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5GとDSRCの連携により、自動運転車向けのV2Xを構築する

製品カタログ

自動車業界では現在でもワイヤレス・アクセスの実現手段に関する検討が続けられています。すなわちセルラ・ベースのアクセス技術かダイレクト・アクセス技術を使用すべきか、未だに結論が出ていないということです。

本稿では、まず、自動運転の将来的なユース・ケースに対応するためには、両方の技術を協調/連携させる必要があるということを明らかにします。例えば、最先端かつ複数のワイヤレス規格に準拠する機器は、それぞれの規格に対応するための複数のモジュールを搭載しています。そのような協調型のシステムは、それぞれのワイヤレス機能(モジュール)の間でやり取りを行うための標準的なインターフェースが存在しなければ実現するのが難しいでしょう。本稿では、デュアルバンド、デュアルワイヤレス規格に対応する車載通信システムを実現するための1チップ・ソリューションを紹介します。そのICを使用すれば、複数の周波数帯を使用して同時に送受信を行うことができます。車載向けのデバイスとしての認定は得ていませんが、自動車メーカーは、そのICで使われている技術を活用することで、製品の差別化を図り、サービス品質を向上するための制御機能を強化することができます。

このカタログについて

ドキュメント名 5GとDSRCの連携により、自動運転車向けのV2Xを構築する
ドキュメント種別 製品カタログ
取り扱い企業 アナログ・デバイセズ株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

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Thought Leadership Article 5GとDSRCの連携により、 自動運転車向けの V2Xを構築する 著者:Danish Aziz、スタッフ・フィールド・アプリケーション・エンジニア Chris Bohm、デジタル設計エンジニア Fionn Hurley、マーケティング・マネージャ 概要 す。C-V2Xは、セルラ・ネットワークを利用してV2Xの通信を より高度な自動運転車を実現するためには、車両に通信機能 制御するというものです。この技術を利用すれば、免許不要/専 を持たせることが不可欠です。しかし、自動車業界では、現 用の周波数帯において、DSRCやIEEE 802.11pといった他のワ 在でもワイヤレス・アクセスの実現手段に関する検討が続けら イヤレス・アクセス技術を補完することができます。それに向け れています。すなわち、セルラ・ベースのアクセス技術を使用 ては、ユース・ケースに求められる要件と、複数のアクセス技術 するべきなのか、それともダイレクト・アクセス技術を使用す の利点を活用する必要性を関連づけなければなりません。現在、 べきなのか、いまだに結論が出ていないということです。前者 複数の標準技術に対応するV2X機器は、それぞれの技術に対応 の技術は、C-V2X(Cellular Vehicle to Everything)と呼ば する個別のソフトウェア/ファームウェアを実装した複数のモ れています。一方、後者の技術はDSRC(Dedicated Short ジュールを使用することによって実現されています。しかし、そ Range Communication:専用狭域通信)として知られていま の方法を採用すると、複数のアクセス技術の協調/連携について す。本稿では、まず、自動運転の将来的なユース・ケースに対 制約が生じてしまいます(詳細は後述)。アナログ・デバイセズ 応するためには、それら両方の技術を協調/連携させる必要が は、RadioVerse®のポートフォリオに含まれる製品の1つとして あるということを明らかにします。例えば、最先端かつ複数の 「ADRV9026」を提供しています。同製品は、サブ6GHzの周波 ワイヤレス規格に準拠する機器は、それぞれの規格に対応する 数帯に対応可能な無線トランシーバーICです。マルチチャンネル ための複数のモジュールを搭載しています。そのような協調型 /マルチバンドに対応する同ICを使うことにより、マルチバンド のシステムは、それぞれのワイヤレス機能(モジュール)の間 の通信に対応するV2X機器を実現することができます。 でやり取りを行うための標準的なインターフェースが存在しな ければ実現するのが難しいでしょう。本稿では、デュアルバン 車両とあらゆるモノをつなぐV2X通信 ド、デュアルワイヤレス規格に対応する車載通信システムを実 自動車業界は、あらゆる走行シナリオ、操作、状況に対応できる 現するための1チップ・ソリューションを紹介します。そのIC 完全な自動化を実現すべく技術革新を急速に進めています。なか を使用すれば、複数の周波数帯を使用して同時に送受信を行う でも、ワイヤレス接続技術は急速な進化を遂げています。同技術 ことができます。車載向けのデバイスとしての認定は得ていま は、完全な自動化はもちろん、より低レベルの自動化を実現する せんが、自動車メーカーは、そのICで使われている技術を活 上でも基盤になるからです。このことについては、疑問の余地は 用することで、製品の差別化を図り、サービス品質を向上する ありません。