柔軟性、より高い電力レベル タ、バックプレーン、太陽光発電パネルなどの入力ソースと、Li LTC4162は、パワーMOSFETも集積したモノリシックのICで イオン、Liポリマー、LiFePO4、SLAを含む様々なバッテリ・ケ す。そのため、電力レベルが等しい(例えば3A)条件で比較した ミストリに対応しており、充電を実施する際の電力を効率的 場合、LTC4015を使う場合よりも、プリント回路基板上の実装 に分配/管理します。かつて、最先端のアプリケーションで 面積を最大50%削減できます。一方、両製品が備える機能セッ は、SEPICのような複雑なトポロジを採用したスイッチング・レ トはほぼ同じなので、出力電流が3.2A以上で最大20A以上に ギュレータが唯一の選択肢でした。LTC4162やLTC4015を も達するケースでは、LTC4015を使用すべきです。バッテリ・チ 採用すれば、シンプルかつコンパクトなソリューションにより、 ャージャICをベースとするソリューションで、同じように高いレ そうしたアプリケーションに対応できます。中~大電力のバッ ベルの集積度を実現しているものや、同等の電力レベルを実現 テリ・チャージャ回路を必要とする設計者の業務を大幅に簡素 できるものは他にありません。充電電流(2A~3A)がほぼ等し 化することが可能になります。 い競合品の場合、1つのバッテリ・ケミストリのみ(Liイオンのみ) に限定されていたり、バッテリの充電電圧が制限されていたり( 最大13V)するなど、LTC4162やLTC4015のような電力レベ ルや柔軟性は提供されません。また、最も類似した競合他社の 著者について モノリシック型バッテリ・チャージャ・ソリューションと必要な外付 け部品も含めて比較した場合、LTC4162の方がトータルの実 Steve Knothは、 ア ナ ロ グ・ デ バ イ セ ズ のPower 装面積を最大40%削減できます。この観点からも、設計上の選 by LinearTMグループに所属するシニア・プロダクト・ 択肢としてより魅力的なものとなっています。 マーケティング・エンジニアです。すべての電源管理 IC(PMIC)、LDO(低ドロップアウト)レギュレータ、 太陽光発電による充電 バッテリ・チャージャ、チャージ・ポンプ、チャージ・ポ 太陽光発電パネルを最大電力点(MPP)で動作させる方法はい ンプを用いたLEDドライバ、スーパーキャパシタ用の くつもあります。最もシンプルな方法は、ダイオードを介して太 チャージャ、低電圧対応のモノリシック型スイッチング・ 陽光発電パネルにバッテリを接続する方法です。これは、パネ レギュレータ、理想ダイオード・デバイスを担当してい ルの最大出力電圧と比較的狭いバッテリの電圧範囲のマッチ ます。2004年にLinear Technology(現在はアナロ ングに頼った方法です。利用できる電力レベルが非常に低い( グ・デバイセズに統合)に入社しました。1990年から 約数十mW以下のレベル)場合には、最適なアプローチであ Linear Technologyに入社するまでの間には、Micro るかもしれません。しかし、電力レベルは常に低いわけではあ Power Systems、 ア ナ ロ グ・デ バ イ セ ズ、Micrel りません。そのため、LTC4162/LTC4015では、光量が変化し Semiconductorにおいて、マーケティングや製品エン たときに太陽光発電パネルの最大出力電圧(MPV:Maximum ジニアリング関連の様々な職務を担当しました。サンノ Power Voltage)を見いだす技術であるMPPTを採用してい ゼ州立大学において、1988年に電気工学の学士号、 ます。 1995年に物理学の修士号を取得しています。2000年 にはフェニックス大学で技術管理分野の経営学修士号も 取得しました。プライベートでは、子供たちとの時間を 楽しむと共に、ピンボールやアーケード・ゲーム、マッ スルカーなどにも興じています。もう1つの趣味は、ビ ンテージ・トイや映画/スポーツ/自動車に関する記念 グッズの売買/収集を行うことです。 VISIT ANALOG.COM/JP/BATTERYPOWERED 9 効率〔%〕
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要注目の記事、IoTアプリケーションに最適な最新のパワー・マネージメントIC、より小型で便利なキャリブレータ、ソフトウェアによる構成が可能なアナログI/Oで実現、スーパーキャパシタを利用した無停電電源のシンプルな設計

