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距離の測定と物体の検出を実現するToFシステム

ホワイトペーパー

FAやロボティクス、物流などの分野では、距離の測定と物体の検出が重要になります。特に安全性の確保という観点からは、特定の距離に位置する物体や人物を検出したり、それらから応答を得たりすることが必須です。

安全性の確保を実現するためのものとして注目されているのが、ToF(Time of Flight)技術です。同技術を採用したシステムの仕組みは、まず、レーザーなどの変調光源を使ってシステムから光を放射します。そして、1つ以上の物体で反射した光ビームをセンサーやカメラによって捉えます。光を放射してから反射光を受信するまでの時間Δtを測定すれば、その物体までの距離を求めることができます。Δtはカメラから物体までの距離の2倍(往復)に比例するからです。つまり、距離(深度)dの値は光速cを使って(c×Δt)/2と表すことができます。ToFシステムで使用するカメラを使えば、このような深度の情報に加えて、物体の2次元(2D)データを出力することができます。

このカタログについて

ドキュメント名 距離の測定と物体の検出を実現するToFシステム
ドキュメント種別 ホワイトペーパー
ファイルサイズ 826.7Kb
取り扱い企業 アナログ・デバイセズ株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

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Technical Article 距離の測定と物体の検出を 実現するToFシステム 著者:Thomas Brand、シニア・フィールド・アプリケーション・エンジニア FA(ファクトリ・オートメーション)やロボティクス、物流など 上述したように、ToFでは光パルスの飛行時間を測定します。 の分野では、距離の測定と物体の検出が重要になります。特に、 その方法は大きく2つに分類されます。1つは、CCD(Charge 安全性の確保という観点からは、特定の距離に位置する物体や人 Coupled Device)技術を利用したパルス・モードです。もう1 物を検出したり、それらから応答を得たりすることが必須です。 つは、CW(Continuous Wave)モードです。 例えば、作業者が危険な区域に入ったら、ロボット・アームを即 光パルスの放射から反射パルスの受信までにかかる時間はパル 座に停止するといった機能が求められるということです。 ス・モードで測定されます。一方、放射および受信した変調光パ このような機能を実現するためのものとして注目されているの ルスの間の位相差を測定する場合にはCWモードが使われます。 が、ToF(Time of Flight)技術です。同技術を採用したシステ どちらの動作モードにもメリットとデメリットがあります。多く ムの仕組みは、次のようなものになります(図1)。まず、レーザー の場合、パルス・モードでは、短い積分ウィンドウの間に高エネ などの変調光源を使ってシステムから光を放射します。そして、 ルギーで非常に短い光パルスをバースト状で放射します。そのた 1つ以上の物体で反射した光ビームをセンサーやカメラによって め、このモードでは周辺光に対して高い堅牢性が得られます。こ 捉えます。光を放射してから反射光を受信するまでの時間Δtを のことから、パルス・モードは屋外で稼働するアプリケーション 測定すれば、その物体までの距離を求めることができます。Δt に適しています。一方のCWモードはより実装が容易です。なぜ はカメラから物体までの距離の2倍(往復)に比例するからです。 なら、立上がり/立下がりエッジが高速な短いパルスを放射する つまり、距離(深度)dの値は光速cを使って(c×Δt)/2と表す ことができる光源を必要としないからです。しかし、精度に対す ことができます。ToFシステムで使用するカメラを使えば、この る要求が厳しい場合には、より周波数の高い変調信号が必要にな ような深度の情報に加えて、物体の2次元(2D)データを出力 り、実装が困難になる可能性があります。 することができます。 ToFでは、一般的なピクセル・サイズによって高いチップ解像度 ToFでは、物体全体のイメージ(画像)を一度に記録することが を得ることができます。そのため、距離の測定だけでなく、物体 できます。ラインごとのスキャン処理を行ったり、センサーと物 やジェスチャーの認識も可能です。なお、測定可能な距離は数 体の間の相対モーションの情報を得たりする必要はありません。 cm(10cm未満)から数m(15m未満)の範囲です。 多くの場合、ToFはLIDAR(Light Detection and Ranging)技 術の一種として扱われます。ただ、スキャン方式ではなく、フラッ シュ方式をベースとするLIDARだと言えます。 エミッタ Δt 停止 開始 ディテクタ 時間 アルゴリズム 距離 図1. ToFによる測定原理 VISIT ANALOG.COM/JP