自動運転車向けの多くのアプリケーションの中でも ための制御機能を強化することができます。 安全性が非常に重視されるものは、ワイヤレス接続に特に強く依 存しています。走行空間や交通システムを共有するエンティティ はじめに (実体、モノ)が存在する際には、究極(99.999%)の信頼性が 本稿では、V2X(Vehicle to Everything)を実現する機器の開 保証された状態で安全な操作が行われるようにすることが不可欠 発に注目します。V2Xを利用するアプリケーションのシナリオを です。そのようなエンティティの例としては、他の車両、人、道 概観した上で、V2Xの通信を実現するために使用可能な2つの 路上の輸送システム、交通管理用のネットワークなどが挙げられ ワイヤレス・アクセス技術を紹介することにします。最初にV2X ます。システム内に存在するエンティティとの情報交換、協調、 の概要を押さえておけば、C-V2Xについての理解が進むはずで 連携を実現するためには、すべての車両にワイヤレス接続機器を 配備することが不可欠です。 VISIT ANALOG.COM/JP
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上記のようなことを目的として、ETSI(欧州電気通信標準化機構) V2X向けのワイヤレス・アクセス技術 をはじめとする欧州の運営組織は、高度道路交通システム(ITS: 図2に示したのは、ITSの全体を構成する階層アーキテクチャで Intelligent Transport System)の基礎を築きました。同様のシ す。最上位のアプリケーション層には、緊急ブレーキ時の警告、 ステムは、米州やアジア太平洋地域など、世界各地で開発されて 交差点における衝突の回避、交通信号の周期といったユース・ います。ITSでは、多様なアプリケーションとユース・ケースに ケースを定義するための要素が含まれています1。それ以外の層 対応できるように、通信ノード、アーキテクチャ、プロトコル、 は、測位/位置情報、認識メッセージ、通知などに関する情報や メッセージなどについての定義が行われています。ただ、免許不 通信サポート・サービスを提供します。それぞれのプロトコルに 要/専用の周波数帯を使用するDSRCベースのアプリケーショ 即したメッセージは、ワイヤレス技術を使って無線で送信する必 ンを強化するためには、新たなインフラが必要です。インフラを 要があります。 配備するプロセスは、スマート・ハイウェイやスマート・シティ 米国では、車両通信向けのDSRCが既に確立されています。欧州 の構想の下、既に多くの地域で活発に進められています。一方、 では、同じことを目的としてIEEE 802.11pに基づくワイヤレス・ C-V2Xでは、既存のセルラ・システムのインフラを使用します。 アクセス技術が確立されています。但し、それらの技術は、アド 図1は、ITSに対応する車両が他の車両をはじめとするエンティ ホックな通信向けのWi-Fi規格であるIEEE 802.11xに基づいて ティと通信するためのインターフェースについてまとめたもので 開発されました2。そのため、通信距離が限られています。加え す。以下、各インターフェースの概要について説明します。 て、他のWi-Fiベースのシステムと同様に、輻輳やサービス品質 X V2V(Vehicle to Vehicle:車車間)通信:当初、V2V 通信 (QoS)の問題に直面します。更に、交通管理用のサーバのカバー はブロードキャスト・メッセージ専用のものとして使われてい 範囲を確保するためには、インフラを路側に配備するために多額 ました。ただ、現在の車両はユニキャスト/マルチキャストの の投資を行わなければなりません。セルラ型の通信システム(公 メッセージを送出することもできます。このインターフェース 衆陸上移動体通信網)によるワイヤレス・アクセスは、そうした は、通信範囲内の車両から別の車両に対してあらゆる情報を カバー範囲やQoSの問題に対する解決策となります。セルラ・ 直接伝達するために使用することができます。例えば、緊急 ネットワークは、既にほとんどの道路をカバーしています。また、 ブレーキをかける場合などに使用されます。 ネットワークによるスケジューリング制御が適用されるワイヤレ X V2P(Vehicle to Pedestrian:歩車間)通信:スマートフォ ス・アクセスを利用できます。そのため、輻輳や通話の中断を回 ンに V2X アプリケーションがインストールされている場合、 避しつつ、QoSを保証することが可能です。 このインターフェースを使用することで車両と歩行者の間で V2Xのサービスは、既に4G LTEのセルラ・システム規格に基づ 通信を行うことができます。例えば、車両が交通弱者に接近 いて提供されています3。ただ、4G LTEをベースとするサービ している場合に警告を発するといったことが可能になります。 スは、主に基本的な安全性に関するユース・ケースを対象にして X V2N(Vehicle to Network:車ネットワーク間)/V2(I Vehicle います。一方、5Gをベースとする技術は、より安全性が重視さ to Infrastructure:路車間)通信:これらのインターフェースは、 れ、高い信頼性が求められるユース・ケースを対象としています。 