要注目の記事 IoTアプリケーションに最適な最新のパワー・マネージメントIC 産業用機器、ホーム・オートメーション機器、医療用機器などの分野では、 IoT(Internet of Things)デバイスの利用が拡大しています。それに伴い、パワー・ マネージメント回路を最適化する必要性が高まっています。具体的には、フォーム・ ファクタの小型化、効率の向上、消費電流の削減、充電時間の短縮などが求めら れています。本稿では、IoT分野のアプリケーションに最適なバッテリ技術につい て説明します。給電に関連して直面するいくつかの問題について解説した上で、 アナログ・デバイセズが提供するパワー・マネージメント・ソリューションを紹介す ることにします。  今すぐ読む より小型で便利なキャリブレータ、 ソフトウェアによる構成が可能なアナログI/Oで実現 工場の製造フロアには、数多くのセンサーやアクチュエータが配備されています。 それらとシステムの間では、低レベルの電圧信号/電流信号を高い精度でやり取 りしなければなりません。その処理に使われるのが、産業用のアナログI/Oモジュ ールです。どの電子デバイスにも言えることですが、定められた基準を満たした 状態で動作を継続させるには、定期的にキャリブレーションを実施する必要があり ます。本稿では、高精度のキャリブレータのリファレンス設計を紹介します。従来、 キャリブレーションには、非常に大きく、重く、高価なソリューションが使われてきま した。本稿で紹介するリファレンス設計は、そうしたソリューションと同等の機能、 性能、精度を備えています。しかも、軽量で極めて可搬性が高く、バッテリで駆動す ることが可能です。  今すぐ読む スーパーキャパシタを利用した無停電電源の シンプルな設計 電源が極めて重要なアプリケーションにおいて、高い信頼性で給電を継続でき るようにするにはどうすればよいのでしょう。アプリケーションの種類を問わず、 どのような状況下にあっても電源電圧を継続的に供給するのは非常に重要な ことです。しかし、実際にそのような状態を維持するのは必ずしも容易なことで はありません。本稿では、停電が発生した場合でも給電を継続できる無停電電源 (UPS:Uninterruptible Power Supply)の設計例を紹介します。その設計コンセ プトは、最適なソリューションを非常にコンパクトに実現するというものです。  今すぐ読む VISIT ANALOG.COM/JP/BATTERYPOWERED 11
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LT8652S/LT8653S

Silent Switcher® 2 基板レイアウトに依存せず、 放射EMIを低減できる 降圧レギュレータ LT8652S/LT8653S ► 基板レイアウトに依存する影響を排除 ► 自己消費電流が極めて少ないBurst Mode®動作により、 出力リップル電圧を最小化  ► 各チャンネルから同時に最大8.5Aの電流を出力可能 ご購入はこちら analog.com/jp/LT8652S
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「ねぇ、ぼくの電源コードはどこ?」、はじめに

Technical Article 「ねぇ、ぼくの電源コードはどこ?」 著者: Thong Huynh、アプリケーション・エンジニアリング・ディレクタ はじめに 例えば、電気自動車(EV)では、1回の充電によって、よ かつて、電源コードは、どこにいったのかわからなくなるも り長い航続距離を実現することが求められます。一方、携帯 のの代名詞のような存在でした。しかし、現在では「ぼくの 電話は、1回の充電によって、より長い時間使用できるよう 電源コードはどこ?」というフレーズは、「ぼくの充電器はど になっていなければなりません。つまり、蓄電デバイスとし こ?」というフレーズに置き換わっているのではないでしょう てはより多くの電力を供給できるものが求められます。それ か。20世紀が終わるころから、携帯電話をはじめとするバッ に伴い、蓄電デバイスはより高い電圧に対応するようになっ テリ駆動の可搬型機器や蓄電機器の数は継続的に増加して てきています。例えば、リチウムイオン・バッテリの場合、 います。その背景には、バッテリのコストの低下と性能の向 以前は1個または2個のセルが使われていました。その後、 上があります。特に、リチウムイオン系バッテリの進化は顕 ロボット、ドローン、電動工具、その他多くの機器に対応す 著でした。また、スーパーキャパシタ(電気二重層キャパシ るために、より多くのセル(最大12個)から成るバッテリ・ タ、ウルトラキャパシタ)は、その固有な特性が理由となっ スタックが使われるようになりました。12個のセルを使用し て様々なアプリケーションで利用されるようになっています。 たバッテリ・スタックであれば、最大50.4Vの電圧を供給で 150年の歴史を持つ鉛蓄電池は、現在でも自動車、車椅子、 きます。12セルのバッテリは、定格電流が同じ値であるな スクータ、ゴルフのカート、無停電電源(UPS)などの用 らば、1セルのバッテリよりも12倍長持ちします。なお、 途で広く使用されています。これらの蓄電デバイスは、エネ 12個のバッテリを並列に接続することによって電力量を増や ルギーを使いきったら再充電することで引き続き使用できま すことも可能です。