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残念ながら、すべての物体を同じレベルで検出できるわけではあ ド用のドライバ、分解能が12ビットのA/Dコンバータ、CCD りません。計測を実施する状況や、物体の反射率、速度が測定結 /レーザー向けのタイミング信号を生成する高精度のクロック・ 果に影響を及ぼすからです。また、測定結果は霧や強い直射日光 ジェネレータを搭載しています。これらのコンポーネントを使用 といった環境要因によって変動することもあります。これについ することで、深度のデータと画素のデータを生成するために、 ては周辺光の抑制機能が有効です。 VGA対応のCCDセンサーから出力された未処理の画像データを 処理する役割を担います。つまり、ADDI9036は、CCDを利用 現実のアプリケーションでは、3Dに対応するToFソリューショ するToFシステム向けの完全なシグナル・プロセッサだと言えま ンが求められることが少なくありません。そうしたシステムを短 す。 期間で実現できるように、アナログ・デバイセズなどの半導体 メーカーは、完全な3D ToFシステムを提供しています(図2)。 アナログ・デバイセズは、設計パートナー企業と連携し、完成 その種のシステムは、制御用の電子機器で利用しやすいように1 されたモジュールや開発プラットフォームを共同で提供していま つのユニットとして提供されます。そのユニットには、データ処 す。これらの評価用システムは、お客様が独自のアルゴリズムを 理用の回路、レーザー・ドライバ、パワー・マネージメント・シ 開発するための環境を提供します。これらのモジュールやプラッ ステム、ソフトウェア/ファームウェアなどが統合されています。 トフォームは、開発期間の短縮に大いに貢献するということです。 追加する必要のある主要なコンポーネントはエミッタとディテク 産業分野や車載分野など、スピードが重視されるビジネス領域に タだけです。エミッタは、周波数変調した光信号を放射する役割 おいては、特に大きな威力を発揮します。 を果たします。ディテクタは反射信号の取得に使用します。 このようなシステムを構築したい場合には、「ADDI9036」のよ 参考資料 うな製品が大いに役立ちます。同製品は、深度計算の機能を内蔵 「アナログ・デバイセズのTIME OF FLIGHTテクノロジーによる するアナログ・フロント・エンド(AFE)です。レーザー・ダイオー 3Dイメージング」 Analog Devices、2020年 ToFセンサー DOUT アナログ・ フロント・エンド SPI 深度の計算 エミッタ タイミング・ ジェネレータ ADDI9036 図2. ToFシステムのブロック図 2 距離の測定と物体の検出を 実現するToFシステム
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著者について EngineerZone® Thomas Brand(thomas.brand@analog.com)は、 オンライン・サポート・コミュニティ 2015年10月に修士課程の一環としてアナログ・デバイ アナログ・デバイセズのオンライン・サポート・コミュ セズのミュンヘン支社でキャリアをスタートさせました。 ニティに参加すれば、各種の分野を専門とする技術者と 2016年5月から2017年1月まで、アナログ・デバイセズに の連携を図ることができます。難易度の高い設計上の問 おいて、フィールド・アプリケーション・エンジニアを目指 題について問い合わせを行ったり、FAQを参照したり、 す人のための研修プログラムに参加。2017年2月にフィー ディスカッションに参加したりすることが可能です。 ルド・アプリケーション・エンジニアとなり、主に産業分 野の大口顧客を担当してきました。産業用イーサネットを 専門としており、中欧における関連事業のサポートにも携 わっています。ドイツのモースバッハにあるUniversity of Visit ez.analog.com Cooperative Education(UCE)で電気工学を専攻。その 後、ドイツのコンスタンツ応用科学大学 大学院で国際営業 *英語版技術記事はこちらよりご覧いただけます。 を学び、修士号を取得しました。 VISI T A N A L O G . C O M /JP お住いの地域の本社、販売代理店などの情報は、analog. ©2021 Analog Devices, Inc. All rights reserved. com/jp/contact をご覧ください。 本紙記載の商標および登録商標は、各社の所有に属します。 Ahead of What’s Possibleはアナログ・デバイセズの商標です。 オンラインサポートコミュニティEngineerZoneでは、アナ ログ・デバイセズのエキスパートへの質問、FAQの閲覧がで きます。 TA22672-2/21