スマート輸送を促進するためのあらゆる情報の伝達に使用で C-V2Xという用語は、4G LTEであるか5Gであるかに関わらず、 きます。 モバイル・ネットワークによって提供されるV2Xサービスに対し て使用されます。車両通信システムの全体像については、様々な 地域だけでなく、様々な周波数帯において複数の技術や規格が必 要になる可能性があると考えられています。実際に様々な地域、 様々な規格、様々な周波数帯について考慮すると、システムの全 管理サーバと 体像はより複雑になります。 アプリケーション・ クラウド アプリケーション ITSの路側ユニット 歩行者のスマートフォン スマート道路のインフラ ファシリティ (V2N) (V2P) (V2I) 管理 ネットワーク/ トランスポート セキュリティ (V2V) (V2V) アクセス 図1. V2X通信システムにおけるエンティティ、 インフラ、インターフェースの関係 DSRC IEEE 802.11p 4G LTE 5G 米国:DSRC/欧州:ITS-G5 C-V2X 専用周波数 専用周波数 認可済みの 周波数 図2. ITSのアーキテクチャ。 階層構造を示しています。 2 5GとDSRCの連携により、 自動運転車向けのV2Xを構築する
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C-V2Xの実現形態 モバイル・ネットワークの事業者にとって、セルラ・ネットワー クのカバー範囲を100%にするのは容易なことではありません。 一方で、カバー範囲に穴があるという事実は、コネクテッド運転 Uu Uu Uu /自動運転を実現するにあたり、道路の穴よりも大きな問題にな る可能性があります。そのため、C-V2Xには、ネットワークのカ PC5 PC5 バー範囲外でも働く強化機能が設けられます。 図3(a)は、セルラ・ネットワークのカバー範囲内で車両が通信 PC5 を行っている状況を表しています。車両の通信方法には、以下に 示す2つの選択肢があります。 (a)セルラ・ネットワークのカバー範囲内にある場合 X 選択肢 1:従来の Uu インターフェース(端末と無線基地局 間の無線リンクにちなみ 3GPP が命名)を使用する方法です。 セルラ・ネットワークは、V2X における 2 つの通信ノード間 PC5 PC5 のやり取りに関与します。 X 選択肢 2:PC5 と呼ばれる新たなインターフェースを使用す PC5 る方法であり、V2X のノード間で直接通信する機能を提供し (b)セルラ・ネットワークのカバー範囲外にある場合 ます。サイドリンク(SL:Sidelink)通信とも呼ばれます。 図3. V2X通信の実現形態。セルラのカバー範囲内外において 利用可能なインターフェースについて示しました。 図3(b)は、セルラ・ネットワークのカバー範囲外で通信を行 う様子を示したものです。この場合も、インターフェースとして V2Xにおける周波数割り当て PC5を使用すれば、V2Xのノード間で通信を行うことが可能で 欧州では、車両通信専用に5.9GHzの周波数帯、70MHzの帯 す。カバー範囲内にある場合、ネットワークは割り当てられた任 域幅が割り当てられています4。世界的にも、この周波数を割り 意のセルラ帯域を使用することができます。次のセクションでは、 当てる取り組みが進んでいます。また、この周波数帯でITS-G5 ネットワークのカバー範囲外においては、どのような帯域が使用 (Wi-FiベースのV2V通信規格)とC-V2Xを使用できるように されるのかということについて説明します。 するための調和作業も進行中です。C-V2Xについて言えば、既 にPC5とUuを組み合わせて複数の周波数帯が使用できるように なっています。また、セルラ規格について言えば、V2X向けに デュアルバンドの同時運用についての検討が行われています。 3GPPの仕様5、6に基づき、V2Xのサービスを同時に運用する際 には、2つの周波数帯(バンド)を組み合わせて使用することに なります。表1に、その組み合わせの例を示しました。ここでは、 4G LTEまたは5G NR(New Radio)をベースとするセルラ方 式の無線アクセス技術を使用する例を取り上げています。濃い灰 色で網掛けした行は、5G NRのみに対応しています。 表1. V2Xを同時運用するためのUu/PC5のバンドの組み合わせ方。 4G LTE、5G NRを利用する場合の例を示しています。 運用バンド V2Xの同時運用に LTE 4G/5G NR アップリンク(UL): BSが受信、UEが送信 向けたバンド構成 または V2Xの インターフェース ダウンリンク(DL): BSが送信、UEが受信 二重化モード 運用バンド Flow – Fhigh 34 Uu 2010MHz 2025MHz TDD V2X_34-47 47 PC5 5855MHz 5925MHz HD 39 Uu 1880MHz 1920MHz TDD V2X_39-47 47 PC5 5855MHz 5925MHz HD 41 Uu 2496MHz 2690MHz TDD V2X_41-47 47 PC5 5855MHz 5925MHz HD 38 Uu 2570MHz 2620MHz TDD V2X_38-47 47 PC5 5855MHz 5925MHz HD 48 Uu 3550MHz 3700MHz TDD V2X_48-47 47 PC5 5855MHz 5925MHz HD 79 Uu 4400MHz 5000MHz TDD V2X_79-47 47 PC5 5855MHz 5925MHz HD VISIT ANALOG.COM/JP 3