但し、その方法では電流を12倍に増や す。稿末に示した参考資料1「Power IC Market Tracker さなければなりません。電流が多くなると伝導損失が増える - 2019(パワーICのマーケット・トラッカ 2019)」によれ ので、バッテリの並列接続は好ましくありません。 ば、充電用ICの出荷数量は、2019年に世界中で約11億 6千万個に達しました(図1)。その後も8.6%のCAGR(年 バックアップ用のバッテリを備えた機器も増えています。 平均成長率)で堅調に成長し、2024年には約17億2千万 具体的な例としては、産業分野で使われる非常用の照明や 個の製品が出荷される見込みです。売上高に換算すると、 UPS、HVAC(暖房、換気、および空調)などが挙げられ 2019年が5億1810万米ドル(約597億円)、2024年が ます。これらの機器では24VDC の電源が使用されます。つ 7億3540万米ドル(約848億円)、CAGRは7.3%です。 まり、バックアップ用の電源としても24Vのバッテリが必要 です。但し、IEC 61131-2やIEC 60664-1といった規格 によれば、24VDC の電源では、トランジェントの状態におい 2000 出荷数〔百万個〕 て60Vのピーク電圧が生じる可能性があります。 1800 売上高〔百万米ドル〕 1600 そうした機器におけるバッテリの充電に向けては、次のよう な要件を満たすチャージャが必要になります。すなわち、よ 1400 り高いバッテリ電圧に対応可能で、トランジェントの発生時 1200 に、より高い入力電圧に耐えられる充電用のソリューション 1000 です。 800 600 400 200 0 2019 2020 2021 2022 2023 2024 図1. 充電用ICの世界市場 13 「ねぇ、ぼくの電源コードはどこ?」 VISIT ANALOG.COM/JP/BATTERYPOWERED 13
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チャージャの基礎、鉛蓄電池用のチャージャ

チャージャの基礎 チャージャにおいては、電力を節約するためにスタンバイ チャージャには、いくつかのトポロジがあります。1つはリニ 電流を少なく抑えなければなりません。例えば、Energy ア・チャージャです。このトポロジでは、パワー・スイッチに Star®(省エネ型の電気製品の認証制度)では、携帯電話 よって電源とバッテリの間の電圧の差を低減させます。その 向けなどの小型充電器についてはスタンバイ時の消費電力 差が大きい場合、パワー・スイッチで多くの電力が消費され が30mW以下の場合に5つ星が付与されます。スタンバイ るので、非常に効率が悪くなります。2つ目のトポロジとし 時の消費電力が多いほど星の数は減り、300mW以上の充 ては、昇圧型のチャージャが挙げられます。これは、電源の 電器は1つ星となります。一般消費者向けの充電器の多く 電圧をバッテリの電圧まで昇圧させるというものです。この は、使用していないときも、ほとんどコンセントに差したま トポロジは、電源の電圧がバッテリの電圧よりも低い場合に まになっています。そのような形で電力網に接続されている 使用します。3つ目のトポロジは降圧型のチャージャです。 充電器の数は、世界中で常に10億台以上に達しています。 電源からの電圧を降圧して使用するというものであり、電源 Energy Starでは、そうした充電器によって消費される電力 の電圧がバッテリの電圧よりも高い場合に使用できます。4 の削減を目指しています。 つ目のトポロジは昇降圧型のチャージャです。このトポロジ であれば、電源の電圧がバッテリの電圧より高くても低くて 鉛蓄電池、リチウムイオン・バッテリ、スーパーキャパシタは、 もバッテリを充電することができます。但し、4個のパワー・ いずれも蓄電デバイスとして使用されます。しかし、それぞ スイッチが必要であり(降圧型では2個)、一般的にそれほ れの充放電特性は大きく異なります。以下では、それぞれ ど効率は高くありません。 の特性について説明します。また、それぞれに適した充電用 のソリューションを紹介します。優れたバッテリ・チャージャ 本稿では、同期整流方式の降圧チャージャを取り上げること であれば、悪条件の下で充電を行う場合でも、バッテリの性 にします。このトポロジでは、最も高い効率が得られます。 能と耐久性を維持することができます。 図2に、同期整流方式の一般的な降圧チャージャの回路を示 しました。昨今の降圧チャージャの大半は、比較的低い入力 電圧に対応します。なかには、入力定格電圧が40V程度の 鉛蓄電池用のチャージャ ものもありますが、ほとんどは高くても28V程度です。例と 鉛蓄電池は、最も古くから存在し、現在も使われている2次 して、リチウムイオン・バッテリ用のチャージャについて考え 電池です。フランスの物理学者、Gaston Planté氏によっ てみます。そのアプリケーションでは、±10%の入力電圧に て1859年に発明されました2。それから150年以上が経っ 対応して電圧をレギュレートするとします。また、降圧チャー た今でも、自動車、車椅子、スクータ、電動自転車、ゴル ジャにおいて2Vの降下を許容できるとしましょう。その場 フのカート、UPSなどに広く使用されています。 合、定格入力電圧が28Vのチャージャは、実際には最大で 5Sのバッテリ・スタックにしか対応できません。本稿では、 鉛蓄電池はゆっくりと充電する必要があります。標準的な充 60Vの入力電圧に対応可能なチャージャIC(コントローラ 電時間は8~16時間です。硫酸鉛の結晶化(サルフェーショ IC)の製品ファミリを紹介します。これであれば、最大52V ン)を防ぐために、常に充電された状態で保存する必要があ のバッテリ電圧(または、12セルのリチウムイオン・バッテ り、定期的に満充電にすることが不可欠です。一般的には、 リのスタック)に対応して充電を行うことができます。また、 約8時間で70%まで充電し、更に8時間かけて非常に重要 65Vの入力電圧トランジェントに耐えることが可能です。 な吸収充電を行います。サルフェーションを防止するために ときどき満充電にするという条件を守れば、通常は部分充電 入力短絡保護 で使用しても構いません。また、長時間フロート充電したま まにしても、損傷は発生しません。 VIN マルチセルの 鉛蓄電池を使用する場合には、充電電圧の理想的な上限値 電源≧V バッテリ・スタック を見いだすことが非常に重要です。高い電圧(1セルあたり BATT 降圧チャージャ + V 約2.45V以上)を使用すれば、優れた性能を実現できます。 BATT (コントローラIC) 但し、正極板での格子腐食によって耐用年数が短くなります。 また、電圧の下限値において、負極板にサルフェーションが 高効率の 発生することがあります。更に、通常は温度により、セル電 同期整流方式 圧に-5mV/℃(華氏10度ごとに1セルあたり0.028V)の 図2. 同期整流方式の 影響が及びます3。優れたチャージャであれば、この温度係 一般的な降圧チャージャ 数を補正する機能を提供してくれます。それにより、高温に おけるバッテリの過充電や低温における過小充電を防止する ことができます。 14 「ねぇ、ぼくの電源コードはどこ?」
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リチウムイオン・バッテリ用のチャージャ

ここでは、 鉛 蓄 電 池 の 充 電に使 用するコントローラIC 鉛蓄電池はエネルギー密度が低いので、携帯型の機器には 「MAX17702」を紹介します(図3)。このICは、4.5V~ 適していません。そのため、携帯型の機器ではリチウム系の 60Vの入力電圧範囲に対応するように設計されています。 バッテリが有力な選択肢になります。 12V/24V/48Vに対応する鉛蓄電池のスタックを(97% 以上の)高い効率で充電可能な同期整流方式の降圧機能 を提供します。図4(a)、(b)は、それぞれ同ICを使用し リチウムイオン・バッテリ用のチャージャ た場合の充電サイクルと充電効率を表しています。図中の リチウムイオン・バッテリには、軽量でエネルギー密度が高 CCは定電流(Constant Current)モード、CVは定電圧 いという特徴があります。そのため、携帯型機器、重工業 (Constant Voltage)モードを表します。 分野のアプリケーション、電動パワートレイン、人工衛星な ど、広範な用途で使われています。 最大60Vの 入力 リチウムイオン・バッテリは、比較的扱いやすいものだと言 VOUT CIN えます。メモリ効果がなく、良好な状態を維持するためのエ DCIN GATEN V VOUT IN DDTH DH L I R CHG クササイズ(意図的な完全放電)は必要ありません。とは S LX いえ、短絡、過充電、熱暴走、過放電を防ぐために、バッ ISMON DL テリ・パック内と充電器内の両方に保護回路を設ける必要が PGND + V 鉛蓄電池 REF MAX17702 CSP あります。リチウムイオン・バッテリの電圧が1週間以上、1 CSN V セルあたり1.5Vにとどまっていた場合、デンドライト(樹枝 TEMP OUT RNTC FB 状の結晶)が成長し、安全性が損なわれる可能性があります。 FLG1 TMR FLG2 RPTC 過放電を防止するためには、コントローラが内蔵する保護回 路を使用してバッテリをスリープの状態で維持します。バッ 図3. 高電圧に対応する テリの過放電は、自己放電によって電圧がカットオフ・ポイ 鉛蓄電池用のチャージャ回路 ントに達する放電状態で保存した場合に発生します。通常の チャージャを使用した場合、そのようなバッテリは使用不能 な状態だと判断されます。結果として、そのバッテリ・パッ プリ 吸収充電 フロート充電 クは廃棄されることになります。