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デュアルバンド、デュアルRATのV2Xシステム 複数の無線アクセス技術(RAT:Radio Access Technology) アプリケーション が存在し、通信を実現できる複数の周波数帯が存在する可能性 がある場合、自動車メーカーはそれらのうちどれを採用するのか ファシリティ を決定する必要があります。米国の場合、FCC(連邦通信委員 管理 セキュリティ ネットワーク/ 会)はDSRCベースのワイヤレス・アクセスを使用する方向に傾 トランスポート いています(本稿執筆時点)7、8。一方、アジア太平洋地域では、 アクセス C-V2Xの開発と導入を歓迎しています9。そして欧州は、RATに WAM ついては中立的な立場を保つという考え方を示しています10。こ ITS-G5 C-V2X C-V2X の件に関しては、ITS-G5/DSRCがC-V2Xにもたらすメリットに IEEE PC5 Uu 802.11p ついて説明する調査結果がいくつか発表されています。同様に、 レイヤ3 レイヤ3 C-V2XがITS-G5にもたらすメリットについて説明している調査 レイヤ2 レイヤ2 レイヤ2 結果も存在します。実際、自動車業界も通信業界も、V2Xのサー レイヤ1 レイヤ1 レイヤ1 ビスが、免許取得済みの周波数帯だけでなく、免許不要の周波 数帯でも、RATによってもたらされるメリットを活用できるよう にしたいと考えています。そして両業界は、そのためのソリュー 図4. ITSのアーキテクチャにおけるアクセス層の詳細。 複数の無線技術の協調と連携が実現されます。 ションの開発に取り組んでいます11。 図4は、図2のアクセス層に修正を加えたものです。無線アクセ ADRV9026――将来のV2Xシステムに向けた スとパケット・アクセスの間に新たなサブレイヤを導入すること 1チップのRF IC で、アクセス層についてより詳しく説明しています。このサブレ ワイヤレス機器の多くは、既に複数のワイヤレス規格に対応でき イヤは、ワイヤレス・アクセス管理(WAM:Wireless Access るように設計されています。それぞれの規格への対応は、独自 Management)層と呼ばれています。その役割は、無線のレベ のモジュールやハードウェアを使用して実装することで実現され ルに対し、ネットワークから、最適化されたV2Xサービスを提供 ています。通常、それらのモジュールは、RFのレベルからアプ できるようにすることです。それにより、ユース・ケース(遅延 リケーション層までを網羅するソリューションとして提供されま の要件、QoSなど)、トラフィック(輻輳)、リンク(無線品質) す。ただ、このようなアーキテクチャによって、デュアルバンド の状況に応じ、様々なRATを選択して協調(ダイバーシティ)/ のV2Xシステムを実装し、協調と連携の仕組みを実現するのは 連携(より高いスループット)を図ることが可能になります。例 容易ではありません。なぜなら、そうしたモジュールのメーカー えば、メッセージを送信する際にITS-G5の無線インターフェー /ベンダーは、複数の規格の間で協調や連携を実装するために必 スにおいて輻輳が検出された場合には、C-V2Xを使用し、その 要な、中間層にアクセスするための自由度は提供していないから メッセージをPC5で送信するといった具合です。それにより、ダ です。現在利用が可能なワイヤレス・モジュールを採用して必要 イバーシティ・ゲインが得られ、信頼性を確保することが可能に な実装を行うには、標準的な外部インターフェースが提供されて なります。例えば、車両が地図に関する高密度のデータを交換し いなければなりません。 なければならないというユース・ケースが存在したとします。そ の際に必要となる高いスループットを実現するために、Uuのイ 求められているシステムを実現するための設計としては、どのよ ンターフェースをPC5やITS-G5と連携させて使用するといった うなものが考えられるでしょうか。その答えの1つが、ソフトウェ ことも行えます。 ア無線(SDR:Software-defined Radio)の考え方を具現化す る無線トランスミッタ/レシーバーを使用するというものです。 稿末の参考資料12、13に挙げたIEEEの投稿論文では、解析やシ そうすれば、あらゆるステージのデジタル・データにアクセスし、 ミュレーションといった技法を活用し、図4に示したのと同様の 必要な処理を実行できるだけの完全な自由度が得られます。ア 概念がもたらすメリットについて非常に詳しく説明しています。 ナログ・デバイセズが提供するRadioVerseのポートフォリオに 表1に示したように、セルラ・システムの標準化団体は、C-V2X は、広帯域に対応する多くの無線トランシーバー製品が含まれて の枠組みにおいて、5.9GHz帯を使用するPC5/ITS-G5と4G います。