リチウムイオン・バッテリ用 チャージ CC (CV) (CV) の高度なチャージャは、ウェイクアップ機能またはプリチャー ジ機能を搭載しています。そのため、リチウムイオン・バッ ICHGMAX ICHG V テリが過放電によってスリープ状態になった場合でも再充電 OUT することが可能です。プリチャージ機能が有効になると、 チャージャは少ない充電電流を供給するようになります。そ れにより、バッテリ・パックの電圧が1セルあたり2.2V~ 10% 2.9Vになるまで安全に上昇させます。その結果、保護回路 t が起動し、その時点から通常の充電が開始されます。 (a) リチウムイオン・バッテリ用のチャージャは、通常の充電中は 100 定電流/定電圧(CCCV:Constant Current Constant Voltage)モードで動作します。充電電流は一定で、設定し 95 た上限値に達すると電圧が制限されます。バッテリは、電圧 の上限値に達すると飽和状態になります。バッテリが充電を 90 受け入れなくなるまで電流が減少し、充電が終了します。各 VDCIN = 24V VDCIN = 48V バッテリには、低電流に関する固有の閾値があります。 85 リチウムイオン・バッテリを充電する際には、温度が上がら ないようにする必要があります。また、リチウムイオン・バッ 80 テリは過充電に対応(吸収)することはできません。そのた め、温度と充電電圧を監視し、バッテリの健全性と安全性を 75 確保することが非常に重要です。優れたチャージャであれば、 それらに対応する機能を備えています。 70 0 2 4 6 8 10 充電電流〔A〕 条件:13.8Vの出力、ICHGMAXは10A (b) 図4. MAX17702の動作/特性。 (a)は鉛蓄電池の充電サイクル。 (b)は充電時の効率を表しています。 VISIT ANALOG.COM/JP/BATTERYPOWERED 15 効率〔%〕
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スーパーキャパシタ用のチャージャ

図5に示したのは、リチウムイオン・バッテリ用の高度な 長所の1つです。バッテリを1桁上回る最大20年の寿命を チャージャ回路の例です。図中の「MAX17703」は、高い 備えており、数百万回の充放電サイクルに対応できます。し 効率を実現する同期整流方式の降圧コントローラです。4.5V かもインピーダンスが低く、わずか数秒で急速充放電するこ ~60Vという広い入力電圧範囲に対応しています。このIC とが可能です。長期間にわたり電荷を保持する適度な能力 は、最大12セルのバッテリ・スタックに対応可能な完全な も備えているので、短い充放電サイクルを必要とするアプリ 充電ソリューションです。 ケーションに最適なものだと言えます。スーパーキャパシタ は、バッテリと並列で使用されることもあります。例えば、 最大60Vの 負荷トランジェントが生じている最中に瞬間的なピーク電力 入力 V を供給する必要がある場合、そのような使い方が選択され OUT CIN DCIN GATEN V VOUT IN ます。 DDTH DH L RS LX ISMON スーパーキャパシタ用のチャージャは、短時間の充放電サイ DL ICHG PGND + リチウム クルに対応できるものでなければなりません。つまり、大電 VREF MAX17703 CSP イオン・ 流を処理できるだけでなく、0Vから充電を開始する場合に CSN バッテリ V TEMP OUT はCCモード、最終出力値に到達したらCVモードでスムー R FB NTC FLG2 ズに動作する必要があります。高電圧のアプリケーションで TMR FLG1 は、多くのスーパーキャパシタを直列に接続して使用します。 したがって、高い入出力電圧に対応できるチャージャが必要 図5. 高電圧に対応する になります。 高度なリチウムイオン・バッテリ用チャージャ回路 「MAX17701」は、スーパーキャパシタ用の降圧コントロー MAX17703のCCCVモードにおける充電電流と充電電圧 ラICです(図7)。同期整流方式を採用しており、効率が高 の精度は、それぞれ±4%と±1%です。チャージャは、充 く高電圧に対応できます。大電流による充電に適した設計を 電電流がテーパー電流の閾値まで減少すると、トップアップ 採用しており、入力電圧範囲(VDCIN)は4.5V~60Vです。 充電の状態に入ります。そして、テーパー・タイマーの期間 出力電圧は、1.25VからVDCIN - 4Vの範囲でプログラムす が経過すると充電が終了します。また、出力電圧が再充電 ることが可能です。図7の回路では、Nチャンネルの外付 の閾値電圧を下回ると、再充電のサイクルが開始されます。 けMOSFETを使用して入力側のORing機能を実現していま これは、Energy Starの要件に準拠するための優れた機能 す。これにより、スーパーキャパシタが入力に対して放電す です。充電クレードルに長期間放置した場合でも、それほど るのを防ぐことができます。大電流による充電プロファイル 多くの電力を消費することなく、バッテリを満充電の状態に は、図8のようなシンプルなものになります。 維持します。加えて、MAX17703は、過放電したバッテリ を検出した場合、プリチャージ機能によってそのバッテリを 最大60Vの入力 ウェイクアップさせます。更に、バッテリの温度を監視し、 CIN VOUT 適切な温度範囲内にある場合だけ充電を可能にするという保 VOUT DCIN GATEN VIN DH 護機能も備えています。入力の短絡保護機能も内蔵してお L R FB S LX システムの り、短絡を検出した場合にはバッテリの放電を防止します。 DL I 負荷 V CHG OUT ISMON 図6に、MAX17703の充電サイクルを示しました。 MAX17701 PGND OVI FLG2 CSP リチウムイオン・バッテリの充電サイクル FLG1 CSN トップ スーパーキャパシタ プリ アップ チャージ CC CV 充電 図7. 高電圧/大電流に対応する スーパーキャパシタ用のチャージャ回路 ICHGMAX ICHG VOUT 負荷電流が10Aの場合の充電プロファイル 充電の終了 CVモード 1 V/div 10% t CCモード 図6. MAX17703による リチウムイオン・バッテリの充電サイクル 5 A/div スーパーキャパシタ用のチャージャ VOUT スーパーキャパシタは、バッテリよりも優れた固有の長所を 備えています。そのため、より多様なアプリケーションで使 ICHG われるようになっています。バッテリは、化学的な蓄電に関 連する寿命の問題を抱えています。それに対し、スーパー キャパシタは、化学反応を伴わない静電気の原理に基づい 時間(20秒/div) て機能します。そのため、バッテリと同様の寿命の問題は発 図8. MAX17701による 生しません。また、耐久性の高さもスーパーキャパシタの スーパーキャパシタの充電プロファイル 16 「ねぇ、ぼくの電源コードはどこ?」
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まとめ、参考資料、著者について、関連するコンテンツ

まとめ バッテリ駆動の携帯型機器や蓄電機器は、より広い領域で利 著者について 用されるようになっています。そうした機器においてより長 Anthony T. Huynh(Thong Anthony Huynh)は、 い利用時間を実現するためには、より多くの電力を供給でき アナログ・デバイセズのアプリケーション・エンジニアリン るようにしなければなりません。そのため、より電圧の高い グ・ディレクタです。世界の主要なメーカーに採用されて バッテリ・スタックが使用されるようになっています。但し、 いるIC製品を担当。DC/DCコンバータ、ホットスワップ・ 例えば24VDC の電源を使用する産業用のシステムの場合、 コントローラ、PoE(Power over Ethernet)、システム保 トランジェントが発生している状態では60Vのピーク電圧が 護などの用途に向けた100種以上のパワー・マネージメ 発生する可能性があります。ところが、従来のチャージャの ント製品を定義しています。以前は、Maxim Integrated ほとんどは、入力電圧が28Vに制限されていました。それ (現在はアナログ・デバイセズの一部門)でアプリケーシ に対し、アナログ・デバイセズが提供する新たなチャージャ・ ョン・エンジニアリングに携わる主席研究員を務めていま ソリューションであれば、より電圧の高いバッテリ・スタック した。20年以上にわたり、絶縁型/非絶縁型のスイッチン に対応できます。同期整流方式の降圧トポロジにより、高電 グ電源とパワー・マネージメント製品の定義/設計に従事 圧に対応しつつ充電効率を高めることが可能です。 しています。パワー・エレクトロニクスに関する4件の米国 鉛蓄電池、リチウム系バッテリ、スーパーキャパシタは、い 特許を保有。広報記事やアプリケーション・ノートも多数 ずれも蓄電デバイスとして使用されます。しかし、それぞれ 執筆しています。オレゴン州立大学で電気工学の学士号 の充放電特性は大きく異なります。したがって、それぞれに を取得。ポートランド州立大学で電気工学の修士号の取 最適な専用のチャージャが必要になります。また、適切な 得に必要なすべての課程を修了しています。同校では、非 保護機能を提供し、悪条件の下で充電を行う場合でもバッテ 常勤講師としてパワー・エレクトロニクスの講義も担当し リの性能と耐久性を維持できる高度なバッテリ・チャージャ ていました。 が求められます。アナログ・デバイセズは、そうしたチャー ジャ・ソリューションを提供しています。 