それらの製品を使用すれば、あらゆるRF信号をビット・ LTE Uu/5G NR Uuの同時運用について既に検討しています。標 データに、あらゆるビット・データをRF信号に変換することが 準化団体や産業分野の研究団体は、先述した同時運用の概念や複 可能です。RF帯域とベースバンドの間の信号変換は、ZIF(Zero 数のバンドを使用する同時運用によって、デュアルバンド/デュ Intermediate Frequency)アーキテクチャに基づいて行われま アルRATのV2Xシステムの基盤を既に構築済みだと言えます。 す。この方式では、基本的にはすべての回路が非常に狭い帯域幅 自動車業界には、デュアルバンド/デュアルRATのV2Xがもた で動作します。そのため、ダイレクトRFサンプリングに基づく らすメリットを活用可能な最適化されたハードウェア/実装を見 変換方法と比べて、はるかに少ない電力しか消費しません。また、 いだすことが求められています。 ZIFアーキテクチャでは、トランスミッタとレシーバーの両方で フィルタ処理に関する要件が緩和されます。結果として、RFフロ ント・エンドを非常にシンプルに低コストで実現することが可能 になります。 4 5GとDSRCの連携により、 自動運転車向けのV2Xを構築する
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ADRV9026は、1つのチップ内にあらゆる機能を集積したRF IC は最高200MHz、トランスミッタの合成帯域幅は最高450MHz です。この製品により、RadioVerseのポートフォリオはデュア です。オンチップのオブザベーション・パスは、それぞれ最高 ルバンドのSDRを網羅するよう拡張されました。ADRV9026で 450MHzの帯域幅を備えており、大電力を出力する送信用パ は、4つの送信チャンネルと4つの受信チャンネルを独立してプ ワー・アンプの線形化をサポートしています。ADRV9026の機 ログラムしたり制御したりすることができます。また、75MHz 能ブロック図を図5に示しました。 ~6GHzのキャリア周波数の送受信に対応可能です。受信帯域幅 RX3, RX4, TX3, TX4, ORX3/ORX4 RX3+ RX1, RX2, TX1, TX2, ORX1/ORX2 RX3– Rx1 RX4+ Rx2 RX4– RX1+ ADC デシメーション、 プログラマブルFIR、 RX1– LO AGC、 SERDOUTA± RX2+ 0° 1 Mux DCオフセット、 SERDOUTB± RX2– 90° LO QEC、 SERDOUTC± 2 チューニング、 SERDOUTD± ADC RSSI、 過負荷 TX3+ TX3– Tx1 TX4+ Tx2 TX4– SYNCIN1± TX1+ DAC SYNCIN2± pFIR、 JESD204B/ TX1– LO LOリーク、 JESD204C SYNCIN3± TX2+ 0° 1 TX2– 90° Mux QEC、 シリアル・ LO インターフェース 2 チューニング、 インターポレーション SERDINA± DAC SERDINB± SERDINC± SERDIND± ORX3+ ORX3– ORX4+ ORX1/ORX2 ORX4– ADC ORX2+ デシメーション、 ORX2– pFIR、 SYNCOUT1± 0° ORX1+ 90° Mux DCオフセット、 SYNCOUT2± LO3 チューニング、 ORX1– ADC 過負荷 VDDA_1P81 GPIO 8 GPIO_ANA_x VDDA_1P32 VDDA_1P03 パワー・ 補助ADC 4 AUXADC_x 19 マネージメント 補助DAC GPIO_x VIF VDIG_1P0 マイクロプロセッサ クロックの DEVCLK± 生成と同期 SYSREF± RFシンセサイザ LO3 RFシンセサイザ SPI_CLK RFシンセサイザ SPIポート SPI_EN LO1 SPI_DO SPI_DIO GPINT1 LO GPINT2 2 4 制御用 RXx_EN 4 インターフェース TXx_EN 4 ORX_CTRL_x RESET TEST_EN 図5. ADRV9026の機能ブロック図14。 クワッドトランスミッタ、クワッドレシーバーを備えるRF ICです。 VISIT ANALOG.COM/JP 5
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X ADRV9026 は、ワイヤレス基地局で求められる RF 性能の要 周波数〔Hz〕 件を満たしています。一方、既存のワイヤレス・モジュールは、 C-V2X (4G LTE/5G NR) C-V2X (4G LTE/5G NR) Uu Band_39 PC5 Band_47 エンド・ユーザの端末向けに開発された ASIC をベースにして 1.88GHz~1.92GHz 5.855GHz~5.925GHz います。ADRV9026 を採用すれば、より高い RF 性能が得ら 周波数〔Hz〕 れ、小さな遅延、高い信頼性、高い QoS を実現することが可 C-V2X (5G NR) ITS-G5 能です。より高いデータ・レートと無線スループットが得られ Uu Band_48 5.855GHz~5.925GHz 3.550GHz~3.700GHz ることから、より高い安全性を実現でき、より優れた走行体験 /乗車体験が得られるようになります。 周波数〔Hz〕 X ADRV9026 を採用すれば、より高いデータ・レート、より小 C-V2X (5G NR) ITS-G5 Uu Band_79 5.855GHz~ さな遅延を実現できます。そのため、ドライバや自動運転シス 4.400GHz~ 5.925GHz 5.00GHz テムに対する反応が速くなり、安全に関連するユース・ケース におけるより適切な対応が可能になります。大量のトラフィッ 図6. ADRV9026が対応する周波数帯。 マルチバンドの同時送受信が可能です。 クが存在する状況では、免許不要/専用の無線リソースが輻 輳の限界に達することがあります。先述したように、協調型/ ADRV9026は、先進的なアーキテクチャを採用した局部発振器 連携型のシステムは、スタンドアロンのシステムや単一アクセ を備えています。そのため、6GHz未満の複数の周波数帯におけ スのシステムと比べて、より高い信頼性を提供します。そのた る同時送受信に対応できます。1個のADRV9026を使用するだ め、より厳しい安全基準を満たすことができます。 けで、異なるバンド、異なるRATに対応した同時送受信を実現 できるのです。例えば、図6に示したような組み合わせに対応で V2Xのユース・ケースに求められる要件を満たすには、コグニ きます。この図では、3とおりの組み合わせ方を例として示しま ティブなインテリジェンスと、単一のRF ICのサポートによって した。ここで強調しておきたいのは、ADRV9026は、75MHz~ 実現される協調型/連携型の実装が必須です。アナログ・デバイ 6GHzのどの周波数帯でも優れた性能を発揮できるということで セズは、ADRV9026などの単一デバイスによって必要な技術を す。同ICは、4つの独立したRFチャンネルを備えています。そ 提供します。 のため、異なるバンドあるいはRATに対応して2×2のMIMO を実現するといったことも可能です。同ICを採用すれば、以下の ような様々なメリットが得られます。 まとめ 本稿では、自動運転車の実現に不可欠なV2X通信技術の開発状 X C-V2X で対象とする任意のバンドを柔軟に選択することがで 況について説明しました。この分野には、V2Xのサービスの重 きます。この柔軟性に関して、認証のための追加のコストは生 要な要件を満たすために相互に補完し合うことが可能な2つのワ じません。 イヤレス技術が存在します。すなわち、C-V2XとDSRC/ITS-G5 X 複数の RAT を連携させて使用するには、より高度な同期処理 の2つです。これらを連携させれば、免許取得済みの周波数帯に が必要になります。ADRV9026 を採用した場合、単一の RF も、免許不要の周波数帯にも対応することができます。協調型 IC によって 2 つのバンドを制御することになるので、そうし /連携型のV2Xシステムの実現に向けては、様々な選択肢につ た同期を実現するのは容易です。ADRV9026 を使用すれば、 いて検討する必要があります。アナログ・デバイセズは、デュア デュアルバンドの V2X システムをより容易に構築することが ルバンド、デュアルワイヤレス規格をサポートする技術を保有し できます。デュアルバンドに対応する V2X デバイスのアーキ ています。それらの技術は、ADRV9026によって提供していま テクチャと設計については、別の記事で詳しく解説する予定で す。このRF IC製品は、より高いRF性能、より小さい遅延、より す。 高いデータ・レート、より高い信頼性を実現します。本稿では、 X ADRV9026 を使用する場合、RF 信号からビット・データ ADRV9026を採用した場合、V2X通信に対応する機器をどのよ への変換をアンテナのすぐ近くで実施することができます。 うに設計できるのかということも解説しました。それらの機器で V2X で使用する 5.9GHz 帯では、同軸ケーブルにおける RF は、2つの異なる周波数帯を使用し、2つのV2X技術によって同 信号の損失が非常に大きくなります。アンテナの近くで変換 時にワイヤレス・アクセスを実現することが可能になります。で を行えるということは、そのような損失を回避できるというこ は、ADRV9026をベースとした設計を採用すると、マルチバン とを意味します。 ドのV2X通信をどのようにサポートすることができるのでしょう か。それについては、今後、別の記事で詳しく解説する予定です。 6 5GとDSRCの連携により、 自動運転車向けのV2Xを構築する 正規化 正規化 正規化 電力 電力 電力