参考資料 1Kevin Anderson「Power IC Market Tracker - 2019 (パワーICのマーケット・トラッカ 2019)」OMDIA、 2020年9月 2「Advancements in Lead Acid(鉛蓄電池の進化)」 Battery University、2016年7月 3 US 31DC XC2 - Data Sheet、U.S. Battery、2019年 関連するコンテンツ 製品 MAX17701 スーパーキャパシタ用の同期整流式降圧チャージャ・ コントローラ、4.5V~60Vの入力に対応 MAX17702 鉛蓄電池用の同期整流式降圧チャージャ・ コントローラ、4.5V~60Vの入力に対応 MAX17703 リチウム・イオン・バッテリ用の同期整流式降圧 チャージャ・コントローラ、4.5V~60Vの入力に対応 製品カテゴリ 電源製品(パワー・マネージメント) バッテリ・チャージャIC、 バッテリ管理 17 あらゆる種類のバッテリに対応できるシンプルなチャージャIC VIISIITV VAISIISINTIIT AA ANLNAAOLLOGOGVG...CI..CSCOIOOTMM /AMJ/NJP//APJJ/LB/PPBOA//ABGBTTA.ACTTTEOETTRMREEY/YRRPJPYYOPOPPW/WOOPEWOERWREEEERRDEDEERDD 117111777
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MAX38656

バッテリ寿命を 最長化する nanoPower降圧コンバータ MAX38656 X 自己消費電流を420nA、シャットダウン電流を 5nAに抑えることにより、バッテリの寿命を最長化 X 一般的なあらゆる電圧に対応しているため 使いやすい X 逆方向電流のブロック機能とアクティブ放電機能によって システムの保護を実現 ご購入はこちら analog.com/jp/MAX38656
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小型アセット・トラッカの寿命を延長、概要、エッジと企業間の通信、アセット・トラッキング・ネットワーク

Technical Article 小型アセット・トラッカの 寿命を延長 著者: Anil Telikepalli、マネージング・ディレクタ Nazzareno Rossetti、アナログおよびパワー・マネージメントのエキスパート Simo Radovic、アプリケーション・ディレクタ 概要 この設計ソリューションでは代表的なアセット・トラッキング Internet (資産追跡)ソリューションについて検討を行い、高効率で 小型のMAX3864xナノパワー降圧コンバータ・ファミリが、 小型ポータブル機器のバッテリ寿命をどのような形で延長す Dedicated GPS Satellite Server るのかを示します。新たな低消費電力のデータ接続は、展 開費用が安価なことから、アセット・トラッキング・ソリュー Cellular ションの普及に拍車をかけています。その効果は複数のアプ Network Computer, Laptop, Vehicle with or Mobile Device リケーションに見ることができますが、特に輸送およびサプ Tracking System ライ・チェーン管理の分野におけるものが顕著です。 図1. リアルタイムGPSトラッキング 代表的なアプリケーションでは、センサーが所定の位置から の更新情報を提供し、温度、湿度、圧力、および動作に関 工場環境におけるアセット・トラッキングは、施設、車両設 するデータを伝送します。センサーが送信する必要があるの 備、およびメンテナンスの管理を1つのプラットフォームにま は少量のデータだけなので、対応できるデータ範囲が広が とめ、安全性と生産性を向上させて資産寿命を延ばすという る上に消費電力も極めて小さく、デバイスの動作寿命を延 効果をもたらします。 長することができます。センサーのバッテリは、数週間から 数年におよぶ範囲で使用できなければなりません。アセット・ トラッキングにおいては、そのアプリケーションに応じて、 アセット・トラッキング・ネットワーク 複数のトラッカ・デバイスを展開する必要があります。した 新世代の発信機は専用のセルラ・ネットワーク(LTE-M、 がってこれらのアセット・トラッカ・デバイスには、小型、携 NB- IoT)に直接接続するので、ゲートウェイとの通信に 帯が容易、コスト効果が良いといった条件を満たすことも求 Bluetooth®を使用する必要がありません。これらの技術に められます。 はそれぞれ大きな違いがありますが、低消費電力であるとい この設計ソリューションでは、代表的なバッテリ駆動式アセッ う点で共通しており、バッテリ寿命を数年間の範囲に延長す ト・トラッカ・デバイスが直面するパワー・マネージメント上 ることが可能です(表1)。 の課題について検討を加え、小型の高効率コンバータを使っ 表1 ネットワークの特性 た例を示します。 NB-IoT LTE-M 単位 帯域幅 180 1400 kHz エッジと企業間の通信 代表的なトラッキング通信チェーンを図1に示します。追跡 ピーク・データ・ 100 384 kbps レート 対象となる資産は発信機を介してデータを送信し、そのデー タが専用のセルラ・ネットワークを通じてサーバーに達しま U/D リンク 62.5 1000 Mbps 速度 す。データは、資産の管理と分析のために、更にそこから 企業ポータルへ送られます。 遅延 10 100 ms バッテリ寿命 >10 10 年 音声 非対応 対応 19 小型アセット・トラッカの寿命を延長 VISIT ANALOG.COM/JP/BATTERYPOWERED 19