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参考資料 7 Fact Sheet-Use of the 5.850-5.925 GHz Band: Notice 1 ETSI TS 102 894-1 V1.1.1 (2013-08): Intelligent Transport of Proposed Rulemaking-ET Docket No. 19-138(ファク Systems (ITS); Users and Applications Requirements; Part トシート-5.850~5.925GHz帯の利用;規則制定告示-ET整 1: Facility Layer Structure, Functional Requirements and 理番号19-138)、Federal Communications Commission、 Specifications(ETSI TS 102 894-1 V1.1.1 (2013-08): 高度道 2019年11月 路情報システム(ITS);ユーザ/アプリケーションの要件;Part 8 Dedicated Short Range Communications (DSRC) Service: 1:ファシリティ層の構造、機能要件、仕様)、ETSI、2013年8 Rule Part 47 C.F.R, Parts 90 and 95(専用狭域通信(DSRC) 月 サービス:規則第47部C.F.R、第90部/第95部)、Federal 2 Khadige Abboud、Hassan Aboubakr Omar、Weihua Communications Commission、2019年4月 Zhuang「Interworking of DSRC and Cellular Network 9 ITS Spectrum Utilization in the Asia Pacific Region(ア Technologies for V2X Communications: A Survey(調査 ジア太平洋地域におけるITSの周波数利用)、5G Automotive 結果:V2X通信のためのDSRCとセルラ・ネットワーク技術の Association 連携)」IEEE Transactions on Vehicular Technology、Vol. 65、No. 12、2016年12月 10 Position Paper: Europe's Leadership in Connected and 3 Automated Driving Depends on Technology-Neutral, 3GPP TS 36.300 V15.7.0 (2019-09): 3rd Generation Innovation-Oriented Policies(ポジション・ペーパー:コネク Partnership Project; Technical Specification Group Radio テッド運転/自動運転に対する欧州のリーダーシップは、技術的 Access Network; Evolved Universal Terrestrial Radio に中立でイノベーション指向の方針に依存)、5G Automotive Access (E-UTRA) and Evolved Universal Terrestrial Radio Association、 2018年11月 Access Network(E-UTRAN); Overall description; Stage 2 (Release 15)(3GPP TS 36.300 V15.7.0 (2019-09): 3GPP; 11 5G Solutions for Future Connected Mobility(将来のコ 無線アクセス・ネットワーク技術仕様グループ;進化型の全地球 ネクテッド・モビリティに向けた5Gのソリューション)、5G 無線アクセス(E-UTRA)、そのネットワーク(E-UTRAN);概要 NetMobil 説明;ステージ2(リリース15)) 12 Richard Jacob、Norman Franchi、Gerhard Fettweis 4 ETSI EN 302 571 V2.1.1 (2017-02) Intelligent Transport 「Hybrid V2X Communications: Multi-RAT as Enabler for Systems (ITS); Radiocommunications Equipment Operating Connected Autonomous Driving(ハイブリッド型のV2X in the 5 855 MHz to 5 925 MHz Frequency Band; 通信:コネクテッドな自動運転を実現する手段としてのマルチ Harmonised Standard Covering the Essential Requirements RAT)」2018 IEEE 29th Annual International Symposium of Article 3.2 of Directive 2014/53/EU(ETSI EN 302 571 on Personal, Indoor and Mobile Radio Communications V2.1.1 (2017-02)  高度道路情報システム(ITS);5855MHz (PIMRC)、2018年9月 ~5925MHzの周波数帯に対応する無線通信設備;EU指令 13 Richard Jacob、Waqar Anwar、Gerhard Fettweis、 2014/53 