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代表的なアセット・トラッカ・システム、超低静止電流、ナノパワー降圧コンバータ

代表的なアセット・トラッカ・システム 超低静止電流 図2に、代表的なアセット・トラッカのブロック図を示します。 デバイスはほとんどの時間ディープ・スリープ・モードまた 3本直列に接続したアルカリ・バッテリは2000mAhの電荷 はクワイエット・モードにあり、その間の消費電流は100µA を供給し、降圧レギュレータがオンボード・コントローラ、セ 未満に過ぎないので、降圧コンバータの静止電流は特に重 ンサー、および無線機に電力を供給します。 要です。VOUT = 1.8Vの場合、ディープ・スリープ時の出 力電力はPOUT = 1.8V × 100µA = 180µWです。η = 90%の場合の入力電力は次の通りです。 Buck Regulator PIN = 180 µW/0.9 = 200 µW (1) Controller + 3S, 1.5 V × 3 降圧コンバータの選択が適切でなく、静止電流が3µA(代 Alkaline Sensors 表値)、入力電圧が3.6Vだった場合は、以下の電力が余分 に消費されます。 Radio P’IN = 3 µA × 3.6 V = 10.8 µW (2) Asset Tracker 図2. アセット・トラッカのブロック図 最終的なコンバータの効率は次の通りです。 要求の厳しいアセット・トラッキング・アプリケーションで η = POUT/(PIN + P’IN) = 180/(200 + 10.8) = 86% (3) は、システムは3本のアルカリ・バッテリで1年間継続して 動作しなければなりません。ディープ・スリープ状態で消費 静止電流が3µAの場合は降圧コンバータの効率が4ポイン する電流は100µAだけで、1日に一度、約2分間にわたり ト低下し、バッテリの消耗が非常に早くなります。 100mAの電流が流れます(図3)。LTE-MまたはNB-IoT アセット・トラッカの電力レベルとサポートされているその他 一方、静止電流が300nAの場合は降圧コンバータの効率 のオプションによっては電流値がもっと高くなることもありま が低下しますが、その量はごくわずかで、0.5パーセンテー すが、ここでは、この100µAから100mAの範囲で話を進 ジ・ポイント程度に過ぎません。アセット・トラッキング・ア めます。 プリケーションの場合、システムはほとんどの時間クワイエッ ト・モードにあり、なおかつバッテリに動作を依存しているの Current で、超低静止電流の降圧コンバータを選ぶことが極めて重 要です。 100 mA Transmission ナノパワー降圧コンバータ 高効率コンバータの一例として、図4に示す静止電流わず か330nAのナノパワー降圧DC/DCコンバータは、1.8V ~5.5Vの入力電圧で動作し、最大175mAまでの負荷電 流に対応しています。ピーク効率は96%です。スリープ・ 100 µA Deep Sleep モードでは5nAのシャットダウン電流しか消費しません。こ のデバイスは、スペースを取らない1.42mm × 0.89mm 2 Min 1 Day Time の6ボール・ウェーハ・レベル・パッケージ(2 × 3ボール 図3. アセット・トラッカの電流プロファイル WLP、0.4mmピッチ)に収められています。NB-IoTまた はLTE-Mネットワークの電力レベルに基づき、これより高い 高い使用性能を実現するには、各ブロックを慎重に選んで消 電流が必要な場合は、電流値の大きい姉妹部品を選ぶこと 費電力ができるだけ少なくなるようにする必要があります。 ができます。 降圧レギュレータは、100µA~100mAの広い範囲にわ たって効率の良いものでなければなりません。例えば、降圧 2.2 µH コンバータによる平均損失が4%だとすると、フィールド展 Input 1.8 V to 5.5 V Output 1.8 V 開期間は約2週間短くなります。 IN LX OUT CIN COUT 10 µF 22 µF MAX38640 RSEL R EN GND SEL 768 Ω 図4. 集積化降圧コンバータ 20 小型アセット・トラッカの寿命を延長