3.2条の必須要件に関する整合規格)、ETSI、2017 Joshwa Pohlmann「Exploiting Multi-RAT Diversity in 年2月 Vehicular Ad-Hoc Networks to Improve Reliability of 5 3GPP TR 36.786 V14.0.0 (2017-03) Vehicle-to-Everything Cooperative Automated Driving Applications(車載アドホッ (V2X) Services Based on LTE; User Equipment (UE) Radio ク・ネットワークにおけるマルチRATダイバーシティの活用に Transmission and Reception(3GPP TR 36.786 V14.0.0 より、協調型自動運転アプリケーションの信頼性を向上)」2019 (2017-03) LTEをベースとするV2X(Vehicle-to-Everything) IEEE 90th Vehicular Technology Conference (VTC2019- サービス;ユーザ端末(UE)による無線送受信) Fall)、2019年9月 6 3GPP TR 38.886 V0.5.0 (2020-02) V2X Services Based 14 ADRV9026 Data Sheet(データシート)、Analog on NR; User Equipment(UE) Radio Transmission and Devices、2021年1月 Reception(3GPP TR 38.886 V0.5.0 (2020-02) NRをベー スとするV2Xサービス;ユーザ端末(UE)の無線送受信) VISIT ANALOG.COM/JP 7
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著者について EngineerZone® Danish Aziz(danish.aziz@analog.com)は、アナログ・ オンライン・サポート・コミュニティ デバイセズのスタッフ・フィールド・アプリケーション・エ アナログ・デバイセズのオンライン・サポート・コミュ ンジニアです。RFに関する製品やシステムが専門です。テ ニティに参加すれば、各種の分野を専門とする技術者と クニカル・セールス・チームの一員として、欧州/中東/ア の連携を図ることができます。難易度の高い設計上の問 フリカのお客様の技術サポートを担当。車載/産業/防衛/ 題について問い合わせを行ったり、FAQを参照したり、 セルラ分野のワイヤレス接続アプリケーションに重点的に取 ディスカッションに参加したりすることが可能です。 り組んでいます。5GAA(5G Automotive Association) では当社の代表を務めました。2017年に入社する前は、ベ ル研究所(ドイツ)で研究開発技術者として業務に従事。 3G/4G/5Gのシステムの標準化に貢献しました。また、 Visit ez.analog.com 欧州とドイツが資金提供したいくつかの重要な研究プロ ジェクトでは、ベル研究所の代表を務めました。著者/共著 *英語版ソート・リーダーシップ記事はこちらよりご覧いただけ 者として、ワイヤレス通信に関する国際学術誌(IEEEが査読 ます。 済み)で25本以上の論文を発表。20件を超える国際特許を 出願/登録しています。NED工学技術大学(パキスタン カ ラチ)で電気工学の学士号、シュトゥットガルト大学で電気 工学の修士号と博士号を取得しています。 Chris Bohm(chris.bohm@analog.com)は、アナログ・ デバイセズのデジタル設計エンジニアです。1995年に入社 しました。現在は、サブ6GHz帯を使用する無線伝送向けの デジタル信号処理とアルゴリズムの開発に注力。以前は、ビ デオ・レコーダ、光伝送システムのリファレンス設計、5G システム向けの様々なASIC製品を担当してきました。レー ゲンスブルク応用科学大学(ドイツ)で通信工学の学士号、 リムリック大学(アイルランド)で理学修士号を取得してい ます。 Fionn Hurley(fionn.hurley@analog.com)は、アナロ グ・デバイセズのマーケティング・マネージャです。オー トモーティブ・キャビン・エレクトロニクス・グループ(ア イルランド リムリック)に所属しています。RF設計技術者 としてのキャリアを積んだ後、2007年に入社。ユニバーシ ティ・カレッジ・コーク(アイルランド)で電気/電子工学 の学士号を取得しています。 VISIT A N A L O G . C O M / J P お住いの地域の本社、販売代理店などの情報は、analog. ©2021 Analog Devices, Inc. All rights reserved. com/jp/contact をご覧ください。 本紙記載の商標および登録商標は、各社の所有に属します。 Ahead of What’s Possibleはアナログ・デバイセズの商標です。 オンラインサポートコミュニティEngineerZoneでは、アナ ログ・デバイセズのエキスパートへの質問、FAQの閲覧がで きます。 T23018-10/21